説明

半田付け装置の反り防止機構

【課題】半田槽上を移動するプリント配線基板に対して半田付けを行う半田付け装置の反り防止機構において、反り防止を簡単な構成で確実に行う。
【解決手段】半田槽とプリント配線基板との間に、プリント配線基板の移動方向に沿って上流側でプリント配線基板から離れ、半田槽の上方において反りを阻止する位置まで連続的に接近する位置をとってレールを配し、プリント配線基板のレールに対向する位置に貫通孔を形成し、貫通孔に摺動自在に挿入された取付け軸51と、取付け51軸の上端に取付けられた抜け止め部52と、下端に取り付けられてレールへの当接、離脱自在な当接部53と、当接部53がレールに当接した状態でプリント配線基板の下方への反りを制限するスペーサ54とをから形成された反り防止体5とを備えて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半田槽上を移動するプリント配線基板に対して半田付けを行う半田付け装置の反り防止機構に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板は、多くの場合、半田付け装置において自動的に半田槽上を移動されて半田付けが行われている。この自動的な半田付けの際、基板が過熱によって軟化し下方に反ってしまい半田の仕上がりに悪影響を与えていた。
【0003】
そこで、従来は、上記弊害を排除するために、下記の特許文献1で示す技術が提案されている。これは、自動半田付け装置において半田噴出口をまたぐように反り防止冶具が固定されているものである。プリント配線基板は反り防止冶具上を摺接して移動するので加熱によって反りを生じない。
【0004】
しかし、特許文献1で示された従来技術は、反り防止冶具がプリント配線基板の同一箇所に常に接しているため、この個所には溶融半田が付着されず半田付けポイントがあった場合には半田処理不良になってしまう。このような欠点を解消するために、下記の特許文献2で示す従来技術が提案されている。これは、溶融半田が噴流する半田槽の上面ほぼ中央に反り防止レールをプリント配線基板搬送方向に沿って設けたものである。そして、溶融半田の噴流位置で反り防止レールには折曲部が形成されプリント配線基板の下面に反り防止レールが当接しないようにしたものである。
【0005】
ところが、上記特許文献2で示す従来技術は、搬送されるプリント配線基板の下面が半田槽の上流側と下流側において反り防止レールに当る。そのため、この当接する位置にある半田付けポイントは反り防止レールと摺接し適切な半田付けが行われない。例えば、半田付けされた半田付けポイントは下流側において反り防止レールに摺接されて半田を削り取られてしまう。また、半田付けポイントの突出部分が上流側と下流側で反り防止レールに当ってプリント配線基板を上方に変位させてしまうので、搬送されるプリント配線基板が上下に変位して半田槽を通過し安定した半田付けができない。従って帯状に実装禁止領域が生じてしまい実装面積を小さくしてしまう。
【0006】
上記特許文献1、特許文献2で示す従来技術を改善したものとして、従来は下記の特許文献3で示す技術が提案されている。これは、プリント配線基板を吊り上げ機構により吊り上げた状態で搬送し下方への反りを防止したものである。具体的には、プリント配線基板の搬送路の上方には搬送方向に沿って溝部を有するレールが固定して設けられている。プリント配線基板の上面には吊り上げ金具が取付けられている。吊り上げ金具の上部には溝部に挿入される係合部を設けられている。このような構成により、プリント配線基板は吊り下げ金具によってレールから吊り下げて搬送し反りが防止されるようになっている。
また、帯状の実装禁止領域が生じない。
【0007】
【特許文献1】特開昭61−87395号公報
【特許文献2】特開平5−92258号公報(段落〔0011〕、段落〔0013〕)
【特許文献3】特開平6−188554号公報(段落〔0012〕〜段落〔0013〕)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献3で示す従来技術においては、レールの溝部に吊り下げ金具を挿入させる方法をとっているが、実際は、移動しているプリント配線基板と一体になった吊り下げ金具の係合部を静止している溝部に係合することは極めて難しい。この係合を確実に行うには、プリント配線基板の搬送を極めて正確に安定した状態で行わなければならないという問題点がある。
【0009】
そこで、本発明は、上記従来の問題点を解消した半田付け装置の反り防止機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本願の請求項1に係る発明は、半田槽上を移動するプリント配線基板に対して半田付けを行う半田付け装置の反り防止機構において、
前記半田槽と前記プリント配線基板との間に、該プリント配線基板の移動方向に沿って該移動経路における上流側で該プリント配線基板から離れ、該半田槽の上方において該プリント配線基板の反りを阻止する位置まで連続的に接近する位置をとって配されたレールと、
前記プリント配線基板の前記レールに対向する位置に形成された貫通孔と、
前記貫通孔に摺動自在に挿入された取付け軸と、該軸の上端に取付けられた抜け止め部と該軸の下端に取り付けられて前記レールへの当接、離脱自在な当接部と、該当接部が該レールに当接した状態で前記プリント配線基板の下方への反りを制限するスペーサとをから形成された反り防止体とを備えていることを特徴とする。
【0011】
また、本願の請求項2に係る発明において、前記貫通孔は長方形に形成され、前記抜け止め体は該貫通口の形状に対して若干小さい長方形に形成され、該抜け止め体を該貫通孔に挿通させて略直角に回動させて前記プリント配線基板に取り付けるように構成したことを特徴とする。
【0012】
また、本願の請求項3に係る発明において、前記レールと前記当接部との間に、前記抜け止め体を該レールの延長線上にガイドするガイド部を設けたことを特徴とする。
【0013】
また、本願の請求項3に係る発明において、前記ガイド部は、入口部分にテーパ面を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本願の請求項1の発明に係る半田付け装置の反り防止機構によれば、前記反り防止体が前記プリント配線基板に前記貫通孔に摺動自在に挿通された取付け軸によって上下方向に変位可能に取り付けられているので、前記プリント配線基板の移動の前記上流側において前記レールに接近するに従って前記当接部が徐々に該レールに当接する。従って、前記プリント配線基板が若干変動して移動していても前記反り防止体が前記レールに自動的に係合、離脱する。そのため、前記プリント配線基板を移動させる搬送機構がコスト的に有利になる。また、前記プリント配線基板が、前記半田槽の上方の前記レール上において前記スペースを介して摺動するので、該プリント配線基板に反りを生じない。更に、前記レールに対向した前記反り防止体を除く個所に半田付けポイントを設けても、この半田付けポイントが前記レールに接触することなくしかも半田が確実に付着するので、部品実装の禁止領域が最小限となる。
【0015】
また、本願の請求項2の発明に係る半田付け装置の反り防止機構によれば、前記反り防止体が前記抜け止め部を前記貫通孔に挿通して回動させるだけで取り付けられるので、簡単な操作で確実に取付け作業を行うことができる。
【0016】
また、本願の請求項3の発明に係る半田付け装置の反り防止機構によれば、前記抜け止め部の移動が前記ガイド部により前記レールの延長線上にガイドされるので、該抜け止め部は前記プリント配線基板と共に安定して移動される。そのため、前記抜け止め部が不用意に回動して前記プリント配線基板から脱落してしまうことがない。
【0017】
また、本願の請求項4の発明に係る半田付け装置の反り防止機構によれば、前記反り防止体はガイド部のテーパ面によって円滑に前記レールに係合されるので、該反り防止体、該レールの取付け位置を精度よくする必要がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明を実施するための最良の形態としては、以下に説明する実施例である。
【実施例】
【0019】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施例を示す半田付け装置の反り防止機構の側面図、図2は図1におけるプリント配線基板の平面図、図3は図1における反り防止体を示す斜視図、図4本発明の実施例を示す半田付け装置の反り防止機構において抜け止め部を貫通孔に挿通する状態を示す平面図、図5は本発明の実施例を示す半田付け装置の反り防止機構において抜け止め部をプリント配線基板に取付けた状態を示す平面図である。
【0020】
半田付け装置における反り防止機構1は、半田噴出機構により半田を噴出する半田槽2の中央を横断して配されたレール3と、搬送機構(図示せず)によって半田槽2上を搬送されるプリント配線基板4に取り付けられた反り防止体5とから構成されている。
【0021】
レール5は、半田槽2とプリント配線基板4との間に、プリント配線基板4の移動方向に沿って配置されている。そして、レール3は、プリント配線基板4の移動経路における上流側でプリント配線基板4から離れ、半田槽2の上方においてプリント配線基板4の反りを阻止する位置まで連続的に接近するように湾曲して形成されている。
【0022】
図2で示すように、プリント配線基板4には、中央部分に長方形の貫通孔41が形成されている。この貫通孔41は、その長辺がプリント配線基板4の移動方向と平行になるように形成されている。貫通孔41に隣接した位置には、貫通孔41の位置を示すマーク42がシルク印刷によって施されている。プリント配線基板4の両端には搬送機構の基板固定用レール(図示せず)が当る領域43が設けられている。
【0023】
図3で詳しく示すように、反り防止体5は、上部に貫通孔41に摺動自在に挿入されプリント配線基板4の厚みに対して十分に長い取付け軸51と、取付け軸51の上端に取付けられた貫通孔41の形状よりも若干小さい長方形の形状の抜け止め部52と、取付け軸51の下方に配置されたレール5の上面に当接、離間自在な当接部53と、当接部53がレール3に当接した状態でプリント配線基板4の下方への反りを制限するスペーサ54と、当接部53の両側にレール5の幅よりも十分に広い間隔を置いて設けられガイド部55とから構成されている。ここで、当接部53とガイド部55で形成されるガイド溝の溝方向と抜け止め部52の長手方向とは直行する状態で配置されている。また、ガイド部55はその入口部分にテーパ面56が形成されレール5への係合をスムーズに行うようになっている。
【0024】
また、スペーサ54の上面57と下面に相当する当接部53の間の厚みAは、スペーサ54がレール3の最上部にあるとき、当接部53がレール3に当接した状態で上面57をプリント配線基板4の下面に当てる値に設定されている。
【0025】
更に、貫通孔41はプリント配線基板4が比較的に広い面積を有するので移動方向に沿って間隔を置いて3箇所に形成されている。
【0026】
次に、上述した本発明の実施例の構成による反り防止機構1の組み立てとその動作について説明する。
【0027】
反り防止機構1の組み立ては、図4及び図5で示すように、抜け止め52をプリント配線基板4の下方から貫通孔41に挿通させプリント配線基板4の上方に位置させることにより、取付け軸51を貫通孔41に挿通させる。そして、抜け止め部52は略直角だけ回動させる。この状態で抜け止め部52はプリント配線基板4の上面に当り、取付け軸51が貫通孔41から抜け出なくなる。従って、反り防止体5がプリント配線基板4に垂れ下がった状態で取付けられる。
【0028】
自動的に半田付けを行うことにより、プリント配線基板4が矢印X出示す方向に移動されると、反り防止体5はレール3との摩擦力によって左方に移動して貫通孔41の左端に取付け軸51が当って停止される。この状態で、ガイド溝の溝方向はレール3の長手方向に一致している。
【0029】
プリント配線基板4は半田槽2上を搬送手段によって移動され自動的に半田付けが行われる。この移動において、プリント配線基板4が移動方向の下流側から中央部分に至ると、
反り防止体5がレール3に接近し、ガイド部55によってガイド溝がレール3に係合し、当接部53がレールに当る。そして、反り防止体5はレール3上を摺動して下流側に至る。
この際、テーパ面56はガイド溝がレール3に滑らかに係合するように作用する。
【0030】
プリント配線基板4は、半田槽2の上方において位置が固定されたレール3とスペーサ54とにより反りによる下方への変位が制限される。半田付けが完了したプリント配線基板4は、冷却して軟化がなくなった後にレール3上から取り除き反り防止体5を取り外す。
この取り外しは抜け止め部52を回動させて貫通孔41に一致させ、貫通孔41を通すことによって行う。
【0031】
上述した本発明の実施例によれば、反り防止体5がプリント配線基板4に貫通孔41に摺動自在に挿通された取付け軸51によって上下方向に変位可能に取り付けられているので、プリント配線基板4の移動の上流側においてレール3に接近するに従って当接部53が序々にレール3に当接する。従って、プリント配線基板4は若干変動して移動していても反り防止体5がレール3に自動的に係合する。そして、プリント配線基板4は半田槽2の上方の固定されたレール3上においてスペーサ54を介して移動するので、プリント配線基板4に反りを生じない。
【0032】
また、プリント配線基板4は、レール3に対向した反り防止体5を除く個所がレール3に接触せず半田も付着されるので、この部分に半田付けポイントを設けても良好に半田付けを行うことができる。従って、部品実装の禁止領域が最小限となる。
【0033】
また、抜け止め52は貫通孔41に挿通させた状態で略直角に回動させるだけで反り防止体5をプリント配線基板4に取り付けることができるので、その取り扱いが簡単である。
【0034】
また、抜け止め体62の移動がガイド部55によってレール3の延長線上にガイドされるので、抜け止め体62はプリント配線基板4と共に安定して移動される。そのため、抜け止め体62が不用意に回動してプリント配線基板4から脱落してしまうことがない。
【0035】
尚また、上述した本発明の実施例にあっては、ガイド部55は反り防止体5に設けたが、レール3側に設けて反り防止体5にガイド部に係合する突起を設けるようにしてもよい
【0036】
尚、上述した本発明の実施例にあっては、ガイド部55を設けたがこれを省いてもよく。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施例を示す半田付け装置の反り防止機構の側面図である。
【図2】図1におけるプリント配線基板の平面図である。
【図3】図1における反り防止体を示す斜視図である。
【図4】本発明の実施例を示す半田付け装置の反り防止機構において抜け止め部を貫通孔に挿通する状態を示す平面図である。
【図5】本発明の実施例を示す半田付け装置の反り防止機構において抜け止め部をプチント配線基板に取付けた状態を示す平面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 反り防止機構
2 半田槽
3 レール
4 プリント配線基板
5 反り防止体
41 貫通孔
42 マーク
43 領域
51 取付け軸
52 抜け止め部
53 当接部
54 スペーサ
55 ガイド部
56 テーパ面
57 上面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
半田槽上を移動するプリント配線基板に対して半田付けを行う半田付け装置の反り防止機構において、
前記半田槽と前記プリント配線基板との間に、該プリント配線基板の移動方向に沿って該移動経路における上流側で該プリント配線基板から離れ、該半田槽の上方において該プリント配線基板の反りを阻止する位置まで連続的に接近する位置をとって配されたレールと、
前記プリント配線基板の前記レールに対向する位置に形成された貫通孔と、
前記貫通孔に摺動自在に挿入された取付け軸と、該軸の上端に取付けられた抜け止め部と該軸の下端に取り付けられて前記レールへの当接、離脱自在な当接部と、該当接部が該レールに当接した状態で前記プリント配線基板の下方への反りを制限するスペーサとをから形成された反り防止体とを備えていることを特徴とする半田付け装置の反り防止機構。
【請求項2】
前記貫通孔は長方形に形成され、前記抜け止め部は該貫通口の形状に対して若干小さい長方形に形成され、該抜け止め部を該貫通孔に挿通させて略直角に回動させて前記プリント配線基板に取り付けるように構成したことを特徴とする請求項1に記載の半田付け装置の反り防止機構。
【請求項3】
前記レールと前記当接部との間に、前記抜け止め体を該レールの延長線上にガイドするガイド部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の半田付け装置の反り防止機構。
【請求項4】
前記ガイド部は、入口部分にテーパ面を有することを特徴とする請求項3に記載の半田付け装置の反り防止機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−27069(P2009−27069A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−190639(P2007−190639)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】