説明

印刷装置、その制御方法及びプログラム

【課題】印刷処理時間の短縮をより図る。
【解決手段】プリンター20は、印刷媒体Sを搬送させ印刷ヘッド32からインクを吐出する位置で印刷媒体Sを停止させ、搬送された印刷媒体Sの位置を判定し、印刷媒体Sが2つの搬送ローラーに搬送される2ローラー領域(所定の搬送位置)にあると判定された直後に、印刷媒体Sが停止するまでの減速停止時間を計測し、計測した減速停止時間に基づいて印刷ヘッド32の移動開始タイミングを設定し、設定された移動開始タイミングで印刷ヘッド32の移動を開始させ、印刷媒体Sの搬送動作に合わせて印刷ヘッド32を移動開始させる重合わせ処理を行う。このように、印刷媒体Sが2ローラー領域に至り、より安定して搬送されるときには、印刷媒体Sが停止するまでの計測時間に基づいて印刷ヘッド32の移動開始タイミングを設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、その制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、印刷装置としては、印刷時のスループット向上を目的とし、送り動作が終了した直後にキャリッジが所定領域に位置して印刷が開始されるよう送り動作とキャリッジ動作を重ね合わせている。この重ね合わせは、1パス分の印刷が終了した際に、モーターを駆動して送り動作を行い、送り動作の最中の所定タイミングでキャリッジモーターを駆動させてキャリッジの移動を開始し、送り動作が終了したあとにキャリッジが印刷領域に位置して印刷を開始する処理である。この重ね合わせを行うには、キャリッジの駆動タイミングを送り量に合わせて設定する必要がある。このため、従来は、キャリッジの駆動タイミングをテーブルに予め定めておき、このテーブルに合わせてキャリッジを駆動するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、キャリッジの速度又は加速度を加味して重ね合わせを実現する印刷装置も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−90431号公報
【特許文献2】特開2001−232882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の装置では、キャリッジの挙動は考慮されているが、印刷用紙の送り動作の挙動は考慮されておらず、重ね合わせがまだ緩く、更なる改良が望まれていた。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、印刷処理時間の短縮をより図ることができる印刷装置、その制御方法及びプログラムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の印刷装置は、
印刷媒体の搬送動作に合わせて印刷ヘッドを移動開始させる重合わせ処理を行う印刷装置であって、
前記印刷ヘッドを移動させる移動手段と、
前記印刷媒体を搬送する搬送ローラーを少なくとも1つ備える搬送手段と、
前記印刷媒体を搬送させ前記印刷ヘッドから着色剤を吐出する位置で該印刷媒体が停止するよう前記搬送手段を制御する搬送制御手段と、
前記搬送された該印刷媒体の位置を判定する搬送位置判定手段と、
前記印刷媒体が前記搬送ローラーに接する所定の搬送位置にあると判定されたあと、前記搬送手段の搬送動作により移動している前記印刷媒体が停止するまでの減速停止時間を計測する時間計測手段と、
前記計測した減速停止時間に基づいて前記印刷ヘッドの移動開始タイミングを設定するタイミング設定手段と、
前記設定された移動開始タイミングで、前記印刷ヘッドの移動を開始させるよう前記移動手段を制御する移動制御手段と、
を備えたものである。
【0008】
この印刷装置では、印刷媒体を搬送させ印刷ヘッドから着色剤を吐出する位置で印刷媒体を停止させ、搬送された印刷媒体の位置を判定し、印刷媒体が搬送ローラーに接する所定の搬送位置にあると判定されたあと搬送動作により移動している印刷媒体が停止するまでの減速停止時間を計測し、計測した減速停止時間に基づいて印刷ヘッドの移動開始タイミングを設定し、設定された移動開始タイミングで印刷ヘッドの移動を開始させる。例えば、印刷媒体の種類などによっては、移動状態から停止状態へ至るまでの時間が異なることがある。このように、印刷媒体が所定の搬送位置に至り、比較的安定して搬送されるときには、印刷媒体が停止するまでの計測時間に基づいて印刷ヘッドの移動開始タイミングを設定するのである。したがって、印刷媒体の停止から印刷ヘッドの着色剤の吐出までをより少ない時間で行うことが可能であり、印刷処理時間の短縮をより図ることができる。
【0009】
本発明の印刷装置において、前記タイミング設定手段は、前記搬送手段により前記印刷媒体が停止した後に、前記印刷ヘッドが前記着色剤を吐出可能な移動速度となるタイミングに前記減速停止時間を用いて前記移動開始タイミングを設定するものとしてもよい。こうすれば、より効率よく印刷処理を実行可能であるため、印刷処理時間を更に短縮することができる。ここで、「停止した後」とは、印刷媒体が停止したすぐあととしてもよいし、微少な待機時間を設けてもよい。
【0010】
本発明の印刷装置において、前記搬送制御手段は、前記印刷媒体の搬送の減速側での所定の切替タイミングで目標速度に基づく制御から目標位置に基づく制御へ切り替えて前記印刷媒体を搬送するよう前記搬送手段を制御し、前記時間計測手段は、前記切替タイミングから前記印刷媒体の停止までの時間を計測するものとしてもよい。目標位置に基づく印刷媒体の搬送制御では、印刷媒体の種別に応じてその停止時間がより異なる。また、印刷媒体の種別によっては、停止までの時間をより短縮できる場合がある。ここでは、目標速度に基づく制御(例えば速度フィードバック制御)から目標位置に基づく制御(例えば位置フィードバック制御)に切り替えた際の減速停止時間を用いるため、印刷処理時間を更に短縮することができる。
【0011】
本発明の印刷装置において、前記搬送手段は、前記印刷ヘッドの上流側で前記印刷媒体を搬送する供給側搬送ローラーを備えており、前記搬送位置判定手段は、前記供給側搬送ローラーに前記印刷媒体が至る位置を前記所定の搬送位置として判定し、前記移動制御手段は、少なくとも前記供給側搬送ローラーにより前記印刷媒体が搬送されている間は、前記設定された移動開始タイミングで前記印刷ヘッドの移動を開始させるものとしてもよい。こうすれば、印刷ヘッドの上流側で印刷媒体を供給側搬送ローラーが挟持した比較的安定な状態で減速停止時間を計測するため、より確実に印刷媒体の停止から印刷ヘッドの着色剤の吐出まで行うと共に、印刷処理時間の短縮をより図ることができる。
【0012】
本発明の印刷装置において、前記搬送手段は、前記印刷ヘッドの上流側で前記印刷媒体を搬送する供給側搬送ローラーと前記印刷ヘッドの下流側で前記印刷媒体を搬送する排出側搬送ローラーとを備えており、前記搬送位置判定手段は、前記供給側搬送ローラー及び前記排出側搬送ローラーに前記印刷媒体が接する位置を前記所定の搬送位置として判定し、前記移動制御手段は、前記供給側搬送ローラー及び前記排出側搬送ローラーに前記印刷媒体が搬送されている間は、前記設定された移動開始タイミングで前記印刷ヘッドの移動を開始させるものとしてもよい。こうすれば、複数の搬送ローラーに挟持されている、より安定な状態で印刷媒体の減速停止時間を計測するため、より確実に印刷媒体の停止から印刷ヘッドの着色剤の吐出まで行うと共に、印刷処理時間の短縮をより図ることができる。
【0013】
本発明の印刷装置において、前記搬送手段は、前記印刷ヘッドの上流側で前記印刷媒体を搬送する供給側搬送ローラーと前記印刷ヘッドの下流側で前記印刷媒体を搬送する排出側搬送ローラーとを備えており、前記搬送位置判定手段は、前記供給側搬送ローラー及び前記排出側搬送ローラーのうち、前記供給側搬送ローラーに前記印刷媒体が接する位置を第1の前記搬送位置に判定し、前記供給側搬送ローラー及び前記排出側搬送ローラーに前記印刷媒体が接する位置を第2の前記搬送位置に判定し、前記供給側搬送ローラー及び前記排出側搬送ローラーのうち前記排出側搬送ローラーに前記印刷媒体が接する位置を第3の前記搬送位置に判定し、前記時間計測手段は、前記印刷媒体が前記第1搬送位置にあると判定されると前記搬送手段の搬送動作により移動している前記印刷媒体が停止するまでの第1減速停止時間を計測し、前記印刷媒体が前記第2搬送位置にあると判定されると前記搬送手段の搬送動作により移動している前記印刷媒体が停止するまでの第2減速停止時間を計測し、前記印刷媒体が前記第3搬送位置にあると判定されると前記搬送手段の搬送動作により移動している前記印刷媒体が停止するまでの第3減速停止時間を計測し、前記タイミング設定手段は、前記計測した第1減速停止時間に基づいて前記印刷ヘッドの第1移動開始タイミングを設定し、前記計測した第2減速停止時間に基づいて前記印刷ヘッドの第2移動開始タイミングを設定し、前記計測した第3減速停止時間に基づいて前記印刷ヘッドの第3移動開始タイミングを設定し、前記移動制御手段は、前記供給側搬送ローラーに前記印刷媒体が搬送されている間は前記設定された第1移動開始タイミングで前記印刷ヘッドの移動を開始させ、前記供給側搬送ローラー及び前記排出側搬送ローラーに前記印刷媒体が搬送されている間は前記設定された第2移動開始タイミングで前記印刷ヘッドの移動を開始させ、前記排出側搬送ローラーに前記印刷媒体が搬送されている間は前記設定された第3移動開始タイミングで前記印刷ヘッドの移動を開始させるものとしてもよい。こうすれば、印刷媒体が、供給側搬送ローラーで搬送されている場合、供給側搬送ローラー及び排出側搬送ローラーで搬送されている場合、及び排出側搬送ローラーで搬送されている場合に応じて、印刷媒体の減速停止時間を計測し、印刷ヘッドの移動開始タイミングをそれぞれに応じて設定するため、更に確実に印刷媒体の停止から印刷ヘッドの着色剤の吐出まで行うと共に、印刷処理時間の短縮をより図ることができる。
【0014】
本発明の印刷装置において、前記時間計測手段は、前記印刷媒体が所定の搬送位置にあると判定された後の前記印刷ヘッドの移動時に前記減速停止時間を計測するものとしてもよい。こうすれば、計測した減速停止時間に基づいて設定された移動開始タイミングで印刷ヘッドの移動を行う期間がより増えるため、印刷処理時間の短縮を更に図ることができる。
【0015】
本発明の印刷装置において、前記移動制御手段は、前記計測した減速停止時間に基づいて設定された前記移動開始タイミングを用いないときには、予め定められた所定マージンに基づいて設定されたタイミングで前記印刷ヘッドの移動を開始させるよう前記移動手段を制御するものとしてもよい。こうすれば、確実に印刷媒体の停止から印刷ヘッドの着色剤の吐出まで行うことができる。ここで、「所定マージン」は、印刷装置で使用可能な印刷媒体のすべてにおいて、確実に印刷媒体が停止し印刷ヘッドから着色剤を吐出可能なものとして経験的に求められた期間としてもよい。なお、印刷ヘッドの移動開始タイミングは、この所定マージンよりも重合わせ処理が短時間となるように設定するものとしてもよい。
【0016】
本発明の印刷装置の制御方法は、
印刷ヘッドを移動させる移動手段と、印刷媒体を搬送する搬送ローラーを少なくとも1つ備える搬送手段と、を備え、該印刷媒体の搬送動作に合わせて前記印刷ヘッドを移動開始させる重合わせ処理を行う印刷装置の制御方法であって、
(a)前記印刷媒体を搬送させ前記印刷ヘッドから着色剤を吐出する位置で該印刷媒体が停止するよう前記搬送手段を制御するステップと、
(b)前記搬送された該印刷媒体の位置を判定するステップと、
(c)前記印刷媒体が前記搬送ローラーに接する所定の搬送位置にあると判定されたあと、前記搬送手段の搬送動作により移動している前記印刷媒体が停止するまでの減速停止時間を計測するステップと、
(d)前記計測した減速停止時間に基づいて前記印刷ヘッドの移動開始タイミングを設定するステップと、
(e)前記設定された移動開始タイミングで、前記印刷ヘッドの移動を開始させるよう前記移動手段を制御するステップと、
を含むものである。
【0017】
この印刷装置の制御方法では、上述した印刷装置と同様に、印刷媒体の停止から印刷ヘッドの着色剤の吐出までをより少ない時間で行うことが可能であり、印刷処理時間の短縮をより図ることができる。なお、この印刷装置の制御方法において、上述した印刷装置の種々の態様を採用してもよいし、また、上述した印刷装置の各機能を実現するようなステップを追加してもよい。
【0018】
本発明のプログラムは、上述した印刷装置の制御方法の各ステップを1以上のコンピューターが実行するものである。このプログラムは、コンピューターが読み取り可能な記録媒体(例えばハードディスク、ROM、FD、CD、DVDなど)に記録されていてもよいし、伝送媒体(インターネットやLANなどの通信網)を介してあるコンピューターから別のコンピューターへ配信されてもよいし、その他どのような形で授受されてもよい。このプログラムを一つのコンピューターに実行させるか又は複数のコンピューターに各ステップを分担して実行させれば、上述した印刷装置の制御方法の各ステップが実行されるため、この制御方法と同様の作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態であるプリンター20の構成の概略の一例を示す構成図。
【図2】印刷ユニット31及び搬送ユニット41の説明図。
【図3】印刷制御ルーチンの一例を示すフローチャート。
【図4】印刷領域検出ルーチンの一例を示すフローチャート。
【図5】印刷ヘッドと印刷媒体の移動のタイミングを説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は、本実施形態であるプリンター20の構成の概略の一例を示す構成図であり、図2は、印刷媒体Sを搬送する際の印刷ユニット31及び搬送ユニット41の説明図である。本実施形態のプリンター20は、図1に示すように、着色剤としてのインクを例えば紙などの印刷媒体Sに吐出する印刷ヘッド32を備えた印刷ユニット31と印刷媒体Sを搬送する搬送ユニット41とを含んで構成されたプリンター部30と、プリンター20全体をコントロールするコントローラー50とを備えている。
【0021】
印刷ユニット31は、キャリッジベルト37によりキャリッジ軸39に沿って左右(主走査方向)に往復動するキャリッジ34と、各色のインクに圧力をかけノズル33からインク滴を吐出する印刷ヘッド32と、各色のインクを収容しこの収容したインクを印刷ヘッド32へ供給するインクカートリッジ35と、を備えている。キャリッジ34は、図1における筐体21の右側に取り付けられたキャリッジモーター36と筐体21の左側に取り付けられた従動ローラー36aとの間に架設されたキャリッジベルト37がキャリッジモーター36によって駆動されるのに伴って移動する。キャリッジ34の背面には、印刷ヘッド32の位置を検出するリニア式のヘッドエンコーダー38が配設されており、このヘッドエンコーダー38を用いて印刷ヘッド32のポジションが管理可能となっている。印刷ヘッド32は、キャリッジ34の下部に設けられており、圧電素子に電圧をかけることによりこの圧電素子を変形させてインクを加圧する方式により印刷ヘッド32の下面に設けられたノズル33から各色のインクを吐出するものである。インクカートリッジ35は、筐体21側に装着され、溶媒としての水に着色剤としての顔料や染料を含有したシアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y)・ブラック(K)などの印刷用に用いる各色のインクを個別に収容しており、図示しないチューブを介してキャリッジ34へ各インクを供給可能に構成されている。
【0022】
搬送ユニット41は、図1,2に示すように、駆動モーター45により駆動される給紙ローラー42、SMAPローラー43及びEJローラー44や、印刷媒体Sの位置制御に用いる回転2相式の搬送エンコーダー46、印刷用紙の有無を検出可能な接触式のPEセンサー48などを備えている。給紙ローラー42は、給紙トレイ23の下端上方に配置され、給紙トレイ23に載置された印刷媒体Sを印刷ヘッド32側へ供給するローラーである。SMAPローラー43は、印刷ヘッド32の上流側に配設され、給紙ローラー42により給紙された印刷媒体Sをプラテン22上へ搬送する供給側搬送ローラーとして構成されている。EJローラー44は、印刷ヘッド32の下流側に配設され、SMAPローラー43によりプラテン22上を搬送された印刷媒体Sを排紙トレイ24へ搬送する排出側搬送ローラーとして構成されている。搬送エンコーダー46は、搬送ローラーの回転に伴い円板に形成された黒線を読み取ってカウントアップすることにより、印刷媒体Sの移動距離を把握可能に構成されている。PEセンサー48は、印刷媒体Sがあると所定の信号をコントローラー50へ出力するよう構成されている。
【0023】
コントローラー50は、図1に示すように、CPU52を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、各種処理プログラムを記憶しデータを書き換え可能なフラッシュメモリー53と、一時的にデータを記憶したりデータを保存したりするRAM54と、ユーザーパソコン(PC)などの外部機器とデータのやりとりを行うインターフェイス(I/F)55とを備えている。フラッシュメモリー53には、後述する印刷制御プログラムや印刷領域検出プログラムなどの各処理プログラムや、予め経験的に定められた所定マージンの値が記憶されている。このコントローラー50には、ヘッドエンコーダー38や搬送エンコーダー46、PEセンサー48から出力された信号などが図示しない入力ポートを介して入力されているほか、外部機器(ユーザーパソコンなど)から出力された印刷ジョブなどがI/F55を介して入力される。また、コントローラー50からは、印刷ヘッド32への制御信号やキャリッジモーター36への駆動信号、駆動モーター45への駆動信号などが図示しない出力ポートを介して出力される。
【0024】
また、このコントローラー50は、搬送駆動制御部61や、搬送位置判定部62、時間計測部63、タイミング設定部64、印刷ヘッド移動制御部65、印刷ヘッド駆動制御部66などを備えている。搬送駆動制御部61は、加速、一定速及び減速状態で印刷媒体Sを搬送させ印刷ヘッド32からインクを吐出する位置で印刷媒体Sが停止するよう搬送ユニット41を制御する機能を有している。搬送位置判定部62は、搬送エンコーダー46やPEセンサー48からの出力値を用いて、印刷媒体Sの搬送位置を判定する機能を有している。時間計測部63は、印刷媒体SがSMAPローラー43やEJローラー44に接する所定の搬送位置にあると判定されたあと、搬送ユニット41の搬送動作により移動している印刷媒体Sが停止するまでの減速停止時間を計測する機能を有している。タイミング設定部64は、計測した減速停止時間に基づいて、印刷媒体Sの搬送動作に合わせて印刷ヘッド32を移動開始させる重合わせ処理を実行する際の印刷ヘッド32の移動開始タイミングを設定する機能を有している。印刷ヘッド移動制御部65は、設定された移動開始タイミングで、印刷ヘッド32の移動を開始させるよう印刷ユニット31を制御する機能を有している。印刷ヘッド駆動制御部66は、RAM54の印刷バッファー領域に格納された印刷データに基づいて印刷ヘッド32のインク吐出を制御する機能を有している。
【0025】
次に、こうして構成された本実施形態のプリンター20の動作、特に印刷媒体Sの搬送停止と印刷ヘッド32の移動開始を重ね合わせる重合わせ処理を行い印刷を実行する動作について説明する。まず、図2を用いて、印刷媒体Sの移動と、PEセンサー48の出力、SMAPローラー43及びEJローラー44の印刷媒体Sの搬送状態について説明する。給紙トレイ23に印刷媒体Sが載置された初期状態から(図2(a))、給紙ローラー42によって供給されると、印刷媒体Sの先端がまずPEセンサー48に接触し、PEセンサー48から信号が出力される(図2(b))。続いて給紙ローラー42に送られた印刷媒体SがSMAPローラー43に到達すると、SMAPローラー43によって印刷媒体Sが挟持されて搬送される(図2c))。このとき、SMAPローラー43で搬送されたあと印刷媒体Sが停止した状態で印刷ヘッド32からインク吐出が行われる。次に、印刷媒体Sの先端がEJローラー44に到達すると、SMAPローラー43及びEJローラー44に挟持されて印刷媒体Sが搬送される(図2(d))。このとき、PEセンサー48は用紙ありの信号を出力している。続いて、印刷媒体Sが搬送されると、印刷媒体Sの後端がPEセンサー48から離れる。このため、PEセンサー48からの信号出力はなくなるが、印刷媒体SはまだSMAPローラー43及びEJローラー44に挟持されて搬送されている(図2(e))。そして、印刷媒体Sの後端がSMAPローラー43から離れ、印刷媒体SがEJローラー44のみで搬送される(図2(f))。そして最後に印刷媒体SがEJローラー44から離れ、排紙トレイ24へ排紙される(図2(g))。このような遷移状態で印刷媒体Sが搬送される。
【0026】
次に、印刷制御処理について説明する。図3は、コントローラー50のCPU52により実行される印刷制御ルーチンの一例を表すフローチャートである。また、図4は、印刷領域検出ルーチンの一例を示すフローチャートである。これらのルーチンは、フラッシュメモリー53に記憶され、印刷データを受信し、印刷処理の実行指示がなされたあと実行される。なお、印刷制御ルーチンや印刷領域検出ルーチンは、搬送駆動制御部61、搬送位置判定部62、時間計測部63、タイミング設定部64、印刷ヘッド移動制御部65及び印刷ヘッド駆動制御部66の各機能を利用してCPU52が実行するものとした。図3の印刷制御ルーチンが実行されると、CPU52は、まず、今回印刷する領域を取得する(ステップS100)。印刷領域の取得は、別に起動した図4の印刷領域検出ルーチンの実行結果をRAM54へ記憶させ、これを読み出すことにより行うものとした。
【0027】
ここで、印刷領域検出ルーチンについて説明する。このルーチンは、図2で説明した、先端や後端がどこに位置するかにより、搬送状態を推定するために行う。図2のフローが実行されると、CPU52は、搬送エンコーダー46からの出力値を元に、搬送ユニット41の印刷媒体Sの搬送に伴う位置情報を更新する(ステップS300)。初期状態では(図2(a)参照)、印刷媒体Sは搬送経路にいないことから、給紙ローラー42の回転に伴う印刷媒体Sの先端位置の更新を、搬送エンコーダー46の出力値を加算することにより行うものとする。次に、PEセンサー48の出力値を取得し、その状態をRAM54の所定領域へ記憶する(ステップS310)。次に、PEセンサー48の出力値を調べ(ステップS320)、PEセンサー48の出力値が用紙なしを示しているときには、現在排紙中であるか否かを判定する(ステップS330)。この判定は、PEセンサー48の出力はないが、EJローラー44に印刷媒体Sが搬送されている状態(図2(f))であるかを判定するものである。印刷媒体Sの後端位置についても、ステップS300で位置情報として記憶するものとする。現在排紙中でないときには、現在の印刷媒体Sの位置は、SMAPローラー43及びEJローラー44のいずれにも搬送されていない0ローラー領域にあるものと判定し(ステップS360,図2(a))その情報をRAM54へ記憶する。
【0028】
続いて、処理終了したか否かを、印刷データの処理がすべて終了したか否かに基づいて判定し(ステップS390)、処理終了していないときには、ステップS300以降の処理を実行する。即ち、ステップS320でPEセンサー48の出力値が用紙ありの信号になるまで、ステップS360で「0ローラー領域」と判定する。
【0029】
搬送処理が継続され、印刷媒体Sが給紙ローラー42に搬送されてPEセンサー48に接触すると、ステップS320でPEセンサー48のセンサー値が用紙ありになり、CPU52は、位置情報を用いて印刷媒体Sの先端位置がどこに位置するかを調べる(ステップS350)。CPU52は、ステップS300では、この印刷媒体SがPEセンサー48に接触した時点から、搬送エンコーダー46から入力した移動距離を加えることにより、印刷媒体Sの先端位置の更新を行うものとした。続いて、印刷媒体Sの先端位置がPEセンサー48とSMAPローラー43との間にあるときには(図2(b))、ステップS360で「印刷媒体Sの先端は0ローラー領域である」と判定し、それをRAM54に記憶する。更に搬送処理が継続され、ステップS350で印刷媒体Sの先端位置が、SMAPローラー43とEJローラー44との間にあるときには(図2(c))、印刷媒体Sは、SMAPローラー43に搬送される1ローラー領域にあると判定し、その情報をRAM54に記憶する(ステップS370)。更に搬送処理が継続され、ステップS350で印刷媒体Sの先端位置がEJローラー44よりあとにあるときには(図2(d))、印刷媒体Sの先端は、SMAPローラー43及びEJローラー44に搬送される2ローラー領域にあると判定し、その情報をRAM54に記憶する(ステップS380)。
【0030】
一方、搬送処理が継続され、印刷媒体Sの後端がPEセンサー48から離れると、ステップS320で用紙なしと判定し、ステップS330で排紙中であると判定し、印刷媒体Sの後端位置がどこに位置するのかを調べる(ステップS340)。CPU52は、ステップS300では、印刷媒体SがPEセンサー48から離間した時点から、搬送エンコーダー46から入力した移動距離を加えることにより、印刷媒体Sの後端位置の更新を行うものとした。後端位置がPEセンサー48とSMAPローラー43との間にあるときには(図2(e))、印刷媒体SはSMAPローラー43及びEJローラー44に搬送される2ローラー領域にあると判定し、その情報をRAM54に記憶する(ステップS380)。また、搬送処理が継続され、ステップS350で後端位置がSMAPローラー43とEJローラー44との間にあるときには(図2(f))、印刷媒体SはEJローラー44に搬送される1ローラー領域にあると判定し、その情報をRAM54に記憶する(ステップS370)。更に搬送処理が継続され、印刷媒体Sの後端がEJローラー44よりあとに移動すると、ステップS330で排紙中でないものと判定する(図2(e))。このようにして、印刷媒体Sの搬送状態を取得することができる。なお、排紙処理と給紙処理とをオーバーラップして行うものとしてもよい。
【0031】
さて、図3の印刷制御ルーチンの説明に戻る。ステップS100のあと、CPU52は、取得した印刷媒体Sがある領域を調べ(ステップS110)、1ローラー領域であるときには、CPU52は、まだ印刷媒体Sの搬送状態が安定していないものとして所定マージンを用いて印刷ヘッド移動開始タイミングを設定する(ステップS120)。この印刷ヘッド移動開始タイミングについて説明する。図5は、印刷ヘッドと印刷媒体の移動のタイミングを説明する説明図である。印刷ヘッド32が移動しながらインクを吐出する印刷機構では、印刷ヘッドの速度が所定値でなければインクを吐出できないことから、印刷ヘッド32には助走時間が必要であり、印刷媒体Sの搬送を停止すると共に、印刷ヘッド32の移動を開始するには、重合わせ処理を行うことができる。ここでは、「所定のマージン」は、プリンター20で使用可能な印刷媒体のすべてにおいて、確実に印刷媒体が停止し印刷ヘッドから着色剤を吐出可能なものとして経験的に求められた期間とする。したがって、所定マージンを用いると、重合わせ処理においては、印刷媒体Sが確実に停止したあとインクを吐出するので、最も確実であるが時間のかかる印刷ヘッド移動開始タイミングとなる。
【0032】
なお、図5に示すように、プリンター20では、印刷媒体Sの減速時に、印刷媒体Sの搬送制御を、速度フィードバック制御から、位置フィードバック制御に切り替えるよう設定されている。そして、この切替タイミングを始点として所定マージンをとるものとする。印刷ヘッドの移動開始から、所定速度に達するまでは、略固定値として求められるから、切替タイミングに所定マージンを加えれば、印刷ヘッドからインクを吐出するタイミングが求まり、この吐出タイミングから固定値を逆算すれば、印刷ヘッドの移動開始タイミングを求めることができる。なお、ステップS110で0ローラー領域であるときには、後述する速度フィードバック制御で印刷媒体Sを搬送し、ステップS100以降の処理を実行するものとしてもよい。
【0033】
印刷ヘッドの移動開始タイミングを定めると、CPU52は、フィードバック(FB)制御の切替タイミングであるか否かを判定する(ステップS170)。ここでは、印刷媒体Sの搬送処理において、減速時の所定タイミングに切替タイミングが設定されている。ここで、減速時に位置フィードバック制御に切り替えるのは、できるだけ早期に且つ確実な位置に印刷媒体Sを停止させるためである。フィードバック制御の切替タイミングでないときには、搬送ユニット41の各ローラー(SMAPローラー43,EJローラー44)を速度フィードバック制御で駆動制御する(ステップS180)。速度フィードバック制御での各ローラーの駆動は、目標速度となるよう現在の速度をフィードバック制御し、予め定められたパターンで、印刷媒体Sを加速、一定速、減速し、次のインクを吐出するパスまで印刷媒体Sを搬送するものとする。次に、印刷ヘッド移動開始タイミングに至ったか否かを判定し(ステップS190)、印刷ヘッド移動開始タイミングでないときには、そのままステップS170以降の処理を実行する。即ち、速度フィードバックで印刷媒体Sの加速、一定速、減速(停止)による搬送を行う。一方、ステップS190で、印刷ヘッド移動開始タイミングであるときには、印刷ヘッドを移動開始し(ステップS200)、ステップS170以降の処理を実行する。なお、印刷ヘッド移動制御部65が印刷ヘッドの移動を開始したあとは、印刷ヘッド駆動制御部66は、所定速度に達したあと、予め定められたタイミングから、印刷ヘッド32を駆動させ、印刷データに基づくインクの吐出を実行させるものとする(図5上段参照)。
【0034】
一方、ステップS170でフィードバック制御の切替タイミングに至ったときには、CPU52は、搬送ユニットの各ローラーを位置フィードバックに切り替えて駆動制御する(ステップS210)。位置フィードバック制御での各ローラーの駆動は、目標位置となるよう現在の速度をフィードバック制御し、予め定められた停止位置で印刷媒体Sを停止させるものとする。続いて、印刷ヘッド移動開始タイミングに至ったか否かを判定し(ステップS220)、印刷ヘッド移動開始タイミングであるときには、ステップS200と同様に印刷ヘッドを移動開始し(ステップS230)、ステップS210以降の処理を実行する。即ち、位置フィードバックで印刷媒体Sの減速による搬送を行う。一方、ステップS220で印刷ヘッド移動開始タイミングでないときには、印刷媒体Sが停止したか否かを搬送エンコーダー46の値から判定し(ステップS240)、印刷媒体Sが停止していないときには、ステップS210以降の処理を実行する。
【0035】
一方、ステップS240で印刷媒体Sが停止したときには、CPU52は、予め定められているタイミングでインクの吐出を開始し(ステップS250)、1パス分のインクの吐出を実行する(ステップS260)。ここでは、1ローラーで印刷媒体Sが搬送されており、且つ所定マージンを用いた印刷ヘッドの移動開始タイミングであるから(図5上段点線参照)、確実に停止した印刷媒体Sへインクの吐出を行うことができる。
【0036】
続いて、CPU52は、次の印刷パスがあるか否かを印刷データに基づいて判定し(ステップS270)、次のパスがあるときは、ステップS100以降の処理を繰り返し実行する。そして、印刷媒体Sの1パス分の搬送と1パス分のインク吐出を繰り返し行ううち、ステップS110で印刷媒体Sが2ローラー領域に達すると(図2(d)参照)、CPU52は、2ローラー領域の初回であるか否かを判定する(ステップS130)。2ローラー領域の初回であるときには、ステップS120と同様に、所定マージンを用いて印刷ヘッド移動開始タイミングを設定すると共に(ステップS140)、フィードバック制御の切替タイミングから印刷媒体Sが停止するまでの時間を計測、記憶するメジャーメントを実行する(ステップS150)。ここでは、2つのローラーで搬送されている印刷媒体Sはより安定的に減速及び停止することから、この2ローラー領域での減速停止時間を計測し、その後の2ローラー領域で搬送されるこのページでの印刷媒体Sの重合わせ処理に計測結果を反映させるよう設定されている。こうすれば、同じ印刷媒体Sでの同じ搬送状態での減速から停止までの時間を用いて重合わせ処理を実行するから、より確実に且つより短時間に印刷処理を実行することができる。
【0037】
さて、ステップS150でメジャーメントの実行が設定されると、CPU52は、上述したステップS170〜S240の処理により、印刷媒体Sの1パス分の搬送及び停止を実行しつつ、フィードバック制御が切り替わったタイミングから印刷媒体Sが停止するまでの減速停止時間を計測し、RAM54の所定領域へ記憶するのである。続いて、ステップS250以降の処理、即ちインク吐出処理を行い、次のパスに対してステップS100以降の処理を実行する。このとき、ステップS110で2ローラー領域であり、ステップS130で2ローラー領域の初回以降であるときには、ステップS150でのメジャーメント値を用いて印刷ヘッド移動開始タイミングを設定する(ステップS160)。ここでは、この減速停止時間を用いて、印刷媒体Sが停止した直後に、印刷ヘッド32がインクを吐出可能な移動速度となるタイミングに移動開始タイミングを設定するものとした。なお、減速停止時間を用いて、移動開始タイミングを設定するに際して、切替タイミングに減速停止時間を加えれば、印刷ヘッドからインクを吐出するタイミングが求まり、この吐出タイミングから固定値を逆算すれば、印刷ヘッドの移動開始タイミングを求めることができる。この印刷ヘッド移動開始タイミングは、図5の上段実線に示すように、すべての種別の印刷媒体Sに対して安全に停止するよう定められた所定マージンよりもより大きく短時間にすることが可能であり、重合わせ処理の効率をより高めることができる。
【0038】
このように、メジャーメント値を用いて設定した印刷ヘッド移動開始タイミングを用いながら、ステップS170〜S260の処理、即ち、重合わせ処理を実行し、搬送制御のフィードバック制御を切り替えながら印刷媒体Sを搬送、停止し、印刷データに基づく1パス分のインクを吐出する処理を実行する。ステップS270で次のパスがあるときは、ステップS100以降の処理を繰り返し実行する。そして、EJローラー44だけで印刷媒体Sを搬送する1ローラー領域に至ったときには(図2(f)参照)、ステップS120で所定マージンを用いて印刷ヘッド移動開始タイミングを設定して、ステップS170以降の処理を実行する。ステップS270で次のパスがないときには、次のページがあるか否かを印刷データに基づいて判定し(ステップS280)、次のページがあるときには、RAM54に記憶したメジャーメント値を消去し(ステップS290)、ステップS100以降の処理を繰り返し実行する。一方、ステップS290で次のページがないときには、そのままこのルーチンを終了する。
【0039】
なお、ステップS290でメジャーメント値を消去するのは、ページが変わると、印刷媒体Sの種別が変更される可能性があり、減速停止時間も変わる可能性があるためである。また、メジャーメント値の利用に際して、印刷設定の用紙設定に応じた減速停止時間を予め設定しておくことも考えられるが、実際にセットされている印刷媒体Sが印刷設定の用紙と異なる場合もあるため、ここでは、必ず実際に印刷媒体Sの減速停止時間を計測し、その計測した値を、種別が変更されないそのページに対してのみ繰り返し用いることによって、重合わせ処理をより確実なものとするのである。
【0040】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態のキャリッジモーター36が本発明の移動手段に相当し、搬送ユニット41が搬送手段に相当し、搬送駆動制御部61が搬送制御手段に相当し、搬送位置判定部62が搬送位置判定手段に相当し、時間計測部63が時間計測手段に相当し、タイミング設定部64がタイミング設定手段に相当し、印刷ヘッド移動制御部65が移動制御手段に相当する。また、給紙ローラー42、SMAPローラー43及びEJローラー44が本発明の搬送ローラーに相当し、SMAPローラー43が供給側搬送ローラーに相当し、EJローラー44が排出側搬送ローラーに相当し、2ローラー領域が所定の搬送位置に相当する。なお、本実施形態では、プリンター20の動作を説明することにより本発明の印刷装置の制御方法の一例も明らかにしている。
【0041】
以上詳述した本実施形態のプリンター20によれば、印刷媒体Sを搬送させ印刷ヘッド32からインクを吐出する位置で印刷媒体Sを停止させ、搬送された印刷媒体Sの位置を判定し、印刷媒体Sが2つの搬送ローラーに搬送される2ローラー領域(所定の搬送位置)にあると判定された直後に、印刷媒体Sが停止するまでの減速停止時間を計測し、計測した減速停止時間に基づいて印刷ヘッド32の移動開始タイミングを設定し、設定された移動開始タイミングで印刷ヘッド32の移動を開始させる。例えば、印刷媒体Sの種類などによっては、移動状態から停止状態へ至るまでの時間が異なることがある。このように、印刷媒体Sが2ローラー領域に至り、より安定して搬送されるときには、印刷媒体Sが停止するまでの計測時間に基づいて印刷ヘッド32の移動開始タイミングを設定するのである。また、複数の搬送ローラーに搬送されている、より安定な状態で、印刷媒体の減速停止時間を反映させた印刷ヘッド移動開始タイミングで印刷処理を実行するのである。したがって、印刷媒体の停止から印刷ヘッドのインク吐出までをより少ない時間で行うことが可能であり、印刷処理時間の短縮をより図ることができる。更に、印刷媒体Sが2ローラー領域にあると判定された直後の印刷ヘッド32の移動時に減速停止時間を計測するため、計測した減速停止時間に基づいて設定された移動開始タイミングで印刷ヘッドの移動を行う期間がより増えることから、印刷処理時間の短縮を更に図ることができる。
【0042】
また、印刷媒体Sが停止した直後に、印刷ヘッド32がインクを吐出可能な移動速度となるタイミングに減速停止時間を用いて移動開始タイミングを設定するため、より効率よく印刷処理を実行可能であり、印刷処理時間を更に短縮することができる。更に、印刷媒体Sの搬送の減速側での所定の切替タイミングで速度フィードバック制御から位置フィードバック制御へ切り替えて印刷媒体を搬送し、切替タイミングから印刷媒体Sの停止までの時間を計測するため、位置フィードバック制御に切り替えることで、停止までの時間をより短縮させ、且つ、印刷処理時間を更に短縮することができる。また、位置フィードバック制御では、目標速度がなく、どの時点で印刷媒体Sが停止するか減速時間の推定ができないことから、メジャーメント値を用いて印刷ヘッド移動開始タイミングを設定する意義が極めて高い。更にまた、計測した減速停止時間に基づいて設定された移動開始タイミングを用いないときには、所定マージンに基づいて設定されたタイミングで印刷ヘッドの移動を開始させるため、確実に印刷媒体の停止から印刷ヘッドの着色剤の吐出まで行うことができる。
【0043】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0044】
例えば、上述した実施形態では、印刷媒体Sが停止した直後に、印刷ヘッド32がインクを吐出可能な移動速度となるタイミングに減速停止時間を用いて移動開始タイミングを設定するものとしたが、特にこれに限定されない。例えば、微少な待機時間を設け、この待機時間経過後に印刷ヘッド32からインクが吐出されるような移動開始タイミングに設定するものとしてもよい。なお、印刷ヘッド移動開始タイミングは、上記所定のマージンよりも早いタイミングでインクを吐出するものとすればよい。こうしても、印刷処理時間の短縮をより図ることができる。
【0045】
上述した実施形態では、印刷媒体Sの搬送時の減速時に、速度フィードバック制御から位置フィードバック制御に切り替えるものとしたが、特にこれに限定されず、この切替を省略してもよい。こうしても、実際の停止時間を計測して、印刷ヘッド移動開始タイミングを設定するため、重合わせ処理を確実に実行すると共に、印刷処理時間の短縮をより図ることができる。
【0046】
上述した実施形態では、SMAPローラー43とEJローラー44とで印刷媒体Sを搬送している2ローラー領域では、メジャーメント値を用いて印刷ヘッド移動開始タイミングを設定し、これに基づいて印刷媒体Sの搬送及び停止、印刷ヘッド32の移動開始(重合わせ処理)を実行するものとしたが、特にこれに限定されない。例えば、SMAPローラー43及びEJローラー44のうちSMAPローラー43のみで搬送される1ローラー領域、及びSMAPローラー43及びEJローラー44のうちEJローラー44のみで搬送される1ローラー領域においても、メジャーメント値を用いて印刷ヘッド移動開始タイミングを設定するものとしてもよい。こうすれば、印刷処理時間の短縮をより図ることができる。
【0047】
このとき、SMAPローラー43で搬送される1ローラー領域、2ローラー領域、及びEJローラー44で搬送される1ローラー領域のうちいずれか2以上の組み合わせでメジャーメント値を用いて印刷ヘッド移動開始タイミングを設定するものとしてもよい。また、このとき、SMAPローラー43で搬送される1ローラー領域で計測した減速停止時間を、2ローラー領域での印刷ヘッド移動開始タイミングに用いるものとしてもよいし、EJローラー44で搬送される1ローラー領域での印刷ヘッド移動開始タイミングに用いるものとしてもよい。また、2ローラー領域で計測した減速停止時間を、EJローラー44で搬送される1ローラー領域での印刷ヘッド移動開始タイミングに用いるものとしてもよい。あるいは、SMAPローラー43で搬送される1ローラー領域ではその領域での減速停止時間を計測して印刷ヘッド移動開始タイミングを設定し、2ローラー領域ではその領域での減速停止時間を計測して印刷ヘッド移動開始タイミングを設定し、EJローラー44で搬送される1ローラー領域ではその領域での減速停止時間を計測して印刷ヘッド移動開始タイミングをそれぞれの領域ごとに設定するものとしてもよい。こうしても、印刷処理時間の短縮をより図ることができる。
【0048】
上述した実施形態では、印刷媒体Sが2ローラー領域にあると判定された直後の印刷ヘッド32の移動時に減速停止時間を計測するものとしたが、特にこれに限定されず、1パス後、数パス後に減速停止時間を計測するものとしても構わない。なお、できるだけ早期に減速停止時間を計測したほうが、適用回数が増えるので、印刷処理時間の短縮を図る観点からは望ましい。
【0049】
上述した実施形態では、計測した減速停止時間に基づいて設定された印刷ヘッド移動開始タイミングを用いないときには、所定のマージンに基づいて印刷ヘッド移動開始タイミングを設定するものとしたが、特にこれに限定されない。例えば、速度フィードバック制御を停止時まで行い、このフィードバック制御にあわせた印刷ヘッド移動開始タイミングとしてもよい。
【0050】
上述した実施形態では、PEセンサー48を1つ用いて印刷媒体Sの先端位置及び後端位置を検出するものとしたが、特にこれに限定されず、例えば、PEセンサー48を省略してもよいし、他のPEセンサーを複数配置してもよい。
【0051】
上述した実施形態では、プリンター20を本発明の印刷装置として説明したが、原稿を読み取り可能なスキャナユニットを備えたマルチファンクションプリンタや、FAX機能を有するFAX装置としてもよい。更にまた、プリンター20の態様で説明したが、印刷装置の制御方法の態様としてもよいし、印刷装置の制御方法のプログラムの態様としてもよい。
【符号の説明】
【0052】
20 プリンター、21 筐体、22 プラテン、23 給紙トレイ、24 排紙トレイ、30 プリンター部、31 印刷ユニット、32 印刷ヘッド、33 ノズル、34 キャリッジ、35 カートリッジ、36 キャリッジモーター、36a 従動ローラー、37 キャリッジベルト、38 ヘッドエンコーダー、39 キャリッジ軸、41 搬送ユニット、42 給紙ローラー、43 SMAPローラー、44 EJローラー、45 駆動モーター、46 搬送エンコーダー、48 PEセンサー、50 コントローラー、52 CPU、53 フラッシュメモリー、54 RAM、55 インターフェイス(I/F)、61 搬送駆動制御部、62 搬送位置判定部、63 時間計測部、64 タイミング設定部、65 印刷ヘッド移動制御部、66 印刷ヘッド駆動制御部、S 印刷媒体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体の搬送動作に合わせて印刷ヘッドを移動開始させる重合わせ処理を行う印刷装置であって、
前記印刷ヘッドを移動させる移動手段と、
前記印刷媒体を搬送する搬送ローラーを少なくとも1つ備える搬送手段と、
前記印刷媒体を搬送させ前記印刷ヘッドから着色剤を吐出する位置で該印刷媒体が停止するよう前記搬送手段を制御する搬送制御手段と、
前記搬送された該印刷媒体の位置を判定する搬送位置判定手段と、
前記印刷媒体が前記搬送ローラーに接する所定の搬送位置にあると判定されたあと、前記搬送手段の搬送動作により移動している前記印刷媒体が停止するまでの減速停止時間を計測する時間計測手段と、
前記計測した減速停止時間に基づいて前記印刷ヘッドの移動開始タイミングを設定するタイミング設定手段と、
前記設定された移動開始タイミングで、前記印刷ヘッドの移動を開始させるよう前記移動手段を制御する移動制御手段と、
を備えた印刷装置。
【請求項2】
前記タイミング設定手段は、前記搬送手段により前記印刷媒体が停止した後に、前記印刷ヘッドが前記着色剤を吐出可能な移動速度となるタイミングに前記減速停止時間を用いて前記移動開始タイミングを設定する、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記搬送制御手段は、前記印刷媒体の搬送の減速側での所定の切替タイミングで目標速度に基づく制御から目標位置に基づく制御へ切り替えて前記印刷媒体を搬送するよう前記搬送手段を制御し、
前記時間計測手段は、前記切替タイミングから前記印刷媒体の停止までの時間を計測する、請求項1又は2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記搬送手段は、前記印刷ヘッドの上流側で前記印刷媒体を搬送する供給側搬送ローラーを備えており、
前記搬送位置判定手段は、前記供給側搬送ローラーに前記印刷媒体が至る位置を前記所定の搬送位置として判定し、
前記移動制御手段は、少なくとも前記供給側搬送ローラーにより前記印刷媒体が搬送されている間は、前記設定された移動開始タイミングで前記印刷ヘッドの移動を開始させる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記搬送手段は、前記印刷ヘッドの上流側で前記印刷媒体を搬送する供給側搬送ローラーと前記印刷ヘッドの下流側で前記印刷媒体を搬送する排出側搬送ローラーとを備えており、
前記搬送位置判定手段は、前記供給側搬送ローラー及び前記排出側搬送ローラーに前記印刷媒体が接する位置を前記所定の搬送位置として判定し、
前記移動制御手段は、前記供給側搬送ローラー及び前記排出側搬送ローラーに前記印刷媒体が搬送されている間は、前記設定された移動開始タイミングで前記印刷ヘッドの移動を開始させる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記搬送手段は、前記印刷ヘッドの上流側で前記印刷媒体を搬送する供給側搬送ローラーと前記印刷ヘッドの下流側で前記印刷媒体を搬送する排出側搬送ローラーとを備えており、
前記搬送位置判定手段は、前記供給側搬送ローラー及び前記排出側搬送ローラーのうち、前記供給側搬送ローラーに前記印刷媒体が接する位置を第1の前記搬送位置に判定し、前記供給側搬送ローラー及び前記排出側搬送ローラーに前記印刷媒体が接する位置を第2の前記搬送位置に判定し、前記供給側搬送ローラー及び前記排出側搬送ローラーのうち前記排出側搬送ローラーに前記印刷媒体が接する位置を第3の前記搬送位置に判定し、
前記時間計測手段は、前記印刷媒体が前記第1搬送位置にあると判定されると前記搬送手段の搬送動作により移動している前記印刷媒体が停止するまでの第1減速停止時間を計測し、前記印刷媒体が前記第2搬送位置にあると判定されると前記搬送手段の搬送動作により移動している前記印刷媒体が停止するまでの第2減速停止時間を計測し、前記印刷媒体が前記第3搬送位置にあると判定されると前記搬送手段の搬送動作により移動している前記印刷媒体が停止するまでの第3減速停止時間を計測し、
前記タイミング設定手段は、前記計測した第1減速停止時間に基づいて前記印刷ヘッドの第1移動開始タイミングを設定し、前記計測した第2減速停止時間に基づいて前記印刷ヘッドの第2移動開始タイミングを設定し、前記計測した第3減速停止時間に基づいて前記印刷ヘッドの第3移動開始タイミングを設定し、
前記移動制御手段は、前記供給側搬送ローラーに前記印刷媒体が搬送されている間は前記設定された第1移動開始タイミングで前記印刷ヘッドの移動を開始させ、前記供給側搬送ローラー及び前記排出側搬送ローラーに前記印刷媒体が搬送されている間は前記設定された第2移動開始タイミングで前記印刷ヘッドの移動を開始させ、前記排出側搬送ローラーに前記印刷媒体が搬送されている間は前記設定された第3移動開始タイミングで前記印刷ヘッドの移動を開始させる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記時間計測手段は、前記印刷媒体が所定の搬送位置にあると判定された後の前記印刷ヘッドの移動時に前記減速停止時間を計測する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記移動制御手段は、前記計測した減速停止時間に基づいて設定された前記移動開始タイミングを用いないときには、予め定められた所定マージンに基づいて設定されたタイミングで前記印刷ヘッドの移動を開始させるよう前記移動手段を制御する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項9】
印刷ヘッドを移動させる移動手段と、印刷媒体を搬送する搬送ローラーを少なくとも1つ備える搬送手段と、を備え、該印刷媒体の搬送動作に合わせて前記印刷ヘッドを移動開始させる重合わせ処理を行う印刷装置の制御方法であって、
(a)前記印刷媒体を搬送させ前記印刷ヘッドから着色剤を吐出する位置で該印刷媒体が停止するよう前記搬送手段を制御するステップと、
(b)前記搬送された該印刷媒体の位置を判定するステップと、
(c)前記印刷媒体が前記搬送ローラーに接する所定の搬送位置にあると判定されたあと、前記搬送手段の搬送動作により移動している前記印刷媒体が停止するまでの減速停止時間を計測するステップと、
(d)前記計測した減速停止時間に基づいて前記印刷ヘッドの移動開始タイミングを設定するステップと、
(e)前記設定された移動開始タイミングで、前記印刷ヘッドの移動を開始させるよう前記移動手段を制御するステップと、
を含む印刷装置の制御方法。
【請求項10】
請求項9に記載された印刷装置の制御方法の各ステップを1以上のコンピューターに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−218304(P2012−218304A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86677(P2011−86677)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】