説明

単結晶基板及び単結晶基板の製造方法

【課題】 結晶基板の利用率の低下を抑制しつつ、単結晶基板の特徴を目視で判別可能な単結晶基板、及び、その単結晶基板の製造方法を提供する。
【解決手段】
主面10を有する単結晶基板1Aであって、主面10には、垂直方向zに凹み、垂直方向zから視て、直線状に延びる少なくとも1つ以上の直線凹部50が設けられ、少なくとも1つ以上の直線凹部50に含まれる第1直線凹部50aの延在方向e1は、単結晶基板1Aの結晶方位a3と一致する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単結晶基板及び単結晶基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
円板形状の単結晶基板において、結晶方位や結晶極性といった単結晶基板の特徴の判別は、目視では不可能である。このため、単結晶基板を加工して、単結晶基板の特徴の判別するための目印が形成されてきた。この目印により、単結晶基板の特徴を目視によって判別可能となる。
【0003】
目印として、例えば、単結晶基板の側面の一部削り取り、側面の一部が平面になるように加工する方法が知られている。平面に加工された側面部分は、オリエンテーションフラット又はインデックスフラットと称される。オリエンテーションフラットは、結晶方位を示し、インデックスフラットは、オリエンテーションフラットとの位置関係により、結晶極性を示す。
【0004】
他にも、単結晶基板の一方の主面から他方の主面まで貫通する複数の貫通孔を形成し、貫通孔を目印にする方法も提案されている(特許文献1参照)。複数の貫通孔の位置関係によって、単結晶基板の特徴を判別する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007―49047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、単結晶基板にオリエンテーションフラット及びインデックスフラットが形成された場合、単結晶基板の側面の一部が削り取られる。これにより、半導体デバイスとして用いることのできる単結晶基板の割合が減少していた。貫通孔が形成される場合、貫通孔が形成された部分は、単結晶基板が存在しない。このため、オリエンテーションフラット等が形成される場合と同様に、半導体デバイスとして用いることのできる単結晶基板の割合が減少していた。このように、単結晶基板の特徴を判別するための目印を形成した場合、単結晶基板の利用率が低下するという問題が生じていた。特に、炭化珪素単結晶基板やダイヤモンド基板などの高価な単結晶基板において、単結晶基板の利用率が低下することは、深刻な問題であった。
【0007】
そこで、本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、単結晶基板の利用率の低下を抑制しつつ、単結晶基板の特徴を目視で判別可能な単結晶基板、及び、その単結晶基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明は、次のような特徴を有している。本発明の特徴は、主面(主面10)を有する単結晶基板(単結晶基板1)であって、前記主面には、前記主面に垂直な垂直方向(垂直方向z)に凹み、前記垂直方向から視て、直線状に延びる少なくとも1つ以上の直線凹部(直線凹部50)が設けられ、前記少なくとも1つ以上の直線凹部に含まれる一の直線凹部(直線凹部50a)の延在方向(延在方向e1)は、前記単結晶基板の所定の結晶方位と一致することを要旨とする。
【0009】
本発明の特徴によれば、主面には、主面に垂直な垂直方向に凹み、垂直方向から視て、直線状に延びる少なくとも1つ以上の直線凹部が設けられ、少なくとも1つ以上の直線凹部に含まれる一の直線凹部の延在方向は、単結晶基板の所定の結晶方位と一致する。このため、一の直線凹部を視れば、単結晶基板の特徴である結晶方位を目視で判別可能である。
【0010】
一の直線凹部によって、単結晶基板の特徴である結晶方位を目視で判別可能なため、単結晶基板の側面の一部を削り取る必要がない。また、単結晶基板に貫通孔を形成する必要がない。このため、直線凹部が設けられていない主面は、全面利用可能である。従って、単結晶基板の利用率の低下を抑制しつつ、単結晶基板の特徴である結晶方位を目視にて判別できる。
【0011】
また、前記少なくとも1つ以上の直線凹部は、前記一の直線凹部と異なる他の直線凹部を含み、前記一の直線凹部に沿って延びる直線と前記他の直線凹部に沿って延びる直線とは、互いに直交し、前記一の直線凹部と前記他の直線凹部との延在方向における長さは、異なってもよい。
【0012】
また、前記直線凹部が設けられた前記主面の結晶極性と、前記一の直線凹部に対する前記他の直線凹部の位置とは、関連付けられていてもよい。
【0013】
本発明の他の特徴は、主面を有する単結晶基板を準備する準備工程(準備工程S1)と、レーザーを用いて、前記主面に垂直な垂直方向に凹み、前記垂直方向から視て、直線状に延びる少なくとも1つ以上の直線凹部を前記主面に設ける凹部工程(凹部工程S2)と、を含み、前記凹部工程において、前記少なくとも1つ以上の前記直線凹部に含まれる一の直線凹部の延在方向が、前記単結晶基板の所定の結晶方位と一致するように、前記直線凹部を設けることを要旨とする。
【0014】
また、前記凹部工程において、前記一の直線凹部と異なる他の直線凹部を設け、前記直線凹部が設けられた前記主面の結晶極性と、前記一の直線凹部に対する前記他の直線凹部の位置とを関連付けて、前記凹部を設けてもよい。
【0015】
また、前記単結晶基板の禁制帯をEg[eV]とすると、前記レーザーの波長λ[nm]は、λ<(1240/Eg)+200よりも小さくてもよい。
【0016】
本発明の他の特徴は、主面を有する単結晶基板であって、前記主面には、前記主面に垂直な垂直方向に凹み、前記垂直方向から視て、点形状である複数の点凹部が設けられ、2つの前記点凹部を結ぶ仮想線分の延在方向は、前記単結晶基板の所定の結晶方位と一致することを要旨とする。
【0017】
また、前記点凹部は、3つ以上設けられ、前記所定の結晶方位と一致する延在方向を有する仮想線分は、第1仮想線分であり、前記所定の結晶方位と一致する延在方向を有する仮想線分とは異なる仮想線分は、第2仮想線分であり、前記第1仮想線分に沿って延びる直線と前記第2仮想線分に沿って延びる直線とは、互いに直交し、前記第1仮想線分と前記第2仮想線分との長さは、異なってもよい。
【0018】
また、前記点凹部が設けられた前記主面の結晶極性と、前記第1仮想線分に対する前記第2仮想線分の位置とは、関連付けられていてもよい。
【0019】
本発明の他の特徴は、主面を有する単結晶基板を準備する準備工程と、レーザーを用いて、前記主面に垂直な垂直方向に凹み、前記垂直方向から視て、点形状である点凹部を複数設ける凹部工程と、を含み、前記凹部工程において、2つの前記点凹部を結ぶ仮想線分の延在方向が、前記単結晶基板の所定の結晶方位と一致するように、前記点凹部を設けることを要旨とする。
【0020】
また、前記凹部工程において、3つ以上の前記点凹部を設け、前記所定の結晶方位と一致する延在方向を有する仮想線分は、第1仮想線分であり、前記所定の結晶方位と一致する延在方向を有する仮想線分とは異なる仮想線分は、第2仮想線分であり、前記凹部工程において、前記点凹部が設けられた前記主面の結晶極性と、前記第1仮想線分に対する前記第2仮想線分の位置とを関連付けて、前記点凹部を設けてもよい。
【0021】
また、前記単結晶基板の禁制帯をEg[eV]とすると、前記レーザーの波長λ[nm]は、λ<(1240/Eg)+200よりも小さくてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、結晶基板の利用率の低下を抑制しつつ、単結晶基板の特徴を目視で判別可能な単結晶基板、及び、その単結晶基板の製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1(a)は、本実施形態に係る単結晶基板1Aの平面図である。図1(b)は、図1(a)におけるA−A’線における断面図である。
【図2】図2は、本実施形態の変形例に係る単結晶基板1Bの平面図である。
【図3】図3は、本実施形態の変形例に係る単結晶基板1Cの平面図である。
【図4】図4は、単結晶基板1の製造工程を説明するためのフローチャート図である。
【図5】図5は、実施例2に係る炭化珪素単結晶基板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係る単結晶基板及び単結晶基板の製造方法の一例について、図面を参照しながら説明する。具体的には、(1)単結晶基板1Aの概略構成、(2)変形例、(3)単結晶基板1Aの製造方法、(4)単結晶基板1Cの製造方法、(5)作用・効果、(6)実施例、(7)その他実施形態、について説明する。
【0025】
以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。
【0026】
(1)単結晶基板1Aの概略構成
本実施形態に係る単結晶基板1の概略構成について、図1(a)及び図1(b)を参照しながら説明する。図1(a)は、本実施形態に係る単結晶基板1Aの平面図である。図1(b)は、図1(a)におけるA−A’線における断面図である。
【0027】
図1(a)に示されるように、本実施形態において、単結晶基板1Aの形状は、円板形状である。単結晶基板1Aは、炭化珪素基板である。単結晶基板1Aは、主面10を有する。主面10には、主面10に垂直な垂直方向zに凹む直線凹部50が設けられる。直線凹部50は、垂直方向zから視て、直線状に延びる。直線凹部50は、単結晶基板1Aの一方の主面10にのみ設けられる。直線凹部50は、少なくとも1つ以上設けられる。本実施形態において、直線凹部50は、第1直線凹部50a及び第2直線凹部50bを含む。第1直線凹部50aと第2直線凹部50bとは、異なる。第1直線凹部50aの延在方向e1における端部と第2直線凹部50bの延在方向e2における端部とは連なっている。
【0028】
第1直線凹部50aの延在方向e1は、単結晶基板1Aの所定の結晶方位と一致する。本実施形態において、第1直線凹部50aの延在方向e1は、単結晶基板1Aの結晶方位a3と一致する。
【0029】
第1直線凹部50aに沿って延びる直線と第2直線凹部50bに沿って延びる直線とは、互いに直交する。本実施形態において、第1直線凹部50aと第2直線凹部50bとは、互いに直交する。また、第1直線凹部50aと第2直線凹部50bとの延在方向における長さは、異なる。本実施形態において、第1直線凹部50aの延在方向e1における長さは、第2直線凹部50bの延在方向e2における長さよりも長い。このため、長さの長い直線凹部50の延在方向e1が、所定の結晶方位と一致するようにしておけば、目視にて、所定の結晶方位を判別できる。
【0030】
第1直線凹部50a及び第2直線凹部50bは、主面10の中心Oからずれて設けられる。すなわち、第1直線凹部50aに沿った直線及び第2直線凹部50bに沿った直線は、中心Oを通らない。
【0031】
第1直線凹部50aに対する第2直線凹部50bの位置は、直線凹部50が設けられた主面10の結晶極性と関連付けられている。本実施形態の単結晶基板1Aである炭化珪素基板は、Si面とC面とを有する。Si面とは、(0001)面であり、C面とは、(000−1)面である。なお、「−1」は、1の上にバーの記号を付したものと等価である。
【0032】
第1直線凹部50aが所定の位置に位置するように、単結晶基板1Aを固定する。第1直線凹部50aに対して、一方側の位置に第2直線凹部50bが位置していた場合、主面10の結晶極性は、所定の結晶極性であると関連付ける。第1直線凹部50aに対して、他方側の位置に第2直線凹部50bが位置していた場合、主面10の結晶極性は、所定の結晶極性とは異なる別の結晶極性であると関連付ける。具体的には、例えば、図1(a)において、第1直線凹部50aは、下側に位置する。このとき、第2直線凹部50bが右側に位置する。この場合、主面10は、C面であると関連付ける。第2直線凹部50bが左側に位置していた場合は、主面10は、Si面であると関連付ける。これにより、第1直線凹部50aに対する第2直線凹部50bの位置により、結晶極性を判別することができる。
【0033】
(2)変形例
単結晶基板1の変形例について、図2及び図3を参照しながら説明する。図2は、本実施形態の変形例に係る単結晶基板1Bの平面図である。図3は、本実施形態の変形例に係る単結晶基板1Cの平面図である。上述した実施形態と同様のところは、適宜省略する。
【0034】
(2−1)変形例1
変形例1と上述した実施形態との違いは、第1直線凹部50a及び第2直線凹部50bの位置である。
【0035】
図2に示されるように、変形例1において、第1直線凹部50aと第2直線凹部50bとは、上述した実施形態よりも主面10の外周側に位置している。第1直線凹部50a及び第2直線凹部50bの延在方向における端部は、連なっていない。第1直線凹部50a及び第2直線凹部50bの延在方向における端部は、主面10の外周に位置している。
【0036】
第1直線凹部50aは、第2直線凹部50bよりも長い。第1直線凹部50aの延在方向e1は、単結晶基板1Aの結晶方位a3と一致する。第1直線凹部50aに沿って延びる直線と第2直線凹部50bに沿って延びる直線とは、互いに直交する。第1直線凹部50aの延在方向e1における端部と第2直線凹部50bの延在方向e2における端部とは連なっていない。
【0037】
(2−2)変形例2
変形例2と上述した実施形態との違いは、凹部の形状である。
【0038】
図3に示されるように、主面10には、主面10に垂直な垂直方向zに凹む点凹部70が設けられる。点凹部70は、点形状である。本実施形態において、円状の点形状である。点凹部70は、単結晶基板1Cの一方の主面10にのみ設けられる。点凹部70は、複数設けられる。本実施形態において、点凹部70は、3つ設けられる。本実施形態において、点凹部70は、第1点凹部70a、第2点凹部70b及び第3点凹部70cを含む。
【0039】
第1点凹部70aと第2点凹部70bとを結ぶ仮想線分は、第1仮想線分80pである。第2点凹部70bと第3点凹部70cを結ぶ仮想線分は、第2仮想線分80qである。第2仮想線分80qは、第1仮想線分80pと異なる。第1仮想線分80pの延在方向e1は、所定の結晶方位と一致する。本実施形態において、第1仮想線分80pの延在方向e1は、単結晶基板1Cの結晶方位a3と一致する。
【0040】
第1仮想線分80pに沿って延びる直線と第2仮想線分80qに沿って延びる直線とは、互いに直交する。また、第1仮想線分80pと第2仮想線分80qとの延在方向e1における長さは、異なる。本実施形態において、第1仮想線分80pの延在方向e1における長さは、第2仮想線分80qの延在方向e1における長さよりも長い。このため、長さの長い第1直線凹部50aの延在方向e1が、所定の結晶方位と一致するようにしておけば、目視にて、所定の結晶方位を判別できる。
【0041】
第1仮想線分80p及び第2仮想線分80qは、主面10の中心Oからずれて設けられる。すなわち、第1仮想線分80pに沿った直線及び第2仮想線分80qに沿った直線は、中心Oを通らない。
【0042】
第1仮想線分80pに対する第2仮想線分80qの位置は、点凹部70が設けられた主面10の結晶極性と関連付けられている。本実施形態の単結晶基板1Cである炭化珪素基板は、Si面とC面とを有する。
【0043】
第1仮想線分80pを所定の位置になるように、単結晶基板1Cを固定する。第1仮想線分80pに対して、一方側の位置に第2仮想線分80qが位置していた場合、主面10の結晶極性は、所定の結晶極性であると関連付ける。第1仮想線分80pに対して、他方側の位置に第2仮想線分80qが位置していた場合、主面10の結晶極性は、所定の結晶極性とは異なる別の結晶極性であると関連付ける。具体的には、例えば、図1(a)において、第1仮想線分80pは、下側に位置する。このとき、第2仮想線分80qが右側に位置する。この場合、主面10は、C面であると関連付ける。仮に、第2仮想線分80qが左側に位置していた場合は、主面10は、Si面であると関連付ける。これにより、第1仮想線分80pに対する第2仮想線分80qの位置により、結晶極性を判別することができる。
【0044】
なお、主面10に点凹部70が3つ設けられていれば、3つの仮想線分80が考えられる。すなわち、第1点凹部70aと第3点凹部70cとを結ぶ仮想線分も考えられる。本実施形態において、仮想線分は、直交するため、第1点凹部70aと第3点凹部70cとを結ぶ仮想線分は、考えられない。
【0045】
上述の通り、第1仮想線分80pは、上述した実施形態の第1直線凹部50aに相当する。第2仮想線分80qは、上述した実施形態の第2直線凹部50bに相当する。
【0046】
(3)単結晶基板1Aの製造方法
本実施形態に係る単結晶基板1Aの製造方法について、図1及び図4を参照しながら説明する。図4は、単結晶基板1の製造工程を説明するためのフローチャート図である。
【0047】
図4に示されるように、本実施形態に係る単結晶基板1Aの製造方法は、準備工程S1と凹部工程S2とを含む。
【0048】
(3−1)準備工程S1
準備工程S1は、主面10を有する単結晶基板を準備する工程である。単結晶基板として、例えば、円板形状の炭化珪素単結晶基板を準備する。円柱形状の炭化珪素単結晶をスライスして、単結晶基板を準備してもよい。炭化珪素単結晶基板に限らず、別の単結晶基板を準備してもよい。
【0049】
(3−2)凹部工程S2
凹部工程S2は、直線凹部50を主面10に設ける工程である。凹部工程S2において、レーザーを用いて直線凹部50を設ける。具体的には、準備された単結晶基板に第1直線凹部50a及び第2直線凹部50bを設ける。
【0050】
準備された単結晶基板の特徴を調べる。単結晶基板の特徴とは、例えば、結晶方位及び結晶極性である。結晶方位は、例えば、X線回折法を用いて調べることができる。結晶極性は、例えば、炭化珪素単結晶基板は、熱酸化法によって、調べることができる。熱酸化法は、酸化速度が結晶極性により異なる事を利用した判別法である。
【0051】
結晶方位が判別した単結晶基板に、第1直線凹部50aの延在方向e1が、単結晶基板の所定の結晶方位と一致するように、第1直線凹部50aを設ける。レーザーを用いて、結晶方位の方向に沿って第1直線凹部50aを設ける。レーザーの波長λ[nm]は、λ<(1240/Eg)+200より小さいことが好ましい。Eg[eV]は、単結晶基板固有の禁制帯である。すなわち、レーザーの波長は、1240を単結晶基板固有の禁制帯で割った数に200を加えた値より小さいことが好ましい。
【0052】
第1直線凹部50aが設けられた単結晶基板に第2直線凹部50bを設ける。結晶極性に関連付けて、第2直線凹部50bを設ける。図1に示されるように、第1直線凹部50aが設けられた主面10の結晶極性は、C面である。第1直線凹部50aが所定の位置に位置するように、単結晶基板を固定する。第1直線凹部50aに対して、一方側の位置に第2直線凹部50bが位置していた場合、所定の結晶極性であるC面とする。第1直線凹部50aに対して、他方側の位置に第2直線凹部50bが位置していた場合、所定の結晶極性であるSi面とする。
【0053】
図1に示されるように、本実施形態では、第1直線凹部50aが下側に位置するときに、第2直線凹部50bが右側に位置するように、第2直線凹部50bを設ける。
【0054】
第1直線凹部50aが下側に位置するときに、第2直線凹部50bが右側に位置していれば、直線凹部50が設けられた主面10は、C面であると判別することができる。第1直線凹部50aが下側に位置するときに、第2直線凹部50bが左側に位置していれば、直線凹部50が設けられた主面10は、Si面であると判別することができる。
【0055】
本実施形態において、第2直線凹部50bは、第1直線凹部50aと直交するように設ける。第1直線凹部50aと第2直線凹部50bとを目視にて区別するため、第1直線凹部50aと第2直線凹部50bとの延在方向における長さを異ならせて、設けることが好ましい。本実施形態において、第2直線凹部50bの長さが第1直線凹部50aの長さよりも短くなるように、第2直線凹部50bを設ける。
【0056】
以上により、目視にて、結晶方位及び結晶極性が判別可能な単結晶基板1Aが製造される。
【0057】
単結晶基板1Bは、上述した方法と同様に製造することができる。
【0058】
(4)単結晶基板1Cの製造方法
本実施形態に係る単結晶基板1Cの製造方法について、図3及び図4を参照しながら説明する。上述した単結晶基板1Aの製造方法と同様のところは、適宜省略する。
【0059】
図4に示されるように、本実施形態に係る単結晶基板1Cの製造方法は、準備工程S1と凹部工程S2とを含む。
【0060】
(4−1)準備工程S1
準備工程S1では、上述した準備工程S1と同様に、単結晶基板を準備する。
【0061】
(4−2)凹部工程S2
凹部工程S2は、点凹部70を主面10に設ける工程である。凹部工程S2において、レーザーを用いて点凹部70を複数設ける。具体的には、準備された単結晶基板に第1点凹部70a、第2点凹部70b及び第3点凹部70cを設ける。
【0062】
準備された単結晶基板の特徴を調べる。単結晶基板の特徴とは、例えば、結晶方位及び結晶極性である。結晶方位が判別した単結晶基板に、第1点凹部70a及び第2点凹部70bを結ぶ第1仮想線分80pの延在方向e1が、単結晶基板の所定の結晶方位と一致するように、第1点凹部70a及び第2点凹部70bを設ける。レーザーを用いて、結晶方位に沿って第1点凹部70a及び第2点凹部70bを設ける。レーザーの波長λ[nm]は、λ<(1240/Eg)+200より小さいことが好ましい。
【0063】
第1点凹部70a及び第2点凹部70bが設けられた単結晶基板に第3点凹部70cを設ける。結晶極性に関連付けて、第3点凹部70cを設ける。図3に示されるように、第1点凹部70a及び第2点凹部70bが設けられた主面10の結晶極性は、C面である。第1仮想線分80pが所定の位置に位置するように、単結晶基板を固定する。第1仮想線分80pに対して、一方側の位置に第2仮想線分80qが位置していた場合、所定の結晶極性であるC面とする。第1仮想線分80pに対して、他方側の位置に第2仮想線分80qが位置していた場合、所定の結晶極性であるSi面とする。
【0064】
図1に示されるように、本実施形態では、第1仮想線分80pが下側に位置するときに、第2仮想線分80qが右側に位置するように、第3点凹部70cを設ける。
【0065】
第1仮想線分80pが下側に位置するときに、第2仮想線分80qが右側に位置していれば、第1点凹部70a及び第2点凹部70bが設けられた主面10は、C面であると判別することができる。第1仮想線分80pが下側に位置するときに、第2仮想線分80qが左側に位置していれば、点凹部70が設けられた主面10は、Si面であると判別することができる。
【0066】
本実施形態において、第2仮想線分80qは、第1仮想線分80pと直交するように設ける。第1仮想線分80pと第2仮想線分80qとを目視にて区別するため、第1点凹部70aと第2点凹部70bとの距離、及び、第2点凹部70bと第3点凹部70cとの距離を異ならせて、第1点凹部70a、第2点凹部70b及び第3点凹部70cを設けることが好ましい。本実施形態において、第2仮想線分80qの長さが第1仮想線分80pの長さよりも短くなるように、第3点凹部70cを設ける。
【0067】
以上により、目視にて、結晶方位及び結晶極性が判別可能な単結晶基板1Cが製造される。
【0068】
(5)作用効果
本実施形態に係る単結晶基板1Aによれば、第1直線凹部50aの延在方向e1は、単結晶基板1Aの結晶方位a3と一致する。このため、第1直線凹部50aの延在方向e1を視れば、結晶方位a3が判別できる。
【0069】
直線凹部50によって、単結晶基板1Aの特徴である結晶方位が判断可能なため、単結晶基板1Aの側面の一部を削り取る必要がない。また、単結晶基板1Aに貫通孔を形成する必要がない。このため、直線凹部50が設けられていない主面は、全面利用可能である。従って、単結晶基板1Aの利用率の低下を抑制しつつ、単結晶基板1Aの特徴である結晶方位を目視にて判別できる。
【0070】
本実施形態に係る単結晶基板1Aによれば、第2直線凹部50bが設けられ、第1直線凹部50aに沿って延びる直線と第2直線凹部50bに沿って延びる直線とは、互いに直交し、第1直線凹部50aと第2直線凹部50bとの延在方向における長さは、異なる。このため、複数の直線凹部50を設けても、所定の結晶方位と一致する第1直線凹部50aを目視にて判別できる。第2直線凹部50bは、第1直線凹部50aと直交するため、第2直線凹部50bを目視にて判別できる。第2直線凹部50bの位置は、直線凹部50が設けられた主面10の結晶極性と関連付けられているため、単結晶基板1Aの特徴である結晶極性を目視にて判別できる。
【0071】
本実施形態に係る単結晶基板1Aの製造方法によれば、レーザーを用いて、単結晶基板1Aの所定の結晶方位と延在方向e1が一致するように、第1直線凹部50aを設ける。レーザーを用いることにより、クラックの発生を抑制しつつ、直線凹部50を設けることができる。このため、単結晶基板1Aの利用率の低下を抑制できる。
【0072】
レーザーの波長λ[nm]は、λ<(1240/Eg)+200よりも小さくてもよい。この範囲であれば、クラックの発生をより抑制しつつ、直線凹部50を設けることができる。その結果、単結晶基板の利用率の低下をより抑制できる。
【0073】
本実施形態に係る単結晶基板1Cによれば、第1仮想線分80pの延在方向e1は、単結晶基板1Cの結晶方位a3と一致する。このため、第1仮想線分80pの延在方向e1を視れば、結晶方位a3が判別できる。
【0074】
点凹部70によって、単結晶基板1Cの特徴である結晶方位が判断可能なため、単結晶基板1Cの側面の一部を削り取る必要がない。また、単結晶基板1Cに貫通孔を形成する必要がない。このため、点凹部70が設けられていない主面は、全面利用可能である。従って、単結晶基板1Cの利用率の低下を抑制しつつ、単結晶基板1Cの特徴である結晶方位を目視にて判別できる。
【0075】
本実施形態に係る単結晶基板1Cによれば、第2点凹部70b及び第3点凹部70cが設けられ、第1仮想線分80pに沿って延びる直線と第2仮想線分80qに沿って延びる直線とは、互いに直交し、第1仮想線分80pと第2仮想線分80qとの延在方向における長さは、異なる。このため、複数の点凹部70を設けても、所定の結晶方位と一致する第1仮想線分80pを目視にて判別できる。第2仮想線分80qは、第1仮想線分80pと直交するため、第2仮想線分80qを目視にて判別できる。第2仮想線分80qの位置は、点凹部70が設けられた主面10の結晶極性と関連付けられているため、単結晶基板1Cの特徴である結晶極性を目視にて判別できる。
【0076】
本実施形態に係る単結晶基板1Cの製造方法によれば、レーザーを用いて、単結晶基板1Cの所定の結晶方位と延在方向e1が一致するように、第1点凹部70a及び第2点凹部70bを設ける。レーザーを用いることにより、クラックの発生を抑制しつつ、点凹部70を設けることができる。このため、単結晶基板1Cの利用率の低下を抑制できる。
【0077】
レーザーの波長λ[nm]は、λ<(1240/Eg)+200よりも小さくてもよい。この範囲であれば、クラックの発生をより抑制しつつ、点凹部70を設けることができる。その結果、単結晶基板の利用率の低下をより抑制できる。
【0078】
(6)実施例
実施例1では、結晶多形が4H(禁制帯は、3.27eV)であり、直径が、76.2mmであり、厚みが200μmの炭化珪素単結晶基板を準備した。準備した炭化珪素単結晶基板の結晶方位及び結晶極性を測定した。図1(a)に示されるように、532nmの波長を有するレーザーを用いて、結晶方位が[11−20]方向に長さ30mm、[1−100]方向に長さ15mm、深さ100μmの凹部を設けた。
【0079】
実施例2では、レーザーの波長を除いて、実施例1と同様に、凹部を設けた。実施例2では、1064nmの波長を有するレーザーを用いて、凹部を設けた。
【0080】
凹部を設けた実施例1,2の断面を観察したところ、実施例2では、図5に示されるように、凹部の垂直方向における下側に、クラックが発生していた。一方、実施例1では、凹部の垂直方向における下側に、クラックは発生していなかった。
【0081】
実施例1では、(1240/Eg)+200よりも小さい波長のレーザーを用いることにより、クラックの発生が抑制されたと考えられる。従って、(1240/Eg)+200よりも小さい波長のレーザーを用いて凹部を設けた方が、クラックの発生を抑制できることが確認できた。
【0082】
(7)その他実施形態
本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。本発明はここでは記載していない様々な実施形態を含む。従って、本発明はここでは記載していない様々な実施形態を含む。
【0083】
具体的には、上述した実施形態及び変形例では、直線凹部50は、2つ設けられていたが、これに限られない。例えば、直線凹部50は、1つ設けられてもよい。直線凹部50は、3つ以上設けられてもよい。点凹部70は、2つ設けられてもよい。点凹部70は、4つ以上設けられてもよい。
【0084】
上述した実施形態及び変形例では、第1直線凹部50a及び第2直線凹部50bは、直交していたが、これに限られない。第1仮想線分80p及び第2仮想線分80qは、直交していたが、必ずしも直交しなくてもよい。
【0085】
上述した実施形態及び変形例では、直線凹部50は、直線状に延びていたが、これに限られない。延在方向が視認できる凹部であれば、直線凹部50は、一部が直線状であり、一部とは異なる部分が他の形状と組み合わさった形状であってもよい。変形例では、点凹部70は、円状の点形状であったが、これに限られない。点凹部70は、例えば、多角形状の点形状であってもよい。
【0086】
上述した実施形態及び変形例では、直線凹部50及び点凹部70によって、結晶方位及び結晶極性を判別していたが、必ずしもこれに限られない。例えば、直線凹部50及び点凹部70を位置合わせのための目印としてもよい。また、第2直線凹部50b及び第2仮想線分80qにより、単結晶基板1の裏表を判別してもよい。
【0087】
上述した実施形態及び変形例では、レーザーを用いて直線凹部50及び点凹部70を設けていたが、必ずしもこれに限られない。例えば、物理的手段によって、直線凹部50及び点凹部70を設けてもよい。
【0088】
上述した実施形態及び変形例では、第1直線凹部50aを設けた後に、第2直線凹部50bを設けていたが、これに限られない。第2直線凹部50bを設けた後に、第1直線凹部50aを設けてもよい。
【0089】
上述の通り、本発明はここでは記載していない様々な実施形態を含む。従って、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0090】
1,1A,1B,1C…単結晶基板、 10…主面、 50…直線凹部、 50a…第1直線凹部、 50b…第2直線凹部、 70…点凹部、 70a…第1点凹部、 70b…第2点凹部、 70c…第3点凹部、 80…仮想線分、 80p…第1仮想線分、 80q…第2仮想線分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面を有する単結晶基板であって、
前記主面には、前記主面に垂直な垂直方向に凹み、前記垂直方向から視て、直線状に延びる少なくとも1つ以上の直線凹部が設けられ、
前記少なくとも1つ以上の直線凹部に含まれる一の直線凹部の延在方向は、前記単結晶基板の所定の結晶方位と一致することを特徴とする単結晶基板。
【請求項2】
前記少なくとも1つ以上の直線凹部は、前記一の直線凹部と異なる他の直線凹部を含み、
前記一の直線凹部に沿って延びる直線と前記他の直線凹部に沿って延びる直線とは、互いに直交し、
前記一の直線凹部と前記他の直線凹部との延在方向における長さは、異なることを特徴とする請求項1に記載の単結晶基板。
【請求項3】
前記直線凹部が設けられた前記主面の結晶極性と、前記一の直線凹部に対する前記他の直線凹部の位置とは、関連付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の単結晶基板。
【請求項4】
主面を有する単結晶基板を準備する準備工程と、
レーザーを用いて、前記主面に垂直な垂直方向に凹み、前記垂直方向から視て、直線状に延びる少なくとも1つ以上の直線凹部を前記主面に設ける凹部工程と、を含み、
前記凹部工程において、前記少なくとも1つ以上の前記直線凹部に含まれる一の直線凹部の延在方向が、前記単結晶基板の所定の結晶方位と一致するように、前記直線凹部を設けることを特徴とする単結晶基板の製造方法。
【請求項5】
前記凹部工程において、
前記一の直線凹部と異なる他の直線凹部を設け、
前記直線凹部が設けられた前記主面の結晶極性と、前記一の直線凹部に対する前記他の直線凹部の位置とを関連付けて、前記凹部を設けることを特徴とする請求項4に記載の単結晶基板の製造方法。
【請求項6】
前記単結晶基板の禁制帯をEg[eV]とすると、
前記レーザーの波長λ[nm]は、(1240/Eg)+200よりも小さいことを特徴とする請求項4又は5に記載の単結晶基板の製造方法。
【請求項7】
主面を有する単結晶基板であって、
前記主面には、前記主面に垂直な垂直方向に凹み、前記垂直方向から視て、点形状である複数の点凹部が設けられ、
2つの前記点凹部を結ぶ仮想線分の延在方向は、前記単結晶基板の所定の結晶方位と一致することを特徴とする単結晶基板。
【請求項8】
前記点凹部は、3つ以上設けられ、
前記所定の結晶方位と一致する延在方向を有する仮想線分は、第1仮想線分であり、
前記所定の結晶方位と一致する延在方向を有する仮想線分とは異なる仮想線分は、第2仮想線分であり、
前記第1仮想線分に沿って延びる直線と前記第2仮想線分に沿って延びる直線とは、互いに直交し、
前記第1仮想線分と前記第2仮想線分との長さは、異なることを特徴とする請求項7に記載の単結晶基板。
【請求項9】
前記点凹部が設けられた前記主面の結晶極性と、前記第1仮想線分に対する前記第2仮想線分の位置とは、関連付けられていることを特徴とする請求項7又は8に記載の単結晶基板。
【請求項10】
主面を有する単結晶基板を準備する準備工程と、
レーザーを用いて、前記主面に垂直な垂直方向に凹み、前記垂直方向から視て、点形状である点凹部を複数設ける凹部工程と、を含み、
前記凹部工程において、2つの前記点凹部を結ぶ仮想線分の延在方向が、前記単結晶基板の所定の結晶方位と一致するように、前記点凹部を設けることを特徴とする単結晶基板の製造方法。
【請求項11】
前記凹部工程において、3つ以上の前記点凹部を設け、
前記所定の結晶方位と一致する延在方向を有する仮想線分は、第1仮想線分であり、
前記所定の結晶方位と一致する延在方向を有する仮想線分とは異なる仮想線分は、第2仮想線分であり、
前記凹部工程において、前記点凹部が設けられた前記主面の結晶極性と、前記第1仮想線分に対する前記第2仮想線分の位置とを関連付けて、前記点凹部を設けることを特徴とする請求項10に記載の単結晶基板の製造方法。
【請求項12】
前記単結晶基板の禁制帯をEg[eV]とすると、
前記レーザーの波長λ[nm]は次の式、λ<(1240/Eg)+200よりも小さいことを特徴とする請求項10又は11に記載の単結晶基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−107778(P2013−107778A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251584(P2011−251584)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】