説明

印刷版原版の現像装置

【課題】シリコーンゴム層を有する印刷版原版を現像するにあたり、非画線部のシリコーン剥がれを抑制する現像装置を提供すること
【解決手段】シリコーンゴム層を有する印刷版原版を、搬送ロール対により搬送しながら、シリコーンゴム層をブラシロールにより擦り現像する印刷版原版の現像装置であって、前記ブラシロールの上流に位置し、かつ、シリコーンゴム層に接する搬送ロールのうち、少なくとも1本の表面粗さの最大高さ(Ry)が60μm以上であることを特徴とする印刷版原版の現像装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーンゴム層を有する印刷版原版の現像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンゴム層を有する印刷版原版は、公知の方法により画像露光処理および現像処理することにより印刷版となり、印刷に用いられる。現像方法としては、板状の印刷版原版を搬送ロールにより搬送しながら、1本または複数本のブラシロールにより画線部のシリコーンゴム層を除去する方法が一般的である。また、検版性を付与するために、さらに画線部を染色する工程を設けることも一般的に行われているが、染色液の管理、現像機の大型化、コスト等の点で課題があった。
【0003】
これに対して、インキ反発層中に光退色性物質または光発色性物質を含有する水なし平版印刷版原版(例えば、特許文献1参照)、インキ反発層中に染料を含有する平版印刷版原版(例えば、特許文献2参照)、シリコーンゴム層中に顔料を含有する水なし平版印刷版原版(例えば、特許文献3参照)など、着色シリコーンゴム層を有する印刷版原版が提案されている。これら印刷版原版を用いることにより、染色工程を設けることなく検版が可能となる。しかしながら、現像処理により除去されたシリコーンゴム層はカスとなり版面上に再付着するが、このシリコーンカスが着色されていると、従来検知されなかった微細なカス残りも洗浄不良として認識されるようになった。
【0004】
そこで、より高い版裏面洗浄性を有する現像装置として、印刷版原版裏面に接触する搬送ロールおよび/またはブラシ受けロールを洗浄する機構を有する現像装置が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−189993号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2002−244279号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開2009−80422号公報(特許請求の範囲)
【特許文献4】特開2010−230833号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、露光後の印刷版原版において、現像前に画線部のシリコーンゴム層が隆起して搬送ロールに密着する場合がある。画線部のシリコーンゴム層の隆起は、露光部が画線部となる印刷版原版において、印刷版原版が高感度であるほど、また、露光量が多くなるほど、より顕著となる。現像前に隆起したシリコーンゴム層が搬送ロールに密着すると、非画線部のシリコーンゴム層まで引っ張られるため、非画線部のシリコーン剥がれが生じる課題があった。
【0007】
上記従来技術の課題に鑑み、本発明は、シリコーンゴム層を有する印刷版原版を現像するにあたり、非画線部のシリコーン剥がれを抑制する現像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、シリコーンゴム層を有する印刷版原版を、搬送ロール対により搬送しながら、シリコーンゴム層をブラシロールにより擦り現像する印刷版原版の現像装置であって、前記ブラシロールの上流に位置し、かつ、シリコーンゴム層に接する搬送ロールのうち、少なくとも1本の表面粗さの最大高さ(Ry)が60μm以上であることを特徴とする印刷版原版の現像装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の現像装置によれば、非画線部のシリコーン剥がれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】印刷版原版の現像装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の現像装置は、シリコーンゴム層を有する印刷版原版を、搬送ロール対により搬送しながら、シリコーンゴム層をブラシロールにより擦り現像する現像装置である。シリコーンゴム層を有する印刷版原版としては、シリコーンゴム層をインキ反発層として使用する湿し水を用いない平版印刷に用いられる印刷版原版(水なし平版印刷版原版)が好ましい。例えば、基板上に、少なくとも感熱層または感光層、シリコーンゴム層をこの順に有する水なし平版印刷版原版を挙げることができる。
【0012】
本発明に用いられるシリコーンゴム層を有する印刷版原版について説明する。シリコーンゴム層を有する印刷版原版は、基板上に少なくとも露光により隣接する層との接着力が変化する層と、シリコーンゴムを主成分とするシリコーンゴム層を有する構成が好ましい。露光により隣接する層との接着力が変化する層としては、紫外光などの活性光線により隣接する層との接着力が変化する感光層、レーザー光により隣接する層との接着力が変化する感熱層などが挙げられる。感熱層には、液泡や気泡を含有することが好ましい。感熱層に気泡を含有することにより高感度化することができ、液泡を含有することにより、初期感度および経時後の感度を高く維持することができる。液泡や気泡を含有する感熱層を有する印刷版原版としては、例えば、特開2005−300586号公報、特開2005−331924号公報、国際公開第2010/113989号などに記載された水なし平版印刷版原版を挙げることができる。
【0013】
次に、シリコーンゴム層を有する印刷版原版の製版方法を説明する。露光部が画線部となるネガ型印刷版原版または露光部が非画線部となるポジ型印刷版原版の場合、原図フィルムを介して活性光線により画像露光を行う。印刷版原版が保護フィルムを有する場合は、保護フィルム上に原図フィルムを配して画像露光を行うことが一般的である。その後、保護フィルムを有する場合にはこれを除去した後、非画線部のシリコーンゴム層を除去する現像を行うことによって画像を形成し、印刷版を得ることができる。また、直描型印刷版原版の場合は、レーザー光で画像露光を行う。印刷版原版が保護フィルムを有する場合は、保護フィルム上から画像露光してもよいし、保護フィルムを剥離してから画像露光してもよい。その後、保護フィルムを有する場合にはこれを剥離した後、現像することによって印刷版を得ることができる。現像処理された印刷版を積み重ねて保管する場合には、印刷版保護の目的で、印刷版と印刷版の間に合紙を配することが好ましい。
【0014】
次に、本発明の印刷版原版の現像装置について説明する。本発明の現像装置は、シリコーンゴム層を有する上記印刷版原版を、搬送ロールにより搬送しながら、シリコーンゴム層をブラシロールにより擦り現像する。印刷版原版の現像装置としては、印刷版原版を現像できるものであれば限定されるものではなく、例えば、現像部のみの装置、前処理部および現像部をこの順に有する装置、前処理部、現像部および後処理部をこの順に有する装置、前処理部、現像部、後処理部および水洗部をこの順に有する装置等を挙げることができる。また、複数の現像部を有していてもよい。このような現像装置の具体例としては、TWL−650シリーズ、TWL−860シリーズ、TWL−1160シリーズ(東レ(株)製)、TWL−860CF、TWL−1160CF((株)東洋商社製)、特開平4−2265号公報、特開平5−2272号公報、特開平5−6000号公報などに開示される自動現像機を挙げることができる。
【0015】
以下、本発明に好適に使用できる現像装置の実施の形態について、図1を参照しながら詳細に説明する。図1は印刷版原版の現像装置の一例を示す概略図である。
【0016】
挿入台1より挿入された印刷版原版2は、搬送ロール3、4および5により所定の速度で下流側の工程に搬送される。現像工程において、現像水が所定の温度でシャワーパイプ6からブラシロール7に供給されるとともに、ブラシロール7により印刷版原版2のシリコーンゴム層が除去される。次いで、モルトンロール8とファン9により印刷版原版2の表面の水気が除去され、平版印刷版が作製される。
【0017】
搬送ロール3、4および5は、印刷版原版2に対して上下対に配置される。搬送ロール対は側板に支持され、駆動手段の駆動力が伝達されて回転することにより、印刷版原版2を所定速度で搬送する。上下の搬送ロールの材質、表面形状は同じでも異なってもよい。また、複数の搬送ロール対を有する場合、各搬送ロール対の材質、表面形状は同じでも異なってもよい。
【0018】
本発明は、シリコーンゴム層を有する印刷版原版を現像するにあたり、ブラシロールの上流に位置し、かつ、シリコーンゴム層に接する搬送ロールのうち、少なくとも1本の表面粗さの最大高さ(Ry)が60μm以上であることを特徴とする。なお、ブラシロールの上流とは、印刷版原版2が挿入されてからブラシロール7に搬送されるまでの間を指す。搬送ロールのRyを60μm以上とすることにより、搬送ロールとシリコーンゴム層との接触面積を減少させ、現像前に隆起したシリコーンゴム層が搬送ロールに密着することを抑制し、非画線部のシリコーン剥がれを低減することができる。95μm以上がより好ましい。一方、印刷版原版2の搬送性の観点からは、搬送ロールのRyは小さいほうが好ましい。搬送性の観点から、搬送ロールのRyは1000μm以下が好ましく、800μm以下がより好ましく、500μm以下がより好ましい。
【0019】
また、ブラシロール7の上流に位置する搬送ロール4は、下流のシャワーパイプ6から供給された現像液が上流に流れ出すことを防止する機能も有し、この観点からは、Ryは小さいほうが好ましい。このため、本発明においては、ブラシロール7の上流に2対以上の搬送ロールを有し、シリコーンゴム層に接する搬送ロールのうちの一部のRyが60μm以上であることが好ましい。さらに、より上流側に位置するシリコーンゴム層に接する搬送ロールのRyが60μm以上であることがより好ましい。
【0020】
ここで、搬送ロールのRyは、レーザー顕微鏡により倍率1500倍、0.02μm断面で撮影した立体像から測定することができる。
【0021】
搬送ロールを上記表面粗さに加工する方法としては、例えば、通版方向に対して並行に、一定間隔で溝を設ける方法、搬送ロールの軸または搬送方向に沿ってロール表面にらせん状に溝を設ける方法、薬液浸漬によってロール表面に凹凸を設ける方法などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
ブラシロールの上流に位置する搬送ロール3および4のうち、シリコーンゴム層に接する上側のロール表面は、上記Ryを有するものであれば特に限定されない。例えば、ゴム、モルトン、各種プラスチックなど、シリコーンゴム層を傷つけず、腐食に耐えるものであればいかなるものでも使用することができる。ゴムの素材としては、シリコーンゴム、ポリブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、ポリクロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、フッ化炭化水素ゴムなどが挙げられる。プラスチックの素材としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレートなどが挙げられる。
【0023】
また、搬送ロール3および4のうち、上側のロールと印刷版原版を挟んで対向する下側のロール表面は特に限定されず、上側ロール表面に例示したゴム、モルトン、各種プラスチックなどを使用することができる。
【0024】
また、搬送ロール3および4は、印刷版原版2を挿入する挿入ロールの機能も有する。この場合、2対の搬送ロールの間に版検知センサーを有することが好ましい。
【0025】
ブラシロール7の下流に位置する搬送ロール5の表面は特に限定されない。上側のロールは、シリコーンゴム層を傷つけず、処理薬品に耐えるものが好ましく、表面に前記搬送ロール3および4に例示したゴムを有するものが好ましい。搬送ロール表面のゴム硬度は10〜100度が好ましく、より好ましくは20〜40度である。ここで、ゴム硬度はJISK6253−1997のデュロメーター タイプA スプリングで測定した値である。さらに、下側のロール表面にも同様にゴムを有してもよいし、金属ロールであってもよい。
【0026】
搬送ロール3、4および5上下対の印刷版原版2の挟持圧力は、搬送時の位置ずれを抑制するために1〜1960KPaに設定することが好ましく、3〜196KPaに設定することがより好ましい。
【0027】
ブラシロール7は、非画線部のシリコーンゴム層を除去する機能を有し、金属あるいはプラスチックなどの溝型材に直径100〜500μmのブラシ単糸を列状に植え込んだものを芯に取り付けたものを用いることが好ましい。また、上記ブラシ単糸を金属あるいはプラスチックなどの芯に放射線状に植え込んだものでもよく、上記ブラシ単糸をプラスチックシートあるいは布などの基材に植え込んだものを、金属あるいはプラスチックなどを芯として巻いたものでもよい。また、ブラシ単糸の素材としてはポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートおよびポリプロピレンなどが挙げられる。
【0028】
ブラシロール7の回転数は、10〜1000rpmが好ましく、200〜600rpmがより好ましい。さらに、ブラシロール7を回転すると共に、軸方向へ往復運動させると、シリコーンゴム層除去効果が向上するため好ましい。ブラシロール7は、印刷版原版が下に来たときのみ所定の回転をすることが好ましく、印刷版原版の搬送安定性を向上させることができる。ブラシの回転方向は、印刷版原版2の搬送方向と同方向でも逆方向でもよいが、同方向が好ましく、同方向のものの後に逆方向のものを併設することが更に好ましい。正・逆両方向に回転するブラシロール7を合計で2本以上備えることが好ましい。ブラシロール7には、印刷版原版2を支えるためのブラシ受けロール10が設置されていることが好ましい。
【0029】
各ブラシロール7の上流に位置する搬送ロール4および5には、搬送ロール4および5にかかる液が印刷版原版2をつたって前の工程に流れでることを防止するとともに、搬送ロール4および5に付着したシリコーンゴムのカスを細かくし、搬送ロール4および5に付着させないことを目的として、ライダーロール11が取り付けられていることが好ましい。ライダーロール11の材質は、現像液に侵されず、搬送ロール4および5を傷つけないものであればよいが、耐久性の面から金属が好ましい。例えば、鉄、アルミニウム、銅、ステンレス、ニッケル、チタンなどやこれらの合金類が使用できる。ライダーロール11は搬送ロール4および5と同じ速度で回転させてもよいが、より効果的にシリコーンゴムのカスを細かくし、搬送ロール4および5に付着させないためには、搬送ロール4および5の周速と、ライダーロール11の周速を異なった値に設定することが好ましく、搬送ロール4および5の周速V、ライダーロール11の周速をV11として、0.05≦V/V11≦0.80または0.05≦V11/V≦0.80であることが好ましく、0.10≦V/V11≦0.20または0.10≦V11/V≦0.20であることがより好ましい。VとV11との周速比が5%以上80%以下であれば、シリコーンゴムのカスを細かくすることができ搬送ロール4および5にシリコーンゴムのカスが付着しにくくなり好ましい。
【0030】
ライダーロール11と搬送ロール4および5の上側ロールの周速を異なった値とする方法としては、例えばギヤ比変更により周速を異なった値とする方法、ライダーロール11と搬送ロール4および5の上側ロールを別駆動にする方法などが挙げられ、いかなる方法でもよいが、作業性、費用面からギヤ比変更による方法がより好ましい。
【0031】
現像前半工程部におけるブラシロール7と、その上流と下流にある搬送ロール4および5との間にはシャワーパイプ6が配置されている。上流の搬送ロール4および5とブラシロール7の間のシャワーパイプ6は、上流の搬送ロール4および5とブラシロール7に対向してシャワー吐出口が軸方向に沿って適当な間隔で設けられている。下流の搬送ロール5とブラシロール7の間のシャワーパイプ6は、下流の搬送ロール5に対向して吐出口が軸方向に沿って適当な間隔で設けられている。また現像後半工程部におけるブラシロール7と、その上流と下流にある搬送ロール5の間に配置されているシャワーパイプ6も同様である。また、シャワーパイプ6の吐出口には洗浄時の水圧を高めるためにスプレーノズルを取り付けてもよい。
【0032】
ブラシ受けロール10および/または印刷版原版2の裏面に接触する搬送ロール5には、洗浄機構12を取り付けることが好ましく、洗浄されたシリコーンカスを洗い流すシャワーパイプ6も備えることがより好ましく、版裏面シリコーンカス除去機構16を備えることがさらに好ましい。洗浄機構12による洗浄は、不織布、脱脂綿、布、スポンジ、ブラシ、樹脂、ゴム、フィルム等でロール表面を擦ることによって行うことができるが、洗浄するロールよりも柔らかい材質のものが好ましい。また、洗浄方法としては、板状のものを自重または、バネ、ネジなどの機構による加重によって押しつけて、ロール自体を回転させながら洗浄する方法、ロールとは別駆動を持ったブラシロール状のもので洗浄する方法などが挙げられ、いかなる方法でもよい。十分な洗浄効果が得られるのであれば、費用面から板状の構造のものが好ましい。洗浄機構先端に吐出口をむけたシャワーパイプ6を取り付けると洗浄効果が高まるため、洗浄機構毎に取り付けることが好ましい。また、版裏面を洗浄する目的で現像後半工程などにシャワーパイプ6を取り付けることも好ましい。
【0033】
搬送ロール4および5から流れ落ちたシリコーンゴムのカスは、循環ポンプ13で循環されている場合は循環ポンプ13の後にあるフィルター14に捕集され、オーバーフロー口のある現像工程部ではオーバーフロー口の後に設けられているカス取りネット15に捕集される。
【0034】
循環ポンプ13としては、市販の汎用ポンプが使用できる。また、循環ポンプ13の後のシリコーンゴムのカスを捕集するフィルター14として、濾過精度が10〜500μmのものを使用することが好ましく、10〜300μmのものを使用することがより好ましい。カス取りネット15としては、市販の洗濯ネットの細かいメッシュの物が使用できる。好ましくは目開きが0.1〜1mmのものが使用できる。また、カス取りネット15の代わりに市販のストレーナーなどを設置してもよい。
【実施例】
【0035】
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
まず、各実施例・比較例における評価方法について説明する。
【0037】
(1)搬送ロールの表面粗さの最大高さRyの測定方法
レーザー顕微鏡VK−9510(キーエンス(株)製)を使用し、倍率1500倍、0.02μm断面で立体像を撮影してRy測定を行った。
【0038】
(2)シリコーン剥がれの評価方法
現像後の印刷版100枚について、100%絵柄との境界付近のグラデーション部を目視で観察し、非画線部シリコーン剥がれが発生した枚数を計数した。
【0039】
(3)搬送性の評価方法
印刷版原版100版を各実施例、比較例に記載の条件で現像機にて現像し、現像機から排出された版のズレの有無を観察し、ズレが発生した枚数を計数した。
【0040】
(実施例1)
まず、以下の方法で縦800mm×横1030mmの大きさの着色シリコーン層を有した水なし平版印刷版原版を作製した。厚さ0.24mmの脱脂したアルミ基板(三菱アルミ(株)製)上に下記のプライマー層組成物液を塗布し、200℃で90秒間乾燥し、膜厚10g/mのプライマー層を設けた。
【0041】
<プライマー層組成物液>
(a)エポキシ樹脂:“エピコート”(登録商標)1010(ジャパンエポキシレジン(株)製):35重量部
(b)ポリウレタン:“サンプレン”(登録商標)LQ−T1331D(三洋化成工業(株)製、固形分濃度:20重量%):375重量部
(c)アルミキレート:“アルミキレート”ALCH−TR(川研ファインケミカル(株)製):10重量部
(d)レベリング剤:“ディスパロン”(登録商標)LC951(楠本化成(株)製、固形分:10重量%):1重量部
(e)酸化チタン:“タイペーク”(登録商標)CR−50(石原産業(株)製)のN,N−ジメチルホルムアミド分散液(酸化チタン50重量%):60重量部
(f)N,N−ジメチルホルムアミド:730重量部
(g)メチルエチルケトン:250重量部
【0042】
次いで、下記の感熱層組成物液−1を前記プライマー層上に塗布し、120℃で90秒間加熱し、膜厚1.5g/mの感熱層を設けた。
【0043】
<感熱層組成物液−1>
(a)赤外線吸収染料:“PROJET”825LDI((株)Avecia製):10重量部
(b)チタンキレート:“ナーセム”(登録商標)チタン(日本化学産業(株)製、固形分濃度:73重量%):11重量部
(c)フェノールホルムアルデヒドノボラック樹脂:“スミライトレジン”(登録商標)PR50731(住友デュレズ(株)製):75重量部
(d)ポリウレタン:“サンプレン”(登録商標)IB465(三洋化成工業(株)製)の溶剤置換品(置換溶剤:テトラヒドロフラン、固形分:15重量%):47重量部
(e)メチルエチルケトン:422重量部
(f)エタノール:85重量部
(g)イソパラフィン:“アイソパー”(登録商標)H(エッソ化学(株)製):17重量部
【0044】
次いで、塗布直前に調製した下記の有色顔料含有シリコーン希釈液を前記感熱層上に塗布し、130℃で90秒間加熱し、膜厚2.0g/mのシリコーンゴム層を設けた。加熱直後のシリコーンゴム層は完全に硬化していた。加熱直後のシリコーンゴム層上に、厚み6μmのポリプロピレンフイルム:“トレファン”(登録商標)(東レ(株)製)をラミネートし、ネガ型水なしCTP平版印刷版原版を得た。
【0045】
<有色顔料含有シリコーン希釈液>
下記(a)、(b)をこの順に混合することで有色顔料分散希釈液を得た。
(a)“アイソパー”(登録商標)E(エッソ化学(株)製):342.44重量部
(b)“ブルーマスター”(登録商標)5A1258(住化カラー(株)製):10.08重量部
次いで、別容器中で下記(c)〜(h)を混合することでシリコーン希釈液を得た。
(c)“アイソパー”(登録商標)E(エッソ化学(株)製):550重量部
(d)“DMS”V52(ゲレスト社製):81.28重量部
(e)“HMS”991(ゲレスト社製):3重量部
(f)ビニルトリス(メチルエチルケトオキシイミノ)シラン:3重量部
(g)“サイラエース”(登録商標)S510(チッソ(株)製):4重量部
(h)“SRX”212(東レダウコーニングシリコーン(株)製):7重量部。
【0046】
予め作製しておいた有色顔料分散希釈液を撹拌しながら、別容器で作製した上記シリコーン希釈液を混合することにより、有色顔料含有シリコーン希釈液を得た。
【0047】
上記ネガ型水なしCTP平版印刷版原版を製版機Trendsetter800Quntum(コダック(株)製)に装着し、半導体レーザーを用いて、半面を50%から100%の網点(175lpi)グラデーション、残りの半面をグラデーションの側面に100%絵柄を、版面照射エネルギー13Wで露光した。
【0048】
露光後の版は、表面のポリプロピレンフイルムを剥離し、自動現像機にて現像を行った。自動現像機として図1に示す構成の水なし平版印刷版用自動現像機TWL−1160GII(東レ(株)製、現像液:水道水、水温:35℃)を用い、搬送ロール3(上下両側)にニトリルゴムロール(Ry 1012.2μm)、搬送ロール4(上下両側)にブチルゴムロール(Ry 5.9μm)を設置した状態で、搬送ロール4の周速V、ライダーロール11の周速V11の周速比V/V11を0.15とし、上下搬送ロールによる挟持圧力は66〜85KPaとした。版搬送速度60cm/分にて、100%絵柄が現像方向前方になるよう100版現像した。現像後の印刷版を評価したところ、シリコーン剥がれが発生した版は見られなかった。一方、搬送性を評価したところ、10版で版ズレが発生した。結果を表1に示す。
【0049】
(実施例2)
搬送ロール3(上下両側)に、モルトンロール(Ry 814.7μm)を設置した以外は実施例1と同様にして、非画線部シリコーン剥がれおよび搬送性を評価した。結果を表1に示す。
【0050】
(実施例3)
搬送ロール3(上下両側)に、ニトリルゴムロール(Ry 312.8μm)を設置した以外は実施例1と同様にして、非画線部シリコーン剥がれおよび搬送性を評価した。結果を表1に示す。
【0051】
(実施例4)
搬送ロール3(上下両側)に、ニトリルゴムロール(Ry 95.6μm)を設置した以外は実施例1と同様にして、非画線部シリコーン剥がれおよび搬送性を評価した。結果を表1に示す。
【0052】
(比較例1)
搬送ロール3(上下両側)に、ニトリルゴムロール(Ry 55.3μm)を設置した以外は実施例1と同様にして、非画線部シリコーン剥がれおよび搬送性を評価した。結果を表1に示す。
【0053】
(比較例2)
搬送ロール3(上下両側)に、表面にスベラックス加工処理を施したニトリルゴムロール(Ry 17.4μm)を設置した以外は実施例1と同様にして、非画線部シリコーン剥がれおよび搬送性を評価した。結果を表1に示す。
【0054】
(比較例3)
搬送ロール3(上下両側)に、ニトリルゴムロール(Ry 8.8μm)を設置した以外は実施例1と同様にして、非画線部シリコーン剥がれおよび搬送性を評価した。結果を表1に示す。
【0055】
(実施例5)
搬送ロール3(上下両側)にブチルゴムロール(Ry 5.9μm)、搬送ロール4(上下両側)にニトリルゴムロール(Ry 1012.2μm)を設置した以外は実施例1と同様にして、非画線部シリコーン剥がれおよび搬送性を評価した。結果を表1に示す。
【0056】
(実施例6)
搬送ロール4(上下両側)に、モルトンロール(Ry 814.7μm)を設置した以外は実施例5と同様にして、非画線部シリコーン剥がれおよび搬送性を評価した。結果を表1に示す。
【0057】
(実施例7)
搬送ロール4(上下両側)に、ニトリルゴムロール(Ry 312.8μm)を設置した以外は実施例5と同様にして、非画線部シリコーン剥がれおよび搬送性を評価した。結果を表1に示す。
【0058】
(実施例8)
搬送ロール4(上下両側)に、ニトリルゴムロール(Ry 95.6μm)を設置した以外は実施例5と同様にして、非画線部シリコーン剥がれおよび搬送性を評価した。結果を表1に示す。
【0059】
(比較例4)
搬送ロール4(上下両側)に、ニトリルゴムロール(Ry 55.3μm)を設置した以外は実施例5と同様にして、非画線部シリコーン剥がれおよび搬送性を評価した。結果を表1に示す。
【0060】
(比較例5)
搬送ロール4(上下両側)に、表面にスベラックス加工処理を施したニトリルゴムロール(Ry 17.4μm)を設置した以外は実施例5と同様にして、非画線部シリコーン剥がれおよび搬送性を評価した。結果を表1に示す。
【0061】
(比較例6)
搬送ロール4(上下両側)に、ニトリルゴムロール(Ry 8.8μm)を設置した以外は実施例5と同様にして、非画線部シリコーン剥がれおよび搬送性を評価した。結果を表1に示す。
【0062】
(実施例9)
搬送ロール3(下側)に、ブチルゴムロール(Ry 5.9μm)を設置した以外は実施例2と同様にして、非画線部シリコーン剥がれおよび搬送性を評価した。結果を表1に示す。
【0063】
(実施例10)
搬送ロール4(下側)に、ブチルゴムロール(Ry 5.9μm)を設置した以外は実施例6と同様にして、非画線部シリコーン剥がれおよび搬送性を評価した。実施例1と同様に、剥がれが発生した版は見られなかった。結果を表1に示す。
【0064】
(実施例11)
感熱層組成物液を、下記した<感熱層組成物液−2>に変更し、感熱層に液泡を有する印刷版原版を使用する以外は実施例2と同様にして、非画線部シリコーン剥がれおよび搬送性を評価した。結果を表1に示す。
【0065】
<感熱層組成物液−2>
(a)赤外線吸収染料:“PROJET”825LDI(Avecia社製):10重量部
(b)有機錯化合物:チタンジ−n−ブトキサイドビス(2,4−ペンタンジオネート):“ナーセム”(登録商標)チタン(日本化学産業(株)製、濃度:73重量%、溶剤としてn−ブタノール(沸点:117℃、溶解度パラメーター:23.3(MPa)1/2):17重量%を含む):11重量部
(c)フェノールホルムアルデヒドノボラック樹脂:“スミライトレジン”(登録商標)PR50731(住友ベークライト(株)製、熱軟化点:95℃):75重量部
(d)ポリウレタン:“ニッポラン”(登録商標)5196(日本ポリウレタン(株)製)、濃度:30重量%、溶剤としてメチルエチルケトン(沸点:80℃、溶解度パラメーター:19.0(MPa)1/2):35重量%、シクロヘキサノン(沸点:155℃、溶解度パラメーター:20.3(MPa)1/2):35重量%を含む):20重量部
(e)メチルエチルケトン(沸点:80℃、溶解度パラメーター:19.0(MPa)1/2):434重量部
(f)エタノール(沸点:78℃、溶解度パラメーター:26.0(MPa)1/2):85重量部
(g)脂肪族飽和炭化水素:“アイソパー”(登録商標)M(エッソ化学(株)製、沸点:223〜254℃、溶解度パラメーター:14.7(MPa)1/2):5重量部
【0066】
(実施例12)
搬送ロール3(上下両側)に、ニトリルゴムロール(Ry 312.8μm)を設置した以外は実施例11と同様にして、非画線部シリコーン剥がれおよび搬送性を評価した。結果を表1に示す。
【0067】
(実施例13)
搬送ロール3(上下両側)に、ニトリルゴムロール(Ry 95.6μm)を設置した以外は実施例11と同様にして、非画線部シリコーン剥がれおよび搬送性を評価した。結果を表1に示す。
【0068】
(比較例7)
搬送ロール3(上下両側)に、ニトリルゴムロール(Ry 55.3μm)を設置した以外は実施例11と同様にして、非画線部シリコーン剥がれおよび搬送性を評価した。結果を表1に示す。
【0069】
(実施例14)
搬送ロール4(上下両側)に、モルトンロール(Ry 814.7μm)を設置した以外は実施例2と同様にして、非画線部シリコーン剥がれおよび搬送性を評価した。結果を表1に示す。
【0070】
【表1】

【符号の説明】
【0071】
1:挿入台
2:印刷版原版
3:搬送ロール(第一挿入ロール)
4:搬送ロール(第二挿入ロール)
5:搬送ロール
6:シャワーパイプ
7:ブラシロール
8:モルトンロール
9:ファン
10:ブラシ受けロール
11:ライダーロール
12:洗浄機構
13:循環ポンプ
14:フィルター
15:カス取りネット
16:版裏シリコーンカス除去機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンゴム層を有する印刷版原版を、搬送ロール対により搬送しながら、シリコーンゴム層をブラシロールにより擦り現像する印刷版原版の現像装置であって、前記ブラシロールの上流に位置し、かつ、シリコーンゴム層に接する搬送ロールのうち、少なくとも1本の表面粗さの最大高さ(Ry)が60μm以上であることを特徴とする印刷版原版の現像装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−173687(P2012−173687A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38135(P2011−38135)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】