説明

単結晶原料の作製方法およびその作製方法により作製された単結晶原料

【課題】単結晶原料の単結晶育成用溶液への溶解速度を一定にする。
【解決手段】スラリー状原料にバインダを混合してバインダ混合原料を作製する(ステップS6)。ステップS6において作製したスラリー状のバインダ混合原料を脱水状態にさせ(ステップS7)、その後にスラリー状のバインダ混合原料を乾燥させる(ステップS8)。ステップS8において乾燥させたバインダ混合原料の粒を一定に揃えてバインダ混合原料の各位置における密度を均一にさせる(ステップS9)。そして、ステップS9の後、バインダ混合原料を、予め設定した形状寸法に成形する(ステップS10)。ステップS10により成形したバインダ混合原料を焼成して、焼成体52を形成する(ステップS11)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単結晶を水熱合成法により育成する際に用いる単結晶原料の作製方法およびその作製方法により作製された単結晶原料に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体関連の分野において、アモルファスシリコンや多結晶シリコンなどを薄膜材料として形成された半導体デバイスが広く用いられている。しかしながら、これらアモルファスシリコンや多結晶シリコンなどは高価であり、生産コストが嵩む。そこで、近年、安価な酸化亜鉛などを薄膜材料として用いた半導体デバイスが注目されている。
【0003】
ところで、薄膜材料に酸化亜鉛を用いた半導体デバイスを作製に関して、ベース基板上に形成する薄膜の品質が、その電気的特性や光学的特性、信頼性などに大きな影響を与える。そのため、薄膜の品質が良いほど、電気的、光学的特性や信頼性が良くなる。
【0004】
このため、薄膜材料に酸化亜鉛を用いた半導体デバイスを作製する際、ベース基板上に結晶欠陥のない高品質の酸化亜鉛の薄膜を形成することが重要になる。また、薄膜の品質を決定する要因として、薄膜材料と、ベース基板材料との格子定数の差が挙げられ、この格子定数の差が小さいほど結晶欠陥のない薄膜を成膜できる。
【0005】
そのため、現在、酸化亜鉛の薄膜と格子定数が同じである酸化亜鉛などからなる単結晶によってベース基板を形成することが望まれ、この酸化亜鉛などからなる単結晶を育成する方法として、酸化亜鉛などからなる固形の単結晶原料を用いて水熱合成法により育成する方法が知られている。
【0006】
この単結晶の育成方法は、まず、単結晶を育成する育成炉の下部側に単結晶の原料を配置し、その上部側に種結晶を配置する。その後、育成炉内に強アルカリ溶液を注入する。この状態で、育成炉内の上部側の温度を、結晶を成長させる成長領域の温度に設定する。そして、育成炉内の圧力を所定の圧力に保つと共に、育成炉内の下部側の温度を、原料を溶解させる溶解領域の温度に設定して単結晶を形成する。例えば、従来の一実施例として、育成炉内の上部側の温度が300〜350℃、下部側の温度が340〜400℃に設定される。なお、育成炉内の上部側の温度は、下部側の温度より低く設定される。
【0007】
ところで、ここでいう酸化亜鉛の単結晶原料は、例えば、下記する特許文献1に記載された工程により作製される。
【0008】
酸化亜鉛の粉末を例えば白金からなる成形枠に入れる。この時、粉末を押し固めるようにして圧縮する。そして、粉末を入れた成形枠を、24時間高温(+1000℃)で焼成して焼成体を形成し、焼成体を多数個に切断して複数個の酸化亜鉛の単結晶原料が作製される。
【特許文献1】特開2003−146657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記した特許文献1に記載の酸化亜鉛の単結晶原料の作製方法では、単結晶原料の形状を予め設定した形状に形成するために、予め設定した成形枠に酸化亜鉛粉末を押し固めるようにして圧縮して、焼成を行っている。
【0010】
しかしながら、成形圧力が高いとクラック等が入って焼成体が割れやすくなる。そのため、焼成体からなる単結晶原料を所定寸法の形状に形成することが難しく、各単結晶原料の形状寸法にバラツキが生じる。この単結晶原料の形状寸法のバラツキにより、単結晶原料の強アルカリ溶液への溶解速度にムラが発生する。その結果、安定した単結晶の育成を行うことが難しくなる。
【0011】
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、単結晶原料の単結晶育成用溶液への溶解速度を一定にする単結晶原料の作製方法およびその作製方法により作製された単結晶原料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる単結晶原料の作製方法は、単結晶を水熱合成法により育成する際に用いる単結晶原料の作製方法において、前記単結晶原料の元になる原材料にバインダを混合してバインダ混合原料を作製するバインダ混合工程と、前記バインダ混合原料を予め設定した形状寸法に成形する成形工程と、前記成形工程で成形した前記混合原料を焼成して焼成体を形成する焼成工程と、を有することを特徴とする単結晶原料の作製方法。
【0013】
本発明によれば、前記バインダ混合工程と前記成形工程と前記焼成工程とを有するので、前記焼成工程において形成する前記焼成体の形状寸法のバラツキを抑えることが可能となる。すなわち、単結晶原料を予め設定した寸法で作製することが可能となる。さらに、単結晶原料の形状寸法を設定することが可能となるので、単結晶の育成に用いる単結晶原料の形状寸法(表面積)を同一にすることが可能となる。その結果、単結晶原料の単結晶育成用溶液への溶解速度を一定にすることが可能となる。また、前記成形工程を有するので、単結晶原料を個別に作製することが可能となり、上記した特許文献1に記載されているような切断工程を必ず有する必要はなく、切断工程を省略することも可能となる。
【0014】
前記方法において、前記バインダ混合原料の粒を一定に揃える造粒工程を有してもよい。
【0015】
この場合、前記造粒工程を有するので、前記焼成工程において形成する前記焼成体の密度のバラツキを抑えることが可能となる。その結果、単結晶原料の単結晶育成用溶液への溶解速度を一定にすることが可能となる。
【0016】
前記方法において、前記バインダ混合工程の前に、前記単結晶原料の元になる原材料を焼成する第2の焼成工程を有してもよい。
【0017】
この場合、前記第2の焼成工程を有するので、1回の焼成工程によって作製される単結晶原料と比較して、焼成を行うことによる単結晶原料の収縮率の低減を図ることが可能となる。そのため、1回の焼成工程によって作製される単結晶原料と比較して、単結晶原料を作製する原材料の量を抑えることが可能となり、作製コストを削減することが可能となる。
【0018】
具体的に、前記焼成工程における焼成温度が約1100℃に設定される場合、前記第2の焼成工程における焼成温度が約600〜700℃に設定されることが好ましい。
【0019】
前記方法において、焼成回数の増加に伴って焼成温度を上げるように設定してもよい。
【0020】
この場合、焼成回数が増えることによって、各焼成時の前記焼成体の収縮率を小さくし、密度の低下を抑えて密度を予め設定した値にすることが可能となる。また、焼成回数の増加に伴って、焼成温度を上げるように設定しているので、焼成工程(本焼成)における焼成温度を下げることが可能となり、冷却時間を少なくできるなど製造時間の短縮と製造コストの抑制が可能となる。
【0021】
前記方法において、前記成形工程では、成形枠を用いてもよい。
【0022】
この場合、前記バインダ混合工程を有し、かつ、前記成形工程では成形枠を用いるので、成形圧力を高くせずに前記バインダ混合原料の成形を行うことが可能となる。また、前記成形工程では前記成形枠を用いるので、単結晶原料を任意の形状に形成することが可能となる。具体的に、表面積を拡大させるために、貫通孔を有する単結晶原料が形成されてもよい。また、作製した単結晶原料を複数に切断して使用する際に複数の単結晶原料の形状を全て同一にするために、単結晶原料の形状が直方体や立法体に形成されてもよい。
【0023】
前記方法において、前記成形工程では、前記バインダ混合原料の押出成形を行うとともに、この押出成形物を予め設定した形状寸法に切断成形してもよい。
【0024】
この場合、前記成形工程では、前記バインダ混合原料の押出成形を行うとともに、この押出成形物を予め設定した形状寸法に切断成形するので、厚い板状の単結晶原料や円柱等の大きな単結晶原料を作製することが可能となる。また、本発明によれば、前記バインダ混合工程を有するので、前記成形工程において前記バインダ混合原料が切れることなく押出成形を行うことが可能となる。
【0025】
前記方法において、前記成形工程では、前記バインダ混合原料のシート成形を行うとともに、このシート成形物を予め設定した形状寸法に切断成形してもよい。
【0026】
この場合、前記成形工程では、前記バインダ混合原料のシート成形を行うとともに、このシート成形物を予め設定した形状寸法に切断成形するので、薄いシート状の単結晶原料を作製することが可能となる。また、本発明によれば、前記バインダ混合工程を有するので、前記成形工程において前記バインダ混合原料が切れることなくシート成形を行うことが可能となる。
【0027】
前記方法において、前記成形工程では、前記バインダ混合原料のプレス成形を行ってもよい。
【0028】
この場合、前記成形工程では、前記バインダ混合原料のプレス成形を行うので、任意の形状に対応させてプレス成形して所望の形状の単結晶原料を作製することが可能となる。また、本発明によれば、前記バインダ混合工程を有するので、前記成形工程において寸法バラツキが小さいプレス成形を行うことが可能となる。
【0029】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる単結晶原料は、上記した本発明にかかる単結晶原料の作製方法により作製されたことを特徴とする。
【0030】
本発明にかかる単結晶原料によれば、上記した単結晶原料の作製方法により作製されるので、上記した作製方法と同様の作用効果を有することが可能となる。
【0031】
前記構成において、具体的に、上記した現材料として酸化亜鉛を用いることが、製造コストを抑制するのに好ましい。
【発明の効果】
【0032】
本発明にかかる単結晶原料の作製方法およびその作製方法により作製された単結晶原料によれば、単結晶原料の単結晶育成用溶液への溶解速度を一定にすることが可能となる。また、単結晶の育成時であっても、焼成体の表面が平坦に成形されているので、焼成体の表面に凹凸や角部が成形されている場合と比較して、単結晶育成用溶液により単結晶原料の表面が欠けるのを抑制することが可能となる。その結果、単結晶原料から単結晶を育成する際に、単結晶原料の表面から浮遊して発生する微結晶を抑制することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施の形態では、単結晶として酸化亜鉛の単結晶に本発明を適用した場合を示す。
【0034】
−単結晶育成炉の構成説明−
先ず、単結晶育成用溶液(以下、単に育成用溶液と呼ぶ)を使用して水熱合成法により単結晶の育成を行うための単結晶育成炉(以下、単に育成炉と呼ぶ)の構成について説明する。
【0035】
図1に示すように、育成炉1は、炉本体2の外周囲に電気炉3が配設されている。この電気炉3によって炉本体2が加熱されるようになっている。上記炉本体2は、上部が開放された有底円筒状であり、上端開口21には、炉本体2の内部空間4を密閉するための蓋体22が装着されている。この蓋体22には、炉本体2の内部圧力を計測するための圧力計22aが取り付けられている。更に、炉本体2の内部空間4の上下方向中間位置には対流制御板23が配設されている。この対流制御板23によって、炉本体2の内部空間4は、下側の原料室41と上側の育成室42とに仕切られている。
【0036】
上記原料室41には、育成用原料である酸化亜鉛の単結晶原料5,5,…が収容されている。一方、育成室42には、単結晶育成棚61に支持された複数枚の種結晶6,6,…が収容されている。
【0037】
また、この炉本体2の内部空間4には、育成用溶液(アルカリ溶液)が充填されている。
−単結晶育成動作の説明−
上述の如く単結晶原料5及び種結晶6が収容され、且つ育成用溶液が充填された育成炉1による単結晶育成動作について以下に説明する。
【0038】
この育成動作では、上記電気炉3によって炉本体2を加熱する。この加熱状態としては、育成室42よりも原料室41が高温となるように設定し、この温度差によって、育成用溶液を高温高圧の元で原料室41と育成室42との間を自然対流させる。
【0039】
これにより、原料室41で溶解した単結晶原料5が、育成室42に達し、その際、冷却されて過飽和状態となって種結晶6上に析出成長する。この動作を所定期間連続して行うことにより、所定の大きさの単結晶が得られる。
【0040】
ところで、上記した単結晶原料5は、以下の工程により作製される。そこで、次に、この単結晶原料の作製に関して、図面を用いて説明する。なお、以下に示す実施の形態では、原材料として酸化亜鉛粉末に本発明を適用した場合を示す。
【0041】
−単結晶原料作製の説明−
まず、酸化亜鉛粉末(図示省略)に蒸留水(図示省略)を加えてスラリー状原料51(図2参照)を作製する(図3のステップS1)。
【0042】
ステップS1において作製したスラリー状原料51を図2に示す脱水器具7のロート部71に配された濾紙72上に載置する。なお、ここでいう脱水器具7とは、スラリー状原料51の脱水(水切り)を行うための器具である。脱水器具7には、スラリー状原料51を配して下方に蒸留水を垂流すロート部71と、ロート部71から流れてきた蒸留水を受けるための吸引濾過瓶73と、が設けられ、図2に示すように、ロート部71が吸引濾過瓶73の上方に配される。また、吸引濾過瓶73の側面には吸引口74が形成され、この吸引口74には吸引濾過瓶73内の空気を吸引するための吸引装置(図示省略)が接続される。
【0043】
そして、濾紙72上にスラリー状原料51を載置した後に、脱水器具7を作動させることによって、スラリー状原料51を脱水状態にさせ(ステップS2)、その後にスラリー状原料51を乾燥させる(ステップS3)。
【0044】
ステップS3において乾燥させた原料を焼成装置(図示省略)に搬送し、乾燥した原料の仮焼成を行い、焼成体を形成する(ステップS4、本発明でいう第2の焼成工程)。なお、この焼成工程における焼成温度は、600℃に設定されている。
【0045】
ステップS4において形成した焼成体を、球を用いた湿式の粉砕器具(図示省略)により粉砕して、再度スラリー状原料を作製する(ステップS5)。
【0046】
ステップS5において作製したスラリー状原料にバインダを混合してバインダ混合原料を作製する(ステップS6、本発明でいうバインダ混合工程)。なお、バインダには、PVAが用いられる。
【0047】
ステップS6において作製したスラリー状のバインダ混合原料を再度図2に示す脱水器具7の濾紙72上に載置して、バインダ混合原料を脱水状態にさせ(ステップS7)、その後にスラリー状のバインダ混合原料を乾燥させる(ステップS8)。
【0048】
ステップS8において乾燥させたバインダ混合原料の粒を一定に揃えてバインダ混合原料の各位置(各場所)における密度を均一にさせる(ステップS9、本発明でいう造粒工程)。すなわち、ステップS9によりスラリー状原料の各位置(各場所)における密度の偏りを無くす。
【0049】
そして、ステップS9の後、バインダ混合原料を、予め設定した形状寸法に成形する(ステップS10、本発明でいう成形工程)。なお、このステップS10の成形工程では、成形枠を用いてバインダ混合原料を、予め設定した形状にする。
【0050】
ステップS10により成形したバインダ混合原料を焼成して、図4に示す焼成体52を形成する(ステップS11、本発明でいう焼成工程)。
【0051】
そして、ステップS11において形成した焼成体52を、図4に示すような分割線Aに沿って多数個に切断して、複数個の単結晶原料5が作製される(ステップS12)。
【0052】
上記したように、本実施の形態によれば、バインダ混合工程(ステップS6)と成形工程(ステップS10)と焼成工程(ステップS11)とを有するので、焼成工程(ステップS11)において形成する焼成体52の形状寸法のバラツキを抑えることができる。すなわち、単結晶原料5を予め設定した寸法で作製することができる。さらに、単結晶原料5の形状寸法を設定することが可能となるので、単結晶の育成に用いる単結晶原料5の形状寸法(表面積)を同一にすることができる。その結果、単結晶原料5の育成用溶液への溶解速度を一定にすることができる。
【0053】
また、造粒工程(ステップS9)を有するので、焼成工程(ステップS11)および第2の焼成工程(ステップS4)において形成する焼成体52の密度のバラツキを抑えることができる。その結果、その結果、単結晶原料5の育成用溶液への溶解速度を一定にすることができる。
【0054】
また、第2の焼成工程(ステップS4)を有するので、1回の焼成工程(下記する図6参照)によって作製される単結晶原料5と比較して、焼成を行うことによる単結晶原料5の収縮率の低減を図ることができる。そのため、1回の焼成工程によって作製される単結晶原料5と比較して、単結晶原料5を作製する原材料の量を抑えることができ、作製コストを削減することができる。
【0055】
また、バインダ混合工程(ステップS6)を有し、かつ、成形工程(ステップS10)では成形枠を用いるので、成形圧力を高くせずにバインダ混合原料の成形を行うことができる。また、成形工程(ステップS10)では成形枠を用いるので、単結晶原料5を任意の形状に形成することができる。具体的に、表面積を拡大させるために、貫通孔を有する単結晶原料(下記する図5(b)参照)が形成されてもよい。また、作製した単結晶原料5を複数に切断して使用する際に複数の単結晶原料5の形状を全て同一にするために、単結晶原料5の形状が直方体や立法体に形成されてもよい(下記する図5(d)、図5(e)参照)。
【0056】
また、本実施の形態にかかる単結晶原料5によれば、上記した単結晶原料5の作製方法により作製されるので、上記した作製方法と同様の作用効果を有することができる。
【0057】
また、本実施の形態にかかる単結晶原料5によれば、具体的に、上記した原材料として酸化亜鉛の粉末を用いることが、製造コストを抑制するのに好ましい。
【0058】
なお、本実施の形態では、原材料として酸化亜鉛を用いているが、これに限定されるものではなく、例えば酸化アルミニウムなどの他の原材料であってもよい。
【0059】
また、本実施の形態では、バインダとしてPVAを用いているが、これに限定されるものではなく、ワックスエマルジョンやデキシトリン等の他の材料であってもよい。
【0060】
また、本実施の形態では、図2に示す脱水器具7を用いたが、スラリー状原料51の脱水を行う器具や装置であれば、例えばフィルタープレスなどの他の器具や装置であってもよい。
【0061】
また、本実施の形態では、第2の焼成工程(ステップS4)における焼成温度を600℃、焼成工程(ステップS11)における焼成温度を1100℃と設定しているが、これに限定されるものではない。この設定温度は好適な例であり、焼成工程(ステップS11)における焼成温度を約1100℃に設定した場合、第2の焼成工程(ステップS4)における焼成温度が約600〜700℃に設定されることが好ましい。
【0062】
また、本実施の形態では、焼成体52が図4に示すような幅広の円筒状に形成されているが、これに限定されるものではなく、バインダを混合しているので任意の形状に形成することが可能である。例えば、図5(a)に示すように幅狭の円筒状に形成することも可能である。また、図5(b)に示すように幅広の中心部に貫通孔を有した円筒状に形成することも可能である。また、図5(c)に示すように上下面が凸に形成された円筒状に形成することも可能である。また、図5(d)に示すように立方体に形成することも可能である。また、図5(e)に示すように直方体に形成することも可能である。また、図5(f)に示すように球体に形成するも可能である。
【0063】
また、本実施の形態では、焼成工程において形成した焼成体52を多数個に切断して、複数個の単結晶原料5を作製しているが、これに限定されるものではなく、成形工程(ステップS10)を有するので、焼成工程(ステップS11)において形成した焼成体52から単一の単結晶原料5を作製してもよい。すなわち、上記した特許文献1に記載されているような切断工程を必ず有する必要はなく、切断工程を省略することも可能となる。
【0064】
また、本実施の形態では、図3に示す作製工程により単結晶原料5を作製しているが、これに限定されるものではなく、例えば、図6に示す作製工程により単結晶原料5を作製してもよい。この作製工程は、図6に示すように、上記した作製工程のうち、図3に示すステップS2〜ステップS5を省いた1回焼成を行う工程である。そのため、図1に示す作製工程よりも工程数が少なく、作製時間を削減するのに好ましい。
【0065】
また、本実施の形態では、焼成工程(ステップS11)と第2の焼成工程(ステップS4)と同時に有しているが、これに限定されるものではなく、これは好適な例である。すなわち、図6に示すように焼成工程(ステップS11)のみを有していてもよい。また、この場合、焼成工程(ステップS11)における焼成温度は、上記した焼成温度により低い温度に設定されることが好ましい。これは、焼成工程を図6に示す1回よりも図3に示す2回行う方が焼成体52の収縮率が下がり、その結果、密度が低下する。そこで、この本実施の他の形態のように、焼成回数の増加に伴って焼成温度を上げるように設定することで、密度の低下を抑えて密度を予め設定した値にすることができる。すなわち、図3に示す作製工程及び図6に示す作製工程によって作製する単結晶原料5の形状寸法と密度を同一にすることができ、実施環境や条件に合わせて作製工程を決定することができ、作製パターンのバリエーションを多くもつことができる。
【0066】
また、本実施の形態では、上記したように図3に示す作製工程から単結晶原料5を作製しているが、これに限定されるものではなく、例えば、押出形成装置(図示省略)を用いた作製工程(図7参照)や、ドクターブレード(図示省略)を用いた作製工程(図8参照)や、スプレードライヤー(図示省略)を用いた作製工程(図9参照)から単結晶原料5を作製してもよい。
【0067】
押出形成装置を用いた作製工程は、図7に示すように、まず、酸化亜鉛粉末に蒸留水とバインダと混合してスラリー状のバインダ混合原料を作製する(ステップS13、本発明でいうバインダ混合工程)。ステップS13において作製したバインダ混合原料を粘土状に練りこんで土錬状のバインダ混合原料を作製する(ステップS14)。ステップS14において作製したバインダ混合原料を予め設定した形状寸法に成形する(ステップS15、本発明でいう成形工程)。なお、このステップS15の成形工程では、土錬状のバインダ混合原料の押出成形を行うとともに、この押出成形物を予め設定した形状寸法に切断成形する。ステップS15において押出成形したバインダ混合原料を焼成して焼成体を形成する(ステップS16、本発明でいう焼成工程)。そして、ステップS16において形成した焼成体を多数個に切断して複数個の単結晶原料5が作製される(ステップS17)。この場合、成形工程では、バインダ混合原料の押出成形を行うとともに、この押出成形物を予め設定した形状寸法に切断成形するので、厚い板状の単結晶原料や円柱(図5参照)等の大きな単結晶原料5を作製することができる。また、この場合、バインダ混合工程を有するので、成形工程においてバインダ混合原料が切れることなく押出成形を行うことができる。
【0068】
また、ドクターブレード(図示省略)を用いた作製工程は、図8に示すように、まず、酸化亜鉛粉末にバインダと有機溶剤とを混合してバインダ混合原料を作製する(ステップS18、本発明でいうバインダ混合工程)。ステップS18において作製したバインダ混合原料を脱泡を作製する(ステップS19)。ステップS14において脱泡したバインダ混合原料を予め設定した形状寸法に成形する(ステップS20、本発明でいう成形工程)。なお、このステップS20の成形工程では、バインダ混合原料のシート成形を行うとともに、このシート成形物を予め設定した形状寸法に切断成形する。ステップS20において切断成形したバインダ混合原料を焼成して焼成体を形成して(ステップS21、本発明でいう焼成工程)、単結晶原料5が作製される(ステップS22)。この場合、成形工程では、バインダ混合原料のシート成形を行うとともに、このシート成形物を予め設定した形状寸法に切断成形するので、薄いシート状の単結晶原料5(図5参照)を作製することができる。また、この場合、バインダ混合工程を有するので、成形工程において所望の切断位置以外の位置においてバインダ混合原料が切れることなくシート成形を行うことができる。
【0069】
さらに、スプレードライヤー(図示省略)を用いた作製工程は、図9に示すように、まず、酸化亜鉛粉末に蒸留水とバインダと混合してスラリー状のバインダ混合原料を作製する(ステップS23、本発明でいうバインダ混合工程)。ステップS23において作製したバインダ混合原料を、スプレードライヤーを用いて高熱の熱風に吹き付け、その後に冷却して乾燥させてバインダ混合原料の粒を成形し、この粒を一定に揃える(ステップS24)。すなわち、ステップS24では、上記した図3のステップS7、S8、S9とを同時に行っている。ステップS24において作製したバインダ混合原料を予め設定した形状寸法に成形する(ステップS25、本発明でいう成形工程)。なお、このステップS15の成形工程では、バインダ混合原料のプレス成形を行う。ステップS25においてプレス成形したバインダ混合原料を焼成して焼成体を形成する(ステップS26、本発明でいう焼成工程)。そして、ステップS26において形成した焼成体を多数個に切断して複数個の単結晶原料5が作製される(ステップS27)。この場合、成形工程では、バインダ混合原料のプレス成形を行うので、図5に示すような任意の形状に対応させてプレス成形して所望の形状の単結晶原料5を作製することができる。また、この場合、バインダ混合工程を有するので、成形工程においてバインダ混合原料が切れることなくプレス成形を行うことができる。
【0070】
なお、本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、工業用途に利用可能な単結晶原料および単結晶原料の作製方法に適用できる。特に、原材料として酸化亜鉛を用いることが好適である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本実施の形態にかかる育成炉の内部構成を示す断面図である。
【図2】本実施の形態にかかる脱水器具の概略構成図である。
【図3】本実施の形態にかかる単結晶原料の作製工程のフローチャートである。
【図4】本実施の形態にかかる焼成体の側面図および平面図である。
【図5】(a)は、本実施の他の形態にかかる、幅狭の円筒状に形成された単結晶原料の概略斜視図である。(b)は、幅広の中心部に貫通孔を有した円筒状に形成された単結晶原料の概略斜視図である。(c)は、上下面が凸状であって、円筒状に形成された単結晶原料の概略斜視図である。(d)は、立方体に形成された単結晶原料の概略斜視図である。(e)は、直方体に形成された単結晶原料の概略斜視図である。(f)は、球体に形成された単結晶原料の概略斜視図である。
【図6】本実施の他の形態にかかる、焼成工程が1回である単結晶原料の作製工程のフローチャートである。
【図7】本実施の他の形態にかかる、押出形成装置を用いた単結晶原料の作製工程のフローチャートである。
【図8】本実施の他の形態にかかる、ドクターブレードを用いた単結晶原料の作製工程のフローチャートである。
【図9】本実施の他の形態にかかる、スプレードライヤーを用いた単結晶原料の作製工程のフローチャートである。
【符号の説明】
【0073】
5 単結晶原料
52 焼成体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶を水熱合成法により育成する際に用いる単結晶原料の作製方法において、
前記単結晶原料の元になる原材料にバインダを混合してバインダ混合原料を作製するバインダ混合工程と、
前記バインダ混合原料を予め設定した形状寸法に成形する成形工程と、
前記成形工程で成形した前記混合原料を焼成して焼成体を形成する焼成工程と、を有することを特徴とする単結晶原料の作製方法。
【請求項2】
前記バインダ混合原料の粒を一定に揃える造粒工程を有することを特徴とする請求項1に記載の単結晶原料の作製方法。
【請求項3】
前記バインダ混合工程の前に、前記単結晶原料の元になる原材料を焼成する第2の焼成工程を有することを特徴とする請求項1または2に記載の単結晶原料の作製方法。
【請求項4】
前記第2の焼成工程における焼成温度は、約600〜700℃に設定され、前記焼成工程における焼成温度は、約1100℃に設定されることを特徴とする請求項3に記載の単結晶原料の作製方法。
【請求項5】
焼成回数の増加に伴って焼成温度を上げるように設定することを特徴とする請求項3または4に記載の単結晶原料の作製方法。
【請求項6】
前記成形工程では、成形枠を用いることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の単結晶原料の作製方法。
【請求項7】
前記成形工程では、前記バインダ混合原料の押出成形を行うとともに、この押出成形物を予め設定した形状寸法に切断成形することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の単結晶原料の作製方法。
【請求項8】
前記成形工程では、前記バインダ混合原料のシート成形を行うとともに、このシート成形物を予め設定した形状寸法に切断成形することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の単結晶原料の作製方法。
【請求項9】
前記成形工程では、前記バインダ混合原料のプレス成形を行うことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の単結晶原料の作製方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の単結晶原料の作製方法により作製されたことを特徴とする単結晶原料。
【請求項11】
前記原材料は、酸化亜鉛であることを特徴とする請求項10に記載の単結晶原料。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−96638(P2006−96638A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−287517(P2004−287517)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】