印刷制御装置、印刷制御方法及び印刷制御プログラムを記録した媒体
【課題】 蹴飛ばし補正とノズル毎の特性むらの補正を両立させることができなかった。
【解決手段】 少なくとも印刷媒体の種類と、縁なし印刷と縁あり印刷かを指定する印刷条件に基づき、ステップS100にて、蹴飛ばし補正がある1パスでの真ん中で生じるように位置合わせ量を決定し、ステップS110では、同位置合わせ量だけ上端処理を早めることにより、ステップS120の通常送り部の印刷処理の際に生じる蹴飛ばし補正位置は必ず1パスの真ん中で生じ、また、同位置合わせ量だけ上端処理での印刷開始ラスタを遅らせることにより、継続して行われるステップS110の上端処理とステップS120の通常送り部とステップS130での下端処理では、濃度補正の補正値がずれることなく適用されることになるため、蹴飛ばし補正とノズル毎の特性むらの補正を両立させ、精度の良い印刷を実現することが可能となる。
【解決手段】 少なくとも印刷媒体の種類と、縁なし印刷と縁あり印刷かを指定する印刷条件に基づき、ステップS100にて、蹴飛ばし補正がある1パスでの真ん中で生じるように位置合わせ量を決定し、ステップS110では、同位置合わせ量だけ上端処理を早めることにより、ステップS120の通常送り部の印刷処理の際に生じる蹴飛ばし補正位置は必ず1パスの真ん中で生じ、また、同位置合わせ量だけ上端処理での印刷開始ラスタを遅らせることにより、継続して行われるステップS110の上端処理とステップS120の通常送り部とステップS130での下端処理では、濃度補正の補正値がずれることなく適用されることになるため、蹴飛ばし補正とノズル毎の特性むらの補正を両立させ、精度の良い印刷を実現することが可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷制御装置、印刷制御方法及び印刷制御プログラムを記録した媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタでは、色インクの吐出方向がノズル毎に微妙なずれが生じているため、バンディングと言われる症状が発生することがある。これを解消するための従来の印刷制御装置として、特許文献1に示すものが知られている。同公報に示すものでは、CCDセンサでテストパターンを読み取り、ノズル毎の特性むらを誤差拡散の重み付け係数で補正している。
【特許文献1】特開平2−54676号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
印刷装置は、印刷ヘッドの上流側と下流側でそれぞれ一対の搬送ローラで印刷媒体(印刷用紙)を搬送している。しかし、印刷に伴って印刷媒体が下流側に搬送されていくと、ある時点で上流側の搬送ローラを通過し、下流側の搬送ローラだけで挟持されることになる。この瞬間(蹴飛ばしの瞬間)、印刷媒体の搬送量は目標値からずれる現象が生じる。
【0004】
一方、印刷媒体の種類など、印刷条件ごとに対応した補正値を用意しておき、同補正値を反映させた目標搬送量を適用する(以下、単に蹴飛ばし補正と呼ぶ)ことで症状を改善できることが分かった。また、これを適用させるにあたり、蹴飛ばしの瞬間がある搬送のちょうど真ん中で起きるようにさせると最も現象を回避できる。
【0005】
印刷装置の印刷ヘッドに形成されているノズルの間隔(ノズルピッチ)が印刷時のラスタの間隔(ラスタピッチ)と異なる場合、効率的、かつ品質を上げるためには、印刷媒体の先端部分(最下流側)でラスタピッチに相当する細かな搬送による印刷(上端処理と呼ばれる)を行い、その後はノズルピッチよりも一ラスタピッチ分だけ多い搬送による印刷(通常送り部と呼ばれる)を行い、印刷媒体の後端部分(最上流側)で再度ラスタピッチに相当する搬送による印刷(下端処理と呼ばれる)を行う。
【0006】
蹴飛ばしの瞬間は印刷媒体の長さなどの印刷条件によって一意に決まるので、一回の搬送の際の真ん中で起きるようにさせるためには、上端処理の開始位置を調整することで実現可能である。このとき、印刷開始位置は印刷媒体との関係でずれないように、本来のラスタ位置よりも遅らせた位置としなければならない。なお、搬送は一定方向のみ可能であるため、調整は上端処理の開始位置を早める以外に不可能である。
【0007】
しかしながら、上述したノズル毎の特性むらを補正する従来の手法においては、各ラスタと補正手法が密接に対応している。このため、上端処理の開始位置を変えることで各ラスタ位置を変える必要がある場合には適用できないという課題があった。
【0008】
本発明は、蹴飛ばし補正もノズル毎の特性むらの補正も両立させることが可能な印刷制御装置、印刷制御方法および印刷制御プログラムを記録した媒体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、主たる発明は、
所定の印刷媒体を副走査方向に搬送し、印刷ヘッドを用いて同印刷媒体上に記録を行うプリンタに対して、同印刷媒体の上記印刷ヘッドに対する相対的な複数の目標搬送位置に対応した複数の送り量の補正値を保持し、目標搬送位置に対応させて上記プリンタに補正された搬送を行わせる第一の搬送補正手段と、
上記プリンタでの印刷の際、上端処理、通常送り部、下端処理のそれぞれにおいて、予め測定した濃度の偏差データに基づいて所定のラスタ毎に濃度の補正を行なわせる濃度補正手段と、
上記プリンタにおける搬送機構と上記印刷媒体の端部との相対位置関係で生じる送り誤差のデータに基づいて上記プリンタで補正された搬送を行わせる第二の搬送補正手段とを備える印刷制御装置であって、
適用される印刷条件に基づき、上記第二の搬送補正手段で適用する補正が予め特定された搬送タイミングで適用されるように、上記上端処理が開始されるタイミングを繰り上げる制御をしつつ、同上端処理の際に印刷が開始されるラスタを繰り下げる制御をするとともに、上記濃度補正手段に対しては同繰り下げたラスタの分だけ以後の濃度の補正を適用するラスタをずらさせる位置合わせ量適用手段とを具備する構成としてある。
【0010】
なお、本発明は必ずしも実体のある装置に限られる必要はなく、その方法としても機能することは容易に理解できる。
【0011】
また、本発明は印刷制御装置単独で存在する場合もあるし、ある機器に組み込まれた状態で利用されることもあるなど、発明の思想としてはこれに限らず、各種の態様を含むものである。従って、ソフトウェアであったりハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。
【0012】
発明の思想の具現化例としてソフトウェアとなる場合には、かかるソフトウェアを記録した記録媒体上においても当然に存在し、利用されるといわざるをえない。むろん、その記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。また、一次複製品、二次複製品などの複製段階については全く問う余地無く同等である。その他、供給方法として通信回線を利用して行なう場合でも本発明が利用されていることにはかわりない。
【0013】
さらに、一部がソフトウェアであって、一部がハードウェアで実現されている場合においても発明の思想において全く異なるものではなく、一部を記録媒体上に記憶しておいて必要に応じて適宜読み込まれるような形態のものとしてあってもよい。
【0014】
本発明をソフトウェアで実現する場合、ハードウェアやオペレーティングシステムを利用する構成とすることも可能であるし、これらと切り離して実現することもできる。例えば、各種の演算処理といっても、その実現方法はオペレーティングシステムにおける所定の関数を呼び出して処理することも可能であれば、このような関数を呼び出すことなくハードウェアから入力することも可能である。そして、実際にはオペレーティングシステムの介在のもとで実現するとしても、プログラムが媒体に記録されて流通される過程においては、このプログラムだけで本発明を実施できるものと理解することができる。
【0015】
また、本発明をソフトウェアで実施する場合、発明がプログラムを記録した媒体として実現されるのみならず、本発明がプログラム自体として実現されるのは当然であり、プログラム自体も本発明に含まれる。
【0016】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0018】
上記主たる発明の構成によれば、第一の搬送補正手段は、所定の印刷媒体を副走査方向に搬送し、印刷ヘッドを用いて同印刷媒体上に記録を行うプリンタに対して、同印刷媒体の上記印刷ヘッドに対する相対的な複数の目標搬送位置に対応した複数の送り量の補正値を保持し、目標搬送位置に対応させて上記プリンタに補正された搬送を行わせる。また、濃度補正手段は、上記プリンタでの印刷の際、上端処理、通常送り部、下端処理のそれぞれにおいて、予め測定した濃度の偏差データに基づいて所定のラスタ毎に濃度の補正を行なわせる。また、第二の搬送補正手段は、上記プリンタにおける搬送機構と上記印刷媒体の端部との相対位置関係で生じる送り誤差のデータに基づいて上記プリンタで補正された搬送を行わせる。
【0019】
ここで、位置合わせ量適用手段は、適用される印刷条件に基づき、上記第二の搬送補正手段で適用する補正が予め特定された搬送タイミングで適用されるように、上記上端処理が開始されるタイミングを繰り上げる制御をしつつ、同上端処理の際に印刷が開始されるラスタを繰り下げる制御をするとともに、上記濃度補正手段に対しては同繰り下げたラスタの分だけ以後の濃度の補正を適用するラスタをずらさせる。
【0020】
また、上記プリンタを制御するにあたり、ハーフトーンモジュールが、上記プリンタとは異なる色空間における多階調の画像データを入力して同プリンタの色空間における多階調の画像データに色変換するとともに、変換後の同画像データを上記プリンタで記録可能な低階調の印刷データに階調変換し、インターレースモジュールが、上記低階調の印刷データを入力し、上記印刷ヘッドが上記主走査と福走査をしながら記録する際のラスタデータを生成し、上記濃度補正手段は、上記ハーフトーンモジュールが上記プリンタの色空間へ色変換した画像データに対してラスタ位置に対応した濃度の補正を行わせるものであり、上記位置合わせ量適用手段にて適用されるラスタの分だけ上記ラスタ位置を繰り下げて上記濃度の補正を行わせる。これにより、位置合わせ量適用手段は、実質的に上記濃度補正手段に対して上記繰り下げたラスタの分だけ、それ以後の濃度の補正を適用するラスタをずらさせることとなる。
【0021】
第二の搬送補正手段が補正することとなる現象の一例は、上記プリンタにおける搬送機構の搬送ローラが上記印刷媒体を挟持する状態から挟持しない状態へ変化する際に生じる搬送量のずれが相当する。このような現象を前提として、上記位置合わせ量適用手段は、搬送ローラが上記印刷媒体を挟持する状態から挟持しない状態へ変化するタイミングが、上記通常送り部での一回の搬送の概略中央で生じるように上記上端処理が開始されるタイミングを繰り上げる制御をしつつ、同上端処理の際に印刷が開始されるラスタを繰り下げる制御をする構成とすることができる。
【0022】
このように、位置合わせ量適用手段が上端処理の際に印刷が開始されるラスタを繰り下げることにより、それ以降の搬送タイミングとラスタとの関係がずれていき、搬送ローラが上記印刷媒体を挟持する状態から挟持しない状態へ変化するタイミングを上記通常送り部での一回の搬送の概略中央で生じるようにすることが可能となる。
【0023】
上記タイミングを予め計算するための印刷条件は各種のものが存在するが、少なくとも上記位置合わせ量適用手段に、上記印刷条件として、縁あり印刷か、縁なし印刷かの情報と、印刷媒体の種類を取得するように構成して実現することができる。
【0024】
縁あり印刷か縁なし印刷かにより、印刷媒体に対する上端処理を開始する相対的な位置が決まり、また、印刷媒体の種類は同印刷媒体の長さに相当し、印刷媒体の後端側からの所定距離で上記タイミングとなる。従って、位置合わせ量適用手段がこれらの情報を取得することにより、上記タイミングが所定の時点で発生させることができるようになる。
【0025】
以下、添付図面にもとづいて本発明の実施形態を
(1)概略構成
(2)第一の搬送補正手段
(3)濃度補正手段
(4)第二の搬送補正手段
(5)濃度補正手段の問題点
(6)印刷処理の流れ
の順序で説明する。
【0026】
(1)印刷システムの概略構成
図1は、本発明の一実施形態にかかる印刷制御装置が適用される印刷システムをブロック図により示している。
【0027】
同図において、コンピュータ10は、パーソナルコンピュータなどが該当する。ハードウェアとしてCPU、ROM、RAMに加え、図示していないハードディスクなどの外部記憶装置、光学記憶媒体読み取り装置などを備え、入力機器としてキーボード、マウスなどを備え、表示装置としてディスプレイなどを備えている。
【0028】
コンピュータ10は、ソフトウェアとハードウェアとが有機的に連携して所定の機能を実現する。本実施形態では、ソフトウェア構成として、図に示すようなプリンタドライバ20、アプリケーション30、補正データ作成ソフト40などを備えている。
【0029】
アプリケーション30は、1ピクセルにつきRGB各色についてそれぞれ256階調の階調データからなるドットマトリクス状の画像データを印刷対象として、プリンタドライバ20に出力する。コンピュータ10が主に利用する色空間はRGB色空間であるが、プリンタ50はCMY色空間を採用しているため、プリンタドライバ20はRGBの色空間の画像データをCMYの色空間の印刷データに色変換して同プリンタ50に出力する。また、コンピュータ10では256階調という多階調の画像データを扱うが、プリンタ50は色インクを一定の大きさのドットとして付すか否か、あるいは数サイズのドットを付すか否かの記録しかできない。このため、プリンタドライバ20は多階調から低階調へ階調変換して同プリンタ50に出力する。このような色変換と階調変換は、プリンタドライバ20内のハーフトーンモジュール21が担う。
【0030】
インターレースモジュール22は、ハーフトーンモジュール21が生成した印刷データに基づき、プリンタ50に対して同印刷データを含む印刷コマンドを出力する。ここで、プリンタ50の概略構成について説明する。
【0031】
プリンタ50は、CPUやROMやRAMを備えて主に制御を司る制御ユニット51と、色インクを吐出するヘッドユニット52と、同ヘッドユニット52を印刷媒体に対してその流れ方向と直行する主走査方向に往復動させるキャリッジユニット53と、同印刷媒体を上記流れ方向である副走査方向に搬送する搬送ユニット54と、センサ群55を備えている。なお、プリンタ50はこれらの他にもコンピュータ10と接続するためのインターフェイス56や、不揮発性のメモリ57を備えている。印刷媒体は、一般的には印刷用紙であるが、この他にも紙以外の樹脂媒体など、各種の媒体に適用可能であることはいうまでもない。本実施形態においては、ヘッドユニット52を印刷媒体の送り方向(副走査方向)に対して直交する方向(主走査方向)に往復動させて印刷を行なうものであるが、いわゆるラインヘッドプリンタのように印刷ヘッドを固定しておいて印刷媒体だけを送って印刷を行なうものにおいても本発明は適用可能である。
【0032】
図2は印刷ヘッドのノズルを示す図である。ヘッドユニット52は、同図に示すように各色インクごとに割り当てられた複数の吐出ノズルを備えた印刷ヘッド52aを備えている。図において、KCMYは、それぞれ黒インク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインクが割り当てられたノズル列を示しており、#1〜#90は各ノズルに割り当てられた番号である。ここで最下流側のものが#1ノズルであり、最上流側のものが#90ノズルである。ノズルとノズルの間隔がノズルピッチであり、実際に印刷するときの副走査方向のラスタ間の間隔がラスタピッチとなる。本実施形態では、ノズルピッチが1/90インチであるのに対して、ラスタピッチが1/720インチとしている。このようにノズルピッチとラスタピッチとが異なるため、インターレースモジュール22はハーフトーンモジュール21が生成した印刷データを受け取り、各ノズルで印刷可能な所定間隔のラスタデータを選択し、印刷ヘッド52aに対して出力することになる。なお、より詳細な選択方法などについてはここでは省略する。
【0033】
キャリッジユニット53は印刷ヘッド52aを主走査方向に往復動させるものであり、具体的な機構については省略するが、制御ユニット51にて制御され、印刷ヘッド52aから吐出される色インクのドットが印刷媒体上における主走査方向の所定位置に付着されるように吐出タイミングと同期して往復動動作する。
【0034】
図3は、搬送機構の概略構成図である。搬送ユニット54は、搬送機構を備えている。搬送機構の主な構成は同図に示すような印刷ヘッド52aを間にして印刷媒体を上流側と下流側でそれぞれ挟持して保持しつつ、所定量だけ回転して同印刷媒体を搬送する上流側搬送ローラと54a、下流側搬送ローラ54bとを備えている。なお、便宜上、上流側を単に搬送ローラ54aと呼び、下流側を排紙ローラ54bと呼ぶ。印刷媒体は上流側から下流側へと搬送されるため、最初に搬送ローラ54aにて挟持され、次いでその先端が排紙ローラ54bに至ったときから両方の搬送ローラ54a,54bにて挟持され、さらに搬送されて後端が搬送ローラ54aを通過した時点から排紙ローラ54bだけで挟持されることになる。
【0035】
図4は、搬送機構で蹴飛ばしが生じる状況を示す図である。同図に示すように、印刷媒体の後端が搬送ローラ54aの挟持を離れる時点でそれまでの安定した搬送状態から不安定な状態に移ることになり、この挙動を蹴飛ばしと呼ぶ。
【0036】
図5は、蹴飛ばしの発生する前後での搬送精度(目標搬送位置とのずれを図示)を示しており、+側で実際の搬送位置が目標搬送位置よりも下流側となって搬送量が多くなった状態を示し、−側で実際の搬送位置が目標搬送位置よりも上流側となって搬送量が少なくなった状態を示している。蹴飛ばし直後は実際の搬送位置が目標搬送位置に至らない状態となることが分かる。
【0037】
本実施形態では、第二の搬送補正手段がこの蹴飛ばしによる精度の乱れを解消するため、所定の補正値を搬送量に適用することになる。すなわち、蹴飛ばしが発生するタイミングを含む搬送期間に同補正値を搬送量に加算して本来必要となる目標搬送位置よりもさらに先へ搬送させる指示を出すことにより、実際に蹴飛ばしによって生じる搬送量の不足を相殺させる。
【0038】
ここでさらなる精度の向上のためには蹴飛ばしが発生するタイミングがある搬送期間の真ん中(概略中央)で発生することが望ましいことが分かった。このため、後に詳述するように位置合わせ補正量を適用することになる。
【0039】
(2)第一の搬送補正手段
ところで、搬送ユニット54における搬送機構には定常時においても送り量に誤差が生じていることが分かった。非常に微少な送り誤差であるが、ラスタピッチがより狭小となり高精細な印刷を行うためには、かかる微少な送り誤差の解消も重要な要素となっている。そこで、プリンタ50にて所定の測定用パターンを印刷し、これをスキャナ60にて高精細に読み取り、読み取って得られた画像データをコンピュータ10にて処理することで上記送り誤差の解消を図るための送り量の補正値を得ることにする。かかる処理を図1に示す補正データ作成ソフト40で実現する。
【0040】
図6は測定用パターンの一例を示しており、補正データ作成ソフト40による制御のもとで、プリンタ50は所定の印刷媒体に対して搬送ローラ54aを1/4回転ずつさせつつ、印刷ヘッド52aにおける所定のノズル、例えば#90ノズルだけを使用して色インクを吐出させ、主走査方向にラインを印刷する。これを印刷媒体の先端から後端にかけて繰り返すことで、同図に示すように一定の間隔毎にラインが印刷される。部位によってラインの長さを変更しているのは別の目的があるが、ここでは省略する。
【0041】
送り誤差が生じている場合、現実には各ラインの間隔は一定ではなく、印刷媒体が徐々に搬送されていく際のそれぞれの搬送位置に対応したずれが生じている。補正データ作成ソフト40はスキャナ60で読み取られた画像データに基づき、各種の読み取り誤差を解消する処理を経て得られる目標搬送位置(L1〜)と実際の搬送位置とのずれを求める。そして、各目標搬送位置毎に送り量の補正値を算出し、算出した補正値をプリンタ50のメモリ57に書き込む。ここで、目標搬送位置は印刷媒体の先端からの距離であり、送り量の補正値は同目標位置にて増減させるべき送り量である。なお、ある目標搬送位置と次の目標搬送位置の間に適用すべき送り量の補正値は比例配分とすることが一適用例であるが、より具体的な適用方法についてはここでは省略する。
【0042】
プリンタ50にて記憶されている複数の目標搬送位置と、その送り量の補正値に基づき、印刷時における個々の目標搬送位置に応じて適用すべき補正値を割り出して適用させるのがインターレースモジュール22の第一の搬送補正手段である。インターレースモジュール22はハーフトーンモジュール21が生成した印刷データに基づいてプリンタ50に対して印刷コマンドを出力するが、このときには搬送機構に対する紙送りの搬送指示も含まれている。このため、同第一の搬送補正手段が割り出した補正値を加算してプリンタ50に紙送りの搬送指示を出せば、送り誤差が相殺されて本来の目標搬送位置へ送り誤差を生じることなく搬送させることが可能となる。
【0043】
上述した第二の搬送補正手段は、このインターレースモジュール22が把握する印刷媒体の搬送位置に基づき、上記蹴飛ばしが発生するタイミングを間に挟む搬送期間のときに蹴飛ばしの補正値を搬送量に加算させることになる。
【0044】
(3)濃度補正手段
プリンタドライバ20は、このほかにBRSモジュール23を備えている。BRSモジュール23は濃度補正手段を構成するものであり、ここで同濃度補正手段が実現する濃度補正について説明する。印刷ヘッド52aの各ノズルの吐出方向にはむらがある。すなわち、あるノズルからは定常的に上流側に向けて色インクが吐出され、あるノズルからは定常的に下流側に向けて色インクが吐出されることで、均等に印刷を行っているつもりでも実際には印刷結果に濃淡が表れるといった症状となる。プリンタ50で印刷する際、現実には各ラスタとノズルとの位置関係は一意的に決まってくるため、測定用パターンを印刷させ、上記濃淡のむらを測定し、同むらを解消するように予め印刷データの側に補正値を反映させておけば、以後の印刷時にはこのような濃淡のむらを防ぐことが可能となる。
【0045】
図7はこの測定用パターンを示している。各色インクを割り当てられるノズル列ごとに副走査方向に延び、主走査方向に並ぶ、複数の濃淡からなるグラデーションパターンとなっている。より具体的には、図面上の左方からKインクが割り当てられるノズル列を使用し、印刷しない領域、最も濃度の薄い領域、中間の濃度の領域、最も濃度の濃い領域を印刷し、続いてCインクが割り当てられるノズル列、Mインクが割り当てられるノズル列、Yインクが割り当てられるノズル列で同様のグラデーションパターンを印刷する。ここで複数の濃度のパターンを印刷するのは各濃度毎に現れる濃淡のむらに違いが生じているからである。
【0046】
測定用パターンを印刷させることになる印刷データは印刷媒体上で下端から上流まで一定であるが、印刷時における搬送は印刷ヘッド52aと印刷媒体との相対的な位置関係によって三つのパターンに分かれている。
【0047】
図8は、この三つのパターンに相当する上端処理と、通常送り部と、下端処理のそれぞれを概略的に示している。同図では、理解の容易のため、ノズルピッチをラスタピッチの4倍とし、ノズル数は簡易的に4つとしている。本来、印刷媒体が搬送され、印刷ヘッドは搬送方向に対しては相対的に固定位置にあるが、印刷媒体を搬送させたときの印刷ヘッドとの相対位置が理解できるように、印刷ヘッドの側を上方から下方に向けて印刷媒体の搬送量だけずらしていくように示している。
【0048】
上述したようにノズルピッチとラスタピッチとが異なっており、また、印刷媒体の上端と下端とで印刷ヘッドと印刷媒体とが干渉しないようにさせる必要がある。このため、全ラスタを埋めるようにするには印刷ヘッド52aを主走査方向に往復動させる範囲を所定回数にわたってラップさせる必要がある。図に示す例では、ほぼラスタピッチ毎に印刷媒体を搬送させる上端処理と呼ばれる印刷処理と、ノズルピッチとラスタピッチの和だけ印刷媒体を搬送させる通常送り部と呼ばれる印刷処理と、再度ほぼラスタピッチ毎に印刷媒体を搬送させる下端処理と呼ばれる印刷処理とにおいて、それぞれでラップする印刷ヘッドの位置を示している。むろん、ノズルの数やピッチに応じて具体的な印刷処理には違いが出てくるが、概略的にはかかる分類となる。
【0049】
測定用パターンの印刷時には、実際の印刷媒体の上端と下端にかかわらず、同印刷媒体の中に収まる範囲で、上記グラデーションパターンの印刷データを使用し、上端処理と、通常送り部と、下端処理のそれぞれの印刷処理で印刷を行う。
【0050】
そして、得られた印刷物をスキャナ60で読み取り、上端処理と、通常送り部と、下端処理のそれぞれにおいて、各濃度毎、各ラスタ毎に生じている濃淡を測定する。理論的には各ラスタ毎であるが、現実には複数のラスタ単位で濃淡を計測するようにしても良い。この測定結果から、上端処理での各ラスタ単位での濃淡、通常送り部での各ラスタ単位での濃淡、下端処理での各ラスタ単位での濃淡が分かる。このように濃淡が生じることを防ぐべく、本実施形態では予め濃くなる部分の印刷データを薄くなるように補正し、また、薄くなる部分の印刷データを濃くなるように補正することで、実際の印刷結果で濃淡のずれを相殺させることにする。目標濃度の決め方、およびその目標濃度と印刷結果との差に基づく補正値の決め方についての具体的手法の説明はここでは省略する。結果として得られるのは、上端処理と、通常送り部と、下端処理での各ラスタ毎の濃淡の補正値であり、印刷データの多階調での階調値と、それに対応する補正後の階調値のテーブルとして補正値を保持することになる。なお、図7に示すものは四段階の濃度にすぎず、印刷データの階調数分だけはないので、不足している階調値については公知の補間演算を利用して特定する。
【0051】
このような補正値は各プリンタ50毎に個体差があるので、各プリンタ50に配置されているメモリ57に記憶され、印刷に際してプリンタドライバ20がプリンタ50と通信して同補正値を読み込むことになる。
【0052】
(4)第二の搬送補正手段
図9は第二の搬送補正手段について説明する図である。
上述したように、印刷の際には上端処理での印刷処理と、通常送り部での印刷処理と、下端処理での印刷処理が行われる。ある印刷媒体に縁なし印刷を行う場合、図に示すように用紙サイズよりも大きな領域を印刷領域として設定する。そして、この印刷領域の全範囲を印刷ヘッド52aのノズルが網羅するように印刷処理は行われる。仮想的な印刷領域の上端から印刷を開始するためには、上端処理は印刷媒体に対して図に示すような相対位置関係となる位置(印刷開始ラスタ)から印刷を開始する。そして、通常送り部での印刷処理で全ラスタをカバーできる位置となったところから通常送り部での印刷処理が開始される。そして、印刷媒体の後端に近くなったところでは仮想的な印刷領域の後端まで印刷ヘッド52aのノズルが網羅するように下端処理での印刷処理が行われる。
【0053】
図に示すように上端処理を単に印刷領域の上端に合わせて印刷開始ラスタを決めるとすると、蹴飛ばし位置は通常送り部内のある1パスにおける搬送範囲の偏った位置で発生することになる。上述したように蹴飛ばしを補正するためにはこのような偏った位置で発生するよりもある1パスにおける搬送範囲の真ん中(概略中央)で発生させるのが好ましい。
蹴飛ばし位置は印刷媒体の後端からの距離で決まっているから、これがある1パスにおける搬送範囲の真ん中で発生させるようにするためには、上端処理の開始位置を早めればよいことが分かる。なお、印刷媒体は戻せないので、蹴飛ばし位置がある1パスにおける搬送範囲の真ん中よりも上流側で発生するようであれば、次の1パスの真ん中で発生させるように上端処理の開始位置を早めざるを得ない。
【0054】
図10はこのように上端処理の開始位置を早めることで蹴飛ばし位置がある1パスにおける搬送範囲の真ん中となるように調整した状態を示している。ただし、単に上端処理を早めると印刷領域もずれてしまうので、印刷領域をずらさないようにするためには、上端処理の開始位置は早めるものの印刷開始ラスタはその分だけ遅らせた位置にしなければならない。この遅らせる量が位置合わせ量であり、図中では同領域をマスクと呼んでいる。
【0055】
ところが、印刷領域は印刷条件によって変動する。
図11は、余白を3mmに設定する縁あり印刷の例を示している。ここでも蹴飛ばし位置がある1パスにおける搬送範囲の真ん中となるように上端処理の開始位置を調整しつつ、印刷領域がずれないように、上端処理の中では印刷開始ラスタをその分だけ遅らせている。そして、この際の位置合わせ量は上述した縁なし印刷の場合のものとは異なっている。このように印刷条件によって上端処理の開始位置と、印刷開始ラスタを調整することで蹴飛ばしの補正は実現できる。
【0056】
インターレースモジュール22が管理する目標搬送位置は上端処理や通常送り部を実施しつつも毎回の搬送時に設定されるものである。従って、第一の搬送補正手段で各目標搬送位置に応じた送り量の補正値を反映させつつ、第二の搬送補正手段が同目標搬送位置の情報に基づいてある搬送期間においてはその補正値を重ねて反映させることは、互いに支障とならない。
【0057】
(5)濃度補正手段の問題点
しかし、濃度補正手段は上端処理と通常送り部と下端処理のそれぞれの各ラスタでの濃淡の補正を行なうものである。このため、上端処理の開始位置を早めつつ、印刷開始ラスタを遅らせたとき、印刷領域でのラスタ位置に対応する濃淡処理の補正値を適用すると、濃淡を測定したときに使用していたノズルと、調整を行って印刷に使用しているノズルとが対応しなくなる。本発明はこのような場合のノズルのずれによって本来の濃度補正手段が機能しなくなることを防止する。
【0058】
図12はその原理を概略的に示している。本来、濃淡の現れ方はノズルの使用に対応しているため、上端処理、通常送り部、下端処理と続く印刷処理において、印刷開始ラスタとは無関係に最初の上端処理の開始位置を基準とするラスタ位置に基づいて補正値を適用する。従って、縁なし印刷時、蹴飛ばし補正を行なう上で位置合わせ量が必要となった場合は、実際の印刷のラスタ位置は上記位置合わせ量だけずれることになり、濃度補正手段は実際の印刷のラスタ位置に対して同位置合わせ量だけずれたラスタ位置に適用すべき補正値を出力することになる。また、余白3mmの印刷時に必要となる位置合わせ量についても、実際の印刷のラスタ位置は同位置合わせ量だけずれることになり、濃度補正手段は実際の印刷のラスタ位置に対して同位置合わせ量だけずれたラスタ位置に適用すべき補正値を出力することになる。
【0059】
(6)印刷処理の流れ
図13はかかる印刷制御をコンピュータにて実現するためのプログラムが相当するフローチャートを示している。このフローチャートは、コンピュータ10にてソフトウェアで実現するプリンタドライバ20が各種のモジュールの機能を実行する際に行う印刷制御を概略的に示したものであり、主にインタレースモジュール22での処理プログラムに相当する。
【0060】
ステップS100は、印刷条件を取得して行われる一連の処理である。印刷条件としては、蹴飛ばし補正に対応するため、少なくとも印刷媒体の種類(印刷媒体の長さ情報を間接的に取得)と、印刷時の余白の情報(縁なし印刷、縁あり印刷での余白)が必要である。
【0061】
図14はこの二つの印刷条件を取得するためのユーザーインターフェイス画面の一例を示している。図面上の上方にて印刷媒体の種類を特定し、図面上の下方にて縁なし印刷か縁あり印刷かの選択、および縁あり印刷であればその余白を指定できる。指定された結果は上述したように印刷条件として取得される。これらの印刷条件は上端処理の開始位置の決定に必要であり、位置合わせ量の決定に利用される。ただし、これらは蹴飛ばし位置の補正で必要になる最小限の情報であり、第一の搬送補正手段や濃度補正手段では、印刷媒体の種類、印刷品質など各種の条件によって補正値が変わってくるため、他の印刷条件も取得される。
【0062】
より具体的には、ステップS102にて、蹴飛ばし補正位置と補正量を取得する。ここではプリンタ50と通信をし、プリンタ50のメモリ57に記録されている蹴飛ばしが発生する位置である補正位置と、印刷条件に対応して予め測定して記録されている補正値を取得する。ステップS106では、第一の搬送補正手段で適用するための目標搬送位置とそれに対応した送り量の補正値を取得する。ステップS108では、蹴飛ばし補正位置と、印刷媒体の長さ、縁なし印刷や縁あり印刷といった印刷条件に基づいて位置合わせ量を決定する。
【0063】
次のステップS110は上端処理の一連の処理である。上端処理の開始にあたり、アプリケーションが印刷対象となる画像データを生成してプリンタドライバ20に出力し、ハーフトーンモジュール21が同画像データを色変換、階調変換してハーフトーン化した印刷データをインターレースモジュール22に出力できるようになっていることが必要である。ただし、上述したように位置合わせ量が決まらないとBRSモジュール23での濃度補正手段は濃度補正の補正値を出力できない。
【0064】
このため、プリンタドライバ20内部では、ハーフトーンモジュール21が印刷データを生成する前に印刷条件に基づいてインターレースモジュール22が位置合わせ量を決定し、同位置合わせ量をBRSモジュール23の濃度補正手段に通知する。その後、ハーフトーンモジュール21は印刷データをハーフトーン化するがそれに先だってラスタ位置をBRSモジュール23に通知し、同BRSモジュール23は対応するラスタ位置に位置合わせ量を加えることで実際に使用するノズルとのずれを解消させた上で補正値をハーフトーンモジュール21に出力する。ハーフトーンモジュール21は同補正値を多階調の印刷データに反映させた上でハーフトーン化し、ハーフトーン化した印刷データをインターレースモジュール22に出力する。
【0065】
インターレースモジュール22は、ステップS112にて、上記位置合わせ量だけ上端処理による印刷処理の開始位置を早めて実施する。言い換えると上端処理での印刷を開始する時点で、印刷媒体は位置合わせ量だけ上流側に位置している。次にステップS114ではハーフトーン化した印刷データを印刷ヘッド52aのノズル列に対応させて印刷コマンドとして出力開始することになるが、このときの印刷開始ラスタは上記位置合わせ量だけ上流側に遅らせた位置とする。また、ステップS116で出力する印刷データは、上述したように位置合わせ量だけずらして得られた補正値に基づいて濃度補正が適用されたものとなっている。
【0066】
印刷データの出力と並列して行われる印刷媒体の搬送の際、各搬送時には目標搬送位置が設定される。従って、ステップS118では、同目標搬送位置ごとに得られている送り量の補正値を反映させて搬送を行わせる。
【0067】
上端処理が終わると引き続いてステップS120にて通常送り部の印刷処理を実施する。印刷データの出力は、ステップS122にて行われる。すなわち、上端処理で位置合わせ量が適用された状態から継続して通常送り部の印刷処理を行う。また、印刷媒体の紙送りには、ステップS124にて目標搬送位置に対応した送り量の補正値を適用させる。
【0068】
ただし、ステップS126にて次の搬送期間に蹴飛ばし補正位置を跨ぐことになるか否かを判断しており、YESである場合にはステップS128にて紙送りには蹴飛ばし補正の補正値を加えて適用する。蹴飛ばし補正位置を跨ぐことになる次の搬送時にはちょうど真ん中あたりになるのは上述したとおりである。従って、印刷媒体は搬送ローラ54aにて挟持される状態から挟持されない状態へと変化するものの、それによって生じると予想されるずれを相殺するように送り量が制御されているし、かつ、蹴飛ばし補正位置が確実に搬送区間の真ん中あたりで生じているので、補正が精度良く適用されることが保証される。
【0069】
すなわち、定常的に生じる印刷媒体の送り量のずれは解消され、蹴飛ばしによる送り量の不足も確実に精度良く解消され、さらに、位置合わせ量が適用されているにもかかわらず濃度補正も印刷条件に即してずれることなく適用されたことになる。
【0070】
なお、通常送り部の印刷処理で蹴飛ばし補正位置を跨がないときにはステップS128を実行しないので、当初の目標搬送位置にのみ対応した送り量の補正値が適用される。
【0071】
通常送り部120も最終の位置に至ると、ステップS130にて下端処理の印刷処理が行われる。ここでは、ステップS132にて上端処理で位置合わせ量が適用された状態から継続して下端処理の印刷処理に対応した印刷データを生成するし、印刷媒体の紙送りには、ステップS134にて目標搬送位置に対応した送り量の補正値を適用させる。
【0072】
このように、少なくとも印刷媒体の種類と、縁なし印刷と縁あり印刷かを指定する印刷条件に基づき、ステップS100にて、蹴飛ばし補正がある1パスでの真ん中で生じるように位置合わせ量を決定し、ステップS110では、同位置合わせ量だけ上端処理を早めることにより、ステップS120の通常送り部の印刷処理の際に生じる蹴飛ばし補正位置は必ず1パスの真ん中で生じ、また、同位置合わせ量だけ上端処理での印刷開始ラスタを遅らせることにより、継続して行われるステップS110の上端処理とステップS120の通常送り部とステップS130での下端処理では、濃度補正の補正値がずれることなく適用されることになるため、精度の良い印刷を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】印刷制御装置が適用される印刷システムのブロック図である。
【図2】印刷ヘッドのノズルを示す図である。
【図3】搬送機構の概略構成図である。
【図4】搬送機構で蹴飛ばしが生じる状況を示す図である。
【図5】蹴飛ばしのタイミングの前後での搬送量のずれを示す図である。
【図6】第一の搬送補正手段のための測定用パターンを示す図である。
【図7】濃度補正手段のための測定用パターンを示す図である。
【図8】上端処理、通常送り部、下端処理の各印刷処理を説明する図である。
【図9】第二の搬送補正手段の原理を示すための図である。
【図10】縁なし印刷時の第二の搬送補正手段の原理を示すための図である。
【図11】縁あり印刷時の第二の搬送補正手段の原理を示すための図である。
【図12】位置合わせ量が濃度補正に与える影響を解消する原理を示す図である。
【図13】本発明の印刷制御装置が反映されたフローチャートである。
【図14】印刷条件を取得するためのユーザーインターフェイス画面の図である。
【符号の説明】
【0074】
10…コンピュータ、20…プリンタドライバ、21…ハーフトーンモジュール、22…インターレースモジュール、22…BRSモジュール、30…アプリケーション、40…補正データ作成ソフト、50…プリンタ、51…制御ユニット、52…ヘッドユニット、53…キャリッジユニット、54…搬送ユニット、55…センサ群、56…インターフェイス、57…不揮発性のメモリ、60…スキャナ、52a…印刷ヘッド、54a…搬送ローラ、54b…搬送ローラ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷制御装置、印刷制御方法及び印刷制御プログラムを記録した媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタでは、色インクの吐出方向がノズル毎に微妙なずれが生じているため、バンディングと言われる症状が発生することがある。これを解消するための従来の印刷制御装置として、特許文献1に示すものが知られている。同公報に示すものでは、CCDセンサでテストパターンを読み取り、ノズル毎の特性むらを誤差拡散の重み付け係数で補正している。
【特許文献1】特開平2−54676号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
印刷装置は、印刷ヘッドの上流側と下流側でそれぞれ一対の搬送ローラで印刷媒体(印刷用紙)を搬送している。しかし、印刷に伴って印刷媒体が下流側に搬送されていくと、ある時点で上流側の搬送ローラを通過し、下流側の搬送ローラだけで挟持されることになる。この瞬間(蹴飛ばしの瞬間)、印刷媒体の搬送量は目標値からずれる現象が生じる。
【0004】
一方、印刷媒体の種類など、印刷条件ごとに対応した補正値を用意しておき、同補正値を反映させた目標搬送量を適用する(以下、単に蹴飛ばし補正と呼ぶ)ことで症状を改善できることが分かった。また、これを適用させるにあたり、蹴飛ばしの瞬間がある搬送のちょうど真ん中で起きるようにさせると最も現象を回避できる。
【0005】
印刷装置の印刷ヘッドに形成されているノズルの間隔(ノズルピッチ)が印刷時のラスタの間隔(ラスタピッチ)と異なる場合、効率的、かつ品質を上げるためには、印刷媒体の先端部分(最下流側)でラスタピッチに相当する細かな搬送による印刷(上端処理と呼ばれる)を行い、その後はノズルピッチよりも一ラスタピッチ分だけ多い搬送による印刷(通常送り部と呼ばれる)を行い、印刷媒体の後端部分(最上流側)で再度ラスタピッチに相当する搬送による印刷(下端処理と呼ばれる)を行う。
【0006】
蹴飛ばしの瞬間は印刷媒体の長さなどの印刷条件によって一意に決まるので、一回の搬送の際の真ん中で起きるようにさせるためには、上端処理の開始位置を調整することで実現可能である。このとき、印刷開始位置は印刷媒体との関係でずれないように、本来のラスタ位置よりも遅らせた位置としなければならない。なお、搬送は一定方向のみ可能であるため、調整は上端処理の開始位置を早める以外に不可能である。
【0007】
しかしながら、上述したノズル毎の特性むらを補正する従来の手法においては、各ラスタと補正手法が密接に対応している。このため、上端処理の開始位置を変えることで各ラスタ位置を変える必要がある場合には適用できないという課題があった。
【0008】
本発明は、蹴飛ばし補正もノズル毎の特性むらの補正も両立させることが可能な印刷制御装置、印刷制御方法および印刷制御プログラムを記録した媒体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、主たる発明は、
所定の印刷媒体を副走査方向に搬送し、印刷ヘッドを用いて同印刷媒体上に記録を行うプリンタに対して、同印刷媒体の上記印刷ヘッドに対する相対的な複数の目標搬送位置に対応した複数の送り量の補正値を保持し、目標搬送位置に対応させて上記プリンタに補正された搬送を行わせる第一の搬送補正手段と、
上記プリンタでの印刷の際、上端処理、通常送り部、下端処理のそれぞれにおいて、予め測定した濃度の偏差データに基づいて所定のラスタ毎に濃度の補正を行なわせる濃度補正手段と、
上記プリンタにおける搬送機構と上記印刷媒体の端部との相対位置関係で生じる送り誤差のデータに基づいて上記プリンタで補正された搬送を行わせる第二の搬送補正手段とを備える印刷制御装置であって、
適用される印刷条件に基づき、上記第二の搬送補正手段で適用する補正が予め特定された搬送タイミングで適用されるように、上記上端処理が開始されるタイミングを繰り上げる制御をしつつ、同上端処理の際に印刷が開始されるラスタを繰り下げる制御をするとともに、上記濃度補正手段に対しては同繰り下げたラスタの分だけ以後の濃度の補正を適用するラスタをずらさせる位置合わせ量適用手段とを具備する構成としてある。
【0010】
なお、本発明は必ずしも実体のある装置に限られる必要はなく、その方法としても機能することは容易に理解できる。
【0011】
また、本発明は印刷制御装置単独で存在する場合もあるし、ある機器に組み込まれた状態で利用されることもあるなど、発明の思想としてはこれに限らず、各種の態様を含むものである。従って、ソフトウェアであったりハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。
【0012】
発明の思想の具現化例としてソフトウェアとなる場合には、かかるソフトウェアを記録した記録媒体上においても当然に存在し、利用されるといわざるをえない。むろん、その記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。また、一次複製品、二次複製品などの複製段階については全く問う余地無く同等である。その他、供給方法として通信回線を利用して行なう場合でも本発明が利用されていることにはかわりない。
【0013】
さらに、一部がソフトウェアであって、一部がハードウェアで実現されている場合においても発明の思想において全く異なるものではなく、一部を記録媒体上に記憶しておいて必要に応じて適宜読み込まれるような形態のものとしてあってもよい。
【0014】
本発明をソフトウェアで実現する場合、ハードウェアやオペレーティングシステムを利用する構成とすることも可能であるし、これらと切り離して実現することもできる。例えば、各種の演算処理といっても、その実現方法はオペレーティングシステムにおける所定の関数を呼び出して処理することも可能であれば、このような関数を呼び出すことなくハードウェアから入力することも可能である。そして、実際にはオペレーティングシステムの介在のもとで実現するとしても、プログラムが媒体に記録されて流通される過程においては、このプログラムだけで本発明を実施できるものと理解することができる。
【0015】
また、本発明をソフトウェアで実施する場合、発明がプログラムを記録した媒体として実現されるのみならず、本発明がプログラム自体として実現されるのは当然であり、プログラム自体も本発明に含まれる。
【0016】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0018】
上記主たる発明の構成によれば、第一の搬送補正手段は、所定の印刷媒体を副走査方向に搬送し、印刷ヘッドを用いて同印刷媒体上に記録を行うプリンタに対して、同印刷媒体の上記印刷ヘッドに対する相対的な複数の目標搬送位置に対応した複数の送り量の補正値を保持し、目標搬送位置に対応させて上記プリンタに補正された搬送を行わせる。また、濃度補正手段は、上記プリンタでの印刷の際、上端処理、通常送り部、下端処理のそれぞれにおいて、予め測定した濃度の偏差データに基づいて所定のラスタ毎に濃度の補正を行なわせる。また、第二の搬送補正手段は、上記プリンタにおける搬送機構と上記印刷媒体の端部との相対位置関係で生じる送り誤差のデータに基づいて上記プリンタで補正された搬送を行わせる。
【0019】
ここで、位置合わせ量適用手段は、適用される印刷条件に基づき、上記第二の搬送補正手段で適用する補正が予め特定された搬送タイミングで適用されるように、上記上端処理が開始されるタイミングを繰り上げる制御をしつつ、同上端処理の際に印刷が開始されるラスタを繰り下げる制御をするとともに、上記濃度補正手段に対しては同繰り下げたラスタの分だけ以後の濃度の補正を適用するラスタをずらさせる。
【0020】
また、上記プリンタを制御するにあたり、ハーフトーンモジュールが、上記プリンタとは異なる色空間における多階調の画像データを入力して同プリンタの色空間における多階調の画像データに色変換するとともに、変換後の同画像データを上記プリンタで記録可能な低階調の印刷データに階調変換し、インターレースモジュールが、上記低階調の印刷データを入力し、上記印刷ヘッドが上記主走査と福走査をしながら記録する際のラスタデータを生成し、上記濃度補正手段は、上記ハーフトーンモジュールが上記プリンタの色空間へ色変換した画像データに対してラスタ位置に対応した濃度の補正を行わせるものであり、上記位置合わせ量適用手段にて適用されるラスタの分だけ上記ラスタ位置を繰り下げて上記濃度の補正を行わせる。これにより、位置合わせ量適用手段は、実質的に上記濃度補正手段に対して上記繰り下げたラスタの分だけ、それ以後の濃度の補正を適用するラスタをずらさせることとなる。
【0021】
第二の搬送補正手段が補正することとなる現象の一例は、上記プリンタにおける搬送機構の搬送ローラが上記印刷媒体を挟持する状態から挟持しない状態へ変化する際に生じる搬送量のずれが相当する。このような現象を前提として、上記位置合わせ量適用手段は、搬送ローラが上記印刷媒体を挟持する状態から挟持しない状態へ変化するタイミングが、上記通常送り部での一回の搬送の概略中央で生じるように上記上端処理が開始されるタイミングを繰り上げる制御をしつつ、同上端処理の際に印刷が開始されるラスタを繰り下げる制御をする構成とすることができる。
【0022】
このように、位置合わせ量適用手段が上端処理の際に印刷が開始されるラスタを繰り下げることにより、それ以降の搬送タイミングとラスタとの関係がずれていき、搬送ローラが上記印刷媒体を挟持する状態から挟持しない状態へ変化するタイミングを上記通常送り部での一回の搬送の概略中央で生じるようにすることが可能となる。
【0023】
上記タイミングを予め計算するための印刷条件は各種のものが存在するが、少なくとも上記位置合わせ量適用手段に、上記印刷条件として、縁あり印刷か、縁なし印刷かの情報と、印刷媒体の種類を取得するように構成して実現することができる。
【0024】
縁あり印刷か縁なし印刷かにより、印刷媒体に対する上端処理を開始する相対的な位置が決まり、また、印刷媒体の種類は同印刷媒体の長さに相当し、印刷媒体の後端側からの所定距離で上記タイミングとなる。従って、位置合わせ量適用手段がこれらの情報を取得することにより、上記タイミングが所定の時点で発生させることができるようになる。
【0025】
以下、添付図面にもとづいて本発明の実施形態を
(1)概略構成
(2)第一の搬送補正手段
(3)濃度補正手段
(4)第二の搬送補正手段
(5)濃度補正手段の問題点
(6)印刷処理の流れ
の順序で説明する。
【0026】
(1)印刷システムの概略構成
図1は、本発明の一実施形態にかかる印刷制御装置が適用される印刷システムをブロック図により示している。
【0027】
同図において、コンピュータ10は、パーソナルコンピュータなどが該当する。ハードウェアとしてCPU、ROM、RAMに加え、図示していないハードディスクなどの外部記憶装置、光学記憶媒体読み取り装置などを備え、入力機器としてキーボード、マウスなどを備え、表示装置としてディスプレイなどを備えている。
【0028】
コンピュータ10は、ソフトウェアとハードウェアとが有機的に連携して所定の機能を実現する。本実施形態では、ソフトウェア構成として、図に示すようなプリンタドライバ20、アプリケーション30、補正データ作成ソフト40などを備えている。
【0029】
アプリケーション30は、1ピクセルにつきRGB各色についてそれぞれ256階調の階調データからなるドットマトリクス状の画像データを印刷対象として、プリンタドライバ20に出力する。コンピュータ10が主に利用する色空間はRGB色空間であるが、プリンタ50はCMY色空間を採用しているため、プリンタドライバ20はRGBの色空間の画像データをCMYの色空間の印刷データに色変換して同プリンタ50に出力する。また、コンピュータ10では256階調という多階調の画像データを扱うが、プリンタ50は色インクを一定の大きさのドットとして付すか否か、あるいは数サイズのドットを付すか否かの記録しかできない。このため、プリンタドライバ20は多階調から低階調へ階調変換して同プリンタ50に出力する。このような色変換と階調変換は、プリンタドライバ20内のハーフトーンモジュール21が担う。
【0030】
インターレースモジュール22は、ハーフトーンモジュール21が生成した印刷データに基づき、プリンタ50に対して同印刷データを含む印刷コマンドを出力する。ここで、プリンタ50の概略構成について説明する。
【0031】
プリンタ50は、CPUやROMやRAMを備えて主に制御を司る制御ユニット51と、色インクを吐出するヘッドユニット52と、同ヘッドユニット52を印刷媒体に対してその流れ方向と直行する主走査方向に往復動させるキャリッジユニット53と、同印刷媒体を上記流れ方向である副走査方向に搬送する搬送ユニット54と、センサ群55を備えている。なお、プリンタ50はこれらの他にもコンピュータ10と接続するためのインターフェイス56や、不揮発性のメモリ57を備えている。印刷媒体は、一般的には印刷用紙であるが、この他にも紙以外の樹脂媒体など、各種の媒体に適用可能であることはいうまでもない。本実施形態においては、ヘッドユニット52を印刷媒体の送り方向(副走査方向)に対して直交する方向(主走査方向)に往復動させて印刷を行なうものであるが、いわゆるラインヘッドプリンタのように印刷ヘッドを固定しておいて印刷媒体だけを送って印刷を行なうものにおいても本発明は適用可能である。
【0032】
図2は印刷ヘッドのノズルを示す図である。ヘッドユニット52は、同図に示すように各色インクごとに割り当てられた複数の吐出ノズルを備えた印刷ヘッド52aを備えている。図において、KCMYは、それぞれ黒インク、シアンインク、マゼンタインク、イエローインクが割り当てられたノズル列を示しており、#1〜#90は各ノズルに割り当てられた番号である。ここで最下流側のものが#1ノズルであり、最上流側のものが#90ノズルである。ノズルとノズルの間隔がノズルピッチであり、実際に印刷するときの副走査方向のラスタ間の間隔がラスタピッチとなる。本実施形態では、ノズルピッチが1/90インチであるのに対して、ラスタピッチが1/720インチとしている。このようにノズルピッチとラスタピッチとが異なるため、インターレースモジュール22はハーフトーンモジュール21が生成した印刷データを受け取り、各ノズルで印刷可能な所定間隔のラスタデータを選択し、印刷ヘッド52aに対して出力することになる。なお、より詳細な選択方法などについてはここでは省略する。
【0033】
キャリッジユニット53は印刷ヘッド52aを主走査方向に往復動させるものであり、具体的な機構については省略するが、制御ユニット51にて制御され、印刷ヘッド52aから吐出される色インクのドットが印刷媒体上における主走査方向の所定位置に付着されるように吐出タイミングと同期して往復動動作する。
【0034】
図3は、搬送機構の概略構成図である。搬送ユニット54は、搬送機構を備えている。搬送機構の主な構成は同図に示すような印刷ヘッド52aを間にして印刷媒体を上流側と下流側でそれぞれ挟持して保持しつつ、所定量だけ回転して同印刷媒体を搬送する上流側搬送ローラと54a、下流側搬送ローラ54bとを備えている。なお、便宜上、上流側を単に搬送ローラ54aと呼び、下流側を排紙ローラ54bと呼ぶ。印刷媒体は上流側から下流側へと搬送されるため、最初に搬送ローラ54aにて挟持され、次いでその先端が排紙ローラ54bに至ったときから両方の搬送ローラ54a,54bにて挟持され、さらに搬送されて後端が搬送ローラ54aを通過した時点から排紙ローラ54bだけで挟持されることになる。
【0035】
図4は、搬送機構で蹴飛ばしが生じる状況を示す図である。同図に示すように、印刷媒体の後端が搬送ローラ54aの挟持を離れる時点でそれまでの安定した搬送状態から不安定な状態に移ることになり、この挙動を蹴飛ばしと呼ぶ。
【0036】
図5は、蹴飛ばしの発生する前後での搬送精度(目標搬送位置とのずれを図示)を示しており、+側で実際の搬送位置が目標搬送位置よりも下流側となって搬送量が多くなった状態を示し、−側で実際の搬送位置が目標搬送位置よりも上流側となって搬送量が少なくなった状態を示している。蹴飛ばし直後は実際の搬送位置が目標搬送位置に至らない状態となることが分かる。
【0037】
本実施形態では、第二の搬送補正手段がこの蹴飛ばしによる精度の乱れを解消するため、所定の補正値を搬送量に適用することになる。すなわち、蹴飛ばしが発生するタイミングを含む搬送期間に同補正値を搬送量に加算して本来必要となる目標搬送位置よりもさらに先へ搬送させる指示を出すことにより、実際に蹴飛ばしによって生じる搬送量の不足を相殺させる。
【0038】
ここでさらなる精度の向上のためには蹴飛ばしが発生するタイミングがある搬送期間の真ん中(概略中央)で発生することが望ましいことが分かった。このため、後に詳述するように位置合わせ補正量を適用することになる。
【0039】
(2)第一の搬送補正手段
ところで、搬送ユニット54における搬送機構には定常時においても送り量に誤差が生じていることが分かった。非常に微少な送り誤差であるが、ラスタピッチがより狭小となり高精細な印刷を行うためには、かかる微少な送り誤差の解消も重要な要素となっている。そこで、プリンタ50にて所定の測定用パターンを印刷し、これをスキャナ60にて高精細に読み取り、読み取って得られた画像データをコンピュータ10にて処理することで上記送り誤差の解消を図るための送り量の補正値を得ることにする。かかる処理を図1に示す補正データ作成ソフト40で実現する。
【0040】
図6は測定用パターンの一例を示しており、補正データ作成ソフト40による制御のもとで、プリンタ50は所定の印刷媒体に対して搬送ローラ54aを1/4回転ずつさせつつ、印刷ヘッド52aにおける所定のノズル、例えば#90ノズルだけを使用して色インクを吐出させ、主走査方向にラインを印刷する。これを印刷媒体の先端から後端にかけて繰り返すことで、同図に示すように一定の間隔毎にラインが印刷される。部位によってラインの長さを変更しているのは別の目的があるが、ここでは省略する。
【0041】
送り誤差が生じている場合、現実には各ラインの間隔は一定ではなく、印刷媒体が徐々に搬送されていく際のそれぞれの搬送位置に対応したずれが生じている。補正データ作成ソフト40はスキャナ60で読み取られた画像データに基づき、各種の読み取り誤差を解消する処理を経て得られる目標搬送位置(L1〜)と実際の搬送位置とのずれを求める。そして、各目標搬送位置毎に送り量の補正値を算出し、算出した補正値をプリンタ50のメモリ57に書き込む。ここで、目標搬送位置は印刷媒体の先端からの距離であり、送り量の補正値は同目標位置にて増減させるべき送り量である。なお、ある目標搬送位置と次の目標搬送位置の間に適用すべき送り量の補正値は比例配分とすることが一適用例であるが、より具体的な適用方法についてはここでは省略する。
【0042】
プリンタ50にて記憶されている複数の目標搬送位置と、その送り量の補正値に基づき、印刷時における個々の目標搬送位置に応じて適用すべき補正値を割り出して適用させるのがインターレースモジュール22の第一の搬送補正手段である。インターレースモジュール22はハーフトーンモジュール21が生成した印刷データに基づいてプリンタ50に対して印刷コマンドを出力するが、このときには搬送機構に対する紙送りの搬送指示も含まれている。このため、同第一の搬送補正手段が割り出した補正値を加算してプリンタ50に紙送りの搬送指示を出せば、送り誤差が相殺されて本来の目標搬送位置へ送り誤差を生じることなく搬送させることが可能となる。
【0043】
上述した第二の搬送補正手段は、このインターレースモジュール22が把握する印刷媒体の搬送位置に基づき、上記蹴飛ばしが発生するタイミングを間に挟む搬送期間のときに蹴飛ばしの補正値を搬送量に加算させることになる。
【0044】
(3)濃度補正手段
プリンタドライバ20は、このほかにBRSモジュール23を備えている。BRSモジュール23は濃度補正手段を構成するものであり、ここで同濃度補正手段が実現する濃度補正について説明する。印刷ヘッド52aの各ノズルの吐出方向にはむらがある。すなわち、あるノズルからは定常的に上流側に向けて色インクが吐出され、あるノズルからは定常的に下流側に向けて色インクが吐出されることで、均等に印刷を行っているつもりでも実際には印刷結果に濃淡が表れるといった症状となる。プリンタ50で印刷する際、現実には各ラスタとノズルとの位置関係は一意的に決まってくるため、測定用パターンを印刷させ、上記濃淡のむらを測定し、同むらを解消するように予め印刷データの側に補正値を反映させておけば、以後の印刷時にはこのような濃淡のむらを防ぐことが可能となる。
【0045】
図7はこの測定用パターンを示している。各色インクを割り当てられるノズル列ごとに副走査方向に延び、主走査方向に並ぶ、複数の濃淡からなるグラデーションパターンとなっている。より具体的には、図面上の左方からKインクが割り当てられるノズル列を使用し、印刷しない領域、最も濃度の薄い領域、中間の濃度の領域、最も濃度の濃い領域を印刷し、続いてCインクが割り当てられるノズル列、Mインクが割り当てられるノズル列、Yインクが割り当てられるノズル列で同様のグラデーションパターンを印刷する。ここで複数の濃度のパターンを印刷するのは各濃度毎に現れる濃淡のむらに違いが生じているからである。
【0046】
測定用パターンを印刷させることになる印刷データは印刷媒体上で下端から上流まで一定であるが、印刷時における搬送は印刷ヘッド52aと印刷媒体との相対的な位置関係によって三つのパターンに分かれている。
【0047】
図8は、この三つのパターンに相当する上端処理と、通常送り部と、下端処理のそれぞれを概略的に示している。同図では、理解の容易のため、ノズルピッチをラスタピッチの4倍とし、ノズル数は簡易的に4つとしている。本来、印刷媒体が搬送され、印刷ヘッドは搬送方向に対しては相対的に固定位置にあるが、印刷媒体を搬送させたときの印刷ヘッドとの相対位置が理解できるように、印刷ヘッドの側を上方から下方に向けて印刷媒体の搬送量だけずらしていくように示している。
【0048】
上述したようにノズルピッチとラスタピッチとが異なっており、また、印刷媒体の上端と下端とで印刷ヘッドと印刷媒体とが干渉しないようにさせる必要がある。このため、全ラスタを埋めるようにするには印刷ヘッド52aを主走査方向に往復動させる範囲を所定回数にわたってラップさせる必要がある。図に示す例では、ほぼラスタピッチ毎に印刷媒体を搬送させる上端処理と呼ばれる印刷処理と、ノズルピッチとラスタピッチの和だけ印刷媒体を搬送させる通常送り部と呼ばれる印刷処理と、再度ほぼラスタピッチ毎に印刷媒体を搬送させる下端処理と呼ばれる印刷処理とにおいて、それぞれでラップする印刷ヘッドの位置を示している。むろん、ノズルの数やピッチに応じて具体的な印刷処理には違いが出てくるが、概略的にはかかる分類となる。
【0049】
測定用パターンの印刷時には、実際の印刷媒体の上端と下端にかかわらず、同印刷媒体の中に収まる範囲で、上記グラデーションパターンの印刷データを使用し、上端処理と、通常送り部と、下端処理のそれぞれの印刷処理で印刷を行う。
【0050】
そして、得られた印刷物をスキャナ60で読み取り、上端処理と、通常送り部と、下端処理のそれぞれにおいて、各濃度毎、各ラスタ毎に生じている濃淡を測定する。理論的には各ラスタ毎であるが、現実には複数のラスタ単位で濃淡を計測するようにしても良い。この測定結果から、上端処理での各ラスタ単位での濃淡、通常送り部での各ラスタ単位での濃淡、下端処理での各ラスタ単位での濃淡が分かる。このように濃淡が生じることを防ぐべく、本実施形態では予め濃くなる部分の印刷データを薄くなるように補正し、また、薄くなる部分の印刷データを濃くなるように補正することで、実際の印刷結果で濃淡のずれを相殺させることにする。目標濃度の決め方、およびその目標濃度と印刷結果との差に基づく補正値の決め方についての具体的手法の説明はここでは省略する。結果として得られるのは、上端処理と、通常送り部と、下端処理での各ラスタ毎の濃淡の補正値であり、印刷データの多階調での階調値と、それに対応する補正後の階調値のテーブルとして補正値を保持することになる。なお、図7に示すものは四段階の濃度にすぎず、印刷データの階調数分だけはないので、不足している階調値については公知の補間演算を利用して特定する。
【0051】
このような補正値は各プリンタ50毎に個体差があるので、各プリンタ50に配置されているメモリ57に記憶され、印刷に際してプリンタドライバ20がプリンタ50と通信して同補正値を読み込むことになる。
【0052】
(4)第二の搬送補正手段
図9は第二の搬送補正手段について説明する図である。
上述したように、印刷の際には上端処理での印刷処理と、通常送り部での印刷処理と、下端処理での印刷処理が行われる。ある印刷媒体に縁なし印刷を行う場合、図に示すように用紙サイズよりも大きな領域を印刷領域として設定する。そして、この印刷領域の全範囲を印刷ヘッド52aのノズルが網羅するように印刷処理は行われる。仮想的な印刷領域の上端から印刷を開始するためには、上端処理は印刷媒体に対して図に示すような相対位置関係となる位置(印刷開始ラスタ)から印刷を開始する。そして、通常送り部での印刷処理で全ラスタをカバーできる位置となったところから通常送り部での印刷処理が開始される。そして、印刷媒体の後端に近くなったところでは仮想的な印刷領域の後端まで印刷ヘッド52aのノズルが網羅するように下端処理での印刷処理が行われる。
【0053】
図に示すように上端処理を単に印刷領域の上端に合わせて印刷開始ラスタを決めるとすると、蹴飛ばし位置は通常送り部内のある1パスにおける搬送範囲の偏った位置で発生することになる。上述したように蹴飛ばしを補正するためにはこのような偏った位置で発生するよりもある1パスにおける搬送範囲の真ん中(概略中央)で発生させるのが好ましい。
蹴飛ばし位置は印刷媒体の後端からの距離で決まっているから、これがある1パスにおける搬送範囲の真ん中で発生させるようにするためには、上端処理の開始位置を早めればよいことが分かる。なお、印刷媒体は戻せないので、蹴飛ばし位置がある1パスにおける搬送範囲の真ん中よりも上流側で発生するようであれば、次の1パスの真ん中で発生させるように上端処理の開始位置を早めざるを得ない。
【0054】
図10はこのように上端処理の開始位置を早めることで蹴飛ばし位置がある1パスにおける搬送範囲の真ん中となるように調整した状態を示している。ただし、単に上端処理を早めると印刷領域もずれてしまうので、印刷領域をずらさないようにするためには、上端処理の開始位置は早めるものの印刷開始ラスタはその分だけ遅らせた位置にしなければならない。この遅らせる量が位置合わせ量であり、図中では同領域をマスクと呼んでいる。
【0055】
ところが、印刷領域は印刷条件によって変動する。
図11は、余白を3mmに設定する縁あり印刷の例を示している。ここでも蹴飛ばし位置がある1パスにおける搬送範囲の真ん中となるように上端処理の開始位置を調整しつつ、印刷領域がずれないように、上端処理の中では印刷開始ラスタをその分だけ遅らせている。そして、この際の位置合わせ量は上述した縁なし印刷の場合のものとは異なっている。このように印刷条件によって上端処理の開始位置と、印刷開始ラスタを調整することで蹴飛ばしの補正は実現できる。
【0056】
インターレースモジュール22が管理する目標搬送位置は上端処理や通常送り部を実施しつつも毎回の搬送時に設定されるものである。従って、第一の搬送補正手段で各目標搬送位置に応じた送り量の補正値を反映させつつ、第二の搬送補正手段が同目標搬送位置の情報に基づいてある搬送期間においてはその補正値を重ねて反映させることは、互いに支障とならない。
【0057】
(5)濃度補正手段の問題点
しかし、濃度補正手段は上端処理と通常送り部と下端処理のそれぞれの各ラスタでの濃淡の補正を行なうものである。このため、上端処理の開始位置を早めつつ、印刷開始ラスタを遅らせたとき、印刷領域でのラスタ位置に対応する濃淡処理の補正値を適用すると、濃淡を測定したときに使用していたノズルと、調整を行って印刷に使用しているノズルとが対応しなくなる。本発明はこのような場合のノズルのずれによって本来の濃度補正手段が機能しなくなることを防止する。
【0058】
図12はその原理を概略的に示している。本来、濃淡の現れ方はノズルの使用に対応しているため、上端処理、通常送り部、下端処理と続く印刷処理において、印刷開始ラスタとは無関係に最初の上端処理の開始位置を基準とするラスタ位置に基づいて補正値を適用する。従って、縁なし印刷時、蹴飛ばし補正を行なう上で位置合わせ量が必要となった場合は、実際の印刷のラスタ位置は上記位置合わせ量だけずれることになり、濃度補正手段は実際の印刷のラスタ位置に対して同位置合わせ量だけずれたラスタ位置に適用すべき補正値を出力することになる。また、余白3mmの印刷時に必要となる位置合わせ量についても、実際の印刷のラスタ位置は同位置合わせ量だけずれることになり、濃度補正手段は実際の印刷のラスタ位置に対して同位置合わせ量だけずれたラスタ位置に適用すべき補正値を出力することになる。
【0059】
(6)印刷処理の流れ
図13はかかる印刷制御をコンピュータにて実現するためのプログラムが相当するフローチャートを示している。このフローチャートは、コンピュータ10にてソフトウェアで実現するプリンタドライバ20が各種のモジュールの機能を実行する際に行う印刷制御を概略的に示したものであり、主にインタレースモジュール22での処理プログラムに相当する。
【0060】
ステップS100は、印刷条件を取得して行われる一連の処理である。印刷条件としては、蹴飛ばし補正に対応するため、少なくとも印刷媒体の種類(印刷媒体の長さ情報を間接的に取得)と、印刷時の余白の情報(縁なし印刷、縁あり印刷での余白)が必要である。
【0061】
図14はこの二つの印刷条件を取得するためのユーザーインターフェイス画面の一例を示している。図面上の上方にて印刷媒体の種類を特定し、図面上の下方にて縁なし印刷か縁あり印刷かの選択、および縁あり印刷であればその余白を指定できる。指定された結果は上述したように印刷条件として取得される。これらの印刷条件は上端処理の開始位置の決定に必要であり、位置合わせ量の決定に利用される。ただし、これらは蹴飛ばし位置の補正で必要になる最小限の情報であり、第一の搬送補正手段や濃度補正手段では、印刷媒体の種類、印刷品質など各種の条件によって補正値が変わってくるため、他の印刷条件も取得される。
【0062】
より具体的には、ステップS102にて、蹴飛ばし補正位置と補正量を取得する。ここではプリンタ50と通信をし、プリンタ50のメモリ57に記録されている蹴飛ばしが発生する位置である補正位置と、印刷条件に対応して予め測定して記録されている補正値を取得する。ステップS106では、第一の搬送補正手段で適用するための目標搬送位置とそれに対応した送り量の補正値を取得する。ステップS108では、蹴飛ばし補正位置と、印刷媒体の長さ、縁なし印刷や縁あり印刷といった印刷条件に基づいて位置合わせ量を決定する。
【0063】
次のステップS110は上端処理の一連の処理である。上端処理の開始にあたり、アプリケーションが印刷対象となる画像データを生成してプリンタドライバ20に出力し、ハーフトーンモジュール21が同画像データを色変換、階調変換してハーフトーン化した印刷データをインターレースモジュール22に出力できるようになっていることが必要である。ただし、上述したように位置合わせ量が決まらないとBRSモジュール23での濃度補正手段は濃度補正の補正値を出力できない。
【0064】
このため、プリンタドライバ20内部では、ハーフトーンモジュール21が印刷データを生成する前に印刷条件に基づいてインターレースモジュール22が位置合わせ量を決定し、同位置合わせ量をBRSモジュール23の濃度補正手段に通知する。その後、ハーフトーンモジュール21は印刷データをハーフトーン化するがそれに先だってラスタ位置をBRSモジュール23に通知し、同BRSモジュール23は対応するラスタ位置に位置合わせ量を加えることで実際に使用するノズルとのずれを解消させた上で補正値をハーフトーンモジュール21に出力する。ハーフトーンモジュール21は同補正値を多階調の印刷データに反映させた上でハーフトーン化し、ハーフトーン化した印刷データをインターレースモジュール22に出力する。
【0065】
インターレースモジュール22は、ステップS112にて、上記位置合わせ量だけ上端処理による印刷処理の開始位置を早めて実施する。言い換えると上端処理での印刷を開始する時点で、印刷媒体は位置合わせ量だけ上流側に位置している。次にステップS114ではハーフトーン化した印刷データを印刷ヘッド52aのノズル列に対応させて印刷コマンドとして出力開始することになるが、このときの印刷開始ラスタは上記位置合わせ量だけ上流側に遅らせた位置とする。また、ステップS116で出力する印刷データは、上述したように位置合わせ量だけずらして得られた補正値に基づいて濃度補正が適用されたものとなっている。
【0066】
印刷データの出力と並列して行われる印刷媒体の搬送の際、各搬送時には目標搬送位置が設定される。従って、ステップS118では、同目標搬送位置ごとに得られている送り量の補正値を反映させて搬送を行わせる。
【0067】
上端処理が終わると引き続いてステップS120にて通常送り部の印刷処理を実施する。印刷データの出力は、ステップS122にて行われる。すなわち、上端処理で位置合わせ量が適用された状態から継続して通常送り部の印刷処理を行う。また、印刷媒体の紙送りには、ステップS124にて目標搬送位置に対応した送り量の補正値を適用させる。
【0068】
ただし、ステップS126にて次の搬送期間に蹴飛ばし補正位置を跨ぐことになるか否かを判断しており、YESである場合にはステップS128にて紙送りには蹴飛ばし補正の補正値を加えて適用する。蹴飛ばし補正位置を跨ぐことになる次の搬送時にはちょうど真ん中あたりになるのは上述したとおりである。従って、印刷媒体は搬送ローラ54aにて挟持される状態から挟持されない状態へと変化するものの、それによって生じると予想されるずれを相殺するように送り量が制御されているし、かつ、蹴飛ばし補正位置が確実に搬送区間の真ん中あたりで生じているので、補正が精度良く適用されることが保証される。
【0069】
すなわち、定常的に生じる印刷媒体の送り量のずれは解消され、蹴飛ばしによる送り量の不足も確実に精度良く解消され、さらに、位置合わせ量が適用されているにもかかわらず濃度補正も印刷条件に即してずれることなく適用されたことになる。
【0070】
なお、通常送り部の印刷処理で蹴飛ばし補正位置を跨がないときにはステップS128を実行しないので、当初の目標搬送位置にのみ対応した送り量の補正値が適用される。
【0071】
通常送り部120も最終の位置に至ると、ステップS130にて下端処理の印刷処理が行われる。ここでは、ステップS132にて上端処理で位置合わせ量が適用された状態から継続して下端処理の印刷処理に対応した印刷データを生成するし、印刷媒体の紙送りには、ステップS134にて目標搬送位置に対応した送り量の補正値を適用させる。
【0072】
このように、少なくとも印刷媒体の種類と、縁なし印刷と縁あり印刷かを指定する印刷条件に基づき、ステップS100にて、蹴飛ばし補正がある1パスでの真ん中で生じるように位置合わせ量を決定し、ステップS110では、同位置合わせ量だけ上端処理を早めることにより、ステップS120の通常送り部の印刷処理の際に生じる蹴飛ばし補正位置は必ず1パスの真ん中で生じ、また、同位置合わせ量だけ上端処理での印刷開始ラスタを遅らせることにより、継続して行われるステップS110の上端処理とステップS120の通常送り部とステップS130での下端処理では、濃度補正の補正値がずれることなく適用されることになるため、精度の良い印刷を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】印刷制御装置が適用される印刷システムのブロック図である。
【図2】印刷ヘッドのノズルを示す図である。
【図3】搬送機構の概略構成図である。
【図4】搬送機構で蹴飛ばしが生じる状況を示す図である。
【図5】蹴飛ばしのタイミングの前後での搬送量のずれを示す図である。
【図6】第一の搬送補正手段のための測定用パターンを示す図である。
【図7】濃度補正手段のための測定用パターンを示す図である。
【図8】上端処理、通常送り部、下端処理の各印刷処理を説明する図である。
【図9】第二の搬送補正手段の原理を示すための図である。
【図10】縁なし印刷時の第二の搬送補正手段の原理を示すための図である。
【図11】縁あり印刷時の第二の搬送補正手段の原理を示すための図である。
【図12】位置合わせ量が濃度補正に与える影響を解消する原理を示す図である。
【図13】本発明の印刷制御装置が反映されたフローチャートである。
【図14】印刷条件を取得するためのユーザーインターフェイス画面の図である。
【符号の説明】
【0074】
10…コンピュータ、20…プリンタドライバ、21…ハーフトーンモジュール、22…インターレースモジュール、22…BRSモジュール、30…アプリケーション、40…補正データ作成ソフト、50…プリンタ、51…制御ユニット、52…ヘッドユニット、53…キャリッジユニット、54…搬送ユニット、55…センサ群、56…インターフェイス、57…不揮発性のメモリ、60…スキャナ、52a…印刷ヘッド、54a…搬送ローラ、54b…搬送ローラ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の印刷媒体を副走査方向に搬送し、印刷ヘッドを用いて同印刷媒体上に記録を行うプリンタに対して、同印刷媒体の上記印刷ヘッドに対する相対的な複数の目標搬送位置に対応した複数の送り量の補正値を保持し、目標搬送位置に対応させて上記プリンタに補正された搬送を行わせる第一の搬送補正手段と、
上記プリンタでの印刷の際、上端処理、通常送り部、下端処理のそれぞれにおいて、予め測定した濃度の偏差データに基づいて所定のラスタ毎に濃度の補正を行なわせる濃度補正手段と、
上記プリンタにおける搬送機構と上記印刷媒体の端部との相対位置関係で生じる送り誤差のデータに基づいて上記プリンタで補正された搬送を行わせる第二の搬送補正手段とを備える印刷制御装置であって、
適用される印刷条件に基づき、上記第二の搬送補正手段で適用する補正が予め特定された搬送タイミングで適用されるように、上記上端処理が開始されるタイミングを繰り上げる制御をしつつ、同上端処理の際に印刷が開始されるラスタを繰り下げる制御をするとともに、上記濃度補正手段に対しては同繰り下げたラスタの分だけ以後の濃度の補正を適用するラスタをずらさせる位置合わせ量適用手段とを具備することを特徴とする印刷制御装置。
【請求項2】
上記プリンタとは異なる色空間における多階調の画像データを入力して同プリンタの色空間における多階調の画像データに色変換するとともに、変換後の同画像データを上記プリンタで記録可能な低階調の印刷データに階調変換するハーフトーンモジュールと、
上記低階調の印刷データを入力し、上記印刷ヘッドが上記主走査と福走査をしながら記録する際のラスタデータを生成するインターレースモジュールとを有するとともに、
上記濃度補正手段は、上記ハーフトーンモジュールが上記プリンタの色空間へ色変換した画像データに対してラスタ位置に対応した濃度の補正を行わせるものであり、上記位置合わせ量適用手段にて適用されるラスタの分だけ上記ラスタ位置を繰り下げて上記濃度の補正を行わせることを特徴とする上記請求項1に記載の印刷制御装置。
【請求項3】
上記位置合わせ量適用手段は、上記プリンタにおける搬送機構の搬送ローラが上記印刷媒体を挟持する状態から挟持しない状態へ変化するタイミングが、上記通常送り部での一回の搬送の概略中央で生じるように上記上端処理が開始されるタイミングを繰り上げる制御をしつつ、同上端処理の際に印刷が開始されるラスタを繰り下げる制御をすることを特徴とする上記請求項1または請求項2のいずれかに記載の印刷制御装置。
【請求項4】
上記位置合わせ量適用手段は、上記印刷条件として、縁あり印刷か、縁なし印刷かの情報と、印刷媒体の種類を取得することを特徴とする上記請求項1〜請求項3のいずれかに記載の印刷制御装置。
【請求項5】
所定の印刷媒体を副走査方向に搬送するとともに印刷ヘッドを用いて同印刷媒体上に記録を行うプリンタに対し、同印刷媒体の上記印刷ヘッドに対する相対的な複数の目標搬送位置に対応した複数の送り量の補正値を保持しつつ各目標搬送位置に対応させて上記プリンタに補正された搬送を行わせる第一の搬送補正工程と、
上記プリンタでの印刷の際、上端処理、通常送り部、下端処理のそれぞれにおいて、予め測定した濃度の偏差データに基づいて所定のラスタ毎に濃度の補正を行なわせる濃度補正工程と、
上記プリンタにおける搬送機構と上記印刷媒体の端部との相対位置関係で生じる送り誤差のデータに基づいて上記プリンタで補正された搬送を行わせる第二の搬送補正工程と、
適用される印刷条件に基づき、上記第二の搬送補正工程で適用する補正が予め特定された搬送タイミングで適用されるように、上記上端処理が開始されるタイミングを繰り上げる制御をしつつ、同上端処理の際に印刷が開始されるラスタを繰り下げる制御をするとともに、上記濃度補正工程に対しては同繰り下げたラスタの分だけ以後の濃度の補正を適用するラスタをずらさせる位置合わせ量適用工程とを具備することを特徴とする印刷制御方法。
【請求項6】
コンピュータにて印刷装置を制御する印刷制御プログラムを記録した媒体であって、
所定の印刷媒体を副走査方向に搬送するとともに印刷ヘッドを用いて同印刷媒体上に記録を行うプリンタに対し、同印刷媒体の上記印刷ヘッドに対する相対的な複数の目標搬送位置に対応した複数の送り量の補正値を保持しつつ各目標搬送位置に対応させて上記プリンタに補正された搬送を行わせる第一の搬送補正機能と、
上記プリンタでの印刷の際、上端処理、通常送り部、下端処理のそれぞれにおいて、予め測定した濃度の偏差データに基づいて所定のラスタ毎に濃度の補正を行なわせる濃度補正機能と、
上記プリンタにおける搬送機構と上記印刷媒体の端部との相対位置関係で生じる送り誤差のデータに基づいて上記プリンタで補正された搬送を行わせる第二の搬送補正機能と、
適用される印刷条件に基づき、上記第二の搬送補正工程で適用する補正が予め特定された搬送タイミングで適用されるように、上記上端処理が開始されるタイミングを繰り上げる制御をしつつ、同上端処理の際に印刷が開始されるラスタを繰り下げる制御をするとともに、上記濃度補正工程に対しては同繰り下げたラスタの分だけ以後の濃度の補正を適用するラスタをずらさせる位置合わせ量適用機能とをコンピュータに実現させることを特徴とする印刷制御プログラムを記録した媒体。
【請求項1】
所定の印刷媒体を副走査方向に搬送し、印刷ヘッドを用いて同印刷媒体上に記録を行うプリンタに対して、同印刷媒体の上記印刷ヘッドに対する相対的な複数の目標搬送位置に対応した複数の送り量の補正値を保持し、目標搬送位置に対応させて上記プリンタに補正された搬送を行わせる第一の搬送補正手段と、
上記プリンタでの印刷の際、上端処理、通常送り部、下端処理のそれぞれにおいて、予め測定した濃度の偏差データに基づいて所定のラスタ毎に濃度の補正を行なわせる濃度補正手段と、
上記プリンタにおける搬送機構と上記印刷媒体の端部との相対位置関係で生じる送り誤差のデータに基づいて上記プリンタで補正された搬送を行わせる第二の搬送補正手段とを備える印刷制御装置であって、
適用される印刷条件に基づき、上記第二の搬送補正手段で適用する補正が予め特定された搬送タイミングで適用されるように、上記上端処理が開始されるタイミングを繰り上げる制御をしつつ、同上端処理の際に印刷が開始されるラスタを繰り下げる制御をするとともに、上記濃度補正手段に対しては同繰り下げたラスタの分だけ以後の濃度の補正を適用するラスタをずらさせる位置合わせ量適用手段とを具備することを特徴とする印刷制御装置。
【請求項2】
上記プリンタとは異なる色空間における多階調の画像データを入力して同プリンタの色空間における多階調の画像データに色変換するとともに、変換後の同画像データを上記プリンタで記録可能な低階調の印刷データに階調変換するハーフトーンモジュールと、
上記低階調の印刷データを入力し、上記印刷ヘッドが上記主走査と福走査をしながら記録する際のラスタデータを生成するインターレースモジュールとを有するとともに、
上記濃度補正手段は、上記ハーフトーンモジュールが上記プリンタの色空間へ色変換した画像データに対してラスタ位置に対応した濃度の補正を行わせるものであり、上記位置合わせ量適用手段にて適用されるラスタの分だけ上記ラスタ位置を繰り下げて上記濃度の補正を行わせることを特徴とする上記請求項1に記載の印刷制御装置。
【請求項3】
上記位置合わせ量適用手段は、上記プリンタにおける搬送機構の搬送ローラが上記印刷媒体を挟持する状態から挟持しない状態へ変化するタイミングが、上記通常送り部での一回の搬送の概略中央で生じるように上記上端処理が開始されるタイミングを繰り上げる制御をしつつ、同上端処理の際に印刷が開始されるラスタを繰り下げる制御をすることを特徴とする上記請求項1または請求項2のいずれかに記載の印刷制御装置。
【請求項4】
上記位置合わせ量適用手段は、上記印刷条件として、縁あり印刷か、縁なし印刷かの情報と、印刷媒体の種類を取得することを特徴とする上記請求項1〜請求項3のいずれかに記載の印刷制御装置。
【請求項5】
所定の印刷媒体を副走査方向に搬送するとともに印刷ヘッドを用いて同印刷媒体上に記録を行うプリンタに対し、同印刷媒体の上記印刷ヘッドに対する相対的な複数の目標搬送位置に対応した複数の送り量の補正値を保持しつつ各目標搬送位置に対応させて上記プリンタに補正された搬送を行わせる第一の搬送補正工程と、
上記プリンタでの印刷の際、上端処理、通常送り部、下端処理のそれぞれにおいて、予め測定した濃度の偏差データに基づいて所定のラスタ毎に濃度の補正を行なわせる濃度補正工程と、
上記プリンタにおける搬送機構と上記印刷媒体の端部との相対位置関係で生じる送り誤差のデータに基づいて上記プリンタで補正された搬送を行わせる第二の搬送補正工程と、
適用される印刷条件に基づき、上記第二の搬送補正工程で適用する補正が予め特定された搬送タイミングで適用されるように、上記上端処理が開始されるタイミングを繰り上げる制御をしつつ、同上端処理の際に印刷が開始されるラスタを繰り下げる制御をするとともに、上記濃度補正工程に対しては同繰り下げたラスタの分だけ以後の濃度の補正を適用するラスタをずらさせる位置合わせ量適用工程とを具備することを特徴とする印刷制御方法。
【請求項6】
コンピュータにて印刷装置を制御する印刷制御プログラムを記録した媒体であって、
所定の印刷媒体を副走査方向に搬送するとともに印刷ヘッドを用いて同印刷媒体上に記録を行うプリンタに対し、同印刷媒体の上記印刷ヘッドに対する相対的な複数の目標搬送位置に対応した複数の送り量の補正値を保持しつつ各目標搬送位置に対応させて上記プリンタに補正された搬送を行わせる第一の搬送補正機能と、
上記プリンタでの印刷の際、上端処理、通常送り部、下端処理のそれぞれにおいて、予め測定した濃度の偏差データに基づいて所定のラスタ毎に濃度の補正を行なわせる濃度補正機能と、
上記プリンタにおける搬送機構と上記印刷媒体の端部との相対位置関係で生じる送り誤差のデータに基づいて上記プリンタで補正された搬送を行わせる第二の搬送補正機能と、
適用される印刷条件に基づき、上記第二の搬送補正工程で適用する補正が予め特定された搬送タイミングで適用されるように、上記上端処理が開始されるタイミングを繰り上げる制御をしつつ、同上端処理の際に印刷が開始されるラスタを繰り下げる制御をするとともに、上記濃度補正工程に対しては同繰り下げたラスタの分だけ以後の濃度の補正を適用するラスタをずらさせる位置合わせ量適用機能とをコンピュータに実現させることを特徴とする印刷制御プログラムを記録した媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−221645(P2008−221645A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−63928(P2007−63928)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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