説明

卓上切断機

【課題】電動モータにより回転する回転刃具を備えた切断機本体において、従来電動モータの回転数制御を行うコントローラがモータハウジングの先端部に配置されていたので、モータハウジングの機長が長くなり、切断機本体のコンパクト化を図ることが困難であり、切断部位の視認性が損なわれる問題があった。本発明では、電動モータの小型化を図って切断機本体を一層コンパクト化しやすくなるようにする。
【解決手段】コントローラ72は、電動モータ70のモータハウジング71の後面側の側部に設けたコントローラケース部73に収容する。これにより電動モータ70の機軸J方向のコンパクト化を図るとともに、使用者から見えにくくすることでその見栄えを向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば円形の砥石あるいは鋸刃等の回転刃具を備えた切断機本体を下動させて切断材を切断加工等する形態の卓上切断機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の卓上切断機は、上面に切断材を載置するためのテーブルと、このテーブルの上方に支持されて上下に移動操作する切断機本体を備えるもので、回転刃具を回転させつつ切断機本体を下動させて、テーブル上に固定した切断材に切り込むことにより切断加工が行われる。
切断機本体は、回転刃具を回転させる駆動源としての電動モータを備えている。この電動モータの回転数は、コントローラによって制御される。コントローラに組み込まれた制御回路によって電動モータの回転数が負荷に応じて適切に制御される。また、このコントローラによって電動モータの回転数が制御されることにより、いわゆるソフトスタート機能を備えたものが提供されている。
従来、このコントローラは、例えば下記の特許文献に開示されているように、モータハウジングの先端部(コンミテータ側端部)に内装されていることが一般的であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3079937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようにコントローラがモータハウジングの先端部に内装されているため、モータハウジングがモータ軸方向に長くなって小型化しづらく、結果的に切断機本体の小型化を図ることが困難であった。一般に、電動モータは回転刃具に対して使用者から見て右側若しくは左側に突き出す状態に配置される。また、使用者は、切断作業時に右側若しくは左側から切断部位を覗き込んでスミ線合わせを行う。このことから、モータハウジングの先端部にコントローラが内装されて電動モータが例えば右側方へ大きく突き出されていると、使用者が切断部位を覗き込む際の邪魔になりやすく、切断部位の視認性が損なわれる問題があった。また、特に切断機本体の小型化を図る場合に、電動モータが側方へ大きく突き出す状態のままでは見栄えも損なわれる。
本発明は、係る従来の問題を解消するためになされたもので、電動モータの回転数を制御するコントローラの配置部位を工夫して当該電動モータを小型化することによって、この種の卓上切断機における切断部位の視認性を一層高め、また切断機本体の小型化を図る上で見栄えが損なわれることがないようすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、本発明は、特許請求の範囲の各請求項に記載した構成の卓上切断機とした。
請求項1記載の卓上切断機によれば、コントローラが、回転刃具に対して右側又は左側に突き出す状態に取り付けられた電動モータの側部であって電動モータの先端部から先に突き出さない位置に配置されている。このため、電動モータの側方への突き出し量についてコンパクト化を図りやすくなり、これによりスミ線合わせ時等における切断部位の視認性を従来よりも高めることができる。
また、コントローラは電動モータの側部であって使用者から見えない後部側に配置されていることから、当該切断機の見栄えをよくすることができる。
さらに、コントローラが電動モータの側部に配置されてその側方への突き出し量をコンパクト化することができることから、当該電動モータの先端部のテーブル側に対する干渉を回避しつつ切断機本体を右側若しくは左側へ傾斜させてより大きな傾斜角度で傾斜切り加工をできるようになる。また、電動モータの側方への突き出し量を小さくできるので、切断機本体を回転刃具に対して電動モータが突き出し側とは反対側へ傾斜させて場合においても、切断部位の視認性を高めることができる。
さらに、切断機本体とテーブルを使用者から見て左側へ回転させて斜め切りを行う場合に、刃具に対して右側に配置された電動モータが使用者側に接近しても、コントローラが電動工具の側部に配置されて当該電動モータの側方への突き出し量がコンパクト化されていることにより、当該電動モータが作業の邪魔になりにくく、かつ切断部位等の視認性が高められる。
請求項1の記載において、「電動モータの側部であって使用者から見て後面側」とは、電動モータのモータ軸線に沿ったモータハウジングの側部であって使用者から見て手前側の側部とは反対側の側部(使用者から見えない側の側部)を言うものとする。
請求項2記載の卓上切断機によれば、コントローラがモータハウジングの後ろ側の側部であって刃具寄り(電動モータの先端部から遠ざかる方向)に配置されていることから、当該電動モータをテーブルへ接近させる方向に切断機本体を傾斜させて傾斜切りを行う場合の当該切断機本体の傾斜角度をより大きく設定することができる。
請求項3記載の卓上切断機によれば、コントローラケースの蓋とバッフルプレートとを一つの部品として取り扱うことができるので、当該切断機本体の組み立て性をよくすることができるとともに、そのメンテナンス性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の実施形態に係る卓上切断機の全体の側面図である。本図において、使用者は卓上切断機の右側に位置する。
【図2】図1の(II)矢視図であって、卓上切断機の全体の平面図である。
【図3】切断機本体を図1中矢印(III)方向から見た後面図である。本図では、ブレードケースの後部が縦断面で示されている。
【図4】ハンドル部とモータハウジングの斜視図である。本図は、コントローラケースの蓋とバッフルプレートを取り外した状態で示されている。
【図5】ハンドル部とモータハウジングの斜視図である。本図は、コントローラケースの蓋とバッフルプレートを取り付けた状態で示されている。
【図6】コントローラケースの蓋を一体に備えたバッフルプレートの斜視図である。
【図7】電動モータ単体のモータ軸線に沿った横断面図である。
【図8】切断機本体を図2中矢印(VIII)方向から見た右側面図である。本図において、使用者は切断機本体の左側に位置する。
【図9】図8中(IX)-(IX)線断面図であって、切断機本体の縦断面図である。
【図10】切断機本体の内部を右側から見た図である。本図は、可動カバーが閉じられた状態で示されている。
【図11】切断機本体を図9中矢印(XI)方向であって下側から見た図である。本図は、可動カバーが閉じられた状態で示されている。
【図12】切断機本体の内部を右側から見た図である。
【図13】切断機本体を真下から見た図である。本図では本体ケースが横断面で示されている。
【図14】本体ケースの後部であって集塵口付近を真下から見た図である。
【図15】図14の(XV)-(XV)線矢視図である。本図は、本体ケースの後部の内部を集塵口に向かって前側から見た簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
次に、本発明の実施形態を図1〜図15に基づいて説明する。図1及び図2は、実施形態に係る卓上切断機1の全体を示している。図示するようにこの卓上切断機1の前側に使用者Hが位置する。以下説明する部材あるいは構成等の前後方向、左右方向及び上下方向については、使用者Hを基準として用いる。各方向については図でも示されている。
この卓上切断機1は、上面に切断材Wを固定するためのテーブル2と、このテーブル2を水平方向に一定の角度範囲で回転可能に支持するベース3と、テーブル2の後部(図1において左端部)に設けた本体支持部4と、この本体支持部4によってテーブル2の上方に支持された切断機本体10を備えている。
テーブル2の上面には、切断材Wをテーブル面方向に位置決めするための位置決めフェンス5が配置されている。この位置決めフェンス5は、ベース3の左右側部に設けた補助テーブル部3a,3a間に跨って、テーブル上面とは僅かな隙間をおいた状態に支持されており、これによりテーブル2の水平回転が許容されるようになっている。位置決めフェンス5により位置決めされた切断材Wは、図示省略したクランプ装置によってテーブル2の上面に固定される。
本体支持部4は、切断機本体10をテーブル2に対して水平方向にスライド可能に支持する上下2段のスライド機構7,6と、切断機本体10を使用者から見て左右(図1において紙面に直交する方向)に傾斜させる傾斜支持機構20を備えている。下段側のスライド機構6を介して傾斜支持機構20がテーブル2の後部に前後方向にスライド可能に支持されている。下段側のスライド機構6は、水平方向に一定の間隔をおいて平行に配置された2本のスライドバー6a,6aを備えている。
傾斜支持機構20の本体支持アーム21の上部に上段側のスライド機構7を介して切断機本体10が支持されている。上段側のスライド機構7は、上下に一定の間隔をおいて平行に配置された2本のスライドバー7a,7aを備えている。2本のスライドバー7a,7aの前端はホルダ7bで相互に結合されている。上側のスライド機構7を構成する本体支持スライダ8に本体傾動軸9を介して切断機本体10が上下に傾動可能に支持されている。本体傾動軸9には、捩りばね9a(図11〜図13参照)が装着されている。この捩りばね9aによって切断機本体10は上方へ傾動する方向に付勢されている。
上下2段のスライド機構7,6を介して切断機本体10がテーブル面方向に沿って前後方向(図1及び図2において左右方向)にスライド可能に支持されている。両スライド機構7,6による切断機本体10のスライド方向が切断方向となる。通常、切断機本体10を手前側から後ろ側(図1及び図2において右側から左側)に向けてスライドさせることによって切断材Wの切断がなされる。
また、傾斜支持機構20を介して切断機本体10を右側若しくは左側に一定角度傾斜させていわゆる傾斜切りを行うことができる。
本実施形態は、切断機本体10の構成について従来にない特徴を有するもので、卓上切断機1についてのその他の構成については特に変更を要しない。
【0008】
切断機本体10は、本体ケース11を備えている。本体ケース11の後部が本体傾動軸9を介して上側スライド機構7の本体支持スライダ8に支持されている。本体ケース11によって円形の回転刃具12の上側ほぼ半周の範囲が覆われている。回転刃具12は、本体ケース11に表示した白抜きの矢印で示すように図1において時計回り方向に回転する。回転刃具12はスピンドル13に取り付けられている。スピンドル13は本体ケース11に回転支持されており、本体ケース11の背面側(使用者Hから見て右側部、図1では見えない)に取り付けた電動モータ70と減速歯車列を経て回転する。スピンドル13の回転軸線が、回転刃具12の回転軸線となる。
また、本体ケース11の背面側には、使用者が把持するハンドル部14が設けられている。使用者がこのハンドル部14を把持してトリガ式のスイッチレバー15を指先で引き操作すると電動モータ70が起動して回転刃具12が回転する。また、使用者がハンドル部14を把持して当該切断機本体10を下方へ傾動させることにより回転する回転刃具12を切断材Wに対して切り込むことができる。
回転刃具12の下側ほぼ半周の範囲は、可動カバー16によって覆われるようになっている。この可動カバー16は、スピンドル13と平行な支軸16aを介して上下に回動可能な状態で本体ケース11に支持されている。この可動カバー16は、本体支持スライダ8の先端部間に介装したリンクプレート100によって切断機本体10の上下動に連動して開閉される。このリンクプレート100の詳細についてはさらに後述する。
【0009】
図3に示すように電動モータ70は、本体ケース11の右側面に設けられたモータ取り付け台座部11aに取り付けられている。この電動モータ70は、モータ軸線J方向の後部側を上側にした斜め下向きに取り付けられている。
この電動モータ70のモータ軸線Jに沿った側部に、コントローラ72が配置されている。このコントローラ72は、電動モータ70の主として回転数制御を行う制御基板を主体とするもので、公知のスロースタート機能等の各種機能がプログラムされている。本実施形態は、このコントローラ72の取り付け位置に特徴を有するものであり、コントローラ72の機能そのものについては従来公知のもので足り、本実施形態において特に変更を要しない。
図4及び図5に示すように電動モータ70のモータハウジング71に、コントローラ72を収容するコントローラケース部73が一体に設けられている。このコントローラケース部73は、モータハウジング71の後ろ側の側部に一体に成形されている。モータハウジング71とこのコントローラケース部73は、それぞれ本体ケース11側(図4及び図5において手前側)に開口されている。コントローラケース部73の開口部とモータハウジング71の開口部は前後に横並び状態でほぼ面一に配置されている。コントローラケース部73の開口部を経てコントローラ72を当該コントローラケース部73内に内装し、逆にコントローラケース部73から取り出すことができる。
図7には、電動モータ70が単体で示されている。概ね円筒形を有するモータハウジング71の内部には、回転子74が軸受け75,76を介して回転自在に収容されている。モータハウジング71の底部(右端部)77に、後ろ側の軸受け76が取り付けられている。また、モータハウジング71の底部77には、回転子74のコンミテータ74aに摺接されるカーボンブラシ74b,74bが保持されている。図7では省略されているが、底部77には、モータハウジング71内に冷却風を取り入れるための吸気孔77a〜77a(図3,8,9参照)が複数設けられている。
【0010】
左側の軸受け75は、本体ケース11のモータ取り付け台座部11a側に支持されている。回転子74の回転子軸74c(電動モータ70の出力軸)には、冷却ファン78が取り付けられている。この冷却ファン78は回転子74の回転によって一体で回転する。冷却ファン78が回転すると、底部77の吸気孔77a〜77aを経てモータハウジング71内に外気が導入される。導入された外気は、モータハウジング71の右側から左側に向かって(先端部から出力部に向かって)流れる。モータハウジング71内を外気(冷却風)が流れることにより回転子74及びその周辺が冷却される。冷却ファン78の風上側にバッフルプレート79が配置されている。このバッフルプレート79は、冷却ファン78の風上側の通風面積を狭めて冷却効率を高めることを主たる目的として配置されている。図6に、このバッフルプレート79が単体で示されている。このバッフルプレート79は概ね円筒形を有するもので、冷却ファン78の周囲を覆う側部79aと、この側部79aの風上側から内周側に張り出す絞り部79bを備えている。絞り部79bの中心に通風孔79cが設けられている。回転子74を冷却した後の風の流れが通風孔79cで絞られることにより、モータハウジング71内のスムーズな風の流れが発生し、その結果効率のよい冷却風の導入がなされる。
バッフルプレート79の風下側(図6では左側)には、コントローラケース部73の蓋73aが一体に設けられている。このため、当該電動モータ70の組み立て工程あるいはそのメンテナンス作業において、モータハウジング71にバッフルプレート79を取り付けると、同時にコントローラケース部73の開口部が蓋73aによって塞がれる。蓋73aはビス73bによってコントローラケース部73にビス止めされる。
このように、電動モータ70の主として回転数制御をするためのコントローラ72が、当該電動モータ70の側部であって使用者Hから見て後ろ側の側部に配置されている。このため、従来電動モータの先端部に配置された構成に比して当該電動モータ70がモータ軸線J方向にコンパクトになっている。しかも、本実施形態の場合、使用者Hとは反対側の後面側にコントローラ72及びそのコントローラケース部73が配置されているので、スミ線合わせ時における切断部位の視認性がよく、また見栄えがよくなっている。
【0011】
次に、図8及び図9に示すようにハンドル部14の右側部には、主として暗い場所での切断作業の便宜を図るための照明装置80が取り付けられている。この照明装置80は、LED(発光ダイオード)を内装した照明本体部81と、この照明本体部81を任意の位置に移動させて保持するための可撓性を有し、かつ配線通し用の内周孔を有する支持アーム82と、スイッチボックス83と、カバー板84を備えている。支持アーム82の上端に照明本体部81が支持されている。支持アーム82の下端部にはスイッチボックス83が取り付けられている。カバー板84は、ハンドル部14の側部に設けた縦長の配線凹部14aを塞ぐ蓋としての機能を備えている。照明本体部81の配線は、支持アーム82の内周孔を経てスイッチボックス83側に結線され、スイッチボックス83の配線は配線凹部14a内で電源側にコネクタ接続されている。図9には、接続されたコネクタ86が示されている。
図8に示すようにスイッチボックス83には、照明装置80をオンオフするための照明スイッチ83aと、スミ線合わせ用のレーザー発振器をオンオフするためのレーザースイッチ83bの2つの押しボタン式のスイッチが設けられている。このアッセンブリ化されたスイッチボックス83は2本のビス87,88によって配線凹部14aの上部に嵌め込んだ状態で固定されている。こうしてスイッチボックス83がハンドル部14の側部に取り付けられることにより、支持アーム82が上方へ突き出す状態に支持され、従って照明本体部81が図1,2,8に示すように本体ケース11の上方を経て切断刃12の左側に張り出す状態に保持される。
図9に示すようにスイッチボックス83の下面には、係合段差部83cが設けられている。この係合段差部83cの下側に、カバー板84の上端部が挿入される。上端部を係合段差部83cの下側に挿入することで、カバー板84の上部が配線凹部14aを塞ぐ状態で固定される。図8に示すようにカバー板84の下部側は、ビス85によってハンドル部14にビス止めされている。このようにカバー板84は、その上端部を予め取り付けたスイッチボックス83の係合段差部83cの下側に差し込んで、下部をビス止めすれば配線凹部14aを塞ぐ状態に取り付けることができる。
このように、アッセンブリ化されたスイッチボックス83に支持アーム82を介して照明本体部81が支持され、かつこのスイッチボックス83側の配線コネクタ86が配線凹部14a内で電源側にコネクタ接続されている。このため、蓋84を取り外せば、コネクタ86を電源側から簡単に切り離すことができ、さらにスイッチボックス83を取り外すことにより当該照明装置80をハンドル部14から簡単に取り外すことができる。ハンドル部14に対して照明装置80を簡単に取り付け、取り外しすることができるので、そのメンテナンス性を高めることができる。
図10及び図12に示すように本体ケース11の前部には、スミ線合わせ用のレーザー発信器90が取り付けられている。上記したようにレーザースイッチ83bをオンすると、このレーザー発信器90からレーザー光が照射される。切断機本体10を下動させた状態において、照射されたレーザー光は、回転刃具12が切断材Wに切り込まれる切断部位であって切断材Wの上面に描いたスミ線に向けて照射される。切断材Wの上面の照射されたレーザー光にスミ線を位置合わせすることによって切断材Wを回転刃具12に対して精確に位置決めすることができる。
このレーザー発信器90の前方であって、可動カバー16の周面には、レーザー光を通過させるための窓部16bが開口されている。この窓部16bは、可動カバー16の周面に沿った一部の範囲であって、切断機本体10が上死点位置の状態において、レーザー発信器90の下方となる前後に一定の範囲に沿って細長く形成されている。この窓部16bによってレーザー発信器90から照射されたレーザー光が減衰することなく切断材Wに照射されるので、スミ線合わせを効率よく行うことができる。
【0012】
前記したように、回転刃具12の下側ほぼ半周の範囲を覆う可動カバー16は、切断機本体10の上下動に連動して開閉される。この可動カバー16は、スピンドル13と平行な支軸16aを介して上下に回動可能な状態で本体ケース11に支持されている。また、可動カバー16とスライダ8の先端部との間にはリンクプレート100が介装されている。
図1、図10及び図12に示すように、このリンクプレート100の後端部は、本体支持スライダ8の先端部に支軸101を介して上下に回動可能に結合されている。支軸101は本体傾動軸9に対して一定寸法ずれて相互に平行に配置されている。切断機本体10の傾動動作に伴ってこのリンクプレート100がスライダ8に対する支軸101を中心にして上下に傾動する。切断機本体10の上下動に伴ってこのリンクプレート100が支軸101を中心にして上下に傾動することによって、可動カバー16が本体ケース11に対して上下に回動し、従って上下に開閉される。切断機本体10を下方へ傾動させると、可動カバー16は図1において反時計回り方向に回動して開かれ、これにより回転刃具12の下側半周の範囲が徐々に開かれていく。切断機本体10を上方へ傾動させると、可動カバー16は図1において時計回り方向に回動して徐々に閉じられていく。
リンクプレート100は、本体支持スライダ8の前部から本体ケース11の内側を経て前方へ長く延びている。このリンクプレート100の前端部100a側は、当該可動カバー16の支軸16a付近に至っている。可動カバー16の支軸16a付近には、係合壁部102が一体に設けられている。リンクプレート100の前端部100aにはボールベアリングが取り付けられており、このボールベアリングがこの係合壁部102に突き当てられている。なお、可動カバー16は図示省略した引っ張りばねによって閉じ方向に付勢されている。従って、この引っ張りばねの付勢力で係合壁部102がリンクプレート100の前端部100aのボールベアリングに押し付けられている。
また、リンクプレート100の長手方向中程には緩やかに湾曲するガイド溝100bが設けられている。このガイド溝100bには、本体ケース11の左側の側壁11bの後部側に設けたガイドピン103が挿入されている。このガイド溝100bがカム溝として機能することにより、切断機本体10を下動させると、リンクプレート100がその前端部100aで係合壁部102を前側へ押す方向に傾動し、これにより可動カバー16が引っ張りばねに抗して徐々に開かれていく。図12に示すように、切断機本体10を下降端まで下動させると、可動カバー16が全開される。逆に、図10に示すように切断機本体10を上方へ戻すと、リンクプレート100がその前端部100aを係合壁部102から離間させる方向に傾動し、これにより可動カバー16が引っ張りばねによって閉じられていく。図10は可動カバー16の全閉状態を示している。
【0013】
リンクプレート100のガイド溝100bには防塵対策が施されている。図10及び図12に示すように本体ケース11の後部には、本体ケース11内で発生した切断粉を集塵するための円筒形の集塵口105が設けられている。また、本体ケース11の後部には、回転刃具12が巻き上げた切断粉を効率よく集塵口105内へ導くための断面U字形の集塵壁部106が取り付けられている。このように本体ケース11の後部であって集塵口105及び集塵壁部106付近には、多くの切断粉が飛散する。このため、同じく本体ケース11の後部に配置されたリンクプレート100及びそのガイド溝100bに挿入されたガイドピン103について、適切な防塵対策を施すことがそのスムーズな動作を確保する上で重要である。本実施形態では、図14に示すようにガイド溝100bの側方に遮蔽板110が取り付けられている。この遮蔽板110は、ガイドピン103の先端に止め輪で固定されている。この遮蔽板110は、回転刃具12とリンクプレート100との間に位置している。このため、回転刃具12の回転により集塵口105に向けて巻き上げられた切り粉がこの遮蔽板110で遮蔽されてリンクプレート100及びそのガイド溝100bの周辺に降りかかることが防止されてその防塵がなされるようになっている。
ガイド溝100b及びガイドピン103に対して切断粉が吹き付けられることが防止されるので、例えばガイド溝100b内に切断粉が堆積してガイドピン103の相対移動が阻害され、その結果リンクプレート100の傾動動作がスムーズに行われなくなって可動カバー16の開閉が切断機本体10の上下動作に連動してスムーズになされなくなるといった不具合を未然に防止することができる。
しかも、図15に示すように本体ケース11の後部の断面形状として、集塵口105の側部に沿って段差部107が設けられている。図10及び図12に示すように、遮蔽板110は、この段差部107から下方へ張り出す状態に取り付けられている。また、遮蔽板110は、その上端縁を段差部107との間にほぼ隙間のない位置まで接近させて取り付けられている。このように段差部107と遮蔽板110により区画されることにより、巻き上げられた切断粉が集塵口105内からリンクプレート100側へ流入することが確実に防止されて当該遮蔽板110の防塵効果が一層高められている。
図10に示すように集塵口105の後部には、集塵袋120が取り付けられている。回転刃具12の回転により切断部位で巻き上げられた切断粉が集塵口105を経てこの集塵袋120内に集塵される。この集塵袋120は、樹脂製の袋ブラケット121によって適度に膨らんだ状態に維持されるようになっている。袋ブラケット121は、その前部に集塵口105に対する取り付け部としての円環形状をなす取り付け部121aを備えている。袋ブラケット121の後部側には、補助ブラケット122が取り付けられている。この補助ブラケット122は、袋ブラケット121の後部側から斜め下方に張り出す状態に支持されている。この補助ブラケット122により袋ブラケット121を短くしても集塵袋120を適度に膨らんだ状態に保持することができるので、切断機本体10の小型化に合わせて集塵袋120のコンパクト化を図り易くなる。なお、集塵袋120及び袋ブラケット121は図10のみに示されており、その他の図では省略されている。
【0014】
以上説明した本実施形態の卓上切断機1によれば、主として電動モータ70の回転数制御を行うためのコントローラ72がモータハウジング71の側部に取り付けられて、従来のように先端部から突き出した状態とはなっていない。このため、モータハウジング71ひいては電動モータ70をモータ軸線J方向にコンパクト化することができる。電動モータ70をモータ軸線J方向にコンパクト化することにより、本体ケース11から側方への突き出し寸法を小さくして切断機本体10のコンパクト化をし易くなる。
切断機本体10における電動モータ70の側方(本実施形態では右側方)への突き出し寸法を小さくすることにより、使用者Hが右側から切断部位を覗き込む際の視認性を高めることができる。切断部位の視認性を高めることにより、スミ線合わせ時等の作業性を高めることができる。
しかも、コントローラ72は電動モータ70の側部であって使用者Hから見えない後部側に配置されていることから、当該切断機1自体の見栄えをよくすることもできる。
さらに、コントローラ72が電動モータ70の後部側の側部に配置されて本体ケース11の右側方への突き出し量をコンパクト化することができることから、当該電動モータ70の後部のテーブル2側に対する干渉を回避しつつ切断機本体10を右側若しくは左側へ傾斜させてより大きな傾斜角度で斜め切り加工をできるようになる。
また、電動モータ70の側方への突き出し量を小さくできるので、切断機本体10を回転刃具12に対して左側(電動モータ70が突き出し側とは反対側)へ傾斜させた場合においても、切断部位の視認性を高めることができる。
さらに、切断機本体10とテーブル2を使用者から見て左側へ回転させて斜め切りを行う場合に、回転刃具12に対して右側に配置された電動モータ70が使用者H側に接近しても、コントローラ72が電動モータ70の後面側に配置されて当該電動モータの右側方への突き出し量がコンパクト化されていることにより、当該電動モータ70が作業の邪魔になりにくく、この点でも切断部位等の視認性が高められる。
また、本実施形態の卓上切断機1によれば、コントローラ72がモータハウジング71の後ろ側の側部であって本体ケース11寄り(電動モータ70の先端部から遠ざかる方向)に配置されている。このため、電動モータ70をテーブル2へ接近させる方向に切断機本体10を傾斜させて傾斜切りを行う場合において、コントローラ72のテーブル2側に対する干渉を回避しつつ当該切断機本体10の傾斜角度をより大きく設定することができる。
さらに、本実施形態によれば、コントローラケース部73の蓋73aがバッフルプレート79に一体に形成されて一つの部品として取り扱うことができるので、当該切断機本体10の組み立て性をよくすることができるとともに、そのメンテナンス性を高めることができる。
【0015】
以上説明した実施形態には種々変更を加えることができる。例えば、コントローラ72を電動モータ70の後面側側部であって本体ケース11寄りに配置する構成を例示したが、同じく電動モータ70の後面側の側部であって、モータハウジング底部側(本体ケース11から離間する方向)に配置する構成としてもよい。
なお、コントローラ72を電動モータ70の後面側の側部ではなく、前面側の側部、上面側の側部あるいは下面側の側部に配置することによっても、当該電動モータ70のモータ軸線J方向のコンパクト化を図ることができる。コントローラ72を電動モータ70の後面側の側部であって使用者から見えにくい部位に配置すれば、モータハウジング71の側部に盛り上がるコントローラケース部73が見えにくくなるので当該電動モータ70ひいては切断機本体10の見栄えが向上する。
また、コントローラケース部73の蓋を73aをバッフルプレート79に一体に設ける構成を例示したが、両者を別体で構成してもよい。
【符号の説明】
【0016】
H…使用者
W…切断材
1…卓上切断機
2…テーブル
3…ベース、3a…補助テーブル部
4…本体支持部
5…位置決めフェンス
6…スライド機構(下段側)、6a…スライドバー
7…スライド機構(上段側)、7a…スライドバー、7b…ホルダ
8…本体支持スライダ
9…本体傾動軸、9a…捩りばね
10…切断機本体
11…本体ケース、11a…モータ取り付け台座部、11b…側壁
12…回転刃具
13…スピンドル
14…ハンドル部、14a…配線凹部
15…スイッチレバー
16…可動カバー、16a…支軸、16b…窓部
20…傾斜支持機構
21…本体支持アーム
70…電動モータ
J…モータ軸線
71…モータハウジング
72…コントローラ
73…コントローラケース部、73a…蓋、73b…ビス
74…回転子
74a…コンミテータ、74b…カーボンブラシ、74c…回転子軸(出力軸)
75,76…軸受け
77…モータハウジング71の底部、77a…吸気孔
78…冷却ファン
79…バッフルプレート、79a…側部、79b…絞り部、79c…通風孔
80…照明装置
81…照明本体部
82…支持アーム
83…スイッチボックス
83a…照明スイッチ、83b…レーザースイッチ、83c…係合段差部
84…カバー板
85…ビス
86…コネクタ
87,88…ビス
90…レーザー発信器
100…リンクプレート、100a…前端部、100b…ガイド溝
101…支軸
102…係合壁部
103…ガイドピン
105…集塵口
106…集塵壁部
107…段差部
110…遮蔽板
120…集塵袋
121…袋ブラケット、121a…取り付け部
122…補助ブラケット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断材を載置するテーブルと、該テーブルの上方に支持された切断機本体を備えた卓上切断機であって、前記切断機本体は、回転刃具を回転させるための駆動源としての電動モータを備えており、該電動モータは、主としてその回転数を制御するためのコントローラを備えており、該コントローラが前記電動モータの側部であって使用者から見て後面側に配置された卓上切断機。
【請求項2】
請求項1記載の卓上切断機であって、前記コントローラが前記回転刃具寄りに配置された卓上切断機。
【請求項3】
請求項1又は2記載の卓上切断機であって、前記電動モータは、冷却ファンと該冷却ファンの風上側にバッフルプレートを内装しており、前記コントローラは、モータハウジングの後面側に設けたコントローラケースに内装されており、該コントローラケースを開閉する蓋が前記バッフルプレートに一体に設けられた卓上切断機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−36934(P2011−36934A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184509(P2009−184509)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)
【Fターム(参考)】