説明

単一分子で機能する分枝鎖中性アミノ酸トランスポーター

本発明は、単一分子で機能し、分枝鎖アミノ酸を中心とする中性アミノ酸を輸送する新規なアミノ酸トランスポーター及びその遺伝子を提供することを目的とする。 本発明は、配列番号2、4、6又は8で示されるアミノ酸配列からなるか、又は、配列番号2、4、6又は8で示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなる、分枝鎖アミノ酸を中心とする中性アミノ酸及びその類似物質をナトリウム非依存的に輸送する能力を単一分子で発揮するタンパク質を提供する。 本発明はまた、配列番号1、3、5、あるいは7で示される塩基配列からなるDNA、又はそれとハイブリダイズし得るDNAからなる遺伝子であって、分枝鎖アミノ酸をナトリウム非依存的に輸送する能力を単一分子で発揮するタンパク質をコードする遺伝子を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は分枝鎖中性アミノ酸及びその類似物質のナトリウム非依存的な輸送に関与するタンパク質、及びそのタンパク質をコードする遺伝子に関する。
【背景技術】
細胞は、栄養としてアミノ酸を常時取り込むことを必要とするが、この機能は細胞膜に存在する膜タンパク質であるアミノ酸トランスポーターによって担われている。特に中性アミノ酸輸送系Lは、多くの必須アミノ酸の細胞への供給を担当することから、細胞栄養において最も重要な輸送機構のひとつであると同時に、腸管からの吸収、腎尿細管からの再吸収、血液・組織関門の通過においても重要な役割を果たしている。また、中性アミノ酸輸送系Lは、基質選択性が広いことから、中性アミノ酸類似物質もしくは中性アミノ酸類似の構造を有する薬物や毒物を輸送することでも知られていた。
中性アミノ酸輸送系Lは、もともとは、アミノ酸類似化合物2−Aminobicyclo−(2,2,1)−heptane−2−carboxylic acid(BCH)によって特異的に抑制されるアミノ酸輸送系として、腫瘍細胞株で始めて記載され、その後、培養細胞、膜小胞標本、摘出臓器標本もしくはin vivo標本を用いて検討されてきた[クリステンセン(Christensen)著、フィジオロジカル・レビュー(Physiological reviews)、1990年、第70巻、第1号、p.43−77]。中性アミノ酸輸送系Lは、ナトリウム非依存的な、すなわちその機能にナトリウムイオンを必要としないトランスポーターである。その輸送基質選択性や輸送特性は、細胞や組織により差異があることが知られていた。
しかし、従来の方法では、中性アミノ酸及びその類似物質の輸送の詳細や、細胞の生存もしくは増殖に対する中性アミノ酸輸送系Lの役割を解析することは困難であり、中性アミノ酸輸送系Lの機能を担う中性アミノ酸トランスポーターの遺伝子を単離して詳細な機能解析を可能とすることが望まれていた。
中性アミノ酸トランスポーターとしては、ナトリウム依存的なトランスポーターとして、ASCT1およびASCT2がクローニングされている[金井著、カレント・オピニオン・イン・セルバイオロジー(Current opinion in cell biology)、1997年、第9巻、第4号、p.565−572]。しかし、これらは、アラニン、セリン、システイン、スレオニン、グルタミンを主な基質とするものであり、中性アミノ酸輸送系Lとは基質選択性が異なっている。また、グリシントランスポーターとプロリントランスポーターがクローニングされているが、中性アミノ酸輸送系Lとは異なる[アマラ(Amara)とクハール(Kuhar)著、アニュアル・レビュー・オブ・ニューロサイエンス(Annual review of neuroscience)、1993年、第16巻、p.73−93]。
トランスポーター自体ではないが、アミノ酸トランスポーターの活性化因子であると考えられている膜貫通構造を1回しか持たない二型膜糖タンパク質であるrBAT及び4F2hcのcDNAがクローニングされており、それらをアフリカツメガエル卵母細胞に発現させると中性アミノ酸とともに塩基性アミノ酸の取り込みを活性化することが知られている[パラシン(Palacin)著、ザ・ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・バイオロジー(The Journal of experimental biology)、1994年、第196巻、p.123−137]。
輸送系Lに相当するトランスポーターとして、中性アミノ酸トランスポーターLAT1[金井その他著、ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(The Journal of biological chemistry)、1999年、第273巻、第37号、p.23629−23632]及びLAT2[瀬川その他著、ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(The Journal of biological chemistry)、1999年、第274巻、第28号、p.19745−19751]がクローニングされている。両者は4F2hcとヘテロ二量体を形成することにより機能するトランスポーターであり、両者ともにNa非依存的な輸送を示す。LAT1はロイシン、イソロイシン、バリン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、メチオニン、ヒスチジンなど大型の中性アミノ酸を輸送する交換輸送活性を示し、LAT2は、大型の中性アミノ酸に加えグリシン、アラニン、セリン、システイン、スレオニンなどの小型の中性アミノ酸も輸送とする広い基質選択性を有する。しかし、この2種の輸送系Lトランスポーターのみでは、全身の輸送系Lは説明できず、他の未同定の輸送系Lアイソフォームが存在すると想定されていた。
既知の輸送系LトランスポーターLAT1及びLAT2は、SLC7ファミリーに属するヘテロ二量体型タンパク質であり、1回膜貫通型タンパク質である4F2hcと連結することにより機能性のトランスポーターを形成する。すでに公開されたマウスゲノム及びヒトゲノムデータベースにおいて、SLC7ファミリーの機能未同定のメンバーを探索したが、そのなかにはさらなる輸送系Lに相当する新規トランスポーターは見い出されなかった。従って、未同定の新たな輸送系Lトランスポーターは、SLC7ファミリー以外のタンパク質である可能性が想定されていた。
さらに、中性アミノ酸トランスポーターLAT1の類似蛋白質として、中性アミノ酸及び塩基性アミノ酸を輸送する輸送系yLの機能を有するyLAT1とyLAT2がクローニングされた[トレンツ(Torrents)その他著、ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(The Journal of biological chemistry)、1998年、第273巻、第49号、p.32437−32445]。また、yLAT1、yLAT2共に補助因子4F2hcと共存することによってのみ機能することが示された。yLAT1とyLAT2は、中性アミノ酸としてはグルタミン、ロイシン、イソロイシンを主に輸送し、中性アミノ酸に対する基質選択性は狭い。
さらに、芳香族アミノ酸を輸送する中性アミノ酸トランスポーターとして、輸送系Tに相当するアミノ酸トランスポーターTAT1[キムその他著、ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(The Journal of biological chemistry)、2001年、第276巻、第20号、p.17221−17228]がクローニングされている。TAT1は、トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン等の芳香族アミノ酸をNa非依存的に輸送するが、ロイシン、イソロイシン、バリン等の分枝アミノ酸は受け入れず、輸送系L特異的な抑制薬BCHによって抑制されず、アミノ酸輸送系Lとは異なっている。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては次のものがある。
1.クリステンセン(Christensen)著、フィジオロジカル・レビュー(Physiological reviews)、1990年、第70巻、第1号、p.43−77
2.金井著、カレント・オピニオン・イン・セルバイオロジー(Current opinion in cell biology)、1997年、第9巻、第4号、p.565−572
3.アマラ(Amara)とクハール(Kuhar)著、アニュアル・レビュー・オブ・ニューロサイエンス(Annual review of neuroscience)、1993年、第16巻、p.73−93
4.パラシン(Palacin)著、ザ・ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・バイオロジー(The Journal of experimental biology)、1994年、第196巻、p.123−137
5.金井その他著、ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(The Journal of biological chemistry)、1999年、第273巻、第37号、p.23629−23632
6.瀬川その他著、ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(The Journal of biological chemistry)、1999年、第274巻、第28号、p.19745−19751
7.トレンツ(Torrents)その他著、ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(The Journal of biological chemistry)、1998年、第273巻、第49号、p.32437−32445
8.キムその他著、ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(The Journal of biological chemistry)、2001年、第276巻、第20号、p.17221−17228
9.コール(Cole)その他著、ゲノミクス(Genomics)、1998年、第51巻、第2号、p.282−287
【発明の開示】
本発明の目的は、単一分子でナトリウム非依存的に分枝鎖中性アミノ酸を輸送し、輸送系Lの機能を示すトランスポーター及びそのトランスポーターをコードする遺伝子を提供することにある。その他の目的については、以下の記載より明らかである。
【図面の簡単な説明】
第1図は、ヒトFLC4細胞由来mRNA及びそのサイズ画分を注入した卵母細胞によるロイシンの取り込み実験の結果を示す。
第2図は、ヒトLAT3とマウスLAT3のアミノ酸配列の比較を示す。予想される膜貫通部位を付線で示した。また、予想される糖鎖付加部位を#、プロテインキナーゼC依存性のリン酸化部位を*、チロシンリン酸化部位を&で示した。
第3図は、ヒトの各臓器組織におけるLAT3遺伝子mRNAの発現をノーザンブロッティングにより解析した結果を示した図面に代わる写真である。
第4図は、ヒトLAT3遺伝子のcRNAを注入した卵母細胞によるロイシン取り込み実験の結果を示す。
第5図は、ヒトLAT3遺伝子のcRNAを注入した卵母細胞によるロイシン取り込み実験において添加する塩の影響を調べた結果を示す。
第6図は、ヒトLAT3遺伝子のcRNAを注入した卵母細胞によるロイシン取り込み実験において基質ロイシンの濃度の影響を調べた結果を示す図。挿図は、そのEadie−Hofsteeプロット。
第7図は、ヒトLAT3遺伝子のcRNAを注入した卵母細胞によるロイシン取り込み実験において、系へのグリシン及び各種L−アミノ酸添加の影響を調べた結果を示す。
第8図は、ヒトLAT3遺伝子のcRNAを注入した卵母細胞によるロイシン取り込み実験において、系への各種D−アミノ酸添加の影響を調べた結果を示す。
第9図は、ヒトLAT3遺伝子のcRNAを注入した卵母細胞によるロイシン取り込み実験において、系への各種アミノ酸輸送系選択的抑制薬添加の影響を調べた結果を示す。
第10図は、ヒトLAT3遺伝子のcRNAを注入した卵母細胞によるロイシン取り込み実験において、系への各種アミノ酸誘導体添加の影響を調べた結果を示す図面である。
−CH(NH)COOH,L−leucine;R−CH(NH)CHOH,L−leucinol;R−CHNH,isopentylamine;R−CHCOOH,4−methylvaleric acid;R−CH(NH)CH,1,3−dimethyl−n−butylamine;R−CH(NH)CONH,L−leucinamide;R−CH(NH)COOCH,L−leucine−methylester;R−CH(NHCOCH)COOH,N−acetyl−L−leucine;R−CH(NHCH)COOH,N−methyl−L−leucine;R−CH(NH)COOH,L−valine;R−CH(NH)CHOH,L−valinol;R−CHNH,isobutylamine;R−CHCOOH,isovaleric acid;R−CH(NH)COOH,L−phenylalanine;R−CH(NH)CHOH,L−phenylalaninol;R−CHNH,2−phenylethylamine;R−CHCOOH,3−phenylpropionic acid;R−CH(NH)COOH,L−tyrosine;R−CH(NH)CHOH,L−tyrosinol;R−CHNH,tyramine;R−CHCOOH,3−(p−hydroxyphenyl)propionic acid.
第11図は、ヒトLAT3遺伝子のcRNAを注入した卵母細胞によるロイシン取り込み実験において、系への各種アニオン性化合物添加の影響を調べた結果を示す。
第12図は、ヒトLAT3遺伝子のcRNAを注入した卵母細胞による放射能標識L−アミノ酸及びL−アミノ酸の取り込みを調べた結果を示す。
第13図は、ヒトLAT3遺伝子のcRNAを注入した卵母細胞によるロイシン取り込み実験においてpHの影響を調べた結果を示す。
第14図は、ヒトLAT3遺伝子のcRNAを注入した卵母細胞よる14C−ロイシンの放出の時間経過を調べた結果を示す図。□:対照としてヒトLAT3遺伝子のcRNAの代わりに水を注入した卵母細胞における14C−ロイシンの放出、Na非含有取り込み用溶液へのロイシン未添加の場合。:対照としてヒトLAT3遺伝子のcRNAの代わりに水を注入した卵母細胞における14C−ロイシンの放出、Na非含有取り込み用溶液へロイシンを添加した場合。○:ヒトLAT3遺伝子のcRNAを注入した卵母細胞における14C−ロイシンの放出、Na非含有取り込み用溶液へのロイシン未添加の場合。●:ヒトLAT3遺伝子のcRNAを注入した卵母細胞における14C−ロイシンの放出、Na非含有取り込み用溶液へロイシンを添加した場合。縦軸は、放出された放射活性を卵母細胞に注入した放射活性に対する%で示す。
第15図は、ヒトLAT3遺伝子のcRNAを注入した卵母細胞によるロイシン取り込み実験において、N−エチルマレイミド(NEM)処理の影響を調べた結果を示す図。
第16図は、ヒト前立腺癌(A及びB)及びヒト腎癌(C及びD)における抗LAT3抗体によるLAT3の免疫組織化学的解析の結果を示した写真。A及びC:抗LAT3抗体による染色像。B及びD:抗原ペプチドによる吸収実験。
第17図は、ヒト LAT3とヒト LAT4のアミノ酸配列の比較を示す図。
第18図は、ヒトLAT4とマウスLAT4のアミノ酸配列の比較を示す図。予想される膜貫通部位を付線で示した。また、予想される糖鎖付加部位を#、cAMP依存性のリン酸化部位を+、プロテインキナーゼC依存性のリン酸化部位を*で示した。
第19図は、マウスLAT4遺伝子のcRNAを注入した卵母細胞によるロイシン取り込み実験において添加する塩の影響を調べた結果を示す図。
第20図は、マウスLAT4遺伝子のcRNAを注入した卵母細胞によるロイシン取り込み実験において、系へのグリシン及び各種L−アミノ酸添加の影響を調べた結果を示す図。
第21図は、マウスLAT4遺伝子のcRNAを注入した卵母細胞によるロイシン取り込み実験において、系への各種D−アミノ酸添加の影響を調べた結果を示す図。
第22図は、マウスLAT4遺伝子のcRNAを注入した卵母細胞によるロイシン取り込み実験において、系への各種アミノ酸輸送系選択的抑制薬添加の影響を調べた結果を示す図。
第23図は、マウスLAT4遺伝子のcRNAを注入した卵母細胞による放射能標識L−アミノ酸及びL−アミノ酸の取り込みを調べた結果を示す図。
第24図は、ヒトの各臓器組織におけるLAT4遺伝子mRNAの発現をノーザンブロッティングにより解析した結果を示した図面に代わる写真である。
第25図は、マウスの各臓器組織におけるLAT4遺伝子mRNAの発現をノーザンブロッティングにより解析した結果を示した図面に代わる写真である。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明者らは、ヒト肝細胞癌細胞株FLC4から抽出したポリ(A)RNAを材料とし、アフリカツメガエル卵母細胞発現系を用いた発現クローニングを行い、単一分子で分枝鎖中性アミノ酸を輸送する能力を発揮する輸送系Lの性質を示す新規トランスポーターの遺伝子をクローニングした。さらに、それと類似の配列を有する別の遺伝子をEST(expressed sequence tag)データベースを用いて同定した。これらの遺伝子の産物をアフリカツメガエルの卵母細胞に発現させて、その機能特性を明らかにし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の(A)ないし(H)から選択されるタンパク質であって、ナトリウム非依存的に分枝鎖中性アミノ酸及びその類似物質を輸送する能力を単一分子で発揮するタンパク質を提供する。
(A)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(B)配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(C)配列番号6で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(D)配列番号8で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(E)配列番号2で示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質。
(F)配列番号4で示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質。
(G)配列番号6で示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質。
(H)配列番号8で示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質。
また、本発明は、以下の(a)ないし(h)から選択されるDNAであって、ナトリウム非依存的に分枝鎖中性アミノ酸及びその類似物質を輸送する能力を単一分子で発揮するタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子を提供する。
(a)配列番号1で示される塩基配列からなるDNA。
(b)配列番号3で示される塩基配列からなるDNA。
(c)配列番号5で示される塩基配列からなるDNA。
(d)配列番号7で示される塩基配列からなるDNA。
(e)配列番号1で示される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA。
(f)配列番号3で示される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA。
(g)配列番号5で示される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA。
(h)配列番号7で示される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA。
配列番号2で示されるアミノ酸配列は、ヒト肝細胞癌細胞株FLC4由来のナトリウム非依存的に分枝鎖中性アミノ酸及びその類似物質を輸送する能力を単一分子で発揮するアミノ酸トランスポーター(ヒトLAT3)のアミノ酸配列(559アミノ酸)を表す。そして、該トランスポーターをコードするcDNAの塩基配列は配列番号1に示される。
配列番号4で示されるアミノ酸配列は、マウス唾液腺由来のナトリウム非依存的に分枝鎖中性アミノ酸及びその類似物質を輸送する能力を単一分子で発揮するアミノ酸トランスポーター(マウスLAT3)のアミノ酸配列(564アミノ酸)を表す。そして、該トランスポーターをコードするcDNAの塩基配列は配列番号3に示される。
配列番号6で示されるアミノ酸配列は、ヒト胎児脳由来のナトリウム非依存的に分枝鎖中性アミノ酸及びその類似物質を輸送する能力を単一分子で発揮するアミノ酸トランスポーター(ヒトLAT4)のアミノ酸配列(573アミノ酸)を表す。そして、該トランスポーターをコードするcDNAの塩基配列は配列番号5に示される。
配列番号8で示されるアミノ酸配列は、マウス腎由来のナトリウム非依存的に分枝鎖中性アミノ酸及びその類似物質を輸送する能力を単一分子で発揮するアミノ酸トランスポーター(マウスLAT4)のアミノ酸配列(568アミノ酸)を表す。そして、該トランスポーターをコードするcDNAの塩基配列は配列番号7に示される。
本発明のナトリウム非依存的に分枝鎖中性アミノ酸及びその類似物質を輸送する能力を単一分子で発揮するタンパク質、すなわちアミノ酸トランスポーターLAT3(L−type amino acid transporter 3)及びLAT4(L−type amino acid transporter 4)は、ロイシン、イソロイシン、バリン等の分枝鎖アミノ酸及びフェニルアラニンを中心とする中性アミノ酸を選択的に輸送する(取り込む)能力を有する。
本発明のナトリウム非依存的に分枝鎖中性アミノ酸及びその類似物質を輸送する能力を単一分子で発揮するアミノ酸トランスポーターLAT3を介する中性アミノ酸の輸送は、分枝鎖アミノ酸アルコール及びフェニルアラニノールによって強く抑制される。また、LAT3を介する中性アミノ酸の輸送は、N−エチルマレイミドによって抑制される。
本発明のナトリウム非依存的に分枝鎖中性アミノ酸及びその類似物質を輸送する能力を単一分子で発揮するアミノ酸トランスポーターLAT3は、ヒト体内においては膵臓、肝臓、骨格筋、心臓、骨髄、及び胎児肝臓において強く発現し、腎臓、胎盤、肺、小腸、卵巣、精巣、前立腺、及び脾臓に弱く発現している。
また、本発明のナトリウム非依存的に分枝鎖中性アミノ酸及びその類似物質を輸送する能力を単一分子で発揮するアミノ酸トランスポーターLAT4は、ヒト体内においては胎盤、腎臓、骨格筋、脳、心臓、脾臓、肺、白血球、小賜において強く発現し、肝臓及び胸腺に弱く発現している。
本発明は、ナトリウム非依存的に分枝鎖中性アミノ酸及びその類似物質を輸送する能力を単一分子で発揮するアミノ酸トランスポーター及びそれをコードする遺伝子を利用する発明に関するものである。
すなわち、本発明は、ナトリウム非依存的に分枝鎖中性アミノ酸及びその類似物質を輸送する能力を単一分子で発揮するアミノ酸トランスポーターをコードする遺伝子もしくは該遺伝子の中のタンパク質をコードする遺伝子を含むプラスミド、ナトリウム非依存的に分枝鎖中性アミノ酸及びその類似物質を輸送する能力を単一分子で発揮するアミノ酸トランスポーターをコードする遺伝子の塩基配列において連続する14塩基以上の部分配列もしくはその相補配列を含むヌクレオチド、ナトリウム非依存的に分枝鎖中性アミノ酸及びその類似物質を輸送する能力を単一分子で発揮するアミノ酸トランスポーターに対する抗体を提供する。
本発明は、ナトリウム非依存的に分枝鎖中性アミノ酸及びその類似物質を輸送する能力を単一分子で発揮するアミノ酸トランスポーターを用いて、該タンパク質の有するナトリウム非依存的に分枝鎖中性アミノ酸及びその類似物質を輸送する能力に対する被検物質の基質あるいは阻害物質としての作用を検出する方法を提供する。
さらに本発明は、ナトリウム非依存的に分枝鎖中性アミノ酸及びその類似物質を輸送する能力を単一分子で発揮するアミノ酸トランスポーター、その特異抗体、その機能促進物質もしくは機能抑制物質、又は該トランスポーターをコードする遺伝子のアンチセンスヌクレオチドを用いて、該タンパク質の有する分枝鎖中性アミノ酸及びその類似物質を輸送する能力を変調させることにより、正常細胞もしくは腫瘍細胞の増殖を制御し、該タンパク質によって輸送される薬物、毒物、もしくは外来性異物体内動態を変更し、又は該タンパク質によって輸送される分枝鎖中性アミノ酸の体内動態もしくは生体内代謝を変更する方法を提供する。
本発明のナトリウム非依存的に分枝鎖中性アミノ酸及びその類似物質を輸送する能力を単一分子で発揮するタンパク質としては、後記配列表の配列番号2,4,6又は8で示されたアミノ酸配列を有するタンパク質が挙げられる。
配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質は、ヒト肝細胞癌細胞株FLC4由来のナトリウム非依存的に分枝鎖中性アミノ酸及びその類似物質を輸送する能力を単一分子で発揮するアミノ酸トランスポーター(ヒトLAT3)である。
配列番号4で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質は、マウス唾液腺由来のナトリウム非依存的に分枝鎖中性アミノ酸及びその類似物質を輸送する能力を単一分子で発揮するアミノ酸トランスポーター(マウスLAT3)である。
配列番号6で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質は、ヒト胎児脳由来のナトリウム非依存的に分枝鎖中性アミノ酸及びその類似物質を輸送する能力を単一分子で発揮するアミノ酸トランスポーター(ヒトLAT4)である。
配列番号8で示されるアミノ酸配列を有するタンパク質は、マウス腎由来のナトリウム非依存的に分枝鎖中性アミノ酸及びその類似物質を輸送する能力を単一分子で発揮するアミノ酸トランスポーター(マウスLAT4)である。
本発明のタンパク質としては、この他に、例えば配列番号2、4、6又は8で示されたアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸の欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質が挙げられる。アミノ酸の欠失、置換もしくは付加は、アミノ酸輸送活性が失われない程度であればよく、配列番号2に関しては通常1〜約111個、好ましくは1〜約56個、配列番号4に関しては通常1〜約113個、好ましくは1〜約57個、配列番号6に関しては通常1〜約115個、好ましくは1〜約57個、配列番号8に関しては通常1〜約114個、好ましくは1〜約57個である。このようなタンパク質は、配列番号1及び配列番号2で示されたアミノ酸配列と通常、1〜80%、好ましくは1〜90%のアミノ酸配列のホモロジーを有する。
配列番号2に示されるアミノ酸配列は、ヒト前立腺癌に高発現する機能未同定の配列として報告されたPOV1[コール(Cole)その他著、ゲノミクス(Genomics)、1998年、第51巻、第2号、p.282−287]と同一であった。配列番号4、6及び8に示されるアミノ酸配列は、報告されておらず新規のものであると考えられる。
本発明のナトリウム非依存的に分枝鎖中性アミノ酸及びその類似物質を輸送する能力を単一分子で発揮するタンパク質をコードする遺伝子としては、後記配列表の配列番号1,3,5又は7で示された塩基配列を有する遺伝子が挙げられる。
配列番号1で示される塩基配列は、ヒト肝細胞癌細胞株FLC4由来のナトリウム非依存的に分枝鎖中性アミノ酸及びその類似物質を輸送する能力を単一分子で発揮するアミノ酸トランスポーター(ヒトLAT3)の遺伝子の全長cDNA塩基配列(約2.5kbp)を表す。
配列番号2で示される塩基配列は、マウス唾液腺由来のナトリウム非依存的に分枝鎖中性アミノ酸及びその類似物質を輸送する能力を単一分子で発揮するアミノ酸トランスポーター(マウスLAT3)の遺伝子の全長cDNA塩基配列(約2.5kbp)を表す。
配列番号3で示される塩基配列は、ヒト胎児脳由来のナトリウム非依存的に分枝鎖中性アミノ酸及びその類似物質を輸送する能力を単一分子で発揮するアミノ酸トランスポーター(ヒトLAT4)の遺伝子の全長cDNA塩基配列(約3.3kbp)を表す。
配列番号4で示される塩基配列は、マウス腎由来のナトリウム非依存的に分枝鎖中性アミノ酸及びその類似物質を輸送する能力を単一分子で発揮するアミノ酸トランスポーター(マウスLAT4)の遺伝子の全長cDNA塩基配列(約3.2kbp)を表す。
本発明の遺伝子としては、この他に、配列番号1、3、5又は7で示された塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得るDNAを含むものが挙げられる。このようにハイブリダイズし得るDNAは、そのDNAにコードされるタンパク質が中性アミノ酸を輸送する能力を有するものであればよい。このようなDNAは配列番号1、3、5又は7で示された塩基配列と通常、70%以上、好ましくは80%以上の塩基配列のホモロジーを有する。このようなDNAとしては、自然界で発見される変異型遺伝子、人為的に改変した変異型遺伝子、異種生物由来の相同遺伝子等が含まれる。
本発明において、ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションは、通常、ハイブリダイゼーションを、5xSSC又はこれと同等の塩濃度のハイブリダイゼーション溶液中、37−42℃の温度条件下、約12時間行い、5xSSC又はこれと同等の塩濃度の溶液などで必要に応じて予備洗浄を行った後、1xSSC又はこれと同等の塩濃度の溶液中で洗浄を行うことにより実施できる。
本発明の分枝鎖中性アミノ酸及びその類似物質を選択的に輸送する単一分子で機能を発揮するナトリウム非依存性アミノ酸トランスポーターの遺伝子は、適当な哺乳動物の組織や細胞を遺伝子源として用いてスクリーニングを行うことにより単離取得できる。哺乳動物としては、イヌ、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、サル、ブタ、ウサギ、ラット及びマウスなどの非ヒト動物のほか、ヒトが挙げられる。
遺伝子のスクリーニング及び単離は、発現クローニング法(Expression cloning)などにより好適に実施できる。
例えば、ヒト肝細胞癌細胞株FLC4を遺伝子源として用い、これからmRNA(ポリ(A)RNA)を調製する。これをサイズ分画し、各画分についてアフリカツメガエル卵母細胞に導入する。
mRNAを導入した卵母細胞について、例えば、ロイシンなどを基質として、細胞内への基質の輸送(取り込み)を測定し、高い取り込み活性を示したmRNA画分を選択することにより、LAT3のmRNAを濃縮できる。この濃縮されたmRNAをもとにcDNAライブラリーを作製する。ライブラリーのcDNAから、約500クローンをーグループとして、cRNA(キャップ化されたもの)を調整し、各々のグループについて、卵母細胞に導入し、基質の取り込み活性を指標として、陽性グループを選択する。陽性グループが見い出せたら、それをさらにサブグループに分け、同様の操作を繰り返すことにより、LAT3遺伝子のcDNAを含むクローンを得ることができる。
また、LAT4のcDNAの単離は、ホモロジークローニング法などにより好適に実施できる。
例えば、ヒト胎児脳あるいはマウス腎を遺伝子源として用い、そのmRNA(ポリ(A)RNA)を用いて、cDNAライブライーを作製する。EST(expressed sequence tag)データベースの検索によって得られるLAT3類似配列(例えば、GenBankTM/EBI/DDBJ accession No.AW162917)に相当するプローブを用いてcDNAライブラリーをスクリーニングすることによってLAT4遺伝子のcDNAを含むクローンを得ることができる。
得られたcDNAについては、常法により塩基配列を決定し、翻訳領域を解析して、これにコードされるタンパク質、すなわち、LAT3あるいはLAT4のアミノ酸配列を決定することができる。
得られたcDNAが、分枝鎖中性アミノ酸を選択的に輸送する単一分子で機能を発揮するナトリウム非依存性アミノ酸トランスポーター遺伝子のcDNAであること、すなわちcDNAにコードされた遺伝子産物が分枝鎖中性アミノ酸を選択的に輸送する単一分子で機能するナトリウム非依存性アミノ酸トランスポーターであることは、例えば次のようにして検証することができる。すなわち、得られたLAT3遺伝子あるいはLAT4遺伝子のcDNAから調整した、これに相補的なRNA(cRNA)(キャップ化されたもの)を卵母細胞内に導入して発現させ、分枝鎖中性アミノ酸を細胞内へ輸送する(取り込む)能力を、適当な分枝鎖中性アミノ酸を基質とする通常の取り込み試験(Kanai and Hediger、Nature、第360巻、467−471頁、1992年)により、細胞内への基質の取り込みを測定することにより確認できる。
得られたLAT3遺伝子あるいはLAT4遺伝子のcDNAから調整した、これに相補的なRNA(cRNA)を用いて、インビトロ翻訳法[Hedigerら、Biochim.Biophys.Acta、第1064巻、360項、1991年]により、LAT3あるいはLAT4 タンパク質を合成し、電気泳動によりタンパク質のサイズ、糖付加の有無等を検討することができる。
また、発現細胞について、同様の取り込み実験を応用して、LAT3あるいはLAT4の特性、例えば、LAT3がアミノ酸の促通拡散型の輸送を行っているという特性や、LAT3あるいはLAT4の基質選択性、pH依存性などを調べることができる。
得られたLAT3遺伝子あるいはLAT4遺伝子のcDNAを用いて、異なる遺伝子源で作製された適当なcDNAライブラリー又はゲノミックDNAライブラリーをスクリーニングすることにより、異なる組織、異なる生物由来の相同遺伝子や染色体遺伝子等を単離することができる。
また、開示された本発明の遺伝子の塩基配列(配列番号1、3、5又は7に示された塩基配列、もしくはその一部)の情報に基づいて設計された合成プライマーを用い、通常のPCR(Polymerase Chain Reaction)法によりcDNAライブラリー又はゲノミックDNAライブラリーから遺伝子を単離することができる。
cDNAライブラリー又はゲノミックDNAライブラリー等のDNAライブラリーは、例えば、「Molecular cloning」[Sambrook,J.,Fritsh,E.F.及びManitis,T.著、Cold Spring Harbor Pressより1989に発刊]に記載の方法により調製することができる。あるいは、市販のライブラリーがある場合はこれを用いてもよい。
本発明の単一分子で機能する分枝鎖中性アミノ酸を選択的に輸送するナトリウム非依存性アミノ酸トランスポーター(LAT3あるいはLAT4)は、例えば、それをコードするcDNAを用い、遺伝子組換え技術により生産することができる。例えば、LAT3あるいはLAT4をコードするDNA(cDNA等)を適当な発現ベクターに組み込み、得られた組換えDNAを適当な宿主細胞に導入することができる。ポリペプチド生産するための発現系(宿主−ベクター系)としては、例えば、細菌、酵母、昆虫細胞及び哺乳類細胞の発現系等が挙げられる。このうち、機能タンパクを得るためには、昆虫細胞及び哺乳類細胞を用いることが好ましい。
例えば、ポリペプチドを哺乳類細胞で発現させる場合には、単一分子で機能する分枝鎖中性アミノ酸を選択的に輸送するナトリウム非依存性アミノ酸トランスポーターLAT3あるいはLAT4をコードするDNAを、適当な発現ベクター(例えば、アデノウイルス系ベクター、レトロウイルス系ベクター、パピローマウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、SV40系ベクター等)中の適当なプロモーター(例えば、サイトメガロウイルスプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、エロンゲーション1aプロモーター等)の下流に挿入して発現ベクターを構築する。次に、得られた発現ベクターで適当な動物細胞を形質転換し、形質転換体を適当な培地で培養することによって、目的とするポリペプチドが生産される。宿主とする哺乳動物細胞としては、サルCOS−7細胞、チャイニーズハムスターCHO細胞、ヒトHeLa細胞、又はマウスS2細胞などの細胞株などが挙げられる。
単一分子で機能する分枝鎖中性アミノ酸を選択的に輸送するナトリウム非依存性アミノ酸トランスポーターLAT3あるいはLAT4をコードするDNAとしては、例えば、配列番号1、3、5又は7で示される塩基配列を有するcDNAを用いることができるほか、前記のcDNA配列に限定されることなく、アミノ酸配列に対応するDNAを設計し、ポリペプチドをコードするDNAとして用いることもできる。この場合、ひとつのアミノ酸をコードするコドンは各々1〜6種類知られており、用いるコドンの選択は任意で良いが、例えば発現に利用する宿主のコドン使用頻度を考慮して、より発現効率の高い配列を設計することができる。設計した塩基配列を持つDNAは、DNAの化学合成、前記cDNAの断片化と結合、塩基配列の一部改変等によって取得できる。人為的な塩基配列の一部改変、変異導入は、所望の改変をコードする合成オリゴヌクレオチドからなるプライマーを利用して部位特異的変異導入法(site specific mutagenesis)[Mark,D.F.et al.、Proceedings of National Academy of Sciences、第81巻、第5662項(1984年)]等によって実施できる。
本発明の単一分子で機能する分枝鎖中性アミノ酸を選択的に輸送するナトリウム非依存性アミノ酸トランスポーター又はこれと免疫学的同等性を有するポリペプチドを用いて、その抗体を取得することができる。抗体は、単一分子で機能する分枝鎖中性アミノ酸を選択的に輸送するナトリウム非依存性アミノ酸トランスポーターの検出や精製などに利用できる。抗体は、本発明の単一分子で機能する分枝鎖中性アミノ酸を選択的に輸送するナトリウム非依存性アミノ酸トランスポーター、その断片、またはその部分配列を有する合成ペプチドなどを抗原として用いて製造できる。ポリクロナール抗体は、宿主動物(例えば、ラットやウサギ等)に抗原を接種し、免疫血清を回収する、通常の方法により製造することができ、モノクロナール抗体は、通常のハイブリドーマ法などの技術により製造できる。
本発明の単一分子で機能する分枝鎖中性アミノ酸を選択的に輸送するナトリウム非依存性アミノ酸トランスポーターLAT3あるいはLAT4、その遺伝子およびその発現細胞は、LAT3あるいはLAT4が存在する細胞膜や、LAT3あるいはLAT4が存在すると予想される部位での透過効率についての、インビトロでの試験に使用できる。また、単一分子で機能する分枝鎖中性アミノ酸を選択的に輸送するナトリウム非依存性アミノ酸トランスポーターLAT3あるいはLAT4、その遺伝子およびその発現細胞は、LAT3あるいはLAT4が存在する細胞膜や、LAT3あるいはLAT4が存在すると予想される部位を効率良く透過する化合物の開発に使用できる。さらに、単一分子で機能する分枝鎖中性アミノ酸を選択的に輸送するナトリウム非依存性アミノ酸トランスポーターLAT3あるいはLAT4、その遺伝子およびその発現細胞は、LAT3あるいはLAT4が存在する細胞膜や、LAT3あるいはLAT4が存在すると予想される部位での薬物間相互作用のインビトロでの試験に使用できる。
本発明の単一分子で機能する分枝鎖中性アミノ酸を選択的に輸送するナトリウム非依存性アミノ酸トランスポーターLAT3あるいはLAT4を抑制することにより、LAT3あるいはLAT4を発現する細胞膜や、LAT3あるいはLAT4が存在すると予想される部位の特定の化合物の透過を制限することができる。また、本発明の単一分子で機能する分枝鎖中性アミノ酸を選択的に輸送するナトリウム非依存性アミノ酸トランスポーターLAT3あるいはLAT4、その遺伝子およびその発現細胞は、LAT3あるいはLAT4により輸送される化合物の、細胞膜通過や、LAT3あるいはLAT4が存在すると予想される部位の透過を制限する薬物(LAT3あるいはLAT4の特異的なインヒビター等)の開発に使用できる。
本発明の単一分子で機能する分枝鎖中性アミノ酸を選択的に輸送するナトリウム非依存トランスポーターLAT3あるいはLAT4、その遺伝子およびその発現細胞は、LAT3あるいはLAT4を抑制することによる、LAT3あるいはLAT4を高レベルに発現する細胞の増殖抑制効果のインビトロ試験に使用できる。LAT3あるいはLAT4の抑制の目的には、その抑制薬を使用するが、もしくはアンチセンスオリゴDNAあるいは特異抗体を使用することができる。
また、本発明の単一分子で機能する分枝鎖中性アミノ酸を選択的に輸送するナトリウム非依存トランスポーターLAT3あるいはLAT4、その遺伝子およびその発現細胞を用いて、腫瘍細胞などのLAT3あるいはLAT4を高レベルに発現する細胞の増殖を抑制する目的で使用する、LAT3あるいはLAT4の機能抑制薬や機能抑制作用を持つモノクロナル抗体を開発することができる。
なお、特願2003−062379明細書に記載された内容を、本明細書にすべて取り込む。
【実施例】
次に実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、下記実施例において、各操作は特に明示がない限り、「Molecular cloning」[Sambrook,J.,Fritsh,E.F.及びManitis,T.著、Cold Spring Harbor Pressより1989に発刊]に記載の方法により行うか、または、市販の試薬やキットを用いる場合には市販品の指示書に従って使用した。
実施例1: 単一分子で機能する分枝鎖中性アミノ酸を選択的に輸送するナトリウム非依存性アミノ酸トランスポーターLAT3のヒトcDNAのクローニング
(1)ヒト肝細胞癌由来細胞株FLC4からの発現クローニング
金井らの方法(Kanai and Hediger、Nature、第360巻、467−471頁、1992年)に準じて、発現クローニング法により、以下のようにして行った。
ゲル電気泳動によりヒト肝細胞癌細胞株FLC4由来ポリ(A)RNA400μgを分画した。
分画により得られた各画分を、アフリカツメガエル卵母細胞に注入し、3日間培養した。
RNA注入した卵母細胞について、基質としてロイシンを用い、基質の取り込み実験を金井らの方法(Kanai and Hediger、Nature、第360巻、467−471頁、1992年)に準じて、以下のように行った。基質として14C−L−ロイシン(100μM)を含むNa非含有取り込み用溶液[100mM塩化コリン、2mM塩化カリウム、1.8mM塩化カルシウム、1mM塩化マグネシウム、5mM HEPES、pH7.4]中にて30分卵母細胞を培養して、細胞内に取り込まれた放射能のカウントで基質の取り込み率を測定した。なお、この系において、ヒト肝細胞腫由来細胞株FLC4のポリ(A)RNA(mRNA)を注入した卵母細胞は、対照として水を注入した卵母細胞に比し、ロイシンの取り込み亢進が見られた(第1図)。
サイズ分画により得られた各RNA画分のうち、RNAを注入した卵母細胞が、最も高いロイシンの取り込み率を示した画分を選択した(第1図)。この画分のポリ(A)RNA(2.2〜2.7kb)について、cDNA合成及びプラスミドクローニング用キット(商品名:Superscript Plasmid System、ギブコ社製)を使用して、cDNAライブラリーを作成した。これらDNAはプラスミドpSPORT1(ギブコ社製)の制限酵素SalI及びNotI認識部位に組み込み、得られた組み換えプラスミドDNAを大腸菌DH10B株のコンピテントセル(商品名:Electro Max DH10B Competent cell、ギブコ社製)に導入した。得られた形質転換体をニトロセルロース膜上で培養し、1プレート当たり約500個のコロニーが得られた。これらコロニーから、プラスミドDNAを調製し、これらを制限酵素NotIで切断した。得られたDNAを用いて、in vitro転写により、キャップ化されたcRNAを合成した。
得られたcRNA(約50ng)を卵母細胞へ注入した。これら卵母細胞について、前記と同様にして、ロイシン取り込み実験を行うことにより陽性クローンのスクリーニングを行った。スクリーニングに際しては、複数のクローンから抽出したDNAをプールしたグループについて調べ、あるグループでロイシン取り込みが確認された場合、さらにそれを複数のグループに分割し、さらにスクリーニングを行った。
得られたクローン、すなわち、ヒト分枝鎖中性アミノ酸トランスポーターLAT3のcDNAを含むクローンについて、塩基配列決定のための合成プライマーを用いてダイターミネーターサイクルシーケンシング法(Applied Biosystems社)により、cDNAの塩基配列を決定した。
これにより、ヒトLAT3遺伝子の塩基配列が得られた。また、cDNAの塩基配列を常法により解析して、cDNAの翻訳領域とそこにコードされるLAT3のアミノ酸配列を決定した。
この配列を、後記配列表の配列番号2に示した。
ヒトLAT3は、ヒト前立腺癌に高発現する機能未同定の配列として報告されたPOV1[コール(Cole)その他著、ゲノミクス(Genomics)、1998年、第51巻、第2号、p.282−287]と同一のアミノ酸配列を示した。
TopPred2アルゴリズム[Gunnar von Heijne,J.Mol.Biol.225,487−494(1992)]により、LAT3のアミノ酸配列を解析した結果、第2図に示したように、12個の膜貫通領域(membrane−spanning domain)が予想された。また、第1膜貫通部位と第2膜貫通部位の間の細胞外ループには糖付加部位、第6膜貫通部位と第7膜貫通部位の間の長い細胞内ループには、2つのプロテインキナーゼC依存性リン酸化部位及び1つのチロシンリン酸化部位、第8膜貫通部位と第9膜貫通部位の間の細胞内ループには、1つのプロテインキナーゼC依存性リン酸化部位と考えられる部位があった(第2図)。
(2)ヒトの種々の組織における LAT3遺伝子の発現(ノーザンブロッティングによる解析)
ヒトLAT3遺伝子の第1790−1936番目の塩基に相当するcDNA断片を32P−dCTPでラベルし、これをプローブとして用いて、ヒトの種々の組織から抽出したポリ(A)RNAを含んだMultiple Tissue Northern Blots(Human、Clontech社製)に対して、ノーザンブハイブリダイゼーションを以下のようにして行った。このフィルター膜を42℃で、32P−dCTPでラベルしたLAT3cDNA断片を含んだハイブリダイゼーション液で1晩ハイブリダイゼーションを行った。フィルターを、65℃にて、0.1%SDSを含む0.1xSSCで洗浄した。
ノーザンブロッティングの結果(第3図)、膵臓、肝臓、骨格筋、心臓、骨髄、及び胎児肝臓において強く発現し、腎臓、胎盤、肺、小腸、卵巣、精巣、前立腺、及び脾臓に弱く発現していることが示された。
実施例2: 単一分子で機能する分枝鎖中性アミノ酸を選択的に輸送するナトリウム非依存性アミノ酸トランスポーターLAT3のマウスcDNAの同定
ヒトLAT3の翻訳領域の塩基配列を用いたEST(expressed sequence tag)データベースの検索によって得られた、ヒトLAT3と類似のマウス唾液腺由来の塩基配列(GenBankTM/EBI/DDBJ accession No.BG865268)に相当するcDNAクローンをIMAGE(Integrated and Molecular Analysis of Genomes and their Expression)より購入し(IMAGE clone I.D.:4910149)、塩基配列決定のための合成プライマーを用いてダイターミネーターサイクルシーケンシング法(Applied Biosystems社)により、cDNAの全長の塩基配列を決定した。また、cDNAの塩基配列を常法により解析して、cDNAの翻訳領域とそこにコードされるタンパク質のアミノ酸配列を決定した。
この配列を、後記配列表の配列番号4に示した。
マウスLAT3とヒトLAT3のアミノ酸配列の比較を第2図に示した。マウスLAT3とヒトLAT3のアミノ酸配列は、82%の相同性を有していた。
実施例3: 単一分子で機能する分枝鎖中性アミノ酸を選択的に輸送するナトリウム非依存性アミノ酸トランスポーターLAT3の特徴づけ
(1)ヒトLAT3のツメガエル卵母細胞への機能発現
ヒトLAT3のcDNAを含む発現プラスミドベクターpSPORT1を制限酵素NotIで切断し、T7RNAポリメラーゼを用いてcRNA(cDNAに相補的なRNA)を調製した。
ヒトLAT3遺伝子cRNA 25ngを卵母細胞に注入することによって発現させ、3日間培養した。
ロイシンの取り込み実験は、前記実施例1(1)記載方法に準じ、以下のように行った。すなわち、ヒトLAT3遺伝子cRNA、もしくは対照として水を注入した卵母細胞を、14C−L−ロイシン(100μM)を含むNa非含有取り込み用溶液(実施例1(1)参照)中にて10分培養して、細胞内への放射能の取り込みを測定した。
その結果(第4図)、対照として水を注入した卵母細胞に比べて、LAT3を発現させた卵母細胞においてロイシンのおおきな取り込みが得られた。すでに報告されている輸送系LトランスポーターLAT1及びLAT2は、その機能発現には1回膜貫通型補助因子4F2hcと共存することが要求されるが、LAT3は、4F2hcを必要とせず、単独で機能を発揮した。
(2)ヒトLAT3の輸送活性の塩依存性
ヒトLAT3遺伝子cRNAを注入した卵母細胞によるロイシン取り込み実験において培地に添加する塩の影響を調べた。ロイシンの取り込み実験は、ヒトLAT3遺伝子cRNAを注入した卵母細胞を用い、前記実施例3(1)記載方法に準じて実施した。
取り込み用溶液は、ナトリウムイオンの影響をみる場合は、標準取り込み用溶液に代え、Na非含有取り込み用溶液を用いた。塩素イオンの影響をみる場合は、標準取り込み用溶液にかえて、Cl非含有取り込み用溶液(標準取り込み用溶液のClをグルコネートに代えたもの)を用いた。
その結果(第5図)、細胞外のナトリウムをコリンに代えても、細胞外の塩素イオンをグルコネートに変えても、ロイシン取り込みに何ら影響を与えなかった。このことから、LAT3はナトリウムイオン及び塩素イオンに非依存的に働くトランスポーターであることが示された。
(3)ヒトLAT3の動力学試験
分枝鎖中性アミノ酸を選択的に輸送するナトリウム非依存性アミノ酸トランスポーターLAT3の動力学試験を行った。基質ロイシンの濃度の違いによるロイシン取り込み率の変化を調べることにより、LAT3の動力学試験を行った。
ロイシンの取り込み実験は、ロイシン濃度1、3、10、30、60、100、200、400、1000、2000、3000μMにおいて、ヒトLAT3遺伝子cRNAを注入した卵母細胞を用い、前記実施例3(1)記載方法に準じて実施した。その結果(第6図)、ロイシンの取り込みは濃度依存的な飽和性の取り込みを示し、トランスポーターを介する輸送であることが確認された。加えて、LAT3を介するロイシンの輸送は、高親和性成分と低親和性成分からなることが明らかになった(第6図挿図)。
(4)ヒトLAT3の基質選択性(アミノ酸及びその類似物質添加による阻害実験)
ヒトLAT3遺伝子cRNAを注入した卵母細胞によるロイシンの取り込み実験において、系への各種アミノ酸及びその類似物質添加の影響を調べた。
ロイシンの取り込み実験は、ヒトLAT3遺伝子cRNAを注入した卵母細胞を用い、前記実施例3(1)記載方法に準じて実施した。但し、Na非含有取り込み用溶液を用い、10mMの各種化合物(非標識)の存在下及び非存在下で、14C−ロイシン(100μM)の取り込みを測定した。
その結果(第7図)、イソロイシン、バリン、フェニルアラニン、メチオニンで、強いcis−阻害効果が観察された。酸性アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性アミノ酸(リジン、アルギニン)及びプロリンは、LAT3を介する14C−ロイシンの取り込みに影響しなかった。
D−アミノ酸のうち、D−ロイシンにより、LAT3を介する14C−ロイシンの取り込みの比較的強い抑制効果が得られた(第8図)。
輸送系特異的な抑制薬であるBCH(2−aminobicyclo−(2,2,1)−heptane−2−carboxylic acid)、AIB(α−aminoisobutyric acid)、MeAIB(α−(aminomethyl)isobutyric acid)の効果を調べたが、LAT3を介する14C−ロイシンの取り込みは、輸送系L特異的抑制薬BCHより強く抑制され、LAT3が輸送系Lトランスポーターであることが示された(第9図)。
LAT3を介する14C−ロイシンの取り込みは、ロイシノールで強く抑制された(第10図)。また、バリノール、フェニルアラニノールも比較的強い14C−ロイシンの取り込み抑制効果を示した(第10図)。イソペンチラミン、1,3−ジメチル−n−ブチラミン、ロイシン−メチルエステル、N−アセチルロイシン、イソブチラミン、フェニルエチラミンも有意な抑制効果を示した(第10図)。
LAT3を介する14C−ロイシンの取り込みに対する、各種アニオン性化合物の影響を検討した。その結果(第11図)、オクラトキシンA、インドメタシンにより強い抑制効果が観察された。また、プロベネシド及びサリチル酸も弱いながら有意な抑制効果を示した。
(5)ヒトLAT3の基質選択性(各種アミノ酸及びその類似物質を基質とする取り込み試験)
各種アミノ酸及びその類似物質を基質として、LAT3による取り込みを調べた。
各種アミノ酸及びその類似物質の取り込み実験は、ヒトLAT3遺伝子cRNAを注入した卵母細胞を用い、前記実施例3(1)記載方法に準じて実施した。但し、基質としては、14C−ロイシンに変えて、放射能ラベルされた各種の化合物を用いた。
その結果(第12図)、L−ロイシン(14C化合物)、L−イソロイシン(14C化合物)、L−バリン(14C化合物)、L−フェニルアラニン(14C化合物)を基質とした場合に、卵母細胞への大きな取り込みが認められた。また、L−メチオニン(14C化合物)、L−チロシン(14C化合物)、L−プロリン(14C化合物)を基質とした場合に、卵母細胞への小さいながら有意な取り込みが認められた。D−ロイシン(14C化合物)を基質とした場合にも、卵母細胞への有意な取り込みが認められた。オクラトキシンAは、LAT3を介する14C−ロイシンの取り込みを強力に抑制したが、オクラトキシンA(14C化合物)はLAT3により輸送されなかった。
(6)ヒトLAT3の輸送活性のpH依存性
ヒトLAT3遺伝子cRNAを注入した卵母細胞によるロイシン取り込み実験においてpHの影響を調べた。
ロイシンの取り込み実験は、ヒトLAT3遺伝子cRNAを注入した卵母細胞を用い、前記実施例3(1)記載方法に準じて実施した。
その結果、ロイシン取り込みには、pH7.0〜8.5で安定した値を示し、生理学的pHが、本トランスポーターの至適pHと考えられた(第13図)。
(7)ヒトLAT3を介するアミノ酸の放出試験
ヒトLAT3遺伝子cRNAを注入した卵母細胞において、前負荷した14C−ロイシンのLAT3を介する放出を調べた。
ヒトLAT3遺伝子cRNAを注入した卵母細胞に100nlの400μM14C−ロイシン(2nCi)を注入し、氷冷のロイシンを含まないNa非含有取り込み用溶液で洗浄した後、室温(18℃〜22℃)のロイシン(1mM)添加あるいは未添加のNa非含有取り込み用溶液に移し、細胞外に放出される14C−ロイシンの量を測定した。また、対照としてヒトLAT3遺伝子cRNAの代わりに水を注入した卵母細胞にも同様に100nlの400μM14C−ロイシン(2nCi)を注入し、同様にして細胞外に放出される14C−ロイシンの量を測定した。
その結果、ヒトLAT3においては細胞外にロイシンを添加しない場合においても、14C−ロイシンの有意な放出が観察され、その放出は細胞外にロイシンを添加することによって僅かに上昇したものの、大きな変化はなかった(第14図)。これに対して、対照としてヒトLAT3遺伝子cRNAの代わりに水を注入した卵母細胞においては、細胞外へのロイシン添加の有無にかかわらず、14C−ロイシンの有意な放出は観察されなかった(第14図)。従って、LAT3は僅かな交換輸送モードを含む可能性を残しつつ、大方は促通拡散型輸送を媒介するトランスポーターであると結論された。
(8)N−エチルマレイミドの影響
ヒトLAT3遺伝子cRNAを注入した卵母細胞において、14C−ロイシンの取り込みに対するN−エチルマレイミドの影響を検討した。
ヒトLAT3遺伝子cRNAを注入した卵母細胞、ヒトLAT3遺伝子cRNAと4F2hc遺伝子cRNAを注入した卵母細胞、もしくは対照として水を注入した卵母細胞を、14C−L−ロイシン(100μM)を含むNa非含有取り込み用溶液(実施例3(2)参照)中にて10分培養して、実施例3(1)記載方法に準じて細胞内への放射能の取り込みを測定した。その際、5mMのN−エチルマレイミドの15分間前の処理、及び取り込み用溶液への5mMのN−エチルマレイミド含有の有無の、14C−L−ロイシン取り込み量への影響を検討した。
その結果、N−エチルマレイミド前処置により、LAT3による14C−L−ロイシンの取り込みは、ほぼ完全に抑制された(第15図)。このN−エチルマレイミドの効果は、取り込み用溶液中でのN−エチルマレイミドの存在の有無によらなかった。これに対して、LAT1による14C−L−ロイシン取り込みは、N−エチルマレイミドにより影響を受けなかった(第15図)。
(9)ヒト前立腺癌及びヒト腎癌におけるLAT3の発現。
常法に従い、ヒト前立腺癌及びヒト腎癌の外科手術摘出標本のパラフィン切片をアフィニティー精製抗LAT3抗血清(2μg/ml)で処理後、ジアミノベンチジンで発色した。また、染色の特異性を検討する目的で、200μg/mlの抗原ペプチドの存在下でアフィニティー精製抗LAT3抗血清(2μg/ml)で処理する実験も行った。
その結果、ヒト前立腺癌(第16図A)及びヒト腎癌(第16図C)では、腫瘍細胞に一致してLAT3の染色が見られた。この染色は、抗原ペプチドの存在下で抗LAT3抗体を作用させた場合には検出されず、染色の特異性が示された(第16図B及びD)。
(10)マウスLAT3の機能の確認
実施例2により得られたマウスLAT3のcDNAを、NotIで切断して、SP6RNAポリメラーゼを用いてcRNAを調製した。マウスLAT3遺伝子cRNAを卵母細胞に発現させ14C−ロイシンの取り込みを測定した。
マウスLAT3遺伝子cRNA25ngを卵母細胞に注入することによって発現させ3日間培養した。マウスLAT3遺伝子cRNAを注入した卵母細胞について、基質としてロイシンを用い、基質の取り込み実験を実施例3(1)に準じて行った。
その結果、ロイシンの取り込みは、ヒトLAT3と同様、マウスLAT3を発現させた卵母細胞では、対照として水を注入した卵母細胞に比べて大きなロイシンの取り込みが観察された。さらに、マウスLAT3もヒトLAT3と同様な基質選択性を示すことが示された。
実施例4: 単一分子で機能する分枝鎖中性アミノ酸を選択的に輸送するナトリウム非依存性アミノ酸トランスポーターLAT4のヒト及びマウスcDNAの同定
(1)LAT4 cDNAの同定
ヒトLAT3の翻訳領域の塩基配列を用いたEST(expressed sequence tag)データベースの検索によって得られた、ヒトLAT3と類似のヒト胎児脳由来の塩基配列(GenBankTM/EBI/DDBJ accession No.AW162917)に相当するcDNAクローン(IMAGE clone I.D.:2783525)、及びヒトLAT3と類似のマウス腎由来の塩基配列(GenBankTM/EBI/DDBJ accession No.AW106550)に相当するcDNAクローン(IMAGE clone I.D.:2235970)をIMAGE(Integrated and Molecular Analysis of Genomes and their Expression)より購入し、塩基配列決定のための合成プライマーを用いてダイターミネーターサイクルシーケンシング法(Applied Biosystems社)により、cDNAの全長の塩基配列を決定した。また、cDNAの塩基配列を常法により解析して、cDNAの翻訳領域とそこにコードされるタンパク質のアミノ酸配列を決定した。
このヒト配列を後記配列表の配列番号3に、マウス配列を後記配列表の配列番号4に示した。
ヒトLAT3とヒトLAT4のアミノ酸配列の比較を第17図に示した。ヒトLAT3とヒトLAT4のアミノ酸配列は、58%の相同性を有していた。
ヒトLAT3とマウスLAT4のアミノ酸配列の比較を第18図に示した。ヒトLAT3とマウスLAT4のアミノ酸配列は、90%の相同性を有していた。
(2)ヒト及びマウスの種々の組織におけるLAT4遺伝子の発現(ノーザンブロッティングによる解析)
ヒトLAT4遺伝子の第307−1012番目の塩基に相当するcDNA断片を32P−dCTPでラベルし、これをプローブとして用いて、ヒトの種々の組織から抽出したポリ(A)RNAを含んだMultiple Tissue Northern Blots(Human、Clontech社製)に対して、ノーザンブハイブリダイゼーションを以下のようにして行った。このフィルター膜を42℃で、32P−dCTPでラベルしたLAT4 cDNA断片を含んだハイブリダイゼーション液で1晩ハイブリダイゼーションを行った。フィルターを、65℃にて、0.1%SDSを含む0.1xSSCで洗浄した。
ノーザンブロッティングの結果(第24図)、胎盤、腎臓、及び骨格筋において強く発現し、白血球、脳、心臓、脾臓、小腸、肺、及び大腸に弱く発現し、胸腺、及び肝臓にさらに弱く発現していることが示された。
マウスLAT4遺伝子の第122−525番目の塩基に相当するcDNA断片を32P−dCTPでラベルし、これをプローブとして用いて、マウスの種々の組織から抽出したRNAに対してノーザンブロッティングを以下のようにして行った。3μgのポリ(A)RNAを1%アガロース/ホルムアルデヒドゲルで電気泳動したのち、ニトロセルロースフィルターにトランスファーした。このフィルターを42℃で、32P−dCTPでラベルしたマウスLAT4cDNA断片を含んだハイブリダイゼーション液で1晩ハイブリダイゼーションを行った。フィルターを、65℃にて、0.1%SDSを含む0.1xSSCで洗浄した。
ノーザンブロッティングの結果(第25図)、腎臓、胎盤、脳、小腸において強く発現していることが示された。
実施例5: 単一分子で機能する分枝鎖中性アミノ酸を選択的に輸送するナトリウム非依存性アミノ酸トランスポーターLAT4の特徴づけ
(1)マウスLAT4のツメガエル卵母細胞への機能発現
マウスLAT4のcDNAを含む発現プラスミドベクターpcDNA3.1(+)を制限酵素XbaIで切断し、T7 RNAポリメラーゼを用いてcRNA(cDNAに相補的なRNA)を調製した。
マウスLAT4遺伝子cRNA 25ngを卵母細胞に注入することによって発現させ、3日間培養した。
ロイシンの取り込み実験は、前記実施例3(1)記載方法に準じ、以下のように行った。すなわち、マウスLAT4遺伝子cRNA、もしくは対照として水を注入した卵母細胞を、14C−L−ロイシン(100μM)を含むNa非含有取り込み用溶液(実施例3(1)参照)中にて10分培養して、細胞内への放射能の取り込みを測定した。
その結果、対照として水を注入した卵母細胞に比べて、LAT4を発現させた卵母組胞においてロイシンのおおきな取り込みが得られた。LAT3と同様に、またすでに報告されている輸送系LトランスポーターLAT1及びLAT2と異なり、LAT4は、4F2hcを必要とせず、単独で機能を発揮した。
(2)マウスLAT4の輸送活性の塩依存性
マウスLAT4cRNAを注入した卵母細胞によるロイシン取り込み実験において培地に添加する塩の影響を調べた。ロイシンの取り込み実験は、マウスLAT4遺伝子cRNAを注入した卵母細胞を用い、前記実施例3(1)記載方法に準じて実施した。
取り込み用溶液は、ナトリウムイオンの影響をみる場合は、標準取り込み用溶液に代え、Na非含有取り込み用溶液を用いた。塩素イオンの影響をみる場合は、標準取り込み用溶液にかえて、Cl非含有取り込み用溶液(標準取り込み用溶液のClをグルコネートに代えたものを用いた。
その結果(第19図)、細胞外のナトリウムをコリンに代えても、細胞外の塩素イオンをグルコネートに変えても、ロイシン取り込みに何ら影響を与えなかった。このことから、LAT4はナトリウムイオン及び塩素イオンに非依存的に働くトランスポーターであることが示された。
(3)マウスLAT4の動力学試験
分枝鎖中性アミノ酸を選択的に輸送するナトリウム非依存性アミノ酸トランスポーターLAT4の動力学試験を行った。基質ロイシンの濃度の違いによるロイシン取り込み率の変化を調べることにより、LAT3の動力学試験を行った。
ロイシンの取り込み実験は、ロイシン濃度0.01、0.03、0.1、0.3、1、3、10mMにおいて、マウスLAT4 cRNAを注入した卵母細胞を用い、前記実施例3(1)記載方法に準じて実施した。その結果、ロイシンの取り込みは濃度依存的な飽和性の取り込みを示し、トランスポーターを介する輸送であることが確認された。加えて、LAT4を介するロイシンの輸送は、LAT3を介するロイシンの輸送と同様、高親和性成分と低親和性成分からなることが明らかになった。
(4)マウスLAT4の基質選択性(アミノ酸及びその類似物質添加による阻害実験)
マウスLAT4遺伝子cRNAを注入した卵母細胞によるロイシンの取り込み実験において、系への各種アミノ酸及びその類似物質添加の影響を調べた。
ロイシンの取り込み実験は、マウスLAT4遺伝子cRNAを注入した卵母細胞を用い、前記実施例3(1)記載方法に準じて実施した。但し、Na非含有取り込み用溶液を用い、10mMの各種化合物(非標識)の存在下及び非存在下で、14C−ロイシン(100μM)の取り込みを測定した。
その結果(第20図)、イソロイシン、バリン、フェニルアラニン、メチオニンで、強いcis−阻害効果が観察された。酸性アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性アミノ酸(リジン、アルギニン)及びプロリンは、LAT4を介する14C−ロイシンの取り込みに影響しなかった。
D−アミノ酸のうち、D−ロイシン、D−ヒスチジン、D−メチオニンにより、LAT4を介する14C−ロイシンの取り込みの比較的強い抑制効果が得られた(第21図)。
輸送系特異的な抑制薬であるBCH(2−aminobicyclo−(2,2,1)−heptane−2−carboxylic acid)、AIB(a−aminoisobutyric acid)、MeAIB(a−(aminomethyl)isobutyric acid)の効果を調べたが、LAT4を介する14C−ロイシンの取り込みは、輸送系L特異的抑制薬BCHより強く抑制され、LAT4が輸送系Lトランスポーターであることが示された(第22図)。
(5)マウスLAT4の基質選択性(各種アミノ酸及びその類似物質を基質とする取り込み試験)
各種アミノ酸及びその類似物質を基質として、LAT4による取り込みを調べた。
各種アミノ酸及びその類似物質の取り込み実験は、マウスLAT4遺伝子cRNAを注入した卵母細胞を用い、前記実施例3(1)記載方法に準じて実施した。但し、基質としては、14C−ロイシンに変えて、放射能ラベルされた各種の化合物を用いた。
その結果(第23図)、L−ロイシン(14C化合物)、L−イソロイシン(14C化合物)、L−バリン(14C化合物)、L−フェニルアラニン(14C化合物)、L−メチオニン(14C化合物)を基質とした場合に、卵母細胞への大きな取り込みが認められた。D−ロイシン(14C化合物)を基質とした場合にも、卵母細胞への有意な取り込みが認められた。
(6)ヒトLAT4の機能の確認
実施例4により得られたヒトLAT4のcDNAを、XhoIで切断して、T3 RNAポリメラーゼを用いてcRNAを調製した。ヒトLAT4遺伝子cRNAを卵母細胞に発現させ14C−ロイシンの取り込みを測定した。
ヒトLAT4遺伝子cRNA 25ngを卵母細胞に注入することによって発現させ3日間培養した。ヒトLAT4遺伝子cRNAを注入した卵母細胞について、基質としてロイシンを用い、基質の取り込み実験を実施例3(1)に準じて行った。
その結果、ロイシンの取り込みは、マウスLAT4と同様、ヒトLAT4を発現させた卵母細胞では、対照として水を注入した卵母細胞に比べて大きなロイシンの取り込みが観察された。さらに、ヒトLAT4もマウスLAT4と同様な基質選択性を示すことが示された。
【産業上の利用可能性】
本発明の単一分子で機能する分枝鎖中性アミノ酸トランスポーターは、当該トランスポーターの発現箇所での分枝鎖中性アミノ酸及び薬物や外来性異物も含めたアミノ酸類似化合物の輸送のインビトロでの検討や、それを基にしたそれら化合物の体内動態のインビトロでの予測を可能とする。さらに、当該トランスポーターの発現箇所を効率良く透過する薬物の開発に有用と考えられる。また、本発明の単一分子で機能する分枝鎖中性アミノ酸トランスポーターは、当該トランスポーターの有する分枝鎖中性アミノ酸及びその類似物質を輸送する能力を変調させることにより、アミノ酸代謝を変調させる方法、正常細胞及び腫瘍細胞の細胞増殖を制御する方法の開発に利用できる。また当該トランスポーターは、腫瘍抗原として、腫瘍細胞と正常細胞を区別する手段として利用できる。
【配列表】


















































【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】

【図17】

【図18】

【図19】

【図20】

【図21】

【図22】

【図23】

【図24】

【図25】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(A)ないし(H)から選択されるタンパク質であって、ナトリウム非依存的に分枝鎖中性アミノ酸及びその類似物質を輸送する能力を単一分子で発揮するタンパク質。
(A)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(B)配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(C)配列番号6で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(D)配列番号8で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(E)配列番号2で示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質。
(F)配列番号4で示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質。
(G)配列番号6で示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質。
(H)配列番号8で示されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質。
【請求項2】
ヒト又はマウス由来である請求の範囲第1項に記載のタンパク質。
【請求項3】
臓器、組織、もしくは培養細胞由来である請求の範囲第1項に記載のタンパク質。
【請求項4】
請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載のタンパク質をコードする遺伝子。
【請求項5】
以下の(a)ないし(h)から選択されるDNAであって、ナトリウム非依存的に分枝鎖中性アミノ酸及びその類似物質を輸送する能力を単一分子で発揮するタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子。
(a)配列番号1で示される塩基配列からなるDNA。
(b)配列番号3で示される塩基配列からなるDNA。
(c)配列番号5で示される塩基配列からなるDNA。
(d)配列番号7で示される塩基配列からなるDNA。
(e)配列番号1で示される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA。
(f)配列番号3で示される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA。
(g)配列番号5で示される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA。
(h)配列番号7で示される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA。
【請求項6】
ヒト又はマウス由来である請求の範囲第5項に記載の遺伝子。
【請求項7】
臓器、組織、もしくは培養細胞由来である請求の範囲第5項に記載の遺伝子。
【請求項8】
請求の範囲第4項〜第7項のいずれかに記載の遺伝子もしくは該遺伝子の中のタンパク質をコードする遺伝子を含むプラスミド。
【請求項9】
発現プラスミドである請求の範囲第8項に記載のプラスミド。
【請求項10】
請求の範囲第8項又は第9項に記載のプラスミドで形質転換された宿主細胞。
【請求項11】
配列番号1、3、5又は7で示される塩基配列の中の連続する14塩基以上の部分配列もしくはその相補的な配列を含むヌクレオチド。
【請求項12】
ナトリウム非依存的に分枝鎖中性アミノ酸及びその類似物質を輸送する能力を単一分子で発揮するタンパク質をコードする遺伝子を検出するためのプローブとして使用するものである請求の範囲第11項に記載のヌクレオチド。
【請求項13】
ナトリウム非依存的に分枝鎖中性アミノ酸及びその類似物質を輸送する能力を単一分子で発揮するタンパク質をコードする遺伝子の発現を変調させるために使用するものである請求の範囲第11項に記載のヌクレオチド。
【請求項14】
請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載のタンパク質に対する抗体。
【請求項15】
請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載のタンパク質を用いて、該タンパク質の有するナトリウム非依存的に分枝鎖中性アミノ酸及びその類似物質を輸送する能力に対する被検物質の基質あるいは阻害物質としての作用を検出する方法。
【請求項16】
請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載のタンパク質、その特異抗体、その機能促進物質あるいは機能抑制物質を用いて、該タンパク質の有する分枝鎖中性アミノ酸及びその類似物質を輸送する能力を変調させることにより、正常細胞もしくは腫瘍細胞の増殖を制御する方法。
【請求項17】
請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載のタンパク質、その特異抗体、その機能促進物質あるいは機能抑制物質を用いて、該タンパク質の有する分枝鎖中性アミノ酸及びその類似物質を輸送する能力を変調させることにより、該タンパク質によって輸送される薬物、毒物、あるいは外来性異物体内動態を変更する方法。
【請求項18】
請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載のタンパク質、その特異抗体、その機能促進物質あるいは機能抑制物質を用いて、該タンパク質を特定の細胞に過剰発現させるか、あるいはすでに細胞に存在する該タンパク質の有する分枝鎖中性アミノ酸及びその類似物質を輸送する能力を変調させることにより、該タンパク質によって輸送される分枝鎖中性アミノ酸の体内動態あるいは生体内代謝を変更する方法。
【請求項19】
請求の範囲第13項に記載のヌクレオチドを用いて、ナトリウム非依存的に分枝鎖中性アミノ酸及びその類似物質を輸送する能力を単一分子で発揮するタンパク質の発現を変調させることにより、正常細胞もしくは腫瘍細胞の増殖を制御する方法。
【請求項20】
請求の範囲第13項に記載のヌクレオチドを用いて、ナトリウム非依存的に分枝鎖中性アミノ酸及びその類似物質を輸送する能力を単一分子で発揮するタンパク質の発現を変調させることにより、該タンパク質によって輸送される薬物、毒物、あるいは外来性異物体内動態を変更する方法。
【請求項21】
請求の範囲第13項に記載のヌクレオチドを用いて、ナトリウム非依存的に分枝鎖中性アミノ酸及びその類似物質を輸送する能力を単一分子で発揮するタンパク質の発現を変調させることにより、該タンパク質によって輸送される分枝鎖中性アミノ酸の体内動態あるいは生体内代謝を変更する方法。
【請求項22】
請求の範囲第1項〜第3項のいずれかに記載のタンパク質に対する特異抗体、あるいは請求の範囲第11項及び第12項に記載のヌクレオチドを用いて、腫瘍細胞と正常細胞を区別する方法。

【国際公開番号】WO2004/078970
【国際公開日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【発行日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−503151(P2005−503151)
【国際出願番号】PCT/JP2004/002905
【国際出願日】平成16年3月5日(2004.3.5)
【出願人】(503320496)株式会社ヒューマンセルシステムズ (3)
【Fターム(参考)】