説明

単結晶の製造装置、および単結晶の製造方法

【課題】結晶成長面内の温度分布のバラつきを低減し、良好な結晶性を有する単結晶を提供可能な単結晶の製造装置、および単結晶の製造方法の提供。
【解決手段】本発明の単結晶の製造装置20は、単結晶の原料6を配置する原料配置部4a及び種結晶5を原料6に対して対向配置する種結晶配置部7aを有する成長容器10と、成長容器10を加熱する加熱手段8とを備え、成長容器10は、その内部空間Sにおける縦断面の形状が矩形状であり、前記矩形状の縦断面における長辺と短辺のアスペクト比(長辺寸法/短辺寸法)が2よりも大きく、種結晶配置部7aは、成長容器10の内部空間Sを前記長辺方向に3等分に区画したとき、中央の区画に配置されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単結晶の製造装置、および単結晶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、実用化されているBlu-ray Discなどの大容量光ディスクは、従来の赤色レーザよりも波長の短い青紫色レーザが用いられており、青色発光素子用半導体が活用されている。将来的にさらに大容量のディスクを利用するには深紫外発光素子用の半導体が必要であり、バンドギャップの大きな窒化アルミニウム(AlN)が注目されている。AlNは熱伝導度が高く、窒化ガリウム(GaN)との格子不整合が小さいため、GaNの下地基板としても利用できる。
【0003】
シリコン(Si)や砒化ガリウム(GaAs)などの半導体は、引上げ法によって融液からバルク結晶を成長させることにより、結晶性の良い大型のインゴットが生産されている。しかし、AlNは融点付近の窒素の解離圧が高く、引上げ法を利用することが困難であることから、昇華法やHVPE法(Hydride vapor phase epitaxy、水素化物気相堆積法)などの気相法が主に利用されている。昇華法とは原料を高温化で昇華し、低温部に結晶を再結晶化させる成長法であり、下地基板を用いない自発核生成による方法や、異種単結晶基板を下地基板に用いたヘテロエピタキシャル成長による方法、同種単結晶を下地基板に用いたホモエピタキシャル成長による方法などがある。
昇華法による単結晶成長において、品質の良い結晶を得るには結晶成長部の温度や原料の温度、およびこれらの温度勾配などの温度制御が重要である。これは温度により単結晶の成長モードが大きく異なるためである。
【0004】
昇華法の結晶成長に用いられる加熱方法の一つとして、高周波誘導加熱がある。高周波誘導加熱とはコイルに流れる交流電流が、発熱体に電流を誘起する磁界を作り、この電流が発熱体の抵抗により熱を発生させるという仕組みである。誘導加熱は再現性に優れており、非接触でエネルギー効率の高い加熱を短時間に行える。昇華法の発熱体にはるつぼ形のサセプタ(成長容器)を使用するのが一般的である。サセプタとは非導電体に熱を伝導するために使われる導電性の発熱体で、ディスク状、角板状、チューブ状、るつぼ状など、様々なアプリケーションに最適な形状が存在している。サセプタの材料としては黒鉛やタングステンのように高周波磁界の作用によって、渦電流損が発生するような材質であれば使用できる。
【0005】
結晶成長部と原料との温度差の付け方としては、コイルと発熱体(成長容器)の鉛直方向の相対位置を調整するという方法がある。これはコイルの中心は磁界が一番大きく最も高温になり、コイルの端に行くほど温度が低くなることを利用している。また、複数のコイルを使用する方法や、発熱体(成長容器)の高さ方向でコイルの巻数や径を変化させる方法(特許文献1参照)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−248029号公報
【特許文献2】特開2010−248021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記の方法ではコイルの軸方向に対し平行な方向(成長容器の高さ方向)の温度制御はできても、単結晶成長面内の温度分布を均一にすることはできない。単結晶成長面内の温度分布が均一でない場合、結晶成長モードにバラツキが生じたり、熱応力によるクラックが生じやすくなる。その結果、得られる単結晶の結晶性が低くなるという問題があった。
単結晶成長面内の温度分布制御としては、半導体基板(種子基板)の形状や表面粗さを制御する方法(特許文献2参照)が開示されているが、この方法は半導体基板の面内温度分布を制御する方法であり、成長進行中の単結晶表面の面内温度分布を制御することはできない。
【0008】
単結晶成長において、結晶の品質を向上させるには2次元(2D)成長が良いと考えられる。しかし、高周波誘導加熱炉などを利用した昇華法では、単結晶成長面内の温度が不均一であり、結晶成長温度を調整しても、結晶成長面内の場所によっては2D成長が抑制され、結晶性が悪くなるという問題があった。
【0009】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであり、結晶成長面内の温度分布のバラつきを低減し、良好な結晶性を有する単結晶を提供可能な単結晶の製造装置、および単結晶の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の単結晶の製造装置は、単結晶の原料を配置する原料配置部及び種結晶を原料に対して対向配置する種結晶配置部を有する成長容器と、前記成長容器を加熱する加熱手段とを備え、前記成長容器は、その内部空間における縦断面の形状が矩形状であり、前記矩形状の縦断面における長辺と短辺のアスペクト比(長辺寸法/短辺寸法)が2よりも大きく、前記種結晶配置部は、前記成長容器の前記内部空間を前記長辺方向に3等分に区画したとき、中央の区画に配置されることを特徴とする。
【0011】
本発明の単結晶の製造装置は、成長容器の内部空間がその縦断面において矩形状であり、縦断面におけるアスペクト比(長辺寸法/短辺寸法)が2より大きく設定され、且つ、種結晶を配置する種結晶配置部が、成長容器の内部空間を長辺方向に3等分に区画したとき、中央の区画に配置される構成である。そのため、原料及び種結晶を配置して成長容器を加熱すると結晶成長部(種結晶付近)における温度分布が一次元化し、単結晶成長面内の温度分布が均一、又は均一に近くなる。したがって、本発明の単結晶の製造装置によれば、単結晶成長面内の温度が均一、又は均一に近い状態となるため、単結晶の成長モードが均一、又は均一に近い状態となる、及び、単結晶成長速度が結晶面内で均一になることで熱応力が一箇所にかかりにくいという効果を奏する。
ここで、「結晶成長部(種結晶付近)における温度分布が一次元化する」とは、結晶成長部の面内方向の温度差が無視できるくらい小さくなり、結晶成長部の温度が成長面と垂直方向の距離によってのみ、決定されるという状態を意味する。そのため、このような状態では、結晶成長部(種結晶付近)における単結晶成長面内の温度分布が均一、又は均一に近い状態となる。
また、本発明の単結晶の製造装置は、単結晶成長面内の温度分布を一定、又は一定に近い状態にすることができるので、単結晶成長の際の昇温又は冷却の工程において、繰り返し熱応力による成長容器の消耗も低減できる効果もある。
【0012】
本発明の製造装置において、前記成長容器の内部空間には他の成長容器が収容されており、前記他の成長容器には前記原料配置部と前記種結晶配置部とが設けられていても良い。
【0013】
上記課題を解決するため、本発明の単結晶の製造方法は、原料配置部に原料を配置し、種結晶配置部に種結晶を配置した成長容器を加熱手段により加熱することで前記原料を昇華させて単結晶を成長させる単結晶の製造方法であって、前記成長容器は、その内部空間における縦断面の形状が矩形状であり、前記矩形状の縦断面における長辺と短辺のアスペクト比(長辺寸法/短辺寸法)が2よりも大きく、前記種結晶は、前記内部空間を前記長辺方向に3等分に区画したとき、中央の区画に配置されることを特徴とする。
【0014】
本発明の単結晶の製造方法は、成長容器の内部空間における矩形状の縦断面のアスペクト比(長辺寸法/短辺寸法)を2より大きく設定し、且つ、内部空間を長辺方向に3等分に区画したとき、種結晶を中央の区画に配置する構成である。そのため、単結晶成長部(種結晶付近)における温度分布を一次元化することができ、単結晶成長面内の温度分布を少なくし、該面内温度を均一、又は均一に近い状態とすることができる。
したがって、本発明の単結晶の製造方法によれば、単結晶成長面内の温度を均一、又は均一に近い状態にすることができるため、単結晶の成長モードを均一にできる。また、単結晶成長速度を結晶面内で均一、又は均一に近い状態にできるため、単結晶中で熱応力が一箇所にかかりにくくすることができるという効果を奏する。
【0015】
本発明の単結晶の製造方法において、前記単結晶が窒化アルミニウムであることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、結晶成長面内の温度分布のバラつきを低減し、良好な結晶性を有する単結晶を提供可能な単結晶の製造装置、および単結晶の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る単結晶の製造装置の第1実施形態を示す断面模式図である。
【図2】図1に示す製造装置の成長容器における温度分布を示す模式図である。
【図3】本発明に係る単結晶の製造装置の第2実施形態を示す断面模式図である。
【図4】従来の単結晶の成長容器における温度分布のシミュレーション結果を示す図である。
【図5】従来の単結晶の成長容器の一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
昇華法の結晶成長では、通常、サセプタ(成長容器)をるつぼ状とし、その中に原料と種結晶を対向配置し、原料を加熱して昇華させ、この昇華ガスを種結晶上に供給して種結晶上で結晶を成長させる。
本発明者らは、図5に示すように上下に蓋体101、102を有する円筒状のるつぼ103を成長容器100とし、この成長容器100を高周波誘導加熱により窒素ガス雰囲気下で加熱した場合の成長容器内の温度分布についてシミュレーション解析を行った。シミュレーション結果を図4に示す。なお、シミュレーションは以下の条件で行った。
【0019】
(シミュレーション解析条件)
シミュレーション解析ソフト:ANSYS社製、ANSYS Multiphysics
円筒状るつぼ103:外径190cm、内径170cm、厚さ10cm、高さ200cm、黒鉛製
るつぼ上蓋体102:外径190cm、厚さ5cmの円盤状、黒鉛製
るつぼ下蓋体101:外径190cm、厚さ15cmの円盤状、黒鉛製
成長容器102の軸中心を通る縦断面における内部空間(長方形)の長辺寸法:短辺寸法=2.0:1.7
誘導加熱手段(図示略):銅製高周波コイル、円筒状るつぼ外周に螺旋状に配置
断熱材(図示略):カーボン製の成形断熱材、るつぼ103、蓋体101、102の外周に配置
なお、構成材料の熱伝導率、比透磁率、および電気抵抗率は、表1〜3の数値を用いた。
【0020】
【表1】

【0021】
【表2】

【0022】
【表3】

【0023】
図4に示すシミュレーション結果から明らかなように、成長容器100の水平方向(成長容器100の軸方向に対し垂直方向)の温度分布は、成長容器100内の位置により異なっている。これは、成長容器100の高さ方向における中心部では、円筒状るつぼ103からの熱影響を受けやすく、成長容器上下端では、るつぼ上蓋体102、るつぼ下蓋体101からの熱影響を受けやすいためである。
通常、図5に示すように、成長容器100の内底部(るつぼ下蓋体101側)に原料104を配置し、成長容器100の上部(るつぼ上蓋体102下部)に種結晶105を配置して、種結晶105上に単結晶106を成長させる。しかし、この方法では、図5に示すように、成長中の単結晶106の結晶成長面内(るつぼ下蓋体102下面に水平な面内)において、温度分布が生じている。このように単結晶106の結晶成長面内における温度が不均一となると、成長する結晶の結晶性が低くなる。
【0024】
そこで、本発明者らは、成長容器内の結晶成長部における結晶成長面内の温度を均一化させ、良好な結晶性の単結晶を得ることを目指して検討した結果、成長容器の形状及び種結晶の配置を所定範囲に設定することにより前記課題を解決できることを見出した。
以下、本発明の単結晶の製造装置、および単結晶の製造方法の実施の形態について説明する。
【0025】
(第1実施形態)
図1は、本発明に係る単結晶の製造装置の第1実施形態を示す断面模式図である。
図1に示す単結晶の製造装置20は、昇華法によって種結晶5上に原料6からの昇華ガスを昇華再結晶させて、単結晶を成長させる装置である。
【0026】
本実施形態の単結晶の製造装置20は、円筒状のサセプタ筒3と、サセプタ筒3の下側の開口部を塞ぐように配置されたサセプタ底蓋2と、サセプタ筒3の上側の開口部を塞ぐように配置されたサセプタ天井蓋1とで構成される成長容器10と、成長容器10の外周に非接触または接触して配置された加熱手段8と、成長容器10の内部空間Sに配置された上部に開口部を有する円筒るつぼ形サセプタ4と、この円筒るつぼ形サセプタ4の開口部上部に設置された蓋体7と、を備えている。なお、この円筒るつぼ形サセプタ4と蓋体7とで、他の成長容器11を構成する。円筒るつぼ形サセプタ4は、サセプタ底蓋2上面に接して設置され、円筒るつぼ形サセプタ4の内底部(原料配置部4a)には原料6が収容されている。また、蓋体7の下面には種結晶配置部7aが設けられ、そこには種結晶5が設置されており、円筒るつぼ形サセプタ4内の原料6と対向している。
【0027】
製造装置20は、成長容器10、円筒るつぼ形サセプタ4および蓋体7を収容する収容容器(図示略)を備えている。この収容容器には、収容容器内の圧力を減圧状態にするための真空ポンプなどの減圧装置(図示略)と、収容容器内に不活性ガスを導入するためのガス供給装置(図示略)がそれぞれ接続されている。ここで、不活性ガスとしては、アルゴン、ヘリウムもしくはネオン等の希ガス、または窒素ガスが挙げられる。
【0028】
製造装置20は、成長容器内の温度を監視するための放射温度計(図示略)を備えている。この放射温度計は、少なくとも成長容器10の原料温度と結晶成長温度を監視する。
また、成長容器10の外周には、カーボン成形断熱材などの断熱材(図示略)が配置されている。
【0029】
加熱手段8は、成長容器10のサセプタ筒3の周囲に螺旋状に巻かれた高周波コイルであり、この高周波コイルに高周波電流を印加することで誘導加熱により成長容器10を発熱させる。加熱手段8である高周波コイルは、例えば、銅などの材質よりなる。
【0030】
成長容器10は、円筒状のサセプタ筒3とサセプタ底蓋2とサセプタ天井蓋1から構成されている。サセプタ底蓋2上にサセプタ筒3がその下側の開口部を塞ぐように載置あるいは嵌め合わせられており、サセプタ筒3の上側の開口部を塞ぐようにサセプタ天井蓋1が載置あるいは嵌め合わせられている。これにより、サセプタ筒3とサセプタ底蓋2とサセプタ天井蓋1により形成される成長容器10の内部空間Sは、ガスの出入りが容易な順密閉空間となっている。
また、同様に、蓋体7は、有底筒状の円筒るつぼ形サセプタ4の開口部上部に載置あるいは嵌め合わせられている状態であり、円筒るつぼ形サセプタ4と蓋体7とで形成される内部空間は、準密閉状態となっている。
【0031】
成長容器10を構成するサセプタ筒3、サセプタ底蓋2およびサセプタ天井蓋1は、高周波誘導により発熱する材質から構成され、窒化アルミニウム単結晶成長時の温度および雰囲気で安定なものが適用でき、具体的には、黒鉛、タングステン、モリブデン、タンタル、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0032】
円筒るつぼ形サセプタ4の内底部には窒化アルミニウム粉末などの原料6が直接収納されるとともに、円筒るつぼ形サセプタ4の開口部上部には蓋体7および種結晶5が配置され、バルク結晶成長に適した原料6からの昇華ガスに曝される。よって、円筒るつぼ形サセプタ4および蓋体7の材質は、原料6の昇華ガスによる腐食を受けないものに限られる。
円筒るつぼ形サセプタ4および蓋体7の材質としては、黒鉛、タングステン、モリブデン、タンタル、またはこれらの混合物が挙げられる。これらの材質から円筒るつぼ形サセプタ4および蓋体7が構成されることにより、円筒るつぼ形サセプタ4および蓋体7は原料6からの昇華ガスによる腐食を受けない。
【0033】
種結晶5は、6H−SiC単結晶または窒化アルミニウム単結晶であり、その寸法および形状は特に限定されず、例えば、板状または円板状である。
原料6は、成長させようとする単結晶の組成を有する粉末原料であり、窒化アルミニウム粉末、窒化ガリウム粉末、炭化珪素粉末が挙げられる。
【0034】
本実施形態の製造装置20において、成長容器10の内部空間Sは縦断面の形状が矩形状とされている。ここで、本実施形態の製造装置20の成長容器10は、横断面が円形であるが、本発明はこれに限定されない。成長容器10の横断面が楕円形、正方形、矩形、不定形であってもよいが、円形であることが好ましい。
【0035】
成長容器10の内部空間Sは縦断面の形状が矩形状であり、その長辺と短辺のアスペクト比(長辺寸法/短辺寸法)が2よりも大きく設定されている。図1に示す本実施形態では、成長容器10の内部空間Sの幅Wが長辺に、内部空間Sの高さHが短辺に該当する。ここで、成長容器10の縦断面とは、成長容器10の中心軸を通ると共に、最大面積となる縦断面を意味し、本実施形態の製造装置20においては内部空間Sの幅Wは成長容器10の内径に相当する。
【0036】
図2は、図1に示す本実施形態の製造装置20の成長容器10における温度分布を示す模式図である。本実施形態の製造装置20の成長容器10は、内部空間Sにおける矩形状の縦断面の長辺と短辺のアスペクト比(長辺寸法/短辺寸法=幅W/高さH)が2よりも大きく設定されている。このため、単結晶成長部(種結晶5付近)における温度変化に与える影響はサセプタ天井蓋1および蓋体7の寄与が、サセプタ筒3からの寄与と比較して相対的に強くなる。なお、図2に示す温度分布は、アスペクト比(長辺寸法/短辺寸法=幅W/高さH)=4.2の場合の例である。
【0037】
種結晶5は、成長容器10の内部空間Sを幅W方向で3等分して図1に示すように第1端部、中央部、第2端部に区画した場合、中央部(中央の区画)に位置するように配置されている。即ち、成長容器10のサセプタ筒3の内壁面と種結晶5の側面との距離がW/3(=Wの1/3倍)以上となるように配置されている。このように種結晶5を配置することにより、図2に示すように、単結晶成長部(種結晶5付近)における温度分布が一次元化し、単結晶成長面内の温度分布が少なくなり、該面内温度が均一、又は均一に近い状態となる。
【0038】
成長容器10の内部空間Sにおける矩形状の縦断面のアスペクト比(長辺寸法/短辺寸法=幅W/高さH)は、2より大きいことが好ましく、3以上がより好ましい。成長容器10の内部空間Sにおける縦断面のアスペクト比を3以上とすることにより、単結晶成長部(種結晶5付近)における温度分布がさらに一次元化し、単結晶成長面内の温度分布がより少なくなり、該面内温度がさらに均一、又は均一に近い状態となる。
【0039】
本実施形態の単結晶の製造装置20は、成長容器10の内部空間Sにおける縦断面のアスペクト比、及び種結晶5の配置位置を前述のように規定することにより、結晶成長部(種結晶5付近)における温度分布が一次元化し、単結晶成長面内の温度分布が均一に近くなる。したがって、本実施形態の製造装置20によれば、単結晶成長面内の温度が均一、又は均一に近い状態となるため、単結晶の成長モードが均一となる、単結晶成長速度が結晶面内で均一になることで熱応力が一箇所にかかりにくいという効果を奏する。
また、本実施形態の製造装置20は、単結晶成長面内の温度分布を一定、又は一定に近い状態にすることができるので、単結晶成長の際の昇温又は冷却の工程において、繰り返し熱応力による成長容器10および円筒るつぼ形サセプタ4の消耗も低減できる効果もある。
【0040】
次に、本実施形態の単結晶の製造装置20を用いて、単結晶を製造する方法について説明する。なお、以下においては、窒化アルミニウム単結晶を製造する場合について説明するが、本発明の単結晶の製造方法は、窒化アルミニウム単結晶に限定されず、窒化ガリウムの単結晶、炭化珪素の単結晶の製造にも適用できる。窒化ガリウムまたは炭化珪素の単結晶を製造する場合には、使用する原料6を窒化ガリウム粉末または炭化珪素粉末にすればよい。
【0041】
図1に示す製造装置20を用いて窒化アルミニウム単結晶を製造するには、まず、窒化アルミニウム粉末などの原料6を円筒るつぼ形サセプタ4の内底部(原料配置部4a)にセットする。次に、蓋体7の種結晶配置部7aに接着などの方法により種結晶5を固定した後、蓋体7を種結晶5が円筒るつぼ形サセプタ4の内部空間側となるようにるつぼ形サセプタ4の開口部上部に配置する。その後、サセプタ天井蓋1を、サセプタ筒3の上側の開口部上部に配置する。
ここで、種結晶5の位置は、成長容器10の内部空間Sを幅W方向で3等分して区画したうちの中央部(中央の区画)に位置するように配置する。即ち、成長容器10のサセプタ筒3の内壁面と種結晶5の側面との距離がW/3(=Wの1/3倍)以上となるように配置する。
【0042】
次に、成長容器10と円筒るつぼ形サセプタ4と蓋体7を収容している収容容器(図示略)に接続された減圧装置を稼動させて成長容器10の内部空間Sの圧力、及び円筒るつぼ形サセプタ4と蓋体7により形成された内部空間の圧力を減圧させる。
続いて、収容容器に接続されたガス供給装置により成長容器10の内部空間S内、及び、円筒るつぼ形サセプタ4と蓋体7とで形成された内部空間内に窒素ガスを導入する。これにより、窒化アルミニウム単結晶の成長は、高純度窒素ガス雰囲気下で行われる。
【0043】
次いで、加熱手段8により成長容器10を加熱し、放射温度計(図示略)により、原料温度(サセプタ底蓋2の温度)及び結晶成長部(蓋体5及びサセプタ天井蓋1の温度)を測定してこれらの温度を制御する。窒化アルミニウム単結晶成長時は、成長容器10の温度を1700〜2400℃で一定制御する。
なお、窒化アルミニウム単結晶成長時は、成長容器10の下部温度(原料温度;サセプタ蓋体2の温度)は、成長容器10の上部温度(結晶成長部温度;蓋体7及びサセプタ天井蓋1の温度)よりも高温となるように設定する。
結晶成長は、前述の設定温度まで加熱した後に成長容器10、円筒るつぼ形サセプタ4および蓋体7を収容した収容容器内を減圧することで開始され、100〜760Torr(1.33×10〜10.13×10Pa)に定圧保持することで行われる。
【0044】
加熱で昇華されて分解気化された原料6は、窒素ガス雰囲気下で種結晶5上に結晶成長することで、種結晶5上に窒化アルミニウム単結晶となり成長する。
以上の工程により、単結晶を製造できる。
【0045】
本実施形態の単結晶の製造方法は、成長容器10の内部空間Sにおける矩形状の縦断面のアスペクト比(長辺寸法/短辺寸法=幅W/高さH)を2より大きく設定し、且つ、成長容器10の内部空間Sを幅W方向に3等分に区画したとき、種結晶を中央部(中央の区画)に配置する構成である。そのため、単結晶成長部(種結晶5付近)における温度分布を一次元化することができ、単結晶成長面内の温度分布を少なくし、該面内温度を均一に近い状態とすることができる。
したがって、本実施形態の製造方法によれば、単結晶成長面内の温度を均一に近い状態にすることができるため、単結晶の成長モードを均一にできる。また、単結晶成長速度を結晶面内で均一に近い状態にできるため、単結晶中で熱応力が一箇所にかかりにくくすることができるという効果を奏する。
そのため、本実施形態の製造方法により得られる単結晶は、優れた品質を有する。
【0046】
また、本実施形態の製造方法は、種結晶5および成長させる単結晶のサイズが大型化した場合にも、上述した形状の成長容器10を使用し、上述した所定位置に種結晶5を配置することにより、単結晶成長面内の温度分布を少なくし、該面内温度を均一に近い状態とすることができる。
したがって、本実施形態の製造方法により得られる単結晶は、結晶サイズが大型化した場合にも優れた品質を有する。
【0047】
本実施形態の製造方法により得られる窒化アルミニウム単結晶は、これを成長方向に垂直な方向(成長容器の幅方向に平行な方向;結晶成長面)にスライスし、このスライス面上の複数点について、X線回折装置を用いて(0002)ロッキングカーブを測定した場合、得られるロッキングカーブの標準偏差が10arcsec以下となり、結晶成長面における結晶配向性のバラつきが少なく、優れた品質を有する。
【0048】
(第2実施形態)
図3は、本発明に係る単結晶の製造装置の第2実施形態を示す断面模式図である。
図3に示す単結晶の製造装置20Bは、昇華法によって種結晶5上に原料6からの昇華ガスを昇華再結晶させて、単結晶を成長させる装置である。本実施形態の製造装置20Bは、成長容器10Bの内部空間の高さHが幅Wよりも大きい点で上記第1実施形態の製造装置20とは異なっている。図3に示す製造装置20Bにおいて、図1に示す第1実施形態の製造装置20と同一の構成要素には同一の符号を付し、同一要素の説明は省略する。
【0049】
本実施形態の単結晶の製造装置20Bは、円筒状のサセプタ筒3と、サセプタ筒3の下側の開口部を塞ぐように配置されたサセプタ底蓋2と、サセプタ筒3の上側の開口部を塞ぐように配置されたサセプタ天井蓋1とで構成される成長容器10Bと、成長容器10Bの外周に非接触または接触して配置された加熱手段8と、成長容器10Bの内部空間Sに支持台9に支持されて配置された上部に開口部を有する円筒るつぼ形サセプタ4と、この円筒るつぼ形サセプタ4の開口部上部に設置された蓋体7と、を備えている。なお、この円筒るつぼ形サセプタ4と蓋体7とで、他の成長容器11を構成する。円筒るつぼ形サセプタ4は成長容器10Bの内部空間Sの高さ方向中央付近に配置され、円筒るつぼ形サセプタ4の内底部(原料配置部4a)には原料6が収容されている。また、蓋体7の下面(種結晶配置部7a)には種結晶5が設置されており、円筒るつぼ形サセプタ4内の原料6と対向している。
【0050】
支持台9の材質としては、黒鉛、タングステン、モリブデン、タンタル、またはこれらの混合物が挙げられ、円筒るつぼ形サセプタ4を支持できればその形状および寸法は適宜変更可能である。
【0051】
本実施形態の製造装置20Bにおいて、成長容器10Bの内部空間Sにおける縦断面の形状は矩形状とされている。ここで、本実施形態の製造装置20Bの成長容器10Bは、横断面が円形であるが、本発明はこれに限定されない。成長容器10の横断面が楕円形、正方形、矩形、不定形であってもよいが、円形であることが好ましい。
【0052】
成長容器10Bの内部空間Sにおける縦断面の形状は矩形状であり、上記第1実施形態と同様に、その長辺と短辺のアスペクト比(長辺寸法/短辺寸法)が2よりも大きく設定されている。
図3に示す本実施形態では、成長容器10の内部空間Sの高さHが長辺に、内部空間Sの幅Wが短辺に該当する。
【0053】
本実施形態の製造装置20Bの成長容器10Bは、内部空間Sにおける矩形状の縦断面の長辺と短辺のアスペクト比(長辺寸法/短辺寸法=高さH/幅W)が2よりも大きく設定されていることにより、単結晶成長部(種結晶5付近)における温度変化に与える影響はサセプタ筒3の寄与が、サセプタ天井蓋1および蓋体7からの寄与と比較して相対的に強くなる。
したがって、成長容器10Bの内部空間Sにおいて、高さ方向の中央側になるにつれて、成長容器10Bの幅方向に平行な面内において温度分布が少なくなる。
【0054】
種結晶5は、成長容器10Bの内部空間Sをその高さH方向で3等分して区画し図3に示すように上側端部、中央部、下側端部に区画した場合、中央部(中央の区画)に位置するように配置されている。即ち、成長容器10Bのサセプタ天井蓋1の内壁面と種結晶5の一面との距離、及びサセプタ底蓋2の内壁面と種結晶5の他面との距離が、H/3(=Hの1/3倍)以上となるように配置されている。このように種結晶5を配置することにより、単結晶成長部(種結晶5付近)における温度分布が一次元化し、単結晶成長面内の温度分布が少なくなり、該面内温度が均一、又は均一に近い状態となる。
【0055】
成長容器10Bの内部空間Sにおける矩形状の縦断面のアスペクト比(長辺寸法/短辺寸法=高さH/幅W)は、2より大きいことが好ましく、3以上がより好ましい。成長容器10Bの内部空間Sにおける縦断面のアスペクト比を3以上とすることにより、単結晶成長部(種結晶5付近)における温度分布がさらに一次元化し、単結晶成長面内の温度分布がより少なくなり、該面内温度がさらに均一、又は均一に近い状態となる。
【0056】
本実施形態の単結晶の製造装置20Bは、成長容器10Bの内部空間Sにおける縦断面のアスペクト比、及び種結晶5の配置位置を前述のように規定することにより、結晶成長部(種結晶5付近)における温度分布が一次元化し、単結晶成長面内の温度分布が均一、又は均一に近くなる。したがって、本実施形態の製造装置20Bによれば、単結晶成長面内の温度が均一、又は均一に近い状態となるため、単結晶の成長モードが均一となる、単結晶成長速度が結晶面内で均一になることで熱応力が一箇所にかかりにくいという効果を奏する。
また、本実施形態の製造装置20Bは、単結晶成長面内の温度分布を一定、又は一定に近い状態にすることができるので、単結晶成長の際の昇温又は冷却の工程において、繰り返し熱応力による成長容器10Bおよび円筒るつぼ形サセプタ4の消耗も低減できる効果もある。
【0057】
図3に示す製造装置20Bを用いて窒化アルミニウムなどの単結晶を製造するには、上記第1実施形態の製造装置20を用いた製造方法と同様の手順および手法で行うことができる。使用する成長容器10Bの内部空間Sのアスペクト比が、内部空間Sの幅W/高さHから、内部空間Sの高さH/幅Wに変更されること以外は、上記第1実施形態の製造方法と同様である。
【0058】
本実施形態の単結晶の製造方法は、成長容器10Bの内部空間Sにおける矩形状の縦断面のアスペクト比(長辺寸法/短辺寸法=高さH/幅W)を2より大きく設定し、且つ、成長容器10Bの内部空間Sを高さH方向で3等分した区画のうち中央部(中央の区画)に位置するように種結晶5を配置する構成である。そのため、単結晶成長部(種結晶5付近)における温度分布を一次元化することができ、単結晶成長面内の温度分布を少なくし、該面内温度を均一、又は均一に近い状態とすることができる。
したがって、本実施形態の製造方法によれば、単結晶成長面内の温度を均一、又は均一に近い状態にすることができるため、単結晶の成長モードを均一にできる。また、単結晶成長速度を結晶面内で均一、又は均一に近い状態にできるため、単結晶中で熱応力が一箇所にかかりにくくすることができるという効果を奏する。
そのため、本実施形態の製造方法により得られる単結晶は、優れた品質を有する。
【0059】
以上、本発明の単結晶の製造装置、単結晶の製造方法および単結晶の一実施形態について説明したが、上記実施形態において、単結晶の製造装置は一例であって、本発明の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
例えば、上記実施形態では、円筒るつぼ形サセプタ4の内底部に原料6を収容していたが、本発明はこの例に限定されず、円筒るつぼ形サセプタ4を使用せずに成長容器10内底部(サセプタ底蓋2上)に原料6を配置してもよい。この場合、種結晶5は蓋体7に替えて種結晶保持部材により保持すればよい。
【実施例】
【0060】
以下、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0061】
(実施例1)
図3に示す単結晶の製造装置を用いて、種結晶として円板状のφ2inch−SiC種結晶を用い、原料として窒化アルミニウム固体原料を用いて、成長容器の縦断面におけるアスペクト比(短辺寸法:長辺寸法=幅:高さ)を表4に示す値に設定して、窒化アルミニウム単結晶を製造した。サセプタ天井蓋、サセプタ底蓋、サセプタ筒、円筒るつぼ形サセプタ、蓋体、支持台は黒鉛製とした。また、種結晶は、成長容器の内部空間の高さHに対して、サセプタ底蓋から1/3・H〜2/3・H(Hの1/3倍〜2/3倍)の中央部の中で下から4/5の位置に配置した。
【0062】
加熱手段である高周波コイルを、種結晶に単結晶を成長させるために結晶成長部(種結晶付近)が最も低温となるように配した。まず、装置内の大気をロータリーポンプで除去した後、窒素ガスを装置内に導入して200Torrとした。その後、高周波コイルに高周波をかけ、2000℃で50時間加熱し結晶成長を行った。なお、原料温度は、成長部温度(種結晶付近温度)よりも約50℃高くなるように温度制御した。
【0063】
その後、種結晶温度および原料温度を室温まで冷却させることで結晶成長を終了させた。
得られた窒化アルミニウム単結晶を成長方向に垂直な方向(成長容器の幅方向に平行な方向;結晶成長面)にスライスし、このスライス面について、X線回折装置(High Resolution X-ray Diffractometer、PANalytical社製)を用いて(0002)ロッキングカーブ測定を行った。各単結晶のスライス面において(0002)ロッキングカーブを3点測定し、得られたロッキングカーブの半値幅FWHM、分散、標準偏差を求めた。結果を表4に示す。
【0064】
【表4】

【0065】
表4に示すように、図3に示す製造装置において、成長容器の縦断面における内部空間のアスペクト比(長辺寸法/短辺寸法=高さ/幅)を3とした場合、(0002)ロッキングカーブの半値幅は186〜203arcsecであり、良好な結晶性を有していた。また、アスペクト比(長辺寸法/短辺寸法=高さ/幅)を5とした場合も、(0002)ロッキングカーブの半値幅は132〜147arcsecであり、良好な結晶性を有していた。さらに、成長容器の縦断面における内部空間のアスペクト比(長辺/短辺=高さ/幅)を3以上とした場合は、標準偏差が10arcsec未満となっており、結晶成長面内の結晶品質の均一性も良好であった。
これに対し、図3に示す製造装置において、成長容器の縦断面における内部空間のアスペクト比(長辺寸法/短辺寸法=高さ/幅)が2以下の場合、(0002)ロッキングカーブの半値幅が大きく結晶性が低くなっていた。また、測定した3点間のロッキングカーブの半値幅のバラつきが大きいため、結晶成長面内の結晶品質が不均一であった。これは、結晶成長時における結晶成長面内の温度が不均一であったためであると考えられる。
【0066】
(実施例2)
図1に示す単結晶の製造装置を用いて、種結晶として円板状のφ2inch−SiC種結晶を用い、原料として窒化アルミニウム固体原料を用いて、成長容器の縦断面におけるアスペクト比(長辺寸法:短辺寸法=幅:高さ)を表5に示す値に設定して、窒化アルミニウム単結晶を製造した。サセプタ天井蓋、サセプタ底蓋、サセプタ筒、円筒るつぼ形サセプタ、蓋体、支持台は黒鉛製とした。また、種結晶は、種結晶−サセプタ筒間最短距離が、成長容器の内部空間の幅Wの1/3倍以上となるように、成長容器の幅方向中央に設置した。
【0067】
加熱手段である高周波コイルを、種結晶に単結晶を成長させるために結晶成長部(種結晶付近)が最も低温となるように配した。まず、装置内の大気をロータリーポンプで除去した後、窒素ガスを装置内に導入して100Torrとした。その後、高周波コイルに高周波をかけ、2000℃で100時間加熱し結晶成長を行った。なお、原料温度は、成長部温度(種結晶付近温度)よりも約50℃高くなるように温度制御した。
【0068】
その後、種結晶温度および原料温度を室温まで冷却させることで結晶成長を終了させた。
得られた窒化アルミニウム単結晶を成長方向に垂直な方向(成長容器の幅方向に平行な方向;結晶成長面)にスライスし、このスライス面について、X線回折装置(High Resolution X-ray Diffractometer、PANalytical社製)を用いて(0002)ロッキングカーブ測定を行った。各単結晶のスライス面において(0002)ロッキングカーブを3点測定し、得られたロッキングカーブの半値幅FWHM、分散、標準偏差を求めた。結果を表5に示す。
【0069】
【表5】

【0070】
表5に示すように、図1に示す製造装置において、成長容器の縦断面における内部空間のアスペクト比(長辺寸法/短辺寸法=幅/高さ)を3とした場合、(0002)ロッキングカーブの半値幅は158〜175arcsecであり、良好な結晶性を有していた。また、アスペクト比(長辺寸法/短辺寸法=幅/高さ)を5とした場合も、(0002)ロッキングカーブの半値幅は125〜131arcsecであり、良好な結晶性を有していた。さらに、成長容器の縦断面における内部空間のアスペクト比(長辺寸法/短辺寸法=幅/高さ)を3以上とした場合は、標準偏差が10arcsec未満となっており、結晶成長面内の結晶品質の均一性も良好であった。
これに対し、図1に示す製造装置において、成長容器の縦断面における内部空間のアスペクト比(長辺寸法/短辺寸法=幅/高さ)が2以下の場合、(0002)ロッキングカーブの半値幅が大きく結晶性が低くなっていた。また、測定した3点間のロッキングカーブの半値幅のバラつきが大きいため、結晶成長面内の結晶品質が不均一であった。これは、結晶成長時における結晶成長面内の温度が不均一であったためであると考えられる。
【0071】
以上の結果より、成長容器の内部空間のアスペクト比(長辺寸法/短辺寸法)を2より大きく設定することにより、単結晶成長面内の温度分布が均一に近い状態となり、結晶性が良好な単結晶を得られることが明らかである。
【符号の説明】
【0072】
1…サセプタ天井蓋、2…サセプタ底蓋、3…サセプタ筒、4…円筒るつぼ形サセプタ、4a…原料配置部、5…種結晶、6…原料、7…蓋体、7a…種結晶配置部、8…加熱手段、9…支持台、10、10B…成長容器、11…他の成長容器、20、20B…単結晶の製造装置、S…内部空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶の原料を配置する原料配置部及び種結晶を原料に対して対向配置する種結晶配置部を有する成長容器と、前記成長容器を加熱する加熱手段とを備え、
前記成長容器は、その内部空間における縦断面の形状が矩形状であり、前記矩形状の縦断面における長辺と短辺のアスペクト比(長辺寸法/短辺寸法)が2よりも大きく、
前記種結晶配置部は、前記成長容器の前記内部空間を前記長辺方向に3等分に区画したとき、中央の区画に配置されることを特徴とする単結晶の製造装置。
【請求項2】
前記成長容器の内部空間には他の成長容器が収容されており、前記他の成長容器には前記原料配置部と前記種結晶配置部とが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の単結晶の製造装置。
【請求項3】
原料配置部に原料を配置し、種結晶配置部に種結晶を配置した成長容器を加熱手段により加熱することで前記原料を昇華させて単結晶を成長させる単結晶の製造方法であって、
前記成長容器は、その内部空間における縦断面の形状が矩形状であり、前記矩形状の縦断面における長辺と短辺のアスペクト比(長辺寸法/短辺寸法)が2よりも大きく、
前記種結晶は、前記内部空間を前記長辺方向に3等分に区画したとき、中央の区画に配置されることを特徴とする単結晶の製造方法。
【請求項4】
前記単結晶が窒化アルミニウムであることを特徴とする請求項3に記載の単結晶の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−75793(P2013−75793A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216989(P2011−216989)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】