説明

単一周波数ネットワークにおいて時間遅延及び周波数オフセットを推定する方法及び装置

1つの方法では、送信されたサンプルの少なくとも1つのブロックを担持するアップリンク信号が送信され、アップリンク信号の歪んだコピーがダウンリンク信号として受信される。受信されたサンプルの複数のブロックが、受信されたダウンリンク信号に基づいて生成され、アップリンク信号とダウンリンク信号との間の時間遅延及び周波数オフセットが、送信されたサンプルのブロックと受信されたサンプルの複数のブロックのうちの少なくとも1つとの間の相関に基づいて決定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
通常の無線デジタル伝送システムでは、しばしば、送信された信号に関連する受信された信号における時間及び周波数のオフセットを検出又は推定する必要がある。単一周波数ネットワーク(SFN)では、例えば、検出された時間及び周波数のオフセットは、送信された信号及び受信された信号の時間及び周波数を同期するために使用される。よく知られているように、SFNはいくつかの送信機が同じ周波数チャネルを通じて同じ信号を同時に送信するブロードキャスト・ネットワークである。1つのタイプの通常のSFNは、ハイブリッド衛星及び地上SFNとして知られている。例示的ハイブリッドSFNは、ハンドヘルド向けデジタル・ビデオ・ブロードキャスティング−衛星サービス(DVB−SH)規格、「Framing Structure、Channel Coding and Modulation for Satellite Services to Handheld devices(SH)below 3GHz」、DVB Document A111 Rev.1、2007年7月、に定義されている。
【背景技術】
【0002】
DVB−SH SFNは、信号が衛星通信リンク及び地上通信リンクの両方を介して同じ周波数チャネルを通じて同時に送信されるハイブリッド衛星及び地上SFNである。
【0003】
通常のDVB−SH SFNでは、衛星からの信号は、傾斜軌道における衛星の相対運動のために、地上で繰り返される信号に関して様々な時間遅延及び周波数オフセットを有する。この様々な時間遅延及び周波数オフセットのために、時間及び周波数の同期がDVB−SH SFNにおける受信機による信号の適切な受信を保証する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「Framing Structure、Channel Coding and Modulation for Satellite Services to Handheld devices(SH)below 3GHz」、DVB Document A111 Rev.1、2007年7月
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
例示的実施形態は、無線ネットワークにおける送信された信号と受信された信号との間の時間遅延及び周波数オフセットを推定するための方法及び装置を提供する。推定された時間遅延及び周波数オフセットは、衛星及び地上接続を通じて並行して又は同時に受信された信号間の時間遅延及び周波数オフセットを補償するために使用される。
【0006】
一実施形態では、時間遅延及び周波数オフセットは、特定の相関アルゴリズムを使用して推定され、実際の時間遅延及び周波数オフセットは推定された時間遅延及び周波数オフセットに基づいて補償される。この相関は、時間遅延及び周波数オフセットの両方に関する推定値を提供するために使用される。このアルゴリズムは波形に関係がなく、直交周波数分割多重(OFDM)波形、時分割多重(TDM)波形、並びに他の波形に適用される。
【0007】
さらに、相関は、正確さと複雑さとの間のトレードオフを行い、チャネル状態に応じて検出の信頼性を改善するために使用されることが可能な、調整可能なパラメータを包含する。
【0008】
本方法の一実施形態では、送信されたサンプルの少なくとも1つのブロックを担持するアップリンク信号が送信され、アップリンク信号の歪んだコピーがダウンリンク信号として受信される。受信されたサンプルの複数のブロックが受信されたダウンリンク信号に基づいて生成され、アップリンク信号とダウンリンク信号との間の時間遅延及び周波数オフセットが、送信されたサンプルのブロックと受信されたサンプルの複数のブロックのうちの少なくとも1つとの間の相関に基づいて推定される。次に続く送信された信号と受信された信号との間の実際の時間遅延及び周波数オフセットが、推定された時間遅延及び周波数オフセットに基づいて補償される。
【0009】
一実施形態では、ハイブリッド単一周波数ネットワークにおける時間遅延及び周波数オフセットの補償のための装置は、送信機、受信機、及び検出器を含む。送信機は、送信されたサンプルの少なくとも1つのブロックを担持するアップリンク信号を送信する。受信機は、送信された信号の歪んだコピーであり、受信されたサンプルの複数のブロックを担持するダウンリンク信号を受信する。検出器は、送信されたサンプルの少なくとも1つのブロックと受信されたサンプルの複数のブロックのうちの少なくとも1つとの間の相関に基づいて、アップリンク信号とダウンリンク信号との間の時間遅延及び周波数オフセットを推定する。受信されたサンプルの複数のブロックは、受信されたダウンリンク信号に基づいて生成される。本装置は、推定された時間遅延及び周波数オフセットに基づいて、次に続く送信された信号と受信された信号との間の時間遅延及び周波数オフセットを補償するための調整器をさらに含む。
【0010】
本発明は、本明細書において以下で提供される詳細な説明及び添付の図面からより十分に理解されるようになるであろう。添付の図面では、同様の要素は同様の参照数字によって表され、添付の図面は例示としてのみ提供され、したがって本発明を限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ハイブリッド単一周波数ネットワークの一部分の例を例示する図である。
【図2】一例示的実施形態による時間遅延及び周波数オフセットの補償のための方法を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の様々な例示的実施形態が、本発明のいくつかの例示的実施形態が示されている添付の図面を参照しながらより十分に説明される。
【0013】
本発明の詳細な例示的実施形態が本明細書において開示される。しかし、本明細書において開示される特定の構造及び機能の詳細は、本発明の例示的実施形態を説明するために単に代表的なものである。しかし、本発明は、多くの代替形態で実施されてよく、本明細書において説明される実施形態だけに限定されると解釈されるべきではない。
【0014】
本明細書では様々な要素を記述するために第1の、第2の等の用語が使用されることもあるが、これらの要素はこれらの用語によって限定されるべきではないことが理解されるであろう。これらの用語は、ある要素を別の要素と区別するために使用されるだけである。例えば、本発明の例示的実施形態の範囲から逸脱することなく、第1の要素が第2の要素と称されてもよく、同様に、第2の要素が第1の要素と称されてもよい。本明細書では、用語「及び/又は」は、関連する列挙された項目のうちの1つ又は複数のいずれかの又は全ての組合せを含む。
【0015】
ある要素が別の要素に「接続される」、又は「結合される」と言われた場合は、ある要素が別の要素に直接接続又は結合されてもよく、或いは仲介要素が存在してもよいことが理解されるであろう。それとは対照的に、ある要素が別の要素に「直接接続される」又は「直接結合される」と言われた場合は、仲介要素は存在しない。要素間の関係を記述するために使用される他の語は、同じように解釈されるべきである(例えば、「の間で」対「の間で直接」、「隣接する」対「直接隣接する」等)。
【0016】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態だけを記述するためであり、本発明の例示的実施形態を限定することを意図するものではない。本明細書では、単数形「a」、「an」、及び「the」は、コンテキストが別途明示しない限り、複数形も含むものとする。用語「備える(comprises)」、「備えること(comprising)」、「含む(includes)」、及び/又は「含むこと(including)」は、本明細書で使用された場合は、記述された特徴、整数、ステップ、動作、要素、及び/又は構成要素の存在を特定するが、1つ又は複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、及び/又はそれらのグループの存在又は追加を排除しないことがさらに理解されるであろう。
【0017】
いくつかの代替実施形態では、言及された機能/動作は、図に示されている順序から外れて行われてよいことにも留意されたい。例えば、連続して示されている2つの図は、関係する機能/動作に応じて、実際には事実上平行して実行されてもよく、又は時には逆の順序で実行されてもよい。
【0018】
例示的実施形態の徹底的な理解を提供するために、以下の説明において具体的な詳細が提供される。しかし、例示的実施形態はこれらの具体的な詳細なしに実施されてよいことが当業者によって理解されるであろう。例えば、システムは、不必要な詳細で例示的実施形態を不明瞭にしないように、ブロック図で示されてよい。他の例では、よく知られているプロセス、構造、及び技法は、例示的実施形態を不明瞭にすることを回避するために、不必要な詳細なしに示されてよい。
【0019】
さらに、例示的実施形態は、フローチャート、流れ図、データ流れ図、構造図、又はブロック図として図示されるプロセスとして記述されてよいことが留意される。フローチャートは動作を順次プロセスとして記述することができるが、動作の多くは、パラレルに、並行して、又は同時に実行されてよい。さらに、動作の順序は再配列されてよい。プロセスは、プロセスの動作が完了されたときに終了されてよいが、図に含まれていない追加のステップを有してもよい。プロセスは、メソッド、関数、プロシージャ、サブルーチン、サブプログラム等に対応してよい。プロセスが関数に対応している場合、プロセスの終了は、その関数の呼び出し関数又はメイン関数への戻りに対応してよい。
【0020】
さらに、本明細書に開示されているように、用語「バッファ」は、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、磁気RAM、コア・メモリ、及び/又は情報を記憶するための他の機械可読媒体を含めて、データを記憶するための1つ又は複数のデバイスを表してよい。用語「記憶媒体」は、リード・オンリ・メモリ(ROM)、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、磁気RAM、コア・メモリ、磁気ディスク記憶媒体、光記憶媒体、フラッシュ・メモリ・デバイス、及び/又は情報を記憶するための他の機械可読媒体を含めて、データを記憶するための1つ又は複数のデバイスを表してよい。用語「コンピュータ可読媒体」は、ポータブル若しくは固定記憶装置、光記憶装置、無線チャネル、並びに命令(1つ又は複数)及び/又はデータを記憶、包含若しくは担持することができる様々な他の媒体を含んでよいが、それらに限定されない。
【0021】
さらに、例示的実施形態は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語、又はそれらの任意の組合せによって実施されてよい。ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、又はマイクロコードで実施される場合は、必要なタスクを実行するためのプログラムコード又はコード・セグメントは、記憶媒体等の機械又はコンピュータ可読媒体に記憶されてよい。プロセッサ(1つ又は複数)は、必要なタスクを実行することができる。
【0022】
コード・セグメントは、プロシージャ、関数、サブプログラム、プログラム、ルーチン、サブルーチン、モジュール、ソフトウェア・パッケージ、クラス、或いは命令、データ構造、又はプログラム文の任意の組合せを表してよい。コード・セグメントは、情報、データ、引数、パラメータ、又はメモリ・コンテンツを渡すこと及び/又は受信することにより、別のコード・セグメント又はハードウェア回路に結合されることが可能である。情報、引数、パラメータ、データ等は、メモリ共有、メッセージ・パッシング、トークン・パッシング、ネットワーク伝送等を含む任意の適切な手段を介して受け渡し、転送、又は送信されることが可能である。
【0023】
本明細書では、用語「受信機」は、クライアント、モバイル、モバイル・ユニット、移動局、ユーザ装置(UE)、加入者、ユーザ、リモート・ステーション、アクセス端末、受信側等と同義とみなされてよく、以下では時にはそう呼ばれることもあり、無線通信ネットワークにおける無線リソースのリモート・ユーザを表してもよい。
【0024】
本明細書では、x(t)は、信号のアップリンクされた又は送信されたバージョンと呼ばれ、y(t)は、送信された信号のダウンリンク又は受信されたバージョンと呼ばれる。受信された信号y(t)は、送信された信号x(t)の歪んだコピーであるが、同じ情報を担持する。歪みは、ガウス雑音、周波数オフセット、時間遅延等であり得る。
【0025】
図1は、ハイブリッド衛星及び地上単一周波数ネットワーク(ハイブリッドSFN)の一部分を例示する。図1に示されているように、信号の地上繰返しバージョンは、衛星104又は何らかの他の伝送手段を介してブロードキャスト・ヘッドエンド(BHE)から地上リピート・アンテナ110に進む。次いで、信号はリピート・アンテナ110から無線リンクを介して受信機108に進む。この信号はまた、地上リピート・アンテナ110によって繰り返されることなく、衛星106を介して受信機108において受信される。
【0026】
地球上の受信機108に対する傾斜軌道における衛星106の相対運動のために、衛星106を介して受信された信号y(t)は、この信号の地上で繰り返されたバージョンに関して様々な時間遅延及び周波数オフセットを有する。
【0027】
そのようなハイブリッドSFNにおいて時間及び周波数の同期を実現するために、BHE102は、BHE102に到着するダウンリンク衛星信号y(t)が―衛星106がBHE102の位置に対して静止しているかのように―固定時間遅延及び固定中心周波数を有するように、次に続くアップリンク信号の時間及び周波数を調整するための調整器1020を含む。
【0028】
図2は、一例示的実施形態による時間遅延及び周波数オフセットを補償する方法を例示するフローチャートである。図2に示されている方法は、図1に示されているBHE102において繰り返し実行されることが可能である。簡潔にするために、単一の繰返しだけが詳細に説明される。
【0029】
図1及び2を参照すると、ステップS202において、調整器1020が、サービス及びネットワーク・ヘッドエンド(図示せず)からのマルチメディア・コンテンツ(例えば、音声、ビデオ、ピクチャ等)を送信されるべきデジタル・サンプルxに変換する。調整器1020がサンプリングを介してサンプルxを生成するやり方は、当技術分野ではよく知られており、したがって詳細な議論は、簡潔にするために省略される。連続したサンプルxが、サンプルのブロック又はフレームにグループ化される。サンプルの各ブロック又はフレームはNのサンプルを含み、この場合、Nは整数(例えば、1000、2000等)である。本明細書では、サンプルxは、「送信されたサンプル」と呼ばれてよい。
【0030】
調整器1020は、生成されたサンプルのブロックを送信機処理ユニット1104及び参照フレーム・バッファ1032に出力する。
【0031】
ステップS204において、調整器1020からの連続したブロック・サンプルがブロックごとベースで参照フレーム・バッファ1032に記憶される。明確にするために、例示的実施形態は、参照フレーム・バッファ1032に記憶されているサンプルの単一のブロックに関して論じられる。しかし、サンプルの1つ又は複数のブロックが参照フレーム・バッファ1032に記憶されてよいことが理解されるであろう。サンプルの記憶されたブロック(1つ又は複数)が、整数である添字bによって添字付けされる。
【0032】
ステップS206において、送信機処理ユニット1104がサンプルの各ブロックxを無線アップリンク・チャネル上での伝送に適したアナログ・アップリンク信号x(t)に順次変換する。図2における記憶ステップS204及び処理ステップS206は、連続したステップとして示されているが、並行して又は同時に実行されてよい。この場合、調整器1020は、サンプルのブロックを参照フレーム・バッファ1032及び送信機処理ユニット1104にパラレルに出力する。
【0033】
ステップS208において、アップリンク信号x(t)がアップリンク・チャネル上でブロードキャストされる。
【0034】
受信するとすぐ、衛星106が信号(ここではy(t))をダウンリンク上でブロードキャストする。ブロードキャストされたダウンリンク信号がBHE102並びに受信機108において受信される。上記のように、受信された信号y(t)は、x(t)の歪んだコピーである。
【0035】
さらに図1及び2を参照すると、ステップS209において、受信機処理ユニット1102が、受信された信号y(t)によって担持されたデジタル・サンプルy(「受信されたサンプル」と呼ばれる)を回復(生成)するために受信された信号y(t)を処理する。送信されたサンプルxを生成し、受信されたサンプルを回復する際に使用されるサンプルレートは、明確にするために同じであると仮定される。しかし、例示的実施形態は、当業者によって様々なサンプルレートに容易に適応されることが可能である。
【0036】
送信されたサンプルxの場合と同様に、連続して受信されたサンプルyは、サンプルのブロック又はフレームにグループ化され、サンプルの各ブロック又はフレームはまた、Nのサンプルを含む。回復されたサンプルの連続したブロックは、ブロックごとベースでフィードバック・キャプチャ・バッファ1106に記憶される。サンプルの連続したブロックはまた、添字kを使用して添字付けされ、この場合、k=0、±1、±2、...、Kである。受信されたサンプルの各ブロックに関連付けられた添字kは、受信されたサンプルの複数のブロックの中の受信されたサンプルの1つのブロックの位置を表す。
【0037】
フィードバック・キャプチャ・バッファ1106に記憶されているサンプルyの少なくとも1つの回復されたブロックが、参照フレーム・バッファ1032に記憶されている送信されたサンプルのブロックに対応することを保証するために、BHE102は、参照フレーム・バッファ1032を満たした後に、即ち参照フレーム・バッファ1032がその容量に達した後に所与の時間間隔を置いて、受信されたサンプルyをフィードバック・キャプチャ・バッファ1106に記憶し始める。
【0038】
参照フレーム・バッファ1032は、サンプルの1つ又は2つのブロックを記憶する容量を有することができる。フィードバック・キャプチャ・バッファ1106のサイズは様々でよいが、通常、受信されたサンプルの複数のブロックを保持するのに十分大きい(例えば、受信されたサンプルの約10ミリ秒)。
【0039】
BHE102が受信されたサンプルを記憶する前に待つ時間の間隔は、調整器1020から受信機処理ユニット1102に進む信号の往復遅延時間(RTD)、即ち、BHE102における信号x(t)の送信と、対応する情報を担持する信号y(t)の受信との間の往復遅延時間(RTD)に等しくてよい。
【0040】
一実施例では、Tがサンプル継続時間を表す場合は、送信と、対応する信号の受信との間の名目上のRTDは、サンプルの数の点から見て表され、Dによって示される。即ち、D−Tは、送信された信号が調整器1020から衛星106を介して受信機1102に進むための名目上のRTDである。
【0041】
フィードバック・キャプチャ・バッファ1106が一杯になった―フィードバック・キャプチャ・バッファ1106の容量に達した―後に、受信されたサンプルyのブロックがブロックごとベースで検出器1030に出力される。参照フレーム・バッファ1032はまた、サンプルxの送信されたブロックを検出器1030に出力する。
【0042】
ステップS212において、検出器1030が、参照フレーム・バッファ1032からの送信されたサンプルの少なくとも1つのブロック及びフィードバック・キャプチャ・バッファ1106からの受信されたサンプルの複数のブロックのうちの少なくとも1つに基づいて、対応する信号の送信と受信との間の時間遅延Δt及び周波数オフセットΔfを推定する。時間遅延Δt及び周波数オフセットΔfを推定するための例示的プロセスは、以下でより詳細に説明される。推定された時間遅延Δt及び周波数オフセットΔfは、調整器1020に出力される。
【0043】
ステップS214において、調整器1020は、推定された時間遅延Δt及び周波数オフセットΔfに基づいて、対応する信号の送信と受信との間の実際の時間遅延Δt及び周波数オフセットΔfを補償する。調整器1020が時間遅延及び周波数オフセットを補償するやり方は、当技術分野ではよく知られており、したがって詳細な議論は省略される。
【0044】
次に、時間遅延Δt及び周波数オフセットΔfを推定するための例示的方法が説明される。上記のように、本方法は、図1における検出器1030において実行されることが可能である。本方法は、明確にするために、受信された信号y(t)における唯一の歪みが実際の時間遅延Δt、周波数オフセットΔf、及びガウス雑音である例示的状況に関して説明される。この実施例では、受信された信号y(t)は、以下で示された等式(1)によって表される。
【数1】

【0045】
等式(1)では、Pは、送信された信号x(t)の送信電力に関連する受信された信号y(t)の電力であり、ω(t)はガウス雑音である。実際の時間遅延Δtは、調整器1020から衛星106を介して受信機1102に進む信号の往復時間(RTD)を表す。実際の周波数オフセットΔfは、衛星106の運動によるドップラ効果の結果である。
【0046】
時間遅延Δtが整数の複数のサンプル継続時間Tであると仮定すると、各受信されたサンプルyは、以下で示された等式(2)によって与えられる。
【数2】

【0047】
上記の等式では、Mは、サンプルの数として表された、名目上の遅延Dに対する追加の遅延である。追加の遅延Mは、時間遅延Δtに関し、以下で示された等式(3)によって与えられる。
【数3】

【0048】
等式(3)では、Mは、名目上のオフセットDに関する時間オフセットの瞬時変動を表す。
【0049】
図1を再度参照すると、時間遅延及び周波数オフセットを推定する際に、検出器1030が、送信されたサンプルxの記憶されているブロックと回復されたサンプルyの各記憶されているブロックとの間の相関Cを計算する。上記で論じられたように、送信されたサンプルの各ブロック及び回復されたサンプルの各ブロックは、同じ数のサンプル―即ちNのサンプル―を含む。数Nは、ネットワーク・コントローラにおける経験的データに基づいて決定される。
【0050】
検出器1030は、以下で示された等式(4)に従って、送信されたサンプルのブロックと回復されたサンプルの各対応するブロックとの間の相関Cを計算する。
【数4】

【0051】
等式(4)では、記号()は、複素共役を表し、qは、Yn+k及びXによって表されたサンプルとそれぞれのサンプルYn+k+q及びxn+qとの間の距離を示すパラメータである。例示的実施形態によれば、パラメータqは、周波数オフセット推定の正確さを決定する。qが大きくなるほど、推定は正確になる。qの値は、所与の正確さ要件のために経験的に決定されることが可能である。通常、qは、およそ、約10Nから約100Nの間でよい。送信されたサンプルの所与のブロックに関しては、k=0、±1、±2、...、Kによって添字付けされた受信されたサンプルのブロックごとに相関が算出される。
【0052】
例示的実施形態によれば、等式(4)によって与えられた単一の相関Cは、送信された信号と受信された信号との間の時間遅延及び周波数オフセットの両方を推定するために使用される。時間遅延Δtの推定は、添字k=0、±1、±2、...、±Kによって相関Cの大きさを最大化することにより得られる。即ち、時間遅延は、最大の相関値Cに関連付けられた添字kを識別することにより推定される。本明細書では、最大の相関値は、Ckmaxと呼ばれ、最大の相関Ckmaxに関連付けられた添字kは、kmaxと呼ばれる。この実施例では、kmaxは、受信されたサンプルの複数のブロックの中の最大の相関に関連付けられた受信されたサンプルのブロックの位置を表す。
【0053】
一実施例では、最大の相関Ckmaxの識別は、所与の又は所望の検索ウィンドウ[−K、K]の中で、以下で示された等式(5)によって表された何らかのK>0を検索することとみなされてよい。
【数5】

【0054】
次いで、推定された時間遅延Δtが、以下で等式(6)において示された最大の相関値Ckmaxに関連付けられた添字kmaxに基づいて計算される。
【数6】

【0055】
上記のように、Dは名目上の遅延であり、Tはサンプル継続時間である。言い換えれば、推定された時間遅延Δtは、添字kmax、名目上の遅延D、及びサンプル継続時間Tの関数として計算されることが可能である。
【0056】
例示的実施形態によれば、等式(6)によって与えられた推定された時間遅延Δtは、式(7)によって与えられた条件が満たされた場合に有効である。
【数7】

【0057】
したがって、検索ウィンドウ[−K、K]を選択する際には、D及びKの値は、条件(7)が満たされるように選択される。検索ウィンドウ[−K、K]は、自動的に選択されても、又は経験的データに基づいて人間のネットワーク・オペレータによって選択されてもよい。
【0058】
周波数オフセットはまた、最大の相関値Ckmaxに基づいて推定される。より詳細には、周波数オフセットは、最大の相関値Ckmax、即ち、添字kmaxにおいて求められた相関値Cの位相に基づいて推定される。
【0059】
送信された信号x(t)と受信された信号y(t)との間の推定された周波数オフセットΔfは、以下で示された等式(8)によって与えられる。
【数8】

【0060】
上記のように、qは、サンプルのペア間の距離を示すパラメータであり、Tは、サンプルを生成する際に使用されるサンプル継続時間である。値、arg(Ckmax)は、kmaxにおいて求められた相関Cの位相である。複素数の位相の計算は当技術分野ではよく知られているので、簡単な議論だけが提供される。一実施例では、arg(Ckmax)は、以下で示された式(9)に従って算出されることが可能である。
【数9】

【0061】
式(9)では、Im(Ckmax)は、複素数Ckmaxの虚数部であり、Re(Ckmax)は、複素数Ckmaxの実数部である。
【0062】
例示的実施形態によれば、推定された周波数オフセットΔfは、以下の不等式によって与えられた範囲内の周波数オフセットに有効である。
【数10】

【0063】
不等式(10)は、アルゴリズムが検出/推定することができる周波数オフセットの最大範囲に条件を置く。この範囲は、周波数検出の範囲と呼ばれる。不等式(10)に示されているように、周波数検出の範囲は、パラメータqの関数である。周波数検出の範囲のサイズと推定の正確さとの間にはトレードオフがある。
【0064】
例示的実施形態によれば、推定された時間遅延Δt及び周波数オフセットΔfは、次に続いて送信された信号の時間及び周波数を調整するために調整器1020において使用される。調整器1020は、安定した状態でΔt=D・T及びΔf=0であるように時間遅延及び周波数オフセットを補償するように設計される。
【0065】
推定された時間遅延及び周波数オフセットが実際の時間遅延及び周波数オフセットを補償するために調整器1020によって利用されるやり方はよく知られているので、詳細な議論は、簡潔にするために省略される。
【0066】
補償した後には、参照フレーム・バッファ1032及びフィードバック・キャプチャ・バッファ1106においてサンプルの新しいセットがキャプチャされ、処理の別の繰返しが開始する。
【0067】
時間遅延及び周波数オフセットを推定し、送信された信号と受信された信号との間の実際の時間遅延及び周波数オフセットを補償するための上記の方法は、繰り返し実行されることが可能である。調整器1020と検出器1030との間での繰返しは、閉ループを形成する。
【0068】
次に、OFDM波形の周波数オフセットがそこで推定される例示的アプリケーションが説明される。しかし、例示的実施形態は、他の波形にも適用可能である。この実施例では、Nは高速フーリエ変換(FFT)記号の長さと定義される。Fが2つのOFDMサブキャリア間の周波数間隔である場合は、サブキャリア周波数間隔は、以下の式によって与えられる。
【数11】

【0069】
この実施例では、パラメータqは、FFT記号サイズNに関して正規化され、正規化されたパラメータ(Qと呼ばれる)は、等式(11)によって与えられる。
【数12】

【0070】
等式(12)では、Qは、等式(4)によって与えられた相関における受信された記号のペア間のFFT記号の数を表す。パラメータqの場合と同様に、等式(12)におけるQは、周波数オフセット推定の正確さを決定するパラメータである。Qが大きくなるほど、推定は正確になる。Qの値は、所与の正確さ要件のために経験的に決定されることが可能である。通常、Qは、およそ、約10から約100の間でよい。
【0071】
等式(8)に等式(12)を代入すると、OFDMシステムにおける推定された周波数オフセットΔfは、等式(13)によって与えられる。
【数13】

【0072】
正規化されたパラメータの点から見て、この実施例における周波数検出の範囲は、式(14)によって与えられる。
【数14】

【0073】
例示的実施形態は、DVB−SH単一周波数ネットワークにおいてブロードキャスト・ヘッドエンドで実施されてよい。単一周波数ネットワークにおいて時間及び周波数のオフセットを検出するために使用される相関は、時間及び周波数のオフセットのより信頼可能で正確な推定を提供する。
【0074】
本発明はこのように説明されているが、本発明が多くやり方で変更されてよいことは明らかであろう。そのような変形形態は、本発明からの逸脱とはみなされないものとし、全てのそのような変更形態は、本発明の範囲内に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハイブリッド単一周波数ネットワークにおけるブロードキャスト・ヘッドエンドでの時間遅延及び周波数オフセットを補償する方法であって、
送信されたサンプルの少なくとも1つのブロックを担持するアップリンク信号を送信するステップと、
前記アップリンク信号の歪んだコピーであるダウンリンク信号を受信するステップと、
前記受信されたダウンリンク信号に基づいて、受信されたサンプルの複数のブロックを生成するステップと、
送信されたサンプルの前記ブロックと受信されたサンプルの前記複数のブロックのうちの少なくとも1つとの間の相関に基づいて、前記アップリンク信号と前記ダウンリンク信号との間の時間遅延及び周波数オフセットを推定するステップと、
前記推定された時間遅延及び周波数オフセットに基づいて、次に続く送信された信号と受信された信号との間の時間遅延及び周波数オフセットを補償するステップとを特徴とする、方法。
【請求項2】
送信されたサンプルの前記ブロックを送信の前に第1のバッファに記憶するステップをさらに特徴とし、
前記複数の受信されたサンプルが、送信されたサンプルの前記ブロックが前記第1のバッファに記憶された後に第1の時間帯を置いて受信された前記ダウンリンク信号に対応する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
受信されたサンプルの前記複数のブロックを前記第1の時間帯後に第2のバッファに記憶するステップをさらに特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記推定するステップが、
送信されたサンプルの前記ブロックと受信されたサンプルの前記複数のブロックのそれぞれとの間の相関を算出するステップと、
前記算出された相関の中から最大の相関を識別するステップと、
受信されたサンプルの前記複数のブロックの中の前記最大の相関に関連付けられた受信されたサンプルの前記ブロックの位置に基づいて、前記推定された時間遅延を計算するステップとをさらに特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記計算するステップが、前記最大の相関に関連付けられた受信されたサンプルの前記ブロックの添字に基づいて前記推定された時間遅延を計算する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記推定された時間遅延が、前記添字、前記送信された信号の送信と前記受信された信号の受信との間の名目上の遅延、及び送信されたサンプル又は受信されたサンプルの前記ブロック内のサンプルの数に対応するサンプル継続時間の関数として計算される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記推定するステップが、
送信されたサンプルの前記ブロックと受信されたサンプルの前記複数のブロックのそれぞれとの間の相関を算出するステップと、
前記算出された相関の中から最大の相関を識別するステップと、
前記識別された最大の相関に基づいて前記推定された周波数オフセットを計算するステップとをさらに特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記推定された周波数オフセットが前記最大の相関の位相の関数として計算される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ハイブリッド単一周波数ネットワークにおける時間遅延及び周波数オフセットを補償する装置であって、
送信されたサンプルの少なくとも1つのブロックを担持するアップリンク信号を送信するための送信機と、
ダウンリンク信号を受信するための受信機とを備え、前記ダウンリンク信号が前記送信された信号の歪んだコピーであり受信されたサンプルの複数のブロックを担持し、さらに、
送信されたサンプルの前記少なくとも1つのブロックと受信されたサンプルの前記複数のブロックのうちの少なくとも1つとの間の相関に基づいて、前記アップリンク信号と前記ダウンリンク信号との間の時間遅延及び周波数オフセットを推定する検出器を備え、受信されたサンプルの前記複数のブロックが前記受信されたダウンリンク信号に基づいて生成され、さらに、
前記推定された時間遅延及び周波数オフセットに基づいて、次に続く送信された信号と受信された信号との間の時間遅延及び周波数オフセットを補償する調整器を備える、装置。
【請求項10】
前記検出器が、
送信されたサンプルの前記ブロックと受信されたサンプルの前記複数のブロックのそれぞれとの間の相関を算出し、
前記算出された相関の中から最大の相関を識別し、
受信されたサンプルの前記複数のブロックの中の前記最大の相関に関連付けられた受信されたサンプルの前記ブロックの位置に基づいて前記推定された時間遅延を計算し、
前記識別された最大の相関に基づいて前記推定された周波数オフセットを計算する、ようにさらに構成された、請求項9に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−528216(P2011−528216A)
【公表日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−518709(P2011−518709)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【国際出願番号】PCT/US2009/003881
【国際公開番号】WO2010/008498
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(596092698)アルカテル−ルーセント ユーエスエー インコーポレーテッド (965)
【Fターム(参考)】