説明

印刷システムおよび印刷装置

【課題】緊急事象の到達予測通知を受けた場合に、動作エラーや故障などを起こさず、緊急事象に関する情報を印刷することができる印刷システムおよび印刷装置を提供する。
【解決手段】複合機は、緊急地震速報を取得したとき、所定の避難情報を印刷する緊急印刷が地震の到達時刻(主要動到達予測時刻)までに可能か否かを判断し、印刷可能である場合に緊急印刷を行う。これにより、地震が実際に到来する前に緊急印刷を完了することができ、複合機が地震の到来時に印刷動作(緊急印刷)を行っていることで発生する動作エラーや故障などを回避することができる。また、ユーザは地震が実際に到来する前に避難情報(印刷物)を取得することができ、より迅速な対応が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震などの緊急事象の到達予測通知を受けてその緊急事象に関する情報を印刷する印刷システムおよび印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オフィスで働く社員が大きな地震などに遭遇した場合には、適切な対処や避難が求められる。このような要望に対し、たとえば、地震や津波などに関する緊急情報を受信すると、その緊急事象の対処方法や避難経路などを示す避難情報を印刷装置に印刷させることにより、社員がその避難情報を利用して適切な対処や避難を行うことができるようにしたシステムが考案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−272688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ウォームアップを行ってから印刷を開始する印刷装置においては、緊急地震速報などの緊急情報を受信してからウォームアップを行って印刷を開始するまでに時間を要するため、地震が到来するまでに避難情報の印刷を完了できないことが起こり得る。たとえば、地震による揺れを受けながら印刷を行うと、動作エラーや故障の発生で避難情報を印刷出力できなくなる可能性がある。
【0005】
本発明は、上記の問題を解決しようとするものであり、緊急事象の到達予測通知を受けた場合に、動作エラーや故障などを起こさず、緊急事象に関する情報を印刷することができる印刷システムおよび印刷装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
【0007】
[1]印刷部と、
前記印刷部の設置場所に所定の緊急事象が到達する時刻をその到達前に通知する緊急情報を取得する取得部と、
前記取得部で前記緊急情報を取得したとき、その緊急事象に関する情報を印刷する緊急印刷が前記到達時刻までに可能か否かを判断する判断部と、
前記判断部の判断結果が印刷可能である場合に、前記印刷部に前記緊急印刷を行わせる印刷制御部と、
を備えた印刷システム。
【0008】
上記発明では、印刷部の設置場所に所定の緊急事象が到達する時刻をその到達前に通知する緊急情報(緊急事象の到達予測通知)を取得したとき、その緊急事象に関する情報を印刷する緊急印刷が緊急事象の到達時刻までに可能か否かを判断する。この判断結果が印刷可能である場合に、印刷部に緊急印刷を行わせることで、緊急事象が実際に到来する前に緊急印刷を完了できる。なお、判断結果が印刷不可である場合は、即時・自動の緊急印刷は行わない。
【0009】
これにより、印刷部が緊急事象の到来時に印刷動作(緊急印刷)を行っていることで発生する動作エラーや故障などを回避することができる。また、緊急印刷が可能であると判断されて実行された場合には、印刷部の近くにいる人は、緊急事象が実際に到来する前にその緊急事象に関する情報(印刷物)を取得することができる。
【0010】
[2]前記緊急印刷では、所定の制御を行う通常印刷よりも簡易な制御を行う
ことを特徴とする[1]に記載の印刷システム。
【0011】
上記発明では、緊急印刷においては、所定の制御を行う通常印刷よりも簡易な制御を行うことで、印刷所要時間(印刷開始までの時間を含む)を短縮し、迅速に印刷できる。これにより、所定の緊急事象が到来する前に緊急印刷を実行完了できる可能性が高まり、印刷部の近くにいる人はその緊急事象に関する情報を緊急事象の到来前に取得できる可能性が高まる。
【0012】
[3]前記判断結果が印刷可能である場合に、前記印刷部が印刷中であれば前記緊急印刷を優先して行う
ことを特徴とする[1]または[2]に記載の印刷システム。
【0013】
上記発明では、印刷部が印刷中であればその印刷を即中止し、緊急印刷を優先して開始する。これにより、印刷部の近くにいる人は緊急事象に関する情報をいち早く取得することができる。
【0014】
[4]前記判断結果が印刷不可である場合は、前記緊急印刷の実行を手動操作で受け付ける
ことを特徴とする[1]〜[3]のいずれか1項に記載の印刷システム。
【0015】
上記発明では、緊急印刷が不可能と判断された場合は、緊急印刷の実行を手動操作で受け付ける。たとえば、印刷部の近くにいる人は印刷を行っても差し支えないと判断した場合に、手動操作で緊急印刷を実行させることができる。
【0016】
[5]前記判断結果が印刷不可である場合は、前記印刷部を電源オフにし、前記印刷部がその電源オフから電源オンにされた場合に、前記緊急印刷の実行を手動操作で受け付ける
ことを特徴とする[4]に記載の印刷システム。
【0017】
上記発明では、緊急印刷が不可能と判断された場合は、印刷部は自動的に電源オフにされる。たとえば、緊急事象が到来したときに印刷部が電源オン状態であると、二次災害などを引き起こす危険性が高まるが、印刷部を電源オフにすることでその危険性を低下させることができる。印刷部がその電源オフ状態から電源オンにされた場合には、緊急印刷の実行を手動操作で受け付けることで、たとえば、印刷部の近くにいる人が緊急事象の到来後に印刷部の電源をオンにしても差し支えないと判断した場合に、印刷部を電源オンにし、手動操作で緊急印刷を実行させることができる。また、その必要性がなければ緊急印刷を実行させないこともできる。たとえば、緊急事象への対応が済んだ後に印刷部を電源オンにした場合は、緊急印刷を行う必要性が低いので、その無駄な印刷を行わずに済む。
【0018】
[6]前記緊急情報は、緊急地震速報の第2報である
ことを特徴とする[1]〜[5]のいずれか1項に記載の印刷システム。
【0019】
上記発明では、緊急地震速報の第1報は、ノイズなどによる誤報であったり、情報の精度が低かったりする可能性があるため、第2報に基づいて緊急印刷の可否判断を行う。これにより、緊急印刷の可否をより的確に判断することができる。
【0020】
[7]前記緊急印刷を行う場合は、緊急印刷を行う旨を報知する
ことを特徴とする[1]〜[6]のいずれか1項に記載の印刷システム。
【0021】
上記発明では、印刷部(印刷システム)の周囲にいる人に、緊急印刷を行う旨の報知を行って伝えることができる。これにより、印刷部の周囲にいる人が緊急事象に関する情報(印刷物)を印刷部から取り忘れるようなことを回避できる。
【0022】
[8]前記通常印刷では、印刷剤が転写されて搬送される記録紙にその印刷剤を加熱定着させる加熱定着部を所定の温度に昇温する昇温制御を行い、
前記緊急印刷では、前記昇温制御を省略する制御を行い、
前記緊急印刷を行った場合は、前記印刷部における前記記録紙の搬送路のクリーニングを促す旨を報知する
ことを特徴とする[2]に記載の印刷システム。
【0023】
上記発明では、加熱定着部を所定の温度に昇温する昇温制御を省略することで、迅速な印刷(緊急印刷)が可能となるが、記録紙に転写された印刷剤が定着温度不足で記録紙の搬送路に付着し、搬送路が印刷剤によって汚れる可能性がある。緊急印刷を行った場合は、そのクリーニングを促す旨を報知することで、ユーザが実際にクリーニングを行うことにより、搬送路の汚れが除去される。これにより、印刷剤によって汚れた搬送路を搬送されることで生じる印刷物(記録紙)の汚れを防止することができる。
【0024】
[9]前記判断部は、前記到達時刻までの残り時間と、予め記憶されている前記緊急印刷に要する時間とを比較して、前記緊急印刷が前記到達時刻までに可能か否かを判断する
ことを特徴とする[1]〜[8]のいずれか1項に記載の印刷システム。
【0025】
上記発明では、所定の緊急事象が到達する時刻(到達時刻)までの残り時間と、予め記憶されている緊急印刷に要する時間とを比較することで、緊急印刷が到達時刻までに可能か否かを迅速かつ的確に判断することができる。
【0026】
[10]印刷部と、
当該印刷装置の設置場所に所定の緊急事象が到達する時刻をその到達前に通知する緊急情報を取得する取得部と、
前記取得部で前記緊急情報を取得したとき、その緊急事象に関する情報を印刷する緊急印刷が前記到達時刻までに可能か否かを判断する判断部と、
前記判断部の判断結果が印刷可能である場合に、前記印刷部に前記緊急印刷を行わせる印刷制御部と、
を備えた印刷装置。
【0027】
上記発明では、印刷装置は、自装置の設置場所に所定の緊急事象が到達する時刻をその到達前に通知する緊急情報を取得したとき、その緊急事象に関する情報を印刷する緊急印刷が緊急事象の到達時刻までに可能か否かを判断する。この判断結果が印刷可能である場合に、緊急印刷を行うことで、緊急事象が実際に到来する前に緊急印刷を完了できる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の印刷システムおよび印刷装置によれば、緊急事象の到達予測通知を受けた場合に、動作エラーや故障などを起こさず、緊急事象に関する情報を印刷することができる。これにより、印刷システムおよび印刷装置の近くにいる人は、印刷された緊急事象に関する情報を持って、その緊急事象に対する適切な対処や避難などを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る印刷システムの構成を示すシステム構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る複合機の概略構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る緊急印刷設定画面を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る避難経路設定画面を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る緊急情報処理部による処理を示す流れ図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る緊急印刷選択画面を示す図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係る緊急印刷制御部による処理を示す流れ図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る緊急印刷報知画面を示す図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る印刷制御部による処理を示す流れ図である。
【図10】本発明の第1の実施形態に係るCPU(表示制御部)によるクリーニング推奨画面の表示処理を示す流れ図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る緊急情報処理部による処理を示す流れ図である。
【図12】本発明の第2の実施形態に係るCPUによる起動処理を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面に基づき本発明の実施形態を説明する。
【0031】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る印刷システム5の構成を示している。印刷システム5は、オフィスに設けられたLAN(Local Area Network)などのネットワーク2に、印刷装置としての複合機10と、端末装置30と、サーバ装置40とが接続されて構成される。
【0032】
印刷システム5は、本システムの設置場所(オフィス)に大きな地震が到来することを検知した場合に、複合機10によって所定の避難情報を緊急に印刷し、オフィスで働く社員などがその避難情報を利用して適切な避難や対処を行うことができるようにする機能を備えている。たとえば、地震が発生した際に、避難経路、点呼名簿などの避難および安否確認に必要な情報を覚えていなかったり、事前に用意していなかったりしたために、あるいは会議室など通常の執務場所とは異なる場所にいたために、避難時に避難経路が分からなかったり、避難場所での安否確認がしにくくなったりすることを防止するために、避難経路や点呼名簿(安否確認名簿/避難者名簿)などの避難情報を緊急印刷するものである。本実施形態では、印刷システム5の設置場所への地震の到来を、緊急地震速報を利用して検知するようにしている。
【0033】
緊急地震速報とは、気象庁が配信提供する地震情報であり、地震の発生直後に、震源に近い観測点の地震計で捉えられた地震波(初期微動:P波)のデータを解析して震源の位置や地震の規模(マグニチュード)を直ちに推定し、これに基づいて各地での主要動(S波)の到達時刻や震度を推定し、可能な限り素早く知らせる地震動の予報および警報である。緊急地震速報の配信は、テレビやラジオ、防災行政無線による放送、施設の館内放送、携帯電話、専用端末、インターネットなどを通じて行われる。緊急地震速報には、「一般向け」と「高度利用者向け」とがあり、高度利用者向け緊急地震速報では以下の情報が提供される。
【0034】
〔高度利用者向け緊急地震速報の内容〕
・地震の発生時刻
・発生場所(震源)の推定値
・地震の規模(マグニチュード)の推定値
・予測される最大震度が震度3以下のときは、予測される揺れの大きさの最大(最大予測震度)
・予測される最大震度が震度4以上のときは、地域名に加えて、震度5弱以上と予測される地域の震度の予測値(予測震度)と、その地域への主要動の到達時刻の予測値(主要動到達予測時刻)
【0035】
気象庁は、地震を検知してから数秒〜1分程度の間に数回(5〜10回程度)の高度利用者向け緊急地震速報(予報)を発信する。第1報は迅速性を優先するため、1観測点のみのデータで解析を行い発信する。第2報以降は、複数の観測点のデータを使用して解析を行うことにより、情報の精度が徐々に高まる。情報の精度がほぼ安定したと考えられる時点で最終報を発信し、その地震に対する高度利用者向け緊急地震速報の発信を終了する。また、1観測点のみのデータ解析で第1報を発信した後に、所定の時間が経過しても2つ以上の観測点で地震波が観測されなかった場合はノイズなどによる誤報と判断し、第1報の発信から数秒〜十数秒程度でキャンセル報を発信する。このような誤報は、事故や落雷、機器の障害などによって発生する。
【0036】
本実施形態では、印刷システム5の設置場所への地震到来検知を、高度利用者向け緊急地震速報を利用して行う。なお、以下では高度利用者向け緊急地震速報を単に「緊急地震速報」と呼ぶ。
【0037】
本実施形態に係る印刷システム5では、端末装置30はパーソナルコンピュータ(Personal Computer;PC)などで構成され、複合機10にジョブを送信する機能を備えている。サーバ装置40は、インターネットなどを通じて緊急地震速報を取得し、複合機10に送信する機能を備えている。複合機10は、端末装置30から受信したジョブを処理する機能と、サーバ装置40から緊急地震速報を受信したとき、避難情報を印刷する緊急印刷が地震の到達時刻までに可能か否かを判断し、印刷可能であると判断した場合に緊急印刷を自動で行う機能とを備えている。
【0038】
図2は、複合機10の概略構成を示している。複合機10は、原稿の画像を光学的に読み取ってその複製画像を記録紙に印刷して出力するコピー機能、読み取った原稿の画像データをファイルにして保存したり端末装置30へ送信したりするスキャン機能、端末装置30から受信した印刷データに基づく画像や当該複合機10に保存されている画像データに基づく画像を記録紙に印刷して出力するプリンタ機能、ファクシミリ機能などを備えている。
【0039】
複合機10は、制御部としてのCPU(Central Processing Unit)11に、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、不揮発メモリ14と、ハードディスク装置15と、表示部16と、操作部17と、ファクシミリ通信部18と、ネットワーク通信部19と、スキャナ部20と、画像処理部21と、プリンタ部22と、音声出力部23とを接続して構成される。
【0040】
CPU11は、ROM12に格納されているプログラムに従って複合機10の動作を制御する。ROM12には、CPU11によって実行される各種プログラムや各種の固定データが記憶されている。RAM13は、CPU11がプログラムを実行する際に各種データを一時的に格納するワークメモリとして使用されるほか、画像データを一時的に保存するための画像メモリなどにも使用される。不揮発メモリ14は、電源がオフにされても記憶が保持される書き換え可能なメモリである。不揮発メモリ14には、装置固有の情報や各種の設定情報などが記憶される。ハードディスク装置15は、各種の保存データを格納するほか、入力された各種の画像データなども保存する。
【0041】
表示部16は、液晶ディスプレイなどで構成され、操作画面や設定画面などの各種の画面を表示する。操作部17は、スタートボタン、ストップボタン、テンキーなどの各種のボタン類と、液晶ディスプレイの表面に設けられて押下された座標位置を検出するタッチパネルなどで構成され、ユーザが複合機10に対して行う各種の操作を受け付ける。
【0042】
ファクシミリ通信部18は、ファクシミリ機能を備えた外部装置と公衆回線を通じて画像データを送受信する。ネットワーク通信部19は、ネットワーク2を通じて端末装置30やサーバ装置40などと通信を行う。
【0043】
スキャナ部20は、原稿の画像を光学的に読み取って画像データを取得する。スキャナ部20は、たとえば、原稿に光を照射する光源と、その反射光を受けて原稿を幅方向に1ライン分読み取るラインイメージセンサと、ライン単位の読取位置を原稿の長さ方向に順次移動させる移動手段と、原稿からの反射光をラインイメージセンサに導いて結像させるレンズやミラーなどからなる光学系と、ラインイメージセンサの出力するアナログ画像信号をデジタルの画像データに変換する変換部などを備えて構成される。
【0044】
画像処理部21は、画像データに対して、画像補正、回転、拡大/縮小、圧縮/伸張など各種の画像処理を施す。
【0045】
プリンタ部22は、画像データに基づく画像を電子写真プロセスによって記録紙上に形成して出力する。プリンタ部22は、たとえば、記録紙の搬送装置(紙搬送路を含む)と、感光体ドラムと、帯電装置と、入力される画像データに応じて点灯制御されるLD(Laser Diode)と、LDから射出されたレーザ光を感光体ドラム上で走査させる走査ユニットと、現像装置と、転写分離装置と、クリーニング装置と、定着装置とを有する、いわゆるレーザープリンタとして構成されている。レーザ光に代えてLED(Light Emitting Diode)で感光体ドラムを照射するLEDプリンタのほか他の方式のプリンタであってもかまわない。
【0046】
プリンタ部22における定着装置は、記録紙に転写されたトナー(印刷剤)を加熱および加圧して定着させる加熱加圧式の構成であり、紙搬送路を搬送される記録紙を挟持搬送しながら加熱および加圧する一対のローラを備えている。一方は、加熱用のヒータを内蔵した定着ローラ(加熱ローラ)であり、他方は、定着ローラに圧接した加圧ローラである。
【0047】
複合機10は、印刷を行う場合に、ヒータに通電して定着ローラを所定の温度(定着温度)に昇温するウォームアップ(昇温制御)を行い、ウォームアップが完了してから印刷を開始する。また、複合機10は待機状態や省電力状態(スリープ状態)へ遷移すると、ヒータへの通電を停止する。ただし、これらの状態へ遷移しても、定着ローラは急激に降温せず、しばらくの間は一定の温度を保ち、徐々に降温する。
【0048】
音声出力部23は、スピーカなどで構成され、音声を出力する。
【0049】
また図2では、CPU11が備えている主要な機能ブロックも示している。図2に示すように、CPU11は、プリンタ部22による印刷動作の制御を行う印刷制御部11aと、緊急地震速報(緊急情報)に係る処理を行う緊急情報処理部11bと、緊急印刷に係る制御を行う緊急印刷制御部11cと、表示部16による表示の制御を行う表示制御部11dと、音声出力部23による音声出力の制御を行う音声制御部11eと、ジョブの管理やジョブの処理に係る制御を行うジョブ制御部11f、複合機10の電源制御(電源オンオフ制御)を行う電源制御部11gとを備えている。これらのほかに、図示を省略した記憶制御部、操作制御部、スキャナ制御部、ファクシミリ制御部、ネットワーク制御部なども備えている。
【0050】
図3は、緊急印刷に係る設定を行うための緊急印刷設定画面50を示している。複合機10は、緊急印刷に係る各種の情報が予め記憶されている。この情報は、複合機10の設置場所の住所と、緊急印刷用の避難情報と、緊急印刷に要する時間(緊急印刷所要時間)である。避難情報は、本実施形態では、複合機10の設置場所からの避難経路、点呼および安否確認用の避難者名簿としている。緊急印刷に係る各種の情報の記憶先は、不揮発メモリ14もしくはハードディスク装置15である。ここでは、不揮発メモリ14に記憶する場合を例に説明する。
【0051】
ユーザや管理者は、複合機10を操作して表示部16に緊急印刷設定画面50を表示させ、本画面を通じて、複合機10の設置場所の住所と、避難経路と、避難者名簿とを入力し設定する。
【0052】
たとえば、設置場所の住所については、緊急印刷設定画面50に表示されている設置場所用の設定ボタン51(「設定する」)を押下すると、複合機10は設置場所設定画面(図示省略)を表示し、その画面を通じて設置場所の住所の入力を受け付ける。複合機10は、入力された設置場所の住所を示すデータをRAM13に一時保存する。
【0053】
避難経路については、緊急印刷設定画面50に表示されている避難経路用の設定ボタン51を押下すると、複合機10は図4に示す避難経路設定画面60を表示する。避難経路が記載された原稿を複合機10のスキャナ部20にセットし、避難経路設定画面60に表示されている読込みボタン61を押下すると、複合機10はスキャナ部20で原稿を読み取り、避難経路の画像データを取得してRAM13に一時保存する。戻るボタン62を押下すると、複合機10は前の緊急印刷設定画面50を表示する(図3参照)。避難者名簿も同様の操作を受けて、複合機10は避難者名簿が記載された原稿を読み取り、避難者名簿の画像データをRAM13に一時保存する。
【0054】
設置場所の住所、避難経路、避難者名簿を入力し、緊急印刷設定画面50に表示されている閉じるボタン52を押下すると、複合機10は、RAM13に一時保存していたデータ(設置場所の住所を示すデータ、避難経路の画像データ、避難者名簿の画像データ)を不揮発メモリ14に保存し、RAM13内のデータを消去する。
【0055】
なお、避難経路や避難者名簿の画像データは、上記の設定画面を通じて複合機10に入力するほかに、複合機10にUSBメモリなどの外部記憶装置を接続して入力したり、端末装置30やサーバ装置40から送信して入力したりするようにしてもよい。
【0056】
また複合機10は、避難経路の画像データおよび避難者名簿の画像データの総印刷枚数と、当該複合機10の印刷速度(枚/分)から、それらの画像データの印刷に要する時間を計算し、その計算値を緊急印刷所要時間として不揮発メモリ14に保存する。印刷速度は、所定の制御を行う通常印刷における印刷速度としてもよいし、通常印刷よりも簡易な制御を行う緊急印刷における印刷速度としてもよい(詳細は後述)。ただし、後者の方がより正確な緊急印刷所要時間を算出できるので、後者(緊急印刷における印刷速度)を用いることが好ましい。また、ユーザが総印刷枚数に基づいて適宜に決めた緊急印刷所要時間を入力して設定するようにしてもよい。
【0057】
以上で、緊急印刷に係る設定が終了し、緊急印刷に係る各種の情報が複合機10内に記憶される。
【0058】
次に、複合機10の動作について説明する。
【0059】
図5は、緊急情報処理部11bによる処理の流れを示している。サーバ装置40は、インターネットなどを通じて緊急地震速報を取得すると、ネットワーク2を介して複合機10に送信する。複合機10がサーバ装置40から緊急地震速報をネットワーク通信部19で受信すると、緊急情報処理部11bは本処理を開始する(Start)。
【0060】
緊急情報処理部11bは、受信した緊急地震速報を解析し、緊急印刷を行うか否かを判断する。前述したように、緊急地震速報(高度利用者向け緊急地震速報)には、予測される最大震度が震度4以上の場合、地域名と、震度5弱以上と予測される地域の震度の予測値(予測震度)と、その地域への主要動の到達時刻の予測値(主要動到達予測時刻)などが含まれている。
【0061】
緊急情報処理部11bは、緊急地震速報に含まれている、主要動到達予測時刻が示されている地域名に、不揮発メモリ14に記憶されている設置場所の住所(当該複合機10の所在地)が該当するか否かを確認する(ステップS101)。
【0062】
該当しない場合は(ステップS101;No)、本処理を終了する(End)。該当する場合は(ステップS101;Yes)、地震が到来する前に緊急印刷が可能か否かを判断する(ステップS102)。ここでは、緊急情報処理部11bは、図示しない時計部から現在時刻(T0)を取得し、主要動到達予測時刻(t1)から現在時刻(t0)を引いた、主要動到達予測時刻までの残り時間(TB)と、不揮発メモリ14に記憶されている緊急印刷所要時間(TA)とを比較する。緊急印刷所要時間が残り時間以下の場合は(TA≦TB)、緊急印刷が可能と判断する。緊急印刷所要時間が残り時間よりも大きい場合は(TA>TB)、緊急印刷が不可能と判断する。
【0063】
また、主要動到達予測時刻(t1)と、現在時刻(t0)に緊急印刷所要時間(TA)を加えた時刻(t2)とを比較し、該時刻が主要動到達予測時刻よりも早い場合は(t2≦t1)、緊急印刷が可能と判断し、該時刻が主要動到達予測時刻よりも遅い場合は(t2>t1)、緊急印刷が不可能と判断するようにしてもよい。
【0064】
緊急情報処理部11bは、緊急印刷が可能と判断した場合は(ステップS102;Yes)、緊急印刷制御部11cに緊急印刷の実行を要求し(ステップS103)、本処理を終了する(End)。緊急印刷が不可能と判断した場合は(ステップS102;No)、表示制御部11dに緊急印刷選択画面の表示を要求し(ステップS104)、本処理を終了する(End)。
【0065】
表示制御部11dは、緊急情報処理部11bから緊急印刷選択画面の表示要求を受けると、図6に示す緊急印刷選択画面70を表示部16に表示する。緊急印刷選択画面70には、緊急印刷を実行する選択を受け付ける選択ボタン71(「はい」)と、緊急印刷を実行しない選択を受け付ける選択ボタン72(「いいえ」)とが表示される。選択ボタン71が押下されると、印刷制御部11aは緊急印刷を実行する(詳細は後述)。選択ボタン72が押下されると、印刷制御部11aは緊急印刷を実行せず、表示制御部11dは通常画面を表示部16に表示する。
【0066】
このように、複合機10は地震が到来する前に緊急印刷が不可能と判断した場合は、緊急印刷選択画面70を表示する。避難者は、たとえば地震が到来して揺れが治まってから、緊急印刷選択画面70に表示されている選択ボタン71を押下するだけの簡単な操作で、複合機10に避難情報の緊急印刷を実行させ、その印刷された避難情報を持って避難することができる。
【0067】
図7は、緊急印刷制御部11cによる処理の流れを示している。緊急印刷制御部11cは、緊急情報処理部11bから緊急印刷実行要求を受けると本処理を開始する(Start)。
【0068】
緊急印刷制御部11cは、現在処理中のジョブがあるか否かをジョブ制御部11fに確認する(ステップS201)。ジョブ制御部11fは、現在処理中のジョブがあるか否かを緊急印刷制御部11cに応答する。
【0069】
現在処理中のジョブがない場合には(ステップS201;No)、ステップS203へ移行する。現在処理中のジョブがある場合には(ステップS201;Yes)、緊急印刷制御部11cは緊急印刷を最優先のジョブとし、ジョブ制御部11fに他のジョブの削除を要求して(ステップS202)、ステップS203へ移行する。なお、他のジョブの扱いについては、削除せずに保存しておいて、後に実行できるようにしてもよい。
【0070】
続いて、緊急印刷制御部11cは、不揮発メモリ14に記憶されている緊急印刷用の避難情報(避難経路、避難者名簿)の画像データを取得する(ステップS203)。また、避難情報の緊急印刷を行うことを報知するために、表示制御部11dに報知画面の表示を指示し、音声制御部11eに報知音声の出力を指示する(ステップS204)。そして、印刷制御部11aに緊急モードでの印刷を要求し(ステップS205)、本処理を終了する(End)。
【0071】
表示制御部11dは、緊急印刷制御部11cから報知画面の表示指示を受けると、図8に示すような、緊急で避難情報を印刷する旨のメッセージを示した緊急印刷報知画面80を表示部16に表示する。音声制御部11eは、緊急印刷制御部11cから報知音声の出力指示を受けると、緊急で避難情報を印刷する旨の音声を音声出力部23から出力する。複合機10の近くにいる人は、これらの報知を受けて、複合機10が緊急で避難情報を印刷することを把握する。また、緊急印刷報知画面80に表示されている戻るボタン81が押下されると、表示制御部11dは、直前に表示していた画面を表示部16に表示する。
【0072】
図9は、印刷制御部11aによる処理の流れを示している。印刷制御部11aは、ジョブ制御部11fから印刷要求を受けた場合と、緊急印刷制御部11cから緊急モードでの印刷要求を受けた場合とに本処理を開始する(Start)。
【0073】
印刷制御部11aは、ジョブ制御部11fから印刷要求を受けた場合は(ステップS301;No)、所定の制御を行って印刷を実行する(通常印刷)。ここでは、プリンタ部22の定着装置における定着ローラのウォームアップを開始し(ステップS302)、印刷対象の画像データに対して画像処理部21により画像補正などの高画質化処理を施し(ステップS303)、定着ローラのウォームアップが完了すると(ステップS304;No→Yes)、高画質化処理を施した印刷対象の画像データに基づく画像をプリンタ部22により記録紙に印刷し(ステップS305)、本処理を終了する(End)。
【0074】
この場合は、複合機10はトナーで形成した所定の画質(高画質)の画像を記録紙に正常に定着させた印刷物を出力する。
【0075】
一方、緊急印刷制御部11cから緊急モードでの印刷要求を受けた場合は(ステップS301;Yes)、所定の制御よりも簡易な制御を行って印刷を実行する(緊急印刷)。緊急モードでの印刷は、避難情報が確認できることが重要であり、画質よりも高速(短時間)かつ安全に印刷を行うことを優先して、定着ローラのウォームアップと、印刷対象の画像データ(避難情報)に対する画像補正などの高画質化処理とを省略する。また、緊急印刷の実行履歴を保存する。ここでは、緊急印刷の実行履歴を保存するために、不揮発メモリ14に緊急印刷実行フラグをセットし(ステップS306)、直ちに印刷対象の画像データに基づく画像(避難情報)をプリンタ部22により記録紙に印刷し(ステップS307)、本処理を終了する(End)。
【0076】
他のジョブの処理中に緊急印刷を優先して行う場合は、定着ローラが温まっているので、複合機10はウォームアップを省略しても、トナーで形成した画像を記録紙にほぼ正常に定着させた印刷物を出力することができる。待機状態や省電力状態からウォームアップを省略して緊急印刷を行う場合は、定着ローラの温度や印刷枚数に応じてトナーの定着状態が変わる。定着ローラが所定の定着温度からさほど低下していない場合は、トナーで形成した画像を正常とまではいかないものの、数枚程度であれば良好に記録紙に定着させた印刷物を出力することができる。定着ローラの温度が低下している場合でも、トナーで形成した画像を確認できる程度に記録紙に定着させた印刷物を出力することができる。
【0077】
ただし、定着温度不足によりトナーの定着状態が良くない場合は、定着装置の下流側の紙搬送路に記録紙上から剥離したトナーが付着して、その紙搬送路が汚れる可能性がある。そこで、緊急印刷の実行時は、不揮発メモリ14に緊急印刷実行フラグをセットして緊急印刷の実行履歴を保存しておき、図8の緊急印刷報知画面80における戻るボタン81が押下されて通常画面に戻る場合、もしくは、避難時にそのまま複合機10の電源がオフにされることを想定して次回の電源オンによる起動時に、クリーニングを促す表示を行う。
【0078】
図10は、CPU11(表示制御部11d)によるクリーニング推奨画面の表示処理の流れを示している。CPU11は、図8の緊急印刷報知画面80における戻るボタン81が押下されて通常画面を表示する場合、もしくは、複合機10の電源がオンにされた場合に本処理を開始する(Start)。
【0079】
CPU11は、不揮発メモリ14に緊急印刷実行フラグがセットされている場合は(ステップS401;Yes)、その緊急印刷実行フラグをリセットし(ステップS402)、ダミーコピーなどによるクリーニングを促す旨のメッセージなどを示したクリーニング推奨画面を表示部16に表示する(ステップS403)。クリーニング推奨画面の確認操作を受けると、もしくは、クリーニング推奨画面を一定時間表示すると、複合機10を通常モードで動作させ(ステップS404)、本処理を終了する(End)。
【0080】
また、不揮発メモリ14に緊急印刷実行フラグがセットされていない場合は(ステップS401;No)、複合機10を通常モードで動作させ(ステップS404)、本処理を終了する(End)。
【0081】
クリーニング推奨画面が表示された場合は、ユーザはダミーコピーなどによるクリーニングを行うことが望ましいことを把握し、必要に応じてそのクリーニングを行う。
【0082】
このように、本実施形態に係る印刷システム5では、複合機10はサーバ装置40を介して緊急地震速報を取得したとき、所定の避難情報を印刷する緊急印刷が地震の到達時刻(主要動到達予測時刻)までに可能か否かを判断する。この判断結果が印刷可能である場合に緊急印刷を行うことで、地震が実際に到来する前に緊急印刷を完了できる。また、判断結果が印刷不可である場合は、即時・自動の緊急印刷は行わない。
【0083】
これにより、複合機10が地震の到来時に印刷動作(緊急印刷)を行っていることで発生する動作エラーや故障などを回避することができる。また、緊急印刷が可能であると判断されて実行された場合には、複合機10の近くにいる人は、地震が実際に到来する前に避難情報の印刷物を取得することができ、より迅速な対応が可能となる。また、その避難情報の印刷物を持って、避難経路を確認しながら迅速かつ適切に避難することができ、避難場所では避難名簿を確認しながら迅速な点呼(安否確認)が可能となる。
【0084】
また本実施形態では、地震が到達する時刻までの残り時間と、予め記憶されている緊急印刷に要する時間とを比較することで、緊急印刷が地震の到達時刻までに可能か否かを迅速かつ的確に判断することができる。
【0085】
緊急印刷においては、所定の制御を行う通常印刷よりも簡易な制御を行うことで、印刷所要時間(印刷開始までの時間を含む)を短縮し、迅速に印刷できる。これにより、地震が到来する前に緊急印刷を実行完了できる可能性が高まり、複合機10の近くにいる人は、避難情報の印刷物を地震の到来前に取得できる可能性が高まる。また、他のジョブの処理中であればそのジョブを即中止し、緊急印刷を優先して開始するので、複合機10の近くにいる人は、避難情報の印刷物をいち早く取得することができる。
【0086】
また緊急印刷を行う場合は、画面表示と音声出力によってその旨を報知することで、複合機10の周囲にいる人に緊急印刷を行うことが伝えられる(図8参照)。これにより、複合機10の周囲にいる人が避難情報の印刷物を取り忘れるようなことを回避できる。
【0087】
また複合機10は、緊急印刷が不可能と判断した場合は、緊急印刷選択画面70を表示し、緊急印刷の実行を手動操作で受け付ける。たとえば、複合機10の近くにいる人は、地震の揺れが治まり、印刷を行っても差し支えないと判断した場合に、手動操作で緊急印刷を実行することができる。
【0088】
また、緊急印刷では、定着ローラを所定の温度に昇温するウォームアップを省略することで、迅速な印刷(緊急印刷)が可能となるが、記録紙に転写されたトナーが定着温度不足で紙搬送路に付着し、紙搬送路がトナーによって汚れる可能性がある。そこで、緊急印刷を行った場合は、クリーニング推奨画面を表示してそのクリーニングを促す旨を報知する。ユーザが実際にクリーニングを行った場合には、紙搬送路の汚れが除去される。これにより、トナーによって汚れた紙搬送路を搬送されることで生じる印刷物(記録紙)の汚れを防止することができる。
【0089】
[第2の実施形態]
緊急地震速報の第1報は、迅速性を優先し、1観測点のみのデータ解析で発信されるため、ノイズなどによる誤報であったり、情報(主要動到達予測時刻、地域名など)の精度が低かったりする可能性がある。2観測点以上で地震波が観測された以降に発信される第2報は、第1報よりも誤報の可能性が低くなり、情報の精度が高まる。この点を考慮し、第2の実施形態では、緊急地震速報の第2報に基づいて緊急印刷の可否判断を行う。また、地震が到来することを検知した場合は、安全性をより重視し、複合機10の電源をオフにする制御も行う。
【0090】
なお、緊急地震速報(高度利用者向け緊急地震速報)には、報番号(地震単位での通番)が含まれている。ここでは、複合機10はサーバ装置40から受信した緊急地震速報に含まれている報番号から、当該緊急地震速報が第2報であるか否かを確認するようにしている。
【0091】
図11は、第2の実施形態に係る緊急情報処理部11bによる処理の流れを示している。複合機10がサーバ装置40から緊急地震速報を受信すると、緊急情報処理部11bは本処理を開始する(Start)。
【0092】
緊急情報処理部11bは、受信した緊急地震速報に含まれている報番号を確認し、第1報である場合は(ステップS501;No)、本処理を終了する(End)。第2報である場合は(ステップS501;Yes)、緊急地震速報に含まれている、主要動到達予測時刻が示されている地域名に、不揮発メモリ14に記憶されている設置場所の住所(当該複合機10の所在地)が該当するか否かを確認する(ステップS502)。
【0093】
該当しない場合は(ステップS502;No)、本処理を終了する(End)。該当する場合は(ステップS502;Yes)、地震が到来する前に緊急印刷が可能か否かを判断する(ステップS503)。この判断は第1の実施形態(図5のステップS102)と同様に行う。
【0094】
緊急情報処理部11bは、緊急印刷が可能と判断した場合は(ステップS503;Yes)、緊急印刷制御部11cに緊急印刷の実行を要求する(ステップS504)。緊急印刷が実行完了すると、電源制御部11gに複合機10の電源オフを指示し(ステップS506)、本処理を終了する(End)。
【0095】
緊急印刷が不可能と判断した場合は(ステップS503;No)、地震の到来前に緊急印刷が実行できなかったことを示す、緊急印刷の実行不可履歴を保存する。ここでは、不揮発メモリ14にフラグ(緊急印刷選択画面表示フラグ)をセットすることで行う。緊急情報処理部11bは、不揮発メモリ14に緊急印刷選択画面表示フラグをセットし(ステップS505)、電源制御部11gに複合機10の電源オフを指示して(ステップS506)、本処理を終了する(End)。
【0096】
電源制御部11gは、緊急情報処理部11bから電源オフの指示を受けると、複合機10の電源をオフにする。
【0097】
図12は、第2の実施形態に係るCPU11による起動処理の流れを示している。複合機10の電源がオンにされると、CPU11は本処理を開始する(Start)。
【0098】
CPU11は、不揮発メモリ14に緊急印刷選択画面表示フラグがセットされていない場合は(ステップS601;No)、複合機10を通常モードで起動させ(ステップS606)、本処理を終了する(End)。不揮発メモリ14に緊急印刷選択画面表示フラグがセットされている場合は(ステップS601;Yes)、その緊急印刷選択画面表示フラグをリセットし(ステップS602)、緊急印刷選択画面(図6参照)を表示部16に表示して(ステップS603)、画面上のボタンが押下されるか否かを監視する(ステップS604;No)。
【0099】
画面上の「いいえ」の選択ボタンが押下された場合は(ステップS604;Yes→ステップS605;いいえボタン)、CPU11は、複合機10を通常モードで起動させ(ステップS606)、本処理を終了する(End)。画面上の「はい」の選択ボタンが押下された場合は(ステップS604;Yes→ステップS605;はいボタン)、CPU11は緊急印刷を実行し(ステップS607)、本処理を終了する(End)。
【0100】
なお、緊急印刷の実行後は、複合機10の電源を再度オフにするようにしてもよく、複合機10を通常モードで動作させるようにしてもよい。複合機10を通常モードで動作させる場合(電源オン状態とした場合)、複合機10から避難情報の印刷物を取り出して避難を開始する際に、余震などに対する安全性を考慮して、手動で複合機10の電源をオフにしてから避難することも可能である。
【0101】
また、緊急印刷を実行した場合は、第1の実施形態で説明したクリーニング推奨画面を表示するようにしてもよい。たとえば、緊急印刷の実行後に第1の実施形態で説明した緊急印刷実行フラグを利用し、複合機10を通常モードで動作させる場合は、緊急印刷の実行後に直ちにクリーニング推奨画面を表示するようにしてもよい。緊急印刷の実行後に複合機10の電源を自動的にオフにする場合は、次回の電源オンによる起動後にクリーニング推奨画面を表示するようにしてもよい。
【0102】
このように、本実施形態では、緊急地震速報の第1報は、ノイズなどによる誤報であったり、情報の精度が低かったりする可能性があるため、第2報に基づいて緊急印刷の可否判断を行う。これにより、緊急印刷の可否をより的確に判断することができる。
【0103】
また、複合機10は、地震の到来前に緊急印刷が可能と判断した場合は、緊急印刷を実行し、実行完了後(地震の到来前)に電源を自動的にオフにする。また、地震の到来前に緊急印刷が不可能と判断した場合は、緊急印刷を実行せずに電源を自動的にオフにする。たとえば、地震が到来したときに電源オン状態であると、二次災害などを引き起こす危険性が高まるが、電源をオフにすることでその危険性を低下させることができる。
【0104】
緊急印刷が不可能と判断して電源をオフにした場合、複合機10はその電源オフから電源オンにされると、緊急印刷報知画面80を表示し、緊急印刷の実行を手動操作で受け付ける。これにより、たとえば、複合機10の近くにいる人が地震の到来後に複合機10の電源をオンにしても差し支えないと判断した場合に、複合機10を電源オンにし、手動操作で緊急印刷を実行させることができる。また、その必要性がなければ緊急印刷を実行させないこともできる。たとえば、避難しない場合や避難後にオフィスに戻って複合機10を電源オンにした場合は、避難情報の緊急印刷を行う必要性がないので、その無駄な印刷を行わずに済む。
【0105】
以上、本発明の実施形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は実施形態に示したものに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0106】
たとえば、緊急情報は緊急地震速報に限らない。地震の到達予測時刻や地域名などを含む他の地震情報(予報/警報)などを利用するようにしてもよい。また、所定の緊急事象は地震に限らない。たとえば、津波や雷雨など、災害を引き起こす可能性のある他の緊急事象(自然現象)などを対象にしてもよい。緊急事象に関する情報は、避難情報に限らない。たとえば、災害に関する対応マニュアルや緊急連絡事項などでもよい。
【0107】
実施形態で説明した緊急印刷では、所定の制御を行う通常印刷よりも簡易な制御として、定着ローラのウォームアップと、高画質化処理とを省略した制御を行うようにしているが、いずれか一方のみを省略した制御を行うようにしてもよい。また、通常印刷と同じ所定の制御を行うようにしてもよい。
【0108】
実施形態では、避難情報はユーザにより設定される構成としているが、ユーザにより設定される情報でなくともよい。たとえば、人の入退室を管理する入退室管理システムが導入されたオフィスの場合には、緊急情報の取得時にオフィスにいる人の名前のリストを管理サーバから複合機が取得することも可能である。このように、サーバなどから取得した情報を避難情報(避難者名簿)に用いる構成としてもよい。
【0109】
第2の実施形態では、緊急事象(地震)の到来前に緊急印刷が不可能と判断した場合は、緊急印刷を実行せずに複合機10を電源オフにし、複合機10がその電源オフから電源オンにされた場合に、緊急印刷の実行を手動操作で受け付ける場合を説明したが、複合機10が電源オンにされると自動で緊急印刷の実行する構成としてもよい。
【0110】
また、印刷システムの構成は、実施形態で説明した構成に限らない。たとえば、サーバ装置40が緊急印刷の可否判断を行い、その判断結果に基づいて複合機10による緊急印刷の実行/非実行を制御する構成としてもよい。また、サーバ装置40が緊急印刷の判断結果を複合機10に通知し、複合機10がその判断結果に基づいて緊急印刷の実行/非実行を制御する構成としてもよい。また、複合機10がサーバ装置40を介さずに直接、緊急情報を取得する構成としてもよい。
【0111】
また、本発明に係る印刷装置は、実施形態で説明した複合機に限らず、複写機やファクシミリ機なども対象にすることができる。
【符号の説明】
【0112】
2…ネットワーク
5…印刷システム
10…複合機
11…CPU
11a…印刷制御部
11b…緊急情報処理部
11c…緊急印刷制御部
11d…表示制御部
11e…音声制御部
11f…ジョブ制御部
11g…電源制御部
12…ROM
13…RAM
14…不揮発メモリ
15…ハードディスク装置
16…表示部
17…操作部
18…ファクシミリ通信部
19…ネットワーク通信部
20…スキャナ部
21…画像処理部
22…プリンタ部
23…音声出力部
30…端末装置
40…サーバ装置
50…緊急印刷設定画面
51…設定ボタン
52…閉じるボタン
60…避難経路設定画面
61…読込みボタン
62…戻るボタン
70…緊急印刷選択画面
71…選択ボタン
72…選択ボタン
80…緊急印刷報知画面
81…戻るボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷部と、
前記印刷部の設置場所に所定の緊急事象が到達する時刻をその到達前に通知する緊急情報を取得する取得部と、
前記取得部で前記緊急情報を取得したとき、その緊急事象に関する情報を印刷する緊急印刷が前記到達時刻までに可能か否かを判断する判断部と、
前記判断部の判断結果が印刷可能である場合に、前記印刷部に前記緊急印刷を行わせる印刷制御部と、
を備えた印刷システム。
【請求項2】
前記緊急印刷では、所定の制御を行う通常印刷よりも簡易な制御を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷システム。
【請求項3】
前記判断結果が印刷可能である場合に、前記印刷部が印刷中であれば前記緊急印刷を優先して行う
ことを特徴とする請求項1または2に記載の印刷システム。
【請求項4】
前記判断結果が印刷不可である場合は、前記緊急印刷の実行を手動操作で受け付ける
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の印刷システム。
【請求項5】
前記判断結果が印刷不可である場合は、前記印刷部を電源オフにし、前記印刷部がその電源オフから電源オンにされた場合に、前記緊急印刷の実行を手動操作で受け付ける
ことを特徴とする請求項4に記載の印刷システム。
【請求項6】
前記緊急情報は、緊急地震速報の第2報である
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の印刷システム。
【請求項7】
前記緊急印刷を行う場合は、緊急印刷を行う旨を報知する
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の印刷システム。
【請求項8】
前記通常印刷では、印刷剤が転写されて搬送される記録紙にその印刷剤を加熱定着させる加熱定着部を所定の温度に昇温する昇温制御を行い、
前記緊急印刷では、前記昇温制御を省略する制御を行い、
前記緊急印刷を行った場合は、前記印刷部における前記記録紙の搬送路のクリーニングを促す旨を報知する
ことを特徴とする請求項2に記載の印刷システム。
【請求項9】
前記判断部は、前記到達時刻までの残り時間と、予め記憶されている前記緊急印刷に要する時間とを比較して、前記緊急印刷が前記到達時刻までに可能か否かを判断する
ことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の印刷システム。
【請求項10】
印刷部と、
当該印刷装置の設置場所に所定の緊急事象が到達する時刻をその到達前に通知する緊急情報を取得する取得部と、
前記取得部で前記緊急情報を取得したとき、その緊急事象に関する情報を印刷する緊急印刷が前記到達時刻までに可能か否かを判断する判断部と、
前記判断部の判断結果が印刷可能である場合に、前記印刷部に前記緊急印刷を行わせる印刷制御部と、
を備えた印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−248070(P2011−248070A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120800(P2010−120800)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】