単離された単球集団及び関連した治療応用
要約
本発明は、種々の眼球血管系疾患又は眼球変性障害を患った患者を治療するために、単離された単球集団を使用する方法を提供する。本発明は、実質的に純粋な単球集団を単離するための新規な方法も提供する。本方法には、患者から血液試料又は骨髄試料を抽出すること、当該試料から赤血球をデバルキングすること、それから試料中の残存赤血球及び他の細胞型を単球から分離することが含まれる。いかなる選択剤又は標識剤も使用せず、赤血球又は他の細胞種は、そのサイズ、粒度又は密度に基づいて単球から分離される。単離単球は、患者に投与するに先立ってインビトロ又はエクスビボでさらに活性化することができる。実質的に純粋なCD14+/CD33+単球を含有する単離された細胞集団も本発明において提供される。
本発明は、種々の眼球血管系疾患又は眼球変性障害を患った患者を治療するために、単離された単球集団を使用する方法を提供する。本発明は、実質的に純粋な単球集団を単離するための新規な方法も提供する。本方法には、患者から血液試料又は骨髄試料を抽出すること、当該試料から赤血球をデバルキングすること、それから試料中の残存赤血球及び他の細胞型を単球から分離することが含まれる。いかなる選択剤又は標識剤も使用せず、赤血球又は他の細胞種は、そのサイズ、粒度又は密度に基づいて単球から分離される。単離単球は、患者に投与するに先立ってインビトロ又はエクスビボでさらに活性化することができる。実質的に純粋なCD14+/CD33+単球を含有する単離された細胞集団も本発明において提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
米国政府援助に関する陳述
本発明は、アメリカ国立衛生研究所の助成金番号EY11254、EY14174及びEY017540によってその一部分に米国政府の補助を受けた。それ故に米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
関連出願の相互参照
【0002】
本特許出願は、米国仮特許出願第61/208,173号(出願日2009年2月20日)及び第61/283,244号(出願日2009年11月30日)
に基づく優先権の利益を主張する。優先権基礎出願の全ての情報開示は、参照することにより、そのまま、すべての目的のために本明細書で援用される。
発明の背景
【0003】
加齢性黄斑変性症(ARMD)及び糖尿病性網膜症(DR)等の眼球血管系疾患は、異常な脈絡膜血管新生又は網膜血管新生が原因である。これらは、先進国における失明の主要原因である。網膜は、神経細胞、膠細胞及び血管構成要素の明確な層からなるので、血管増殖又は浮腫に見られる障害等の比較的小さな障害が、視覚機能の重大な喪失につながることがある。網膜色素変性症(RP)などの遺伝性網膜変性症は、細動脈狭窄、血管萎縮等の血管異常とも関連する。遺伝性網膜変性症は、3500人に1人が発症し、進行性夜盲症、視野喪失、視神経萎縮、細動脈の減弱、及び完全な失明に進行することが多い中心視力喪失(central loss of vision)によって特徴づけられる。血管新生を促進及び阻害する因子の同定において顕著な進歩がなされたが、これらの網膜変性疾患の進行を遅延又は逆転させるための効果的な治療法は未だ存在しない。
【0004】
当分野において種々の眼球血管系疾患を治療及び予防するためのより良い方法への要求がある。本発明は、この要求及び他の要求に向けられている。
【発明の概要】
【0005】
1側面において、本発明は、CD33抗原及びCD14抗原を発現する実質的に純粋な単球を含有する単離された細胞集団を提供する。これら単離された細胞集団のいくつかは、哺乳動物の末梢血試料、臍帯血試料又は骨髄試料から単離される。単離された細胞集団には、ヒト細胞又はマウス細胞も含まれる。単離された細胞集団のいくつかにおいては、細胞の少なくとも70%、80%又は90%は表面マーカーCD14及びCD33を発現する。単離された細胞集団のいくつかは、CD34を発現する細胞を含有しない。単離した細胞集団のいくつかは、実質的にALDHbr細胞を含まない。単離された細胞集団は、インビトロ又はエクスビボで更に活性化することができる。これは、例えば、LPS、MPLA、又はMCP−1等の任意の単球活性化化合物により達成される。
【0006】
他の側面において本発明は、眼球血管系障害の治療法を提供する。本方法は、眼球血管系障害を患った患者に、眼球血管系障害を治療し又は寛解させるために十分な量の単離された単球集団を投与することを含んでいる。好ましくは、単球集団は患者由来の血液試料又は骨髄試料から単離される。いくつかの好ましい実施態様において、本方法により治療されるべき患者はヒトである。本方法のいくつかにおいて、単球集団は実質的に純粋なCD14+/CD33+細胞を含んでいる。例えば、単離された単球集団中の細胞の少なくとも80%はCD14+/CD33+である。いくつかの方法において単離された単球集団は、患者に投与するに先立ってインビトロで又はエクスビボで活性化される。これらの実施態様においては、単球を活性化することが知られたいかなる化合物も使用することができる。例えば、単離単球細胞は、LPS、MPLA、又はMCP−1で活性化することができる。いくつかの方法においては、未処理の単球集団(又はインビトロ又はエクスビボで活性化した単球集団)は、このような単球活性化化合物と共に患者に同時投与される。
【0007】
多種類の眼球血管系障害が本発明の方法により治療することができる。例としては、静脈うっ血性網膜症、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、血管新生緑内障、網膜中心静脈閉塞症、網膜浮腫、黄斑変性症及び網膜色素変性症が含まれる。いくつかの方法において、単離された単球集団は、例えば、硝子体内注射等の局所経路により患者に投与される。他のいくつかの方法において、単離された単球集団は、例えば、静脈注射等の全身経路により患者に投与される。
【0008】
関連する側面において本発明は、患者の眼球疾患を治療し又は寛解させる他の方法を提供する。これらの方法は、(i)眼球血管系疾患を患った患者の血液試料又は骨髄試料から実施的に純粋な単球集団を単離すること;及び(ii)眼球血管系疾患を治療し又は寛解させるために十分な量だけ、患者に単離された単球集団を投与することを必要とする。更にこれらの方法のいくつかは、患者に細胞を投与するに先立って、単離された単球集団をエクスビボで活性化することを必要とする。単球を活性化することが知られたいかなる化合物も、これらの態様において使用することができる。例えば、単離単球細胞は、LPS、MPLA、又はMCP−1により活性化することができる。他のいくつかの実施態様において、エクスビボでの活性化の有無に関わらず単離された単球集団は、単球活性化化合物と共に患者に同時投与される。
【0009】
典型的には、これらの方法において使用する単球集団は、実質的に純粋なCD14+/CD33+細胞を含有する。好ましくは、単離された単球集団中の細胞の少なくとも80%は、表面マーカーCD33及びCD14を発現する。いくかの方法において、単球集団は、(i)試料から赤血球をデバルキングすること、及び(ii)試料中の残存赤血球及び他の細胞型をそのサイズ、粒度又は密度に基づいて単球から分離すること、により単離される。これらの方法のいくつかにおいて、残存赤血球及び他の細胞型は、密度遠心分離又は蛍光励起細胞分取法(FACS)によって単球から分離される。これらの方法による治療が適した眼球疾患又は眼球障害には、静脈うっ血性網膜症、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、血管新生緑内障、網膜中心静脈閉塞症、黄斑変性症及び網膜色素変性症が含まれる。
【0010】
他の側面において、本発明は、実質的に純粋な単球集団を単離するための方法を提供する。本方法には、(i)患者から血液試料又は骨髄試料を供給すること;(ii)当該試料から赤血球をデバルキングすること;及び(iii)試料中の残存赤血球及び他の細胞型(血小板及び顆粒球)を単球から分離すること、が含まれる。本方法のいくつかにおいて、残存赤血球及び他の細胞型は、そのサイズ、粒度又は密度に基づいて単球から分離される。本方法のいくつかにおいて、残存赤血球及び他の細胞型は、密度遠心分離又は蛍光励起細胞分取法(FACS)により単球から分離される。これらの方法において赤血球は、Hespan分画遠心分離又はFicoll密度勾配遠心分離によってデバルキングすることができる。これらの方法は、単離された細胞集団の表面マーカーCD14及びCD33の発現に関する分析段階も含むことができる。
【0011】
本発明の本質及び有利性に関するよりよい理解が、本明細書の残りの部分及び特許請求の範囲を参照することで得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1A−1Bは、単離された単球集団の特性及び治療活性を示す。(A)リンパ球と異なる単球の集団(囲み部分)を示すフローサイトメトリープロット。これらの集団を区別するために標識は使用しなかった;及び(B)記載の方法で単離されたヒト末梢血(HuPB)単球が、対照ビヒクル注射と比較して血管新生の房状分岐領域(tuft area)(黒色棒)も血管閉塞(白色棒)も顕著に減少させることを証明する、酸素誘導網膜症マウスモデルから得られたデータ。これらの結果は、陽性対照として使用したマウス骨髄由来のCD44hi細胞と同様であった。
【図2】図2A−2Bは、密度遠心分離によって産生した画分のフローサイトメトリー解析の結果を示す。データは、試料中のCD2+/CD3+リンパ球が枯渇し(A)、CD14+/CD33+単球が増加していることを示す(B)。
【図3】図3は、ALDHbr/SSC集団が無視できることを示す、末梢血のALDH標識の結果を示す。
【図4】図4は、単離された細胞集団において標的CD14+単球(上段左)に関連してCD34+細胞(上段右)の存在が少数であることを示す、フローサイトメトリー解析の結果を示す。
【図5】図5は、上記の光散乱特性に基づいて選抜されたヒト末梢血単球又はリンパ球の選別後の解析を示す。単球画分が〜88%のCD14+細胞から構成され、一方リンパ球集団が実質的にCD14+細胞を含まないことが示される。又、単球画分上でのこれらミエロイドマーカー双方の高発現及びリンパ球画分中の少数の陽性細胞を証明するCD11b及びCD33に関する解析も示す。
【図6】図6は、MCP−1に応答した単球(Mono)の遊走の容量依存的な増加を明らかにするインビトロの細胞遊走アッセイの結果を示す。リンパ球(Lympho)は、MCP−1に応答しなかった。単球を含有するマウスCD44hi骨髄細胞(CD44Hi)もMCP−1に応答した。
【図7】図7は、未処理の細胞培養プラスチックへ接着する単球数の増加能力を明らかにするインビトロのdifferential adhesionアッセイを示す。リンパ球は、かなりの数でも同物質に接着することができなかった。
【図8】図8は、心臓内注射後5日以内に網膜内にGFP発現細胞が存在することを示す、網膜全組織標本由来の画像を示す。損傷は、高酸素状態への暴露により網膜内に作製した。
【図9】図9は、LPS処理単球増強F5細胞(ActF5)由来の分泌サイトカインのcytometric bead array(CBA)解析を示す。データは、LPC刺激後のIL−1ベータ、IL−6、IL−8及びTNFの分泌上昇を明らかにした。各サイトカインについてはED50近似値が、培地に存在するタンパク質の量及び生物活性に対する基準として与えられる。単位はpg/mlである。
【図10】図10は、LPS、MPLA又はマウスMCP−1と1時間又は4時間インキュベーション後のサイトカイン分泌の上昇を明らかにするcytometric bead arrayのデータを示す。2濃度のLPS及びMPLAを示す。値は、処理(活性化)細胞の未処理(対照)細胞に対する比率を表す。
【図11】図11は、異なる濃度でのLPS、マウスMCP−1、ヒトMCP−1及びMPLAによる4時間及び19時間刺激後のcytometric bead arrayデータを示す。19時間の時点で、LPS及びMPLAに加えて、マウス及びヒトMCP−1も低いレベルにもかかわらずIL−8及びIL−6の分泌を刺激することを示す。
【図12】図12は、健常及び糖尿病ドナー双方由来の活性型単球増強画分5(F5)が、非活性型F5又は他の画分よりも効率的にOIRマウスモデルにおける血管修復を促進することを示す。示したデータは、処理群内の10,000平方ミクロン以下の血管閉塞網膜のパーセントを示す。発明の詳細な説明I.発明の概要
【0013】
本発明は、眼球血管系疾患又は眼球変性障害を治療し又は寛解させるために有用な単離された実質的に純粋な単球集団に関する。以下の実施例に詳述する通り、本発明により単離された単球集団は、実質的に純粋なCD14+/CD33+単球を含んでいる。単離された単球集団は、眼球疾患モデルで試験された通り血管修復促進作用を有する。本単球集団は、AldeFluor Brightで標識されず、その治療活性がCD34+細胞に依存しないことから示されるように、臨床で使用される他の既知造血細胞とも性質が異なっている。更に、単離された細胞集団のいくつかは、CD34−であること及び/又は高レベルのアルデヒドデヒドロゲナーゼ発現細胞(ALDHbr細胞)を極少量しか含まないことによっても特徴づけられる。更に、発明者らは、単離された単球集団のいくつかが、エクスビボでの活性化によって血管修復を促進する能力を高めることを見出した。最終的に、健常ドナーから単離された細胞と同様に、網膜血管障害を患ったドナーから単離された単球も、エクスビボで活性化され、静脈鬱血性網膜症マウスモデルでの血管修復を促進することが見出された。これらの発見は、治療上活性な単球集団が網膜血管障害を治療するために自家移植法で用いることができることを更に支持している。
【0014】
発明者らは、黄斑変性や糖尿病性網膜症等の血管新生眼球疾患の治療用の単球集団を単離するための新規な方法も開発した。骨髄、末梢血又は臍帯血等の生体試料を利用する場合、本方法は、標的細胞集団の物理的性質を利用し、抗体等の単球の表面抗原を特異的に認識する選択試薬は必要としない。抗体等の表面に結合した異種性の物質を含まないため、本方法により単離された細胞集団は治療用途により望ましい。これらの単球調製品の純度及び活性を明らかにするために一連のインビトロアッセイを実施した。更に、本明細書で開示する方法を使用して単離された単球集団は、静脈鬱血性網膜症モデルにおいて望ましい治療活性を有することが見出された。
【0015】
これらの発見に従って本発明は、治療上有効である単離された又は実質的に純化された単球集団を提供する。本発明は、又、当該単球集団を単離するための新規な方法も提供する。更に本発明は、異常な眼球血管新生に関連する又はこれにより介在される疾患又は障害を治療し又は寛解させる方法を提供する。更に、単球を活性化することのできる化合物(例えば、CD14又はTLR4のアゴニスト化合物)によるインビトロ又はエクスビボでの活性化によって高活性の単球細胞を生産するための方法、並びに同様な方法で単球細胞を活性化することのできる新規化合物を同定するための方法も提供する。本発明は、単離された単球集団と細胞を活性化及び回復化することのできる化合物(例えば、MCP−1)との併用を利用する治療方法も包含する。これらの方法において、患者への投与に基づいて細胞を活性化し、追加の補充細胞によって持続した効果を媒介することができる。
【0016】
高活性化細胞及び新規の活性化化合物は、種々の眼球疾患の治療に有用である。当該疾患の例には、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、網膜静脈閉塞症、未熟児網膜症、加齢性黄斑変性症、網膜血管腫状増殖、黄斑部毛細血管拡張症、静脈鬱血性網膜症、虹彩血管新生、眼球内血管新生、角膜血管新生、網膜血管新生、脈絡膜血管新生、及び網膜変性症が含まれる。本発明の方法による治療に適した患者には、これらの疾患のいずれかを発症又は発症のリスクにある者が含まれる。以下の節において本発明の方法を実施するためのガイダンスを詳細に行う。
II.定義
特に指定しない限り、本明細書で使用する科学技術用語は、本発明が属する分野の当業者により通常理解されると同様の意味を有する。下記の参考文献は、当業者に本発明で使用する多数の用語の一般的な定義を提供する:Academic Press Dictionary of Science and Technology,Morris(Ed.),Academic Press(1sted.,1992);Illustrated Dictionary of Immunology,Cruse(Ed.),CRC Pr Llc(2nded., 2002);Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology,Smith et al.(Eds.),Oxford University Press(revise ed., 2000);Encyclopaedic Dictionary of Chemistry,Kumar(Ed.),Anmol Publicatons Pvt. Ltd.(2002);Dictionary of Microbiology and Molecular Biology,Singleton et al.(Eds.),John Wiley & Sons(3rded.、2002);Dictionary of Chemistry,Hunt(Ed.),Routledge(1sted.,1999);Dictionary of Pharmaceutical Medicine,Nahler(Ed.),Springer−Verlag Telos(1994);Dictionary of Organic Chemistry,Kumar and Anandand(Eds.),Anmol Publications Pvt. Ltd.(2002);及びA Dictionary of Biology(Oxford Paperback Reference),Martin and Hine(Eds.),Oxford University Press(4thed.,2000)。更に、本発明を実施するうえで読者の利便のために以下の定義を用意する。
【0017】
特に指定しない限り、本明細書で使用する科学技術用語は、本発明が属する分野の当業者により通常理解されると同様の意味を有する。本明細書に記載した方法と類似の又は同等の如何なる方法も、本発明の試験の実施に使用することができるが、本明細書においては好ましい材料及び方法を記載している。本発明を記載及び請求するうえで、以下の用語が使用されるであろう。
【0018】
造血幹細胞とは、種々の型の血球細胞、例えば、B細胞、T細胞、顆粒球、血小板、及び赤血球等に分化することのできる幹細胞である。系統表面抗原(表面マーカー)とは、CD2、CD3、CD11、CD11a、Mac−1(CD11b:CD18)、CD14、CD16、CD19、CD24、CD33、CD36、CD38、CD45、CD45RA、マウスLy−6G、マウスTER−119、CD56、CD64、CD68、CD86(B7.2)、CD66b、ヒト白血球抗原DR(HLA−DR)、及びCD235a(グリコホリンA)を含む成熟血球細胞系統のマーカーである細胞表面タンパク質の一群である。有意レベルのこれらの抗原を発現しない造血幹細胞は、一般に系統陰性(Lin_)と称される。ヒト造血幹細胞は、一般的に他の表面抗原、CD31、CD34、CD117(c−kit)及び/又はCD133等を発現する。マウス造血幹細胞は、一般的に他の表面抗原、CD34、CD117(c−kit)、Thy−1、及び/又はSca−1を発現する。
【0019】
血流中を循環する細胞は、一般的に3型に分類される:白血球、赤血球、及び血小板である。白血球には、顆粒球(多核白血球)及び無顆粒白血球(単核白血球)が含まれる。顆粒球は、光学顕微鏡下で観察した場合に、異なって染色される顆粒群が細胞質中に存在することにより特徴づけられる白血球である。顆粒球には3種類の型、即ち好中球、好塩基球、及び好酸球が存在する。無顆粒白血球(単核白血球)は、細胞質中に顆粒が見かけ上存在しないことにより特徴づけられる白血球である。本名称は顆粒の欠如を意味するが、これらの細胞は非特異性のアズール親和性の顆粒、リソソームを含有している。無顆粒白血球には、リンパ球、単球、及びマクロファージが含まれる。
【0020】
単球は、単芽球と呼ばれる造血幹細胞前駆体から骨髄により産生される。単球は血流中を約1乃至3日間循環し、その後典型的には身体くまなく組織中に移動する。単球は血液中の白血球の3乃至8パーセントを構成している。組織中で単球は、種々の解剖学的部位において種々の型のマクロファージに成熟する。単球は免疫系において2つの主な機能を有している:即ち(1)正常状態において、常在するマクロファージ及び樹状細胞を補充すること、及び(2)炎症信号に応答して、単球が組織中の感染部位に素早く移動し(約8〜12時間)、免疫反応を誘発するためにマクロファージに分裂/分化することである。単球は通常、染色した塗抹標本中その大きな2裂片の核により同定される。
【0021】
眼球血管新生又は眼球血管系障害は、網膜又は角膜等の眼球組織の構造中への変化した又は無制限の新生血管の増殖及び侵襲によって特徴づけられる病的状態である。眼球血管新生疾患の例には、静脈鬱血性網膜症、虹彩血管新生、眼球内血管新生、加齢性黄斑変性症、角膜血管新生、網膜血管新生、脈絡膜血管新生、糖尿病性網膜虚血症、網膜変性症及び糖尿病性網膜症が含まれる。
【0022】
角膜血管新生に関連する他の疾患には、限定されるものではないが、流行性角結膜炎、ビタミンA欠乏症、コンタクトレンズ過剰装用、アトピー性角膜炎、上輪部角結膜炎、翼状片乾性角膜炎、シェーグレン症候群、紅斑性座蒼、フリクテン症、梅毒、マイコバクテリア感染症、脂肪変性、化学熱傷、細菌性潰瘍、真菌性潰瘍、単純性ヘルペス、帯状ヘルペス感染症、原虫感染症、カポジ肉腫、モーレン潰瘍、テリエン周辺変性、周辺角質溶解、関節リウマチ、全身紅斑、多発動脈炎、外傷、ウェゲナーサルコイドーシス、強膜炎、スティーブンス・ジョンソン症候群、放射状角膜切開、及び角膜移植片拒絶が含まれる。
【0023】
網膜/脈絡膜血管新生に関連する他の疾患には、限定されるものではないが、糖尿病製性網膜症、黄斑変性症、鎌状赤血球貧血、サルコイド、梅毒、弾力線維性仮性黄色腫、パジェット病、静脈閉塞、動脈閉塞、頸動脈閉塞性疾患、慢性ブドウ膜炎/硝子体炎、マイコバクテリア感染症、ライム病、全身性紅斑狼瘡、未熟児網膜症、網膜色素変性症、網膜浮腫(含;黄斑浮腫)、イールズ病、ベーチェット病、網膜炎又は脈絡膜炎誘発性感染症、推定眼ヒストプラスマ症、ベスト病、近視眼、乳頭陥窩、シュタルガルト病、扁平部炎、慢性網膜剥離、過粘度症候群、トキソプラズマ症、外傷、及びレーザー手術後合併症が含まれる。他の疾患には、限定されるものではないが、皮膚潮紅(角の血管新生)に関連する疾患及び増殖性硝子体網膜症の全ての形態を含む線維血管又は線維組織の異常増殖により引き起こされる疾患が含まれる。
【0024】
未熟児網膜症(ROP)は、早産で生まれた乳児に発症する眼病である。それは網膜血管の無秩序な増殖により引き起こされると考えられており、瘢痕及び網膜剥離を生じることもある。ROPは軽症で自然に回復することもあり得るが、重症の場合には失明することもあり得る。全ての早産の乳児はそれなりにROPのリスクを負っており、著しく低い出生時体重も更なるリスク要因となり得る。酸素毒性及び相対的低酸素の双方ともROP発症の原因となり得る。
【0025】
黄斑変性は、主として年配者に見られる医学的状態であり、彼らの網膜の黄斑領域として知られる眼球の内部裏の中央が、壁厚の減少、萎縮、及び場合により出血の症状を呈する。これは中心視覚の喪失を引き起こすことがあり、それにより必然的に細部を見、読み、又は顔を認識することができなくなる。アメリカアカデミー眼科学会によれば、50年以上の時代にわたり黄斑変性は、米国において今日でも中心視覚喪失(失明)の主要な原因である。若年層の個体に罹患する黄斑ジストロフィーは、しばしば黄斑変性と称されるが、一般的には本用語は加齢性の黄斑変性(AMD又はARMD)を称する。
【0026】
加齢性の黄斑変性は、網膜色素上皮と基底脈絡膜との間のドルーゼンと呼ばれる黄斑(窩と呼ばれる、綿密な中心視覚を提供する網膜の中心領域)中の特徴的な黄色の沈着物から始まる。(加齢性黄斑変性症と称される)これらの初期変化を患った殆どの人々は、良い視力を有している。ドルーゼンを患った人々は進行型のAMDを発症するかもしれない。そのリスクは、ドルーゼンが大きく、多数あり黄斑下の色素細胞層に障害を伴う場合にはかなり高くなる。大きく柔らかなドルーゼンは、コレステロール沈着物の増加と関連しており、コレステロール低下剤又はRheo Procedureで改善し得る。
【0027】
重度の視力喪失の原因である進行型のAMDには、乾燥型及び湿潤型の2の型がある。進行型AMDの乾燥型である中心性地図状萎縮は、網膜下の網膜色素上皮層への萎縮により引き起こされ、眼球の中心部分の視細胞(杆体及び錐体)の喪失による視覚喪失を引き起こす。この容態に対してはどのような治療も有用ではないが、高用量の酸化防止剤、ルテイン及びゼアキサンチンと共にビタミンを補給することにより、乾燥型黄斑変性の進行を遅延し幾人かの患者において視力を改善することが国立眼病研究所及びその他の研究所によって証明された。
【0028】
網膜色素変性(RP)は一群の遺伝性眼疾患である。RPの症状の進行過程において、通常トンネル状視野に先立ち、夜盲を数年間又は数十年前に発症する。RPを患った多くの人々は、40代又は50代まで法律上盲人とは成らずその生涯を通して幾分かの視覚を維持する。その他の人々は、ある場合には早くも幼時にRPによって完全に盲目となる。RPの進行は個々の症例において異なる。RPは、遺伝性の網膜ジストロフィーの一型であり、視細胞(杆体及び錐体)又は網膜の網膜色素上皮(RPE)の異常が進行性の視覚喪失へと導く遺伝子障害の一群である。患者は、最初に暗順応の欠陥又は夜盲(夜盲症)を経験し、その後周辺視野の減少(トンネル状視野として知られる)、及び時には、病気経過の末期に中心視覚の喪失を経験する。
【0029】
黄斑浮腫は、液体及びタンパク質沈着物が網膜の黄色の中心領域である眼球の黄斑上又はその下に沈積すると発生し、黄斑の肥厚と膨脹を引き起こす。黄斑は、眼球背部の網膜のほぼ中央にあるため、その膨脹はおそらく人の中央視覚を歪めてしまう。この領域は、人間に直接視野方向にある形態、色、及び詳細を見ることができるようにするための鮮明で澄明な中央視覚を提供する緊密に充填された錐体を含有している。嚢胞様黄斑浮腫は、嚢胞形成を含む黄斑浮腫である。
【0030】
用語「患者(subject)」及び「患者(patient)」は互換的に使用され、ヒト患者及び非ヒト霊長類等の哺乳動物、同様にウサギ、ラット、及びマウス、及び多の動物等の実験動物を指す。動物には、例えば、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、ブタ、ウサギ、ニワトリ、等の哺乳動物及び非哺乳動物等、全ての脊椎動物が含まれる。本発明の治療法を実施するための好ましい患者はヒトである。治療が必要な患者には、眼球血管系疾患又は障害に既往の患者、同様に障害を発症しやすい患者が含まれる。
【0031】
単離された細胞集団を指す場合、用語「実質的に純粋」又は「実質的な純度」とは、集団中の所定の細胞(標的細胞)のパーセントが自然環境(例えば、患者の組織又は血流中)に見出されるよりも有意に高いことを意味する。典型的には、実質的に純粋な細胞集団における標的細胞(例えば、単球)のパーセントは、細胞集団中の全細胞の少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、70%、75%、及びより好ましくは少なくとも約80%、85%90%又は95%である。
【0032】
本明細書で使用する場合、「治療すること」又は「寛解させること」には、(i)病理学的状態(例えば、黄斑変性)の発生を防止すること(例えば、予防);(ii)病理学的状態(例えば、黄斑変性)を阻害すること又はその発達を阻止すること;及び(iii)病理学的状態(例えば、黄斑変性)に随伴する症状を緩和すること、が含まれる。従って「治療」には、症状、合併症、又は本明細書に記載された眼球疾患の生化学的な兆候の発症を防止又は遅延するための、本発明の単離された細胞集団及び/又は他の治療組成物又は薬剤の投与が含まれ、それにより症状を緩和又は寛解させ又は疾患、病態、又は障害の更なる進行を阻止し又は阻害する。「治療」は更に、本明細書に記載した眼疾患、症状、又は障害の治療又は寛解又は防止における成功に関するいかなる兆候、即ち、寛解;緩解;症状の減少又は病態を患者により耐えられるようにすること;変性速度又は衰弱速度の緩徐;又は変性の最終点での衰弱をより少なくすること、等のいかなる客観的又は主観的要因をも含む兆候を指している。眼球障害又はその症状の治療又は寛解のための詳細な手順は、医師による検査結果を含む客観的又は主観的要因に基づくことができる。
III.単球細胞集団の単離方法
【0033】
本発明は、本明細書に記載した種々の眼球血管系障害を治療するために有用な単球集団を単離する方法を提供する。以下の実施例に例示する通り、単球集団は、哺乳動物患者から採取される適切な生体試料、例えば末梢血又は骨髄から単離することができる。本発明の方法は、骨髄又は血液試料から実質的に純粋な(例えば、純度が少なくとも50%、75%、又は85%)単球集団の単離を可能とする。血液試料は、全血由来の大量の白血球又は単核白血球を含有する如何なる試料であることもできる。例えば、全血又は全血由来の白血球分離生産物でありうる。白血球分離とは、血液試料から白血球を分離する実験手順である。好ましくは、単離された細胞集団中に存在する単球はCD14+/CD33+である。CD33はモノサイト/ミエロイド系細胞に発現する膜貫通型受容体である。CD14は細胞、特にマクロファージの表面で発現する、膜結合性のグリコシルホスファチジルイノシトール連鎖タンパク質である。骨髄、末梢血、及び臍帯血は各々、CD14抗原及びCD33を発現する単球のサブ集団を含んでいる。従って、これらの生体試料は、CD14+及びCD33+細胞に富んだ単球集団を本明細書記載の方法によって単離するために好ましい。いくつかの実施態様において、単離された細胞集団は、CD34−であること及び/又はアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)を発現しないか又は低レベルで発現することによっても特徴づけられる。好ましくは、単球集団は、ヒト骨髄、ヒト末梢血、ヒト臍帯血又は他の関連血液試料から単離される。
【0034】
典型的には、本方法は、試料からの大部分の赤血球(RBC)の最初の除去(「デバルキング」)を必要とする。この段階は、他の血球細胞(例えば、血小板、顆粒球及びリンパ球)及びもしあれば残存赤血球の単球からの分離を伴う。当該分野で既知の方法とは異なり、種々の細胞型の細胞表面マーカーを認識する標識化剤(例えば、抗体)は、本発明の方法において使用しない。その代りに本発明は、単球を他の血球細胞型、特に他の単核細胞(例えば、リンパ球)から、サイズ、粒度及び密度等の物理的性質のみに基づいて分離する。いくつかの実施態様において、本発明の単球集団は、蛍光励起細胞分取法(FACS)に基づく方法によって骨髄、又は末梢血等の適切な試料から単離される。以下の実施例に詳述する通り、哺乳動物患者由来の生体試料(例えば、末梢血)に存在するRBCは、単離手順の最初に除去される。これは、当該分野で周知の標準手順、例えば塩化アンモニウムに基づく溶解方法によるRBCの溶解によって達成しうる。例えば、Tiirikainen, Cytometry 20:341−8, 1995;及びSimon et al., Immunol. Commun. 12:301−14, 1983を参照。代わりに、フィコールによる遠心分離によって、RBCを沈降し単核細胞を分離することができる。フィコール密度勾配遠心分離による赤血球分離手順は当該分野で開示されている。例えば、Tripodi et al., Transplantation. 11:487−8, 1971;Vissers et al., J. Immunol. Methods. 110:203−7, 1988;及びBoyum et al., Scand. J. Immunol. 34:697−712, 1991。RBCのデバルキングに適した他の方法は、赤血球の凝集を誘発するHespan(Dupont社製,Dreieich,Germany)の能力を使用した分画遠心分離によるものである。例えば、Nagler et al., Exp. Hematol. 22:1134−40, 1994;及びPick et al., Br. J. Haematol. 103:639−50, 1998を参照。更にRBCをデバルキングするために使用することのできる方法には、血球フィルターの使用が含まれる。このような血球フィルター、例えば、Pall Biomedical Products Company(East Hills,New York)製の白血球除去フィルターは、市販業者から容易に入手することができる。
【0035】
RBCの除去後、試料中の残存細胞は、その後のFACSによる単離段階に適合する適切なバッファーに懸濁する。例えば細胞を、DPBS/0.5%BSA/2mM EDTAに懸濁することができる。フローサイトメトリーは、鞘液の流れの中に懸濁した微粒子を計数し、測定し選別するための方法である。それは、光学及び/又は電子検出装置を通って流れる単一細胞の物理的及び/又は化学的特性の同時多変数解析を可能にする。典型的には、単波長の光線(通常、レーザー光線)を水力学的に集中させた鞘液の流れに向ける。いくつかの検出器は、流れが光線を通過する箇所で照準を合わせる。1つの検出器は光線と同一線上(前方散乱又はFSC)に位置し、いくつかはそれと直角(側方散乱(SSC)及び1以上の蛍光検出器)に位置する。光線を通過する個々の懸濁粒子は光線を何らかの方法で散乱し、粒子中に存在する又は粒子に付着した蛍光性化学物質は、光源よりも低い周波数の発光光線へと励起される。この散乱光と蛍光の組合せは検出器によって受信され、各検出器(各蛍光発光ピークにつき1台))での輝度の変動を分析することによって、次に各個々の粒子の物理的及び化学的構造についての様々な種類の情報を引き出すことができる。FSCは細胞容積と関係があり、SSCは粒子内部の複雑度に依存する(例えば、核の形態、細胞質顆粒の量及び種類又は膜の粗面度)。市販のあるフローサイトメーターは、蛍光に対する必要性を排除し、測定に光散乱のみを使用する。他のフローサイトメーターは各細胞の蛍光、散乱光、及び透過光の画像を形成する。
【0036】
最新のフローサイトメーターは、毎秒数千の粒子を即時に分析することができ、特定の性質を有する粒子を活発に分離し単離することができる。細胞の画像を作成する代わりに、設定したパラメータを自動的に高速大量に数量化することを除けば、フローサイトメーターは顕微鏡に類似している。フローサイトメーターは、フローセル−鞘液の流れ、光源(例えば、レーザー)、検出器及びFSC若しくはSSC同様に蛍光信号を発生するアナログデジタル変換(ADC)システム、信号増幅システム、及び信号解析用コンピューターの5の主な構成部分を有している。フローサイトメーターにより生じたデータは、ドットプロットしてヒストグラムを作成することができ、又は2次元にドットプロット又は更に3次元にドットプロットすることもできる。これらのプロットした領域は、「ゲート」と命名された一連の亜集団の抽出を作成することにより、蛍光強度に基づき連続的に分離することができる。特に血液学に関連する診断及び臨床目的のために特別のゲーティング・プロトコルが存在する。プロットは、しばしば対数目盛で作成される。異なる蛍光色素の発光スペクトルがオーバーラップするために、検出器での信号は電子的かつ計算的にコンペンセートしなければならない。
【0037】
蛍光励起細胞分取法(FACS)は、フローサイトメトリーの特殊な型である。それは、各細胞の特定の光散乱及び蛍光特性に基づいて、不均一な生体細胞の混合物を、1度に1細胞、2以上の容器に分取するための方法を提供する。個々の細胞からの蛍光シグナルの迅速、客観的及び定量的な記録、同様に特別に関心のある細胞の物理的な選別を提供するため、それは有用な科学装置である。細胞懸濁液は、急速に流動する狭い鞘液の流れの中心に乗せる。流れは、その直径に比例して細胞間で大きな間隔が生じるように調整する。振動機構が細胞の流れを各個の液滴に変える。システムは、1の液滴に2以上の細胞が入る可能性が低くなるように調整する。流れが液滴状態に変わる直前に、フローが蛍光測定の観測点を通過し、そこで目的の各細胞の蛍光特性が測定される。荷電リングは、流れが正に液滴状態に変化する箇所に設置される。電荷は、直前の蛍光強度測定に基づいてリングに置かれており、液滴が流れから変わるときに反対の電荷が液滴にトラップされる。次に荷電化した液滴は、その電荷に基づいて液滴を容器に送る静電偏向器を通り抜けて落下する。いくつかのシステムでは、電荷は流れに直接掛けられ断ち切られた液滴は流れと同じ電荷を保持する。次に、流れは液滴が断ち切られた後に中性に戻される。
【0038】
本発明の一例として、FACSは、一連のゲートを使用してBD FACSAria Cell−Sorting System(BD Biosciences社製,San Jose,CA)により実施することができる。分取においていかなる抗体又は他の選択剤も使用しない。死細胞及び壊死組織片は、生白血球のみを含む領域を画定することによって、最初にゲートアウトすることができる。その後、二細胞結合体又は凝集細胞は、前方散乱領域(FSC−A)に対する前方散乱幅(FSC−W)及び、側方散乱領域(SSC−A)に対する側方散乱幅(SSC−W)をそれぞれ問いただす第2及び第3のゲートにより除去することができる。手順は、当該分野で周知の標準的なプロトコル、例えば、Flow cytometry − A practical approach,Ormerod(ed),Oxford University Press,Oxford,UK(3rded.,2000);及びHandbook of Flow Cytometry Methods,Robinson et al.,(eds.),Wiley−Liss,New York(1993)に従って実施することができる。
【0039】
いくつかの他の実施態様において本発明の単球集団は、Elutra(登録商標)細胞分離システム(Gambro BCT Inc社製,Lakewood,Colorado)に基づいた分離スキームを使用して単離される。Elutra(登録商標)は、細胞をサイズと密度に基づいて多数の画分に分離する連続式カウンターフローエルトリエーション法を使用する半自動的な遠心分離に基づく装置である。Elutra(登録商標)による分離に先立って、哺乳動物の患者から採取した生体試料(例えば、ヒト患者由来の末梢血)は、最初に大量のRBCを除去するために、例えば、HESpanによる遠心沈降によって処理することができる。次に有核細胞画分は、Elutra(登録商標)装置により処理する前に、例えば血漿エクスプレッサーにより採取することができる。以下の実施例に詳述する通り、Elutra(登録商標)装置による分画は、単球の血小板、残存RBC、リンパ球及び顆粒球からの分離を可能とする。分画された細胞は、更に細胞数、生存性及び純度に関し分析することができる。
【0040】
いくつかの実施態様において、本発明は治療応用のための高活性の細胞を生産する方法を提供する。これらの実施態様において、本開示に従い単離された単球集団は、眼球血管系障害を患った患者に投与するに先立って、インビボ又はエクスビボで更に活性化される。典型的には細胞は、単球を活性化可能な化合物により処理される。単離された単球集団を活性化するための詳細な手順は以下に述べる。
IV.単離された単球集団の特性及び活性度
【0041】
全血又は骨髄等の生体試料から単離された単球集団は、その免疫学的又は生物学的特性、と同様にその治療活性度に関し試験することができる。実施例で詳述する通り、単離された単球集団の純度及び活性度は、いくつかのアッセイ法により評価することができる。例えば、表面マーカーの発現を分析するために、本発明のいくつかの方法は、単離された単球集団によるCD14及びCD33の発現を評価する段階を更に含むことができる。単離された細胞の表面マーカーの発現は、フローサイトメトリーを用いて抗CD14及び抗CD33モノクローナル抗体により試験することができる。実施例に例示する通り、本発明により単離された細胞集団は、実質的に純化したCD14+/CD33+単球を含有する。例えば、単離された細胞集団は、少なくとも50%、60%、75%、80%、85%、90%又は95%のCD14及びCD33発現細胞を有することができる。
【0042】
実質的に純粋であることに加えて、単離された細胞集団は眼球血管系障害に関連する症状を治療し又は寛解させる機能的有効性を有する。例えば、本明細書で開示する通り単離された細胞集団は、マウスの酸素誘発網膜症において血管修復を促進することができる。静脈鬱血性網膜症モデルマウス及び単離された細胞集団の眼血管新生障害に対する治療効果を評価するうえでのその使用は、当該分野で開示されている。例えば、Ritter et al., J. Clin. Invest. 116:3266−76, 2006;及びRitter et al., Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 46:3021−6, 2005を参照。
【0043】
単離された細胞の機能及び生化学的活性は、例えば、MCP−1等の単球の走化性タンパク質を使用して、細胞の走化性を測定することによって分析することができる。このような活性測定結果は、標品の相対純度及び単離された細胞の生存能及び機能の指標に関する読み出し情報をも提供する。単離された単球の純度及び生存能を試験する方法には、他の単核細胞に比して単球による細胞培養基底への特異的な接着に基づくアッセイも更に含まれる。実施例において明らかな通り、本発明の単離方法によって作製した細胞は、前述のアッセイ条件下でのその接着能力によって証明された通り、主として単球であることが見出された。
【0044】
又、本発明の単離された単球集団のいくつかはCD34−でもある。本発明のCD34−単球集団は、CD14+及びCD33+であるに加え、CD34+細胞を全く又は極低レベル(例えば、約5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.25%、0.1%、0.05%又は0.01%未満)でしか含有しない単球集団と定義される。細胞集団中におけるCD34+細胞の存在は、当該分野で周知の又は本明細書に開示する方法を使用して容易に特定し定量することができる。本発明のCD34−単球集団は、本発明のいくつかの治療応用における使用のためにより適している。CD34+幹細胞は、望まれない細胞型に分化する潜在能力を有すること及び増殖能力を有するかもしれないことが知られている。このようなCD34+細胞の特性は、本明細書で開示する治療方法の実施のおいて望ましくないことがある。CD34+幹細胞等の未分化の幹細胞集団のマウス眼球への注射は、芳しくない成績に終わることが見出された(実施例3)。従って、本発明のいくつかの単球集団は、CD14+/CD33+であることに加え、CD34+細胞の欠如又は極低量のCD34+細胞の存在によっても特徴づけられる。以下の実施例に例示する通り、最初の細胞集団中に存在するかもしれない少量のCD34+細胞は、最終的に単離された単球集団から更に除くことができる。重要なことに、本明細書に開示する通りCD34+細胞の除去は、単球集団の治療効果に如何なる変化も結果として生じさせない。
【0045】
いくつかの他の実施形態において、本発明の単球集団は、アルデヒドデヒドロゲナーゼ高発現細胞(ALDHbr細胞)を全く又は実質的に含まないことによっても特徴づけられる。ALDHbr細胞は当該分野で周知である。それは前駆細胞活性を有し、細胞療法応用に有用であることが示唆されている(Gentry et al., Cytother. 9:259−274, 2007)。細胞集団中のALDHbr細胞の存在は、本明細書の実施例及び当該分野、例えば、Ruso et al., Biochem. Pharmacol. 37:1639−1642, 1988;及びStorms et al., Blood 106:95−102, 2005に記載された通り、典型的には蛍光励起細胞分取法(FACS)により分取し定量することができる。図3に示す通り、本発明のいくつかの単離された単球集団は、ごく少量(約0.04%)のALDHbr細胞を含有する。従って、本発明のいくつかの好ましい実施態様は、実質的にALDHbr細胞を含まない単離された又は純化された単球集団を提供する。蛍光励起細胞分取法によって測定する場合、これらの単球細胞集団は約5%、2%、又は1%未満のALDHbr細胞を含有すべきである。より好ましくは、これらの細胞集団中のALDHbr細胞のパーセントは、0.5%未満、0.1%未満、又は0.05%未満であるべきである。CD34−及び/又は低ALDHの双方であることによって、これらの本発明のCD14+/CD33+単球集団は、当該分野で報告された(例えば、Storms et al., Blood 106:95−102, 2005を参照)他の血球細胞又は幹細胞集団と明瞭に区別される。
【0046】
本発明の単球集団由来の細胞は、遺伝子細胞療法での使用のための抗血管新生物質又はニューロン救助効果を亢進するための神経栄養物質等の治療に有効な物質を発現するように遺伝子操作することができる。これらの実施態様において、単離された単球細胞集団は、治療上有効な物質をコードする遺伝子によりトランスフェクトされる。本発明の単球集団の細胞へのトランスフェクションのために適した遺伝子及び方法は、例えば、米国特許出願第10/080,839号等に記載されている。これらの実施態様のいくつかにおいて細胞は、例えば、TrpRS等の血管新生阻害ペプチド又はその抗血管新生性(例えば、血管新生抑制性)断片を実施可能にコードするポリヌクレオチドによりトランスフェクトされる(例えば、米国特許出願第11/884,958号を参照)。単球細胞集団由来の遺伝子操作された血管新生阻害細胞は、ARMD、糖尿病性網膜症、及び一定の網膜変性及び同様の疾患等の異常な血管発生と関連する疾患において異常な血管成長を調節するために有用である。いくつかの他の実施態様において、本発明の単離された単球細胞集団の細胞は、神経栄養物質をコードする遺伝子を発現するようにトランスフェクトされる。トランスフェクトされた遺伝子によって発現される神経栄養物質は、例えば、神経成長因子、ニューロトロフィン−3、ニューロトロフィン−4、ニューロトロフィン−5、毛様体神経栄養因子、網膜色素上皮由来神経栄養因子、インスリン様成長因子、グリア細胞系由来神経栄養因子、脳由来神経栄養因子、その他であり得る。このような遺伝子によりトランスフェクトされた単球細胞は、緑内障、網膜色素変性、網膜神経損傷等の網膜神経退化を含む眼球疾患におけるニューロン救助を促進するために有用である。例えば、Kirby et al., Mol. Ther. 3:241−8, 2001;Farrar et al., EMBO J. 21:857−864, 2002;Fournier et al., J. Neurosci. Res. 47:561−572, 1997;及びMcGee et al., Mol. Ther. 4:622−9, 2001を参照。
V.眼球血管系疾患の治療法
【0047】
本発明は、眼球疾患を患った哺乳動物の網膜における血管障害及び神経退化を治療し又は寛解させるための方法を提供する。当該方法に従って、単離された単球集団又はその上記の遺伝子操作細胞は、硝子体内注射か全身投与かいずれかによって哺乳動物の網膜に投与することができる。細胞は、網膜中の血管変性及び/又は神経退化を寛解させるために十分な量だけ投与される。好ましくは、単離された単球集団は、治療を受ける哺乳動物の自己由来である。好ましくは、単離された単球細胞は、リン酸緩衝食塩水(PBS)等の生理学的に許容可能な媒体で投与される。
【0048】
いくつかの治療法において、実質的に純化された(例えば、少なくとも75%又は80%)CD14+/CD33+細胞を含有する単球集団は、最初に要治療患者から採取した全血又は骨髄試料から単離される。単球細胞集団は上記の方法を使用して単離される。次に単離されたCD14+/CD33+単球集団は、網膜中の血管変性及び/又は神経退化を寛解させるために十分な量だけ患者に投与される。細胞は、眼球変性疾患又は眼球血管系疾患を患った哺乳動物から、好ましくは眼球疾患の初期段階に、又は眼球変性疾患の発症がしやすい(例えば、遺伝的疾病素質により)と知られている健常患者から単離することができる。後者の場合、単離された単球集団は単離後貯蔵することができ、次に後に症状が現れる眼球疾患の初期段階の間に予防的に注射することができる。
【0049】
理論に縛られるものではないが、本発明のCD14+/CD33+単球集団由来の細胞は、星状膠細胞を選択的に標的とし、成長する脈管構造に入り込み、次に血管上皮細胞に分化することによってその治療効果を発揮するのかもしれない。当該細胞は、網膜内のニューロン救助を促進し抗アポトーシス遺伝子の上方制御を促進するのかもしれない。全身投与された場合又は細胞が単離された哺乳動物の患者(例えば、ヒト又はマウス)の眼に硝子体内注射された場合、細胞は、網膜血管新生及び網膜血管変性疾患の治療、及び網膜血管損傷の修復に有用である。
【0050】
本発明方法による治療に適した患者は、新生児、若年又は完全に成熟した成人でありうる。いくつかの実施態様において治療を受けるべき患者は、酸素誘発網膜症又は未熟児網膜症等の眼球疾患を患った新生児の患者である。いくつかの実施態様において、患者はヒトであり、使用される単離された単球集団はヒト細胞であり、好ましくは治療を受けるべき患者から単離された自己由来の細胞である。種々の眼球血管系疾患又は眼球変性障害を患った患者は、本発明の単球集団による治療に適している。これらには、網膜変性疾患、網膜血管変性疾患、網膜浮腫(含、黄斑浮腫)静脈鬱血性網膜症、出血、血管漏出、脈絡膜症、網膜損傷及び網膜脈管系の中断又は変性を含む網膜障害等の眼球疾患が含まれる。このような疾患の具体例には、加齢性黄斑変性症(ARMD)、糖尿病性網膜症(DR)、推定眼ヒストプラスマ症(POHS)、未熟児網膜症(ROP)、鎌状赤血球貧血、及び網膜色素変性症、と同様に網膜損傷が含まれる。更に単球集団は、例えば、網膜脈管構造の再生又は修復における使用、と同様に網膜神経退化の治療又は寛解のためのクローン等、遺伝的に同一の細胞系統を作製するためにも使用することができる。更に本発明の単球集団は、網膜の血管発生を研究するための、及び星状細胞等の標的細胞を選択する遺伝子を送達するための研究手段として有用である。
【0051】
治療的又は予防的応用のために、本発明の単離された単球集団は、局所経路又は全身経路のいずれかにより患者に投与することができる。いくつかの実施態様において、所期の治療効果を達成するために細胞の局所投与が望まれる。例えば細胞集団は、眼内注射(硝子体内注射)によって患者に投与することができる。これは当該分野で既知の標準的な手順に従って実施することができる。例えば、Ritter et al., J. Clin. Invest. 116:3266−76, 2006;Russelakis−Carmeiro et al., Neuropathol. Appl. Neurobio. 25:196−206, 1999:及びWray et al., Arch. Neurol. 33:183−5, 1976を参照。本発明のいくつかの他の治療法において、単離された単球集団の全身経路投与が用いられる。例えば細胞は、当該分野で日常的に実施されている静脈注射によって患者に投与することができる。いくつかの他の実施態様において、非ヒト患者は、心臓内注射により細胞を投与することもできる。これは当該分野で日常実施されている手順に基づいて達成することができる。例えば、Iwasaki et al., Jpn. J. Cancer Res. 88:861−6, 1997;Jespersen et al., Eur. Heart J. 11:269−74, 1990;及びMartens, Resuscitation 27:177, 1994を参照。他の投与経路も本発明の実施において用いられるかもしれない。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Mack Publishing Co.,20thed.,2000を参照。
【0052】
一般的に眼球に注射する単球集団の細胞数は、眼球の疾病状態を停止するために十分であるべきである。例えば、注射細胞量は、眼球の網膜障害の修復、網膜血管新生の安定化、網膜血管新生の成熟、及び血管漏出及び血管出血の予防又は修復のために有効でなければならない。硝子体内注射に関しては、典型的には単離された単球集団又は単球集団由来のトランスフェクトされた細胞の少なくとも約1x104、少なくとも1x105、又は少なくとも1x106細胞が、眼球血管系傷害(例えば、網膜変性疾患)を患った患者の眼球に注射される。注射される細胞数は、網膜変性の重症度、患者の年齢及び眼球疾患治療の分野における当業者に自明であるその他の要因に依存するであろう。単球集団由来の細胞は、治療を担当する医師によって決定されるであろうが、ある期間にわたって単回投与又は反復投与によって投与することができる。細胞数及び投与頻度は、処置が予防的か治療的かによって変動し得る。予防的な応用においては、比較的少数の細胞が、長期間にわたって比較的低い頻度で投与され得る。幾人かの患者は、おそらく一生治療を受け続けるであろう。治療的な応用においては、疾患の症状の進行が縮小又は停止するまで、好ましくは患者が眼球血管系疾患の症状の部分的又は完全寛解を示すまで、比較的短期間での比較的多数の細胞が要求されるかもしれない。その後は、予防的管理に従って投与するとよい。
VI.単離された単球集団のエクスビボでの活性増強
【0053】
上記の種々の治療応用において、単離された単球集団又はその遺伝子操作細胞は、治療を必要とする患者に投与するに先立ってインビボ又はエクスビボで活性化することもできる。これらの実施態様において、エクスビボで活性化された単球を眼球血管傷害に苦しむ患者の網膜に投与すると、増強された治療活性が得られる。
【0054】
単離された単球集団の活性化は、当該分野で日常的に実施されている又は以下の実施例に例示した材料及び方法に従って容易に行うことができる。単球及びマクロファージは、CD14及びToll様受容体を通してLPS等の種々の薬剤によって活性化されることが知られている(Le−Barillec et al., J. Leukoc. Biol. 68:209−15, 2000;Mirlashari et al., Med. Sci. Monit. 9:BR316−24, 2003)。以下の実施例に明らかな通り、単離された単球集団は、リポポリサッカライド(LPS)、モノホスホリルリピドA(MPLA)及び単球走化性タンパク質1(MCP−1)等の種々の薬剤により活性化することができる。また、未処理細胞に比較して活性化型細胞が動物の酸素誘発網膜症においてより良好な治療結果を生むことも証明された。従って、これらの薬剤は単離された単球集団のエクスビボ活性化に直ちに用いることができる。当該分野で既知の他の多くの単球活性化化合物は、本発明の実施においても用いることができる。このような化合物の例には、免疫調節薬(ガンマインターフェロン、リンホカイイ、ムラミルジペプチド等)、酢酸ミリスチン酸ホルボール、コンカナバリンA、ポリメタクリル酸メチル、及び食物性脂肪が含まれる。例えば、Koff et al., Science 224:1007−1009, 1984;Chung et al., J. Leukoc. Biol. 44:329−336, 1988;Horwitz et al., J. Exp. Med. 154:1618−1635, 1981;Laing et al., Acta Orthop. 79:134−40, 2008;Bently et al., Biochem. Soc. Trans. 35:464−5, 2007を参照。
【0055】
単球を活性化するために、単離された細胞は適切な濃度で当該化合物のいずれかと十分な時間インキュベートすることができる。細胞の投与に先立つ活性化のための使用化合物の量及び時間の長さは、経験的に又は当該技術の教えるところに従って決定することができる。いくつかの化合物による単離された単球集団を活性化するための特別のガイダンスは、以下の実施例でも提供する。例えばLPSを使用する場合、細胞は、約1ng/ml〜1000ng/mlの濃度、好ましくは約5ng/ml〜200ng/ml又は約20ng/ml〜50ng/mlの濃度のLPSとインキュベートすることができる。細胞は、治療に先立って、典型的には少なくとも10分間、好ましくは少なくとも1時間活性化化合物により処理される。いくつかの実施態様において、細胞は少なくとも2時間、少なくとも4時間、少なくとも10時間、少なくとも24時間又はそれ以上長く化合物により処理される。
【0056】
処理した細胞を患者に投与するに先立って、細胞はその活性を確認するためにインビトロで試験することもできる。これは典型的には、処理した単球によるサイトカインの分泌を定性的又は定量的にモニターすることによって行う。実施例に示す通り活性型単球は、IL−1β、IL−8、IL−6及びTNF等のサイトカインの分泌を増加した。実施例に例示する通り、単球のサイトカイン分泌特性は、サイトメトリックビーズアレイ(CBD)分析等の通常実施されている方法により容易に評価することができる。Elshal et al., Methods, 38:317−329, 2006;及びMorgan et al., Clin. Immunol. 110:252−266, 2004を参照。
【0057】
細胞を患者に投与する前に単離された単球集団をインビトロ又はエクスビボで活性化する以外に、本発明には、未処理単球集団及び本明細書記載の単球活性化化合物(例えば、MCP−1)を患者に同時投与するいつくかの治療方法が含まれる。いくつかの関連する実施態様において、治療が必要な患者は、上記の単球活性化化合物(例えば、MCP−1)と共にインビトロ又はエクスビボで活性された単球集団を投与することができる。これらの実施態様において、同時投与された化合物は、投与された単球をインビボで活性化することができるか、又は被処理細胞のインビボでの活性を強化することができる。
【0058】
関連する側面において本発明は、単球の治療活性を活性化及び刺激することの可能な新規化合物を同定する方法を提供する。典型的には、これらの方法は、候補の化合物を単球又はマクロファージ集団(例えば、本明細書記載の単球集団)と接触させること、及び細胞集団の活性化状態を示す単球のパラメータをモニターすることを必要とする。モニターすべきパラメータは、いかなる生物学的、生化学的又は形態学的な細胞の特性であってもよい。いくつかの好ましい実施態様において候補薬剤で処理された細胞は、IL−6、IL−8又はTNF等の1以上のサイトカインの分泌レベルを試験される。未処理細胞に比較した処理細胞によるこれらの1以上のサイトカインの分泌の増加は、候補化合物が新規な単球活性化化合物であることを示す。
【0059】
本方法で選別する候補化合物は、有機小分子、タンパク質、ポリペプチド、ポリサッカライド、ポリヌクレオチド等を含む化学種由来でありうる。いくつの好ましい実施態様において、候補化合物は小分子有機剤(例えば、約500ダルトン未満又は約1、000ダルトン未満の有機化合物)である。好ましくは、高処理量分析法が適合され、候補化合物のコンビナトリアルライブラリー(例えば、有機小分子のライブラリー)をスクリーニングするために用いられる。このようなアッセイ法は、当該分野、例えば、Schultz (1998) Bioorg Med Chem Lett 8:2409−2414;Weller (1997) Mol Divers. 3:61−70;Fernandes (1998) Curr. Opin. Chem. Biol. 2:597−603;及びSittampalam (1997) Curr. Opin. Chem. Biol. 1:384−91に記載された通り周知である。候補化合物の大規模なコンビナトリアルライブラリーは、WO 95/12608、WO 93/06121、WO 94/08051、WO 95/35503及びWO 95/30642に記載されたコード合成ライブラリー(ESL)法によって構築することができる。化合物の種々のライブラリーを合成するための他の方法は、例えば、Overman, Organic Reactions, Volumes 1−62, Wiley−Interscience (2003);Broom et al., Fed Proc. 45:2779−83、 1986;Ben−Menahem et al., Recent Prog. Horm. Res. 54:271−88, 1999;Schramm et al., Annu. Rev. Biochem. 67:693−720, 1998;Bolin et al., Biopolymers 37:57−66, 1995;Karten et al., Endocr. Rev. 7:44−66, 1986;Ho et al., Tactics of Organic Synthesis, Wiley−Interscience; (1994);及びScheit et al., Nucleotide Analogs: Synthesis and Biological Function, John Wiley & Sons(1980)等によって記載されている。
実施例
【0060】
以下の実施例は発明を更に例示するために提供するが、発明の範囲を限定するものではない。発明の他の変形は当該分野の当業者に直ぐに判明するものであり、添付の特許請求の範囲に包含される。
実施例1 単球集団の単離
【0061】
本明細書記載の手順のために、末梢血又は骨髄を原料物質として使用することができる。例えば発明者らは、骨髄に対する単球の相対的豊富さ及び採取の簡易性/安全性のために細胞原料として末梢血を選択した。治療用途のためには、選択に関連するいかなる結合化合物をも含まない細胞を有することが望ましい。この目的を踏まえた上で、発明者らはサイズ、粒度及び密度等の物理的特性のみに基づいた、単球を他の単核細胞(例えば、白血球)から区別する実践方法を計画しやり遂げた。抗体を使用せず細胞サイズ及び粒度に基づいて単球をリンパ球から明確に分離するために、発明者らが開発した最初の方法はFACSに基づいている。この方法により単離された単球集団を表す結果を図1Aに示す。FACSに基づく分離に先立って全血中に存在する赤血球及び顆粒球を、ソート前のフィコール遠心分離段階の間に除去する。これはいくつかの手段により達成することができる。例えば、(1)RBCを溶解するために塩化アンモニウムを使用することができ、(2)フィコール用いた遠心分離によってRBCを沈降させ、単核細胞を単離することができ、及び(3)Hespan使用によってRBCを沈降させることもできる。
【0062】
RBCをデバルキング後、蛍光励起細胞分取法(FACS)のための前処理で細胞をDPBS/0.5%BSA/2mM EDTAに懸濁する。抗体又は他の選択剤を使用せず一連のゲートを使用してBD Biosciences ARIAによりソーティングを実施する。生白血球のみを含む領域を画定することによって、死細胞及び壊死組織片を最初にゲートアウトする。次に、二細胞結合体又は凝集細胞を、前方散乱領域(FSC−A)に対する前方散乱幅(FSC−W)及び、側方散乱領域(SSC−A)に対する側方散乱幅(SSC−W)をそれぞれ問いただす、第2及び第3のゲートにより除去する。検討中の他の単一の白血球のみに関し、再現性よく単球を含有する領域に見出される細胞を選択するために、FSC−A対SSC−Aモードでゲートをかける。実施例2記載のアッセイ法を使用して、発明者らは、この方法により採取した細胞集団が純度80%〜85%のCD14+/CD33+単球を含有することを見出した。
【0063】
密度に基づいて細胞を区別する第2の単球集団単離方法は、遠心分離の間において移動度に差があることに因っている。この方法は、ディスポーザブルチュービングセットを使用することができ無菌及び試料の相互汚染の排除を保証することができるため、臨床応用において一定の有利性を有している。具体的には、HESpanを使用して遠心沈降によって赤血球(RBC)をデバルキングするために、最初にヒト血液試料を処理した。その後、適切な量の6%HESpanを最終濃度が1.5%に達するまで抗凝固剤処理した血液に添加した。バッグを緩やかに混合し、直立させてインキュベートし、室温で45分間放置してRBCを沈殿させた。次に有核細胞画分(NCF)を手動のプラズマエクスプレッサーを使用してエクスプレスし、別の殺菌済み600mLの〜の血液バッグに採取した。生成した細胞生産物は、密度勾配遠心分離に基づく更なる分離のための出発原料として使用した。
【0064】
次に、出発細胞生産物を処理するために、単球集団の濃縮のために設計されたElutra(登録商標)装置(Gambro BCT Inc.社製,Lakewood,Colorado)を利用した。ディスポーザブルチュービングセットをElutra(登録商標)に連結した。次に、出発細胞生産物、HBSS及び0.5%HSAを含む第一及び第二メディアバッグをチュービングセットの適切な連結部分に接続した。チュービングセットを第二のバッグを使用して呼び水を差した。プログラム番号1(以下の表1を参照)を使用して出発細胞生産物を処理した。プログラムが自動的に出発細胞生産物をチャンバーに負荷し、第一のメディアバッグを使用して処理した。次に細胞を連続的に遠心分離して、種々の流動速度で多数の画分に分離及び採取した。プログラムは、下記の通り各々が特有の細胞集団に富んだ5画分を採取するように設計した。血小板を画分1、RBCを画分2、リンパ球を画分3、単球を画分4及び顆粒球を画分5に採取した。各々の画分から試料を採取し、有核細胞計数によって細胞数および生存能を分析し、フローサイトメトリーにより純度を分析した。各画分の流動速度及び採取量を表1に示す。純度及び細胞計数に基づいて、単球を含有する適切な量を採取し次に300gで遠心分離した。
【0065】
図2に示す通り、密度遠心分離法によって単離された単球調製物は、FACSに基づく方法によって分離されたものと本質的に同様であることが見出された。
【表1】
実施例2 単離された単球集団による眼球血管傷害の治療
【0066】
本明細書記載の方法により単離した単球集団の治療効果を試験するために、酸素誘発網膜症マウスモデルを用いた。酸素誘発網膜症のマウスは、Ritter et al., J. Clin. Invet. 116:3266−76に記載された通りに作製した。具体的には、酸素誘発網膜症を、Smith et al., Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 35:101−111, 1994によって記載されたプロトコルに従ってC57BL/6Jマウスにおいて誘発した。比較のためにBALB/cByJマウスも同条件に晒した。手短に言えば、生後7日の仔マウス及びその母マウスを室内空気から酸素75%の環境に5日間移し、その後室内空気に戻した。BioSpherix社製のチャンバーを使用して高酸素環境を作成し保持した。これらの条件下、C57BL/6Jマウスにおいて、高酸素状態の間に網膜中央に大きな乏血管性領域が形成され、酸素正常状態にもどされた後に異常な網膜前の血管新生が引き起こされ、ほぼ生後17日でピークに達し最終的に回復した。
【0067】
次に単離された細胞をマウスに眼内注射した。これに続いて、処理マウスおよび対照マウスの眼球内における脈管構造の免疫組織化学的および視覚的分析を行う。これらの研究は、Ritter et al., J. Clin. Invest. 116:3266−76, 2006に記載された手順を使用して実施した。これらの研究結果を図1Bに示す。図に示す通り、本発明によって単離された実質的に純粋な集団は、酸素誘発網膜症を患ったマウスの血管修復を促進することができた。
実施例3 単離された単球集団のその他の特性及び活性
【0068】
単離した細胞が臨床用途又は臨床開発で既知の他の細胞集団と性質が異なっていること証明するために発明者らは、高レベルで発現する場合(ALDHbr)に、CD34+細胞、CD133+細胞、kit+細胞、系統抗原陰性(Lin−)細胞を同定するアルデヒドデヒドロゲナーゼの発現に対して末梢血試料を標識化した。その結果、実質的に末梢血試料中には標識が認められず(図3)、このことは非動員末梢血中には幹細胞はほとんど存在しないであろうとの仮説に合致する。
【0069】
CD34は造血幹細胞のマーカーであり、種々の臨床応用のための細胞を選抜するために使用されてきた。発明者らは、このような細胞が本明細書に記載する治療応用の成果を構成するか又は逆に悪影響を及ぼすかもしれないことを見出した。具体的に発明者らは、眼球内注射後の未分化造血細胞の挙動を特定するために、マウス胚細胞及びヒト間葉幹細胞(CD34+幹細胞と同様、未分化細胞である)を硝子体内に注射した。これらの細胞は、正常な眼球又は酸素誘発網膜症(OIR)モデルの眼球のいずれにも注射した。加えて、眼球に関係しない細胞型の影響を評価するために、発明者らは正常なヒト真皮線維芽細胞をOIRマウスモデルの硝子体内に注射した。上記の全ての場合に、発明者らは網膜内の炎症性及び腫瘍形成活性を見出した。これらの所見は、未分化の幹細胞及び/又は増殖細胞の眼球内注射が、正常眼球又は虚血性眼球において著しい有害事象に導くであろうことを示唆している。これらの研究は、未分化の幹細胞と対照的に、本発明に記載の骨髄系前駆細胞集団が、炎症又は腫瘍形成等の有害な事象を生ずることなく網膜脈管構造の制御された修復を促進するという発見も強調している。
【0070】
図4に示す通り、本発明の方法を使用して調製した集団は少数のCD34+細胞を含むかもしれない(図4)。しかし、これらの細胞は本発明モデルの機能にとって必要ではない。更に、発明者らは本発明の単球調製物からCD34発現細胞を選択的に枯渇させたが効果に変化は見られなかった。
実施例4 単離された単球のインビトロ純度および機能アッセイ
【0071】
上記の通り単離された単球の純度及び活性を評価するために、発明者らは種々の単球の特性を独立して評価する数種類のインビトロアッセイを開発した。第一のアッセイは、単球集団の純度を測定することであった。単球マーカーCD14に対する抗体及びフローサイトメトリーを使用した(図5)。図5に示す通り、このアッセイは、単離された細胞集団に存在する非単球細胞の数を定量すること及び本発明の単離方法の効率を検証することを発明者らに可能とした。第二のアッセイは、単離された単球の活性測定であった。単球走化性タンパク質1(MCP−1)の勾配に対する細胞の走化性を定量化した。これらの試験は、3μm又は5μmの孔径を有するボイデンチャンバーを使用し、そこで細胞を37℃で2時間移動させて実施した。単離された単球調製物はMCP−1の影響下で効率的に移動するが、リンパ球は移動しないことが明らかとなった(図6)。このようにこのアッセイは、調製物の相対純度に関する読み出し情報及び単離された細胞の生存能及び機能に関する指標を提供した。
【0072】
第三のアッセイは、細胞培養基底へのdifferential adhesion法(培養皿への接着性の違いによる細胞分離法)に基づくものであった。単球は細胞培養プラスチックに接着することができ、一方リンパ球は接着しないということが確証された。図7に証明する通り、これらの条件下での接着能力によって証明されたようにこのアッセイ結果は、本明細書記載の単離方法によって作製された細胞が主として単球であることを示した。
実施例5 治療細胞集団の全身投与
【0073】
本実施例は、網膜症マウスモデルでの治療応用のためのCD44hi骨髄細胞の心臓内投与を既述する。この全身経路の送達は、上記実施例で使用される典型的な局所投与経路(眼内注射)とは異なっている。GFP発現CD44hi骨髄細胞は、Ritter et al., J. Clin. Invest. 116:3266−76, 2006に記載された通りに調製し採取した。酸素誘発網膜症を患ったC57BL/6Jマウス(典型的には生後7日のマウス)への心臓内注射は、標準手順を使用して行った。細胞の血管標的活性は、注射数日後(例えば、7日又は10日後)のマウスのGSレクチン染色網膜を分析することによって実証した。網膜脈管構造の画像は、Radiance2100 MP共焦点レーザー顕微鏡(Bio−Rad社製;Zeiss)を使用して取得した。網膜染色の手順及び共焦点顕微鏡画像の解析は、Ritter et al., J. Clin. Invest. 116:3266−76, 2006の記載の通りに実施した。
【0074】
研究から得られた結果は、治療細胞の画分が高酸素性傷害後の網膜を標的とすることを証明した(図8)。これらの発見は、損傷を回復させたり、治療用物質を眼に送達するなどの治療効果を得るために、本明細書に記載した単球集団を全身投与(例えば心内注射)することも可能であることを示唆している。
実施例6 インビトロ活性化単球集団の増強活性
【0075】
本実施例は、エクスビボでの単球集団の活性化及び非活性化細胞に比較してのその増強された活性について記載する。
【0076】
上記の方法を使用して単球細胞を単離した後、単離された単球細胞(画分5(F5)細胞)を濃度25ng/mlのリポポリサッカライド(LPS)で4時間処理した。活性は、サイトカインの細胞内レベルを測定するBD Intracellular Cytokine Staininアッセイを改変した、フローサイトメトリーに基づいたアッセイにより測定した。このアッセイにより、未処理細胞およびリンパ球に富んだ画分(F3)に比較した、LPSにより処理した単球(F5)細胞内におけるIL−6、IL−8及びTNFタンパク質の集積の増加が検出された。具体的には、データは、リンパ球に富んだ集団(F3)がLPS処理後に実質的に活性化しない一方で、単球に富んだ集団(F5)がLPSにより明確に活性化されることを明らかにした。加えて、細胞内サイトカイン染色によって測定した場合、糖尿病ドナー由来の細胞は、正常に活性化することが明らかとなった。更に、フローサイトメトリー分析から、前方散乱対側方散乱によって測定する場合にLPS処理は、F5細胞の形態に殆ど影響を与えないことが見出された。
【0077】
発明者らは、サイトメトリックビーズアレイを使用してLPS活性化細胞から分泌されるサイトカインレベルを未処理細胞と比較して定量的に測定することにより、これらの発見を独立して実証した。発明者らは、IL−6、IL−8及びTNFタンパク質の分泌の著しい増加を検出した。本アッセイは、F5細胞においてLPS刺激後にIL−1βは著しく上方制御されたが(図9)、しかしIL−10及びIL−12p70の分泌は実質的に変化しなかったことも確証した。
【0078】
単離された単球細胞をLPSにより活性化することに加えて、発明者らはより望ましい安全特性を有する他の活性化化合物の試験も行った。具体的には、発明者らは最初、LPS受容体であるTLR4に対する代替リガンドに努力を集中させた。これらの代替TLR4リガンドの一つであるモノホスホリルリピドA(MPLA)を上記のサイトメトリックビーズアレイで使用した。結果は、LPSに関し見出されたと同様に、MPLAはIL−8、IL−6及びTNFの増加を伴いつつF5細胞を活性化する(図10)。MPLA処理後にIL−1分泌βに関する増加も見出されたが、そのレベルはLPS刺激により得られたもののほぼ半分であった。
【0079】
発明者らは、F5単球細胞上のマウス及びヒト単球走化性タンパク質1(MCP−1)の活性化能力も試験した。マウス及びヒト双方のMCP−1は、IL−8及びIL−6の増加を刺激した。しかし、そのレベルはLPS又はMPLAにより得られたよりも低かった(図10及び11)。
【0080】
エクスビボ活性化単球集団のサイトカイン分泌測定に加えて、発明者らは動物試験における細胞の治療効果を試験した。これらの試験において、LPS処理細胞又は対照細胞の並行群を硝子体内注射(0.5μl中250、000細胞)によりマウスに投与した。次にこれらの動物を高酸素状態及び酸素誘発網膜症にさらした。これらの動物の網膜分析は、LPSによって活性化されたF5単球細胞による治療がこのモデルで測定された2つの主なパラメータ、即ち脈管閉塞の領域及び血管新生の領域(房状分岐)を減少させることを明らかにした。これらのパラメータの減少は、未処理F5細胞、処理F3細胞、ビヒクル又はLPS単独によるものよりもLPS処理F5によるものの方が大きかった。
【0081】
それ以下では網膜が実質的に血管閉塞を有しないと考えられる(こここで「治癒」と記載する)10、000平方ミクロンの値をカットオフとして使用することにより、発明者らは、未処理F5又は他のLPS処理画分(F3)と比較してLPS処理F5細胞による処理後に、実質的により多数の網膜がこのカットオフ以下の閉塞領域を有することを証明することができた(図12)。これは、単球に富んだ活性化細胞集団が静脈鬱血性網膜症のモデルにおいて血管修復を促進する能力を有することを示している。図12より明らかな通り、F3画分はOIRモデルにおいて一定レベルの効果を示しており、活性細胞がこの画分になお存在することを示唆している。従って、この集団、又はF5及びF3細胞の併用も、治療上有用であるかもしれない。
【0082】
糖尿病性網膜症の治療における自己由来法の使用の可能性に関しては、糖尿病ドナー由来の細胞が活性であることを証明することが重大な意味を持っている。OIRモデルを使用して、発明者らは実際にこの通りであることを明らかにした。糖尿病ドナー由来の単球に富んだ画分(F5)は、正常ドナー由来と識別不能な活性化パターンを示し(図9)、これらの活性化された細胞は非活性化のF5細胞又は他のLTP処理画分(F3)よりもOIRモデルにおいて大いに血管修復を促進することも明らかにされた(図12)。更にある程度の活性がリンパ球に富むF3画分に見出された。
【0083】
前述の発明については、理解を明瞭とするために説明及び実施例を経て詳細な点も記載しているが、本発明の教えに照らして当業者にとってある程度の変更及び改変が別記特許請求の範囲の精神及び請求の範囲からそれることなしに成されるであろうことは明らかであろう。
【0084】
本明細書において引用された全ての刊行物、データベース、GenBank配列、特許、及び特許出願は、各々が具体的及び個別的に援用すべきよう指示されているかのように、ここに本明細書の一部として援用される。
【技術分野】
【0001】
米国政府援助に関する陳述
本発明は、アメリカ国立衛生研究所の助成金番号EY11254、EY14174及びEY017540によってその一部分に米国政府の補助を受けた。それ故に米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
関連出願の相互参照
【0002】
本特許出願は、米国仮特許出願第61/208,173号(出願日2009年2月20日)及び第61/283,244号(出願日2009年11月30日)
に基づく優先権の利益を主張する。優先権基礎出願の全ての情報開示は、参照することにより、そのまま、すべての目的のために本明細書で援用される。
発明の背景
【0003】
加齢性黄斑変性症(ARMD)及び糖尿病性網膜症(DR)等の眼球血管系疾患は、異常な脈絡膜血管新生又は網膜血管新生が原因である。これらは、先進国における失明の主要原因である。網膜は、神経細胞、膠細胞及び血管構成要素の明確な層からなるので、血管増殖又は浮腫に見られる障害等の比較的小さな障害が、視覚機能の重大な喪失につながることがある。網膜色素変性症(RP)などの遺伝性網膜変性症は、細動脈狭窄、血管萎縮等の血管異常とも関連する。遺伝性網膜変性症は、3500人に1人が発症し、進行性夜盲症、視野喪失、視神経萎縮、細動脈の減弱、及び完全な失明に進行することが多い中心視力喪失(central loss of vision)によって特徴づけられる。血管新生を促進及び阻害する因子の同定において顕著な進歩がなされたが、これらの網膜変性疾患の進行を遅延又は逆転させるための効果的な治療法は未だ存在しない。
【0004】
当分野において種々の眼球血管系疾患を治療及び予防するためのより良い方法への要求がある。本発明は、この要求及び他の要求に向けられている。
【発明の概要】
【0005】
1側面において、本発明は、CD33抗原及びCD14抗原を発現する実質的に純粋な単球を含有する単離された細胞集団を提供する。これら単離された細胞集団のいくつかは、哺乳動物の末梢血試料、臍帯血試料又は骨髄試料から単離される。単離された細胞集団には、ヒト細胞又はマウス細胞も含まれる。単離された細胞集団のいくつかにおいては、細胞の少なくとも70%、80%又は90%は表面マーカーCD14及びCD33を発現する。単離された細胞集団のいくつかは、CD34を発現する細胞を含有しない。単離した細胞集団のいくつかは、実質的にALDHbr細胞を含まない。単離された細胞集団は、インビトロ又はエクスビボで更に活性化することができる。これは、例えば、LPS、MPLA、又はMCP−1等の任意の単球活性化化合物により達成される。
【0006】
他の側面において本発明は、眼球血管系障害の治療法を提供する。本方法は、眼球血管系障害を患った患者に、眼球血管系障害を治療し又は寛解させるために十分な量の単離された単球集団を投与することを含んでいる。好ましくは、単球集団は患者由来の血液試料又は骨髄試料から単離される。いくつかの好ましい実施態様において、本方法により治療されるべき患者はヒトである。本方法のいくつかにおいて、単球集団は実質的に純粋なCD14+/CD33+細胞を含んでいる。例えば、単離された単球集団中の細胞の少なくとも80%はCD14+/CD33+である。いくつかの方法において単離された単球集団は、患者に投与するに先立ってインビトロで又はエクスビボで活性化される。これらの実施態様においては、単球を活性化することが知られたいかなる化合物も使用することができる。例えば、単離単球細胞は、LPS、MPLA、又はMCP−1で活性化することができる。いくつかの方法においては、未処理の単球集団(又はインビトロ又はエクスビボで活性化した単球集団)は、このような単球活性化化合物と共に患者に同時投与される。
【0007】
多種類の眼球血管系障害が本発明の方法により治療することができる。例としては、静脈うっ血性網膜症、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、血管新生緑内障、網膜中心静脈閉塞症、網膜浮腫、黄斑変性症及び網膜色素変性症が含まれる。いくつかの方法において、単離された単球集団は、例えば、硝子体内注射等の局所経路により患者に投与される。他のいくつかの方法において、単離された単球集団は、例えば、静脈注射等の全身経路により患者に投与される。
【0008】
関連する側面において本発明は、患者の眼球疾患を治療し又は寛解させる他の方法を提供する。これらの方法は、(i)眼球血管系疾患を患った患者の血液試料又は骨髄試料から実施的に純粋な単球集団を単離すること;及び(ii)眼球血管系疾患を治療し又は寛解させるために十分な量だけ、患者に単離された単球集団を投与することを必要とする。更にこれらの方法のいくつかは、患者に細胞を投与するに先立って、単離された単球集団をエクスビボで活性化することを必要とする。単球を活性化することが知られたいかなる化合物も、これらの態様において使用することができる。例えば、単離単球細胞は、LPS、MPLA、又はMCP−1により活性化することができる。他のいくつかの実施態様において、エクスビボでの活性化の有無に関わらず単離された単球集団は、単球活性化化合物と共に患者に同時投与される。
【0009】
典型的には、これらの方法において使用する単球集団は、実質的に純粋なCD14+/CD33+細胞を含有する。好ましくは、単離された単球集団中の細胞の少なくとも80%は、表面マーカーCD33及びCD14を発現する。いくかの方法において、単球集団は、(i)試料から赤血球をデバルキングすること、及び(ii)試料中の残存赤血球及び他の細胞型をそのサイズ、粒度又は密度に基づいて単球から分離すること、により単離される。これらの方法のいくつかにおいて、残存赤血球及び他の細胞型は、密度遠心分離又は蛍光励起細胞分取法(FACS)によって単球から分離される。これらの方法による治療が適した眼球疾患又は眼球障害には、静脈うっ血性網膜症、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、血管新生緑内障、網膜中心静脈閉塞症、黄斑変性症及び網膜色素変性症が含まれる。
【0010】
他の側面において、本発明は、実質的に純粋な単球集団を単離するための方法を提供する。本方法には、(i)患者から血液試料又は骨髄試料を供給すること;(ii)当該試料から赤血球をデバルキングすること;及び(iii)試料中の残存赤血球及び他の細胞型(血小板及び顆粒球)を単球から分離すること、が含まれる。本方法のいくつかにおいて、残存赤血球及び他の細胞型は、そのサイズ、粒度又は密度に基づいて単球から分離される。本方法のいくつかにおいて、残存赤血球及び他の細胞型は、密度遠心分離又は蛍光励起細胞分取法(FACS)により単球から分離される。これらの方法において赤血球は、Hespan分画遠心分離又はFicoll密度勾配遠心分離によってデバルキングすることができる。これらの方法は、単離された細胞集団の表面マーカーCD14及びCD33の発現に関する分析段階も含むことができる。
【0011】
本発明の本質及び有利性に関するよりよい理解が、本明細書の残りの部分及び特許請求の範囲を参照することで得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1A−1Bは、単離された単球集団の特性及び治療活性を示す。(A)リンパ球と異なる単球の集団(囲み部分)を示すフローサイトメトリープロット。これらの集団を区別するために標識は使用しなかった;及び(B)記載の方法で単離されたヒト末梢血(HuPB)単球が、対照ビヒクル注射と比較して血管新生の房状分岐領域(tuft area)(黒色棒)も血管閉塞(白色棒)も顕著に減少させることを証明する、酸素誘導網膜症マウスモデルから得られたデータ。これらの結果は、陽性対照として使用したマウス骨髄由来のCD44hi細胞と同様であった。
【図2】図2A−2Bは、密度遠心分離によって産生した画分のフローサイトメトリー解析の結果を示す。データは、試料中のCD2+/CD3+リンパ球が枯渇し(A)、CD14+/CD33+単球が増加していることを示す(B)。
【図3】図3は、ALDHbr/SSC集団が無視できることを示す、末梢血のALDH標識の結果を示す。
【図4】図4は、単離された細胞集団において標的CD14+単球(上段左)に関連してCD34+細胞(上段右)の存在が少数であることを示す、フローサイトメトリー解析の結果を示す。
【図5】図5は、上記の光散乱特性に基づいて選抜されたヒト末梢血単球又はリンパ球の選別後の解析を示す。単球画分が〜88%のCD14+細胞から構成され、一方リンパ球集団が実質的にCD14+細胞を含まないことが示される。又、単球画分上でのこれらミエロイドマーカー双方の高発現及びリンパ球画分中の少数の陽性細胞を証明するCD11b及びCD33に関する解析も示す。
【図6】図6は、MCP−1に応答した単球(Mono)の遊走の容量依存的な増加を明らかにするインビトロの細胞遊走アッセイの結果を示す。リンパ球(Lympho)は、MCP−1に応答しなかった。単球を含有するマウスCD44hi骨髄細胞(CD44Hi)もMCP−1に応答した。
【図7】図7は、未処理の細胞培養プラスチックへ接着する単球数の増加能力を明らかにするインビトロのdifferential adhesionアッセイを示す。リンパ球は、かなりの数でも同物質に接着することができなかった。
【図8】図8は、心臓内注射後5日以内に網膜内にGFP発現細胞が存在することを示す、網膜全組織標本由来の画像を示す。損傷は、高酸素状態への暴露により網膜内に作製した。
【図9】図9は、LPS処理単球増強F5細胞(ActF5)由来の分泌サイトカインのcytometric bead array(CBA)解析を示す。データは、LPC刺激後のIL−1ベータ、IL−6、IL−8及びTNFの分泌上昇を明らかにした。各サイトカインについてはED50近似値が、培地に存在するタンパク質の量及び生物活性に対する基準として与えられる。単位はpg/mlである。
【図10】図10は、LPS、MPLA又はマウスMCP−1と1時間又は4時間インキュベーション後のサイトカイン分泌の上昇を明らかにするcytometric bead arrayのデータを示す。2濃度のLPS及びMPLAを示す。値は、処理(活性化)細胞の未処理(対照)細胞に対する比率を表す。
【図11】図11は、異なる濃度でのLPS、マウスMCP−1、ヒトMCP−1及びMPLAによる4時間及び19時間刺激後のcytometric bead arrayデータを示す。19時間の時点で、LPS及びMPLAに加えて、マウス及びヒトMCP−1も低いレベルにもかかわらずIL−8及びIL−6の分泌を刺激することを示す。
【図12】図12は、健常及び糖尿病ドナー双方由来の活性型単球増強画分5(F5)が、非活性型F5又は他の画分よりも効率的にOIRマウスモデルにおける血管修復を促進することを示す。示したデータは、処理群内の10,000平方ミクロン以下の血管閉塞網膜のパーセントを示す。発明の詳細な説明I.発明の概要
【0013】
本発明は、眼球血管系疾患又は眼球変性障害を治療し又は寛解させるために有用な単離された実質的に純粋な単球集団に関する。以下の実施例に詳述する通り、本発明により単離された単球集団は、実質的に純粋なCD14+/CD33+単球を含んでいる。単離された単球集団は、眼球疾患モデルで試験された通り血管修復促進作用を有する。本単球集団は、AldeFluor Brightで標識されず、その治療活性がCD34+細胞に依存しないことから示されるように、臨床で使用される他の既知造血細胞とも性質が異なっている。更に、単離された細胞集団のいくつかは、CD34−であること及び/又は高レベルのアルデヒドデヒドロゲナーゼ発現細胞(ALDHbr細胞)を極少量しか含まないことによっても特徴づけられる。更に、発明者らは、単離された単球集団のいくつかが、エクスビボでの活性化によって血管修復を促進する能力を高めることを見出した。最終的に、健常ドナーから単離された細胞と同様に、網膜血管障害を患ったドナーから単離された単球も、エクスビボで活性化され、静脈鬱血性網膜症マウスモデルでの血管修復を促進することが見出された。これらの発見は、治療上活性な単球集団が網膜血管障害を治療するために自家移植法で用いることができることを更に支持している。
【0014】
発明者らは、黄斑変性や糖尿病性網膜症等の血管新生眼球疾患の治療用の単球集団を単離するための新規な方法も開発した。骨髄、末梢血又は臍帯血等の生体試料を利用する場合、本方法は、標的細胞集団の物理的性質を利用し、抗体等の単球の表面抗原を特異的に認識する選択試薬は必要としない。抗体等の表面に結合した異種性の物質を含まないため、本方法により単離された細胞集団は治療用途により望ましい。これらの単球調製品の純度及び活性を明らかにするために一連のインビトロアッセイを実施した。更に、本明細書で開示する方法を使用して単離された単球集団は、静脈鬱血性網膜症モデルにおいて望ましい治療活性を有することが見出された。
【0015】
これらの発見に従って本発明は、治療上有効である単離された又は実質的に純化された単球集団を提供する。本発明は、又、当該単球集団を単離するための新規な方法も提供する。更に本発明は、異常な眼球血管新生に関連する又はこれにより介在される疾患又は障害を治療し又は寛解させる方法を提供する。更に、単球を活性化することのできる化合物(例えば、CD14又はTLR4のアゴニスト化合物)によるインビトロ又はエクスビボでの活性化によって高活性の単球細胞を生産するための方法、並びに同様な方法で単球細胞を活性化することのできる新規化合物を同定するための方法も提供する。本発明は、単離された単球集団と細胞を活性化及び回復化することのできる化合物(例えば、MCP−1)との併用を利用する治療方法も包含する。これらの方法において、患者への投与に基づいて細胞を活性化し、追加の補充細胞によって持続した効果を媒介することができる。
【0016】
高活性化細胞及び新規の活性化化合物は、種々の眼球疾患の治療に有用である。当該疾患の例には、糖尿病性網膜症、糖尿病性黄斑浮腫、網膜静脈閉塞症、未熟児網膜症、加齢性黄斑変性症、網膜血管腫状増殖、黄斑部毛細血管拡張症、静脈鬱血性網膜症、虹彩血管新生、眼球内血管新生、角膜血管新生、網膜血管新生、脈絡膜血管新生、及び網膜変性症が含まれる。本発明の方法による治療に適した患者には、これらの疾患のいずれかを発症又は発症のリスクにある者が含まれる。以下の節において本発明の方法を実施するためのガイダンスを詳細に行う。
II.定義
特に指定しない限り、本明細書で使用する科学技術用語は、本発明が属する分野の当業者により通常理解されると同様の意味を有する。下記の参考文献は、当業者に本発明で使用する多数の用語の一般的な定義を提供する:Academic Press Dictionary of Science and Technology,Morris(Ed.),Academic Press(1sted.,1992);Illustrated Dictionary of Immunology,Cruse(Ed.),CRC Pr Llc(2nded., 2002);Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology,Smith et al.(Eds.),Oxford University Press(revise ed., 2000);Encyclopaedic Dictionary of Chemistry,Kumar(Ed.),Anmol Publicatons Pvt. Ltd.(2002);Dictionary of Microbiology and Molecular Biology,Singleton et al.(Eds.),John Wiley & Sons(3rded.、2002);Dictionary of Chemistry,Hunt(Ed.),Routledge(1sted.,1999);Dictionary of Pharmaceutical Medicine,Nahler(Ed.),Springer−Verlag Telos(1994);Dictionary of Organic Chemistry,Kumar and Anandand(Eds.),Anmol Publications Pvt. Ltd.(2002);及びA Dictionary of Biology(Oxford Paperback Reference),Martin and Hine(Eds.),Oxford University Press(4thed.,2000)。更に、本発明を実施するうえで読者の利便のために以下の定義を用意する。
【0017】
特に指定しない限り、本明細書で使用する科学技術用語は、本発明が属する分野の当業者により通常理解されると同様の意味を有する。本明細書に記載した方法と類似の又は同等の如何なる方法も、本発明の試験の実施に使用することができるが、本明細書においては好ましい材料及び方法を記載している。本発明を記載及び請求するうえで、以下の用語が使用されるであろう。
【0018】
造血幹細胞とは、種々の型の血球細胞、例えば、B細胞、T細胞、顆粒球、血小板、及び赤血球等に分化することのできる幹細胞である。系統表面抗原(表面マーカー)とは、CD2、CD3、CD11、CD11a、Mac−1(CD11b:CD18)、CD14、CD16、CD19、CD24、CD33、CD36、CD38、CD45、CD45RA、マウスLy−6G、マウスTER−119、CD56、CD64、CD68、CD86(B7.2)、CD66b、ヒト白血球抗原DR(HLA−DR)、及びCD235a(グリコホリンA)を含む成熟血球細胞系統のマーカーである細胞表面タンパク質の一群である。有意レベルのこれらの抗原を発現しない造血幹細胞は、一般に系統陰性(Lin_)と称される。ヒト造血幹細胞は、一般的に他の表面抗原、CD31、CD34、CD117(c−kit)及び/又はCD133等を発現する。マウス造血幹細胞は、一般的に他の表面抗原、CD34、CD117(c−kit)、Thy−1、及び/又はSca−1を発現する。
【0019】
血流中を循環する細胞は、一般的に3型に分類される:白血球、赤血球、及び血小板である。白血球には、顆粒球(多核白血球)及び無顆粒白血球(単核白血球)が含まれる。顆粒球は、光学顕微鏡下で観察した場合に、異なって染色される顆粒群が細胞質中に存在することにより特徴づけられる白血球である。顆粒球には3種類の型、即ち好中球、好塩基球、及び好酸球が存在する。無顆粒白血球(単核白血球)は、細胞質中に顆粒が見かけ上存在しないことにより特徴づけられる白血球である。本名称は顆粒の欠如を意味するが、これらの細胞は非特異性のアズール親和性の顆粒、リソソームを含有している。無顆粒白血球には、リンパ球、単球、及びマクロファージが含まれる。
【0020】
単球は、単芽球と呼ばれる造血幹細胞前駆体から骨髄により産生される。単球は血流中を約1乃至3日間循環し、その後典型的には身体くまなく組織中に移動する。単球は血液中の白血球の3乃至8パーセントを構成している。組織中で単球は、種々の解剖学的部位において種々の型のマクロファージに成熟する。単球は免疫系において2つの主な機能を有している:即ち(1)正常状態において、常在するマクロファージ及び樹状細胞を補充すること、及び(2)炎症信号に応答して、単球が組織中の感染部位に素早く移動し(約8〜12時間)、免疫反応を誘発するためにマクロファージに分裂/分化することである。単球は通常、染色した塗抹標本中その大きな2裂片の核により同定される。
【0021】
眼球血管新生又は眼球血管系障害は、網膜又は角膜等の眼球組織の構造中への変化した又は無制限の新生血管の増殖及び侵襲によって特徴づけられる病的状態である。眼球血管新生疾患の例には、静脈鬱血性網膜症、虹彩血管新生、眼球内血管新生、加齢性黄斑変性症、角膜血管新生、網膜血管新生、脈絡膜血管新生、糖尿病性網膜虚血症、網膜変性症及び糖尿病性網膜症が含まれる。
【0022】
角膜血管新生に関連する他の疾患には、限定されるものではないが、流行性角結膜炎、ビタミンA欠乏症、コンタクトレンズ過剰装用、アトピー性角膜炎、上輪部角結膜炎、翼状片乾性角膜炎、シェーグレン症候群、紅斑性座蒼、フリクテン症、梅毒、マイコバクテリア感染症、脂肪変性、化学熱傷、細菌性潰瘍、真菌性潰瘍、単純性ヘルペス、帯状ヘルペス感染症、原虫感染症、カポジ肉腫、モーレン潰瘍、テリエン周辺変性、周辺角質溶解、関節リウマチ、全身紅斑、多発動脈炎、外傷、ウェゲナーサルコイドーシス、強膜炎、スティーブンス・ジョンソン症候群、放射状角膜切開、及び角膜移植片拒絶が含まれる。
【0023】
網膜/脈絡膜血管新生に関連する他の疾患には、限定されるものではないが、糖尿病製性網膜症、黄斑変性症、鎌状赤血球貧血、サルコイド、梅毒、弾力線維性仮性黄色腫、パジェット病、静脈閉塞、動脈閉塞、頸動脈閉塞性疾患、慢性ブドウ膜炎/硝子体炎、マイコバクテリア感染症、ライム病、全身性紅斑狼瘡、未熟児網膜症、網膜色素変性症、網膜浮腫(含;黄斑浮腫)、イールズ病、ベーチェット病、網膜炎又は脈絡膜炎誘発性感染症、推定眼ヒストプラスマ症、ベスト病、近視眼、乳頭陥窩、シュタルガルト病、扁平部炎、慢性網膜剥離、過粘度症候群、トキソプラズマ症、外傷、及びレーザー手術後合併症が含まれる。他の疾患には、限定されるものではないが、皮膚潮紅(角の血管新生)に関連する疾患及び増殖性硝子体網膜症の全ての形態を含む線維血管又は線維組織の異常増殖により引き起こされる疾患が含まれる。
【0024】
未熟児網膜症(ROP)は、早産で生まれた乳児に発症する眼病である。それは網膜血管の無秩序な増殖により引き起こされると考えられており、瘢痕及び網膜剥離を生じることもある。ROPは軽症で自然に回復することもあり得るが、重症の場合には失明することもあり得る。全ての早産の乳児はそれなりにROPのリスクを負っており、著しく低い出生時体重も更なるリスク要因となり得る。酸素毒性及び相対的低酸素の双方ともROP発症の原因となり得る。
【0025】
黄斑変性は、主として年配者に見られる医学的状態であり、彼らの網膜の黄斑領域として知られる眼球の内部裏の中央が、壁厚の減少、萎縮、及び場合により出血の症状を呈する。これは中心視覚の喪失を引き起こすことがあり、それにより必然的に細部を見、読み、又は顔を認識することができなくなる。アメリカアカデミー眼科学会によれば、50年以上の時代にわたり黄斑変性は、米国において今日でも中心視覚喪失(失明)の主要な原因である。若年層の個体に罹患する黄斑ジストロフィーは、しばしば黄斑変性と称されるが、一般的には本用語は加齢性の黄斑変性(AMD又はARMD)を称する。
【0026】
加齢性の黄斑変性は、網膜色素上皮と基底脈絡膜との間のドルーゼンと呼ばれる黄斑(窩と呼ばれる、綿密な中心視覚を提供する網膜の中心領域)中の特徴的な黄色の沈着物から始まる。(加齢性黄斑変性症と称される)これらの初期変化を患った殆どの人々は、良い視力を有している。ドルーゼンを患った人々は進行型のAMDを発症するかもしれない。そのリスクは、ドルーゼンが大きく、多数あり黄斑下の色素細胞層に障害を伴う場合にはかなり高くなる。大きく柔らかなドルーゼンは、コレステロール沈着物の増加と関連しており、コレステロール低下剤又はRheo Procedureで改善し得る。
【0027】
重度の視力喪失の原因である進行型のAMDには、乾燥型及び湿潤型の2の型がある。進行型AMDの乾燥型である中心性地図状萎縮は、網膜下の網膜色素上皮層への萎縮により引き起こされ、眼球の中心部分の視細胞(杆体及び錐体)の喪失による視覚喪失を引き起こす。この容態に対してはどのような治療も有用ではないが、高用量の酸化防止剤、ルテイン及びゼアキサンチンと共にビタミンを補給することにより、乾燥型黄斑変性の進行を遅延し幾人かの患者において視力を改善することが国立眼病研究所及びその他の研究所によって証明された。
【0028】
網膜色素変性(RP)は一群の遺伝性眼疾患である。RPの症状の進行過程において、通常トンネル状視野に先立ち、夜盲を数年間又は数十年前に発症する。RPを患った多くの人々は、40代又は50代まで法律上盲人とは成らずその生涯を通して幾分かの視覚を維持する。その他の人々は、ある場合には早くも幼時にRPによって完全に盲目となる。RPの進行は個々の症例において異なる。RPは、遺伝性の網膜ジストロフィーの一型であり、視細胞(杆体及び錐体)又は網膜の網膜色素上皮(RPE)の異常が進行性の視覚喪失へと導く遺伝子障害の一群である。患者は、最初に暗順応の欠陥又は夜盲(夜盲症)を経験し、その後周辺視野の減少(トンネル状視野として知られる)、及び時には、病気経過の末期に中心視覚の喪失を経験する。
【0029】
黄斑浮腫は、液体及びタンパク質沈着物が網膜の黄色の中心領域である眼球の黄斑上又はその下に沈積すると発生し、黄斑の肥厚と膨脹を引き起こす。黄斑は、眼球背部の網膜のほぼ中央にあるため、その膨脹はおそらく人の中央視覚を歪めてしまう。この領域は、人間に直接視野方向にある形態、色、及び詳細を見ることができるようにするための鮮明で澄明な中央視覚を提供する緊密に充填された錐体を含有している。嚢胞様黄斑浮腫は、嚢胞形成を含む黄斑浮腫である。
【0030】
用語「患者(subject)」及び「患者(patient)」は互換的に使用され、ヒト患者及び非ヒト霊長類等の哺乳動物、同様にウサギ、ラット、及びマウス、及び多の動物等の実験動物を指す。動物には、例えば、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、ブタ、ウサギ、ニワトリ、等の哺乳動物及び非哺乳動物等、全ての脊椎動物が含まれる。本発明の治療法を実施するための好ましい患者はヒトである。治療が必要な患者には、眼球血管系疾患又は障害に既往の患者、同様に障害を発症しやすい患者が含まれる。
【0031】
単離された細胞集団を指す場合、用語「実質的に純粋」又は「実質的な純度」とは、集団中の所定の細胞(標的細胞)のパーセントが自然環境(例えば、患者の組織又は血流中)に見出されるよりも有意に高いことを意味する。典型的には、実質的に純粋な細胞集団における標的細胞(例えば、単球)のパーセントは、細胞集団中の全細胞の少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約60%、70%、75%、及びより好ましくは少なくとも約80%、85%90%又は95%である。
【0032】
本明細書で使用する場合、「治療すること」又は「寛解させること」には、(i)病理学的状態(例えば、黄斑変性)の発生を防止すること(例えば、予防);(ii)病理学的状態(例えば、黄斑変性)を阻害すること又はその発達を阻止すること;及び(iii)病理学的状態(例えば、黄斑変性)に随伴する症状を緩和すること、が含まれる。従って「治療」には、症状、合併症、又は本明細書に記載された眼球疾患の生化学的な兆候の発症を防止又は遅延するための、本発明の単離された細胞集団及び/又は他の治療組成物又は薬剤の投与が含まれ、それにより症状を緩和又は寛解させ又は疾患、病態、又は障害の更なる進行を阻止し又は阻害する。「治療」は更に、本明細書に記載した眼疾患、症状、又は障害の治療又は寛解又は防止における成功に関するいかなる兆候、即ち、寛解;緩解;症状の減少又は病態を患者により耐えられるようにすること;変性速度又は衰弱速度の緩徐;又は変性の最終点での衰弱をより少なくすること、等のいかなる客観的又は主観的要因をも含む兆候を指している。眼球障害又はその症状の治療又は寛解のための詳細な手順は、医師による検査結果を含む客観的又は主観的要因に基づくことができる。
III.単球細胞集団の単離方法
【0033】
本発明は、本明細書に記載した種々の眼球血管系障害を治療するために有用な単球集団を単離する方法を提供する。以下の実施例に例示する通り、単球集団は、哺乳動物患者から採取される適切な生体試料、例えば末梢血又は骨髄から単離することができる。本発明の方法は、骨髄又は血液試料から実質的に純粋な(例えば、純度が少なくとも50%、75%、又は85%)単球集団の単離を可能とする。血液試料は、全血由来の大量の白血球又は単核白血球を含有する如何なる試料であることもできる。例えば、全血又は全血由来の白血球分離生産物でありうる。白血球分離とは、血液試料から白血球を分離する実験手順である。好ましくは、単離された細胞集団中に存在する単球はCD14+/CD33+である。CD33はモノサイト/ミエロイド系細胞に発現する膜貫通型受容体である。CD14は細胞、特にマクロファージの表面で発現する、膜結合性のグリコシルホスファチジルイノシトール連鎖タンパク質である。骨髄、末梢血、及び臍帯血は各々、CD14抗原及びCD33を発現する単球のサブ集団を含んでいる。従って、これらの生体試料は、CD14+及びCD33+細胞に富んだ単球集団を本明細書記載の方法によって単離するために好ましい。いくつかの実施態様において、単離された細胞集団は、CD34−であること及び/又はアルデヒドデヒドロゲナーゼ(ALDH)を発現しないか又は低レベルで発現することによっても特徴づけられる。好ましくは、単球集団は、ヒト骨髄、ヒト末梢血、ヒト臍帯血又は他の関連血液試料から単離される。
【0034】
典型的には、本方法は、試料からの大部分の赤血球(RBC)の最初の除去(「デバルキング」)を必要とする。この段階は、他の血球細胞(例えば、血小板、顆粒球及びリンパ球)及びもしあれば残存赤血球の単球からの分離を伴う。当該分野で既知の方法とは異なり、種々の細胞型の細胞表面マーカーを認識する標識化剤(例えば、抗体)は、本発明の方法において使用しない。その代りに本発明は、単球を他の血球細胞型、特に他の単核細胞(例えば、リンパ球)から、サイズ、粒度及び密度等の物理的性質のみに基づいて分離する。いくつかの実施態様において、本発明の単球集団は、蛍光励起細胞分取法(FACS)に基づく方法によって骨髄、又は末梢血等の適切な試料から単離される。以下の実施例に詳述する通り、哺乳動物患者由来の生体試料(例えば、末梢血)に存在するRBCは、単離手順の最初に除去される。これは、当該分野で周知の標準手順、例えば塩化アンモニウムに基づく溶解方法によるRBCの溶解によって達成しうる。例えば、Tiirikainen, Cytometry 20:341−8, 1995;及びSimon et al., Immunol. Commun. 12:301−14, 1983を参照。代わりに、フィコールによる遠心分離によって、RBCを沈降し単核細胞を分離することができる。フィコール密度勾配遠心分離による赤血球分離手順は当該分野で開示されている。例えば、Tripodi et al., Transplantation. 11:487−8, 1971;Vissers et al., J. Immunol. Methods. 110:203−7, 1988;及びBoyum et al., Scand. J. Immunol. 34:697−712, 1991。RBCのデバルキングに適した他の方法は、赤血球の凝集を誘発するHespan(Dupont社製,Dreieich,Germany)の能力を使用した分画遠心分離によるものである。例えば、Nagler et al., Exp. Hematol. 22:1134−40, 1994;及びPick et al., Br. J. Haematol. 103:639−50, 1998を参照。更にRBCをデバルキングするために使用することのできる方法には、血球フィルターの使用が含まれる。このような血球フィルター、例えば、Pall Biomedical Products Company(East Hills,New York)製の白血球除去フィルターは、市販業者から容易に入手することができる。
【0035】
RBCの除去後、試料中の残存細胞は、その後のFACSによる単離段階に適合する適切なバッファーに懸濁する。例えば細胞を、DPBS/0.5%BSA/2mM EDTAに懸濁することができる。フローサイトメトリーは、鞘液の流れの中に懸濁した微粒子を計数し、測定し選別するための方法である。それは、光学及び/又は電子検出装置を通って流れる単一細胞の物理的及び/又は化学的特性の同時多変数解析を可能にする。典型的には、単波長の光線(通常、レーザー光線)を水力学的に集中させた鞘液の流れに向ける。いくつかの検出器は、流れが光線を通過する箇所で照準を合わせる。1つの検出器は光線と同一線上(前方散乱又はFSC)に位置し、いくつかはそれと直角(側方散乱(SSC)及び1以上の蛍光検出器)に位置する。光線を通過する個々の懸濁粒子は光線を何らかの方法で散乱し、粒子中に存在する又は粒子に付着した蛍光性化学物質は、光源よりも低い周波数の発光光線へと励起される。この散乱光と蛍光の組合せは検出器によって受信され、各検出器(各蛍光発光ピークにつき1台))での輝度の変動を分析することによって、次に各個々の粒子の物理的及び化学的構造についての様々な種類の情報を引き出すことができる。FSCは細胞容積と関係があり、SSCは粒子内部の複雑度に依存する(例えば、核の形態、細胞質顆粒の量及び種類又は膜の粗面度)。市販のあるフローサイトメーターは、蛍光に対する必要性を排除し、測定に光散乱のみを使用する。他のフローサイトメーターは各細胞の蛍光、散乱光、及び透過光の画像を形成する。
【0036】
最新のフローサイトメーターは、毎秒数千の粒子を即時に分析することができ、特定の性質を有する粒子を活発に分離し単離することができる。細胞の画像を作成する代わりに、設定したパラメータを自動的に高速大量に数量化することを除けば、フローサイトメーターは顕微鏡に類似している。フローサイトメーターは、フローセル−鞘液の流れ、光源(例えば、レーザー)、検出器及びFSC若しくはSSC同様に蛍光信号を発生するアナログデジタル変換(ADC)システム、信号増幅システム、及び信号解析用コンピューターの5の主な構成部分を有している。フローサイトメーターにより生じたデータは、ドットプロットしてヒストグラムを作成することができ、又は2次元にドットプロット又は更に3次元にドットプロットすることもできる。これらのプロットした領域は、「ゲート」と命名された一連の亜集団の抽出を作成することにより、蛍光強度に基づき連続的に分離することができる。特に血液学に関連する診断及び臨床目的のために特別のゲーティング・プロトコルが存在する。プロットは、しばしば対数目盛で作成される。異なる蛍光色素の発光スペクトルがオーバーラップするために、検出器での信号は電子的かつ計算的にコンペンセートしなければならない。
【0037】
蛍光励起細胞分取法(FACS)は、フローサイトメトリーの特殊な型である。それは、各細胞の特定の光散乱及び蛍光特性に基づいて、不均一な生体細胞の混合物を、1度に1細胞、2以上の容器に分取するための方法を提供する。個々の細胞からの蛍光シグナルの迅速、客観的及び定量的な記録、同様に特別に関心のある細胞の物理的な選別を提供するため、それは有用な科学装置である。細胞懸濁液は、急速に流動する狭い鞘液の流れの中心に乗せる。流れは、その直径に比例して細胞間で大きな間隔が生じるように調整する。振動機構が細胞の流れを各個の液滴に変える。システムは、1の液滴に2以上の細胞が入る可能性が低くなるように調整する。流れが液滴状態に変わる直前に、フローが蛍光測定の観測点を通過し、そこで目的の各細胞の蛍光特性が測定される。荷電リングは、流れが正に液滴状態に変化する箇所に設置される。電荷は、直前の蛍光強度測定に基づいてリングに置かれており、液滴が流れから変わるときに反対の電荷が液滴にトラップされる。次に荷電化した液滴は、その電荷に基づいて液滴を容器に送る静電偏向器を通り抜けて落下する。いくつかのシステムでは、電荷は流れに直接掛けられ断ち切られた液滴は流れと同じ電荷を保持する。次に、流れは液滴が断ち切られた後に中性に戻される。
【0038】
本発明の一例として、FACSは、一連のゲートを使用してBD FACSAria Cell−Sorting System(BD Biosciences社製,San Jose,CA)により実施することができる。分取においていかなる抗体又は他の選択剤も使用しない。死細胞及び壊死組織片は、生白血球のみを含む領域を画定することによって、最初にゲートアウトすることができる。その後、二細胞結合体又は凝集細胞は、前方散乱領域(FSC−A)に対する前方散乱幅(FSC−W)及び、側方散乱領域(SSC−A)に対する側方散乱幅(SSC−W)をそれぞれ問いただす第2及び第3のゲートにより除去することができる。手順は、当該分野で周知の標準的なプロトコル、例えば、Flow cytometry − A practical approach,Ormerod(ed),Oxford University Press,Oxford,UK(3rded.,2000);及びHandbook of Flow Cytometry Methods,Robinson et al.,(eds.),Wiley−Liss,New York(1993)に従って実施することができる。
【0039】
いくつかの他の実施態様において本発明の単球集団は、Elutra(登録商標)細胞分離システム(Gambro BCT Inc社製,Lakewood,Colorado)に基づいた分離スキームを使用して単離される。Elutra(登録商標)は、細胞をサイズと密度に基づいて多数の画分に分離する連続式カウンターフローエルトリエーション法を使用する半自動的な遠心分離に基づく装置である。Elutra(登録商標)による分離に先立って、哺乳動物の患者から採取した生体試料(例えば、ヒト患者由来の末梢血)は、最初に大量のRBCを除去するために、例えば、HESpanによる遠心沈降によって処理することができる。次に有核細胞画分は、Elutra(登録商標)装置により処理する前に、例えば血漿エクスプレッサーにより採取することができる。以下の実施例に詳述する通り、Elutra(登録商標)装置による分画は、単球の血小板、残存RBC、リンパ球及び顆粒球からの分離を可能とする。分画された細胞は、更に細胞数、生存性及び純度に関し分析することができる。
【0040】
いくつかの実施態様において、本発明は治療応用のための高活性の細胞を生産する方法を提供する。これらの実施態様において、本開示に従い単離された単球集団は、眼球血管系障害を患った患者に投与するに先立って、インビボ又はエクスビボで更に活性化される。典型的には細胞は、単球を活性化可能な化合物により処理される。単離された単球集団を活性化するための詳細な手順は以下に述べる。
IV.単離された単球集団の特性及び活性度
【0041】
全血又は骨髄等の生体試料から単離された単球集団は、その免疫学的又は生物学的特性、と同様にその治療活性度に関し試験することができる。実施例で詳述する通り、単離された単球集団の純度及び活性度は、いくつかのアッセイ法により評価することができる。例えば、表面マーカーの発現を分析するために、本発明のいくつかの方法は、単離された単球集団によるCD14及びCD33の発現を評価する段階を更に含むことができる。単離された細胞の表面マーカーの発現は、フローサイトメトリーを用いて抗CD14及び抗CD33モノクローナル抗体により試験することができる。実施例に例示する通り、本発明により単離された細胞集団は、実質的に純化したCD14+/CD33+単球を含有する。例えば、単離された細胞集団は、少なくとも50%、60%、75%、80%、85%、90%又は95%のCD14及びCD33発現細胞を有することができる。
【0042】
実質的に純粋であることに加えて、単離された細胞集団は眼球血管系障害に関連する症状を治療し又は寛解させる機能的有効性を有する。例えば、本明細書で開示する通り単離された細胞集団は、マウスの酸素誘発網膜症において血管修復を促進することができる。静脈鬱血性網膜症モデルマウス及び単離された細胞集団の眼血管新生障害に対する治療効果を評価するうえでのその使用は、当該分野で開示されている。例えば、Ritter et al., J. Clin. Invest. 116:3266−76, 2006;及びRitter et al., Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 46:3021−6, 2005を参照。
【0043】
単離された細胞の機能及び生化学的活性は、例えば、MCP−1等の単球の走化性タンパク質を使用して、細胞の走化性を測定することによって分析することができる。このような活性測定結果は、標品の相対純度及び単離された細胞の生存能及び機能の指標に関する読み出し情報をも提供する。単離された単球の純度及び生存能を試験する方法には、他の単核細胞に比して単球による細胞培養基底への特異的な接着に基づくアッセイも更に含まれる。実施例において明らかな通り、本発明の単離方法によって作製した細胞は、前述のアッセイ条件下でのその接着能力によって証明された通り、主として単球であることが見出された。
【0044】
又、本発明の単離された単球集団のいくつかはCD34−でもある。本発明のCD34−単球集団は、CD14+及びCD33+であるに加え、CD34+細胞を全く又は極低レベル(例えば、約5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.25%、0.1%、0.05%又は0.01%未満)でしか含有しない単球集団と定義される。細胞集団中におけるCD34+細胞の存在は、当該分野で周知の又は本明細書に開示する方法を使用して容易に特定し定量することができる。本発明のCD34−単球集団は、本発明のいくつかの治療応用における使用のためにより適している。CD34+幹細胞は、望まれない細胞型に分化する潜在能力を有すること及び増殖能力を有するかもしれないことが知られている。このようなCD34+細胞の特性は、本明細書で開示する治療方法の実施のおいて望ましくないことがある。CD34+幹細胞等の未分化の幹細胞集団のマウス眼球への注射は、芳しくない成績に終わることが見出された(実施例3)。従って、本発明のいくつかの単球集団は、CD14+/CD33+であることに加え、CD34+細胞の欠如又は極低量のCD34+細胞の存在によっても特徴づけられる。以下の実施例に例示する通り、最初の細胞集団中に存在するかもしれない少量のCD34+細胞は、最終的に単離された単球集団から更に除くことができる。重要なことに、本明細書に開示する通りCD34+細胞の除去は、単球集団の治療効果に如何なる変化も結果として生じさせない。
【0045】
いくつかの他の実施形態において、本発明の単球集団は、アルデヒドデヒドロゲナーゼ高発現細胞(ALDHbr細胞)を全く又は実質的に含まないことによっても特徴づけられる。ALDHbr細胞は当該分野で周知である。それは前駆細胞活性を有し、細胞療法応用に有用であることが示唆されている(Gentry et al., Cytother. 9:259−274, 2007)。細胞集団中のALDHbr細胞の存在は、本明細書の実施例及び当該分野、例えば、Ruso et al., Biochem. Pharmacol. 37:1639−1642, 1988;及びStorms et al., Blood 106:95−102, 2005に記載された通り、典型的には蛍光励起細胞分取法(FACS)により分取し定量することができる。図3に示す通り、本発明のいくつかの単離された単球集団は、ごく少量(約0.04%)のALDHbr細胞を含有する。従って、本発明のいくつかの好ましい実施態様は、実質的にALDHbr細胞を含まない単離された又は純化された単球集団を提供する。蛍光励起細胞分取法によって測定する場合、これらの単球細胞集団は約5%、2%、又は1%未満のALDHbr細胞を含有すべきである。より好ましくは、これらの細胞集団中のALDHbr細胞のパーセントは、0.5%未満、0.1%未満、又は0.05%未満であるべきである。CD34−及び/又は低ALDHの双方であることによって、これらの本発明のCD14+/CD33+単球集団は、当該分野で報告された(例えば、Storms et al., Blood 106:95−102, 2005を参照)他の血球細胞又は幹細胞集団と明瞭に区別される。
【0046】
本発明の単球集団由来の細胞は、遺伝子細胞療法での使用のための抗血管新生物質又はニューロン救助効果を亢進するための神経栄養物質等の治療に有効な物質を発現するように遺伝子操作することができる。これらの実施態様において、単離された単球細胞集団は、治療上有効な物質をコードする遺伝子によりトランスフェクトされる。本発明の単球集団の細胞へのトランスフェクションのために適した遺伝子及び方法は、例えば、米国特許出願第10/080,839号等に記載されている。これらの実施態様のいくつかにおいて細胞は、例えば、TrpRS等の血管新生阻害ペプチド又はその抗血管新生性(例えば、血管新生抑制性)断片を実施可能にコードするポリヌクレオチドによりトランスフェクトされる(例えば、米国特許出願第11/884,958号を参照)。単球細胞集団由来の遺伝子操作された血管新生阻害細胞は、ARMD、糖尿病性網膜症、及び一定の網膜変性及び同様の疾患等の異常な血管発生と関連する疾患において異常な血管成長を調節するために有用である。いくつかの他の実施態様において、本発明の単離された単球細胞集団の細胞は、神経栄養物質をコードする遺伝子を発現するようにトランスフェクトされる。トランスフェクトされた遺伝子によって発現される神経栄養物質は、例えば、神経成長因子、ニューロトロフィン−3、ニューロトロフィン−4、ニューロトロフィン−5、毛様体神経栄養因子、網膜色素上皮由来神経栄養因子、インスリン様成長因子、グリア細胞系由来神経栄養因子、脳由来神経栄養因子、その他であり得る。このような遺伝子によりトランスフェクトされた単球細胞は、緑内障、網膜色素変性、網膜神経損傷等の網膜神経退化を含む眼球疾患におけるニューロン救助を促進するために有用である。例えば、Kirby et al., Mol. Ther. 3:241−8, 2001;Farrar et al., EMBO J. 21:857−864, 2002;Fournier et al., J. Neurosci. Res. 47:561−572, 1997;及びMcGee et al., Mol. Ther. 4:622−9, 2001を参照。
V.眼球血管系疾患の治療法
【0047】
本発明は、眼球疾患を患った哺乳動物の網膜における血管障害及び神経退化を治療し又は寛解させるための方法を提供する。当該方法に従って、単離された単球集団又はその上記の遺伝子操作細胞は、硝子体内注射か全身投与かいずれかによって哺乳動物の網膜に投与することができる。細胞は、網膜中の血管変性及び/又は神経退化を寛解させるために十分な量だけ投与される。好ましくは、単離された単球集団は、治療を受ける哺乳動物の自己由来である。好ましくは、単離された単球細胞は、リン酸緩衝食塩水(PBS)等の生理学的に許容可能な媒体で投与される。
【0048】
いくつかの治療法において、実質的に純化された(例えば、少なくとも75%又は80%)CD14+/CD33+細胞を含有する単球集団は、最初に要治療患者から採取した全血又は骨髄試料から単離される。単球細胞集団は上記の方法を使用して単離される。次に単離されたCD14+/CD33+単球集団は、網膜中の血管変性及び/又は神経退化を寛解させるために十分な量だけ患者に投与される。細胞は、眼球変性疾患又は眼球血管系疾患を患った哺乳動物から、好ましくは眼球疾患の初期段階に、又は眼球変性疾患の発症がしやすい(例えば、遺伝的疾病素質により)と知られている健常患者から単離することができる。後者の場合、単離された単球集団は単離後貯蔵することができ、次に後に症状が現れる眼球疾患の初期段階の間に予防的に注射することができる。
【0049】
理論に縛られるものではないが、本発明のCD14+/CD33+単球集団由来の細胞は、星状膠細胞を選択的に標的とし、成長する脈管構造に入り込み、次に血管上皮細胞に分化することによってその治療効果を発揮するのかもしれない。当該細胞は、網膜内のニューロン救助を促進し抗アポトーシス遺伝子の上方制御を促進するのかもしれない。全身投与された場合又は細胞が単離された哺乳動物の患者(例えば、ヒト又はマウス)の眼に硝子体内注射された場合、細胞は、網膜血管新生及び網膜血管変性疾患の治療、及び網膜血管損傷の修復に有用である。
【0050】
本発明方法による治療に適した患者は、新生児、若年又は完全に成熟した成人でありうる。いくつかの実施態様において治療を受けるべき患者は、酸素誘発網膜症又は未熟児網膜症等の眼球疾患を患った新生児の患者である。いくつかの実施態様において、患者はヒトであり、使用される単離された単球集団はヒト細胞であり、好ましくは治療を受けるべき患者から単離された自己由来の細胞である。種々の眼球血管系疾患又は眼球変性障害を患った患者は、本発明の単球集団による治療に適している。これらには、網膜変性疾患、網膜血管変性疾患、網膜浮腫(含、黄斑浮腫)静脈鬱血性網膜症、出血、血管漏出、脈絡膜症、網膜損傷及び網膜脈管系の中断又は変性を含む網膜障害等の眼球疾患が含まれる。このような疾患の具体例には、加齢性黄斑変性症(ARMD)、糖尿病性網膜症(DR)、推定眼ヒストプラスマ症(POHS)、未熟児網膜症(ROP)、鎌状赤血球貧血、及び網膜色素変性症、と同様に網膜損傷が含まれる。更に単球集団は、例えば、網膜脈管構造の再生又は修復における使用、と同様に網膜神経退化の治療又は寛解のためのクローン等、遺伝的に同一の細胞系統を作製するためにも使用することができる。更に本発明の単球集団は、網膜の血管発生を研究するための、及び星状細胞等の標的細胞を選択する遺伝子を送達するための研究手段として有用である。
【0051】
治療的又は予防的応用のために、本発明の単離された単球集団は、局所経路又は全身経路のいずれかにより患者に投与することができる。いくつかの実施態様において、所期の治療効果を達成するために細胞の局所投与が望まれる。例えば細胞集団は、眼内注射(硝子体内注射)によって患者に投与することができる。これは当該分野で既知の標準的な手順に従って実施することができる。例えば、Ritter et al., J. Clin. Invest. 116:3266−76, 2006;Russelakis−Carmeiro et al., Neuropathol. Appl. Neurobio. 25:196−206, 1999:及びWray et al., Arch. Neurol. 33:183−5, 1976を参照。本発明のいくつかの他の治療法において、単離された単球集団の全身経路投与が用いられる。例えば細胞は、当該分野で日常的に実施されている静脈注射によって患者に投与することができる。いくつかの他の実施態様において、非ヒト患者は、心臓内注射により細胞を投与することもできる。これは当該分野で日常実施されている手順に基づいて達成することができる。例えば、Iwasaki et al., Jpn. J. Cancer Res. 88:861−6, 1997;Jespersen et al., Eur. Heart J. 11:269−74, 1990;及びMartens, Resuscitation 27:177, 1994を参照。他の投与経路も本発明の実施において用いられるかもしれない。例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Mack Publishing Co.,20thed.,2000を参照。
【0052】
一般的に眼球に注射する単球集団の細胞数は、眼球の疾病状態を停止するために十分であるべきである。例えば、注射細胞量は、眼球の網膜障害の修復、網膜血管新生の安定化、網膜血管新生の成熟、及び血管漏出及び血管出血の予防又は修復のために有効でなければならない。硝子体内注射に関しては、典型的には単離された単球集団又は単球集団由来のトランスフェクトされた細胞の少なくとも約1x104、少なくとも1x105、又は少なくとも1x106細胞が、眼球血管系傷害(例えば、網膜変性疾患)を患った患者の眼球に注射される。注射される細胞数は、網膜変性の重症度、患者の年齢及び眼球疾患治療の分野における当業者に自明であるその他の要因に依存するであろう。単球集団由来の細胞は、治療を担当する医師によって決定されるであろうが、ある期間にわたって単回投与又は反復投与によって投与することができる。細胞数及び投与頻度は、処置が予防的か治療的かによって変動し得る。予防的な応用においては、比較的少数の細胞が、長期間にわたって比較的低い頻度で投与され得る。幾人かの患者は、おそらく一生治療を受け続けるであろう。治療的な応用においては、疾患の症状の進行が縮小又は停止するまで、好ましくは患者が眼球血管系疾患の症状の部分的又は完全寛解を示すまで、比較的短期間での比較的多数の細胞が要求されるかもしれない。その後は、予防的管理に従って投与するとよい。
VI.単離された単球集団のエクスビボでの活性増強
【0053】
上記の種々の治療応用において、単離された単球集団又はその遺伝子操作細胞は、治療を必要とする患者に投与するに先立ってインビボ又はエクスビボで活性化することもできる。これらの実施態様において、エクスビボで活性化された単球を眼球血管傷害に苦しむ患者の網膜に投与すると、増強された治療活性が得られる。
【0054】
単離された単球集団の活性化は、当該分野で日常的に実施されている又は以下の実施例に例示した材料及び方法に従って容易に行うことができる。単球及びマクロファージは、CD14及びToll様受容体を通してLPS等の種々の薬剤によって活性化されることが知られている(Le−Barillec et al., J. Leukoc. Biol. 68:209−15, 2000;Mirlashari et al., Med. Sci. Monit. 9:BR316−24, 2003)。以下の実施例に明らかな通り、単離された単球集団は、リポポリサッカライド(LPS)、モノホスホリルリピドA(MPLA)及び単球走化性タンパク質1(MCP−1)等の種々の薬剤により活性化することができる。また、未処理細胞に比較して活性化型細胞が動物の酸素誘発網膜症においてより良好な治療結果を生むことも証明された。従って、これらの薬剤は単離された単球集団のエクスビボ活性化に直ちに用いることができる。当該分野で既知の他の多くの単球活性化化合物は、本発明の実施においても用いることができる。このような化合物の例には、免疫調節薬(ガンマインターフェロン、リンホカイイ、ムラミルジペプチド等)、酢酸ミリスチン酸ホルボール、コンカナバリンA、ポリメタクリル酸メチル、及び食物性脂肪が含まれる。例えば、Koff et al., Science 224:1007−1009, 1984;Chung et al., J. Leukoc. Biol. 44:329−336, 1988;Horwitz et al., J. Exp. Med. 154:1618−1635, 1981;Laing et al., Acta Orthop. 79:134−40, 2008;Bently et al., Biochem. Soc. Trans. 35:464−5, 2007を参照。
【0055】
単球を活性化するために、単離された細胞は適切な濃度で当該化合物のいずれかと十分な時間インキュベートすることができる。細胞の投与に先立つ活性化のための使用化合物の量及び時間の長さは、経験的に又は当該技術の教えるところに従って決定することができる。いくつかの化合物による単離された単球集団を活性化するための特別のガイダンスは、以下の実施例でも提供する。例えばLPSを使用する場合、細胞は、約1ng/ml〜1000ng/mlの濃度、好ましくは約5ng/ml〜200ng/ml又は約20ng/ml〜50ng/mlの濃度のLPSとインキュベートすることができる。細胞は、治療に先立って、典型的には少なくとも10分間、好ましくは少なくとも1時間活性化化合物により処理される。いくつかの実施態様において、細胞は少なくとも2時間、少なくとも4時間、少なくとも10時間、少なくとも24時間又はそれ以上長く化合物により処理される。
【0056】
処理した細胞を患者に投与するに先立って、細胞はその活性を確認するためにインビトロで試験することもできる。これは典型的には、処理した単球によるサイトカインの分泌を定性的又は定量的にモニターすることによって行う。実施例に示す通り活性型単球は、IL−1β、IL−8、IL−6及びTNF等のサイトカインの分泌を増加した。実施例に例示する通り、単球のサイトカイン分泌特性は、サイトメトリックビーズアレイ(CBD)分析等の通常実施されている方法により容易に評価することができる。Elshal et al., Methods, 38:317−329, 2006;及びMorgan et al., Clin. Immunol. 110:252−266, 2004を参照。
【0057】
細胞を患者に投与する前に単離された単球集団をインビトロ又はエクスビボで活性化する以外に、本発明には、未処理単球集団及び本明細書記載の単球活性化化合物(例えば、MCP−1)を患者に同時投与するいつくかの治療方法が含まれる。いくつかの関連する実施態様において、治療が必要な患者は、上記の単球活性化化合物(例えば、MCP−1)と共にインビトロ又はエクスビボで活性された単球集団を投与することができる。これらの実施態様において、同時投与された化合物は、投与された単球をインビボで活性化することができるか、又は被処理細胞のインビボでの活性を強化することができる。
【0058】
関連する側面において本発明は、単球の治療活性を活性化及び刺激することの可能な新規化合物を同定する方法を提供する。典型的には、これらの方法は、候補の化合物を単球又はマクロファージ集団(例えば、本明細書記載の単球集団)と接触させること、及び細胞集団の活性化状態を示す単球のパラメータをモニターすることを必要とする。モニターすべきパラメータは、いかなる生物学的、生化学的又は形態学的な細胞の特性であってもよい。いくつかの好ましい実施態様において候補薬剤で処理された細胞は、IL−6、IL−8又はTNF等の1以上のサイトカインの分泌レベルを試験される。未処理細胞に比較した処理細胞によるこれらの1以上のサイトカインの分泌の増加は、候補化合物が新規な単球活性化化合物であることを示す。
【0059】
本方法で選別する候補化合物は、有機小分子、タンパク質、ポリペプチド、ポリサッカライド、ポリヌクレオチド等を含む化学種由来でありうる。いくつの好ましい実施態様において、候補化合物は小分子有機剤(例えば、約500ダルトン未満又は約1、000ダルトン未満の有機化合物)である。好ましくは、高処理量分析法が適合され、候補化合物のコンビナトリアルライブラリー(例えば、有機小分子のライブラリー)をスクリーニングするために用いられる。このようなアッセイ法は、当該分野、例えば、Schultz (1998) Bioorg Med Chem Lett 8:2409−2414;Weller (1997) Mol Divers. 3:61−70;Fernandes (1998) Curr. Opin. Chem. Biol. 2:597−603;及びSittampalam (1997) Curr. Opin. Chem. Biol. 1:384−91に記載された通り周知である。候補化合物の大規模なコンビナトリアルライブラリーは、WO 95/12608、WO 93/06121、WO 94/08051、WO 95/35503及びWO 95/30642に記載されたコード合成ライブラリー(ESL)法によって構築することができる。化合物の種々のライブラリーを合成するための他の方法は、例えば、Overman, Organic Reactions, Volumes 1−62, Wiley−Interscience (2003);Broom et al., Fed Proc. 45:2779−83、 1986;Ben−Menahem et al., Recent Prog. Horm. Res. 54:271−88, 1999;Schramm et al., Annu. Rev. Biochem. 67:693−720, 1998;Bolin et al., Biopolymers 37:57−66, 1995;Karten et al., Endocr. Rev. 7:44−66, 1986;Ho et al., Tactics of Organic Synthesis, Wiley−Interscience; (1994);及びScheit et al., Nucleotide Analogs: Synthesis and Biological Function, John Wiley & Sons(1980)等によって記載されている。
実施例
【0060】
以下の実施例は発明を更に例示するために提供するが、発明の範囲を限定するものではない。発明の他の変形は当該分野の当業者に直ぐに判明するものであり、添付の特許請求の範囲に包含される。
実施例1 単球集団の単離
【0061】
本明細書記載の手順のために、末梢血又は骨髄を原料物質として使用することができる。例えば発明者らは、骨髄に対する単球の相対的豊富さ及び採取の簡易性/安全性のために細胞原料として末梢血を選択した。治療用途のためには、選択に関連するいかなる結合化合物をも含まない細胞を有することが望ましい。この目的を踏まえた上で、発明者らはサイズ、粒度及び密度等の物理的特性のみに基づいた、単球を他の単核細胞(例えば、白血球)から区別する実践方法を計画しやり遂げた。抗体を使用せず細胞サイズ及び粒度に基づいて単球をリンパ球から明確に分離するために、発明者らが開発した最初の方法はFACSに基づいている。この方法により単離された単球集団を表す結果を図1Aに示す。FACSに基づく分離に先立って全血中に存在する赤血球及び顆粒球を、ソート前のフィコール遠心分離段階の間に除去する。これはいくつかの手段により達成することができる。例えば、(1)RBCを溶解するために塩化アンモニウムを使用することができ、(2)フィコール用いた遠心分離によってRBCを沈降させ、単核細胞を単離することができ、及び(3)Hespan使用によってRBCを沈降させることもできる。
【0062】
RBCをデバルキング後、蛍光励起細胞分取法(FACS)のための前処理で細胞をDPBS/0.5%BSA/2mM EDTAに懸濁する。抗体又は他の選択剤を使用せず一連のゲートを使用してBD Biosciences ARIAによりソーティングを実施する。生白血球のみを含む領域を画定することによって、死細胞及び壊死組織片を最初にゲートアウトする。次に、二細胞結合体又は凝集細胞を、前方散乱領域(FSC−A)に対する前方散乱幅(FSC−W)及び、側方散乱領域(SSC−A)に対する側方散乱幅(SSC−W)をそれぞれ問いただす、第2及び第3のゲートにより除去する。検討中の他の単一の白血球のみに関し、再現性よく単球を含有する領域に見出される細胞を選択するために、FSC−A対SSC−Aモードでゲートをかける。実施例2記載のアッセイ法を使用して、発明者らは、この方法により採取した細胞集団が純度80%〜85%のCD14+/CD33+単球を含有することを見出した。
【0063】
密度に基づいて細胞を区別する第2の単球集団単離方法は、遠心分離の間において移動度に差があることに因っている。この方法は、ディスポーザブルチュービングセットを使用することができ無菌及び試料の相互汚染の排除を保証することができるため、臨床応用において一定の有利性を有している。具体的には、HESpanを使用して遠心沈降によって赤血球(RBC)をデバルキングするために、最初にヒト血液試料を処理した。その後、適切な量の6%HESpanを最終濃度が1.5%に達するまで抗凝固剤処理した血液に添加した。バッグを緩やかに混合し、直立させてインキュベートし、室温で45分間放置してRBCを沈殿させた。次に有核細胞画分(NCF)を手動のプラズマエクスプレッサーを使用してエクスプレスし、別の殺菌済み600mLの〜の血液バッグに採取した。生成した細胞生産物は、密度勾配遠心分離に基づく更なる分離のための出発原料として使用した。
【0064】
次に、出発細胞生産物を処理するために、単球集団の濃縮のために設計されたElutra(登録商標)装置(Gambro BCT Inc.社製,Lakewood,Colorado)を利用した。ディスポーザブルチュービングセットをElutra(登録商標)に連結した。次に、出発細胞生産物、HBSS及び0.5%HSAを含む第一及び第二メディアバッグをチュービングセットの適切な連結部分に接続した。チュービングセットを第二のバッグを使用して呼び水を差した。プログラム番号1(以下の表1を参照)を使用して出発細胞生産物を処理した。プログラムが自動的に出発細胞生産物をチャンバーに負荷し、第一のメディアバッグを使用して処理した。次に細胞を連続的に遠心分離して、種々の流動速度で多数の画分に分離及び採取した。プログラムは、下記の通り各々が特有の細胞集団に富んだ5画分を採取するように設計した。血小板を画分1、RBCを画分2、リンパ球を画分3、単球を画分4及び顆粒球を画分5に採取した。各々の画分から試料を採取し、有核細胞計数によって細胞数および生存能を分析し、フローサイトメトリーにより純度を分析した。各画分の流動速度及び採取量を表1に示す。純度及び細胞計数に基づいて、単球を含有する適切な量を採取し次に300gで遠心分離した。
【0065】
図2に示す通り、密度遠心分離法によって単離された単球調製物は、FACSに基づく方法によって分離されたものと本質的に同様であることが見出された。
【表1】
実施例2 単離された単球集団による眼球血管傷害の治療
【0066】
本明細書記載の方法により単離した単球集団の治療効果を試験するために、酸素誘発網膜症マウスモデルを用いた。酸素誘発網膜症のマウスは、Ritter et al., J. Clin. Invet. 116:3266−76に記載された通りに作製した。具体的には、酸素誘発網膜症を、Smith et al., Invest. Ophthalmol. Vis. Sci. 35:101−111, 1994によって記載されたプロトコルに従ってC57BL/6Jマウスにおいて誘発した。比較のためにBALB/cByJマウスも同条件に晒した。手短に言えば、生後7日の仔マウス及びその母マウスを室内空気から酸素75%の環境に5日間移し、その後室内空気に戻した。BioSpherix社製のチャンバーを使用して高酸素環境を作成し保持した。これらの条件下、C57BL/6Jマウスにおいて、高酸素状態の間に網膜中央に大きな乏血管性領域が形成され、酸素正常状態にもどされた後に異常な網膜前の血管新生が引き起こされ、ほぼ生後17日でピークに達し最終的に回復した。
【0067】
次に単離された細胞をマウスに眼内注射した。これに続いて、処理マウスおよび対照マウスの眼球内における脈管構造の免疫組織化学的および視覚的分析を行う。これらの研究は、Ritter et al., J. Clin. Invest. 116:3266−76, 2006に記載された手順を使用して実施した。これらの研究結果を図1Bに示す。図に示す通り、本発明によって単離された実質的に純粋な集団は、酸素誘発網膜症を患ったマウスの血管修復を促進することができた。
実施例3 単離された単球集団のその他の特性及び活性
【0068】
単離した細胞が臨床用途又は臨床開発で既知の他の細胞集団と性質が異なっていること証明するために発明者らは、高レベルで発現する場合(ALDHbr)に、CD34+細胞、CD133+細胞、kit+細胞、系統抗原陰性(Lin−)細胞を同定するアルデヒドデヒドロゲナーゼの発現に対して末梢血試料を標識化した。その結果、実質的に末梢血試料中には標識が認められず(図3)、このことは非動員末梢血中には幹細胞はほとんど存在しないであろうとの仮説に合致する。
【0069】
CD34は造血幹細胞のマーカーであり、種々の臨床応用のための細胞を選抜するために使用されてきた。発明者らは、このような細胞が本明細書に記載する治療応用の成果を構成するか又は逆に悪影響を及ぼすかもしれないことを見出した。具体的に発明者らは、眼球内注射後の未分化造血細胞の挙動を特定するために、マウス胚細胞及びヒト間葉幹細胞(CD34+幹細胞と同様、未分化細胞である)を硝子体内に注射した。これらの細胞は、正常な眼球又は酸素誘発網膜症(OIR)モデルの眼球のいずれにも注射した。加えて、眼球に関係しない細胞型の影響を評価するために、発明者らは正常なヒト真皮線維芽細胞をOIRマウスモデルの硝子体内に注射した。上記の全ての場合に、発明者らは網膜内の炎症性及び腫瘍形成活性を見出した。これらの所見は、未分化の幹細胞及び/又は増殖細胞の眼球内注射が、正常眼球又は虚血性眼球において著しい有害事象に導くであろうことを示唆している。これらの研究は、未分化の幹細胞と対照的に、本発明に記載の骨髄系前駆細胞集団が、炎症又は腫瘍形成等の有害な事象を生ずることなく網膜脈管構造の制御された修復を促進するという発見も強調している。
【0070】
図4に示す通り、本発明の方法を使用して調製した集団は少数のCD34+細胞を含むかもしれない(図4)。しかし、これらの細胞は本発明モデルの機能にとって必要ではない。更に、発明者らは本発明の単球調製物からCD34発現細胞を選択的に枯渇させたが効果に変化は見られなかった。
実施例4 単離された単球のインビトロ純度および機能アッセイ
【0071】
上記の通り単離された単球の純度及び活性を評価するために、発明者らは種々の単球の特性を独立して評価する数種類のインビトロアッセイを開発した。第一のアッセイは、単球集団の純度を測定することであった。単球マーカーCD14に対する抗体及びフローサイトメトリーを使用した(図5)。図5に示す通り、このアッセイは、単離された細胞集団に存在する非単球細胞の数を定量すること及び本発明の単離方法の効率を検証することを発明者らに可能とした。第二のアッセイは、単離された単球の活性測定であった。単球走化性タンパク質1(MCP−1)の勾配に対する細胞の走化性を定量化した。これらの試験は、3μm又は5μmの孔径を有するボイデンチャンバーを使用し、そこで細胞を37℃で2時間移動させて実施した。単離された単球調製物はMCP−1の影響下で効率的に移動するが、リンパ球は移動しないことが明らかとなった(図6)。このようにこのアッセイは、調製物の相対純度に関する読み出し情報及び単離された細胞の生存能及び機能に関する指標を提供した。
【0072】
第三のアッセイは、細胞培養基底へのdifferential adhesion法(培養皿への接着性の違いによる細胞分離法)に基づくものであった。単球は細胞培養プラスチックに接着することができ、一方リンパ球は接着しないということが確証された。図7に証明する通り、これらの条件下での接着能力によって証明されたようにこのアッセイ結果は、本明細書記載の単離方法によって作製された細胞が主として単球であることを示した。
実施例5 治療細胞集団の全身投与
【0073】
本実施例は、網膜症マウスモデルでの治療応用のためのCD44hi骨髄細胞の心臓内投与を既述する。この全身経路の送達は、上記実施例で使用される典型的な局所投与経路(眼内注射)とは異なっている。GFP発現CD44hi骨髄細胞は、Ritter et al., J. Clin. Invest. 116:3266−76, 2006に記載された通りに調製し採取した。酸素誘発網膜症を患ったC57BL/6Jマウス(典型的には生後7日のマウス)への心臓内注射は、標準手順を使用して行った。細胞の血管標的活性は、注射数日後(例えば、7日又は10日後)のマウスのGSレクチン染色網膜を分析することによって実証した。網膜脈管構造の画像は、Radiance2100 MP共焦点レーザー顕微鏡(Bio−Rad社製;Zeiss)を使用して取得した。網膜染色の手順及び共焦点顕微鏡画像の解析は、Ritter et al., J. Clin. Invest. 116:3266−76, 2006の記載の通りに実施した。
【0074】
研究から得られた結果は、治療細胞の画分が高酸素性傷害後の網膜を標的とすることを証明した(図8)。これらの発見は、損傷を回復させたり、治療用物質を眼に送達するなどの治療効果を得るために、本明細書に記載した単球集団を全身投与(例えば心内注射)することも可能であることを示唆している。
実施例6 インビトロ活性化単球集団の増強活性
【0075】
本実施例は、エクスビボでの単球集団の活性化及び非活性化細胞に比較してのその増強された活性について記載する。
【0076】
上記の方法を使用して単球細胞を単離した後、単離された単球細胞(画分5(F5)細胞)を濃度25ng/mlのリポポリサッカライド(LPS)で4時間処理した。活性は、サイトカインの細胞内レベルを測定するBD Intracellular Cytokine Staininアッセイを改変した、フローサイトメトリーに基づいたアッセイにより測定した。このアッセイにより、未処理細胞およびリンパ球に富んだ画分(F3)に比較した、LPSにより処理した単球(F5)細胞内におけるIL−6、IL−8及びTNFタンパク質の集積の増加が検出された。具体的には、データは、リンパ球に富んだ集団(F3)がLPS処理後に実質的に活性化しない一方で、単球に富んだ集団(F5)がLPSにより明確に活性化されることを明らかにした。加えて、細胞内サイトカイン染色によって測定した場合、糖尿病ドナー由来の細胞は、正常に活性化することが明らかとなった。更に、フローサイトメトリー分析から、前方散乱対側方散乱によって測定する場合にLPS処理は、F5細胞の形態に殆ど影響を与えないことが見出された。
【0077】
発明者らは、サイトメトリックビーズアレイを使用してLPS活性化細胞から分泌されるサイトカインレベルを未処理細胞と比較して定量的に測定することにより、これらの発見を独立して実証した。発明者らは、IL−6、IL−8及びTNFタンパク質の分泌の著しい増加を検出した。本アッセイは、F5細胞においてLPS刺激後にIL−1βは著しく上方制御されたが(図9)、しかしIL−10及びIL−12p70の分泌は実質的に変化しなかったことも確証した。
【0078】
単離された単球細胞をLPSにより活性化することに加えて、発明者らはより望ましい安全特性を有する他の活性化化合物の試験も行った。具体的には、発明者らは最初、LPS受容体であるTLR4に対する代替リガンドに努力を集中させた。これらの代替TLR4リガンドの一つであるモノホスホリルリピドA(MPLA)を上記のサイトメトリックビーズアレイで使用した。結果は、LPSに関し見出されたと同様に、MPLAはIL−8、IL−6及びTNFの増加を伴いつつF5細胞を活性化する(図10)。MPLA処理後にIL−1分泌βに関する増加も見出されたが、そのレベルはLPS刺激により得られたもののほぼ半分であった。
【0079】
発明者らは、F5単球細胞上のマウス及びヒト単球走化性タンパク質1(MCP−1)の活性化能力も試験した。マウス及びヒト双方のMCP−1は、IL−8及びIL−6の増加を刺激した。しかし、そのレベルはLPS又はMPLAにより得られたよりも低かった(図10及び11)。
【0080】
エクスビボ活性化単球集団のサイトカイン分泌測定に加えて、発明者らは動物試験における細胞の治療効果を試験した。これらの試験において、LPS処理細胞又は対照細胞の並行群を硝子体内注射(0.5μl中250、000細胞)によりマウスに投与した。次にこれらの動物を高酸素状態及び酸素誘発網膜症にさらした。これらの動物の網膜分析は、LPSによって活性化されたF5単球細胞による治療がこのモデルで測定された2つの主なパラメータ、即ち脈管閉塞の領域及び血管新生の領域(房状分岐)を減少させることを明らかにした。これらのパラメータの減少は、未処理F5細胞、処理F3細胞、ビヒクル又はLPS単独によるものよりもLPS処理F5によるものの方が大きかった。
【0081】
それ以下では網膜が実質的に血管閉塞を有しないと考えられる(こここで「治癒」と記載する)10、000平方ミクロンの値をカットオフとして使用することにより、発明者らは、未処理F5又は他のLPS処理画分(F3)と比較してLPS処理F5細胞による処理後に、実質的により多数の網膜がこのカットオフ以下の閉塞領域を有することを証明することができた(図12)。これは、単球に富んだ活性化細胞集団が静脈鬱血性網膜症のモデルにおいて血管修復を促進する能力を有することを示している。図12より明らかな通り、F3画分はOIRモデルにおいて一定レベルの効果を示しており、活性細胞がこの画分になお存在することを示唆している。従って、この集団、又はF5及びF3細胞の併用も、治療上有用であるかもしれない。
【0082】
糖尿病性網膜症の治療における自己由来法の使用の可能性に関しては、糖尿病ドナー由来の細胞が活性であることを証明することが重大な意味を持っている。OIRモデルを使用して、発明者らは実際にこの通りであることを明らかにした。糖尿病ドナー由来の単球に富んだ画分(F5)は、正常ドナー由来と識別不能な活性化パターンを示し(図9)、これらの活性化された細胞は非活性化のF5細胞又は他のLTP処理画分(F3)よりもOIRモデルにおいて大いに血管修復を促進することも明らかにされた(図12)。更にある程度の活性がリンパ球に富むF3画分に見出された。
【0083】
前述の発明については、理解を明瞭とするために説明及び実施例を経て詳細な点も記載しているが、本発明の教えに照らして当業者にとってある程度の変更及び改変が別記特許請求の範囲の精神及び請求の範囲からそれることなしに成されるであろうことは明らかであろう。
【0084】
本明細書において引用された全ての刊行物、データベース、GenBank配列、特許、及び特許出願は、各々が具体的及び個別的に援用すべきよう指示されているかのように、ここに本明細書の一部として援用される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD33抗原及びCD14抗原を発現する実質的に純粋な単球を含む単離された細胞集団。
【請求項2】
哺乳動物の末梢血試料、臍帯血試料又は骨髄試料から単離される請求項1記載の単離された細胞集団。
【請求項3】
単離された細胞集団中の細胞がヒト細胞又はマウス細胞である請求項1記載の単離された細胞集団。
【請求項4】
単離された細胞集団中の細胞の少なくとも70%、80%又は90%が表面マーカーCD14及びCD33を発現する請求項1記載の単離された細胞集団。
【請求項5】
CD34−である請求項1記載の単離された細胞集団。
【請求項6】
細胞集団が実質的にALDHbr細胞を含まない請求項1記載の単離された細胞集団。
【請求項7】
インビトロで更に活性化された請求項1記載の単離された細胞集団。
【請求項8】
単離された細胞集団がLPS、MPLA、又はMCP−1により活性化される請求項7記載の方法。
【請求項9】
眼球血管系障害を患う患者に単離された単球集団を投与することを含む、ここで投与される細胞集団が眼球血管系障害を治療し又は寛解させるために十分な量である、患者の眼球血管系障害を治療し又は寛解させる方法。
【請求項10】
単球集団が患者由来の血液試料又は骨髄試料から単離される請求項9記載の方法。
【請求項11】
患者がヒトである請求項9記載の方法。
【請求項12】
単球集団が実質的に純粋なCD14+/CD33+細胞を含む請求項9記載の方法。
【請求項13】
単離された単球集団中の少なくとも80%がCD14+/CD33+である請求項9記載の方法。
【請求項14】
眼球血管系障害が静脈鬱血性網膜症、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、血管新生緑内障、網膜中心静脈閉塞症、網膜浮腫、黄斑変性症及び網膜色素変性症から成る群から選択される請求項9記載の方法。
【請求項15】
単球集団が患者に硝子体内注射経由で投与される請求項9記載の方法。
【請求項16】
単球集団が患者に投与される前にインビトロ又はエクスビボで活性化される請求項9記載の方法。
【請求項17】
単球集団がLPS、MPLA又はMCP−1により活性化される請求項16記載の方法。
【請求項18】
単球集団が患者に単球活性化化合物と共に同時投与される請求項9記載の方法。
【請求項19】
単球活性化化合物がLPS、MPLA、又はMCP−1である請求項18記載の方法。
【請求項20】
患者の眼球疾患を治療し又は寛解させる方法であって、(i)眼球血管系疾患を患う患者の血液試料又は骨髄試料から実質的に純粋な単球集団を単離すること;及び(ii)眼球血管系疾患を治療し又は寛解させるために十分な量で単離された単球集団を患者に投与し、それによって患者の眼球血管性疾患の症状を治療し又は寛解させること、を含む当該方法。
【請求項21】
単離された単球集団が実質的に純粋なCD14+/CD33+細胞を含む請求項20記載の方法。
【請求項22】
単離された単球集団中の少なくとも80%が表面マーカーCD33及びCD14を発現する請求項20の方法。
【請求項23】
請求項20記載の方法であって、ここで(i)試料から赤血球をデバルキングすること;及び(ii)試料中の残存赤血球及び他の細胞型をそれらのサイズ、粒度又は密度に基づいて単球から分離すること、によって単球集団が単離される当該方法。
【請求項24】
残存赤血球及び他の細胞型が、密度遠心分離又は蛍光励起細胞分取法(FACS)によって単球から分離される請求項23記載の方法。
【請求項25】
眼球血管系障害が、静脈鬱血性網膜症、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、血管新生緑内障、網膜中心静脈閉塞症、黄斑変性症及び網膜色素変性症から成る群から選択される請求項20記載の方法。
【請求項26】
単離された単球集団が患者に投与される前にエクスビボで活性化される請求項20記載の方法。
【請求項27】
単球集団がLPS、MPLA又はMCP−1により活性化される請求項26記載の方法。
【請求項28】
実質的に純粋な単球集団を単離する方法であって、(i)患者由来の血液試料又は骨髄試料を用意すること;(ii)試料から赤血球をデバルキングすること;及び(iii)試料中の残存赤血球及び他の細胞型を単球から分離し、それによって実質的に純粋な単球を含む細胞集団を単離すること、を含む当該方法。
【請求項29】
残存赤血球及び他の細胞型が、それらのサイズ、粒度又は密度に基づいて単球から分離される請求項28記載の方法。
【請求項30】
残存赤血球及び他の細胞型が、密度遠心分離又は蛍光励起細胞分取法(FACS)によって単球から分離される請求項28記載の方法。
【請求項31】
他の細胞型が血小板、顆粒球及び顆粒球である請求項28記載の方法。
【請求項32】
赤血球が、Hespan分画遠心分離又はフィコール密度勾配遠心法によってデバルキングされる請求項28記載の方法。
【請求項33】
表面マーカーCD14及びCD33の発現について単離された細胞集団を分析することを更に含む請求項28記載の方法。
【請求項34】
請求項28の方法によって単離された実質的に純粋な単球細胞集団。
【請求項1】
CD33抗原及びCD14抗原を発現する実質的に純粋な単球を含む単離された細胞集団。
【請求項2】
哺乳動物の末梢血試料、臍帯血試料又は骨髄試料から単離される請求項1記載の単離された細胞集団。
【請求項3】
単離された細胞集団中の細胞がヒト細胞又はマウス細胞である請求項1記載の単離された細胞集団。
【請求項4】
単離された細胞集団中の細胞の少なくとも70%、80%又は90%が表面マーカーCD14及びCD33を発現する請求項1記載の単離された細胞集団。
【請求項5】
CD34−である請求項1記載の単離された細胞集団。
【請求項6】
細胞集団が実質的にALDHbr細胞を含まない請求項1記載の単離された細胞集団。
【請求項7】
インビトロで更に活性化された請求項1記載の単離された細胞集団。
【請求項8】
単離された細胞集団がLPS、MPLA、又はMCP−1により活性化される請求項7記載の方法。
【請求項9】
眼球血管系障害を患う患者に単離された単球集団を投与することを含む、ここで投与される細胞集団が眼球血管系障害を治療し又は寛解させるために十分な量である、患者の眼球血管系障害を治療し又は寛解させる方法。
【請求項10】
単球集団が患者由来の血液試料又は骨髄試料から単離される請求項9記載の方法。
【請求項11】
患者がヒトである請求項9記載の方法。
【請求項12】
単球集団が実質的に純粋なCD14+/CD33+細胞を含む請求項9記載の方法。
【請求項13】
単離された単球集団中の少なくとも80%がCD14+/CD33+である請求項9記載の方法。
【請求項14】
眼球血管系障害が静脈鬱血性網膜症、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、血管新生緑内障、網膜中心静脈閉塞症、網膜浮腫、黄斑変性症及び網膜色素変性症から成る群から選択される請求項9記載の方法。
【請求項15】
単球集団が患者に硝子体内注射経由で投与される請求項9記載の方法。
【請求項16】
単球集団が患者に投与される前にインビトロ又はエクスビボで活性化される請求項9記載の方法。
【請求項17】
単球集団がLPS、MPLA又はMCP−1により活性化される請求項16記載の方法。
【請求項18】
単球集団が患者に単球活性化化合物と共に同時投与される請求項9記載の方法。
【請求項19】
単球活性化化合物がLPS、MPLA、又はMCP−1である請求項18記載の方法。
【請求項20】
患者の眼球疾患を治療し又は寛解させる方法であって、(i)眼球血管系疾患を患う患者の血液試料又は骨髄試料から実質的に純粋な単球集団を単離すること;及び(ii)眼球血管系疾患を治療し又は寛解させるために十分な量で単離された単球集団を患者に投与し、それによって患者の眼球血管性疾患の症状を治療し又は寛解させること、を含む当該方法。
【請求項21】
単離された単球集団が実質的に純粋なCD14+/CD33+細胞を含む請求項20記載の方法。
【請求項22】
単離された単球集団中の少なくとも80%が表面マーカーCD33及びCD14を発現する請求項20の方法。
【請求項23】
請求項20記載の方法であって、ここで(i)試料から赤血球をデバルキングすること;及び(ii)試料中の残存赤血球及び他の細胞型をそれらのサイズ、粒度又は密度に基づいて単球から分離すること、によって単球集団が単離される当該方法。
【請求項24】
残存赤血球及び他の細胞型が、密度遠心分離又は蛍光励起細胞分取法(FACS)によって単球から分離される請求項23記載の方法。
【請求項25】
眼球血管系障害が、静脈鬱血性網膜症、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、血管新生緑内障、網膜中心静脈閉塞症、黄斑変性症及び網膜色素変性症から成る群から選択される請求項20記載の方法。
【請求項26】
単離された単球集団が患者に投与される前にエクスビボで活性化される請求項20記載の方法。
【請求項27】
単球集団がLPS、MPLA又はMCP−1により活性化される請求項26記載の方法。
【請求項28】
実質的に純粋な単球集団を単離する方法であって、(i)患者由来の血液試料又は骨髄試料を用意すること;(ii)試料から赤血球をデバルキングすること;及び(iii)試料中の残存赤血球及び他の細胞型を単球から分離し、それによって実質的に純粋な単球を含む細胞集団を単離すること、を含む当該方法。
【請求項29】
残存赤血球及び他の細胞型が、それらのサイズ、粒度又は密度に基づいて単球から分離される請求項28記載の方法。
【請求項30】
残存赤血球及び他の細胞型が、密度遠心分離又は蛍光励起細胞分取法(FACS)によって単球から分離される請求項28記載の方法。
【請求項31】
他の細胞型が血小板、顆粒球及び顆粒球である請求項28記載の方法。
【請求項32】
赤血球が、Hespan分画遠心分離又はフィコール密度勾配遠心法によってデバルキングされる請求項28記載の方法。
【請求項33】
表面マーカーCD14及びCD33の発現について単離された細胞集団を分析することを更に含む請求項28記載の方法。
【請求項34】
請求項28の方法によって単離された実質的に純粋な単球細胞集団。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2012−518407(P2012−518407A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551065(P2011−551065)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【国際出願番号】PCT/US2010/000477
【国際公開番号】WO2010/096177
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(399038620)ザ スクリプス リサーチ インスティチュート (51)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【国際出願番号】PCT/US2010/000477
【国際公開番号】WO2010/096177
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(399038620)ザ スクリプス リサーチ インスティチュート (51)
【Fターム(参考)】
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