説明

半田溶融検出装置及び半田溶融検出方法

【課題】半田の溶融状態を適切に判別し、半田付け作業を最良の状態で行う。
【解決手段】基板8または半田ごて7aを載置した可動部1aを有する移送部1を移送させ、基板と半田ごてを接触させて半田付けを行う際の半田溶融検出方法であって、基板と半田ごてが接触して移送部を停止した直後からの可動部に加わる接触力の変化量を推定する変化量推定ステップと、変化量推定ステップにおいて推定した変化量に基づいて、半田の溶融状態を検出する半田溶融検出ステップとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、基板または半田ごてを載置した可動部を有するアクチュエータを移送させて、基板と半田ごてを接触させることにより半田付けを行う際の半田の溶融状態を検出する半田溶融検出装置及び半田溶融検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、産業用ロボットにおいても知能化の研究が進み、精密組立てや嵌め合い作業など、従来人手に頼らざるを得なかった作業もロボットで行えるようになってきた。これらを実現する要素技術としてはビジョンやアクチュエータの柔軟制御、力センサ(力覚)を用いた制御技術がある。
【0003】
一例として、基板組立て作業の自動化として自動半田付け装置などがあるが、半田付け作業を最良の状態で行うためには、半田の溶融状態を観察し、半田の温度、供給量などを最適に制御する必要がある。
【0004】
従来では、半田の熱的変化をカメラで撮影したり(例えば、特許文献1,2参照)、半田面からの反射光変化を捉えて半田付けプロセスを制御する方法などが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−307601号公報
【特許文献2】特開2005−085708号公報
【特許文献3】特開平07−007251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1,2に開示される半田の熱的変化をカメラで撮影し、半田の溶融状態をモニターする方法では、半田付け作業中は半田ごてで半田溶融部が隠れて見えにくいため、正確な温度が測れず、半田の溶融状態を正しく判別することができないという課題がある。
【0007】
また、特許文献3に開示される半田面からの反射光変化を捉える方法では、半田表面の反射率の影響を受けやすく半田の溶融開始の状態を正しく判別することができないという課題がある。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、半田の溶融状態を適切に判別することができ、半田付け作業を最良の状態で行うことができる半田溶融検出装置及び半田溶融検出方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る半田溶融検出方法は、基板または半田ごてを載置した可動部を有する移送部を移送させ、基板と半田ごてを接触させて半田付けを行う際の半田溶融検出方法であって、基板と半田ごてが接触して移送部を停止した直後からの可動部に加わる接触力の変化量を推定する変化量推定ステップと、変化量推定ステップにおいて推定した変化量に基づいて、半田の溶融状態を検出する半田溶融検出ステップとを有するものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、上記のように構成したので、基板と半田ごてが接触することにより生じる接触力の変化量を推定して半田の溶融状態を検出することにより、半田の溶融状態を適切に判別することができ、半田付け作業を最良の状態で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施の形態1に係る半田溶融検出装置の構成を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1における外力推定部の構成を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1における半田溶融検出装置による半田溶融検出処理を示すフローチャートである。
【図4】この発明の実施の形態1におけるアクチュエータ可動部に加わる接触力の変化を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る半田溶融検出装置の構成を示す図である。
半田溶融検出装置は、アクチュエータ可動部1aに載置された基板8が半田ごて7aに接触することによりアクチュエータ可動部1aに加わる接触力を推定して、半田の溶融状態を判定するものである。この半田溶融検出装置は、図1に示すように、アクチュエータ(移送部)1、位置センサ2、第1比較器3、位相補償回路4、定電流ドライバ5、外力推定部6、半田固定部7及び溶融判定部9から構成される。
なお、アクチュエータ可動部1aに加えられる外力には、基板8が半田ごて7aと接触することにより生じる接触力の他に、アクチュエータ可動部1aに加わる重力加速度により生じる力及びアクチュエータ1の移動加速度により生じる力が含まれている。
【0013】
アクチュエータ1は、基板8を載置するためのアクチュエータ可動部1aを有し、図4に示すスカラーロボット(移送部)10により上下に移送されることにより、基板8を半田固定部7の半田ごて7aに接触させて半田付けを行うものである。また、基板8が半田ごて7aに接触した際にアクチュエータ可動部1aも接触力を受け、アクチュエータ1は、入力電圧に比例した電流を発生する定電流ドライバ5からの電流がボイスコイルモータに流れることにより駆動力を発生してアクチュエータ可動部1aを上下方向に移送する。なお、アクチュエータ可動部1aは半田付け作業に最適なコンプライアンス値に設定されるように位置センサ2の出力が目標位置と一致するように位置決め制御が行われた状態で移送される。
また、アクチュエータ可動部1aに載置された基板8には予め予備半田8aが付けられている。
【0014】
位置センサ2は、アクチュエータ可動部1aの位置を検出するものである。この位置センサ2により検出されたアクチュエータ可動部1aの位置を示す位置信号は、第1比較器3及び外力推定部6に供給される。
【0015】
第1比較器3は、予め設定された目標位置から、位置センサ2により検出されたアクチュエータ可動部1aの位置を差し引くことにより差分値を算出するものである。この第1比較器3により算出された差分値を示す差分信号は位相補償回路4に供給される。
【0016】
位相補償回路4は、第1比較器3により算出された差分値に基づいて、定電流ドライバ5の電流値を制御するものである。この位相補償回路4による制御信号を定電流ドライバ5を通してアクチュエータ1に供給することにより位置センサ2出力が目標位置と一致するように位置決め制御が行われる。
【0017】
外力推定部6は、位置センサ2により検出されたアクチュエータ可動部1aの位置及び定電流ドライバ5に入力する電圧に基づいて、アクチュエータ可動部1aに加わる接触力を推定するものである。
【0018】
また、外力推定部6は、基板8が半田ごて7aと接触した後にアクチュエータ1全体の移送を停止させたことを示す第2のモード信号を受信した後は、基板8が半田ごて7aに接触してアクチュエータ1全体の移送を停止した直後の外力を基準値とした接触力の変化量を推定する。この外力推定部6により推定された接触力の変化量を示す信号は溶融判定部9に供給される。
【0019】
半田固定部7は、アクチュエータ可動部1aに載置された基板8に対して半田付けを行うものであり、アクチュエータ1の上部に固定して設けられ、半田ごて7a及び半田を供給する半田供給部7bを有している。この半田ごて7aの先端部に、アクチュエータ可動部1aに載置された基板8が接触することにより、基板8の予備半田8aを溶融させて、半田供給部7bから半田を供給して半田付けを行う。
【0020】
溶融判定部9は、外力推定部6により推定された接触力の変化量と、予め設定した溶融判定閾値とを比較し、接触力の変化量が溶融判定閾値以上であった場合に、半田が溶融状態であると判断し、半田固定部7の半田ごて7aの温度または半田供給部7bの供給等の制御を行うものである。
【0021】
次に、外力推定部6の構成について説明する。図2はこの発明の実施の形態1における外力推定部6の構成を示す図である。
外力推定部6は、図2に示すように、第1〜3演算部11〜13、第1,2LPF(Low Pass Filter)14,15、サンプルホールド回路16及び第2〜4比較器17〜19から構成される。
なお、外力推定部6は、ノイズの影響を受け難くするために、従来の外乱オブザーバのように純粋微分系を含まない形で構成されるものであるが、実施の形態1における外力推定部6では、原理説明のため簡略化して説明を行う。
【0022】
第1演算部11は、定電流ドライバ5に入力する電圧eに、定電流ドライバ5の入力電圧と出力電流の比であるKiと、トルク定数Ktを乗算するものである。この第1演算部11により算出された値を示す信号は第1LPF14及び第3比較器18に供給される。
この第1演算部11により定電流ドライバ5から供給される電流によりアクチュエータ1が発生する駆動力が推定される。
【0023】
第2演算部12は、位置センサ2により検出されたアクチュエータ可動部1aの位置rにラプラス演算子sを乗算するものであり、出力はアクチュエータ可動部1aの速度となる。この第2演算部12により算出された値を示す信号は第3演算部13に供給される。
第3演算部13は、第2演算部12により算出されたアクチュエータ可動部1aの速度の値に質量Mとラプラス演算子sを乗算するものであり、その出力はアクチュエータ1が発生する駆動力から、アクチュエータ可動部1aに加わる接触力とアクチュエータ可動部1aに加わる重力加速度および移動加速度により受ける力の加算値を差し引いた推定値となる。この第3演算部13により算出された値を示す信号は第2LPF15及び第3比較器18に供給される。
【0024】
第1LPF14は、第1演算部11から供給された信号から高域ノイズを除去するための低域ゲインが0dBのフィルタである。この第1LPF14により高域ノイズが除去された信号は第2比較器17に供給される。
第2LPF15は、第3演算部13から供給された信号から高域ノイズを除去するための低域ゲインが0dBのフィルタである。この第2LPF15により高域ノイズが除去された信号は第2比較器17に供給される。
【0025】
第2比較器17は、第1LPF14を介して第1演算部11から供給された信号により示される値から、第2LPF15を介して第3演算部13から供給された信号により示される値を差し引くものである。この第2比較器17により算出された値を示す信号はサンプルホールド回路16に供給される。
【0026】
ここで第3演算部13の出力は前記の通りアクチュエータ1が電流により発生する駆動力から、アクチュエータ可動部1aに加わる接触力とアクチュエータ可動部1aに加わる重力加速度及びアクチュエータ可動部1aの移動加速度により受ける力の加算値を差し引いた推定値であり、また第1演算部11の出力は電流によりアクチュエータ1が発生する駆動力の推定値である。そのため、第2比較器17において第1演算部11の出力に第1LPF14を介した出力から、第3演算部13の出力に第2LPF15を介した出力を差し引くことにより、アクチュエータ可動部1aに加わる接触力とアクチュエータ可動部1aに加わる重力加速度および移動加速度により受ける力の加算値がノイズが除去された状態で推定される。
【0027】
サンプルホールド回路16は、位置センサの出力と目標位置が等しくなるように位置決め制御が行われていて、基板8が半田ごて7aに接触していない状態でアクチュエータ可動部1aが停止しており、かつアクチュエータ1全体も移送されていないことを示す第1のモード信号を受信した場合に、第2比較器17により算出された値を記憶し保持するものである。このサンプルホールド回路16に保持された値を示す信号は第4比較器19に供給される。
【0028】
前記の通り第2比較器17ではアクチュエータ可動部1aに加わる接触力とアクチュエータ可動部1aに加わる重力加速度および移動加速度により受ける力の加算値がノイズが除去された状態で推定されるが、アクチュエータ可動部1aに加わる接触力が零であり、また、アクチュエータ可動部1aが静止した状態では移動加速度により受ける力も零であるため、このサンプルホールド回路16によりアクチュエータ可動部1aに加わる重力加速度による力が保持される。
【0029】
また、サンプルホールド回路16は、基板8が半田ごて7aに接触した状態でアクチュエータ1全体の移送が停止したことを示す第2のモード信号を受信した場合に、第2比較器17により算出された値を記憶し保持する。このサンプルホールド回路16に保持された値を示す信号は第4比較器19に供給される。
これによりサンプルホールド回路16では基板8が半田ごて7aに接触してアクチュエータ1全体の移送が停止した直後にアクチュエータ可動部1aに加わる外力が保持される。
【0030】
第3比較器18は、第1演算部11により算出された値から、第3演算部13により算出された値を差し引くものである。この第3比較器18により算出された値を示す信号は第4比較器19に供給される。
【0031】
第4比較器19は、第3比較器18により算出された値からサンプルホールド回路16により保持された値を差し引くものである。
従って、第4比較器19によりアクチュエータ可動部1aに加わる接触力とアクチュエータ可動部1aに加わる移動加速度により受ける力の加算値が推定されるが、サンプルホールド回路16が第1のモード信号を受信した後では、アクチュエータ可動部1aが停止もしくは一定速度で移動しているため接触力が推定される。
また、サンプルホールド回路16が第2のモード信号を受信した後では、第4比較器19によりアクチュエータ可動部1aに加わる接触力の変化量が推定される。
【0032】
なお、外力推定部6の各演算部11〜13に用いられるパラメータである、電圧電流変換係数Ki、トルク定数Kt、アクチュエータ可動部1aの質量Mは、アクチュエータ1の物理パラメータと同一の値に設定される。
【0033】
次に、上記のように構成される半田溶融検出装置による半田溶融検出処理について説明する。図3はこの発明の実施の形態1における半田溶融検出装置による半田溶融検出処理を示すフローチャートである。
まず、アクチュエータ可動部1aに載置された基板8が半田ごて7aに接触するまでの外力推定部6による接触力の推定動作について説明する。
アクチュエータ可動部1aに加えられる外力には、基板8が半田ごて7aと接触することにより生じる接触力の他に、アクチュエータ可動部1aに加わる重力加速度により生じる力及びアクチュエータ1の移動加速度により生じる力が含まれている。
【0034】
そのため、図3に示すように、まず、基板8が半田ごて7aに接触していない状態でアクチュエータ可動部1aが停止しており、かつアクチュエータ1全体も移送されていない状態でアクチュエータ可動部1aに加わる外力を推定することで、アクチュエータ可動部1aに加わる重力加速度により生じる力を推定する(ステップST31)。
【0035】
まず、第1演算部11は、定電流ドライバ5に入力する電圧eに対して演算を行い、アクチュエータ1が発生する駆動力を推定する。この第1演算部11により推定された値を示す信号は第1LPF14を介して第2比較器17に供給される。
ここで、基板8が半田ごて7aに接触していない状態でアクチュエータ可動部1aが停止している場合には、アクチュエータ可動部1aには重力加速度により生じる力のみが加わっているため、駆動力はその反力となる。
【0036】
一方、第2演算部12及び第3演算部13は、位置センサ2により検出されたアクチュエータ可動部1aの位置rに対して演算を行い、アクチュエータ1が発生する駆動力からアクチュエータ可動部1aに加わる外力を差し引いた値を推定する。ここで、基板8が半田ごて7aに接触する前にアクチュエータ可動部1aを停止し、かつアクチュエータ1全体も移送されていない状態において第2演算部12及び第3演算部13を介して算出された値は、接触力及び移動加速度により生じる力の影響はないため、駆動力から重力加速度により生じる力のみを差し引いた値となる。この第2演算部12及び第3演算部13により推定された値を示す信号は第2LPF15を介して第2比較器17に供給される。
【0037】
次いで、第2比較器17は、第1LPF14を介して第1演算部11から供給された信号により示される値から、第2LPF15を介して第3演算部13から供給された信号により示される値を差し引くことにより、アクチュエータ可動部1aに加わる重力加速度により生じる力を推定する。この第2比較器17により推定された重力加速度により生じる力はサンプルホールド回路16に記憶され保持される。
このように、基板8が半田ごて7aに接触していない状態でアクチュエータ可動部1aが停止しており、かつアクチュエータ1全体も移送されていない状態において、外力推定部6によりアクチュエータ可動部1aに加わる外力を推定することで、アクチュエータ可動部1aに加わる重力加速度により生じる力を推定することができる。
【0038】
次いで、アクチュエータ可動部1aに移動加速度により生じる力が加わらないようにアクチュエータ1全体を緩やかに一定速度で移送させて外力を推定することによってアクチュエータ可動部1aに加わる接触力を推定する(ステップST32)。
まず、第1演算部11は、定電流ドライバ5に入力する電圧eに対して演算を行い、アクチュエータ1が発生する駆動力を推定する。この第1演算部11により推定された値を示す信号は第3比較器18に供給される。
【0039】
一方、第2演算部12及び第3演算部13は、位置センサ2により検出されたアクチュエータ可動部1aの位置rに対して演算を行い、アクチュエータ1が発生する駆動力からアクチュエータ可動部1aに加わる外力を差し引いた値を推定する。ここで、アクチュエータ可動部1aを緩やかに一定速度で移送させている状態において第2演算部12及び第3演算部13を介して算出された値は、移動加速度により生じる力の影響はないため、駆動力から重力加速度により生じる力及び接触力を差し引いた値となる。この第2演算部12及び第3演算部13により推定された値を示す信号は第3比較器18に供給される。
【0040】
次いで、第3比較器18は、第1演算部11により算出された値から、第3演算部13により算出された値を差し引くことにより、アクチュエータ可動部1aに加わる重力加速度により生じる力と接触力とを加算した値を推定する。この第3比較器18により推定された値を示す信号は第4比較器19に供給される。
【0041】
次いで、第4比較器19は、第3比較器18により算出された値から、サンプルホールド回路16に保持された値を差し引くことにより、アクチュエータ可動部1aに加わる接触力を推定する。
このように、基板8が半田ごて7aに接触していない状態でアクチュエータ可動部1aが停止しており、かつアクチュエータ1全体も移送されていない状態において、まずアクチュエータ可動部1aに加わる重力加速度により生じる力を推定した後に、アクチュエータ1全体を緩やかに一定速度で移送させて推定した外力から重力加速度により生じる力を差し引くことによって、アクチュエータ可動部1aに加わる接触力を推定することができる。
【0042】
次に、アクチュエータ可動部1aに載置された基板8が半田ごて7aに接触した後の、外力推定部6による接触力の変化量の推定動作について説明する。
図4はこの発明の実施の形態1におけるアクチュエータ可動部1aに加わる接触力の変化を示すタイムチャートである。
アクチュエータ可動部1aに移動加速度により生じる力が加わらないようにアクチュエータ1全体をスカラーロボット10により緩やかに一定速度で上方向に移送させている状態において、基板8が半田ごて7aに接触する前では、図4(a)に示すように、アクチュエータ可動部1aに加わる接触力は零である。
【0043】
その後、基板8の予備半田8aが半田ごて7aに接触すると、図4(b)に示すように、アクチュエータ可動部1aに接触力が加わる。次いで、さらにスカラーロボット10によりアクチュエータ1全体を上方向に移送すると、アクチュエータ可動部1aは半田ごて7aより移動を制限されているためアクチュエータ1に対するアクチュエータ可動部1aの相対位置が変化し、設定されているコンプライアンス値に応じて接触力は増大する。次いで、アクチュエータ可動部1aに加えられる接触力が半田付け作業に最適な値になった状態でアクチュエータ1全体の移送を停止させると、図4(c)に示すように、接触力は一定になる。
【0044】
その後、アクチュエータ1全体を停止させて基板8の予備半田8aを半田ごて7aに接触させた状態のままに維持すると、基板8の予備半田8aが溶融し始める。これにより、図4(d)に示すように、アクチュエータ可動部1aは予備半田8aが溶融した分だけ上方向に移動し接触力が減少する。つまり、基板8の予備半田8aの溶融状態に応じた接触力の変化が生じることになる。そこで、基板8が半田ごて7aに接触してアクチュエータ1全体を停止させた直後からのアクチュエータ可動部1aに加わる接触力の変化量を外力推定部6によって推定することによって、半田の溶融状態を検出する。
【0045】
まず、アクチュエータ可動部1aに移動加速度により生じる力が加わらないようにアクチュエータ1全体を緩やかに一定速度で移送させ基板8の予備半田8aを半田ごて7aに接触させる。
そして、最適な接触力になった状態でアクチュエータ1全体を停止させ、その直後のアクチュエータ可動部1aに加わる外力を推定することにより基準となる外力を推定する(ステップST33)。
【0046】
まず、第1演算部11は、定電流ドライバ5に入力する電圧eに対して演算を行い、アクチュエータ1が発生する駆動力を推定する。この第1演算部11により推定された値を示す信号は第1LPF14を介して第2比較器17に供給される。
【0047】
一方、第2演算部12及び第3演算部13は、位置センサ2により検出されたアクチュエータ可動部1aの位置rに対して演算を行い、アクチュエータ1が発生する駆動力からアクチュエータ可動部1aに加わる外力(接触力と重力加速度による力との加算値)を差し引いた値を推定する。この第2演算部12及び第3演算部13により推定された値を示す信号は第2LPF15を介して第2比較器17に供給される。
【0048】
次いで、第2比較器17は、第1LPF14を介して第1演算部11から供給された信号により示される値から、第2LPF15を介して第3演算部13から供給された信号により示される値を差し引くことにより、アクチュエータ可動部1aに加わる外力(接触力と重力加速度による力との加算値)を推定する。この第2比較器17により推定された外力はサンプルホールド回路16に記憶され保持される。
このようにして、基板8が半田ごて7aに接触してアクチュエータ1全体の移送を停止した直後のアクチュエータ可動部1aに加わる外力を推定する。
【0049】
次いで、アクチュエータ1全体の移送を停止させた状態のまま、アクチュエータ可動部1aに加わる接触力の変化量を推定する(ステップST34)。
まず、第1演算部11は、定電流ドライバ5に入力する電圧eに対して演算を行い、アクチュエータ1が発生する駆動力を推定する。この第1演算部11により推定された値を示す信号は第3比較器18に供給される。
【0050】
一方、第2演算部12及び第3演算部13は、位置センサ2により検出されたアクチュエータ可動部1aの位置rに対して演算を行い、アクチュエータ1の駆動力からアクチュエータ可動部1aに加わる外力(接触力と重力加速度による力との加算値)を差し引いた値を推定する。この第2演算部12及び第3演算部13により推定された値を示す信号は第3比較器18に供給される。
【0051】
次いで、第3比較器18は、第1演算部11により算出された値から、第3演算部13により算出された値を差し引くことにより、アクチュエータ可動部1aに加わる外力(接触力と重力加速度による力との加算値)を推定する。この第3比較器18により推定された値を示す信号は第4比較器19に供給される。
【0052】
次いで、第4比較器19は、第3比較器18により算出された値から、サンプルホールド回路16により保持された値を差し引くことにより、現在のアクチュエータ可動部1aに加わる接触力と、基板8が半田ごて7aに接触してアクチュエータ1全体を停止した直後の接触力との変化量を推定する。この第4比較器19により推定された接触力の変化量を示す変化量信号は溶融判定部9に供給される。
【0053】
次いで、溶融判定部9では、第4比較器19により推定された接触力の変化量と、予め設定されている溶融判定閾値とを比較して、半田の溶融状態を検出する(ステップST35)。
このステップST35において、溶融判定部9は、この接触力の変化量が溶融判定閾値以上であると判定した場合には、半田が溶融状態であると判定して、半田ごて7aの温度または半田供給部7bによる半田供給量等の制御を行う。
【0054】
なお、このステップST33,34はこの発明の変化量推定ステップに対応し、ステップST35はこの発明の溶融状態検出ステップに対応する。
【0055】
以上により、この発明の実施の形態1によれば、アクチュエータ可動部1aに載置された基板8の予備半田8aを半田ごて7aに接触させて半田付け作業を行う際に、基板8の予備半田8aを半田ごて7aに接触させアクチュエータ1全体を停止させた直後からのアクチュエータ可動部1aに加わる接触力の変化量を推定して半田の溶融状態を検出するように構成したので、半田の溶融状態を適切に判別することができ、半田付け作業を最良の状態で行うことができる。
【0056】
また、従来のカメラにより半田の溶融状態を検出する方法とは異なり、半田付け作業中においても半田の溶融状態を容易に検出することができるため、この半田付け作業中における溶融不良を検出して即座に修正を行うことができる。
【0057】
また、従来の方法では、半田ごてを一定時間基板に接触させておけば良好に半田が溶融するという前提で、接触時間に余裕を持たせて作業を行う方法を用いていたが、この方法では、条件により溶融時間も異なるため、品質や作業時間がばらつく可能性があり、正確に半田の溶融状態を検出することができない。しかしながら、この実施の形態1に係る半田溶融検出装置では、条件に関わらず半田の溶融状態を検出することができるため、品質や作業時間にばらつきが生じることはなくなる。
【0058】
なお、この発明の実施の形態1に係る半田溶融検出装置では、アクチュエータ可動部1aに基板8を載置して、基板8を移送させて、固定した半田ごて7aに接触させて半田付けを行うように構成したが、アクチュエータ可動部1aに半田ごて7aを設置して、この半田ごて7aを上方向に移送させて、固定した基板8に接触させて半田付けを行うように構成してもよい。
また、半田ごて7aがスカラーロボット10により上下に移送されアクチュエータ1が固定部であってもよい。
【0059】
また、この発明の実施の形態1に係る半田溶融検出方法では、外力推定部6はアクチュエータ可動部1aの位置及び定電流ドライバ5に入力する電圧に基いてアクチュエータ可動部1aに加えられている接触力の変化量を推定するように構成したが、これに限るものではなく、例えば、アクチュエータ可動部1aに接触力を検出する力センサを取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1 アクチュエータ(移送部)
1a アクチュエータ可動部
2 位置センサ
3,17〜19 第1〜4比較器
4 位相補償回路
5 定電流ドライバ
6 外力推定部
7 半田固定部
7a 半田ごて
7b 半田供給部
9 溶融判定部
10 スカラーロボット(移送部)
11〜13 第1〜3演算部
14,15 第1,2LPF
16 サンプルホールド回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板または半田ごてを載置した可動部を有し、移送して基板と半田ごてを接触させて半田付けを行う移送部と、
前記基板と前記半田ごてが接触して前記移送部を停止した直後からの前記可動部に加わる接触力の変化量を推定する外力推定部と、
前記外力推定部により推定された変化量に基づいて、半田の溶融状態を検出する制御部と
を備える半田溶融検出装置。
【請求項2】
基板または半田ごてを載置した可動部を有する移送部を移送させ、基板と半田ごてを接触させて半田付けを行う際の半田溶融検出方法であって、
前記基板と前記半田ごてが接触して前記移送部を停止した直後からの前記可動部に加わる接触力の変化量を推定する変化量推定ステップと、
前記変化量推定ステップにおいて推定した変化量に基づいて、半田の溶融状態を検出する半田溶融検出ステップと
を有する半田溶融検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−142161(P2011−142161A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1149(P2010−1149)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年11月27日 インターネットアドレス「http://jp.azbil.com/library/review.html」に発表
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】