説明

印刷機の印刷方法及び印刷機

【課題】レンズ部を有する立体的視覚効果のある印刷物を確実かつ容易に作成することができる印刷機の印刷方法及び印刷機を提供することをその課題とする。
【解決手段】第1のニス塗布部C1でニスが塗布され、乾燥装置Tにより塗布されたニスは半硬化状態となる。そして第2のニス塗布部C2により再びニスが塗布され、表面処理部Dにて転写フィルム14が枚葉紙Pに押付けられ、枚葉紙P上のニス塗布面が凹部14aに入り込み、紫外線照射部15によりニス塗布面は硬化されて凹部14aと同一形状となり、印刷面の上に透明なレンズ部として形成されることとなる。凹部14aに対応しない枚葉紙Pのニス塗布面は平滑となり、光沢度がアップする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷機の印刷方法及び印刷機に関するものであり、特に立体的視覚効果のある印刷物を印刷する印刷機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
立体感や揺らぎ感を呈するモアレ現象を利用した印刷物を得る手段として、特許文献1のように凸レンズの役割をする凸状集光素を透明基板上に設置し、この凸状集光素を通して画像を立体的に見せる技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−35083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の記載によると、凸状集光素の材質は透明性を有する着色又は無着色で、基板に対する印刷特性の良いインキであることが条件とされ、基板上に規則正しい配列状態に印刷するという開示はあるが、具体的方法についての言及がない。特に、印刷で凸状集光素を形成する場合、一定の厚さが必要であり、これを確実かつ容易に形成可能な装置及び方法が求められていた。
【0005】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的は、レンズ部を有する立体的視覚効果のある印刷物を確実かつ容易に作成することができる印刷機の印刷方法及び印刷機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、搬送される用紙Pを印刷する印刷部Bと、該印刷部Bで印刷された用紙Pにニスを塗布するニス塗布部Cと、該ニス塗布部Cにより塗布されたニス塗布面に転写フィルム14を押付けて表面処理を行う表面処理部Dとを備えた印刷機において、該ニス塗布部は第1のニス塗布部C1と、該第1のニス塗布部C1により塗布されたニス塗布面を乾燥させる乾燥部Tと、該乾燥部Tにより乾燥されたニス塗布面に再度ニスを塗布する第2のニス塗布部C2とからなり、該転写フィルム14はニス塗布面を凸状に形成するためのレンズ状凹部14aを有することを特徴とする。
【0007】
また、本発明は、搬送される用紙Pを印刷する印刷部Bと、該印刷部Bで印刷された用紙Pにニスを塗布するニス塗布部Cと、該ニス塗布部Cにより塗布されたニス塗布面に転写フィルム14を押付けて表面処理を行う表面処理部Dとを備えた印刷機の印刷方法において、用紙Pに印刷する印刷工程と、該印刷工程で印刷された用紙Pにニスを塗布する第1ニス塗布工程と、該第1ニス塗布工程により塗布されたニス塗布面を乾燥させる乾燥工程と、該乾燥工程で乾燥されたニス塗布面に再度ニスを塗布する第2ニス塗布工程と、レンズ状凹部14aを有する転写フィルム14をニス塗布面に押付けて表面処理を行う表面処理工程とを有することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、搬送される用紙Pを印刷する印刷部Bと、該印刷部Bで印刷された用紙Pにニスを塗布するニス塗布部Cと、該ニス塗布部Cにより塗布されたニス塗布面に転写フィルム14を押付けて表面処理を行う表面処理部Dとを備えた印刷機の印刷方法において、用紙に印刷する印刷工程と、該印刷工程で印刷された用紙にニスを塗布する第1ニス塗布工程と、該第1ニス塗布工程により塗布されたニス塗布面を乾燥させる乾燥工程と、用紙を排紙する排紙工程と、該排紙工程で排紙された用紙Pを再度該印刷機内に搬送し、乾燥されたニス塗布面に再度ニスを塗布する第2ニス塗布工程と、レンズ状凹部14aを有する転写フィルム14をニス塗布面に押付けて表面処理を行う表面処理工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明による印刷機によれば、ニス塗布部は第1のニス塗布部と、第1のニス塗布部により塗布されたニス塗布面を乾燥させる乾燥部と、乾燥部により乾燥されたニス塗布面に再度ニスを塗布する第2のニス塗布部とからなり、転写フィルムはニス塗布面を凸状に形成するためのレンズ状凹部を有するので、レンズ部を有する立体的視覚効果のある印刷物を確実かつ容易に作成することができる印刷機を得ることが可能となる。
【0010】
また、本発明による印刷機の印刷方法によれば、用紙に印刷する印刷工程と、該印刷工程で印刷された用紙にニスを塗布する第1ニス塗布工程と、該第1ニス塗布工程により塗布されたニス塗布面を乾燥させる乾燥工程と、該乾燥工程で乾燥されたニス塗布面に再度ニスを塗布する第2ニス塗布工程と、レンズ状凹部を有する転写フィルムをニス塗布面に押付けて表面処理を行う表面処理工程とを有するので、レンズ部を有する立体的視覚効果のある印刷物を確実かつ容易に作成することができる印刷機の印刷方法を得ることが可能となる。
【0011】
また、本発明による印刷機の印刷方法によれば、用紙に印刷する印刷工程と、該印刷工程で印刷された用紙にニスを塗布する第1ニス塗布工程と、該第1ニス塗布工程により塗布されたニス塗布面を乾燥させる乾燥工程と、用紙を排紙する排紙工程と、該排紙工程で排紙された用紙を再度該印刷機内に搬送し、乾燥されたニス塗布面に再度ニスを塗布する第2ニス塗布工程と、レンズ状凹部を有する転写フィルムをニス塗布面に押付けて表面処理を行う表面処理工程とを有するので、レンズ部を有する立体的視覚効果のある印刷物を確実かつ容易に作成することができる印刷機の印刷方法を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の印刷機の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の印刷機の他の実施形態を示す概略構成図である。
【図3】本発明の印刷機の表面処理部の転写フィルムの一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1は本発明の印刷機の一例である。図1の概略側面図に示す通り、本実施形態に係る印刷機は枚葉オフセット印刷機である。この印刷機は、紙積み台からフィーダ装置や用紙分離装置等により一枚ずつ印刷用紙としての枚葉紙Pを送り出すための給紙部Aと、この給紙部Aからの枚葉紙Pに印刷を行うための印刷部Bと、印刷された枚葉紙Pにニスコーティングをする第1のニス塗布部C1と、それに続いて枚葉紙Pに更にニスコーティングをする第2のニス塗布部C2と、枚葉紙P上のニス塗布面に転写フィルムを押付けて紫外線照射し、ニス塗布面に表面処理を施す表面処理部Dと、枚葉紙Pを排紙するための排紙部Eとを備えている。
【0015】
ここで印刷部Bは、1色の印刷が行えるように1台の印刷ユニットを備えた印刷部Bとしているが、1色以外の色、つまり複数の印刷が行える印刷部であってもよい。又、前記排紙部Eは、グリッパを備えるチェーン搬送装置にて構成しているが、チェーン搬送装置に限らなくてもよい。又、印刷機を構成する各部の具体的な構成は図に示されるものに限定されるものではない。
【0016】
前記印刷部Bは、印刷版が巻回される版胴1とゴム胴2とインキローラ群3、そして圧胴4と渡し胴5とを備えている。図示していないが、前記胴4、5のそれぞれには、送り出されてきた枚葉紙Pを爪台と爪とで把持するグリッパを円周方向の2箇所(1箇所又は3箇所以上でもよい)に備えている。符号6は給紙胴であり、フィーダーボード7上を搬送される枚葉紙Pを図示しないスイングアームから受け取り、圧胴4に渡す役割を果たす。給紙胴6、スイングアームにも前記の爪台と爪が設けられている。また、ニス塗布部C1とC2との間の渡し胴5と、ニス塗布部C2と表面処理部Dとの間の渡し胴5については、未乾燥のニスの付着を防ぐため、扁平系の、いわゆるスケルトン胴とするか、渡し胴5の下にガイドを設け、このガイドからエア吸引して枚葉紙Pをガイドに沿わせて搬送するとよい。
【0017】
ニス塗布部C1、C2はそれぞれニス版胴8とニスゴム胴9、ニス圧胴10とを有し、搬送される枚葉紙Pに有色あるいは無色の透明な紫外線硬化型樹脂ニスを塗布する。ニス版胴8には図示しないチャンバーからニスが供給され、ニスゴム胴9へニスを供給する。ニス版胴8及びニスゴム胴9は図示しないニス胴支持部材に支持されて、図示しない駆動モータにより、ニス圧胴10に対して接離可能に構成されており、ニス圧胴10への接近時に枚葉紙Pへニスを押圧転写するようになっている。このニス圧胴10への接触時を胴入れ、ニス圧胴10からの離脱時を胴抜きという。
また、第1のニス塗布部C1のニス圧胴10の近傍には、第1のニス塗布部C1で塗布されたニスを乾燥硬化させる乾燥装置Tが設けられている。
【0018】
表面処理部Dは、転写フィルム14が巻き付けられるとともに送り出し可能な供給ロール11と、この供給ロール11から送り出された転写フィルム14を圧胴16上の枚葉紙Pに押付ける押圧ローラ17、18と、押付けられた転写フィルム14を巻き取る、巻き取りロール12と、供給ロール11と巻き取りロール12との間に配置されたフィルム案内用ローラ群13と、押圧ローラ17、18間の転写フィルム14を照射して、転写フィルム14越しに枚葉紙P上のニス塗布面を乾燥する紫外線照射部15とを備えている。転写フィルム14は図示しないフィルム駆動モータにより駆動される。
【0019】
押圧ローラ17,18と紫外線照射部15とは図示しないフィルム支持部材に支持されて、図示しないフィルム支持部材駆動モータにより上昇下降可能になっており、図1の二点鎖線で示すとおり、圧胴16に対して接離可能となっている。
尚、転写フィルム14は図3のように、透明のフィルムにレンズ状の凹部14aを有している。
【0020】
本実施形態の作用について説明する。給紙部Aから搬送される枚葉紙Pは印刷部Bで印刷され、第1のニス塗布部C1でニスが塗布され、乾燥装置Tにより塗布されたニスは半硬化状態となる。そして第2のニス塗布部C2により再びニスが塗布され、表面処理部Dにて転写フィルム14が枚葉紙Pに押付けられ、紫外線照射部15により枚葉紙Pのニス塗布面は硬化されて転写フィルム14と一体化し、搬送方向終端まで移動してきた転写フィルム14と枚葉紙Pとが互いに離間する側に移動することによって両者が剥離され、転写フィルム14は巻取りロール12へ巻き取られ、硬化した紫外線硬化型樹脂ニスが一体化された枚葉紙Pは排紙部Eへ受け渡されることになる。
【0021】
転写フィルム14を押し付けることによって、枚葉紙P上のニス塗布面が凹部14aに入り込み、紫外線照射部15によりニス塗布面は硬化されて凹部14aと同一形状となり、印刷面の上に透明なレンズ部として形成されることとなる。凹部14aに対応しない枚葉紙Pのニス塗布面は平滑となり、光沢度がアップする。
【0022】
このように、第1のニス塗布部C1と第2のニス塗布部C2とのニス塗布により、塗布されるニスの膜厚が増し、印刷面の上に透明なレンズ部が確実にかつ容易に形成されることとなる。しかも、1台の印刷機の1工程でレンズ部を有する印刷物を確実かつ容易に、しかも短時間で作成できる。
【0023】
図2に本発明の印刷機の他の実施形態を示す。本実施形態の図1との相違点は、ニス塗布部Cが1ユニットのみであることで、他は図1の実施形態と同様であるので詳細な説明を省略する。
【0024】
本実施形態の作用について説明する。作業者は枚葉紙Pを給紙部Aにセットし、印刷作業を開始する。給紙部Aから搬送される枚葉紙Pは印刷部Bで印刷され、ニス塗布部Cでニスが塗布され、乾燥装置Tにより塗布されたニスは半硬化状態となる。最初の工程では表面処理部Dのフィルム支持部材に支持された押圧ローラ17,18と紫外線照射部15とを図示しないフィルム支持部材駆動モータにより上昇させておき、フィルム14をニス塗布面に当接させないようにしておく。よって表面処理が行われることはなく、枚葉紙Pは排紙部Eに排紙される。
【0025】
次に、作業者は排紙部Eから印刷、ニス塗布済みの枚葉紙Pを再び給紙部Aにセットする。給紙部Aから再び搬送される枚葉紙Pは機内に案内されるが、前述の工程で既に印刷が行われているので、印刷部Bを胴抜きして印刷は行わない。そしてニス塗布部Cでニスが再び塗布されるが、乾燥装置Tは使用しない。そして表面処理部Dのフィルム支持部材に支持された押圧ローラ17,18と紫外線照射部15とを図示しないフィルム支持部材駆動モータにより下降させておき、転写フィルム14が枚葉紙Pに押付けられ、紫外線照射部15により枚葉紙Pのニス塗布面は硬化されて転写フィルム14と一体化し、搬送方向終端まで移動してきた転写フィルム14と枚葉紙Pとが互いに離間する側に移動することによって両者が剥離され、転写フィルム14は巻取りロール12へ巻き取られ、硬化した紫外線硬化型樹脂ニスが一体化された枚葉紙Pは排紙部Eへ受け渡されることになる。
【0026】
前述の実施形態同様、転写フィルム14を押し付けることによって、枚葉紙P上のニス塗布面が凹部14aに入り込み、紫外線照射部15によりニス塗布面は硬化されて凹部14aと同一形状となり、印刷面の上に透明なレンズ部として形成されることとなる。凹部14aに対応しない枚葉紙Pのニス塗布面は平滑となり、光沢度がアップする。
【0027】
このように、印刷、ニス塗布、乾燥という第1の工程と、ニス塗布、表面処理という第2の工程により塗布されるニスの膜厚が増し、印刷面の上に透明なレンズ部が確実にかつ容易に形成されることとなる。しかも、ニス塗布部を複数設ける必要がなく、コストが安く、簡単な構成の印刷機でレンズ部を有する印刷物を確実かつ容易に作成できる。
【0028】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、前述の実施形態では、紫外線硬化型樹脂ニスを用いていたが、これに限らず、例えば熱効果型ニスを用いてもよい。また、前述の実施形態では、枚葉オフセット印刷機であったが、これに限定されず、インクジェット式印刷機やフレキソ印刷機のようなものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明に係る印刷機の印刷方法及び印刷機は、レンズ部を有する立体的視覚効果のある印刷物を作成する印刷機において極めて有用である。
【符号の説明】
【0030】
14 転写フィルム 14a 凹部 15 紫外線照射部
A 給紙部 B 印刷部 C ニス塗布部
C1 第1のニス塗布部 C2 第2のニス塗布部 D表面処理部
E排紙部 P 枚葉紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される用紙を印刷する印刷部と、該印刷部で印刷された用紙にニスを塗布するニス塗布部と、該ニス塗布部により塗布されたニス塗布面に転写フィルムを押付けて表面処理を行う表面処理部とを備えた印刷機において、
該ニス塗布部は第1のニス塗布部と、該第1のニス塗布部により塗布されたニス塗布面を乾燥させる乾燥部と、該乾燥部により乾燥されたニス塗布面に再度ニスを塗布する第2のニス塗布部とからなり、該転写フィルムはニス塗布面を凸状に形成するためのレンズ状凹部を有することを特徴とする印刷機。
【請求項2】
搬送される用紙を印刷する印刷部と、該印刷部で印刷された用紙にニスを塗布するニス塗布部と、該ニス塗布部により塗布されたニス塗布面に転写フィルムを押付けて表面処理を行う表面処理部とを備えた印刷機の印刷方法において、
用紙に印刷する印刷工程と、該印刷工程で印刷された用紙にニスを塗布する第1ニス塗布工程と、該第1ニス塗布工程により塗布されたニス塗布面を乾燥させる乾燥工程と、該乾燥工程で乾燥されたニス塗布面に再度ニスを塗布する第2ニス塗布工程と、レンズ状凹部を有する転写フィルムをニス塗布面に押付けて表面処理を行う表面処理工程とを有することを特徴とする印刷機の印刷方法。
【請求項3】
搬送される用紙を印刷する印刷部と、該印刷部で印刷された用紙にニスを塗布するニス塗布部と、該ニス塗布部により塗布されたニス塗布面に転写フィルムを押付けて表面処理を行う表面処理部とを備えた印刷機の印刷方法において、
用紙に印刷する印刷工程と、該印刷工程で印刷された用紙にニスを塗布する第1ニス塗布工程と、該第1ニス塗布工程により塗布されたニス塗布面を乾燥させる乾燥工程と、用紙を排紙する排紙工程と、該排紙工程で排紙された用紙を再度該印刷機内に搬送し、乾燥されたニス塗布面に再度ニスを塗布する第2ニス塗布工程と、レンズ状凹部を有する転写フィルムをニス塗布面に押付けて表面処理を行う表面処理工程とを有することを特徴とする印刷機の印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−206989(P2011−206989A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75713(P2010−75713)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000006943)リョービ株式会社 (471)
【Fターム(参考)】