説明

印刷装置用の静音動作モード管理システム

【課題】高速の動作速度に起因する音量発生の増加を抑制する。
【解決手段】作像装置は静音モード管理システムを含んでおり、ここでは作像装置の制御システムがジョブサイズや反復や使用媒体等の印刷ジョブの属性に基づき印刷速度を選択的に低減する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、相変化インク印刷機に概ね関し、特にこの種の印刷機の動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
相変化インク作像機器には、相変化インクを用いて記録媒体上に画像を形成するよう構成されたインクジェット印刷機やファクシミリ機や複写機等の多種多様な作像装置が含まれる。これらの装置は通常、直接あるいは間接のいずれかの印刷工程を用い融解相変化インクの液滴を放射する構成のインクジェットを有する1以上の印刷ヘッドを含むものである。直接印刷法では、インクジェットによりインク液滴を記録媒体上に直接付着させる。間接印刷法では、回転ドラムやベルト等の支持面に塗布された離型剤からなる層や薄膜上にインク液滴を付着させ、続いて記録媒体をインクに対し支持面内に押圧することで記録媒体に転写させる。支持面上の離型剤からなる層が、記録媒体へのインクの転写を容易にする一方で支持面に対するインクの固着を防止する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
相変化インクは固化すなわち「凝固」し、記録媒体に接触するとかなり素早く密着し、そのことが水性インク等の他種のインクの使用に関連する乾燥時間の必要性を排除する。乾燥時間の必要性が無くなると、相変化インク印刷装置は比較的高速の印刷速度を達成可能となる。印刷速度は通常、印刷装置が所与の時間フレームにおいて生成することのできる特定タイプの印刷ジョブの印刷頁数として規定され、インク特性と印刷ジョブの属性と印刷装置の様々なシステムや機構の動作速度、レート、周波数の関数である。しかしながら、印刷速度の増加には、印刷装置の様々なシステムと機構が必要とするより高速の動作速度に起因して音量発生の増加が付随する。印刷装置はしばしばかなり静かな複数ユーザの事務所環境に置かれるため、これらの装置が発生する音量レベルの制御あるいは制限は重要な設計配慮事項となる。
【0004】
印刷装置における音の発生を低減するのに一般的に用いられる一つの方法は、「静音」動作モードと一般に呼ばれる減速させた印刷速度で装置を作動させるものである。印刷速度の減速は印刷置装置のシステムと機構の動作速度を低下させ、そのことが動作期間中に装置が発生する音量レベルを低下させる。静音動作モードは通常、実行不能とされるまで、例えばジョブ単位あるいは全てのジョブについてユーザが指定することのできる選択可能な選択肢として提供される。
【0005】
騒音の低減に有効であるが、既に公知の「静音」動作モードは、印刷ジョブの属性あるいは印刷ジョブに関連するユーザの印刷速度予測とは無関係に、各印刷ジョブごとに同じ減速された印刷速度での印刷装置の動作をもたらすことがある。一部事例では、印刷装置に対し静音モードをいつ実行可能あるいは実行不能とすべきか決定するのに、操作者の専門知識に頼らねばならない。しかしながら、印刷装置の一部のオペレータは、印刷速度や音量レベルに対する異なる印刷ジョブ属性の影響および/または所与の作業環境にとって我慢できるかあるいは我慢できないような音量レベルについて知り得ないことがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示によれば、作像装置用の静音モード管理システムが展開され、ここでは作像装置の制御システムはジョブサイズや反復や使用媒体等の印刷ジョブ属性に基づき印刷動作について騒音を発生する動力学的な動きを選択的に減速する。待機モードや他の印刷機の動作状態に対するジョブタイミングはさらに、より静かな動作をいつ実行するか決定する計算にさらに影響を及ぼすことがある。動作制御アルゴリズムは、より低速でより静かな印刷速度での実行時に控え目のすなわち我慢できそうなジョブとより高速で実行する必要がありそうなジョブとの間の均衡を確立する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】知的静音モード動作を実行するよう構成した制御システムを有する相変化インク作像装置の一実施形態を概略的に示す。
【図2】図1の作像装置の制御システムにより用いられ、知的静音モードにあるときに印刷ジョブ用の印刷速度を決定することのできる方法あるいはアルゴリズムの一実施形態のフローチャートである。
【図3】図1に示したような相変化インク作像装置の異なる実施に合わせて異なる印刷ジョブについて印刷速度を決定するのに用いることのできる要因を示すテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本実施形態の概括的な理解に向け、図面を参照する。図面中、同様の要素を指定するのに全体を通じて同様の参照符号を用いる。
【0009】
本願明細書に使用する用語「印刷機」や「作像装置」は、印刷媒体に対し画像を適用する装置を概ね指し、任意の目的に合わせ印刷出力機能を遂行するデジタル複写機、製本機、ファクシミリ機、多機能機等の任意の装置を包含することができる。「印刷媒体」あるいは「記録媒体」は、事前に裁断された状態もしくはウェブ状に給送されるかによらず、物理的なシート紙、プラスチック、または他の適当な物理的印刷媒体下地とすることができる。「印刷ジョブ」や「ドキュメント」は普通関連するシート群であり、通常特定のユーザからの原印刷ジョブシート群あるいは電子ドキュメント頁画像、あるいはそれらが関連するものである。1枚の画像には、マーキングエンジンにより印刷媒体上に描画する電子形態の情報を含めることができ、さらにテキスト、図形、写真等を含めることができる。
【0010】
作像装置の「印刷速度」や「動作速度」は、所与の時間フレームに印刷装置が生成可能な特定タイプの印刷ジョブの印刷頁数として概ね規定され、印刷装置の様々なシステムや機構や機能のインク特性、印刷ジョブ属性、動作速度、レート、および周波数の関数である。作像装置の印刷速度を参照して使用する「通常速」や「標準速」や「全速」等の用語は、本願明細書に記載する静音モードや他の動作モードに従って減速されないときや特段指定されないときに作像装置を動作させる印刷速度を指す。
【0011】
ここで図1に戻り、図1は複数の異なる印刷速度と、異なる印刷速度に関連する複数の異なる動作モードとで動作させることのできる相変化インク作像装置10の一実施形態を描いたものである。作像装置10は、作像装置10の異なる動作モードの選択あるいは起動を可能にし、かつ作像装置10の様々な構成要素や機構や機能の動作速度を制御するよう構成され、選択されあるいは起動された動作モードに関連する1(または複数)の印刷速度で動作させる制御システムを含むものである。
【0012】
下記に説明するように、動作モードの少なくとも一つをここでは知的静音動作モードと呼ぶ。知的静音動作モード時に、制御システムは印刷ジョブを通常印刷速度かあるいは装置が生成する音量レベルを低減する1以上の所定のより低速の印刷速度のいずれかを自動的に(すなわち、ユーザの介在を伴うことなく)特定する選択アルゴリズムを実行する。したがって、知的静音モードは制御システムが管理する静音動作のモードであり、静音動作モードあるいは単純に静音モードと呼ぶことができる。選択アルゴリズムは、決定時に、より静音の動作と一部の事例におけるより高速の印刷速度に対する必要性との均衡を図るべく、これらに限定はされないが、ジョブの頁数、インク密度および/または適用範囲レベル、ジョブタイミング、ジョブ起始原点、待ちジョブ数、媒体種別および寸法、仕上げ機能(例えばステープル打ちや結束)、地理学的領域、業務種別、およびその他を含む幾つかの要因を考慮するものである。
【0013】
図1は、融解相変化インクを用いた間接印刷あるいはオフセット印刷用に構成された相変化インク作像装置の一実施形態の概略側面図である。図1の装置10は、インクローダとも呼ばれるインク処理システム12を含んでおり、これは固体インクスティックと呼ばれるインクブロック14としてその固体形態の相変化インクを受容する構成とされている。インクローダ12は、その中にインクスティック14を挿入する給送チャネル18を含む。図1には1つの給送チャネル18しか視認できないが、インクローダ12は装置10内で使用するインクスティック14の各色あるいは色調ごとに別個の給送チャネルを含んでいる。給送チャネル18はチャネル18の一端の融解組立体20に向けインクスティック14を誘導し、そこでスティックは相変化インク融解温度まで加熱されて固体インクを融解し、溶融インクとも呼ばれる融解液体インクを形成する。相変化インク組成に応じ、任意の適当な溶融温度を用いることができる。一実施形態では、相変化インク溶融温度は約100℃〜140℃である。溶融インクは、装置10の印刷システム26への給送用に融解形状をとる一定量の溶融インクを保存する構成とした貯槽24内に受容される。
【0014】
印刷システム26は、中間転写面30上に溶融インクの液滴を放射するよう構成されたインクジェットを有する少なくとも1個の印刷ヘッド28を含む。2つの印刷ヘッドが図1に示されているが、任意の適当な数の印刷ヘッド28を用いることができる。中間転写面30は、離型剤適用組立体38により回動部材34に適用される離型剤からなる層あるいは薄膜を備える。回動部材34は図1ではドラムとして図示してあるが、代替実施形態では、回動部材34は回動ベルト、バンド、ローラ、または他の同種の構造で構成することができる。ニップローラ40が回動部材34上の中間転写面30に対し装架されてニップ44を形成しており、このニップを介して記録媒体のシート52は印刷ヘッド28のインクジェットにより中間転写面30上に付着されるインク液滴との同調見当合わせ状態で給送される。圧力(一部事例では熱)がニップ44内に生成されるが、このニップは中間転写面30を形成する離型剤に関連して面30から記録媒体52へのインク液滴の転送を容易にし、一方でインクが回動部材34に実質固着しないようにする。
【0015】
作像装置10は、ニップ44を介して媒体を誘導する装置10内に画成された媒体経路50に沿って記録媒体を移送する構成の媒体供給処理システム48を含んでおり、ここではインクは中間転写面30から記録媒体52へ移送される。媒体供給と処理システム48は、装置10用の異なる種別と寸法からなる記録媒体を保管し供給する供給トレイ58等の少なくとも1つの媒体源58を含んでいる。媒体供給処理システムは、媒体経路50に沿って媒体を移送する被駆動ローラや遊びローラとすることのできるローラ60等とさらにバッフルや偏向板等も加えた適当な機構もまた含む。
【0016】
媒体調整装置は、記録媒体の温度を制御して調整するよう媒体経路50に沿って配置し、媒体が適当な温度でニップ44に達して中間転写面30からインクを受け取るようにできる。例えば、図1の実施形態では、媒体経路50に沿って予熱組立体64を配設し、記録媒体をニップ44に至る前に所定の初期温度にする。予熱組立体64は、一つの実用実施形態では媒体を約30℃から約70℃の範囲にある目標予熱温度にする接触熱、放射熱、伝導熱、または対流熱を利用することができる。代替実施形態では、インクが媒体上に付着されて媒体(インク)温度を制御する前やその最中あるいはその後に媒体経路に沿って他の熱調整装置を用いることができる。
【0017】
作像装置10の様々なサブシステム、構成要素、および機能の操作ならびに制御は、制御システム68の助けを借りて遂行される。制御システム68は、スキャナシステムやワークステーション接続等の1以上の画像源72から画像データを受け取って管理し、作像装置10についての様々な手順と動作を構成要素とシステムに遂行させる画像データに基づき構成要素とサブシステムに給送される制御信号を生成するよう作動可能に結合してある。制御システム68は、コントローラ70と電子記憶装置またはメモリ74とユーザインタフェース(UI)78とを含んでいる。コントローラ70は、メモリ74に格納された命令を実行する構成の中央処理装置(CPU)、特定用途向け集積回路(ASIC)、現場プログラム可能なゲートアレイ(FPGA)デバイス、またはマイクロコントローラ等の処理装置を含んでいる。任意の適当な種別のメモリあるいは電子記憶装置を用いることができる。例えば、メモリ74は、リード・オンリー・メモリ(ROM)等の不揮発性メモリ、あるいはEEPROMやフラッシュメモリ等のプログラム可能な不揮発性メモリとすることができる。
【0018】
ユーザインタフェース(UI)78は、制御システム68とオペレータの相互作用を可能にする作像装置10上に配置した適当な入力/出力デバイスで構成される。例えば、UI78にはキーパッドとディスプレイ(図示せず)を含めることができる。コントローラ70は、ユーザインタフェース78に作動可能に結合され、デバイスのユーザあるいはオペレータによりユーザインタフェース78に対する選択あるいは他の情報入力を示す信号を受け取る。コントローラ70はユーザインタフェース78に作動可能に結合され、選択可能な選択肢、マシン状態、可消費状態等を含む情報をユーザあるいはオペレータに表示する。コントローラ70は、コンピュータネットワーク等の通信リンク84に結合し、遠隔場所から画像データとユーザ相互作用データとを受け取ることもできる。
【0019】
コントローラ70は、インク処理システム12、印刷システム26、媒体処理システム48、離型剤適用組立体38、媒体調整装置50、および他の装置や、作像装置10の機構80等の装置10の様々なシステムおよび構成要素に作動可能に結合してあり、メモリ74が記憶する印刷データと命令に従いこれらシステムと装置へ出力される制御信号を生成する構成とされている。制御信号は、例えばシステム構成要素の動作速度、電力レベル、タイミング、起動、および他のパラメータを制御し、作像装置10を、ここでは集合的に動作モードと呼ぶ様々な状態やモードや動作レベルで動作させる。これらの動作モードには、例えば始動モード、ウォームアップモード、停止モード、様々な印刷モード、保守点検モード、および省電力モードが含まれる。
【0020】
作像装置10内に実装することのできる印刷モードの例には、標準印刷モード、写真モード、高画質モード、高速モード、および静音モードが含まれる。印刷モードは、印刷画像の品質および/または画像生成速度により特徴付けられる。写真モードでは、印刷画像はより高い解像度とより大量のインク含量とを有し、より詳しい細部と色域とを提供するのに対し、高画質標準モードは良好な品質を提供するが、一例として写真モード印刷よりもより低い解像度のインク堆積を伴う。写真モード印刷のより高い解像度とインク含量は、標準高画質モード印刷よりも低速の印刷速度を生じさせる。高速モードは、標準モード印刷時よりも高速の印刷速度を可能にするレベルで適切な印刷品質を提供する。
【0021】
作像装置には、作像装置の電力消費を低減すべく印刷ジョブが実行されていないときに特定条件下で実行することのできる様々な省電力モードを持たせることもできる。省電力モードには、待機モード、低電力モードあるいはスリープモードが含まれる。省電力モードでは、様々なシステムに供給される電力レベルはシステムの終了よりもむしろ低減され、したがって動作再開時に作像装置を印刷用に準備するのにより短い時間しか必要としない。一実施形態では、コントローラ70は作像装置10の使用を監視し、作像装置使用と同様の時間期間中に装置を準備するよう構成される。
【0022】
コントローラ70はまた、装置10の様々なシステム用に制御信号を生成し、装置を静音モードで動作させるよう構成される。本願明細書に使用する「静音モード」は、印刷ジョブを実行するために用いる印刷速度を、通常の動作条件下で印刷ジョブを実行するのに用いる印刷速度に対し減速する動作モードを指す。コントローラ70は、ユーザインタフェース78あるいは通信リンク84から受信した入力に応答して静音モードを実行可能にする構成としてある。例えば、静音モードはユーザインタフェース78を介して一つの選択可能な選択肢として提供することができ、所与の時間フレームの全てのジョブについて、あるいは実行不能とされるまでの全てのジョブについて、ユーザはジョブ単位で指定することができる。静音モードでは、コントローラはシステムの構成要素と機構とを印刷ジョブに通常用いられるはずの動作速度に対し減速させた速度で動作させ、そのことが動作期間中に装置が生成する音量レベルを低下させる。騒音低減用に低減させた速度あるいは周波数で動作させることのできる構成要素と機構の例には、回動部材34、印刷ヘッド28、および媒体供給処理システム48の駆動機構、加えて印刷装置の他の任意の適当なモータ駆動かつ/または被駆動機構および部品もまた含まれる。標準モードでの印刷速度は、一例として印刷ジョブの特定の属性や印刷機の構成に応じて毎分約20〜40頁(ppm)を作製することができる。静音動作モード時には、印刷速度の減速により、一例として毎分約5〜20頁を作製させることができる。
【0023】
平均的なユーザは、ほとんどが少ない数、例えば10枚以下の頁を有する印刷ジョブを生成し、ここでは完了までの僅かな時間の増大は特に目立つことはないが、印刷物を作製する低減された騒音レベルは明白であって高く評価される。しかしながら、一部事例では、より高速の印刷生産に対する選好性あるいは必要性が静音動作に対する選好性を上回ることがある。例えば、印刷速度の減速はより多数の、例えば10枚を上回る頁を有するジョブを完了させる時間を装置の一部ユーザにとって受容できない程度にまで増大させることがある。より高速の印刷速度に対する選好性が静音動作に対する選好性を上回る他の環境には、例えばユーザが印刷ジョブの完了を待機したままであるときに時として実行される印刷ジョブや、通常作業時間の外にあるときに時として実行される印刷ジョブが含まれる。
【0024】
作像装置が実行する全ての印刷ジョブについて静音モードが実行可能である場合、選好性とは無関係に通常速度で印刷ジョブを実行する選択肢をユーザにもたらすことはできない。たとえジョブ単位で静音モードを実行可能あるいは実行不能とすることができるにしても、ユーザは印刷速度と音量レベルおよび/または所与の作業環境では我慢可能もしくは我慢不能となりうる音量レベルに対する異なる印刷ジョブの属性の影響を知り得ないことがある。
【0025】
これらの状況に対処すべく、作像装置は印刷ジョブの遂行に用いられる印刷モードあるいは印刷速度が制御システムにより自動的に選択されてより高速のすなわち通常印刷物作製に対する選好性と静音動作に対する選好性との均衡を図るモードで動作するよう構成することができる。この動作モードでは、コントローラはジョブサイズや反復やユーザの介在なしで使用する媒体等の印刷ジョブ属性に基づき印刷動作に対し騒音を発生する動力学的な動作を選択的に減速する構成とする。こうした仕方で印刷ジョブを自動的に実行する動作モードを選択する能力は、より低速の静音印刷速度で実行するときに控え目のすなわち我慢できそうなこれらのジョブと、より高速に実行する必要のありそうなジョブとの間の均衡を自動的に確立する。
【0026】
この静音モード機動の管理は、作像装置10の他の動作モード同様、ユーザインタフェース78を介してユーザが選択可能な選択肢として提供することができる。別の選択肢として、コントローラ70は通信リンク84を介して静音モード管理を開始するコマンドを受信するよう構成することができる。静音モード管理は、作像装置の音量制御プロトコル用の一選択肢として提供することができる。音量制御プロトコルには、処理量を最大化すべく、作像装置が通常態様すなわち通常速度で常時機能する静音モードの無視や設定もまた含めることができる。音量制御プロトコルには、最も静かな実用的実行モードで作像装置が常時動作する持続的静音モードを含めることもできる。静音モード管理の選択により、印刷機は印刷属性および/または状態を参照して通常速度動作と静音動作との均衡を図ることができる。持続的な静音モードでは、動作設定は前述の如く作像ジョブコンテンツあるいは他の影響に基づきコントローラにより管理あるいは可変できるが、通常動作モードへの復帰は含まない筈である。
【0027】
一実施形態では、コントローラ70はジョブ種別や顧客の嗜好性や他の印刷ジョブ規範を参照する動作モードの選択を実行することで、静音モード動作を管理する構成としてある。静音モード動作を実行するデータと命令は、コントローラ70がアクセスできるようメモリ74に記憶させることができる。一実施形態では、静音モード管理は、通常印刷速度ジョブ用の少なくとも1群の規範および属性と、減速印刷速度ジョブ用の少なくとも1群の他の規範および属性とを確定することで実行可能とされる。「通常」印刷速度は、印刷ジョブの遂行に通常用いられる印刷モードを指し、印刷ジョブの解像度、インク適用範囲、媒体種別等の要因に基づく印刷モードの遂行に用いられる最速印刷速度に通常対応し、一般に標準モード、高機能モード、写真モード、高速モード、あるいは装置10内で使用される他の任意の印刷モードを含めることができる。静音モード動作向けの減速印刷速度は、任意の適当な印刷速度とすることができる。一実施形態では、単一の減速印刷速度を静音モードで動作する印刷ジョブに用いることができる。別の選択肢として、複数レベルの印刷速度の減速を異なる規範群に基づきジョブの遂行に用いることができる。
【0028】
一実施形態では、静音モード管理は、第1群の規範および/または印刷ジョブ属性を確立し、どの印刷ジョブを通常印刷速度で実行すべきかを特定することで、実行可能とされる。第1群の規範および/または属性は、通常速度動作に対する同様の選好性を有する印刷ジョブを指示するよう選択される。通常の印刷動作を管轄するのに用いることのできる印刷ジョブ属性の例には、所定の頁数、例えば10枚以上を有する印刷ジョブ、通常の作業時間外で実行する印刷ジョブ、低解像度、草稿モード等が含まれる。第2群の規範および/または印刷ジョブ属性は、どの印刷ジョブを静音モードにおいて減速速度で実行すべきかを特定するよう確立され、減速印刷速度での実行時に我慢できそうな印刷ジョブを指示するよう選択される。第2群の規範および/または属性に用いることのできる印刷ジョブ属性の例には、印刷ジョブが待ちジョブや高解像度および/または適用範囲、例えば写真印刷を有する印刷ジョブでしかないときに、所定の頁数未満、例えば5頁以下を有する印刷ジョブが含まれる。解像度、適用範囲、密度、頁数等の異なる属性についての閾値は、任意の適当な仕方で事前に設定し、メモリ74に記憶させることができる。通常印刷動作からの遷移を左右する1以上の印刷ジョブ属性は、6頁以上の通常動作を用いて最大5頁までのジョブのための静音動作モードに対し設定されるよう、ユーザ選択可能とすることができる。1以上の設定を、例えば日中の所定時間期間あるいは週の特定の曜日に静音動作を完全に除外する他の静音モード動作を条件付きで無視するよう選択可能とすることができる。
【0029】
加えて、第3群の規範を確定して印刷速度を決定し、第1群と第2群の属性に包含されていない印刷ジョブを活用し、あるいは第1群と第2群の両方の規範および/または属性に包含される規範および/または属性を有する印刷ジョブ向けに通常印刷速度あるいは減速印刷速度のいずれかで印刷するバイアスを確定することができる。特に、印刷ジョブの第3群の規範と属性は、追加要因および/または代替要因が含まれる状況と、第1と第2のカテゴリー用の閾値が動作を左右しない場合の状況とに向けたものである。この範囲のジョブ用の印刷動作は、最速か最も静かな動作あるいは何らかの中間速度で実行し、騒音レベルと処理量との間の均衡を図ることができる。動作モード選択と、したがってより静かな動作向けの動き制御の程度に影響を及ぼす要因には、適用範囲の大きな媒体、自動ドキュメント給送複写ジョブ、代替媒体タイプや媒体寸法、中間解像度モード、複写ジョブが含まれ、ここでユーザは、手動トレイあるいはバイパストレイ内に挿入される媒体に対する自動トレイ給送媒体や、一例としてタブロイド媒体や仕分けあるいは仕上げを有する媒体に合わせた寸法の随意選択的な構成や機械等級等の適用可能な他の要因の出力を待機する。
【0030】
作業環境および装置種別は、より静音に近いかあるいは通常の動作用のバイアスを設定するのに用いる要因とすることもできる。例えば、低処理量定格に対する媒体のより小さな卓上製品構成は、卓上あるいはその近傍に置かれる可能性がより高いものである。これらのユニットは、静音動作用に有利となるよう最も適用可能であり、選択規範は図3に示す製品Aの例示要因リストに参照される如く、その選好性に合わせ偏倚させることができる。逆に、穿孔機能と綴封機能とを備える仕上げ機を有する高速A3版あるいはタブロイド版のMFP(複合機)はテーブルもしくは床面上に設置され、大量のジョブと多量の作製に用いられる可能性が最も高いものである。この種の製品は、結果的に作業小部屋の外に中心的に配置される筈である。騒音レベルは決して完全には無視できないが、この装置に対する印刷や複写の適用は大半の場合高速ジョブの完了に対し非常に高い評価をもたらす。
【0031】
動作時、異なる規範および/または属性群は、これらを受け取って待ち状態とする際に印刷ジョブの規範および属性に対する比較用の閾値としてコントローラ70が用いることができる。コントローラは、関連する印刷ジョブ属性および規範を、画像データを解析して頁数、インク密度/適用範囲、カラーコンテンツ、解像度等を特定したり、あるいは作像装置のシステムの構成要素とセンサを監視したりしてジョブ起始原点(例えば、装置や遠隔ジョブ生成等)等の関連属性を特定する等の適当な仕方で確認することができる。加えて、1日の所定の時間期間中の使用レベル等の規範は、例えばコントローラにより監視される動作履歴を参照して決定することができる。印刷ジョブ規範および属性と第1群と第2群と第3群の規範および属性との比較に基づき、コントローラはより高速の印刷速度の選好性と静音動作の選好性との均衡を図るべく印刷ジョブを実行すべき印刷速度を特定することができる。
【0032】
作像装置内に静音モード管理を実行する工程の一実施形態のフローチャートが、図2に図示してある。図示の如く、印刷ジョブは作像装置のコントローラにより受け取られる(ブロック200)。コントローラはそこで、印刷ジョブの属性を特定する(ブロック204)。例えば、ジョブ属性は画像データを解析して頁数、画像適用範囲、密度、ジョブ起始原点、媒体種別等を判定し、ユーザインタフェースを介して選択肢の選択を受け取り、使用履歴を監視し、あるいは他の任意の適当な仕方で特定することができる。コントローラはそこで、特定された印刷ジョブ属性を第1群の属性と比較し、印刷ジョブが通常印刷速度に対する選好性を有するか判定(ブロック206)し、第2群の属性と比較し、印刷ジョブが静音動作に対する選好性を有するかどうか判定(ブロック208)する。
【0033】
この比較がジョブ向けの通常動作に対する選好性を示す場合、ジョブは通常動作速度で遂行される(ブロック218)。比較が、ジョブが静音動作に対する選好性を有することを示す場合、ジョブは静音モードで減速動作速度にて遂行される(ブロック216)。印刷ジョブ属性が第1群または第2群の属性のいずれにも含まれない場合、あるいはそれらが第1群または第2群の属性の両方に含まれる場合、コントローラは特定された属性を第3群の規範と比較し、印刷ジョブを通常の印刷速度あるいは静音動作のための減速印刷速度で実行すべきか判定する(ブロック210)。ジョブはそこで、第3群の属性内に設定された規範に基づき実行される(ブロック214)。例えば、コントローラは所与の印刷速度に対し適切な動作速度、レート、および頻度を指定する様々なシステムに対し出力する制御信号を生成する構成としてある。
【0034】
一部実施形態では、静音モード管理により、例えば通常の印刷速度動作から減速動作へ、あるいは減速印刷速度動作から通常の印刷速度動作への、印刷ジョブを実行しながらの遷移が可能となる。印刷速度遷移は、印刷ジョブ開始時の不完全な印刷ジョブ情報に基づくことがある。例えば、作像開始時にはジョブサイズ(頁数)は既知でないことがある。静音モード管理は、ジョブが静音モード頁閾値を超える場合に、ジョブを静音モードで開始し、より高速の動作へ遷移させることで、その不確実性に対応することができる。モード遷移の別の例は、マシン状態である。より低速の静音モード動作は、機械が一つの動作状態に完全に標準化されるのに合わせて他の要因が処理量選好性に対する遷移を引き起こすことがある場合に、省電力消費状態の一つから遷移するときに、当初は好都合となることがある。
【0035】
これらレベル間のぶれは、要因と動作パラメータの組み合わせに基づき生じることがあり、したがってこの概念は特別な3レベル分離とはならない。速度と動作騒音レベルとの間の所望のすなわち最も評価される均衡に最適の選択規範は、製品によってばらつくことがある。数多くの構成と作像ジョブの傾向は、これら極端な例の間に存在する。選択規範の実行に影響を及ぼすことのある他の要因は、地勢である。通常の競合製品と歴史的な選好性に鑑みた性能に対する強調は、大陸やあるいは他の地勢的な地理区分により変化することがあり、この種の選好性は時間とともに変化することがある。これら全ての要因は、任意の特定の静音モード管理の実行の規定あるいは制限を困難かつ非実用的とする。全ての可能な要因を含む試みは一切なされておらず、あらゆる適当なより多くのまたはより少ない要因収集がこの概念に整合する筈である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作像装置内の記録媒体を移送する媒体移送システムであって、第1の信号に応答して静音モードで、第2の信号に応答して通常動作モードで動作する構成とし、静音動作モードは通常動作モードに対し減速された印刷速度である媒体移送システムと、
前記記録媒体上にインクを付着させて画像を形成する印刷システムであって、第1の信号に応答して静音モードで、第2の信号に応答して通常動作モードで動作する構成とした印刷システムと、
前記媒体移送システムと前記印刷システムとに作動可能に接続されたコントローラであって、通常動作モードに関連する属性を有する印刷ジョブに応答して第1の信号を生成し、静音動作モードに関連する属性を有する印刷ジョブに応答して第2の信号を生成する構成としたコントローラとを備える、作像装置。
【請求項2】
前記コントローラは、静音モード管理状態に置かれていることに応答し、第1と第2の信号を生成する構成とした、請求項1に記載の作像装置。
【請求項3】
前記静音モード管理は、作像装置のユーザ選択可能な選択肢を含む、請求項2に記載の作像装置。
【請求項4】
ユーザ選択可能な選択肢として前記静音モード管理を表示し、ユーザによる静音モード管理モードの選択を可能にするユーザインタフェースをさらに含む、請求項3に記載の作像装置。
【請求項5】
前記コントローラによるアクセス用のデータと命令とを記憶するメモリと、
前記静音モード管理期間中の通常動作モードに関連する第1群の属性を規定するデータおよび命令と、
前記静音モード管理期間中の静音動作モードに関連する第2群の属性と、
前記第1群と第2群の属性内に包含されない属性を有するか、あるいは第1群と第2群の属性の両方に包含される属性を有する印刷ジョブについて、コントローラが印刷ジョブを通常動作モードであるいは静音動作モードで実行すべきかを特定できるようにする第3群の属性とをさらに含む、請求項4に記載の作像装置。
【請求項6】
前記第1群と第2群と第3群の属性は、印刷ジョブの1以上の頁数と印刷ジョブの適用範囲レベルと媒体種別と画像解像度とジョブタイミングとジョブ起始原点とを含む、請求項5に記載の作像装置。
【請求項7】
前記第1群の属性は、第1の所定数を上回る頁数を有する印刷ジョブと、騒音に配慮している時間期間中に生成される印刷ジョブと、所定の解像度閾値未満の解像度を有する印刷ジョブのうちの少なくとも1つを含む、請求項6に記載の作像装置。
【請求項8】
前記第2群の属性は、第2の所定数未満の頁数を有する印刷ジョブと、待機中の他の印刷ジョブを実行すべきものが皆無であるときに時として生ずる印刷ジョブと、所定の閾値を上回る解像度あるいは適用範囲を有する印刷ジョブのうちの少なくとも1つを含む、請求項7に記載の作像装置。
【請求項9】
前記第3群の属性は、ジョブ起始原点と装置種別と作業環境種別のうちの少なくとも1つを含む、請求項8に記載の作像装置。
【請求項10】
前記静音モード管理は、この第2のモードが起動されている間に、通常の動作モードを用いて全ての印刷ジョブを実行する第2のモードと、静音モードを用いて全ての印刷ジョブを実行する第3のモードとを含む複数の音声制御モードのうちの1つを含む、請求項2に記載の作像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−20581(P2012−20581A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147098(P2011−147098)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】