説明

印刷装置、塗布装置およびノズル

【課題】ノズルから吐出する処理液の切り替えに要する時間を短縮し得る技術を提供する。
【解決手段】スリットノズル11の内部空間11Sに、4枚の仕切板431を有する仕切部材43を装着する。この4枚の仕切板431によって、内部空間11Sに処理液を貯留する貯留空間413a、413b、413cが形成される。内部空間11Sのうち、仕切部材43のY方向外側両サイドの空間423a、423bには、選択的にエア供給部421からエアが供給される。空間423a、423bのどちらかにエアが供給されると、空間内の圧力が上昇し、仕切部材43がY方向に沿って進退移動する。これにより、処理液を貯留する貯留空間413a、413b、413cのいずれかと、吐出口111につながる接続空間111Hとが選択的に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ノズルから複数の処理液を選択的に吐出する技術に関し、特に、ノズルから吐出する処理液を切り替える技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、開発が進められている有機ELの発光材料としては、ポリマー状の分子を用いた高分子材料と、それ以外の分子を用いた低分子材料とがある。いずれの発光材料も下地膜上の制約等からフォトリソグラフィー法を用いたパターン形成が困難である。このため、低分子材料については、金属マスクにより必要な領域に低分子材料を真空蒸着させる方法がパターンの形成に用いられるが、蒸着温度によっては金属マスクが膨張してしまい、特に基板が大サイズ化するほど、成膜ムラが生じる傾向がある。このため、高分子材料を用いた各種印刷法によるパターン形成が試みられている。
【0003】
このような各種印刷法のうち、凸版による印刷法では、パターンが形成された印刷版の凸部にインクとして発光材料が塗布される。そして、印刷版が被転写体(通常は透明なガラス基板)表面に所定の印圧で押し当てられることにより、当該パターンは被転写体表面に転写されて、パターンが形成される(例えば、特許文献1)。
【0004】
ここで、多色印刷をする場合、インクを供給するノズルを複数設ける必要があるが、ノズルを複数並べると装置自体が大きくなり、コストも上昇する。さらに、ノズルと塗布対象物(例えば、インキングローラ)との位置関係を、各ノズルについて調整する必要がある。また、膜厚を均一にするためには、各ノズルからの吐出の均一性を確保する必要があり、その調整は極めて煩雑となっている。そこで、1台のノズルに対して、複数種のインクを供給することによって、多色印刷を行う方法も行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−6706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、1台のノズルから吐出するインク(処理液)を別のインクに切り替える場合、ノズル内部の処理液を吐出すべき処理液に置換する作業が必要となる。特に、ノズル内部に一時的に処理液を貯留するバッファ空間が形成されている場合、吐出する処理液の切り替え作業に多くの時間が必要となる。
【0007】
本願発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、ノズルから吐出する処理液の切り替えに要する時間を短縮し得る技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、第1の態様は、パターン画像を基板に印刷する印刷装置であって、画像パターンが形成される印刷版を保持する印刷版保持体と、前記印刷版に向けて、吐出口から複数の処理液を選択的に吐出するノズルと、前記印刷版を押圧することによって、前記印刷版に形成されている前記画像パターンを基板に転写する転写機構と、前記ノズルの内部に形成されている内部空間を、複数の前記処理液のそれぞれを個別に貯留する複数の貯留空間に区切る仕切部材と、前記仕切部材を移動させることによって、複数の前記貯留空間のいずれかと前記吐出口とを選択的に接続する移動機構とを含む。
【0009】
また、第2の態様は、第1の態様に係る印刷装置において、前記ノズルの前記吐出口は、第1方向に沿って線状に延びているとともに、前記仕切部材によって形成される複数の前記貯留空間が、前記第1方向に延びている。
【0010】
また、第3の態様は、第2の態様に係る印刷装置において、前記移動機構は、前記仕切部材を前記第1方向に直交する第2方向に移動させる。
【0011】
また、第4の態様は、第1から第3までのいずれか1態様に係る印刷装置において、前記移動機構は、前記仕切部材を規定位置に向けて付勢する付勢部材、を含む。
【0012】
また、第5の態様は、第1から第4までのいずれか1態様に係る印刷装置において、前記仕切部材と前記内部空間を形成する内壁との間に介在し、前記内壁に対し摺動するように前記仕切部材に取り付けられているシール部材をさらに含む。
【0013】
また、第6の態様は、基板に処理液を塗布する塗布装置であって、基板を保持する基板保持体と、前記基板に向けて、吐出口から複数の処理液を選択的に吐出するノズルと、前記ノズルの内部に形成された内部空間を、複数の前記処理液を個別に貯留する複数の貯留空間に区切る仕切部材と、前記仕切部材を移動させることによって、複数の前記貯留空間のいずれかと前記吐出口とを選択的に接続する移動機構とを含む。
【0014】
また、第7の態様は、複数の処理液を選択的に吐出する吐出口を有するノズルであって、前記ノズルの内部に形成されている内部空間を、複数の前記処理液を個別に貯留する複数の貯留空間に区切る仕切部材、を備え、前記仕切部材が移動することによって、複数の前記貯留空間のいずれかと前記吐出口とが選択的に接続される。
【発明の効果】
【0015】
第1の態様によると、吐出口に接続される貯留空間がノズル内部に形成されていることにより、貯留空間と吐出口との間の距離を短くすることができる。これにより、貯留空間と吐出口とをつなぐ接続空間を小さくすることができ、接続空間内を吐出すべき処理液に置換する作業を短時間で行うことができる。また、置換に必要な処理液の量を少なくすることができるという効果がある。
【0016】
また、第2の態様によると、吐出口が線状に延びていることで、一度に広い範囲を塗布することができる。また、仕切部材が第1方向に延びていることによって、貯留空間を第1方向に延ばすことができる。これにより、貯留空間内で処理液を第1方向に広げることができるため、処理液の吐出ムラの発生が低減されるという効果がある。
【0017】
また、第4の態様によると、移動機構により移動した仕切部材を、付勢部材によって規定位置に向けて容易に戻すことができるという効果がある。
【0018】
また、第5の態様によると、シール部材を設けることによって、仕切部材を移動させた際に、貯留空間内の処理液が外部に漏れ出すことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第1実施形態に係る印刷装置の全体を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る印刷装置の概略側面図である。
【図3】制御部のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図4】スリットノズルの概略正面図である。
【図5】スリットノズルに内蔵される仕切部材を示した概略斜視図である。
【図6】図4に示したVI−VI線におけるスリットノズルの概略断面図である。
【図7】図4に示したVII−VII線におけるスリットノズルの概略断面図である。
【図8】(A)は、処理液供給ローラに塗布された処理液が印刷版に転写される状態を示す概略側面図であり、(B)は、スリットノズルから吐出する処理液を切り替える状態を示す概略側面図である。
【図9】第2実施形態に係るスリットノズルの概略断面図である。
【図10】第2実施形態に係る仕切部材を示す斜視図である。
【図11】第3実施形態に係る塗布装置を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0021】
{1. 第1実施形態}
図1は、第1実施形態に係る印刷装置10の全体を示す斜視図である。図1および以降の各図においては、Z方向に垂直でかつスリットノズル11の延びる方向をX方向、Z方向およびX方向の双方に垂直な方向をY方向として説明する。ただし、これらの方向は、本願発明の一態様である印刷装置10の構成を説明するために便宜的に定義されたものであり、本願発明の構成を限定する趣旨のものではない。
【0022】
印刷装置10は、スリットノズル11、処理液供給ローラ12、版胴14、基台20およびステージ22を備えている。また、印刷装置10は、装置の各動作機構を制御して印刷処理を実行させるとともに、所定のプログラム80に従って、印刷版17に関するデータを設定する制御部90(図3参照)をさらに備えている。
【0023】
図1に示した印刷装置10においては、版胴14の外周面に装着された印刷版17によって有機ELの発光材料(有機材料)が被転写体である基板(ガラス基板)Wに転写されて有機ELディスプレイの各表示素子(画素)に対応したパターン形成が行われる。
【0024】
図1に示したように、基台20上には、リニアモータ31と、リニアモータ31の両側に配置される一対の直動ガイド32、32が設けられている。リニアモータ31および直動ガイド32は、その長手方向が版胴14の回転軸と垂直な方向(Y方向)に沿うように設けられている。
【0025】
リニアモータ31および直動ガイド32にはアライメントテーブル51が連結されている。アライメントテーブル51上には、ステージ22が取り付けられている。このため、アライメントテーブル51は、リニアモータ31の駆動によりステージ22とともに版胴14の回転軸と垂直な方向(Y方向)に沿って直線移動する。
【0026】
アライメントテーブル51にはステージ22の位置調整を行う位置調整機構(図示省略)が内蔵されている。位置調整機構が、ステージ22をアライメントテーブル51に対してX方向およびY方向にスライド移動させるとともに、XY平面内で回転移動させる。
【0027】
基台20の左右側面には支持側板24が固設されている。支持側板24には一対のガイド部材25、25が鉛直方向(Z方向)に沿って設けられている。昇降テーブル21は、これらの計4本のガイド部材25に案内されて、昇降モータ26の駆動によりZ方向に昇降する。この昇降テーブル21には、スリットノズル11、処理液供給ローラ12、版胴14が搭載されている。これらの要素は、昇降テーブル21とともに一体的に昇降する。
【0028】
版胴14は、略円筒形状を有するローラであり、X方向に沿って延設された回転軸を中心に回転可能に配置されている。版胴14はモータ15によって回転軸を中心に回転される。版胴14は、回転軸を中心に、時計回りおよび反時計回りのいずれの方向にも回転可能に構成されている。
【0029】
図2は、第1実施形態に係る印刷装置10の概略側面図である。図2では、スリットノズル11、処理液供給ローラ12、版胴14によって、基板Wに所定の画像パターンが印刷される様子を図示している。
【0030】
版胴14の外周面には、ポリエステル系樹脂製ゴム等の樹脂等で形成された凸板の印刷版17が装着される。印刷版17のパターン領域は複数の直線状のパターン(ストライプパターン)で形成されている。このパターンは、設計上は、有機ELディスプレイのマトリクス状の画素配列の各列に対応して多数の平行な帯からなるストライプパターンである。印刷版17は、版胴14の回転軸心に沿って、印刷版17の両端が図示しない固定機構によって版胴14の外周面に固定される。
【0031】
版胴14に近接して、略円筒形状の処理液供給ローラ12が配置されている。処理液供給ローラ12の上方にはスリットノズル11が設けられている。スリットノズル11は、処理液供給ローラ12の回転軸方向(X方向)に延びるスリット状の吐出口111を有しており、処理液供給ローラ12の表面に処理液(塗布液)として有機ELの高分子材料を吐出する。スリットノズル11は、処理液供給ローラ12に処理液を吐出する際、処理液供給ローラ12の表面に対してわずかな距離だけ隔離される。また、処理液供給ローラ12の外周面が、版胴14上に配置された印刷版17と当接するように、処理液供給ローラ12および版胴14が配置される。
【0032】
図2に示したように、印刷装置10においては、スリットノズル11から、回転する処理液供給ローラ12の外周面に処理液が供給され、処理液供給ローラ12の外周面に処理液の薄膜が形成される。そして、処理液供給ローラ12および版胴14の双方が回転することによって、処理液供給ローラ12から版胴14に装着された印刷版17の凸状のパターン領域に処理液が塗布される。さらに、ステージ22に載置された基板WをY方向に沿って一定速度で直線移動させつつ、版胴14を回転させることにより、印刷版17が基板W表面にY方向端部から当接する。これにより、パターン画像が印刷版17から基板Wの表面全体に転写(印刷)される。本実施形態では、処理液供給ローラ12、版胴14、印刷版17は、基板Wにパターン画像を転写する転写機構を構成している。
【0033】
なお、本実施形態では、基板WをY方向に移動させているが、基板Wを定位置に固定し、版胴14を回転させながらY方向に移動させるように印刷装置10を構成してもよい。また、基板Wと版胴14の双方を移動させるように印刷装置10を構成してもよい。基板Wと版胴14とを相対的に移動させることで、印刷版17から基板Wにパターン画像を転写することができる。
【0034】
図3は、制御部90のハードウェア構成を示すブロック図である。制御部90は、各種演算処理を行うCPU91、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるRОM92、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAM93および制御用ソフトウェア(プログラム80)またはデータを記憶する補助記憶部94を備えており、これらの構成はバスライン99によって接続されている。また、制御部90は、バスライン99に接続された入力手段として、キーボード95およびマウス96を備えている。
【0035】
制御部90のバスライン99には、版胴14を回転させるモータ15、昇降テーブル21を昇降させる昇降モータ26、ステージ22を直動移動させるリニアモータ31、スリットノズル11内に設けられた後述の仕切部材43を移動させるためのエア供給部421、および、ステージ22の位置調整を行う位置調整機構(図示省略)等が接続されている。
【0036】
また、図示を省略するが、印刷装置10には、上記の構成以外にも、版胴14および処理液供給ローラ12をそれぞれ洗浄する洗浄機構、および、スリットノズル11と処理液供給ローラ12との距離、処理液供給ローラ12と印刷版17との距離、印刷版17と基板Wとの距離をそれぞれ調整する機構等が適宜設けられる。
【0037】
図4は、スリットノズル11の概略正面図である。また、図5は、スリットノズル11に内蔵される仕切部材43を示した概略斜視図である。また、図6は、図4に示したVI−VI線におけるスリットノズル11の概略断面図である。さらに図7は、図4に示したVII−VII線におけるスリットノズル11の概略断面図である。
【0038】
スリットノズル11は、底部にX方向に沿って線状に延びる吐出口111を有している。スリットノズル11には、処理液供給管411a、411b、411cと、複数のエア供給管422と、仕切部材43とが設けられている。
【0039】
処理液供給管411a、411b、411cは、図示を省略する処理液供給源から供給される処理液をスリットノズル11の内部に供給する。処理液供給管411a、411b、411cは、相互に異なる処理液を供給するように構成されていてもよいし、同種の処理液を供給するように構成されていてもよい。印刷装置10において多色印刷が行われる場合には、処理液供給管411a、411b、411cによって、互いに相異する処理液がスリットノズル11内部に供給される。
【0040】
部材11a、11aに設けられた凹部空間により、スリットノズル11の内部にX方向に沿って延びる内部空間11Sが形成される。また、2つの部材11a,11aの間には、シム110が挟まれている。シム110は、部材11a、11aと組み合わされた状態で、吐出口111に近い側(Z方向下側)に吐出口111のX方向の幅の長さに対応する切欠きを有している。さらにこの切欠きは、部材11aの凹部空間の形状に対応した形状を有しており、該凹部空間を塞がないように形成されている。すなわち、シム110は、部材11a、11aと組み合わされた状態では、XZ平面視において、下側に切り欠きを有する略U字形状(上下逆さになったU字形状)の形態を有する。このようなシム110を2つの部材11a、11aの間に挟んでスリットノズル11を組み立てることによって、吐出口111と、吐出口111および内部空間11Sを接続する接続空間111Hとが形成されている。
【0041】
スリットノズル11は、2つの部材11a、11aを組み合わせて構成されているが、これらを1部材で構成するようにしてもよい。また、より多くの部材を組み合わせてスリットノズル11を構成するようにしてもよい。
【0042】
仕切部材43は、スリットノズル11の内部空間11Sに装着される。仕切部材43は、YZ平面に関して内部空間11Sに対応した形状を有する複数(ここでは4枚)の仕切板431で構成されている。処理液供給管411a、411b、411cは、4枚の仕切板431に連結されており、4枚の仕切板431をY方向に関し所定間隔をあけるようにして一体的に固定する。
【0043】
本実施形態では、処理液供給管411a、411b、411cに連結することで、複数の仕切板431を一体的に固定しているが、ボルト等の固定部材によって、一体的に固定するようにしてもよい。
【0044】
内部空間11Sは、複数の仕切板431のうち、隣り合う2枚の仕切板431によって形成される空間413a、413b、413cと、仕切部材43の外側両サイドに形成される空間423a、423bとに区切られている(図6、図7参照)。
【0045】
3つの空間413a、413b、413cは、それぞれ、処理液供給管411a、411b、411cと、供給孔412a、412b、412cを介して接続されている。供給孔412a、412b、412cは、処理液供給管411a、411b、411cの途中に形成される穴であって、空間413a、413b、413cのそれぞれに対応する位置に形成されている。このため、空間413a、413b、413cには、それぞれ個別に処理液が供給される。3つの空間413a、413b、413cは、処理液を一時的に貯留する貯留空間(バッファ空間)として機能する。
【0046】
内部空間11Sに形成される2つの空間423a、423bには、エア供給管422を介してエア供給部421がそれぞれ接続されている。エア供給部421は、例えばポンプ機構を備えており、制御部9から送られる制御信号に基づいて、清浄なエアを空間423aまたは空間423bのいずれかに供給する。空間423a、423bのどちらか一方にエアが供給されると、エアを供給された空間内部の圧力が上昇する。なお、空間423a、423bのうち、エアが供給されなかった方の空間内のエアは適宜外部に排気される。これにより、仕切部材43が(+Y)方向または(−Y)方向に進退移動する。すなわち、仕切部材43は、X方向(第1方向)に直交するY方向(第2方向)に移動する。また、エア供給部421から供給するエア量を調整することで、仕切部材43の位置が制御される。このようにエア供給部421は、仕切部材43を移動させる移動機構として構成されている。
【0047】
仕切部材43を構成する4枚の仕切板431は、エア供給部421が供給するエアの圧力によって、Y方向に進退移動する。つまり、仕切板431によって区切られた空間413a、413b、413cが、Y方向に進退移動する。仕切部材43の位置を調整することで、各空間413a、413b、413cと、吐出口111につながる接続空間111Hとを選択的に接続することができる。したがって、仕切部材43を移動させることで、複数の処理液の中から吐出すべき処理液を択一的に選択して、吐出口111から吐出させることができる。
【0048】
本実施形態では、空間413a、413b、413cがX方向に延びている。このため、X方向に延びる吐出口111につながる接続空間111Hに対し、X方向において均一に処理液を供給することができる。これにより、スリットノズル11は、吐出口111から均一に処理液を吐出することができる。
【0049】
仕切板431のそれぞれは、YZ断面視において、内部空間11Sよりも若干小さく形成されている。仕切板431の外周面にはシール部材44が取り付けられている。シール部材44は、仕切板431と内部空間11Sを形成する内壁112との間に介在しており、仕切板431と内壁112との間の隙間を埋める。つまり、空間413a、413b、413cのそれぞれは、隣り合う2枚の仕切板431、431と、これらに取り付けられたシール部材44、44および内部空間11Sを形成する内壁112とによって形成されることとなる。
【0050】
シール部材44は、仕切板431の移動に伴い、内壁112に対して摺動する。これにより、仕切部材43を移動させた際に、空間413a、413b、413c内のそれぞれに貯留された処理液が内部空間11S内の他空間に漏れ出すことを抑制できる。
【0051】
図6に示したように、仕切部材43とスリットノズル11内部との間には、複数のコイルバネ45(弾性部材)が取り付けられている。コイルバネ45は、仕切部材43を、スリットノズル11内部のY方向中央に向けて付勢する付勢部材として機能する。したがって、エア供給部421からエア供給を停止すると、仕切部材43が中央に向けて移動する。このようにコイルバネ45を設けることによって、自然に仕切部材43を所定位置に戻すことができる。
【0052】
なお、図6に示した例では、コイルバネ45を処理液供給管411a、411b、411cに取り付けられているが、コイルバネ45を取り付け位置はこれに限定されるものではない。また、コイルバネ45以外の弾性体により、仕切部材43を付勢する付勢部材が構成されていてもよい。例えば、Y方向に伸長するゴム等の弾性体を付勢部材として利用してもよい。例えば、このゴムの両端を仕切部材43とスリットノズル11の内壁112とにそれぞれ取り付け、移動させた仕切部材43を引っ張ることで規定位置に戻るように付勢することができる。
【0053】
例えば本実施形態では、仕切部材43の規定位置が内部空間11SのY方向中央部とされている。このため、空間423a、423bからエアを排気すると、コイルバネ45によって仕切部材43が規定位置に移動する。これにより、接続空間111Hと空間413bとが連通接続される。なお、仕切部材43の規定位置はこのようなもの限定されるものではなく、任意に設定することができる。
【0054】
図8(A)は、処理液供給ローラ12に塗布された処理液が印刷版17に転写される状態を示す概略側面図であり、図8(B)は、スリットノズル11から吐出する処理液を切り替える状態を示す概略側面図である。
【0055】
印刷装置10は、印刷版17から基板Wに画像パターンを転写する際、図8(A)に示したように、処理液供給ローラ12が印刷版17に密着させることによって、印刷版17に処理液を塗布する。
【0056】
これに対し、印刷装置10は、図8(B)に示したように、印刷版17と処理液供給ローラ12とが接触していない状態で、スリットノズル11から吐出する処理液の切り替えを実施する。詳細には、印刷装置10は、エア供給部421を駆動することによって、仕切部材43を移動させ、空間413a、413b、413cのうち吐出すべき処理液を貯留する空間を吐出口111に接続させる。さらに印刷装置10は、吐出すべき処理液をスリットノズル11に供給して、接続空間111H内を、残留する処理液から吐出すべき処理液に置換する。この処理液の切り替え作業中に、処理液供給ローラ12と印刷版17とを非接触状態とすることで、吐出口111から吐出された処理液が、印刷版17に付着することを抑制できる。
【0057】
本実施形態に係るスリットノズル11によると、スリットノズル11の内部に処理液を貯留する貯留空間(空間413a、413b、413c)を設け、それらの空間を切り替えて処理液を吐出することで、処理液の切り替えに際し廃棄される処理液の量を少量で済ませることができ、また、処理液の切り替えに要する時間を短縮することができる。なぜなら、処理液の切り替えに際し、置換すべき処理液が残留するのは、接続空間111Hに限定され、この接続空間111Hは、非常に容量が小さいためである。
【0058】
なお、仕切板431の数は、4枚に限定されるものではなく、適宜増減することができる。また、仕切部材43によって形成される貯留空間に貯留される処理液は、処理液供給ローラ12に塗布する処理液だけに限られるものではない。例えば洗浄液を貯留する貯留空間を設けてもよい。洗浄液を吐出することによって、接続空間111Hや吐出口111の洗浄を効率的に行うことができる。
【0059】
{2. 第2実施形態}
第2実施形態に係るスリットノズル11Aについて説明する。図9は、第2実施形態に係るスリットノズル11Aの概略断面図である。また、図10は、第2実施形態に係る仕切部材43Aを示す斜視図である。なお、本実施形態の説明では、第1実施形態と同様の機能を有する要素については同一符号を付してその説明を省略する。以降の説明においても同様とする。
【0060】
スリットノズル11Aの内部には、X方向に延びる円筒状の内部空間11ASが形成されている。内部空間11ASには、X方向に延びる仕切部材43Aが装着されている。
【0061】
仕切部材43Aは、X方向を軸方向として、該軸方向に垂直な径方向外側へ突出する板状の仕切板431Aを複数(ここでは4枚)備えている。これら複数の仕切板431Aによって、内部空間11ASは、複数(ここでは4つ)の空間413d、413e、413f、413gに区切られている。
【0062】
また、仕切部材43Aの中央には、X方向に沿って延びる処理液供給管411d、411e、411f、411gが設けられている。処理液供給管411d、411e、411f、411gは、それぞれ空間413d、413e、413f、413gに連通させるための供給孔412d、412e、412f、412gが設けられている。このため、処理液供給管411d、411e、411f、411gのそれぞれに処理液を供給することで、空間413d、413e、413f、413gのそれぞれに処理液が貯留される。
【0063】
また、仕切部材43Aは、モータ等で構成される回転駆動部42Aに接続されている。回転駆動部42Aは、仕切部材43Aを、X方向を回転軸にして回転させることによって、複数の仕切板431Aを回転移動させる。これにより、複数の仕切板431Aで区切られた複数の空間413d、413e、413f、413gが回転移動し、これら複数の空間413d、413e、413f、413gのいずれかと、吐出口111に繋がる接続空間111Hとが、選択的に接続される。これにより、複数の処理液のうちから択一的に特定の処理液を吐出口111から吐出させることができる。
【0064】
なお、仕切板431Aの外周端部には、第1実施形態に係る仕切板431と同様に、Oリング等で構成されるシール部材44が取り付けられている。仕切部材43Aを回転駆動した際に、シール部材44が内部空間11ASを形成する内壁112Aに対して摺動することによって、空間413d、413e、413f、413gのそれぞれに貯留された処理液が他空間に漏れ出ることを抑制することができる。
【0065】
本実施形態に係るスリットノズル11Aでは、X方向に延びるとともに、径方向外側に突出する複数の仕切板431を備えた仕切部材43Aが内部空間11ASに装着されることにより、複数の貯留空間(空間413d、413e、413f、413g)が形成される。仕切部材43Aを移動(ここでは、回転移動)させることによって、吐出すべき処理液を貯留する貯留空間と、接続空間111Hとが接続される。したがって貯留空間と吐出口111との間を接続する接続空間内部を新たな処理液に置換する時間を短縮できるため、吐出する処理液の切り替え作業を手早く行うことができる。このようなスリットノズル11Aを印刷装置10に適用することによって、複数の処理液を使ったパターン画像の印刷処理を効率的に実施することができる。
【0066】
{3.第3実施形態}
次に、第3実施形態について説明する。図11は、第3実施形態に係る塗布装置100を示す概略斜視図である。塗布装置100は、スリットノズル11と、基板保持ステージ101(基板保持体)とを備えている。
【0067】
上記第1実施形態に係る印刷装置10では、スリットノズル11は処理液供給ローラ12に処理液を吐出する。これに対して、本実施形態に係る塗布装置100では、吐出口111から処理液を吐出しながら、スリットノズル11を基板保持ステージ101に保持された基板Wの表面上方をY方向に相対移動させる。これにより、基板W表面にスリットノズル11から吐出された処理液が直接塗布され、処理液の薄膜が形成される。
【0068】
このように基板Wに処理液を塗布する塗布装置100において、内部に複数の処理液を貯留する貯留空間が形成されたスリットノズル11を適用することによって、スリットノズル11から吐出する処理液の切り替え作業を素早く行うことができる。したがって、塗布装置100において、複数の処理液を使った基板処理を効率的に実施することができる。
【0069】
{4. 変形例}
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。
【0070】
例えば、第1実施形態に係る印刷装置10により基板Wに印刷される画像パターンは有機ELディスプレイ用のものに限定されない。つまり、印刷装置10は、液晶表示パネルやプラズマ表示パネル、太陽電池パネル等の電子精密機器用基板の画像印刷にも適用可能である。
【0071】
また、第3実施形態に係る塗布装置100において、スリットノズル11の代わりに第2実施形態に係るスリットノズル11Aを利用することも可能である。
【0072】
また、上記実施形態では、線状に延びるスリット状の吐出口111を有するスリットノズル11を例に挙げて説明しているが、吐出口の形状は、このようなものに限定されるものではない。例えば円形(楕円形を含む)や多角形、その他任意の形状の吐出口である場合にも、本願発明は有効である。
【0073】
また、上記各実施形態および各変形例で説明した各構成は、矛盾しない限りにおいて相互に組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0074】
10 印刷装置
11、11A スリットノズル
111 吐出口
111H 接続空間
112、112A 内壁
11S、11AS 内部空間
12 処理液供給ローラ
14 版胴
15 モータ
17 印刷版
22 ステージ
31 リニアモータ
32 直動ガイド
411a〜411g 処理液供給管
412a〜412g 供給孔
413a〜413g 空間
421 エア供給部
422 エア供給管
423a、423b 空間
43、43A 仕切部材
431、431A 仕切板
44 シール部材
45 コイルバネ
9 制御部
100 塗布装置
101 基板保持ステージ
W 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターン画像を基板に印刷する印刷装置であって、
画像パターンが形成される印刷版を保持する印刷版保持体と、
前記印刷版に向けて、吐出口から複数の処理液を選択的に吐出するノズルと、
前記印刷版を押圧することによって、前記印刷版に形成されている前記画像パターンを基板に転写する転写機構と、
前記ノズルの内部に形成されている内部空間を、複数の前記処理液のそれぞれを個別に貯留する複数の貯留空間に区切る仕切部材と、
前記仕切部材を移動させることによって、複数の前記貯留空間のいずれかと前記吐出口とを選択的に接続する移動機構と、
を含む印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷装置において、
前記ノズルの前記吐出口は、第1方向に沿って線状に延びているとともに、
複数の前記貯留空間が、前記第1方向に延びている印刷装置。
【請求項3】
請求項2に記載の印刷装置において、
前記移動機構は、前記仕切部材を前記第1方向に直交する第2方向に移動させる印刷装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の印刷装置において、
前記移動機構は、前記仕切部材を規定位置に向けて付勢する付勢部材、を含む印刷装置。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の印刷装置において、
前記仕切部材と前記内部空間を形成する内壁との間に介在し、前記内壁に対し摺動するように前記仕切部材に取り付けられているシール部材をさらに含む印刷装置。
【請求項6】
基板に処理液を塗布する塗布装置であって、
基板を保持する基板保持体と、
前記基板に向けて、吐出口から複数の処理液を選択的に吐出するノズルと、
前記ノズルの内部に形成された内部空間を、複数の前記処理液を個別に貯留する複数の貯留空間に区切る仕切部材と、
前記仕切部材を移動させることによって、複数の前記貯留空間のいずれかと前記吐出口とを選択的に接続する移動機構と、
を含む塗布装置。
【請求項7】
複数の処理液を選択的に吐出する吐出口を有するノズルであって、
前記ノズルの内部に形成されている内部空間を、複数の前記処理液を個別に貯留する複数の貯留空間に区切る仕切部材、を備え、
前記仕切部材が移動することによって、複数の前記貯留空間のいずれかと前記吐出口とが選択的に接続されるノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−152659(P2012−152659A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11600(P2011−11600)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【Fターム(参考)】