説明

印刷装置および印刷媒体搬送装置

【課題】1つのセンサで搬送ベルトの移動状態と搬送ベルトの基準位置とを検出することが可能な印刷装置および印刷媒体搬送装置を提供する。
【解決手段】磁気記録層8に所定のパターンの磁極の変化からなる記録内容を記録すると共にその一部分に所定のパターンと相違する磁極の変化からなる記録内容を記録し、磁気再生用ヘッド9で再生された磁気記録層8の記録内容のうち、所定のパターンの磁極の変化からなる記録内容から搬送ベルト1の移動状態を検出するためのベルト位置信号を出力し且つ所定のパターンと相違する磁極の変化からなる記録内容から搬送ベルト1の基準位置を検出するためのベルト基準信号を出力することにより、1つの磁気再生用ヘッド9で搬送ベルト1の移動状態と搬送ベルト1の基準位置とを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微小な液体を複数のノズルから噴射して、その微粒子(ドット)を印刷媒体上に形成することにより、所定の文字や画像等を印刷するようにした印刷装置および印刷媒体搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような印刷装置の一つであるインクジェットプリンタは、一般に安価で且つ高品質のカラー印刷物が容易に得られることから、パーソナルコンピュータやデジタルカメラなどの普及に伴い、オフィスのみならず一般ユーザにも広く普及してきている。
このようなインクジェットプリンタは、一般に、インクカートリッジと印字ヘッド(液体噴射ヘッド)とが一体的に備えられたキャリッジなどと称される移動体が印刷媒体上をその搬送方向と交差する方向に往復しながらその印字ヘッドのノズルから液体インクを噴射して印刷媒体上に微小なインクドットを形成することで、所望の印刷物を作成するようになっている。このキャリッジに4色(ブラック、イエロー、マゼンタ、シアン)のインクカートリッジと各色ごとの印字ヘッドを備えることで、モノクロ印刷のみならず、フルカラー印刷も容易に行えるようになっている。
【0003】
また、印刷媒体の幅と同じ寸法の長尺の印字ヘッドを配置してキャリッジを使用しないタイプのインクジェットプリンタでは、印字ヘッドを印刷媒体の幅方向に移動させる必要がなく、いわゆる1パスでの印刷が可能となるため、レーザプリンタと同様な高速な印刷が可能となる。なお、前者方式のインクジェットプリンタを一般に「マルチパス(シリアル)型インクジェットプリンタ」、後者方式のインクジェットプリンタを一般に「ラインヘッド型インクジェットプリンタ」と呼んでいる。
【0004】
ところで、ラインヘッド型インクジェットプリンタでは、搬送ベルトに印刷媒体を載置して搬送する構成がよく用いられている。このように搬送ベルトに印刷媒体を載置して搬送し、その搬送される印刷媒体に印字ヘッドから液体インクを噴射して高画質な印刷を行うためには印刷媒体の位置を正確に検出する必要がある。そのため、一般的には、搬送ベルトにリニアスケールなどの移動量や移動速度といった移動状態検出用マークを設け、そのマークをエンコーダで読み取って搬送ベルトの位置を検出し、その搬送ベルトの位置から印刷媒体の位置を検出する。そのようにするにあたり、一般に搬送ベルトは無端なので、印刷媒体の位置の基準として搬送ベルトの位置の基準を設定する必要がある。そこで、下記特許文献1に挙げるインクジェットプリンタでは、搬送ベルトにタブを設け、そのタブをセンサで検出して搬送ベルトの位置の基準とし、搬送ベルトの継ぎ目を避けて印刷媒体を載置するように制御している。
【特許文献1】特開2006−96429号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に代表される従来技術では、搬送ベルトの移動状態を検出するセンサと搬送ベルトの基準位置を検出するセンサの2つのセンサが必要となるため、構成の複雑化、コストの高騰化の原因となっている。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、1つのセンサで搬送ベルトの移動状態と搬送ベルトの基準位置とを検出することが可能な印刷装置および印刷媒体搬送装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の印刷装置および印刷媒体搬送装置は、搬送ベルトの表面に印刷媒体を載置して搬送し、前記印刷媒体に液体噴射ヘッドから液体を噴射して印刷を行う印刷装置および印刷媒体搬送装置であって、前記搬送ベルトに連続して形成された磁気記録層と、前記搬送ベルトの磁気記録層に対向して配設された磁気再生用ヘッドと、前記磁気再生用ヘッドで再生された磁気記録層の記録内容を検出する制御手段とを備え、前記磁気記録層に所定のパターンの磁極の変化からなる記録内容を記録すると共にその一部分に所定のパターンと相違する磁極の変化からなる記録内容を記録し、前記制御手段は、前記磁気再生用ヘッドで再生された磁気記録層の記録内容のうち、前記所定のパターンの磁極の変化からなる記録内容から搬送ベルトの移動状態を検出し且つ前記所定のパターンと相違する磁極の変化からなる記録内容から搬送ベルトの基準位置を検出することを特徴とするものである。
【0007】
さらに、前記所定のパターンの磁極の変化からなる記録内容が、所定の記録ピッチで磁極を変化させるものである場合、前記所定の記録ピッチと相違する磁極の変化からなる記録内容が、前記所定の記録ピッチの整数分の一の記録ピッチで磁極を変化させるものであることが望ましい。
また、前記所定のパターンの磁極の変化からなる記録内容が、磁極変化の一周期における一方の磁極の記録デューティを一定とするものである場合、前記所定のパターンと相違する磁極の変化からなる記録内容が、前記磁極変化の一周期における他方の磁極の記録デューティを異なるものとするものであることが望ましい。
上記発明の印刷装置および印刷媒体搬送装置によれば、1つのセンサで、所定のパターンの磁極の変化から搬送ベルトの移動状態を検出し、且つ、所定のパターンと相違する磁極の変化から搬送ベルトの基準位置を検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明の実施形態について、液体を噴射して印刷媒体に文字や画像等を印刷する印刷装置を用いて図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態の印刷装置の概略構成を示す正面図であり、図2は、その平面図である。図中の符号1は、印刷用紙等の印刷媒体2を搬送するための無端搬送ベルトである。この搬送ベルト1は、絶縁性ベルトであり、PETやポリイミド、フッ素系樹脂などの絶縁性樹脂で構成される。この搬送ベルト1は、図1の右端部に配設された駆動ローラ3と、図1の左端部に配設された従動ローラ4と、それらの中央部下方に配設されたテンションローラ5とに巻回されている。駆動ローラ3は、図2に示す駆動ローラモータ7によって図1の矢印方向に回転駆動され、図示しない帯電ローラなどの帯電手段で帯電された搬送ベルト1に印刷媒体2を静電吸着させ、その状態で、当該印刷媒体2を図の左方から右方に、つまり矢印方向に搬送する。従動ローラ4は、図示しない帯電ローラなどの帯電手段の当接部分との間に搬送ベルト1を挟持して電圧を印加するために接地されている。テンションローラ5は、図示しないバネによって下方に付勢されており、これにより搬送ベルト1に張力を付与している。
【0009】
搬送ベルト1には、従動ローラ4に対向するようにして、帯電手段としての図示しない帯電ローラが当接されており、帯電ローラには交流電源が接続されている。この帯電ローラの配置は、印刷媒体の給紙位置の直前に相当する。従って、この帯電ローラに所定の周期で反転する電位の電流を付与すると、搬送ベルト1の表面が搬送方向に沿って交互に逆の電位に帯電(縞状帯電)され、それぞれの電荷によって印刷媒体2に誘電分極を発生させ、その誘電分極による印刷媒体2の電荷と搬送ベルト1の表面の電荷及び隣り合う搬送ベルト1の表面の電荷と印刷媒体2の電荷とを含む閉回路を構成して静電気力が発生し、印刷媒体2を搬送ベルト1の表面に吸着する。なお、帯電パターンは、印刷媒体2搬送方向に交互な縞状以外にも、例えば印刷媒体2搬送方向と交差方向に交互な縞状や、市松状などであってもよい。
【0010】
従動ローラ4の印刷媒体2搬送方向上流側にはゲートローラ13が配設されている。このゲートローラ13は、給紙部14から給紙された印刷媒体2を搬送ベルト1上に送給するタイミングを調整すると共に印刷媒体2の搬送方向に対する曲がり、いわゆるスキューを補正する。ゲートローラ13は、図2に示すゲートローラモータ14によって回転駆動される。印刷媒体2は、回転していないゲートローラ13のニップ部(接合部)に当接し、さらに搬送されることによって撓み、その撓みを解放することでスキューが補正され、スキュー補正後にゲートローラモータ14によってゲートローラ13を回転駆動して印刷媒体2を搬送ベルト1上の所定位置に搬送する。
【0011】
搬送ベルト1の所定位置に搬送され、前述した静電気力により搬送ベルト1に印刷媒体2を吸着した状態で搬送方向下流側の印刷領域に搬送される。印刷領域には液体噴射ヘッド11が配設されており、印刷媒体2が液体噴射ヘッド11の印刷媒体搬送方向最上流のノズル位置まで搬送されたら、液体噴射ヘッド11のノズルから液体を噴射して印刷を行う。
【0012】
この液体噴射ヘッド11は、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、ライトマゼンダ(Lm)、ライトシアン(Lc)、ブラック(K)等の色単位に、印刷媒体2の搬送方向にノズル列をずらして配設されている。液体噴射ヘッド11には、図示しない各色の液体タンクから液体供給チューブを介して液体が供給される。各液体噴射ヘッド11には、印刷媒体2の搬送方向と交差する方向に、複数のノズルが形成されており、それらのノズルから同時に必要箇所に必要量の液体を噴射することにより、印刷媒体2上に微小な液体ドットを形成する。これを色単位に行うことにより、搬送ベルト1に吸着された印刷媒体2を一度通過させるだけで、1パスによる印刷を行うことができる。即ち、この液体噴射ヘッド11の配設領域が印字領域に相当する。本実施形態では、後述するベルト基準信号で搬送ベルト1の基準位置を検出し、その基準位置に基づいて、後述するベルト位置信号のタイミングで液体を噴射する。
【0013】
液体噴射ヘッドの各ノズルから液体を噴射する方法としては、静電方式、ピエゾ方式、膜沸騰ジェット方式などがある。静電方式は、アクチュエータである静電ギャップに駆動信号を与えると、キャビティ内の振動板が変位してキャビティ内に圧力変化を生じ、その圧力変化によって液体がノズルから噴射されるというものである。ピエゾ方式は、アクチュエータであるピエゾ素子に駆動信号を与えると、キャビティ内の振動板が変位してキャビティ内に圧力変化を生じ、その圧力変化によって液体がノズルから噴射されるというものである。膜沸騰ジェット方式は、キャビティ内に微小ヒータがあり、瞬間的に300℃以上に加熱されて液体が膜沸騰状態となって気泡が生成し、その圧力変化によって液体がノズルから噴射されるというものである。本発明は、何れの液体の噴射方法も適用可能である。
【0014】
搬送ベルト1の印刷媒体搬送方向と交差する方向の一方の端部には磁気記録層8が形成されている。この磁気記録層8は、搬送ベルト1の一方の端部に、印刷媒体搬送方向に沿って連続して形成されており、この磁気記録層8に接触式の磁気再生用ヘッド9が当接されている。本実施形態の磁気記録層8は、搬送ベルト1の移動状態及び搬送ベルト1の基準位置情報を記録しており、磁気再生用ヘッド9で再生された磁気記録層8の記録内容は制御装置6で検出され、制御装置6で検出された搬送ベルト1の移動状態及び搬送ベルト1の基準位置、即ち印刷媒体2の搬送状態に基づいて、ゲートローラモータ14を駆動して印刷媒体2を搬送ベルト1に供給し、駆動ローラモータ7を駆動して印刷媒体2を印字領域に搬送し、液体噴射ヘッド11を駆動して液体を印刷媒体2に噴射して印刷を行う。
【0015】
図3及び図4には、前記磁気記録層8に記録されている磁極変化からなる記録内容を示す。図3は、搬送ベルト1の磁気記録層8のほぼ全周にわたって記録されている磁極変化のパターンであり、N極、S極、それぞれの磁極を所定の記録ピッチで変化させるものである。図4は、搬送ベルト1の磁気記録層8の一部分にだけ形成された、前述の所定の記録ピッチと相違する磁極の変化からなる記録内容であり、前記図3の所定の記録ピッチの整数分の一(本実施例では2分の一とした)の記録ピッチで磁極(N極、S極)を変化させるものである。従って、図3の所定の記録ピッチの磁極の変化からなる記録内容に対して、N極で磁気再生用ヘッド9の出力信号(図ではエンコーダ信号)がHiレベルとなり、S極でLowレベルになるような場合に、磁気再生用ヘッド9の出力信号の立上がりごとに、搬送ベルト1の移動状態を検出するためのベルト位置信号(パルス)を出力し、図4の所定の記録ピッチと相違する磁極の変化からなる記録内容を検出したときに、搬送ベルト1の基準位置を示すベルト基準信号を出力するようにすれば、タブなどの基準設定やタブセンサなどの基準検出手段が必要なくなる。
【0016】
図5は、図2の制御装置6内で行われるベルト基準信号出力のための演算処理を示すフローチャートであり、印刷指令と同時に開始される。この演算処理では、まずステップS1で駆動ローラモータ7を回転駆動して搬送ベルト1を回転させる。
次にステップS2に移行して、搬送ベルト1が一定速度(図では定速)の状態になったか否かを判定し、搬送ベルト1が一定速度状態になった場合にはステップS3に移行し、そうでない場合には待機する。
【0017】
ステップS3では、磁気再生用ヘッド9の出力信号(図ではエンコーダ信号)の立上がりか否かを判定し、磁気再生用ヘッド9の出力信号の立上がりである場合にはステップS4に移行し、そうでない場合には待機する。
ステップS4では、タイマーのカウントをスタートする。
次にステップS5に移行して、磁気再生用ヘッド9の出力信号(図ではエンコーダ信号)の立下がりか否かを判定し、磁気再生用ヘッド9の出力信号の立下がりである場合にはステップS6に移行し、そうでない場合には待機する。
【0018】
ステップS6では、タイマーのカウントを停止する。
次にステップS7に移行して、タイマーのカウント値が設定された所定値N1より小さいか否かを判定し、タイマーのカウント値が所定値N1より小さい場合にはステップS8に移行し、そうでない場合にはステップS12に移行する。なお、所定値N1は、前記所定の記録ピッチでのN極のピッチ時間より小さく且つ前記所定の記録ピッチの整数分の一(2分の一)のN極のピッチ時間より大きな値に設定されている。
【0019】
ステップS8では、ベルト基準信号を立上げる。
次にステップS9に移行して、磁気再生用ヘッド9の出力信号(図ではエンコーダ信号)の立下がりか否かを判定し、磁気再生用ヘッド9の出力信号の立下がりである場合にはステップS10に移行し、そうでない場合には待機する。
ステップS10では、カウンタNをインクリメント(increment)してからステップS11に移行する。
【0020】
ステップS11では、カウンタNが設定された所定値aであるか否かを判定し、カウンタNが所定値aである場合にはステップS12に移行し、そうでない場合にはステップS9に移行する。なお、所定値aは、前記所定ピッチの整数分の一の「整数」から1を減じた値である。つまり、本実施形態の場合、「整数」が2なので、所定値aは1である。
ステップS12では、ベルト基準信号を立下げてからステップS3に移行する。
【0021】
図6は、図2の制御装置6内で行われるベルト位置信号出力のための演算処理を示すフローチャートであり、印刷指令と同時に開始される。この演算処理では、まずステップS21で駆動ローラモータ7を回転駆動して搬送ベルト1を回転させる。
次にステップS22に移行して、搬送ベルト1が一定速度(図では定速)の状態になったか否かを判定し、搬送ベルト1が一定速度状態になった場合にはステップS23に移行し、そうでない場合には待機する。
【0022】
ステップS23では、磁気再生用ヘッド9の出力信号(図ではエンコーダ信号)の立上がりか否かを判定し、磁気再生用ヘッド9の出力信号の立上がりである場合にはステップS24に移行し、そうでない場合には待機する。
ステップS24では、ベルト基準信号がLowレベル(S極)であるか否かを判定し、ベルト基準信号がLowレベルである場合にはステップS25に移行し、そうでない場合にはステップS23に移行する。
ステップS25では、ベルト位置信号を出力してからステップS23に移行する。
【0023】
図7は、これらの演算処理によって出力されるベルト位置信号及びベルト基準信号のタイミングチャートである。まず、磁気再生用ヘッド9の出力信号(図ではエンコーダ信号)の何れの立上がり時にも立下がりまでの時間がタイマーによってカウントされるが、所定の記録ピッチの場合には立上がりから立下がりまでのタイマーのカウント値が所定値N1以上であるためベルト基準信号は出力されない。一方、所定の記録ピッチと相違する磁極変化の記録内容では、立上がりから立下がりまでのタイマーのカウント値が所定値N1未満となるため、その立下がり時からベルト基準信号が立上げられる。そして、その後の立下がり回数、即ちカウンタNが所定値a(本実施例の場合は1)となった時点でベルト基準信号が立下げられる。即ち、ベルト基準信号がHiレベルである間は、磁極変化の記録内容は検出されない。従って、ベルト基準信号がLowレベルであるときには磁気再生用ヘッド9の出力信号の何れの立上がり時にもベルト位置信号が出力されるが、ベルト基準信号がHiレベルであるときにはベルト位置信号は出力されない。つまり、所定の記録ピッチと相違する磁極変化に対してはベルト位置信号が出力されないので、所定の記録ピッチで、随時、ベルト位置信号が出力される。
【0024】
このように第1実施形態の印刷装置によれば、磁気記録層8に所定の記録ピッチの磁極の変化からなる記録内容を記録すると共にその一部分に所定の記録ピッチと相違する磁極の変化からなる記録内容を記録し、磁気再生用ヘッド9で再生された磁気記録層8の記録内容のうち、所定の記録ピッチの磁極の変化からなる記録内容から搬送ベルト1の移動状態を検出し且つ所定の記録ピッチと相違する磁極の変化からなる記録内容から搬送ベルト1の基準位置を検出することとしたため、1つの磁気再生用ヘッド9で搬送ベルト1の移動状態と搬送ベルト1の基準位置とを検出することができる。
【0025】
また、所定の記録ピッチの磁極の変化からなる記録内容が、所定の記録ピッチで磁極を変化させるものであり、所定の記録ピッチと相違する磁極の変化からなる記録内容が、所定の記録ピッチの整数分の一の記録ピッチで磁極を変化させるものであることとしたため、所定の記録ピッチの磁極の変化からなる記録内容から搬送ベルト1の移動状態を検出し且つ所定の記録ピッチと相違する磁極の変化からなる記録内容から搬送ベルト1の基準位置を検出するのが容易となる。
【0026】
次に、本発明の印刷装置の第2実施形態について説明する。本実施形態の印刷装置の概略構成は、前記第1実施形態の図1、図2のものと同様である。本実施形態では、まず磁気記録層8に記録されている磁極変化の記録内容が第1実施形態のものと異なる。
図8は、本実施形態で磁気記録層8に記録されている磁極変化の記録内容を示すものである。本実施形態では、磁気記録層8全長にわたる所定のパターンの磁極の変化からなる記録内容を、磁極変化の一周期における一方の磁極、例えばN極の記録デューティを一定とする(磁極変化の周期が一定であれば他方の磁極、例えばS極の記録デューティも一定となる)ものとし、磁気記録層8の一部分に形成する所定のパターンと相違する磁極の変化からなる記録内容を、磁極変化の一周期における一方の磁極(N極)の記録デューティを異なる(磁極変化の周期が一定であれば他方の磁極、例えばS極の記録デューティも異なる)ものとした。磁気再生用ヘッド9の出力信号(図ではエンコーダ信号)についていえば、信号のONデューティ(又はOFFデューティ)が異なるとも言える。即ち、所定のパターンではN極に相当するONデューティが大きく(ON時間が長く)、所定のパターンと相違するパターンではS極に相当するOFFデューティが大きい(OFF時間が長い)。
【0027】
図9は、図2の制御装置6内で行われるベルト基準信号出力のための演算処理を示すフローチャートであり、印刷指令と同時に開始される。なお、本実施形態では、第1実施形態におけるベルト位置信号は、磁気再生用ヘッド9の出力信号の全ての立上がりタイミングで出力すればよい。この演算処理では、まずステップS31で駆動ローラモータ7を回転駆動して搬送ベルト1を回転させる。
【0028】
次にステップS32に移行して、搬送ベルト1が一定速度(図では定速)の状態になったか否かを判定し、搬送ベルト1が一定速度状態になった場合にはステップS33に移行し、そうでない場合には待機する。
ステップS33では、磁気再生用ヘッド9の出力信号(図ではエンコーダ信号)の立上がりか否かを判定し、磁気再生用ヘッド9の出力信号の立上がりである場合にはステップS34に移行し、そうでない場合には待機する。
【0029】
ステップS34では、第1タイマーのカウントをスタートする。
次にステップS35に移行して、磁気再生用ヘッド9の出力信号(図ではエンコーダ信号)の立下がりか否かを判定し、磁気再生用ヘッド9の出力信号の立下がりである場合にはステップS36に移行し、そうでない場合には待機する。
ステップS36では、第1タイマーのカウントを停止する。
【0030】
次にステップS37に移行して、第2タイマーのカウントをスタートする。
次にステップS38に移行して、磁気再生用ヘッド9の出力信号(図ではエンコーダ信号)の立上がりか否かを判定し、磁気再生用ヘッド9の出力信号の立上がりである場合にはステップS39に移行し、そうでない場合には待機する。
ステップS39では、第2タイマーのカウントを停止する。
【0031】
次にステップS40に移行して、第1タイマーのカウント値が第2タイマーのカウント値より小さいか否かを判定し、第1タイマーのカウント値が第2タイマーのカウント値より小さい場合にはステップS41に移行し、そうでない場合にはステップS42に移行する。
ステップS41では、ベルト基準信号をHiレベルとしてからステップS43に移行する。
ステップS42では、ベルト基準信号をLowレベルとしてからステップS43に移行する。
ステップS43では第1及び第2タイマーのカウント値をクリアしてからステップS34に移行する。
【0032】
図10は、この演算処理によって出力されるベルト位置信号及びベルト基準信号のタイミングチャートである。なお、ベルト位置信号は、磁気再生用ヘッド9の出力信号(図ではエンコーダ信号)の全ての立上がり時に出力される。また、磁気再生用ヘッド9の出力信号(図ではエンコーダ信号)の何れの立上がり時にも立下がりまでの時間が第1タイマーによって、何れの立下がり時にも立上がりまでの時間が第2タイマーによってカウントされるが、所定のパターンの場合には立上がりから立下がりまでの第1タイマーのカウント値が立下がりから立上がりまでの第2タイマーのカウント値より大きいためベルト基準信号はLowレベルのままである。一方、所定のパターンと相違する磁極変化の記録内容では、立上がりから立下がりまでの第1タイマーのカウント値が立下がりから立上がりまでの第2タイマーのカウント値より小さいため、次の信号の立上がり時にベルト基準信号はHiレベルとなる。そして、次の所定のパターンの周期が終了し、次の所定のパターンで信号が立ち上がるとベルト基準信号がLowレベルとなる。
【0033】
このように第2実施形態の印刷装置によれば、前記第1実施形態の効果に加えて、所定のパターンの磁極の変化からなる記録内容が、磁極変化の一周期における一方の磁極の記録デューティを一定とするものである場合、所定のパターンと相違する磁極の変化からなる記録内容が、磁極変化の一周期における他方の磁極の記録デューティを異なるものとするものであることとしたため、所定のパターンの磁極の変化からなる記録内容から搬送ベルト1の移動状態を検出し且つ所定のパターンと相違する磁極の変化からなる記録内容から搬送ベルト1の基準位置を検出するのが容易となる。
【0034】
なお、本実施形態では、ラインヘッド型印刷装置を対象として本発明の印刷装置を適用した例についてのみ詳述したが、本発明の印刷装置は、マルチパス型印刷装置を始めとして、あらゆるタイプの印刷装置を対象として適用可能である。
また、本発明の印刷装置あるいは印刷媒体搬送装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置き換えてもよいし、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【0035】
また、本発明の液体噴射ヘッドから噴射する液体としては、特に限定されず、例えば以下のような各種の材料を含む液体(サスペンション、エマルジョン等の分散液を含む)とすることができる。すなわち、カラーフィルタのフィルタ材料を含むインク、有機EL(Electro Luminescence)装置におけるEL発光層を形成するための発光材料、電子放出装置における電極上に蛍光体を形成するための蛍光材料、PDP(Plasma Display Panel)装置における蛍光体を形成するための蛍光材料、電気泳動表示装置における泳動体を形成する泳動体材料、基板Wの表面にバンクを形成するためのバンク材料、各種コーティング材料、電極を形成するための液状電極材料、2枚の基板間に微小なセルギャップを構成するためのスペーサを構成する粒子材料、金属配線を形成するための液状金属材料、マイクロレンズを形成するためのレンズ材料、レジスト材料、光拡散体を形成するための光拡散材料などである。
また、本発明では、液体を噴射する対象となる印刷媒体は、記録用紙のような紙に限らず、フィルム、織布、不織布等の他のメディアや、ガラス基板、シリコン基板等の各種基板のようなワークであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の搬送装置を適用した印刷装置の一実施形態の概略構成を示す正面図である。
【図2】図1の印刷装置の平面図である。
【図3】第1実施形態として図2の磁気記録層に記録されている所定の記録ピッチで磁極変化をさせたときの記録内容と磁気再生用ヘッドの出力信号の説明図である。
【図4】第1実施形態として図2の磁気記録層に記録されている所定の記録ピッチと相違する磁極変化させたときの記録内容と磁気再生用ヘッドの出力信号の説明図である。
【図5】第1実施形態でベルト基準信号を出力するための演算処理を示すフローチャートである。
【図6】第1実施形態でベルト位置信号を出力するための演算処理を示すフローチャートである。
【図7】図5及び図6の演算処理によるベルト基準信号及びベルト位置信号のタイミングチャートである。
【図8】第2実施形態として図2の磁気記録層に記録されている所定の記録デューティで磁極変化させたとき及び所定の記録デューティと相違する記録デューティで磁極変化させたときの記録内容と磁気再生用ヘッドの出力信号の説明図である。
【図9】第2実施形態でベルト基準信号を出力するための演算処理を示すフローチャートである。
【図10】図9の演算処理によるベルト基準信号及びベルト位置信号のタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0037】
1は搬送ベルト、2は印刷媒体、3は駆動ローラ、4は従動ローラ、5はテンションローラ、6は制御装置、7は駆動ローラモータ、8は磁気記録層、9は磁気再生用ヘッド、11は液体噴射ヘッド、13はゲートローラ、14はゲートローラモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送ベルトの表面に印刷媒体を載置して搬送し、前記印刷媒体に液体噴射ヘッドから液体を噴射して印刷を行う印刷装置であって、
前記搬送ベルトに連続して形成された磁気記録層と、
前記搬送ベルトの磁気記録層に対向して配設された磁気再生用ヘッドと、
前記磁気再生用ヘッドで再生された磁気記録層の記録内容を検出する制御手段と
を備え、
前記磁気記録層に所定のパターンの磁極の変化からなる記録内容を記録すると共に、その一部分に所定のパターンと相違する磁極の変化からなる記録内容を記録し、前記制御手段は、前記磁気再生用ヘッドで再生された磁気記録層の記録内容のうち、前記所定のパターンの磁極の変化からなる記録内容から搬送ベルトの移動状態を検出し且つ前記所定のパターンと相違する磁極の変化からなる記録内容から搬送ベルトの基準位置を検出することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記所定のパターンの磁極の変化からなる記録内容が、所定の記録ピッチで磁極を変化させるものである場合、前記所定の記録ピッチと相違する磁極の変化からなる記録内容が、前記所定の記録ピッチの整数分の一の記録ピッチで磁極を変化させるものであることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記所定のパターンの磁極の変化からなる記録内容が、磁極変化の一周期における一方の磁極の記録デューティを一定とするものである場合、前記所定のパターンと相違する磁極の変化からなる記録内容が、前記磁極変化の一周期における他方の磁極の記録デューティを異なるものとするものであることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
搬送ベルトに連続して形成された磁気記録層と、
前記搬送ベルトの磁気記録層に対向して配設された磁気再生用ヘッドと、
前記磁気再生用ヘッドで再生された磁気記録層の記録内容を検出する制御手段と
を備え、
前記磁気記録層に所定のパターンの磁極の変化からなる記録内容を記録すると共に、その一部分に所定のパターンと相違する磁極の変化からなる記録内容を記録し、前記制御手段は、前記磁気再生用ヘッドで再生された磁気記録層の記録内容のうち、前記所定のパターンの磁極の変化からなる記録内容から搬送ベルトの移動状態を検出し且つ前記所定のパターンと相違する磁極の変化からなる記録内容から搬送ベルトの基準位置を検出することを特徴とする印刷媒体搬送装置。
【請求項5】
前記所定のパターンの磁極の変化からなる記録内容が、所定の記録ピッチで磁極を変化させるものである場合、前記所定の記録ピッチと相違する磁極の変化からなる記録内容が、前記所定の記録ピッチの整数分の一の記録ピッチで磁極を変化させるものであることを特徴とする請求項4に記載の印刷媒体搬送装置。
【請求項6】
前記所定のパターンの磁極の変化からなる記録内容が、磁極変化の一周期における一方の磁極の記録デューティを一定とするものである場合、前記所定のパターンと相違する磁極の変化からなる記録内容が、前記磁極変化の一周期における他方の磁極の記録デューティを異なるものとするものであることを特徴とする請求項4に記載の印刷媒体搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−80798(P2008−80798A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−212552(P2007−212552)
【出願日】平成19年8月17日(2007.8.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】