説明

印刷装置

【課題】印刷手段の圧接・離間を行うリンクレバーが上カバーから外れた場合でも復旧が容易となる印刷装置を提供する。
【解決手段】筐体本体2と、上カバー5と、印刷手段32と、プラテンローラ35と、印刷手段32をプラテンローラ35に圧接させるとともにプラテンローラ35から離間させる圧接・リリース機構と、一端が上カバー5に係合されるとともに他端が圧接・リリース機構51に連結され、上カバー5の開閉に連動して圧接・リリース機構を作動してプラテンローラ35に対する印刷手段32の圧接・離間を行うリンクレバー34とを有する印刷装置において、上カバー5は、リンクレバー一端34αが係合する位置下方に形成されるガイドリブ71を備え、ガイドリブ71上面に形成されるガイド面71Aは、上カバー5開放時にリンクレバー一端34αが上カバー5から外れた際に、前記リンクレバー34を受け止めて保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール状に巻回される印字媒体が装着される筐体本体と、前記筐体本体に開閉自在に取り付けられる上カバーとを有する印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ロール状に巻回される印字媒体が装着される筐体本体と、前記筐体本体に開閉自在に取り付けられる上カバーとを有する印刷装置に関して種々提案されている。
例えば、特許文献1のように、プラテンローラへのサーマルヘッドの圧接・離間操作を行うリンクレバーの一端が印刷装置の上カバーに係合され、上カバーを閉じるのに連動して、サーマルヘッドが自動的に上方に移動され、印字媒体をプラテンローラに押圧付勢して印字可能な状態となる印刷装置がある。この印刷装置では、上カバーを開くと、それに連動してサーマルヘッドは下方に移動し、プラテンローラから離間するので、印刷を開始したい使用者は、両者の間に印字媒体の一端を差し込んで上カバーを閉じれば、また印刷可能状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−028977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1の印刷装置ではリンクレバーの一端は上カバーに着脱可能に係合されている。よって、ユーザーが上カバーを開いて、プラテンローラとサーマルヘッドとの間に印字媒体を差し込む作業をする際に上カバーやリンクレバーに触れる等すると、リンクレバーが上カバーから外れ、下方に落下する。その場合、ユーザーが手動でリンクレバーを上カバーに係合しなおさなくてはならないという問題点がある。
【0005】
そこで、本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、印刷手段の圧接・離間操作を行うリンクレバーが上カバーから外れた場合でも復旧が容易となる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を解決するため、請求項1に係る印刷装置は、ロール状に巻回される印字媒体が装着される筐体本体と、前記筐体本体に開閉自在に取り付けられる上カバーと、前記筐体本体内に配設され印字媒体に印刷を行う印刷手段と、前記印刷手段に対向して筐体本体に回動自在に支持されたプラテンローラと、前記印刷手段を前記プラテンローラに圧接させるとともにプラテンローラから離間させる圧接・リリース機構と、一端が前記上カバーに係合されるとともに他端が前記圧接・リリース機構に連結され、上カバーの開閉に連動して圧接・リリース機構を作動して前記プラテンローラに対する印刷手段の圧接・離間を行うリンクレバーとを有する印刷装置において、前記上カバーは、前記リンクレバー一端が係合する位置下方に形成されるガイドリブを備え、前記ガイドリブ上面に形成されるガイド面は、前記上カバー開放時に前記リンクレバー一端が上カバーから外れた際に、前記リンクレバーを受け止めて保持することを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係る印刷装置は、請求項1に記載の印刷装置において、前記リンクレバーが外れた前記上カバーは開放角度が規制され、前記係合は、前記リンクレバー一端と前記上カバーのいずれか一方に形成される係合孔に、他方に形成される軸部が挿入されることによりなされ、前記リンクレバー一端は前記上カバーを閉塞する際に、前記ガイド面上で滑るとともに、前記軸部が前記係合孔に自動的に挿入されることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係る印刷装置は、請求項2に記載の印刷装置において、前記軸部、前記係合孔又は前記リンクレバー一端のいずれかに面取部が形成され、前記軸部は、前記面取部を介して前記係合孔に自動的に挿入されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る印刷装置では、上カバーは、リンクレバー一端が係合する位置下方に形成されるガイドリブを備え、前記ガイドリブの上面に形成されるガイド面は、上カバーの開放時にリンクレバーが上カバーから外れた際に、前記リンクレバーを受け止めて保持する。このため、ユーザーがリンクレバーを元通り上カバーに係合し直すのが容易となる。
【0010】
さらに、請求項2に係る印刷装置では、リンクレバーが外れた後も上カバーの開放角度は規制される。このためガイドリブの位置はリンクレバーが上カバーから外れた後に大きく変動せず、ガイド面はリンクレバーを更に確実に受け止めて保持することができる。
また、リンクレバーと上カバーの係合は係合孔に軸部が挿入することによりなされ、リンクレバーは上カバーを閉塞する際に、前記ガイド面上で滑るとともに、前記軸部が前記係合孔に自動的に挿入される。よって、ユーザーが上カバーを閉じさえすれば、上カバーから外れてガイドリブに保持されたリンクレバーは自動的に元通り係合する。
【0011】
さらに、請求項3に係る印刷装置では、前記軸部、前記係合孔又は前記リンクレバー一端のいずれかに面取部が形成され、前記軸部は、前記面取部を介して前記係合孔に自動的に挿入される。よって、上カバーを閉塞する際のリンクレバー再係合はよりスムーズに行われる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ロールシートホルダが装着され、リンクレバーが上カバーから外れてガイドリブのガイド面上に保持された状態における本実施形態の印刷装置を、上カバーを開けて示す右側上方からの斜視図である。
【図2】本実施形態に係る印刷装置の背面図である。
【図3】本実施形態に係る印刷装置の上カバーを開けた状態を示す平面図である。
【図4】図3に示す印刷装置のA−A´側断面図である。
【図5】図3に示す印刷装置のB−B´側断面図である。
【図6】開いた上カバーを切断した状態における印刷装置の平断面図である。拡大部分ではリンクレバーと上カバーの面取部を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る印刷装置について、本発明を具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下で説明する図1〜図6における上カバー5は、後述するリンクレバー34が外れて開ききった状態にある。
【0014】
先ず、本実施形態に係るロールシートホルダが装着される印刷装置の概略構成について図1乃至図5に基づき説明する。
図1等に示すように、印刷装置1は、樹脂製の本体筐体2と、所定幅のロールシート3Aが巻回されたロールシートホルダ3を収納するロールシートホルダ収納部4と、ロールシートホルダ収納部4の上側を覆う透明樹脂製の上カバー5とから構成されている。上カバー5は、本体筐体2の後側上端縁部にヒンジによって開閉自在に取り付けられている。なお、この上カバー5の後端縁部には側面視三角形の爪部5C、5C´(図2参照)があり、後述のように、この爪部5C、5C´が本体筐体2の後上端部に当接することにより、上カバー5の開放角度が規制される。すなわち、爪部5C、5C´が本体筐体2の後上端部に当接する際に、上カバー5が開ききった状態となる。
なお、このロールシート3Aは、自己発色性を有する長尺状の感熱シート(いわゆる、サーマルペーパー)や、該感熱シートの片面に粘着剤を介して離型紙が貼り合わされた長尺状のラベルシート等で構成されている。
【0015】
また、上カバー5の前側のフロントカバー6には、印刷されたロールシート3Aを外部に排出するシート排出口6Aが形成されている。また、このシート排出口6Aの上側の前面部には電源ボタン7A、押下することによってシート排出口6Aの内側に設けられたカッターユニット8(図4参照)を駆動させてロールシート3Aを切断するカットボタン7B、押下している間ロールシート3Aを搬送方向に排出するフィードボタン7Cが略水平に配置されている。
【0016】
ここで、カッターユニット8は、図4に示すように、固定刃8Aと可動刃8Bを有する。カットボタン7Bが押下された場合には、可動刃8BがDCモータ等で構成される切断用モータにより上下方向に往復移動される。そして、固定刃8Aと可動刃8Bとによって切断されたロールシート3Aは、シート排出口6Aから排出される。尚、可動刃8Bは正面視V字形に構成されている。
【0017】
また、図1に示すように、トレー部材9がフロントカバー6の前側を覆うように、このフロントカバー6の下端縁部に開閉自在に取り付けられ、上端部に形成された凹み部9Aに指を掛けて前側に回動させて開くことができるように構成されている。
尚、図2に示すように、本体筐体2の背面部には電源コードが接続されるインレット10が配設されると共に、その横側にはパーソナルコンピュータ等と接続されるUSB(Universal Serial Bus)コネクタ11が設けられている。
【0018】
図4、図5に示すように、上カバー5は、側面視略半円形状に形成されている。本体筐体2の上カバー5の開口部が当接する左右側端縁部は、外側方向に所定幅(例えば、約10mmである。)延出されて各段部13、13が形成されている。
【0019】
図3等に示すようにロールシートホルダ収納部4の前側の左右側壁部には、内側に弾性変形可能に形成された各弾性係止片15、15が設けられている。また、各弾性係止片15、15には、外側方向に突出する側断面三角形の係止突起15Aが形成され、上カバー5の開口部側端縁部に形成された各係合凹部16、16に係合可能に構成されている。
【0020】
これにより、上カバー5を前側方向に回動させて各段部13に当接させることにより、各弾性係止片15と各係合凹部16とが係合し、上カバー5が閉じられた状態で保持される。また、上カバー5の前端中央部に形成される凹み部5Aに指を掛けて後側方向に回動させることによって、各弾性係止片15と各係合凹部16との係合が外れ、上カバー5を開くことが可能となる。
【0021】
また、図1に示すように上カバー5の凹み部5Aの正面左側には、前側方向に所定長さ突出した押し爪部5Bが設けられている。上カバー5を閉じた場合に、本体筐体2の当該押し爪部5Bが当接する位置には、マイクロスイッチ等から構成されて、この押し爪部5Bによって押下されたか否か、即ち、上カバー5が閉じられたか否かを判別するための上カバー検出スイッチ18が配置されている。
【0022】
また、図1に示すように、印刷装置1は、ロールシートホルダ収納部4の搬送方向に対して略垂直方向の一方の側端縁部(図1中、右側側端縁部)に、ロールシートホルダ3を構成する位置決め保持部材20の外側方向に突設される断面略矩形状の取付部材21を嵌め込むことができるホルダ支持部材23が設けられている。
【0023】
図3等に示すように、ロールシート3Aを挿入する挿入口26(図4参照)の後端縁部からロールシートホルダ収納部4の前側上端縁部まで略水平に延出された載置部29が設けられている。また、この載置部29の搬送方向後側の端縁角部には、ロールシート3Aの複数の幅寸法に対応して断面略L字状の5個の第2位置決め溝部30A〜30Eが形成されている。この各第2位置決め溝部30A〜30Eは、ロールシートホルダ3を構成するガイド部材28(図1参照)の載置部29に当接する先端下端部分を上方から嵌め込むことができるように形成されている。
【0024】
また、ロールシートホルダ収納部4の底面部には、ホルダ支持部材23の内側基端部から対向する側面部基端部まで搬送方向に対して略垂直に平面視横長四角形の位置決め凹部4Aが所定深さ(本実施形態では、約1.5〜3mmの深さである。)で形成されている。この位置決め凹部4Aの搬送方向幅寸法は、ロールシートホルダ3を構成する位置決め保持部材20(図1参照)及びガイド部材28の各下端縁部の幅寸法にほぼ等しくなるように形成されている。
【0025】
また、位置決め凹部4Aのホルダ支持部材23の内側基端部には、位置決め保持部材20の下端縁部から略直角内側方向に延出されるシート判別部(不図示)に対向する部分が、位置決め凹部4Aよりもさらに所定深さだけ深くなるように形成された搬送方向に縦長の平面視長四角形の判別凹部4Bが形成されている。
【0026】
また、この判別凹部4Bには、プッシュ式のマイクロスイッチ等から構成されて、ロールシート3Aの種別、材質、ロールシート幅等を判別するための5個のシート判別センサP1、P2、P3、P4、P5がL字状に設けられている。
この各シート判別センサP1〜P5は、プランジャーとマイクロスイッチ等から構成される公知の機械式スイッチからなり、該各プランジャーの上端部は、該判別凹部4Bの底面部から位置決め凹部4Aの底面部近傍まで突き出るように設けられている。そして、この各シート判別センサP1〜P5に対して位置決め保持部材20の下端縁部から略直角内側方向に延出されるシート判別部に形成される各センサ孔(不図示)が有るか否かを検出して、そのオン・オフ信号によりロールシートホルダ3に装着されたロールシート3Aの種別、材質、ロールシート幅等を検出するものである。
【0027】
また、挿入口26のホルダ支持部材23側の側端縁部には、載置部29のほぼ搬送方向後端部まで案内部31が形成され、ロールシート3Aを挿入口26まで案内している。ここで、この案内部31の内側端面(図3中、左側端面)は、該ホルダ支持部材23に嵌め込まれる位置決め部材20の内側端面に対向する位置、つまり、同一平面上に位置するように形成されている。これにより、ロールシートホルダ3から引き出されたロールシート3Aの外側の側端縁部は、この案内部31の内側端面に当接して、挿入口26へ案内される。
【0028】
また、図1等に示すように、ホルダ収納部4のホルダ支持部材23と反対側の側端縁部に対向する上カバー5の開口部周縁の内側には、係合軸33が立設されている。この係合軸33は、後述するサーマルヘッド32を上下動させる樹脂性のリンクレバー34を上カバー5に回動可能且つ着脱可能に取り付けるためのものである。すなわち、係合軸33に、上カバー側のリンクレバー端縁部34αに形成された係合孔34Aが嵌め込まれることにより、リンクレバー34は上カバー5に係合される。また、上カバー5には、係合軸33に係合した状態におけるリンクレバー端縁部34α下方に後述するガイドリブ71(本実施形態において幅約5mmである)が立設されている。なお、本実施形態における係合孔34Aは貫通孔である。係合軸33は、リンクレバー34の厚さ(本実施形態において約3mmである)にほぼ等しい高さに形成されている。
【0029】
また、図4に示すように、挿入口26のロールシート搬送方向奥側には、プラテンローラ35が回転自在に軸支されている。また、サーマルヘッド32は押圧バネ36によって上方に付勢されているヘッド支持部材37の上面に固定されている。また、このヘッド支持部材37の搬送方向に対して後側の端縁部は、フレーム38の背面部によって上下方向に揺動可能に支持されている。
【0030】
そして、図5に示すように、リンクレバー34のもう一方の端縁部は、段部13の内側端縁部に形成された断面略縦長四角形の挿通孔55に挿通されるとともに、リリースレバー51の一方の端縁部と回動可能に連結されている。
このリリースレバー51のもう一方の端縁部は、左側フレーム47の係合孔51Aに挿入されたレバー軸50に回動可能に軸支されている。この左側フレーム47にはプラテンローラ35のローラ軸の左側端縁部を軸支されている。また一部切欠面を有するリリース軸48の左側端縁部が軸支され、所定長さ外側方向に突出している。このリリース軸48の左側端縁部には、外周面の約半周部分にギヤが形成されたリリースギヤ49が取り付けられている。そして、リリースレバー51の係合孔51A側の外周面のうち、上カバー5を閉じた際にリリースギヤ49に対向する約半周部分には、リリースギヤ49に歯合する不図示のレバーギヤが形成されている。
また、図4に示すようにこのリリース軸48はその下面で、下部干渉部材57の先端と接している。明示していないが、下部干渉部材57は上記のサーマルヘッド支持部材37の下面部に設けられ側面視略L字形をしている。
【0031】
従って、上記係合軸33と係合孔34Aを介してリンクレバー34が上カバー5に係合している場合において上カバー5を閉じると、リンクレバー34が上カバー5の動きに連動して前側方向に移動し、リリースレバー51がレバー軸50を中心にして左側面視反時計方向に回動される。すると不図示のレバーギヤを介してリリースギヤ49が左側面視時計方向に約180度回転される。これにより、リリース軸48も左側面視時計方向に約180度回転される。すると、下部干渉部材57の先端が、リリース軸48の切欠面の下方に位置することになる。これにより、下部干渉部材57の先端が、リリース軸48によって下方に押下されないため、押圧バネ36によってヘッド支持部材37が上方に回動されて、サーマルヘッド32が、プラテンローラ35にロールシート3Aを押圧付勢して印字可能な状態になる。
【0032】
一方、リンクレバー34が上カバー5に係合している場合に上カバー5を開くと、リンクレバー34が後側方向に移動し、リリースレバー51、不図示のレバーギヤ、リリースギヤ49、リリース軸48がそれぞれ上記と反対方向に回転される。すると、側面視略L字形の下部干渉部材57の先端が、リリース軸48の円筒側面で下方に押下されるため、ヘッド支持部材37が押圧バネ36の付勢力に抗して下方に回動されて、サーマルヘッド32がプラテンローラ35から離間する。するとロールシート3Aを挿入口26から挿通して、プラテンローラ35とサーマルヘッド32との間に挿通可能な状態になる。また、リリースレバー51の下縁部が挿通孔55の外周上端部に当接して、上カバー5の開放角度が規制される。なお、このとき規制される開放角度は、上述した上カバー爪部5C、5C´が本体筐体2の後上端部に当接することにより規制される開放角度よりも小さい。
【0033】
なお、図4に示すように、ロールシートホルダ収納部4の下側には、仕切壁39を介して、外部のパーソナルコンピュータ等からの指令によりサーマルヘッド32等の各機構部を駆動制御する制御回路部が形成されると共に各シート判別センサP1〜P5が電気的に接続された制御基板40が設けられている。また、フレーム38の下方には、仕切壁39を介して、電源回路部が形成された電源基板41が設けられている。
【0034】
また、サーマルヘッド32は、フレキシブルフラットケーブル(FFC)43によって、制御基板40の底面側に設けられたコネクタ44に接続されている。そして、制御基板40及び電源基板41は、底面部にネジ止めされた薄い鋼板製(本実施形態では、厚さ約0.5mmのSPCC等の鋼板製である。)の底面カバー45によって覆われている。
【0035】
次に、上カバーからリンクレバーが外れた後に再係合する機構について図1、図4、図5、図6に基づいて説明する。なお、上カバー5に係合したリンクレバー34は、上カバー側リンクレバー端縁部34αを内側方向(図1中、右下方向である)にリンクレバー34の厚さ以上撓ませることによって外れてしまう。また、上カバー5の開口部を外側に押し広げることによっても外れてしまう。リンクレバー34が上カバー5から外れるのは上カバー5の開放時、すなわち上カバー5と係合するリンクレバー34と連結するリリースレバー51の下縁部が挿通孔55の外周上端部に当接している状態で起こりやすい。リンクレバー34がある程度軽量であることやリリースレバー51とレバー軸50との摩擦により、この当接状態でリンクレバー34が上カバー5から外れてもリリースレバー51は左側面視反時計方向(図5参照)に回動しない。
【0036】
上述したように、上カバー5は、係合軸33に係合した状態におけるリンクレバー端縁部34α下方にガイドリブ71が立設されている。このため、上カバー5から外れたリンクレバー端縁部34αは、ガイドリブ71上面に形成されるガイド面71Aに受けとめられる。上述のようにリリースレバー51は回動しないので、この時のリンクレバー34は、リリースレバー51との連結部を軸に下方(図5中、左下方向である)に回動する。
【0037】
一方、リンクレバー34が外れて開放角度が規制されなくなった上カバー5は更に開き、上述のように、上カバー5の爪部5C、5C´が、本体筐体2の後上端部に当接することにより開ききった状態となる。この状態において、図4に示すように、ガイド面71Aは、左側面視した係合軸33の中心C1及び、ガイド面71A上に受け止められたリンクレバー端縁部34αにおける係合孔34Aの中心C2が、上カバー5の回転中心T(上カバーを本体ヒンジの軸)を中心にした同一の円L上にあるように形成されている。また、ガイド面71Aを側面視してなる線分が、上カバー5の回転中心Tを中心とした円の接線(図4のMで示す円である)となるように、形成されている。
【0038】
また、図6に示すように、係合軸33及びリンクレバー端縁部34αにはそれぞれ面取りがなされている。この面取りは、上述したC1とC2を結ぶ円Lに沿って形成される(図4参照)。図6の拡大図に示すように、係合軸33の面取部と、リンクレバー端縁部34αの面取部は面取り角度が等しい。また面取りは、係合孔34Aにも形成されている。リンクレバー端縁部34αにおいて、外側(図6中、左側である)側面と係合孔34Aでつくる円は、内側側面と係合孔34Aで作る円よりも大きくなっている。
【0039】
図4及び図6に示すように、上記の状態から上カバー5を閉じていくと、ガイド面71Aに受け止められたリンクレバー端縁部34αの下面を左側面視左方向(図4中、X方向である)に、ガイド面71Aがスライドしていく。すなわち、上記ガイド面71Aを側面視してなる線分が上カバー5の回転中心Tを中心とする円の接線となる位置関係により、上カバー5を閉じてガイドリブ71の位置が移動することによるリンクレバー5の位置の変動はわずかとなる。一方、上カバーに設けられた係合軸33は、円Lに沿ってX方向に移動する。すると係合軸33とリンクレバー端縁部34αが接する。
ここで、図6に示すように、係合軸33の面取部とリンクレバー端縁部34αの面取部は対向しており、係合軸33とリンクレバー34αは、各面取部を介して互いと接することになる。このためリンクレバー端縁部34αは係合軸33上に乗り上げ、更にX方向にスライドする。上カバー5を閉じる際にリンクレバー5の位置が少々変動しても、係合孔34Aに面取がなされていることによって係合軸33は容易に係合孔34Aに挿入される。
【0040】
ここで、サーマルヘッド32は印刷手段を構成する。また、ロールシート3Aは印字媒体を構成する。リリースレバー51、レバー軸50、リリースギヤ49、下部干渉部材57、リリース軸48、レバーギヤは圧接・リリース機構を構成する。係合軸33は軸部を構成する。
【0041】
従って、本実施形態に係る印刷装置1では、上カバー5は、リンクレバー端縁部34αが係合する位置下方に形成されるガイドリブ71を備え、ガイドリブ71上面に形成されるガイド面71Aは、上カバー5開放時にリンクレバー端縁部34αが上カバー5から外れた際に、前記リンクレバー34を受け止めて保持する。よって、ユーザーは、リンクレバー34を元通り上カバー5に容易に係合し直すことができる。
【0042】
また、本実施形態に係る印刷装置1では、リンクレバー34が外れても上カバー5は開放角度が規制される。このためガイドリブの位置はリンクレバーが上カバーから外れた後に大きく変動せず、ガイド面はリンクレバーを更に確実に受け止めて保持することができる。
また、リンクレバー34と上カバー5との係合は、リンクレバー端縁部34αに形成される係合孔34Aに上カバーに形成される係合軸33が挿入されることによりなされ、上カバー5を閉塞する際に、リンクレバー端縁部34αはガイド面71A上を滑るとともに、前記軸部が前記係合孔に自動的に挿入される。よって、ユーザーが上カバー5を閉じさえすれば、上カバー5から外れてガイド面71Aに保持されたリンクレバー34は自動的に元通り係合する。
【0043】
また、本実施形態に係る印刷装置1では、係合軸33、係合孔34A又はリンクレバー端縁部34αに面取部が形成され、係合軸33は、これら面取部を介して係合孔34Aに自動的に挿入される。よって、上カバー5を閉塞する際のリンクレバー34の再係合はよりスムーズに行われる。
【0044】
尚、本発明は前記実施形態に限定されることはなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。例えば、本実施形態において係合孔は貫通していたが、係合軸と係合可能ならば貫通しなくてもよい。
また、本実施形態ではガイドリブの位置について、上カバーを開ききった状態においてガイド面を側面視してなる線分が、上カバーの回転中心を中心とする円の接線上となる位置とした。これにより、上カバーを閉じる際のリンクレバー位置の変動がわずかとなるため、リンクレバーは上カバーにスムーズに再係合される。しかし、リンクレバーが外れた後に規制される上カバーの開放角度等によっては、必ずしも接線上とならなければいけない訳ではなく、上記接線とガイド面71Aからなる線分との間には少々の角度のずれがあっても構わない。
また、本実施形態と異なり、トップカバーに係合孔が形成され、リンクレバーに軸部が形成される場合も考えられる。この場合は係合孔に面取りが必要であり軸部にも面取りがなされていることが望ましいが、リンクレバー端縁部には面取りは必要ない。一方、本実施形態のように、トップカバーに軸部が、リンクレバーに係合孔が形成されている場合でも、リンクレバーが外れた後の上カバーの開放規制角度等によっては、係合孔及び軸部の面取りは必ずしも必要ない。
【符号の説明】
【0045】
1 印刷装置
2 本体筐体
3 ロールシートホルダ 3A ロールシート
5 上カバー
5C、5C´ 上カバー後端縁部に設けられた爪部
32 サーマルヘッド
33 係合軸
34 リンクレバー
34A 係合孔
34α 上カバー側リンクレバー端縁部
35 プラテンローラ
51 リリースレバー
71 ガイドリブ
71A ガイド面
T 上カバーの回転中心(ヒンジ軸)
C1 上カバーを開ききった状態において左側面視した係合軸の中心
C2 上カバーを開ききり、リンクレバーがガイドリブ上に保持された状態において左側面視した係合孔の中心
L Tを中心とし、C1及びC2を通る円
M Tを中心とし、ガイド面を左側面視してなる線分を接線とする円

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状に巻回される印字媒体が装着される筐体本体と、
前記筐体本体に開閉自在に取り付けられる上カバーと、
前記筐体本体内に配設され印字媒体に印刷を行う印刷手段と、
前記印刷手段に対向して筐体本体に回動自在に支持されたプラテンローラと、
前記印刷手段を前記プラテンローラに圧接させるとともにプラテンローラから離間させる圧接・リリース機構と、
一端が前記上カバーに係合されるとともに他端が前記圧接・リリース機構に連結され、上カバーの開閉に連動して圧接・リリース機構を作動して前記プラテンローラに対する印刷手段の圧接・離間を行うリンクレバーとを有する印刷装置において、
前記上カバーは、前記リンクレバー一端が係合する位置下方に形成されるガイドリブを備え、
前記ガイドリブ上面に形成されるガイド面は、前記上カバー開放時に前記リンクレバー一端が上カバーから外れた際に、前記リンクレバーを受け止めて保持することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記リンクレバーが外れた前記上カバーは開放角度が規制され、
前記係合は、前記リンクレバー一端と前記上カバーのいずれか一方に形成される係合孔に、他方に形成される軸部が挿入されることによりなされ、
前記リンクレバー一端は前記上カバーを閉塞する際に、前記ガイド面上で滑るとともに、前記軸部が前記係合孔に自動的に挿入されることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記軸部、前記係合孔又は前記リンクレバー一端のいずれかに面取部が形成され、
前記軸部は、前記面取部を介して前記係合孔に自動的に挿入されることを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−764(P2011−764A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144435(P2009−144435)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】