説明

印刷構造体の製造方法

【課題】被印刷物の上に形成されたペーストの上に被着体を搭載したときに、ペースト中に気泡が巻き込まれるのを極力抑制することのできる印刷構造体を製造する。
【解決手段】先端部11側に位置するペースト4の押し面12が、先端部11をマスク30の上面に対向させたときに当該上面と鋭角をなすテーパ面とされている第1のスキージ10と、先端部21に進行方向に沿って延びる溝23が形成された第2のスキージ20とを用い、マスク30の上面にペースト4よりなる膜4aを形成するように、第1のスキージ10の押し面12によって、ペースト4を押し広げて開口部31へ充填し、続いて、第2のスキージ20の溝23が膜4aの上から開口部31の中央部の上を通るように、第2のスキージ20によってペースト4を押し広げ、開口部31に位置するペースト4の上面の中央部に、溝23が通過した軌跡として凸部4bを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクとスキージを用いて、被印刷物上にペースト印刷するようにした印刷構造体の製造方法に関し、特に、ペーストとして、はんだや接着剤を用い、さらに、被印刷物上にペーストを介して被着体を接合する場合に用いて、好適である。
【背景技術】
【0002】
この種の印刷構造体の製造方法としては、一般に、被印刷物上に、開口部を有するマスクを密着させ、マスクの上面に供給されたペーストを、マスクの上面と平行な方向にスキージを進行させてマスクの上面に押し広げることによって、開口部から現れた被印刷物上にペーストを充填して印刷するようにしたものが、広く行われている。
【0003】
ここで、ペーストとしては、はんだや接着剤などが用いられ、ペースト印刷により形成された印刷構造体に対して、さらに、ペーストの上に基板や電子部品などの被着体を搭載し、印刷構造体と被着体とを接合するようにしている。
【0004】
この場合、従来では、印刷されたペーストにおいて、その中央付近が凹んだ形状となりやすく、そのようなペーストの上に被着体を組み付けると、エアが巻き込まれ、ペースト中に気泡が形成されてしまう。このような気泡が形成されると、たとえば被着体の熱を、ペーストを介して被印刷物に放熱する場合、その放熱性が低下し、ひいては製品特性の悪化を招くなどの不具合が発生する。
【0005】
従来では、このような気泡巻き込みの問題に対して、先端面がその中央に向かって凹んでいるスキージを用いて、XYの2方向から印刷を実施することで、印刷物をドーム状に形成する方法が、提案されている(特許文献1参照)。そして、この方法によれば、気泡の発生が抑制できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開特開2000−71422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、上記した気泡巻き込みの問題について、試作検討を行った。図13は、従来の一般的な方法に基づく試作方法を示す工程図である。被印刷物としての台座3上にペースト4を印刷すると、図13(a)に示されるように、当該ペースト4は、その両端に山脈状の突起が形成され、中央付近が凹んだ形状となる。
【0008】
ここで、図13(b)に示されるように、被着体としての基板2を組付けると、エアが巻き込まれ、結果、図13(c)に示されるように、ペースト4中に気泡Kが形成されてしまう。このような気泡Kが形成されると、たとえば基板2上のICで発生した熱が、効果的に台座3に放射されなくなり、製品特性の悪化を招く。
【0009】
ここで、上記特許文献1について検討してみると、この特許文献1では、スキージの先端部には、その中央に向かって凹みが設けられており、このスキージを用いて、互いに直交するXYの2方向から印刷を実施する。そうすることで、印刷されたペーストは、その上面にドーム状の凸形状が形成される。そして、このペースト上に被着体を搭載すれば、気泡発生を抑制できる。
【0010】
しかし、実際には、上記特許文献1では、スキージは、ペーストを押す面である押し面と先端部の面とが垂直なものであり、印刷時には、押し面とマスクの上面とが直交した状態で、ペーストが押し広げられることになり、その場合、マスク上のペーストが全て掻き取られてしまう。
【0011】
そうなると、印刷の度に、マスクとペーストとの間に気泡が巻き込まれてしまうため、上記したドーム形状が安定的に形成されず、その結果、気泡を防止する効果が薄れてしまうと考えられる。
【0012】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、被印刷物の上に形成されたペーストの上に被着体を搭載したときに、ペースト中に気泡が巻き込まれるのを極力抑制することのできる印刷構造体を製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、以下のような点を特徴としている。
【0014】
・スキージとして、その先端部(11)側に位置し且つペースト(4)を進行方向に押していく面である押し面(12)が、当該先端部(11)をマスク(30)の上面に対向させたときに当該上面と鋭角をなすテーパ面として構成されている第1のスキージ(10)と、その先端部(21)に、進行方向に沿った当該先端部の両端間を延びる溝(23)が形成された第2のスキージ(20)とを用いること。
【0015】
・マスク(30)の上面にペースト(4)よりなる膜(4a)を形成するように、第1のスキージ(10)の押し面(12)によって、ペースト(4)をマスク(30)の上面に押し広げて開口部(31)への充填を行うこと。
【0016】
・続いて、第2のスキージ(20)の溝(23)がペースト(4)よりなる膜(4a)の上から開口部(31)の中央部の上を通るように、第2のスキージ(20)を進行させながら、ペースト(4)を押し広げることによって、開口部(31)に位置するペースト(4)の上面の中央部に、溝(23)が通過した軌跡として、当該ペースト(4)の上面の両端間を直線状に延びるペースト(4)よりなる凸部(4b)を形成すること。本発明は、これら各点を特徴とする印刷構造体の製造方法を提供する。
【0017】
それによれば、被印刷物(3)上に印刷されたペースト(4)は、その上面の中央部が凸部(4b)を構成しているから、当該ペースト(4)の上に被着体(2)を搭載しても、ペースト(4)の中央部から周辺部に向かってペースト(4)が押し出されながら濡れ拡がるため、気泡の巻き込みが抑制される。
【0018】
また、第1のスキージ(10)によって、マスク(30)の上面にペースト(4)よりなる膜(4a)が形成されることによって、第2のスキージ(20)によって凸部(4b)を形成するときに、マスク(30)とペースト(4)との間に気泡を巻き込むことが無くなり、安定した凸形状が形成される。そして、このペースト(4)よりなる膜(4a)は、上記テーパ面を押し面(12)とする第1のスキージ(10)によって、適切に形成される。
【0019】
よって、本発明の製造方法によれば、被印刷物(3)の上に形成されたペースト(4)の上に被着体(2)を搭載したときに、ペースト(4)中に気泡が巻き込まれるのを極力抑制することのできる印刷構造体を製造することができる。
【0020】
また、請求項2に記載の発明では、請求項1の製造方法において、マスク(30)として、開口部(31)のうちペースト(4)の上面の凸部(4b)の両端に対応する部位には、当該開口部(31)の内部に張り出した張り出し部(32)が設けられ、この張り出し部(32)によって、開口部(31)のうち凸部(4b)が形成される部位は、当該開口部(31)のそれ以外の部位よりも幅が狭くなっているものを用いることを特徴としている。
【0021】
それによれば、被印刷物(3)上のペースト(4)の上に被着体(2)を搭載したときに、張り出し部(32)が無い場合には、凸部(4b)の部分では、ペースト(4)の量が多く、はみ出しも多くなるが、本発明では、張り出し部(32)によって、当該ペースト(4)のうち凸部(4b)の部位では幅を狭くすることができ、上記はみ出しを抑制するのに好ましいペースト形状を実現できる。
【0022】
ここで、請求項3に記載の発明のように、請求項1または請求項2の製造方法においては、第1のスキージ(10)と第2のスキージ(20)とは別体のものであり、第1のスキージ(10)と第2のスキージ(20)とでは、その進行方向が逆向きとなるようにし、第2のスキージ(20)によってペースト(4)を押し広げるときには、第1のスキージ(10)の進行方向の終点側に集められたペースト(4)を、第1のスキージ(10)の進行方向の始点側に向けて押し広げていくようにしてもよい。それによれば、上記製造方法を適切に行える。
【0023】
また、請求項4に記載の発明のように、請求項1または請求項2の製造方法においては、第1のスキージ(10)と第2のスキージ(20)とでは、その進行方向が同じ向きとなるようにし、ペースト(4)よりなる膜(4a)の厚さを、第2のスキージ(20)における溝(23)の深さ以上となるように、第1のスキージ(10)によってペースト(4)よりなる膜(4a)を形成するようにしてもよい。
【0024】
この場合も、請求項1の製造方法を適切に行える。また、両スキージ(10、20)の進行方向が同じ向きである場合、ペースト(4)よりなる膜(4a)の厚さを、第2のスキージ(20)における溝(23)の深さ以上とすることで、上記凸部(4b)の形成において気泡の巻き込みが防止される。
【0025】
また、請求項4の製造方法においては、請求項5に記載の発明のように、第1のスキージ(10)と第2のスキージ(20)とは別体のものであってもよいし、請求項6に記載の発明のように、第1のスキージ(10)と第2のスキージ(20)とは一体化された1個の部材として構成されたものであって、当該両スキージ(10、20)の進行方向の前方側に第1のスキージ(10)が位置するように当該進行方向に沿って配置されたものであってもよい。
【0026】
一体化されている場合、第1のスキージ(10)と第2のスキージ(20)とで位置ずれが起こらず、1回の印刷で済むという利点がある。
【0027】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1実施形態に係る印刷構造体に被着体を搭載した状態の概略断面図である。
【図2】第1実施形態の印刷構造体の製造方法に用いる第1のスキージを示す図であり、(a)は縦断面図、(b)は押し面の概略平面図である。
【図3】第1実施形態の印刷構造体の製造方法に用いる第2のスキージを示す図であり、(a)は縦断面図、(b)は押し面の概略平面図、(c)は先端部の平面図である。
【図4】第1実施形態の印刷構造体の製造方法を示す工程図である。
【図5】図4に続く製造方法を示す工程図である。
【図6】図5に続く製造方法を示す工程図である。
【図7】ペーストのはみ出しの問題を説明するための概略平面図である。
【図8】第1実施形態の他の例としての製造方法を示す工程図である。
【図9】第1実施形態に適用可能なスキージの他の例を示す縦断面図である。
【図10】本発明の第2実施形態に係る印刷構造体の製造方法の要部工程を示す概略断面図である。
【図11】本発明の第3実施形態に係る印刷構造体の製造方法の要部工程を示す概略断面図である。
【図12】本発明の第4実施形態に係る印刷構造体の製造方法の要部工程を示す概略断面図である。
【図13】従来の一般的な方法に基づく本発明者の試作方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0030】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る印刷構造体1に被着体2を搭載した状態の概略断面構成を示す図である。印刷構造体1は、被印刷物3の上にペースト4を印刷してなるものであり、被着体2は、ペースト4を介して被印刷物3に接合されている。
【0031】
被印刷物3は、たとえばヒートシンクや、プリント基板またはセラミック基板などの配線基板であり、ペースト4は、たとえばエポキシ樹脂やシリコーン樹脂などの接着剤や、はんだなどである。また、被着体2は、たとえばセラミック基板やプリント基板、またはICチップなどの電子部品などである。
【0032】
次に、この印刷構造体1の製造方法について、図2〜図6を参照して述べる。図2は、本製造方法に用いる第1のスキージ10を示す図であり、(a)はその進行方向Y1に沿った縦断面図、(b)はその進行方向Y1の前方側に位置する押し面12の概略平面図である。
【0033】
図3は、本製造方法に用いる第2のスキージ20を示す図であり、(a)はその進行方向Y2に沿った縦断面図、(b)はその進行方向Y2の前方側に位置する押し面22の概略平面図、(c)は先端部21の平面図である。また、図4〜図6は、本製造方法を図番の順に示す工程図であり、図4、図5はスキージ10、20の進行方向Y1、Y2に平行な断面図、図6は当該進行方向Y1、Y2に直交する断面図である。
【0034】
本製造方法は、大きくは、図4〜図6に示されるように、被印刷物3上に、開口部31を有するマスク30を密着させ、マスク30の上面に供給されたペースト4を、マスク30の上面と平行な方向にスキージ10、20を進行させてマスク30の上面に押し広げ、それによって、開口部31から現れた被印刷物3上にペースト4を充填して印刷するようにしたものである。
【0035】
本実施形態の製造方法では、図2および図3に示されるように、スキージとして形状の異なる第1のスキージ10と第2のスキージ20とを用いる。ここで、各スキージ10、20のうちの先端部11、21とは、ペースト4の印刷時にマスク30の上面に対向させる部位である。
【0036】
また、各スキージ10、20のうちの押し面12、22とは、先端部11、21に隣接している面であって、ペースト4に接触しペースト4をスキージ進行方向Y1、Y2に沿って押していく面である。
【0037】
そして、図2に示されるように、第1のスキージ10においては、その押し面12が、先端部11をマスク30の上面に対向させたときに当該上面と鋭角θをなすテーパ面として構成されたものである。
【0038】
また、図3に示されるように、第2のスキージ20においては、その先端部21が平坦面であるが、当該先端部21には、第2のスキージ20の進行方向Y2に沿った当該先端部21の両端間を延びる溝23が形成されている。ここでは、溝23は、第2のスキージ20の進行方向Y2に沿った先端部21の両端間を直線状に延びており、円弧状をなす溝とされている。
【0039】
そして、本実施形態の製造方法では、これら第1のスキージ10と第2のスキージ20とを用いてペースト4の印刷を行う。これら両スキージ10、20は、別体のものであり、それぞれ単独に可動するものであってもよいが、本実施形態では、図4、図5に示されるように、両スキージ10、20は一体に移動するとともに、それぞれのスキージ10、20毎に独立して、マスク30上の高さが調整可能とされている。
【0040】
まず、被印刷物3の上に、ペースト4の配置領域に開口部31を位置合わせしつつ、マスク30を搭載し、密着させる。そして、マスク30の上面における一方の周辺部に、ペースト4をディスペンスなどによって供給する。
【0041】
そして、図4に示されるように、第1のスキージ10の押し面11によって、ペースト4をマスク30の上面に押し広げて開口部31への充填を行う。具体的には、図4中の左側を始点、右側を終点として第1のスキージ10の進行方向Y1に沿って、第1のスキージ10を進行させる。
【0042】
このとき、図4(b)に示されるように、開口部31以外の部位では、マスク30の上面にペースト4よりなる膜4a(以下、単に薄膜4aという)を形成するように、マスク30への加圧を調整して、第1のスキージ10を進行させる。本実施形態では、第1のスキージ10の押し面12が上記テーパ面とされていることで、開口部31にかすれ無くペースト4が充填されるとともに、上記薄膜4aが容易に形成される。
【0043】
続いて、図5に示されるように、第1のスキージ10はペースト4に接触しないようにマスク30の上方に引き上げ、代わりに、第2のスキージ20をマスク30側に下降させ、その先端部21をマスク30の上面に対向させる。そして、第1のスキージ10によって押し広げられたペースト4を、今度は第2のスキージ20の押し面22によって押し広げる。
【0044】
本実施形態では、図5に示されるように、第2のスキージ20の進行方向Y2は、第1のスキージ10の進行方向Y1とは逆向きである。つまり、第2のスキージ20によってペースト4を押し広げるときには、第1のスキージ10の進行方向Y1の終点側に集められたペースト4を、第1のスキージ10の進行方向Y1の始点側に向かって押し広げていく。
【0045】
そして、図5(b)に示されるように、第2のスキージ20の先端部21の溝23が薄膜4aの上からマスク30の開口部31の中央部の上を通るように、第2のスキージ20を進行させながら、ペースト4を押し広げる。
【0046】
それによって、マスク30の開口部31に位置するペースト4の上面の中央部に、当該上面の両端間を直線状に延びるペースト4よりなる凸部4bが形成される。ここでは、円弧状の溝23により、溝23が通過した軌跡として、ドーム形状をなす凸部4bが形成される。
【0047】
なお、このとき、第1スキージ10によってマスク30の上面にペースト4よりなる薄膜4aが形成されたことによって、マスク30とペースト4との間に気泡を巻き込むことがなくなる。そのため、凸部4b内にて気泡による欠損が防止され、安定した凸形状を有する凸部4bが形成される。そして、図5(c)に示されるように、被印刷物3上からマスク30を取り外せば、本実施形態の印刷構造体1ができあがる。
【0048】
次に、図6に示されるように、この印刷構造体1に被着体2を組み付ける。具体的には、被着体2を、ペースト4を介して被印刷物3上に配置し、加圧しながら組み付ける。このとき、図6(b)に示されるように、被着体2は、ペースト4の凸部4bから接触させ、その周囲に向かってペースト4を押し出しながら濡れ広げるようにする。
【0049】
こうして被着体2を搭載した後、加熱・乾燥などによりペースト4を硬化させれば、被着体2と被印刷物3とが接合される。こうして、図6(c)に示されるように、本実施形態の印刷構造体1に被着体2が組み付けられたものができあがる。
【0050】
ところで、本実施形態によれば、被印刷物3上に印刷されたペースト4は、その上面の中央部がドーム形状の凸部4bを構成しているから、ペースト4の上に被着体2を搭載しても、ペースト4の中央部から周辺部に向かってペースト4が押し出されながら濡れ拡がる。そのため、ペースト4内への気泡の巻き込みが軽微になるとともに、多少巻き込まれた気泡も加圧時に周囲に押し出され、ペースト4内に残存することはない。
【0051】
また、上述したが、第1のスキージ10によって、マスク30の上面にペースト4よりなる薄膜4aが形成されることによって、第2のスキージ20によって凸部4bを形成するときに、マスク30とペースト4との間に気泡を巻き込むことが無くなり、安定した凸形状が形成される。
【0052】
そして、この薄膜4aは、上記テーパ面を押し面12とする第1のスキージ10によって、適切に形成される。もし、第1のスキージ10の押し面12が、従来のように、その進行方向と直交する面であった場合には、第1のスキージ10をマスク30の上面にて摺動させたときに、ペースト4がかきとられてしまい、マスク30の上面に残すことは困難である。
【0053】
このように、本実施形態の製造方法によれば、被印刷物3の上に形成されたペースト4の上に被着体2を搭載したときに、ペースト4中に気泡が巻き込まれるのを極力抑制することのできる印刷構造体1を製造することができる。
【0054】
また、本実施形態の製造方法について、さらに検討を進めたところ、このように印刷されたペースト4の上面に上記凸部4bを形成する場合、さらに、次のようなペースト4のはみ出しの問題が生じる可能性があることがわかった。図7は、この問題を説明するための概略平面図である。
【0055】
図7(a)、(b)に示されるように、マスク30の開口部31にて印刷されたペースト4のうち凸部4bは、当該ペースト4の他の部位に比べて厚くなっている。この場合、その上から被着体2を搭載すると、図7(c)に示されるように、厚い凸部4bにてペースト4のはみ出し4cが過多になる。
【0056】
このようなはみ出し4cが大きい場合、たとえば、このものをモールド樹脂で覆ったときに、当該はみ出し4cの部分を起点として当該モールド樹脂の剥離や破壊が発生しやすく、製品特性の悪化を招くなどの問題が生じる可能性がある。
【0057】
そこで、本発明者は、本実施形態の他の例として、図8に示される方法を提供する。図8は、当該他の例としての製造方法を示す工程図であり、各工程について、被印刷物3の上方からみた概略平面図として表わしている。
【0058】
この例では、図8(a)に示されるように、マスク30として、開口部31のうちペースト4の上面の凸部4bの両端に対応する部位に、開口部31の内部に向かって張り出した張り出し部32が設けられたものを用いる。
【0059】
そして、この張り出し部32を持つことにより、本マスク30では、上記スキージ10、20の進行方向Y1、Y2に平行な方向の幅について、開口部31のうち上記凸部4bが形成される部位は、当該開口部31のそれ以外の部位よりも狭くなっている。
【0060】
この張り出し部32を有するマスク30を用いれば、図8(b)に示されるように、印刷されたペースト4における凸部4bの部分は、その幅が他の部分よりも狭くなる。そのため、被印刷物3上のペースト4の上に被着体2を搭載したときに、凸部4bの部分では、被着体2の外側へのペースト4のはみ出しを抑制することができる。
【0061】
また、図9は、本実施形態に適用可能なスキージ10、20の他の例を示す縦断面図である。第1のスキージ10は、上記テーパ面としての押し面12を有し、上記薄膜4aを形成するものであればよく、たとえば、図9(a)に示されるような薄板状のものや、図9(b)に示されるような先端鋭利な形状のものであってもよい。
【0062】
また、第2のスキージ20は上記溝23を有し、それによって最終的に凸部4bを画定するものであればよく、これについても、たとえば、図9(c)に示されるような薄板状のものや、図9(d)に示されるような先端鋭利な形状のものであってもよい。
【0063】
(第2実施形態)
図10は、本発明の第2実施形態に係る印刷構造体1の製造方法の要部工程を示す概略断面図である。本実施形態は、上記第1実施形態に比べて、スキージ10、20に変更を加えたものであり、ここでは、第1実施形態との相違点を中心に述べることとする。
【0064】
上記第1実施形態では、第1のスキージ10と第2のスキージ20とは別体のものであって、これら両スキージ10、20の進行方向Y1、Y2が互いに逆向きであったが、本実施形態では、図10に示されるように、両スキージ10、20の進行方向Y1、Y2が同じ向きとされている。
【0065】
この場合、第1のスキージ10によってペースト4を押し広げ、開口部31への充填および上記薄膜4aの形成を行った後に、上記薄膜4a上をなぞるように、第2のスキージ20によってペースト4を押し広げる。
【0066】
また、本実施形態では、第1のスキージ10により形成される薄膜4aの厚さを、第2のスキージ20における溝23の深さ以上とするように、第1のスキージ10の進行を行う。そうすることで、第2のスキージ20の溝23によって気泡を巻き込むことなく、凸部4bを形成することができる。
【0067】
(第3実施形態)
図11は、本発明の第3実施形態に係る印刷構造体1の製造方法の要部工程を示す概略断面図である。本実施形態は、上記第2実施形態において、両スキージ10、20を一体化したものであり、この点を中心に述べることとする。
【0068】
上記第2実施形態では、第1のスキージ10と第2のスキージ20とは別体のものであって、これら両スキージ10、20の進行方向Y1、Y2が同じ向きとされていたが、本実施形態では、図11に示されるように、第1のスキージ10と第2のスキージ20とは一体化された1個の部材として構成されている。
【0069】
なお、両スキージ10、20は単一の部材であるが、図11には便宜的に一点鎖線Sを示し、この一点鎖線Sを挟んで進行方向Y1、Y2の前方側の部分が第1のスキージ10、後方側の部分が第2のスキージ20として構成されている。
【0070】
そして、両スキージ10、20の進行方向Y1、Y2の前方側に第1のスキージ10が位置し、後方側に第2のスキージ20が位置するように、当該進行方向に沿って両スキージ10、20が配置されたものとなっている。
【0071】
この場合、第1のスキージ10によるペースト4の押し広げが行われ、そのあとに第2のスキージ20が続くことで、第2のスキージ20によるペースト4の押し広げが行われる。そのため、本実施形態では、第1のスキージ10と第2のスキージ20とで位置ずれが起こらず、1回の印刷で済むという利点がある。
【0072】
(第4実施形態)
図13は、本発明の第4実施形態に係る印刷構造体の製造方法の要部工程を示す概略断面図であり、(a)は印刷後のペースト4の平面図、(b)は本製造方法に用いられる第2のスキージ20の押し面22の概略平面図である。
【0073】
図13に示されるように、マスク30の複数個の開口部31に対して同時にペースト4を印刷してもよく、その場合には、各開口部31に跨るサイズのスキージ10、20を用いればよい。たとえば、図13(b)に示されるように、第2のスキージ20については、各開口部31に対応して複数個の溝23を設ければよい。
【0074】
(他の実施形態)
なお、上記各実施形態では、溝はスキージ進行方向に直交する平面に平行な断面形状が円弧状であってが、それ以外にも、たとえば矩形状、三角形状などであってもよい。
【符号の説明】
【0075】
3 被印刷物
4 ペースト
4a ペーストよりなる膜としての薄膜
4b 凸部
10 第1のスキージ
11 第1のスキージの先端部
12 第1のスキージの押し面
20 第2のスキージ
21 第2のスキージの先端部
23 第2のスキージの溝
30 マスク
31 マスクの開口部
32 張り出し部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印刷物(3)上に、開口部(31)を有するマスク(30)を密着させ、前記マスク(30)の上面に供給されたペースト(4)を、前記マスク(30)の上面と平行な方向にスキージ(10、20)を進行させて前記マスク(30)の上面に押し広げることによって、前記開口部(31)から現れた前記被印刷物(3)上に前記ペースト(4)を充填して印刷するようにした印刷構造体の製造方法において、
前記スキージとして、その先端部(11)側に位置し且つ前記ペースト(4)を進行方向に押していく面である押し面(12)が、当該先端部(11)を前記マスク(30)の上面に対向させたときに当該上面と鋭角をなすテーパ面として構成されている第1のスキージ(10)と、
その先端部(21)に、進行方向に沿った当該先端部の両端間を延びる溝(23)が形成された第2のスキージ(20)とを用い、
前記マスク(30)の上面に前記ペースト(4)よりなる膜(4a)を形成するように、前記第1のスキージ(10)の前記押し面(12)によって、前記ペースト(4)を前記マスク(30)の上面に押し広げて前記開口部(31)への充填を行い、
続いて、前記第2のスキージ(20)の前記溝(23)が前記ペースト(4)よりなる膜(4a)の上から前記開口部(31)の中央部の上を通るように、前記第2のスキージ(20)を進行させながら、前記ペースト(4)を押し広げることによって、前記開口部(31)に位置する前記ペースト(4)の上面の中央部に、前記溝(23)が通過した軌跡として、当該ペースト(4)の上面の両端間を直線状に延びる前記ペースト(4)よりなる凸部(4b)を形成することを特徴とする印刷構造体の製造方法。
【請求項2】
前記マスク(30)として、前記開口部(31)のうち前記ペースト(4)の上面の前記凸部(4b)の両端に対応する部位には、当該開口部(31)の内部に張り出した張り出し部(32)が設けられ、この張り出し部(32)によって、前記開口部(31)のうち前記凸部(4b)が形成される部位は、当該開口部(31)のそれ以外の部位よりも幅が狭くなっているものを用いることを特徴とする請求項1に記載の印刷構造体の製造方法。
【請求項3】
前記第1のスキージ(10)と前記第2のスキージ(20)とは別体のものであり、
前記第1のスキージ(10)と前記第2のスキージ(20)とでは、その進行方向が逆向きとなるようにし、
前記第2のスキージ(20)によって前記ペースト(4)を押し広げるときには、前記第1のスキージ(10)の進行方向の終点側に集められた前記ペースト(4)を、前記第1のスキージ(10)の進行方向の始点側に向けて押し広げていくようにすることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷構造体の製造方法。
【請求項4】
前記第1のスキージ(10)と前記第2のスキージ(20)とでは、その進行方向が同じ向きとなるようにし、
前記ペースト(4)よりなる膜(4a)の厚さを、前記第2のスキージ(20)における前記溝(23)の深さ以上となるように、前記第1のスキージ(10)によって前記ペースト(4)よりなる膜(4a)を形成することを特徴とする請求項1または2に記載の印刷構造体の製造方法。
【請求項5】
前記第1のスキージ(10)と前記第2のスキージ(20)とは別体のものであることを特徴とする請求項4に記載の印刷構造体の製造方法。
【請求項6】
前記第1のスキージ(10)と前記第2のスキージ(20)とは一体化された1個の部材として構成されたものであって、当該両スキージ(10、20)の進行方向の前方側に前記第1のスキージ(10)が位置するように当該進行方向に沿って配置されたものであることを特徴とする請求項4に記載の印刷構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−283047(P2010−283047A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133700(P2009−133700)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】