説明

印刷装置、及び、印刷方法

【課題】媒体の消費量を削減すること。
【解決手段】媒体にパターンを印刷する複数色の第1インクをそれぞれ吐出する複数の第1ノズルと、第1インクとは異なる色の第2インクを吐出する第2ノズルと、パターンが既に印刷されている媒体であり、新たにパターンを印刷する領域の無い媒体に、パターンを印刷させる場合に、媒体に既に印刷されているパターンの中のより淡い色のパターンの上に優先的に第2インクを塗布させ、その第2インクの上にパターンを印刷させる制御部と、を有する印刷装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、及び、印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷装置として、媒体(例えば印刷用紙)に対してノズルからインクを吐出することにより、媒体に画像を印刷するインクジェットプリンター(以下、プリンター)が挙げられる。ノズルから正常にインクが吐出されない不良ノズルを検出するために、プリンターはパターンを媒体に印刷することがある。何度もパターンを印刷する場合、多数の媒体を消費してしまう。そこで、1枚の媒体に対して、パターンをずらして印刷し、媒体の消費量を削減する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−276502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ただし、パターンを印刷した媒体の余白が少ない場合には、その媒体に新たなパターンを印刷することが出来ない。そうすると、別の媒体にパターンを印刷することになり、その結果、媒体を消費してしまう。
そこで、本発明は、媒体の消費量を削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決する為の主たる発明は、媒体にパターンを印刷する複数色の第1インクをそれぞれ吐出する複数の第1ノズルと、前記第1インクとは異なる色の第2インクを吐出する第2ノズルと、前記パターンが既に印刷されている前記媒体であり、新たに前記パターンを印刷する領域の無い前記媒体に、前記パターンを印刷させる場合に、前記媒体に既に印刷されている前記パターンの中のより淡い色の前記パターンの上に優先的に前記第2インクを塗布させ、当該第2インクの上に前記パターンを印刷させる制御部と、を有することを特徴とする印刷装置である。
本発明の他の特徴は、本明細書、及び添付図面の記載により、明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】プリンターの全体構成ブロック図である。
【図2】プリンター1の概略断面図である。
【図3】ブラックヘッドにより印刷されるパターンを説明する図である。
【図4】不良ノズル検査のフローであり、
【図5】1回目のノズルチェックパターンの印刷結果を説明する図である。
【図6】図6Aから図6Cは2回目のノズルチェックパターンの印刷を説明する図である。
【図7】図7A及び図7Bは3回目のノズルチェックパターンの印刷を説明する図である。
【図8】図8A及び図8Bは不良ノズルが検出された色のパターンを印刷する様子を説明する図である。
【図9】重ねて印刷するパターン数が増えるに従って白インクのDuty制限値を高くする場合を説明する図である。
【図10】重ねて印刷するパターン数が増えるに従って白インクのDuty制限値を低くする場合を説明する図である。
【図11】図11Aは前述の実施形態とは異なるプリンターの概略斜視図であり、図11Bはヘッドの下面に形成されるノズルの配列を示す図である。
【図12】図12Aから図12Cは、図11に示すプリンターが印刷するノズルチェックパターンを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
===開示の概要===
本明細書の記載、及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかとなる。
【0008】
即ち、媒体にパターンを印刷する複数色の第1インクをそれぞれ吐出する複数の第1ノズルと、前記第1インクとは異なる色の第2インクを吐出する第2ノズルと、前記パターンが既に印刷されている前記媒体であり、新たに前記パターンを印刷する領域の無い前記媒体に、前記パターンを印刷させる場合に、前記媒体に既に印刷されている前記パターンの中のより淡い色の前記パターンの上に優先的に前記第2インクを塗布させ、当該第2インクの上に前記パターンを印刷させる制御部と、を有することを特徴とする印刷装置である。
このような印刷装置によれば、媒体の消費量を削減することができる。また、上層のパターンの視認性を良くすることができる。
【0009】
かかる印刷装置であって、前記パターンの上に前記第2インクを塗布する場合に前記媒体上の単位領域に対して吐出可能な最大の前記第2インク量が、画像を印刷する場合に前記媒体上の前記単位領域に対して吐出可能な1色あたりの最大の前記第1インク量よりも、少ないこと。
このような印刷装置によれば、媒体の吸収能力を超えてインクが吐出されてしまうことを防止でき、パターンの滲みを防止できる。
【0010】
かかる印刷装置であって、前記制御部は、前記媒体に既に印刷されている前記パターンの中から、重ねて印刷された前記パターンの数がより少ない前記パターンを選択し、選択した前記パターンの中のより淡い色の前記パターンの上に優先的に前記第2インクを塗布させ、当該第2インクの上に前記パターンを印刷させること。
このような印刷装置によれば、媒体の吸収能力を超えてインクが吐出されてしまうことを防止でき、媒体の全域を平均的に使用することができる。
【0011】
かかる印刷装置であって、重ねて印刷された前記パターンの数が第1の数である前記パターンの上に前記第2インクを塗布する場合に前記媒体上の単位領域に対して吐出可能な最大の前記第2インク量よりも、重ねて印刷された前記パターンの数が前記第1の数よりも多い数である前記パターンの上に前記第2インクを塗布する場合に前記媒体上の前記単位領域に対して吐出可能な最大の前記第2インク量の方が、多いこと。
このような印刷装置によれば、第2インクの層が下層のパターンの影響を受け難くなり、上層パターンの視認性を良くすることができる。
【0012】
かかる印刷装置であって、重ねて印刷された前記パターンの数が第1の数である前記パターンの上に前記第2インクを塗布する場合に前記媒体上の単位領域に対して吐出可能な最大の前記第2インク量よりも、重ねて印刷された前記パターンの数が前記第1の数よりも多い数である前記パターンの上に前記第2インクを塗布する場合に前記媒体上の前記単位領域に対して吐出可能な最大の前記第2インク量の方が、少ないこと。
このような印刷装置によれば、媒体の吸収能力を超えてインクが吐出されてしまうことを防止でき、パターンの滲みを防止できる。
【0013】
かかる印刷装置であって、前記パターンは、インクが吐出されるべき時に吐出不良が発生する不良ノズルを検出するためのパターンであり、前記制御部は、前記複数色の前記第1インクによって色ごとに印刷させた前記パターンに基づいて前記不良ノズルを検出した場合に、前記不良ノズルに対する回復処理を実行させた後、前記不良ノズルから吐出される前記第1インクの色の前記パターンを前記媒体に印刷させること。
このような印刷装置によれば、媒体の吸収能力を超えてインクが吐出されてしまうことを防止でき、また、インク消費量を削減することができる。
【0014】
また、複数色の第1インクによって色ごとのパターンを媒体に印刷することと、前記パターンが既に印刷されている前記媒体であり、新たに前記パターンを印刷する領域の無い前記媒体に、前記パターンを印刷する場合に、前記媒体に既に印刷されている前記パターンの中のより淡い色の前記パターンの上に前記第1インクとは異なる色の第2インクを塗布し、当該第2インクの上に前記パターンを印刷することと、を有することを特徴とする印刷方法である。
このような印刷方法によれば、媒体の消費量を削減することができる。また、上層のパターンの視認性を良くすることができる。
【0015】
===印刷システム===
以下、インクジェットプリンター(以下、プリンター)とコンピューターが接続された印刷システムを例に挙げて実施形態を説明する。
【0016】
図1は、プリンター1の全体構成ブロック図であり、図2は、プリンター1の概略断面図である。コンピューター50は、プリンター1と通信可能に接続されており、プリンター1に画像を印刷させるための印刷データをプリンター1に出力する。なお、コンピューター50には、アプリケーションプログラムから出力された画像データを印刷データに変換するためのプログラム(プリンタードライバー)がインストールされている。プリンタードライバーは、CD−ROMなどの記憶媒体に記憶されていたり、インターネットを介してコンピューターにダウンロード可能であったりする。
【0017】
コントローラー10は、プリンター1の制御を行うための制御ユニットである。インターフェース部11はコンピューター50とプリンター1との間でデータの送受信を行うためのものである。CPU12はプリンター1全体の制御を行うための演算処理装置である。メモリー13はCPU12のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するためのものである。CPU12はユニット制御回路14により各ユニットを制御する。なお、プリンター1内の状況を検出器群40が監視し、その検出結果に基づいて、コントローラー10は各ユニットを制御する。
【0018】
搬送ユニット20は、搬送ローラー21A,21Bと搬送ベルト22を有し、媒体S(用紙やフィルム等)を搬送方向の上流側から下流側へ一定の速度で停まることなく搬送する。なお、搬送ベルト22上の媒体Sは吸引吸着や静電吸着されており、媒体Sの位置ずれが防止されている。
【0019】
ヘッドユニット30は、媒体Sにインクを吐出するためのものであり、複数色のインクをそれぞれ吐出する複数のヘッド31を有する。本実施形態のプリンター1は5色のインクを吐出し、ヘッドユニット30は5個のヘッド31を有する。搬送方向の上流側から、白インクを吐出するホワイトヘッド31(W)、イエローインクを吐出するイエローヘッド31(Y)、マゼンタインクを吐出するマゼンタヘッド31(M)、シアンインクを吐出するシアンヘッド31(C)、ブラックインクを吐出するブラックヘッド31(K)が、順に並んでいる。
【0020】
そして、各ヘッド31の下面に設けられたノズルからインクが吐出される。なお、ノズルからのインク吐出方式は、駆動素子に電圧をかけて、インクが充填された圧力室を膨張・収縮させることによりインクを吐出するピエゾ方式でもよいし、発熱素子を用いてノズル内に気泡を発生させ、その気泡によってインクを吐出させるサーマル方式でもよい。
【0021】
このようなプリンター1では、搬送ベルト22上を一定の速度で停まることなく搬送される媒体Sとヘッド31が対向する際に、ヘッド31に設けられたノズルからインクが吐出されることにより、媒体S上に画像が印刷される。
【0022】
===不良ノズル検査===
ヘッド31に設けられたノズルから長時間に亘ってインクが吐出されずにインクが増粘したり、ノズルに異物が付着したり、ノズル内に気泡が混入したりすると、インクが吐出されるべき時に規定量のインクがノズルから吐出されなくなってしまう。このようにインクの吐出不良が発生するノズルを「不良ノズル」と呼ぶ。印刷に使用するノズルの中に不良ノズルが含まれると、画像内にドット抜けが生じる等して、画像の画質が劣化してしまう。そのため、本実施形態のプリンター1は、印刷開始前などに、不良ノズルの発生の有無を判断する「不良ノズル検査」を実施する。不良ノズル検査のために、プリンター1は「ノズルチェックパターン」を媒体に印刷する。
【0023】
図3は、ブラックヘッド31(K)により印刷されるブラックのパターンP(K)を説明する図である。ブラックヘッド31(K)の下面では、搬送方向と交差する紙幅方向に複数のノズル(#1〜#16)が所定の間隔(例えば180dpi)おきに並んでいる。なお、説明の簡略のためノズル数を減らして描いている。また、他の色のインクを吐出するヘッド31においても同様にノズルが設けられている。
【0024】
そして、図2に示すように、本実施形態のプリンター1は、5色のインク(WYMCK)を吐出し、その中の4色のインク(YMCK)によって媒体に画像を印刷する。画像を印刷するために使用する4色のインク(YMCK)を「印刷インク(第1インクに相当)」と呼ぶ。印刷インク(YMCK)を吐出するノズル(第1ノズルに相当)の中に不良ノズルが含まれると、画像の画質が劣化してしまう。そのため、プリンター1は、印刷インク(YMCK)を吐出するヘッド31を用いてノズルチェックパターンを印刷する。
【0025】
具体的には、コントローラー10は、ノズルチェックパターンとして、4色の印刷インク(YMCK)の色ごとのパターン(イエローのパターン、マゼンタのパターン、シアンのパターン、ブラックのパターン)を印刷する。各色のパターンは、各色のインクを吐出するヘッド31の下を媒体Sが通過する際に、ヘッド31の下面に設けられたノズルから断続的にインク滴が吐出されることによって、印刷される。その結果、各色のパターンでは、図3に示すように、ヘッド31に属する各ノズル#1〜#16によって形成された搬送方向に沿うドット列が紙幅方向に並んでいる。
【0026】
ここで、ブラックヘッド31(K)の「ノズル#9」が不良ノズルであり、ノズル#9から全くインクが吐出されないとする。そうすると、図3に示すように、ノズル#9に割り当てられた媒体S上の領域にはドットが形成されず、パターンに搬送方向に沿った白スジが生じる。なお、規定量のインクよりも少ないインクを吐出する不良ノズルが発生している場合、パターンに搬送方向に沿った淡い色のスジが生じる。つまり、パターンに白スジや淡い色のスジが生じているか否かによって、不良ノズルの発生の有無を判断することができ、また、パターンにおける白スジ等の位置によって不良ノズルの位置を判断することができる。
【0027】
また、本実施形態のプリンター1には、図2に示すように、ヘッド31よりも搬送方向の下流側に、ノズルチェックパターンを読み取るための「センサー41」が設けられている。コントローラー10は、センサー41がノズルチェックパターンを読み取った結果に基づいて、不良ノズルの発生の有無(及び、不良ノズルの位置)を判断する。ただし、これに限らず、例えば、ユーザーがノズルチェックパターンを直接に視認して不良ノズルの発生の有無を判断してもよいし、プリンター1の外部のセンサーがノズルチェックパターンを読み取った結果に基づいてコントローラー10が不良ノズルの発生の有無を判断してもよい。
【0028】
===クリーニング動作===
不良ノズル検査の結果、不良ノズルが検出された場合、プリンター1は、不良ノズルから正常にインクが吐出されるように「クリーニング動作」を実施する。ここでは、クリーニング動作の具体例として、フラッシング、ポンプ吸引、ワイピングを挙げる。
【0029】
「フラッシング」とは、ヘッド31とインク回収部(不図示)を対向させた状態で、強制的にノズルからインクを吐出させ、増粘したインクやノズル面に付着した異物をインクとともに吐出させる動作である。
「ポンプ吸引」とは、ヘッド31のノズル面とインク回収部を密着させて、インク回収部の底面に接続されたチューブを介してポンプ吸引する(不図示)。そうすることで、増粘したインクや異物と共に、ヘッド31内のインクを吸引する動作である。
「ワイピング」とは、ゴム製のワイパー等でノズル面を擦って異物などを除去する動作である。
上記クリーニング動作の中の何れか1つの動作を実施してもよいし、複数の動作を組み合わせて実施してもよい。
【0030】
===第1実施形態===
図4は、不良ノズル検査のフローであり、図5は、1回目のノズルチェックパターンの印刷結果を説明する図である。不良ノズル検査を実施する場合、コントローラー10は、まず、新しい媒体Sにノズルチェックパターンを印刷させる(図4のS001)。前述のように、コントローラー10は、ノズルチェックパターンとして、4色の印刷インク(YMCK)の色ごとのパターンを媒体に印刷させる。
【0031】
具体的には、搬送方向に搬送される媒体Sに対して、搬送方向上流側のヘッド31から順にパターンを印刷させる。その結果、図5に示すように、媒体の先端Saから幅がDである「第1領域T1」にイエローのパターンP(Y)が印刷され、第1領域T1よりも媒体の後端Sb側の幅がDである「第2領域T2」にマゼンタのパターンP(M)が印刷され、第2領域T2よりも媒体の後端Sb側の幅がDである「第3領域T3」にシアンのパターンP(C)が印刷され、第3領域T3よりも媒体の後端Sb側の幅がDである「第4領域T4」にブラックのパターンP(K)が印刷される。
【0032】
また、センサー41の読取結果が何色のパターンの読取結果であるかを判断するために、各パターンPの近傍には、各パターンの付加情報を示す「付加情報マークm」が印刷される。センサー41は、パターンPと共に付加情報マークmを読み取り、その読取結果をコントローラー10に送信する。
【0033】
コントローラー10は、センサー41から取得した読取結果に基づいて(パターンPに白スジ等が生じているか否かによって)、不良ノズルの発生の有無を判断する(S002)。不良ノズルが発生していなかった場合(S002→N)、コントローラー10は不良ノズル検査を終了する。
【0034】
一方、不良ノズルが発生していた場合(S002→Y)、コントローラー10は、不良ノズルが発生していたヘッド31に対してクリーニング動作を実施する(S003)。その後、クリーニング動作により不良ノズルから正常にインクが吐出されるように回復したか否かを確認するために、コントローラー10は、再度、媒体Sにノズルチェックパターンを印刷させる。
【0035】
ここで仮に、ノズルチェックパターンを印刷する度に、新しい媒体Sをプリンター1に供給したとする。そうすると、ノズルチェックパターンを何度も印刷した場合、多数の媒体Sを消費してしまう。そこで、本実施形態のプリンター1は、ノズルチェックパターンが既に印刷される媒体(図5の媒体S)を使用して、2回目以降のノズルチェックパターンを印刷する。
【0036】
1回目のノズルチェックパターンを印刷した結果、図5に示すように、媒体Sには余白がある。具体的には、第4領域T4よりも媒体の後端Sb側の幅がDである「第5領域T5」と、第5領域T5よりも媒体の後端Sb側の幅がDである「第6領域T6」と、第6領域T6よりも媒体の後端Sb側の幅がDである「第7領域T7」が余白となっている。しかし、第5領域T5から第7領域T7には3色のパターンしか印刷することが出来ず、4色のパターンを印刷することは出来ない。
【0037】
このように、ノズルチェックパターンが既に印刷されている媒体Sに、新たにノズルチェックパターンを印刷する余白が足りない場合や、余白が全く無い場合、本実施形態のプリンター1は、印刷インク(YMCK)とは異なる色の「白インク(第2インクに相当)」をノズル(第2ノズルに相当)から吐出させることによって、既に印刷されているパターンを塗りつぶし、パターンを塗りつぶした白インクの上から新たにパターンを印刷する。
【0038】
そうすることで、センサー41が下層パターン(先に印刷したパターン)と上層パターン(後に印刷したパターン)を区別して読み取ることができ、コントローラー10は上層パターンの読取結果に基づいて不良ノズルの発生の有無を判断することができる。
【0039】
そして、本実施形態では、媒体Sに既に印刷されているパターンを塗りつぶすインク(以下、「消去インク」とも呼ぶ)を、媒体の色(ここでは白色)と同色系のインクとする。そうすることで、センサー41は、白インクを介して下層パターンに重ねて印刷されたパターンを、媒体Sに直接印刷されたパターンと同様に読み取ることができる。
【0040】
そのために、コントローラー10は、クリーニング動作後、新たにノズルチェックパターンを印刷する領域が有るか否かを判断する(S004)。媒体の余白が大きく、新たにノズルチェックパターンを印刷する領域が有る場合(S004→Y)、コントローラー10は、その媒体の余白部分にノズルチェックパターンを印刷させる(S001)。一方、図5に示す媒体Sのように新たにノズルチェックパターンを印刷する領域が無い場合、即ち、余白が足りない場合(S004→N)、コントローラー10は、白インクでパターンを塗りつぶす媒体S上の領域(以下、「塗りつぶし領域」とも呼ぶ)を決定する(S005)。
【0041】
なお、媒体のインク吸収能力を超えてインクが吐出されてしまうことを防止するために、コントローラー10は、重ねて印刷されるパターンの数が閾値を越えた場合には、その媒体を使用不可な媒体とし、新しい媒体にノズルチェックパターンを印刷する。また、重ねて印刷されるパターン数に関する閾値は、紙種に応じて異ならせるとよい。
【0042】
そして、本実施形態では、コントローラー10は、媒体Sに既に印刷されているパターンの中の最も淡い色のパターンが印刷されている領域を塗りつぶし領域に決定する。即ち、コントローラー10は、媒体Sに既に印刷されているパターンの中のより淡い色のパターンが印刷されている領域から順に、塗りつぶし領域に決定する。なお、以下の説明のため、4色の印刷インク(YMCK)によるパターンでは、イエローのパターン、マゼンタのパターン、シアンのパターン、ブラックのパターンの順に、濃度が淡いとする。
【0043】
具体的に説明すると、1回目のノズルチェックパターンが印刷された図5に示す媒体Sでは、1色分のパターンを印刷する領域が足りない。そのため、コントローラー10は、媒体S上の第1領域T1から第7領域T7の中の1つの領域を塗りつぶし領域に決定する。そして、コントローラー10は、媒体Sに既に印刷されているパターンの中の最も淡い色のパターンであるイエローのパターンP(Y)が印刷されている第1領域T1を塗りつぶし領域に決定する。
【0044】
なお、例えば、2色分のパターンを印刷する領域が足りない場合、コントローラー10は、媒体S上の第1領域T1から第7領域T7の中の2つの領域を塗りつぶし領域に決定する。そして、コントローラー10は、媒体Sに既に印刷されているパターンの中の最も淡い色のパターンであるイエローのパターンP(Y)が印刷されている第1領域T1と、イエローの次に淡い色であるマゼンタのパターンP(M)が印刷されている第2領域T2を、塗りつぶし領域に決定する。
【0045】
つまり、コントローラー10は、パターンが既に印刷されている媒体であり、新たにパターンを印刷する領域の無い媒体に、パターンを印刷させる場合に、媒体に既に印刷されているパターンの中のより淡い色のパターンの上に優先的に消去インク(白インク)を塗布させ、その消去インクの上にパターンを印刷させる。
【0046】
そうすることで、既に印刷されているパターンの中の淡い色のパターンの方が濃い色のパターンよりも先に白インクで塗りつぶされる。即ち、淡い色のパターンの上にパターンが重ねて印刷される確率よりも、濃い色のパターンの上にパターンが重ねて印刷される確率の方が低くなる。淡い色のパターンを白インク(消去インク)で塗りつぶす方が、濃い色のパターンを白インクで塗りつぶすよりも、白インクに与える下層パターンの影響が小さい。即ち、淡い色のパターンを白インクで塗りつぶす方が、濃い色のパターンを白インクで塗りつぶすよりも、白インク越しに下層パターンが見え難くなり、白インクの色がより白色(媒体の色)に近付く。
【0047】
よって、媒体に既に印刷されているパターンの中のより淡い色のパターンを白インクで塗りつぶし、その白インク上にパターンを印刷することで、上層パターンの視認性を良くすることができる。その結果、コントローラー10は、上層パターンの読取結果に基づいて、より正確に不良ノズルを検出することができる。また、既にパターンが印刷されている媒体に新たにパターンを印刷することができるため、媒体の消費量を削減することができる。
【0048】
また、淡い色のパターンの方が濃い色のパターンよりも先に白インクで塗りつぶされるため、濃い色のパターンよりも淡い色のパターンを先に媒体に印刷するとよい。そうすることで、淡い色のパターンがより乾燥した状態で、淡い色のパターンの上に白インクが塗布される。その結果、淡い色のパターンと白インクの滲みを防止することができ、白インクの上に印刷される上層パターンの視認性を良くすることができる。そのために、本実施形態のプリンター1(図2)では、淡い色のインクを吐出するヘッド(例えば、イエローヘッド31(Y))を濃い色のインクを吐出するヘッド(例えば、ブラックヘッド31(K))よりも搬送方向の上流側に配置している。そうすることで、媒体Sは、ブラックヘッド31(K)よりも先にイエローヘッド31(Y)と対向するため、ブラックのパターンよりもイエローのパターンが先に印刷される。
【0049】
図6Aから図6Cは、2回目のノズルチェックパターンの印刷を説明する図である。コントローラー10は、塗りつぶし領域を決定した後(S005)、塗りつぶし領域に白インクを吐出させて白インクでパターンを塗りつぶし(S006)、2回目のノズルチェックパターンを印刷させる(S001)。
【0050】
下層パターンを塗りつぶす白インクと上層パターンとが滲まないように、塗りつぶし領域に白インクを吐出してから上層パターンを印刷するまでの間に所定の時間(白インクの乾燥時間)を設けるとよい。そのために、本実施形態では、塗りつぶし領域に白インクを吐出させた後に媒体Sを排紙させ、再度、媒体Sをプリンター1にセットしてノズルチェックパターンを印刷させる。そうすることで、より白インクが乾燥した状態で上層パターンを印刷することができ、上層パターンの視認性を良くすることができる。
【0051】
そのために、コントローラー10は、まず、塗りつぶし領域に決定された第1領域T1に白インクが吐出されるように、印刷データをホワイトヘッド31(W)に送信する。なお、第1領域T1のうち、イエローのパターンP(Y)と付加情報マークm(Y)が印刷されている領域にだけ白インクが吐出されるようにしてもよいし、第1領域T1の全域に亘って白インクが吐出されるようにしてもよい。その結果、図6Aに示すように、第1領域T1に印刷されていたイエローのパターンと付加情報マークが白インクにより塗りつぶされ、第1領域T1は、新たなパターンを印刷することが出来る状態となる。
【0052】
次に、コントローラー10は、媒体Sの搬送方向下流側(先端側)の領域から順に、2回目のノズルチェックパターンを印刷させる。そのために、コントローラー10は、第1領域T1にイエローのパターンP(Y2)と付加情報マークm(Y2)が印刷されるように印刷データをイエローヘッド31(Y)に送信し、第5領域T5にマゼンタのパターンP(M2)と付加情報マークm(M2)が印刷されるように印刷データをマゼンタヘッド31(M)に送信し、第6領域T6にシアンのパターンP(C2)と付加情報マークm(C2)が印刷されるように印刷データをシアンヘッド31(C)に送信し、第7領域T7にブラックのパターンP(K2)と付加情報マークm(K2)が印刷されるように印刷データをブラックヘッド31(K)に送信する。その結果、図6Bに示すようにパターンが印刷される。
【0053】
なお、塗りつぶし領域に白インクを吐出させた後に媒体Sを排紙し、再度、媒体Sをセットしてノズルチェックパターンを印刷させるとしているが、これに限らない。同じ期間に搬送ベルト22上を搬送される媒体Sに対して、白インクを吐出させ、且つ、ノズルチェックパターンを印刷させてもよい。
【0054】
このとき、塗りつぶし領域と余白にパターンを印刷する場合、より搬送方向下流側のヘッド31(例えばブラックヘッド31(K))が塗りつぶし領域にパターンを印刷するようにするとよい。また、塗りつぶし領域にだけパターンを印刷する場合、先に塗りつぶされた領域から順にパターンを印刷するようにするとよい。そうすることで、より白インクが乾燥した状態で上層パターンを印刷することができ、上層パターンの視認性を良くすることができる。
【0055】
図6Cは、Duty制限値を説明する図である。本実施形態で用いるインクは水系インクであり、本実施形態で用いる媒体は水系インクの吸収性を備える媒体(例えば、紙)であるとする。インク吸収性媒体には吸収可能なインク量に限界がある。そのため、インク吸収性媒体の吸収能力を超えてインクが吐出されてしまうと、媒体内部に吸収しきれないインクが媒体上に溢れだし、画像が滲んでしまう。
【0056】
インク吸収性媒体の吸収能力を超えてインクが吐出されてしまうことを防止するために、本実施形態のプリンター1では「Duty制限値」が設定されている。「Duty制限値(%)」とは、「媒体上の単位領域に形成可能なドット数」に対する「媒体の吸収能力を超えずに媒体上の単位領域に形成可能なドット数」の割合を意味する。本実施形態のプリンター1では、Duty制限値以下で印刷が行われるように、Duty制限値を考慮した印刷データが作成される。
【0057】
ここで、1つのドットが形成される媒体上の領域を「画素」と呼ぶ。よって、媒体上の単位領域に形成可能なドット数とは、媒体上の単位領域に属する画素数に相当する。例えば、媒体上の単位領域に属する画素数が100画素であり、媒体の吸収能力を超えずに媒体上の単位領域に形成可能なドット数が50個である場合、Duty制限値は「50%(=(50/100)×100)」となる。
【0058】
そして、本実施形態のプリンター1では、塗りつぶし領域のパターンを白インクで塗りつぶす時の白インクのDuty制限値を、実際の画像を印刷する時の印刷インク(YMCK)の1色あたりのDuty制限値よりも、低い値に設定する。つまり、本実施形態のプリンター1では、パターンの上に消去インク(白インク)を塗布する場合に媒体上の単位領域に対して吐出可能な最大の消去インク量を、画像を印刷する場合に媒体上の単位領域に対して吐出可能な1色あたりの最大の印刷インク量よりも、少なくする。なお、「画像」とは、ユーザーが指定した画像データに基づいて印刷する画像であってもよいし、ノズルチェックパターンであってもよい。
【0059】
例えば、実際の画像を印刷する場合の印刷インク(YMCK)の1色あたりのDuty制限値が100%に設定され、パターンを塗りつぶす場合の白インクのDuty制限値が50%に設定されているとする。そうすると、実際の画像を印刷する時には、図6Cの左図に示すように、媒体上の単位領域(4画素×4画素)に対して1色のドットを最大で16個形成することが可能となる。一方、パターンを塗りつぶす時には、図6Cの右図に示すように、媒体上の単位領域に対して白インクのドットを最大で8個までしか形成することができない。
【0060】
そうすることで、本実施形態のように白インクを介してパターンを重ねて印刷する場合であっても、媒体の吸収能力を超えてインクが吐出されてしまうことを防止することができる。その結果、パターンの滲みを抑え、パターンの視認性を良くすることができ、不良ノズルを正確に検出することができる。また、比較的に高価なインクである白インクの消費量を抑えることができる。
【0061】
パターンを塗りつぶす白インクは、下層パターンと上層パターンを区別するためのものである。そのため、パターン上に白インクを塗布した領域が媒体の色(白色)と完全に同じにならなくとも、下層パターンと上層パターンを区別することが出来れば問題ない。そのため、パターンを塗りつぶす時の白インクのDuty制限値を低くして、白インク層が下層パターンの影響を受けて、白インク層がグレイ(例えば、L色空間におけるL値が50で表される色)に視認されても問題ない。
【0062】
また、本実施形態では、既に印刷されているパターンの中のより淡い色のパターンを優先的に白インクで塗りつぶす。そのため、パターンを塗りつぶす時の白インクのDuty制限値を低くしても、白インクは下層パターンの影響を受け難く、上層パターンの視認性が悪化してしまうことを防止できる。
【0063】
また、パターンを塗りつぶす時の白インクのDuty制限値を低く設定し、媒体に吐出する白インク量を減らした分だけ、パターンを印刷する時のDuty制限値を高く設定することができたり、重ねて印刷するパターン数を増やすことができたりする。
【0064】
なお、白インクは、パターンを塗りつぶすために使用するに限らず、4色のインク(YMCK)によるカラー画像やモノクロ画像の背景画像を印刷するために使用することもできる。そのため、パターンを白インクで塗りつぶす時の白インクのDuty制限値を、背景画像を印刷する時の白インクのDuty制限値よりも、低い値に設定してもよい。
【0065】
また、パターンよりも付加情報マークの方をセンサー41がより精度良く読み取らないと、付加情報マークの内容が誤認識される場合がある。そこで、パターンを塗りつぶす時の白インクのDuty制限値よりも、付加情報マークを塗りつぶす時の白インクのDuty制限値を、高い値に設定してもよい。即ち、付加情報マークを塗りつぶす時の白インクのDuty制限値を、実際の画像を印刷する時の印刷インクの1色あたりのDuty制限値と同等の値に設定してもよい。そうすることで、コントローラー10は付加情報マークの内容を正しく認識することができる。
【0066】
図7A及び図7Bは、3回目のノズルチェックパターンの印刷を説明する図である。2回目のノズルチェックパターンの読取結果から不良ノズルが検出された場合、コントローラー10は、クリーニング動作を実施させ、3回目のノズルチェックパターンを印刷させる。この場合、コントローラー10は、まず、2回目のノズルチェックパターンが印刷された媒体S(図6B)に、3回目のノズルチェックパターンを印刷する領域が有るか否かを判断する(図4のS004)。
【0067】
2回目のノズルチェックパターンが印刷された媒体Sには余白が無いので、コントローラー10は、4色のパターンを印刷するために4つの塗りつぶし領域を決定する(S005)。2回目のノズルチェックパターンが印刷された媒体Sには、2つのパターンが重ねて印刷された領域(T1)と、パターンが1つだけ印刷された領域(T2〜T7)とが、存在する。
【0068】
この場合、コントローラー10は、重ねて印刷されているパターンの数がより少ない領域の中のより淡い色のパターンが印刷されている領域から順に、塗りつぶし領域に決定する。なお、コントローラー10が、媒体S上の各領域(T1〜T7)に重ねて印刷されているパターンの数を把握することができるように、例えば、付加情報マークmに何層目のパターンであるかの情報を含ませたり、コントローラー10内にカウンターを設けたりするとよい。
【0069】
図6Bを用いて具体的に説明すると、コントローラー10は、まず、重ねて印刷されているパターンの数が最も少ない領域である「第2領域T2から第7領域T7」を選択する。次に、コントローラー10は、第2領域T2から第7領域T7に印刷されているパターンのうち、最も淡い色のパターンはマゼンタのパターンであると判断する。そして、コントローラー10は、マゼンタのパターンP(M1),P(M2)が印刷された領域である第2領域T2と第5領域T5を塗りつぶし領域に決定する。
【0070】
次に、コントローラー10は、第2領域T2から第7領域T7に印刷されているパターンのうち、マゼンタの次に淡い色のパターンはシアンのパターンであると判断する。そして、コントローラー10は、シアンのパターンP(C1),P(C2)が印刷された領域である第3領域T3と第6領域T6を塗りつぶし領域に決定する。
【0071】
そして、コントローラー10は、図7Aに示すように、決定した塗りつぶし領域T2,T3,T5,T6に白インクを吐出させ、先に白インクで塗りつぶした領域から順にパターンを印刷させる。その結果、図7Bに示すように、第2領域T2にイエローのパターンP(Y3)と付加情報マークm(Y3)が印刷され、第3領域T3にマゼンタのパターンP(M3)と付加情報マークm(M3)が印刷され、第5領域T5にシアンのパターンP(C3)と付加情報マークm(C3)が印刷され、第6領域T6にブラックのパターンP(K3)と付加情報マークm(K3)が印刷される。
【0072】
なお、重ねて印刷されているパターンの数が最も少ない領域の数よりも、塗りつぶし領域に決定する領域の数の方が多い場合、コントローラー10は、重ねて印刷されているパターンの数が次に少ない領域の中のより淡い色のパターンが印刷されている領域を塗りつぶし領域に決定する。
【0073】
このように、コントローラー10は、媒体に既に印刷されているパターンの中から、重ねて印刷されたパターンの数がより少ないパターンを選択し(領域を選択し)、選択したパターン(選択した領域)の中のより淡い色のパターンの上に優先的に消去インクを塗布させ、その消去インクの上にパターンを印刷させる。即ち、重ねて印刷されるパターンの数が少なく、且つ、淡い色のパターンが印刷されている領域を、塗りつぶし領域に決定する。
【0074】
重ねて印刷されるパターンの数が増えるほど、白インクが下層パターンの影響を受け易くなる。よって、重ねて印刷されたパターンの数が少ない領域を塗りつぶし領域に決定することで、下層パターンの影響をあまり受けていない白インクの上に上層パターンを印刷することができ、上層パターンの視認性を良くすることができる。その結果、上層パターンの読取結果に基づいて、不良ノズルを正確に検出することができる。
【0075】
また、重ねて印刷されるパターンの数が増えるほど、そのパターンが印刷されている媒体領域に吐出されるインク量が多くなる。そのため、重ねて印刷されているパターンの数が多い領域を塗りつぶし領域に決定してしまうと、その領域に吐出されるインク量が更に増え、上層パターンが滲み易くなる。よって、重ねて印刷されたパターンの数が少ない領域を塗りつぶし領域に決定することで、媒体の吸収能力を超えてインクが吐出されてしまうことを防止でき、上層パターンの滲みを防止しすることができる。
【0076】
また、パターンの色だけを考慮して塗りつぶし領域を決定すると、淡い色のパターンが重ねて印刷された領域ばかりが塗りつぶし領域に決定されてしまう。即ち、媒体上の偏った領域ばかりにパターンが重ねて印刷されてしまう。そうすると、媒体上の他の領域はインク吐出可能な状態であるにもかかわらず、淡い色のパターンが重ねて印刷された領域に吐出されたインク量が、媒体上の単位領域に吐出可能な最大インク量に達し、その媒体Sを使用することが出来なくなってしまう。つまり、重ねて印刷されるパターンの数が少ない領域を塗りつぶし領域に決定することで、媒体Sの全域を平均的に使用することができる。
【0077】
===第2実施形態===
図8A及び図8Bは、不良ノズルが検出された色のパターンを印刷する様子を説明する図である。ここまで、何色のヘッド31にて不良ノズルが検出されたかに関係なく、不良ノズルが検出された場合には全ての色(YMCK)のパターンを印刷する例を示しているが、これに限らない。第2実施形態では、不良ノズルが検出されたヘッド31から吐出されるインクの色のパターンだけを印刷する。
【0078】
つまり、インクが吐出されるべき時に吐出不良が発生する不良ノズルを検出するためのノズルチェックパターンを印刷する場合、コントローラー10は、複数色の印刷インク(YMCK)によって色ごとに印刷させたパターンに基づいて不良ノズルを検出した場合に、不良ノズルに対するクリーニング動作(回復処理に相当)を実行させた後、その不良ノズルから吐出される印刷インクの色のパターンを媒体に印刷させる。
【0079】
そうすることで、クリーニング動作を繰り返すに従って、不良ノズル数が減り、媒体に印刷するパターン数を減らすことができる。本実施形態では、白インクを介してパターンを重ねて印刷するので、ノズルチェックパターンを印刷する回数が増えるほど重ねて印刷されるパターン数が増える。そのため、不良ノズルから吐出されるインクの色のパターンだけを印刷することで、印刷するパターン数を減らすことができ、インク吸収性媒体の吸収能力を超えてインクが吐出されてしまうことを防止することができる。その結果、上層パターンの滲みを防止し、上層パターンの視認性を良くすることができる。また、インク消費量(特に高価な白インクの消費量)を削減することができる。また、不良ノズル検査の検査時間を短縮することができる。
【0080】
例えば、1回目と2回目のノズルチェックパターンの読取結果(図5・図6B)から、全ての色の不良ノズルが検出されたとする。そして、3回目のノズルチェックパターンの読取結果(図7B)から、マゼンタの不良ノズルだけが検出されたとする。この場合、コントローラー10は、4回目のノズルチェックパターンとして、マゼンタのパターンだけを印刷する。
【0081】
そのために、コントローラー10は、3回目のノズルチェックパターンが印刷された媒体S(図7B)において、重ねて印刷されたパターンの数が少ない領域のうち、より淡い色のパターンが印刷されている1つの領域を塗りつぶし領域に決定する。なお、図7Bでは、重ねて印刷されたパターンの数が少ない領域である第4領域T4と第7領域T7には共にブラックのパターンが印刷されている。この場合、先にブラックのパターンが印刷された領域である第4領域T4を塗りつぶし領域に決定するとよい。そうすることで、より乾燥しているパターンの上に白インクを吐出することができる。
【0082】
その結果、図8Aに示すように、第4領域T4に印刷されていたパターンが白インクで塗りつぶされ、図8Bに示すように、白インクで塗りつぶされた第4領域T4にマゼンタのパターンP(M4)と付加情報マークm(M4)が印刷される。
【0083】
===第3実施形態===
第3実施形態では、重ねて印刷するパターン数が異なる場合、パターンを白インクで塗りつぶす時の白インクのDuty制限値(媒体上の単位領域に吐出可能な最大インク量)を異ならせる。
【0084】
図9は、重ねて印刷するパターン数が増えるに従って白インクのDuty制限値を高くする場合を説明する図である。例えば、媒体に直接印刷されたパターンを塗りつぶす時の白インクのDuty制限値を50%とし、2個重ねて印刷されたパターンを塗りつぶす時の白インクのDuty制限値を62.5%とし、3個重ねて印刷されたパターンを塗りつぶす時の白インクのDuty制限値を75%とする。
【0085】
つまり、重ねて印刷されたパターンの数が第1の数であるパターンの上に消去インク(白インク)を塗布する場合に媒体上の単位領域に対して吐出可能な最大の消去インク量よりも、重ねて印刷されたパターンの数が第1の数よりも多い数であるパターンの上に消去インクを塗布する場合に媒体上の単位領域に対して吐出可能な最大の消去インク量の方を、多くする。
【0086】
重ねて印刷されるパターンの数が増えるほど、下層パターンが白インクに与える影響が大きくなる。よって、重ねて印刷されるパターンの数が増えるほど、白インクのDuty制限値を高め、パターンを塗りつぶす白インク量を増やすことで、下層パターンが白インクに与える影響を抑え、上層パターンの視認性を良くすることができる。
【0087】
図10は、重ねて印刷するパターン数が増えるに従って白インクのDuty制限値を低くする場合を説明する図である。例えば、媒体に直接印刷されたパターンを塗りつぶす時の白インクのDuty制限値を75%とし、2個重ねて印刷されたパターンを塗りつぶす時の白インクのDuty制限値を62.5%とし、3個重ねて印刷されたパターンを塗りつぶす時の白インクのDuty制限値を50%とする。
【0088】
つまり、重ねて印刷されたパターンの数が第1の数であるパターンの上に消去インクを塗布する場合に媒体上の単位領域に対して吐出可能な最大の消去インク量よりも、重ねて印刷されたパターンの数が第1の数よりも多い数であるパターンの上に消去インクを塗布する場合に媒体上の単位領域に対して吐出可能な最大の消去インク量の方を、少なくする。
【0089】
重ねて印刷されるパターンの数が増えるほど、媒体上の単位領域に吐出されるインク量が増え、画像が滲み易くなる。よって、重ねて印刷されるパターンの数が増えるほど、白インクのDuty制限値を低くして、パターンを塗りつぶす白インク量を減らすことで、画像を滲み難くすることができ、上層パターンの視認性を良くすることができる。
【0090】
===変形例===
図11Aは、前述の実施形態とは異なるプリンター60の概略斜視図であり、図11Bは、ヘッド62の下面に形成されるノズルの配列を示す図である。このプリンター60では、ヘッド62がキャリッジ61と共に移動方向に移動しながら画像を印刷する動作と、媒体Sが移動方向と交差する搬送方向に搬送される動作とが、交互に繰り返される。ヘッド62の下面には、白インクを吐出するホワイトノズル列Wと、イエローインクを吐出するイエローノズル列Yと、マゼンタインクを吐出するマゼンタノズル列Mと、シアンインクを吐出するシアンノズル列Cと、ブラックインクを吐出するブラックノズル列Kとが、形成されている。各ノズル列では、180個のノズルが搬送方向に所定の間隔(例えば180dpi)で並んでいる。
【0091】
図12Aから図12Cは、図11に示すプリンター60が印刷するノズルチェックパターンを説明する図である。プリンター60は、画像を印刷するために使用するノズル列(YMCK)ごとに、パターンPと付加情報マークMを印刷する。ノズル列に属する各ノズル(#1〜#180)によって印刷される移動方向に沿ったドット列が搬送方向に並ぶことにより、各パターンPが構成される。図12Aに示すように、ノズルチェックパターンの1回の印刷で、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのパターンが移動方向に並んで印刷される。
【0092】
ノズルチェックパターンの4回の印刷で、媒体Sには新たなノズルチェックパターンを印刷する領域が無くなる。そうすると、コントローラー10は、既に印刷されているパターンの中のより淡い色のパターンであるイエローのパターンY(1)〜Y(4)が印刷されている領域を塗りつぶし領域taに決定する。その結果、図12Bに示すように、イエローのパターンY(1)〜Y(4)が白インクで塗りつぶされ、その後、図12Cに示すように、4色のパターン(Y(5),M(5),C(5),K(5))が搬送方向に沿って印刷される。図11に示すプリンター60においても、より淡い色のパターンを白インクで塗りつぶすことで、下層パターンが白インクに与える影響を小さくすることができ、上層パターンの視認性を良くすることができる。
【0093】
また、図2や図11に示すプリンターに限らず、例えば、印刷領域に搬送された連続用紙に対して、用紙が連続する方向にヘッドを移動しながら画像を印刷する動作と、ヘッドを用紙の幅方向に移動する動作と、を繰り返して2次元の画像を印刷し、その後、未だ画像が印刷されていない連続用紙の部分を印刷領域に搬送するプリンターであってもよい。
【0094】
前述の実施形態では、重ねて印刷されたパターンの数がより少ないパターンを選択し、選択したパターンの中のより淡い色のパターンを白インクで塗りつぶすとしているが、これに限らない。例えば、重ねて印刷されたパターンの数は考慮せずに、より淡い色のパターンを白インクで塗りつぶすようにしてもよい。この場合、パターンが偏って重ねて印刷されないように、淡い色のパターンの上には濃い色のパターンを重ねて印刷するようにするとよい。
【0095】
前述の実施形態では、パターンとして、不良ノズルを検出するためのノズルチェックパターンを例に挙げているが、これに限らない。例えば、ノズルの特性差による濃度むらを抑制する補正値を算出するためのパターンでもよい。また、図11に示すプリンターであれば、ヘッドが移動方向の一方側に移動する際に吐出するインクの着弾位置とヘッドが移動方向の他方側に移動する際に吐出するインクの着弾位置がずれる場合がある。このずれを解消する補正値を算出するためのパターンでもよい。
【0096】
また、ある不良ノズル検査で不良ノズルが検出されなくなった後、その不良ノズル検査で使用した媒体を、次の不良ノズル検査でも使用してもよい。また、媒体の表面だけでなく裏面にもパターンを印刷するようにしてもよい。そうすることで、媒体の消費量をより削減することができる。また、前述の実施形態では、不良ノズルが検出されなくなるまで、ノズルチェックパターンの印刷とクリーニング動作を繰り返しているが、これに限らず、例えば、ノズルチェックパターンの印刷とクリーニング動作を所定回数だけ行うようにしてもよい。
【0097】
また、白インク(消去インク)を吐出するノズルに不良ノズルが発生しているか否かを確認するために、白インクのパターンを印刷してもよい。媒体が白色の場合には、印刷インク(YMCK)により印刷した背景画像上に白色のパターンを印刷するとよい。また、白インクを吐出するノズルに対する不良ノズル検査を行わない場合には、白インクのドット列を複数のノズルで印刷するようにしてもよい。
【0098】
===その他の実施の形態===
本実施形態は、主として印刷装置について記載されているが、印刷方法等の開示も含まれる。また、本実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。特に、以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0099】
<制御部について>
前述の実施形態では、プリンター1内のコントローラー10が、より淡い色のパターンを消去インクで塗りつぶさせ、その上にパターンを印刷させる制御(例えば、各ヘッド31に印刷データを送信する処理)を実施しているため、コントローラー10が制御部に相当し、プリンター1単体が印刷装置に相当する。
【0100】
ただし、これに限らず、プリンター1に接続されたコンピューター50にインストールされたプリンタードライバー(プログラム)が、上記の制御を実施してもよい。この場合、プリンタードライバーをインストールしたコンピューター50とプリンター1のコントローラー10が制御部に相当し、プリンター1とコンピューター50が接続された印刷システムが印刷装置に相当する。
【0101】
つまり、プリンタードライバーが、複数色の第1インクによって色ごとのパターンを媒体に印刷する機能と、前記パターンが既に印刷されている前記媒体であり新たに前記パターンを印刷する領域の無い前記媒体に前記パターンを印刷する場合に、前記媒体に既に印刷されている前記パターンの中のより淡い色の前記パターンの上に優先的に前記第2インクを塗布し、当該第2インクの上に前記パターンを印刷する機能とを、印刷装置に実現させるためのプログラムであってもよい。
【0102】
<白色について>
本明細書における「白色」とは、可視光線のすべての波長を100%反射する物体の表面色である厳密な意味での白色に限らず、所謂「白っぽい色」のように社会通念上、白色と呼ばれる色を含むものとする。「白色」とは、例えば、(1)x-rite社製の測色機eye-oneProを用いて、測色モード:スポット測色、光源:D50、バッキング:Black、印刷媒体:透明フィルムで測色した場合に、L色空間での標記がa平面上で半径20の円周及びその内側にあり、且つ、L値が70以上で表される色相範囲内の色か、(2)ミノルタ製測色計CM2022を用いて測定モードD502°視野、SCFモード、白地バックで測色した場合に、L色空間での標記がa平面上で半径20の円周及びその内側にあり、且つ、L値が70以上で表される色相範囲内の色か、(3)特開2004−306591号公報に記載されているように画像の背景として用いられるインクの色か、をいい、純粋な白に限られない。
【符号の説明】
【0103】
1 プリンター、10 コントローラー、11 インターフェース部、
12 CPU、13 メモリー、14 ユニット制御回路、
20 搬送ユニット、21A 搬送ローラー、21B 搬送ローラー、
22 、搬送ベルト、30 ヘッドユニット、31 ヘッド、
40 検出器群、41 センサー、50 コンピューター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体にパターンを印刷する複数色の第1インクをそれぞれ吐出する複数の第1ノズルと、
前記第1インクとは異なる色の第2インクを吐出する第2ノズルと、
前記パターンが既に印刷されている前記媒体であり、新たに前記パターンを印刷する領域の無い前記媒体に、前記パターンを印刷させる場合に、前記媒体に既に印刷されている前記パターンの中のより淡い色の前記パターンの上に優先的に前記第2インクを塗布させ、当該第2インクの上に前記パターンを印刷させる制御部と、
を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置であって、
前記パターンの上に前記第2インクを塗布する場合に前記媒体上の単位領域に対して吐出可能な最大の前記第2インク量が、画像を印刷する場合に前記媒体上の前記単位領域に対して吐出可能な1色あたりの最大の前記第1インク量よりも、少ない、
印刷装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の印刷装置であって、
前記制御部は、
前記媒体に既に印刷されている前記パターンの中から、重ねて印刷された前記パターンの数がより少ない前記パターンを選択し、
選択した前記パターンの中のより淡い色の前記パターンの上に優先的に前記第2インクを塗布させ、当該第2インクの上に前記パターンを印刷させる
印刷装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の印刷装置であって、
重ねて印刷された前記パターンの数が第1の数である前記パターンの上に前記第2インクを塗布する場合に前記媒体上の単位領域に対して吐出可能な最大の前記第2インク量よりも、重ねて印刷された前記パターンの数が前記第1の数よりも多い数である前記パターンの上に前記第2インクを塗布する場合に前記媒体上の前記単位領域に対して吐出可能な最大の前記第2インク量の方が、多い、
印刷装置。
【請求項5】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の印刷装置であって、
重ねて印刷された前記パターンの数が第1の数である前記パターンの上に前記第2インクを塗布する場合に前記媒体上の単位領域に対して吐出可能な最大の前記第2インク量よりも、重ねて印刷された前記パターンの数が前記第1の数よりも多い数である前記パターンの上に前記第2インクを塗布する場合に前記媒体上の前記単位領域に対して吐出可能な最大の前記第2インク量の方が、少ない、
印刷装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の印刷装置であって、
前記パターンは、インクが吐出されるべき時に吐出不良が発生する不良ノズルを検出するためのパターンであり、
前記制御部は、前記複数色の前記第1インクによって色ごとに印刷させた前記パターンに基づいて前記不良ノズルを検出した場合に、前記不良ノズルに対する回復処理を実行させた後、前記不良ノズルから吐出される前記第1インクの色の前記パターンを前記媒体に印刷させる、
印刷装置。
【請求項7】
複数色の第1インクによって色ごとのパターンを媒体に印刷することと、
前記パターンが既に印刷されている前記媒体であり、新たに前記パターンを印刷する領域の無い前記媒体に、前記パターンを印刷する場合に、前記媒体に既に印刷されている前記パターンの中のより淡い色の前記パターンの上に前記第1インクとは異なる色の第2インクを塗布し、当該第2インクの上に前記パターンを印刷することと、
を有することを特徴とする印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−139964(P2012−139964A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−731(P2011−731)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】