説明

印刷スクリーン、印刷方法および印刷装置

【課題】スクリーン印刷法において、膜厚分布を良好な状態とする印刷スクリーンと印刷方法および印刷装置を提供する。
【解決手段】基板18上にスクリーン版11を介して所定パターンを印刷する印刷装置であって、スクリーン版11は四角形状を有するとともに、スクリーン版の四角の4辺のうちの相対する2辺のみを支持する一対の支持体12と、スクリーン版11上に支持体12と平行配置されたスキージ15と、そのスキージ15をスクリーン版11に押圧させながら移動させる第1の移動機構と、支持体12を互いに反対方向に牽引する牽引機構とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペースト状の材料を、スクリーン版を通してガラス基板などの基板に転写する印刷技術に関し、特にプラズマテレビや大型モニター等に用いられるプラズマディスプレイパネルの電極や誘電体等のパネル構造物を形成するときに用いる印刷スクリーン、印刷方法および印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下、「パネル」と略記する)として代表的な交流面放電型パネルは、対向配置された前面板と背面板との間に多数の放電セルが形成されている。
【0003】
前面板は、フロート法による硼珪酸ナトリウム系ガラスの前面ガラス基板上に、透明電極およびバス電極からなる走査電極および維持電極からなる一対の表示電極対、および遮光を行うブラックストライプがそれぞれ平行に複数対形成され、それらを覆うように誘電体層と、さらにその上に酸化マグネシウム(MgO)からなる保護層とが形成されている。
【0004】
背面板は、排気および放電ガス導入用の細孔を設けた背面ガラス基板上に複数の平行なデータ電極と、それらデータ電極を覆う誘電体層と、さらにその上にデータ電極と平行に複数の隔壁とがそれぞれ形成され、誘電体層の表面と隔壁の側面とに赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の各色に発光する蛍光体層がそれぞれ形成されている。
【0005】
前面板と背面板とは、表示電極対とデータ電極とが立体交差するように対向配置され、その周囲がシールフリットにより密封されるとともに放電ガス(例えば、Ne−Xe混合ガスの場合で約530hPa〜800hPaの圧力)が封入されている。
【0006】
このような構成のパネルでは、表示電極対とデータ電極とが対向する部分に放電セルが形成され、各電極に映像信号にもとづく駆動電圧をそれぞれ印加することによって各放電セル内で放電を発生させ、放電により発生する紫外線で赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各色の蛍光体を励起発光させてカラー表示を行っている。
【0007】
この前面板および背面板を構成する電極や誘電体層などの構造物の形成方法としては、スクリーン印刷法が多く用いられている。このスクリーン印刷法により形成されるパネル構造物の具体例としては、感光性ペーストをスクリーン印刷法により塗布形成した後にフォトリソグラフィ法によりパターン形成される前面板のバス電極およびブラックストライプや、背面板のデータ電極および隔壁などのほかに、前面板および背面板の全面に形成される誘電体層などが挙げられる。
【0008】
なお、前面板の保護層や背面板の蛍光体層および前面板と背面板との封止に用いるシールフリットに至るまでもスクリーン印刷法を用いて形成することが可能である。したがって、パネル構造物のほとんどの形成法としてスクリーン印刷法を用いることが可能である。
【0009】
図5は、従来のスクリーン印刷法を説明する概略図であり、説明を判りやすくするために、印刷スクリーン20と印刷装置のスキージ25およびスクレッパー26の各部材のみを示す。図5に示すように、従来は、ポリスチレンやSUSなどからなる糸を織って作成した紗24を、スクリーン枠22の内側に面内の反発力ができるだけ均一となるように張り、印刷領域以外を乳剤23で保護することで作成した印刷スクリーン20を用いる。なお、乳剤23と形成された紗24を併せてスクリーン版21とする。
【0010】
また、図6に従来のスクリーン印刷法の動作を説明するための断面概略図を示す。印刷するペースト27をスクレッパー26で印刷領域全体に充填した後にスキージ25を一定の圧力で押し当てながら、ガラス基板等の基板28上にペースト27を印刷して塗布膜29を形成する。なお、印刷を行うときには、スクリーン版21と基板28とは、その隙間にある程度の距離(クリアランス)を設けて配置しているが、ペースト27の特性によってはスクリーン版21と塗布膜29が即座に離れない場合がある。そこで、従来の技術においては、スキージ25の後方のスクリーン版21の版離れを良化させるために、スキージ25後方のスクリーン枠22をスキージ25の進行に併せて徐々に上方へ上げる方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0011】
上述した従来のスクリーン印刷技術において、スキージ25の幅方向の中央部と端部では、スクリーン版21の反発力が略同一であることが望ましいが、スクリーン枠22に近い端部では反発力が大きく、スクリーン枠22から遠い中央部では反発力が小さくなる傾向にある。これは、スクリーン枠22にスクリーン版21を張るときに、ある程度の張力をスクリーン版21にかけてスクリーン枠22に固定させるが、張力を掛けすぎた場合にはスクリーン版21が破れたり、または、紗24の開口部が変形したりすることがあるので、中央部まで端部と同等の反発力を得るのが難しいためである。
【0012】
また、印刷を多数回繰り返すうちに端部と中央部の反発力の差はより大きくなる傾向にある。これは、スキージ25で何度もスクリーン版21を押擦することにより、紗24を形成する際に編みこんだ糸が変形してスクリーン版21が膨張することや、ペースト27により紗24が膨張することが原因として考えられる。
【0013】
図7に、反発力が弱いときのスクリーン印刷法の動作を説明する概略断面図を示す。スクリーン版21の反発力が弱いと、スクリーン版21と基板28との成す角度が小さくなり、スキージ25と紗24の成す角度(以下、「アタック角」と略記する)が、図6のように反発力が強い場合と比べて異なるため、印刷されるペースト27の量が異なり塗布膜29の膜厚が変化する。
【0014】
また、ペースト27の自重によってもスクリーン版21がたわむ可能性があり、アタック角の差がより大きくなる場合もある。さらに、印刷後の塗布膜29と紗24とが即座に離れず(版離れが悪く)、塗布膜29の膜厚がばらついたり、反発力が強い場所と弱い場所とでは塗布膜の膜厚が異なったりするため、塗布膜29の膜厚分布が悪くなる。
【特許文献1】特開2005−47066号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
近年、画像表示装置の大画面化、さらにはパネルの量産工程において、効率よくパネルを製造するための基板の多面取りなどによって、一度にスクリーン印刷する面積が大きくなり印刷スクリーンも大型化しており、一辺が3mを超えるスクリーン版も多く用いられている。印刷スクリーンが大型化すると、スクリーン版の中央部と端部の距離も遠くなるため、反発力の差がより大きくなり、基板全面にわたっての膜厚分布がさらにばらつくといった課題が発生する。
【0016】
本発明はこれら従来の課題に鑑みなされたものであり、大画面の画像表示装置の構成要素を形成する際のスクリーン印刷法において、膜厚分布を良好な状態とする印刷スクリーンと印刷方法および印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を実現するために本発明の印刷スクリーンは、四角形状のスクリーン版とそのスクリーン版を支持する支持体とを備えた印刷スクリーンであって、スクリーン版を支持する支持体をスクリーン版の4辺のうちの相対する2辺のみに設けている。このような構成により、支持体と平行方向の反発力を一定とすることが可能となる。
【0018】
また、上記目的を実現するために本発明の印刷方法は、基板上にスクリーン版を介して所定パターンを印刷する印刷方法であって、スクリーン版は四角形状を有するとともにスクリーン版の4辺のうちの相対する2辺のみに設けた支持体によって支持され、支持体と平行方向にスキージを配置し、そのスキージをスクリーン版上で支持体と直角方向に移動させている。このような方法により、スキージと平行方向に反発力を一定とし、大面積のスクリーン版を用いても全面で均一に印刷することが可能となる。
【0019】
さらに、スキージが移動する際の、スキージが移動する方向前方のスクリーン版と基板とが成す角度をスキージの移動開始から移動終了まで略同一とすることによりアタック角を全面で一定とし塗布膜の膜厚を均一化することが可能となる。
【0020】
さらに、スキージが移動する際の、スキージが移動する方向後方のスクリーン版と基板とが成す角度をスキージの移動開始から移動終了まで略同一とすることにより、版離れを良好に行うことが可能となる。
【0021】
また、上記目的を実現するために本発明の印刷装置は、基板上にスクリーン版を介して所定パターンを印刷する印刷装置であって、スクリーン版は四角形状を有するとともに、スクリーン版の四角の4辺のうちの相対する2辺のみを支持する一対の支持体と、スクリーン版上に支持体と平行配置されたスキージと、そのスキージをスクリーン版に押圧させながら移動させる第1の移動機構と、支持体を互いに反対方向に牽引する牽引機構とを備えている。
【0022】
このような構成とすることにより、スクリーン版の反発力を高めるとともに、さらに支持体を引っ張ることにより、支持体と平行方向の反発力を略同一とし、支持体と平行方向の反発力を制御することも可能となる。
【0023】
さらに、スキージが移動する際の、スキージが移動する方向前方のスクリーン版と基板とが成す角度をスキージの移動開始から移動終了まで略同一となるように、スキージ移動方向前方の支持体を上下に移動させる第2の移動機構をさらに具備することにより、スキージ前方の支持体を上下に移動させてアタック角を全面で一定とし塗布膜の膜厚を均一化することが可能となる。
【0024】
さらに、スキージが移動する際の、スキージが移動する方向後方のスクリーン版と基板とが成す角度をスキージの移動開始から移動終了まで略同一となるように、スキージ移動方向後方の支持体を上下に移動させる第3の移動機構をさらに具備することにより、版離れを良好に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、大画面の画像表示装置の構成要素を形成する際のスクリーン印刷法において、膜厚分布を良好な状態とする印刷スクリーンと印刷方法および印刷装置を提供することを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の一実施の形態による印刷スクリーン、印刷方法および印刷装置について図面を用いて説明する。
【0027】
まず、本発明の一実施の形態による印刷スクリーン、印刷方法および印刷装置を用いて作製するプラズマディスプレイパネル(以下、パネルと呼ぶ)について述べる。図1は、本発明の一実施の形態による印刷方法を用いて作製するパネル30の構造を示す分解斜視図である。ガラス製の前面板31上には、透明電極32およびバス電極33から構成される走査電極34および走査電極34と維持電極35とからなる表示電極対39と、遮光を行うブラックストライプ36とが互いに平行に複数形成されている。表示電極対39とブラックストライプ36を覆うように誘電体層37が形成され、その誘電体層37上に酸化マグネシウム(MgO)等からなる保護層38が形成されている。
【0028】
背面板40上にはデータ電極41が複数形成され、データ電極41を覆うように誘電体層42が形成され、さらにその上に井桁状の隔壁43が形成されている。そして、隔壁43の側面および誘電体層42上には赤色(R)、緑色(G)および青色(B)の各色に発光する蛍光体層44が設けられている。
【0029】
これら前面板31と背面板40とは、微小な放電空間を挟んで表示電極対39とデータ電極41とが交差するように対向配置され、その外周部はガラスフリット等の封着材によって封着されている。そして放電空間には、ネオンやキセノン等を含む放電ガスが所定の圧力で封入されている。
【0030】
放電空間は隔壁43によって複数の区画に仕切られており、表示電極対39とデータ電極41とが交差する部分に放電セルが配置されている。そしてこれらの放電セルが放電、発光することにより画像が表示される。なお、パネル30の構造は上述したものに限られるものではなく、例えばストライプ状の隔壁を備えたものであってもよい。
【0031】
つぎに、パネル30の製造方法について説明する。なお、基板としては、量産性に優れて低コスト化が可能な多面取りを行う基板(例えば、42吋サイズ8面取り基板など)を用い、複数枚同時に途中工程まで形成する。
【0032】
まず、ガラス製の前面板31上に、走査電極34および維持電極35とブラックストライプ36とを形成する。これらの走査電極34および維持電極35は透明電極32とバス電極33とから構成される。透明電極32は、薄膜プロセス等を用いて膜形成した後にフォトリソグラフィ法等により、パターンニングして形成される。
【0033】
バス電極33は、銀材料を含む感光性ペーストを用い、スクリーン印刷法により、透明電極32がパターン形成された基板上に上記感光性ペーストを転写した後、所望の温度で乾燥して膜形成を行う。その後、バス電極33のパターンを有するフォトマスクを介して紫外光を照射した後、アルカリなどを含む現像液で不要部分を除去し、所望の温度で焼成することにより、固化している。
【0034】
また、ブラックストライプ36も同様に、黒色顔料を含む感光性ペーストをスクリーン印刷法により形成して所望の温度で乾燥した後、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングし焼成することにより形成される。なお、バス電極33は、銀材料を含む感光性ペーストのみならず、黒色顔料を含む感光性ペーストと重ね合わせて複数層として形成しても良い。
【0035】
この後、走査電極34、維持電極35およびブラックストライプ36を覆うように前面板31上にガラス粉末等の誘電体材料を含む誘電体ペーストをスクリーン印刷法やダイコート法等により塗布して誘電体ペースト層を形成した後、所望の温度で乾燥する。その後焼成固化することにより、走査電極34、維持電極35およびブラックストライプ36を覆う誘電体層37が形成される。
【0036】
なお、誘電体層37は、単層で形成しても、複数層に分けて形成しても良い。つぎに、誘電体層37上に酸化マグネシウム(MgO)からなる保護層38を真空蒸着法やスクリーン印刷法、ダイコート法等により形成する。
【0037】
以上の工程により、前面板31上に所定の構成部材、すなわち表示電極対39、ブラックストライプ36、誘電体層37、保護層38が形成され、前面板31が完成する。なお、基板として多面取り基板を用いているため、いずれかの工程の間で割断を行い、単板状態にする必要がある。一般的には保護層38を形成する前に割断を行うが、これに限られるわけではない。
【0038】
一方、背面板40は次のようにして形成される。なお、基板としては、量産性に優れて低コスト化が可能な多面取りを行う基板(例えば、42吋サイズ8面取り基板など)を用い、複数枚同時に途中工程まで形成する。
【0039】
まず、ガラス製の背面板40上に、銀材料を含む感光性ペーストをスクリーン印刷法により転写した後、所望の温度で乾燥して膜形成を行う。その後、データ電極41のパターンを有するフォトマスクを介して紫外光を照射した後、アルカリなどを含む現像液で不要部分を除去して、所望の温度で焼成固化することにより、データ電極41を形成する。
【0040】
つぎに、データ電極41が形成された背面板40上にスクリーン印刷法等によりデータ電極41を覆うようにガラス粉末等の誘電体材料を含む誘電体ペーストを塗布し、所望の温度で乾燥して誘電体ペースト層を形成する。その後、誘電体ペースト層を焼成することにより誘電体層42を形成する。
【0041】
この後、誘電体層42上に隔壁材料を含む隔壁形成用ペーストをスクリーン印刷法やダイコート法等により塗布し、所望の温度で乾燥して隔壁ペースト層を形成する。その後所定の形状にパターニングすることにより、隔壁材料層を形成した後、所望の温度で焼成固化することにより、隔壁43を形成する。ここで、誘電体層42上に塗布した隔壁ペースト層をパターニングする方法としては、フォトリソグラフィ法やサンドブラスト法等を用いることができる。
【0042】
つぎに、隔壁43を形成した背面板40には、隣接する隔壁43間の誘電体層42上および隔壁43の側面に蛍光体材料を含む蛍光体ペーストをスクリーン印刷法やディスペンサー法等により塗布し、所望の温度で乾燥した後、所望の温度で焼成することにより、蛍光体層44が形成される。以上の工程により、背面板40上に所定の構成部材、すなわちデータ電極41、誘電体層42、隔壁43、蛍光体層44が形成され、背面板40が完成する。
【0043】
つぎに、スクリーン印刷法やインクジェット法またはディスペンサー法により、前面板31または背面板40の周囲の所定の位置に封着材を塗布し、封着材に含まれる樹脂成分を燃焼できる温度で仮焼成を行った後、前面板31と背面板40とを電極形成面側が向かい合うように対向配置させてパネル30を組み立てる。
【0044】
続いて、前面板31および背面板40の周囲を気密封着し、排気および放電ガス導入用の排気管を封着材によって気密封着する。そして、その排気管を通してパネル30内部を真空排気し、パネル30内部へネオンやキセノン等を含む放電ガスを所定の圧力で導入し、排気管を加熱して溶融することにより、排気管を閉塞して封じ切る。
【0045】
このようにして、ネオンとキセノンの混合ガスは、放電ガスとしてパネル30内部の放電空間に封入され、パネル30が完成する。完成したパネル30では、表示電極対39およびデータ電極41に映像信号にもとづく駆動電圧を選択的に印加して放電セル内に放電を発生させ、その放電によって発生した紫外線が各色の蛍光体層44を励起してR、G、Bの各色を発光させることによってカラー画像を表示している。
【0046】
図2は、パネル30の電極配列図であり、パネル30には、行方向に長いn本の走査電極SC1〜SCn(図1の走査電極34)およびn本の維持電極SU1〜SUn(図1の維持電極35)が配列されて列方向に長いm本のデータ電極D1〜Dm(図1のデータ電極41)が配列されている。そして、走査電極SCi(i=1〜n)および維持電極SUi(i=1〜n)と1つのデータ電極Dj(j=1〜m)とが交差した部分に放電セルが形成され、放電セルは放電空間内にm×n個形成されている。
【0047】
なお、図1に示すように、走査電極SCiと維持電極SUiとは互いに平行に対を成して形成されているために、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとの間に大きな電極間容量Cpが存在する。パネル30は、サブフィールド法、すなわち、1フィールド期間を複数のサブフィールドに分割した上で、発光させるサブフィールドの組み合わせによって階調表示を行う方法で駆動する。
【0048】
各サブフィールドは、初期化期間、書込み期間および維持期間を有し、初期化期間では初期化放電を発生し、続く書込み動作に必要な壁電荷を各電極上に形成する。書込み期間では、表示を行うべき放電セルにおいて選択的に書込み放電を発生し壁電荷を形成する。そして維持期間では、走査電極と維持電極とからなる表示電極対に交互に維持パルスを印加し、書込み放電を起こした放電セルで維持放電を発生させ、対応する放電セルの蛍光体層を発光させることにより画像表示を行う。
【0049】
上述したパネル30の製造方法においては、本発明の特徴とするスクリーン印刷法が用いられ、以下に本発明の実施の形態におけるスクリーン印刷法について説明する。
【0050】
図3は、本発明の一実施の形態による印刷スクリーンを示す概略図であり、説明を判りやすくするために、印刷スクリーン10と印刷装置のスキージ15およびスクレッパー16の各部材のみを図示して説明する。
【0051】
印刷スクリーン10は、スクリーン版11を互いに平行な2本の支持体12の間に担持して構成している。スクリーン版11は、ポリスチレンやSUSなどからなる糸を織って作成した紗14の上から、印刷領域以外の部分を乳剤13で保護することにより作成している。印刷装置に印刷スクリーン10を設置するときは、2本の支持体12を互いに平行に配置し、牽引機構を用いて相反する方向に支持体12を引っ張ることによりスクリーン版11を張る。このとき、2本の支持体12の平行度が十分でないとスクリーン版11に加わる支持体12と平行方向の反発力が不均等となり、スクリーン版11がねじれる恐れがあるので注意を必要とする。
【0052】
なお、印刷装置に設置するスキージ15およびスクレッパー16は、支持体12と平行方向に配置する。また、支持体12に担持されていない辺のスクリーン版11は、接着剤などで接着する端面処理が施してあり、紗14がほぐれないようにするとともに、スクリーン印刷時にペーストがスクリーン版11からこぼれ落ちないよう十分な幅を設けてある。
なお、端面処理は、担持されていないスクリーン版11の辺にフレキシブルなゴムを貼り付けるなどの方法でもよく、またペースト17のこぼれ落ちに対しては、担持されていないスクリーン版11の辺の周辺に土手を設けるなどの方法でもよく、本実施の形態に限られるものではない。
【0053】
図4は、本発明の一実施の形態によるスクリーン印刷法の動作を示す概略断面図であり、図4(a)に印刷開始直後、図4(b)に印刷終了直前の様子を示す。
印刷するペースト17を乳剤13の上にのせた後、スクレッパーで印刷領域全体に充填(コート)する。その後、スキージ15を第1の移動機構(図示せず)により、一定の圧力でスクリーン版11に押し当てながら、一定の速度で支持体12と平行方向に移動させることで、紗14の乳剤13がない領域である印刷領域からペースト17をガラス基板等の基板18に印刷して塗布膜19を形成する。
【0054】
ここで、スキージ15の進行方向前方のスクリーン版11と基板18との形成する角度Aが、印刷開始から印刷終了まで一定となるように、第2の移動機構(図示せず)を用いて支持体12をスキージ15の進行に従って下降させるとともに、スキージ15の進行方向後方のスクリーン版11と基板18との形成する角度Bも、印刷開始から印刷終了まで一定となるように、もう一方の支持体12を第3の移動機構(図示せず)を用いてスキージ15の進行に従って上昇させる。このことにより、アタック角、すなわち角度Aおよび角度Bを印刷開始時から印刷終了時までそれぞれ均一に保持することが可能となり、印刷の状態が常に一定となることから、膜厚ばらつきの少ない良質な塗布膜19を得ることができる。
【0055】
このように、本発明に係わる印刷スクリーン、印刷方法および印刷装置を用いると、図1に示すような前面板のバス電極33、ブラックストライプ36、誘電体層37、保護層38および背面板のデータ電極41、誘電体層42、隔壁43、蛍光体44などの構成要素をそれぞれの主材料として含有するペーストにより、塗布膜19をそれぞれ形成し、各構成要素に適した所望の温度および時間で乾燥を行い、ペースト膜を作成することにより、各構成要素における膜厚等のディメンジョンばらつきの少ない良好なパネル30を作成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上のように本発明は、大画面の画像表示装置を提供する上で有用な発明である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施の形態における印刷方法を用いて作製するパネルの構造を示す分解斜視図
【図2】同パネルの電極配列図
【図3】本発明の実施の形態における印刷スクリーンを示す斜視図
【図4】本発明の実施の形態における印刷方法の動作を示す概略断面図
【図5】従来の印刷スクリーンを示す斜視図
【図6】従来のスクリーン印刷法の動作を説明するための断面概略図
【図7】反発力が弱いときのスクリーン印刷法の動作を示す概略断面図
【符号の説明】
【0058】
10,20 印刷スクリーン
11,21 スクリーン版
12 支持体
13,23 乳剤
14,24 紗
15,25 スキージ
16,26 スクレッパー
17,27 ペースト
18,28 基板
19,29 塗布膜
22 スクリーン枠
30 プラズマディスプレイパネル
31 前面板
32 透明電極
33 バス電極
34 走査電極
35 維持電極
36 ブラックストライプ
37 誘電体層
38 保護層
39 表示電極対
40 背面板
41 データ電極
42 誘電体層
43 隔壁
44 蛍光体層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
四角形状のスクリーン版と前記スクリーン版を支持する支持体とを備えた印刷スクリーンであって、前記支持体を前記スクリーン版の4辺のうちの相対する2辺のみに設けたことを特徴とする印刷スクリーン。
【請求項2】
基板上にスクリーン版を介して所定パターンを印刷する印刷方法であって、
前記スクリーン版は四角形状を有するとともに前記スクリーン版の4辺のうちの相対する2辺のみに設けた支持体によって支持され、前記支持体と平行方向にスキージを配置し、前記スキージを前記スクリーン版上で前記支持体と直角方向に移動させることを特徴とする印刷方法。
【請求項3】
前記スキージが移動する際の、前記スキージが移動する方向前方の前記スクリーン版と前記基板とが成す角度を前記スキージの移動開始から移動終了まで略同一としたことを特徴とする請求項2に記載の印刷方法。
【請求項4】
前記スキージが移動する際の、前記スキージが移動する方向後方の前記スクリーン版と前記基板とが成す角度を前記スキージの移動開始から移動終了まで略同一としたことを特徴とする請求項2に記載の印刷方法。
【請求項5】
基板上にスクリーン版を介して所定パターンを印刷する印刷装置であって、
前記スクリーン版は四角形状を有するとともに、前記スクリーン版の4辺のうちの相対する2辺のみを支持する一対の支持体と、前記スクリーン版上に前記支持体と平行配置されたスキージと、前記スキージを前記スクリーン版に押圧させながら移動させる第1の移動機構と、前記支持体を互いに反対方向に牽引する牽引機構とを具備することを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
前記スキージが移動する際の、前記スキージが移動する方向前方の前記スクリーン版と前記基板とが成す角度を前記スキージの移動開始から移動終了まで略同一となるように、前記スキージ移動方向前方の前記支持体を上下に移動させる第2の移動機構をさらに具備することを特徴とする請求項5に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記スキージが移動する際の、前記スキージが移動する方向後方の前記スクリーン版と前記基板とが成す角度を前記スキージの移動開始から移動終了まで略同一となるように、前記スキージ移動方向後方の前記支持体を上下に移動させる第3の移動機構をさらに具備することを特徴とする請求項5に記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−255317(P2009−255317A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−104428(P2008−104428)
【出願日】平成20年4月14日(2008.4.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】