説明

単結晶製造装置及び単結晶製造方法

【課題】インナーシールドから支持部材への熱の逃げを低減することで炉内保温性を高め、省電力化しつつ単結晶の製造時間を削減できる単結晶製造装置を提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも、原料を収容するルツボと、該原料を加熱して原料融液にするヒータを格納するメインチャンバと、該メインチャンバの上部に連設され、育成した単結晶が引き上げられて収容されるプルチャンバとを具備するチョクラルスキー法による単結晶製造装置であって、前記ヒータと前記メインチャンバとの間に配置され、前記ヒータからの輻射熱を遮断するインナーシールドと、該インナーシールドを下方から支持する支持部材とを有し、前記インナーシールドは前記支持部材と3箇所以上の支点で接触して支持され、前記インナーシールドの下端は前記支点以外では前記支持部材と接触しないものであることを特徴とする単結晶製造装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チョクラルスキー法(Czochralski Method、以下CZ法と略する)による単結晶製造装置及び単結晶製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の超高集積半導体素子の製造に使用される基板はCZ法により育成されたシリコン単結晶より製造した表面を鏡面に仕上げたシリコンウェーハが主に用いられている。
ここで、図5に従来のCZ法による単結晶製造装置の一例の概略図を示す。
【0003】
図5に示すように、CZ法でシリコン単結晶を製造する際に使用される単結晶製造装置101は、一般的に原料融液106が収容された昇降動可能なルツボ109、110と、該ルツボ109、110を取り囲むように配置されたヒータ111が単結晶108を育成するメインチャンバ105内に配置されており、該メインチャンバ105の上部には育成した単結晶108を収容し取り出すためのプルチャンバ107が連設されている。
【0004】
また、炉内に発生した酸化物を炉外に排出する等を目的とし、プルチャンバ107上部に設けられたガス導入口116からアルゴンガス等の不活性ガスが導入され、黒鉛製の整流筒104によって単結晶108の近傍まで整流されて、ガス流出口117から排出される。また、ヒータ111の外側には、ヒータ111からメインチャンバ105への熱伝導を防止するための断熱部材112が周囲を取り囲むように設けられ、この断熱部材112の内側にヒータ111からの輻射熱と断熱部材112からの発塵を遮蔽するための円筒状のインナーシールド102が設けられている。
【0005】
このようなインナーシールド102の外側に断熱部材112が設けられた構造を有する単結晶製造装置として、例えば、特許文献1が開示されている。また、インナーシールドとしては、内側部分の下部より約2/3の部分に薄肉の炭素繊維強化炭素材を着脱自在に取り付けたインナーシールドが開示されている(特許文献2参照)。
【0006】
また、単結晶製造装置101には、ヒータ111及び原料融液106からの熱が整流筒104や単結晶108に直接輻射されるのを防ぐための断熱リング119が設けられている。
そして、単結晶108を育成する際には、種ホルダ114に取り付けられた種結晶113を原料融液106に浸漬した後、引き上げ機構(不図示)により種結晶113を所望の方向に回転させながら静かにワイヤ115を巻き上げ、種結晶113の先端部に単結晶108を成長させる一方、所望の直径と結晶品質を得るため融液面の高さが常に一定位置に保たれるように結晶の成長に合わせルツボ109、110を原料減少による融液面の下降分を補償するように上昇させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−139581号公報
【特許文献2】特開2002−265297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、インナーシールド102は輻射率の高い黒鉛材等が用いられ、図6に示すように、インナーシールド102の下端全面がこれを支える同心円筒状の支持部材103と接触する形で設置される。
しかし、黒鉛材は熱伝導率が高いため、ヒータ111からの輻射を直接受けて高温となるインナーシールド102から、インナーシールド102を支える支持部材103へと熱伝導により熱が逃げ、保温効果を低下させてしまっていた。これより、従来の単結晶製造装置では熱効率が良いものではなく工業的にコスト高であり、このことが製造時間の増加の一因にもなっていた。
【0009】
本発明は前述のような問題に鑑みてなされたもので、インナーシールドから支持部材への熱の逃げを低減することで炉内保温性を高め、省電力化しつつ単結晶の製造時間を削減できる単結晶製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明によれば、少なくとも、原料を収容するルツボと、該原料を加熱して原料融液にするヒータを格納するメインチャンバと、該メインチャンバの上部に連設され、育成した単結晶が引き上げられて収容されるプルチャンバとを具備するチョクラルスキー法による単結晶製造装置であって、前記ヒータと前記メインチャンバとの間に配置され、前記ヒータからの輻射熱を遮断するインナーシールドと、該インナーシールドを下方から支持する支持部材とを有し、前記インナーシールドは前記支持部材と3箇所以上の支点で接触して支持され、前記インナーシールドの下端は前記支点以外では前記支持部材と接触しないものであることを特徴とする単結晶製造装置が提供される。
【0011】
このように、前記ヒータと前記メインチャンバとの間に配置され、前記ヒータからの輻射熱を遮断するインナーシールドと、該インナーシールドを下方から支持する支持部材とを有し、前記インナーシールドは前記支持部材と3箇所以上の支点で接触して支持され、前記インナーシールドの下端は前記支点以外では前記支持部材と接触しないものであれば、インナーシールドから支持部材への伝熱面積を減らして、インナーシールドから支持部材への熱の逃げを低減でき、炉内保温性を高めることができるものとなる。その結果、省電力化しつつ原料の溶融時間を削減して単結晶の製造時間を削減できるものとなる。
【0012】
このとき、前記インナーシールドと前記支持部材が棒状部材を介して接触し、該棒状部材の断面積の合計が200cm以下のものであることが好ましい。
このように、前記インナーシールドと前記支持部材が棒状部材を介して接触することにより、インナーシールドから支持部材への伝熱は棒状部材の断面積が支配的となり、該棒状部材の断面積の合計が200cm以下のものであれば、より確実にインナーシールドから支持部材への熱の逃げを低減できるものとなる。
【0013】
またとのとき、前記棒状部材はカーボン材又はカーボンコンポジット材から成るものとすることができる。
このように、前記棒状部材がカーボン材又はカーボンコンポジット材から成るものであれば、インナーシールドを支持する支点の強度を十分に高いものとすることができ、棒状部材の断面積をより小さいものとすることができる。
【0014】
またこのとき、前記棒状部材は端部が細い段差を有し、該細い端部側が前記支持部材上に載せられるものとすることができる。
このように、前記棒状部材は端部が細い段差を有し、該細い端部側が前記支持部材上に載せられるものであれば、支持部材上に載せられた棒状部材及びインナーシールドが水平方向にずれて移動した際に、簡単な構造でその移動量を段差によって制限できるものとなる。その結果、インナーシールドがずれてヒータとの間隔が狭くなり、放電が発生することを防ぐことができる。また、段差の位置を調整することで、インナーシールドの直径精度が悪い場合でも、そのずれによる位置のばらつきを一定範囲内に抑えることができるものとなる。
【0015】
またこのとき、さらに、前記インナーシールドの周囲を取り囲む断熱部材を有するものであることが好ましい。
このように、さらに、前記インナーシールドの周囲を取り囲む断熱部材を有するものであれば、炉内保温性を更に高めることができ、省電力化効果をより高めることができるものとなる。
【0016】
また、本発明によれば、本発明の単結晶製造装置を用いて単結晶を製造する単結晶製造方法が提供される。
このように、本発明の単結晶製造装置を用いて単結晶を製造することによって、熱効率よく単結晶の育成を行うことができ、消費電力を削減して製造コストを低減し、また原料の溶融時間を削減して製造時間を削減できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、単結晶製造装置において、ヒータとメインチャンバとの間に配置され、前記ヒータからの輻射熱を遮断するインナーシールドと、該インナーシールドを下方から支持する支持部材とを有し、前記インナーシールドは前記支持部材と3箇所以上の支点で接触して支持され、前記インナーシールドの下端は前記支点以外では前記支持部材と接触しないものであるので、インナーシールドから支持部材への伝熱面積を減らして、インナーシールドから支持部材への熱の逃げを低減でき、炉内保温性を高めることができるものとなる。その結果、省電力化しつつ原料の溶融時間を削減して単結晶の製造時間を削減でき、生産性を向上できるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の単結晶製造装置の一例を示した概略図である。
【図2】本発明の単結晶製造装置のインナーシールドの一例を示した概略図である。
【図3】本発明の単結晶製造装置の棒状部材の一例を示した概略図である。
【図4】本発明の単結晶製造装置のインナーシールド及び断熱部材の一例を示した概略図である。
【図5】従来の単結晶製造装置の一例を示した概略図である。
【図6】従来の単結晶製造装置のインナーシールドの一例を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
従来の単結晶製造装置において、インナーシールドは黒鉛材等の輻射率の高い材質のものが用いられており、インナーシールドの下端が全面に亘ってこれを支える支持部材と接触して設置されていた。このような黒鉛材等のインナーシールドは熱伝導率も高く、そのため、ヒータからの輻射を直接受けて高温となるインナーシールドから支持部材への熱伝導により熱が逃げ、保温効果を低下させてしまっていた。これにより、従来の単結晶製造装置では熱効率が良いものではなく工業的にコスト高であり、このことが製造時間の増加の一因となっていた。
【0020】
そこで、本発明者等はこのような問題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、インナーシールドから支持部材への伝熱面積を小さくしてインナーシールドを支持するようにすれば、インナーシールドから支持部材への熱の逃げを低減できることに想到した。また、カーボン材或いはカーボンコンポジット材の棒状部材を介してインナーシールドと支持部材とを接触させるようにすれば、支点の強度を高めつつ、棒状部材の断面積をより小さくできることを見出し本発明を完成させた。
【0021】
図1は、本発明の単結晶製造装置の一例を示す概略図である。
図1に示すように、単結晶製造装置1は、原料を収容するルツボ9、10、原料を加熱、融解して原料融液6にするためのヒータ11などがメインチャンバ5内に格納され、メインチャンバ5上に連接されたプルチャンバ7の上部には、育成された単結晶8を回転させながら引き上げる引き上げ機構20が設けられている。
【0022】
このプルチャンバ7の上部に取り付けられた引き上げ機構20からはワイヤ15が巻き出されており、その先端には種結晶13を取り付けるための種ホルダ14が接続され、種ホルダ14の先に取り付けられた種結晶13を原料融液6に浸漬し、ワイヤ15を引き上げ機構20によって巻き取ることで種結晶13の下方に単結晶8を形成する。
【0023】
なお、ルツボ9、10は、内側に原料融液6を直接収容する石英ルツボ9と、外側に該ルツボ9を支持するための黒鉛ルツボ10とから構成されている。ルツボ9、10は、単結晶製造装置1の下部に取り付けられた回転昇降動自在なルツボ回転軸18に支持されており、単結晶製造装置1中の融液面の変化によって結晶直径や結晶品質が変わることのないよう、融液面を一定位置に保つため、ルツボ回転昇降駆動機構(不図示)によってルツボ9、10を単結晶8と逆方向に回転させながら単結晶8の引き上げに応じて融液が減少した分だけルツボ9、10を上昇させている。
【0024】
また、育成する単結晶8を取り囲むようにして、円筒状の整流筒4が設けられている。
ここで、整流筒4には黒鉛材が用いられており、ヒータ11や原料融液6からの単結晶8への輻射熱を遮断できるようになっている。
そして、炉内に発生した酸化物を炉外に排出する等を目的とし、プルチャンバ7上部に設けられたガス導入口16からアルゴンガス等の不活性ガスが導入され、整流筒4の内側を通り引き上げ中の単結晶8の近傍に整流され、原料融液6表面を通過してルツボ9、10の上端縁の上方を通過し、ガス流出口17から排出される。これにより、引き上げ中の単結晶8がガスにより冷却されるとともに、整流筒4の内側、及びルツボ9、10の上端縁等に酸化物が堆積するのを防ぐことができるようになっている。
【0025】
また、この整流筒4の下端部から、整流筒4を取り囲むように外上方に拡径して延出した断熱リング19が設けられている。この断熱リング19により、ヒータ11、及び原料融液6からの熱を遮断し、整流筒4に熱が直接輻射されるのを防ぐことができるようになっている。
なお、メインチャンバ5及びプルチャンバ7は、ステンレス等の耐熱性、熱伝導性に優れた金属により形成されており、冷却管(不図示)を通して水冷されている。
【0026】
また、ヒータ11はルツボ9、10を取り囲むように配置されている。このヒータ11とメインチャンバ5との間に、ヒータ11の周囲を取り囲むようにインナーシールド2が設けられており、このインナーシールド2でヒータ11からの輻射熱を遮断できるようになっている。また、インナーシールド2は下方から支持部材3によって支持されている。さらに、インナーシールド2の外側に断熱部材12が配置され、ヒータ11からの熱によって高温になったインナーシールド2からメインチャンバ5への熱伝導を防止できるようになっている。また、インナーシールド2は、断熱部材12からの発塵を遮蔽する効果もある。インナーシールド2と断熱部材12とは、図1のように離れていてもよいが、両者の間の間隔をなくして接触していてもよい。
【0027】
ここで、図2にインナーシールド2の一例の概略図を示す。図2に示すように、インナーシールド2は支持部材3と3箇所以上の支点21(棒状部材)で接触して支持されている。また、インナーシールド2の下端はその支点21以外では支持部材3とは接触しない(図2のA参照)。ここで、インナーシールド2の材質は輻射率の高いもの、例えば黒鉛材とすることができるが、特にこれに限定されず、例えばより強度の高いカーボンコンポジット材とすることもできる。
【0028】
このような構造のインナーシールド2を有した単結晶製造装置であれば、インナーシールド2から支持部材3への伝熱面積を減らして、インナーシールド2から支持部材3への熱の逃げを低減でき、炉内保温性を高めることができるものとなる。その結果、消費電力を削減できるので単結晶の製造コストを低減できるものとなる。さらに、原料の溶融時間も削減できるので単結晶の製造時間も削減でき、さらに石英ルツボへのダメージも低減できるものとなる。また、インナーシールド2と支持部材3との接触箇所の使用部材が減るので単結晶製造装置自体のコストも低減できる。
【0029】
このとき、インナーシールド2を支持するための十分な強度を有していれば、インナーシールド2から支持部材3への熱の逃げをより低減するために、インナーシールド2と支持部材3の伝熱面積はできる限り小さいほうが良い。そのためには、インナーシールド2及び支持部材3の材質や大きさ、形状などによって、支点の3箇所以上の数を適宜調整すれば良い。
【0030】
またこのとき、図2に示すように、インナーシールド2と支持部材3が棒状部材21を介して接触するようにでき、例えば棒状部材21をインナーシールド2の外側に向かって放射状に伸びるようにして配置することができる。このような構造とすることにより、インナーシールド2から支持部材3への伝熱は棒状部材21の断面積が支配的となるので、棒状部材21の断面積の合計を減らすことにより、伝熱面積を小さくすることができる。ここで、棒状部材21は角柱状であっても、円柱状であっても良い。また棒状部材21の材質や大きさ、形状、数は上記したように、インナーシールド2を支持するための十分な強度となるように適宜決定することができるが、例えば、材質をカーボン材又はカーボンコンポジット材とすることができる。このように、棒状部材21がカーボン材又はカーボンコンポジット材から成るものであれば、インナーシールド2を支持する支点の強度を高めて、棒状部材21の断面積をより小さいものとすることができるので好ましい。
【0031】
またこのとき、3個以上の複数の棒状部材21の断面積の合計が200cm以下であることが好ましく、こうなるように、棒状部材21の数、長さ及び幅を調整することができる。このように、断面積の合計が200cm以下であれば、インナーシールド2から支持部材3への伝熱面積を十分に減らして、より確実にインナーシールド2から支持部材3への熱の逃げを低減できるものとなる。
【0032】
ここで、棒状部材21はその両端をそれぞれインナーシールド2の下端及び支持部材3の上端の両方に取り付けて固定することができる。或いは、インナーシールド2の下端のみに取り付けて固定し、他方の端部を支持部材3に固定せずに上端に載せるようにしたり、支持部材3の上端のみに取り付けて固定し、他方の端部をインナーシールド2に固定せずにインナーシールド2を載せるようにしても良く、このようにすれば、固定のためのコストを低減できるし、例えばインナーシールド2のみ交換する場合などのメインテナンスを容易に行うことができる。
【0033】
この場合、インナーシールド2及びそれに固定された棒状部材21が支持部材3上で水平方向に移動してずれることがあるが、この移動量が小さければ問題が発生することはない。そのため、この移動量を小さくするために、例えば棒状部材21に移動量を制限するような加工を行うことが望ましい。例えば、図3に示すように、棒状部材21に端部が細い段差(図3のB参照)を設け、その細い端部側が支持部材3上に載せられるようにすることができる。そして、3個以上のこのような棒状部材21をインナーシールド2の下端の外周上にそれぞれ等間隔で取り付けることができる。
【0034】
このような棒状部材21であれば、支持部材3上での移動量を段差によって、図3中に示したクリアランスDの範囲内に制限することができる。そして、クリアランスDを調整すれば、例えばインナーシールド2がずれてヒータ11との間隔が狭くなり、放電が発生してインナーシールドやヒータが損傷したり、操業に支障が生じたりしてしまうことを防ぐことができるし、インナーシールド2の直径精度が悪い場合でも、そのずれによる位置のばらつきを一定範囲内に抑えることができる。
【0035】
またこのとき、図4に示すように、インナーシールド2の周囲を取り囲むように断熱部材12を配置することができる。ここで、インナーシールド2と支持部材3を棒状部材21を介して接触させる場合、断熱部材12に凹部又は穴22を設け、この凹部又は穴22と支持部材3上に載置または固定された棒状部材21と係合させるようにして断熱部材12をインナーシールド2に覆うようにして配置することができる。
【0036】
このように、インナーシールド2の周囲を取り囲むように断熱部材12を配置すれば、更に炉内保温性を高めて省電力化効果を高めることができるものとなる。また、本発明の単結晶製造装置のインナーシールド2は、その下端に支持部材3と接触しない部分を有するものであるので、この部分も断熱部材12によって覆うことができ、インナーシールド2の下端が全面に亘って支持部材3と接触していた従来の単結晶製造装置と比べて、インナーシールド2の下端を断熱部材12で覆うことができ、断熱部材12を配置することによる省電力化効果が高くなる。
【0037】
またこのとき、図1に示すように、原料融液6に磁場を印加する、例えば永久磁石又は電磁石からなる磁場印加装置23を具備することができる。このように原料融液6に磁場を印加する磁場印加装置23を具備していれば、原料融液6中の対流を制御して、製造する単結晶8の有転位化を防止するとともに不純物濃度の制御をより高精度に行うことができるものとなる。
【0038】
次に、本発明の単結晶製造方法について説明する。本発明の単結晶製造方法では、上述のような本発明の単結晶製造装置を用いて単結晶を製造する。ここでは、図1に示すような本発明の単結晶製造装置を用いた場合について説明する。
図1に示すように、まず、ルツボ9、10内でシリコンの高純度多結晶原料を融点(約1420℃)以上に加熱して融解して原料融液6とする。そして、ワイヤ15を巻き出すことにより湯面の略中心部に種結晶13の先端を接触または浸漬させる。
【0039】
このとき、種結晶13を原料融液6に着液させた際に生じる転位を消滅させるため、一旦、成長初期の結晶を3〜5mm程度まで細く絞り、転位が抜けたところで径を所望の直径まで拡大して、目的とする直径及び品質の単結晶8を成長させていく。或いは、このような種絞りを行わず、先端が尖った種結晶13を用いて、該種結晶13を原料融液6に静かに接触して所定径まで浸漬させてから引き上げを行う無転位種付け法を適用して単結晶8を育成することもできる。
【0040】
その後、ルツボ回転軸18を適宜の方向に回転させるとともに、ワイヤ15を回転させながら巻き取り、種結晶13を引き上げることにより、単結晶8の育成が開始される。そして、所望の直径、品質が得られるよう単結晶8の引き上げ速度やヒータ11の電力を制御しながら単結晶8の引き上げを行う。
このようにして、本発明の単結晶製造装置を用いて単結晶を製造すれば、炉内保温性を高めて単結晶を製造することができるので、原料の溶融時間を削減して製造時間を削減できる。また、単結晶製造中の消費電力を削減して製造コストを低減できる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】
(実施例)
図1に示すような本発明の単結晶製造装置を用いて直径300mmのシリコン単結晶を製造した。インナーシールドは図2に示すような棒状部材を介して支持部材と接触するものを用い、図3に示すような直径24mmの円柱状のものに端部が16mmと細い段差を有する棒状部材の12個をインナーシールドの下端に等間隔で固定し、棒状部材の細い端部を支持部材上に載せるようにした。この際のインナーシールドと支持部材との接触面積は54cmと全面に亘って接触する場合の約10%程度であった。ここで、インナーシールド及び棒状部材はカーボンコンポジット材のものを用いた。また、図4に示すようにインナーシールドの周囲を覆うように断熱部材を配置したものを用いた。
【0043】
まず、500kgのシリコン多結晶原料を直径91cmの石英ルツボにチャージし、その原料を融解した。また、磁場印加装置により水平磁場を中心強度が0.4Tとなるように印加し、原料融液の熟成工程を経てから、<100>面を有する種結晶を原料融液に浸した。このとき、Arをガス導入口より導入し、その流量を200L/minとした。また、単結晶製造装置内の圧力を排気管に抵抗を設けることにより75Torr(約10kPa)に調整した。
【0044】
そして、無転位種付け法により単結晶の直径を300mmまで拡径させ、その後、製品となる直胴部の比抵抗が10Ω・cmに調整されたボロンドープの直径300mmのシリコン単結晶を引き上げた。
【0045】
このときの単結晶製造装置の消費電力と、原料の溶融時間を測定したところ、後述する比較例の結果と比べ、共に約5%程度削減されていることが確認できた。
このように、本発明の単結晶製造装置及び単結晶製造方法は、インナーシールドから支持部材への熱の逃げを低減することで炉内保温性を高め、省電力化することができ、また、原料の溶融時間を削減して単結晶の製造時間を削減できることが確認できた。
【0046】
(比較例)
図6に示すような下端が全面に亘って支持部材と接触するインナーシールドを具備した図5に示すような従来の単結晶製造装置を用いた以外、実施例と同様な条件でシリコン単結晶を製造し、実施例と同様に単結晶製造装置の消費電力と、原料の溶融時間を評価した。
その結果、実施例と比べ、消費電力、溶融時間とも約5%程度大きくなっていることが確認できた。
【0047】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0048】
1…単結晶製造装置、 2…インナーシールド、 3…支持部材、 4…整流筒、
5…メインチャンバ、 6…原料融液、 7…プルチャンバ、 8…単結晶、
9、10…ルツボ 11…ヒータ、 12…断熱部材、 13…種結晶、
14…種ホルダ、 15…ワイヤ、 16…ガス導入口、 17…ガス流出口、
18…ルツボ回転軸、 19…断熱リング、 20…引き上げ機構、
21…棒状部材、 22…穴、23…磁場印加装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、原料を収容するルツボと、該原料を加熱して原料融液にするヒータを格納するメインチャンバと、該メインチャンバの上部に連設され、育成した単結晶が引き上げられて収容されるプルチャンバとを具備するチョクラルスキー法による単結晶製造装置であって、
前記ヒータと前記メインチャンバとの間に配置され、前記ヒータからの輻射熱を遮断するインナーシールドと、該インナーシールドを下方から支持する支持部材とを有し、前記インナーシールドは前記支持部材と3箇所以上の支点で接触して支持され、前記インナーシールドの下端は前記支点以外では前記支持部材と接触しないものであることを特徴とする単結晶製造装置。
【請求項2】
前記インナーシールドと前記支持部材が棒状部材を介して接触し、該棒状部材の断面積の合計が200cm以下のものであることを特徴とする請求項1に記載の単結晶製造装置。
【請求項3】
前記棒状部材はカーボン材又はカーボンコンポジット材から成ることを特徴とする請求項2に記載の単結晶製造装置。
【請求項4】
前記棒状部材は端部が細い段差を有し、該細い端部側が前記支持部材上に載せられるものであることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の単結晶製造装置。
【請求項5】
さらに、前記インナーシールドの周囲を取り囲む断熱部材を有するものであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の単結晶製造装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の単結晶製造装置を用いて単結晶を製造する単結晶製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−116600(P2011−116600A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276675(P2009−276675)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000190149)信越半導体株式会社 (867)
【Fターム(参考)】