説明

印刷装置

【課題】フレキシブル基板を固定することなく、印刷版とフレキシブル基板との相対位置を高い精度で検出し、これに基づいて高い精度で位置合わせをおこなうことが可能な印刷装置を提供する。
【解決手段】印刷版と前記フレキシブル基板との相対位置を調整するアライメント機構を備える印刷装置であって、前記アライメント機構は、互いに異なる2つ以上の位置に同時に焦点を合わせることが可能な光学系を有し、前記光学系は、前記基板に設けられる第1のマークに合わせられる第1の焦点と、前記印刷版に設けられる第2のマークに合わせられる第2の焦点とを有し、前記第1および第2のマークの両方に同時に焦点を合わせることによって当該第1および第2のマークの位置情報を取得し、前記アライメント機構は、前記光学系によって検出される第1および第2のマークの位置情報に基づいて、前記印刷版と前記基板との位置合わせをおこなう、印刷装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル基板上に所定のパターンでインキを印刷する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回路基板、表示装置、および照明装置などの電気装置はトランジスタや有機EL(Electro Luminescence)素子などを備える。これらトランジスタや有機EL素子の一部を構成する薄膜は種々の方法によって形成することが可能であり、その1つとして印刷法が検討されている。
【0003】
印刷法では、まず印刷版と被印刷物との位置合わせをおこない、つぎに印刷版を被印刷物に押圧することによって被印刷物にインキを転写し、さらにこれを固化することによって薄膜を形成している。この印刷版と被印刷物との位置合わせに関して従来の印刷装置では、被印刷物および印刷版を対向して配置するとともに、これらの上方にカメラを配置し、カメラによる画像情報に基づいて被印刷物と印刷版との位置合わせをおこなっている(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−221548号公報(図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トランジスタや有機EL素子は微細にかつ高い位置精度で形成する必要があり、その一部を構成する薄膜も同様に微細にかつ高い位置精度で形成する必要がある。そのためには印刷版と被印刷物との位置合わせを高い精度でおこなう必要がある。上記従来の技術において被印刷物および印刷版の位置を高い精度で検出するためには、倍率の高い対物レンズを用いて画像情報を取得すればよいが、対物レンズは倍率が高くなるほど焦点深度が浅くなるため、高い倍率の対物レンズを使用する場合には、被印刷物と印刷版とを近接させる必要がある。具体的には被印刷物と印刷版とを数μm〜数十μmの距離に近づける必要がある。しかしながら被印刷物にフレキシブル基板を用いた場合、フレキシブル基板と印刷版とを近接させると、静電気力などによってフレキシブル基板が印刷版に付着することがある。そのために、意図したとおりにはフレキシブル基板と印刷版の位置を検出することができず、結果として高精度な位置合せができないという問題がある。
【0006】
なお印刷版へのフレキシブル基板の付着は、フレキシブル基板を固定することによって防ぐことができるが、この場合、真空吸着などによってフレキシブル基板を固定する方法が考えられる。しかしながらフレキシブル基板を固定した場合、フレキシブル基板が真空吸着口に沿って変形することがあるため、たとえ高精度に位置を検出したとしても、フレキシブル基板上に薄膜を意図したとおりのパターンで形成することができないという問題が生じる。
【0007】
したがって本発明の目的は、フレキシブル基板を固定することなく、印刷版とフレキシブル基板との相対位置を高い精度で検出し、これに基づいて高い精度で位置合わせをおこなうことが可能な印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、フレキシブル基板にインキを転写する印刷版と前記フレキシブル基板との相対位置を調整するアライメント機構を備える印刷装置であって、
前記アライメント機構は、互いに異なる2つ以上の位置に同時に焦点を合わせることが可能な光学系を有し、
前記光学系は、前記印刷版と前記フレキシブル基板とが所定の間隔をあけて対向して配置された状態において、前記フレキシブル基板に設けられる第1のマークに合わせられる第1の焦点と、前記印刷版に設けられる第2のマークに合わせられる第2の焦点とを有し、前記第1および第2のマークの両方に同時に第1および第2の焦点を合わせることによって当該第1および第2のマークの位置情報を取得し、
前記アライメント機構は、前記光学系によって検出される第1および第2のマークの位置情報に基づいて、前記印刷版と前記フレキシブル基板との位置合わせをおこなう、印刷装置に関する。
【0009】
また本発明は、前記光学系は2焦点光学装置によって第1および第2のマークの両方に同時に焦点を合わせる印刷装置に関する。
【0010】
また本発明は、前記光学系は2重焦点光学鏡筒によって第1および第2のマークの両方に同時に焦点を合わせる印刷装置に関する。
【0011】
また本発明は、前記光学系は、第1の焦点までの第1の焦点距離f1と第2の焦点までの第2の焦点距離f2の差の絶対値が300μm以上である、印刷装置に関する。
【0012】
また本発明は、前記光学系は、第1の焦点までの第1の焦点距離f1が可変であって、第1の焦点距離f1の最大値と最小値との差が20μm以上である、印刷装置に関する。
【0013】
また本発明は、前記光学系の分解能が2μm以下である印刷装置に関する。
【発明の効果】
【0014】
フレキシブル基板を固定することなく、印刷版とフレキシブル基板との相対位置を高い精度で検出し、これに基づいて高い精度で位置合わせをおこなうことが可能な印刷装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】印刷装置を模式的に示す平面図である。
【図2】印刷装置を模式的に示す正面図である。
【図3】光学系32の構成を概略的に示す図である。
【図4】〈a〉は第1のマークを示す図であり、〈b〉は第2のマークを示す図であり、〈c〉は第1のマークと第2のマークとを重ね合わせた状態を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の印刷装置はフレキシブル基板にインキを転写する印刷装置であり、いわゆるロールツーロール方式の印刷や枚葉式の印刷などに適用することが可能であるが、以下では図1、2を参照して、枚葉式の印刷に適用される印刷装置について説明する。
【0017】
図1に示す本実施形態の印刷装置1は、フレキシブル基板2にインキを転写する印刷版3と、アライメント機構とを備える。
【0018】
印刷装置1はさらに、フレキシブル基板2を保持する基板保持部10を備える。基板保持部10は、フレキシブル基板2が載置される基板ステージ5と、この基板ステージ5を所定の平面に対して変位可能に支持するアライメントステージ6とを含んで構成される。
【0019】
基板ステージ5の下部には球面摺動部7が設けられる。基板ステージ5は、球面摺動部7をアライメントステージ6に当接させて、アライメントステージ6上に配置される。基板ステージ5は、球面摺動部7がアライメントステージ6上を摺動することにより、所定の平面に対してその傾きが調整される。後述するように、基板ステージ5は、当該基板ステージ5に載置されるフレキシブル基板2が印刷版3と平行になるようにその傾きが調整される。なおアライメントステージ6は、基板ステージ5を固定する固定手段(不図示)をさらに備え、当該固定手段によって基板ステージ5が固定される。固定手段としては、たとえば真空吸着により球面摺動部7を固定する真空吸着装置をあげることができる。
【0020】
印刷装置1は、基板保持部10を移動可能に保持する移動手段(不図示)を備え、当該移動手段によって、たとえば印刷版3に近づく向き、または印刷版3から離間する向きに基板保持部10を移動する。
【0021】
印刷装置1は、印刷版3の周縁部を保持する印刷版フォルダ31をさらに備える。印刷版3は、印刷版フォルダ31に保持された状態で、基板ステージ5上に配置される。基板ステージ5上にはフレキシブル基板2が載置されるため、印刷版3は、フレキシブル基板2に対向して配置される。なお印刷版3とフレキシブル基板2との位置合わせをおこなう際には、印刷版3はフレキシブル基板2とは所定の間隔をあけて配置される。上述したように本実施形態では基板保持部10を移動することにより、印刷版3と基板保持部10との相対距離を調整するが、他の実施形態では印刷版フォルダ31を移動することにより印刷版3と基板保持部10との相対距離を調整してもよい。
【0022】
印刷版3の種類はとくに限定されるわけではないが、図1に示すように印刷版3が光学系32とフレキシブル基板2との間に配置される形態では、印刷版3は、少なくとも後述する第2のマーク34が設けられる部位が光透過性を示す部材によって構成される必要がある。印刷版3には、たとえばゴム版やプラスチック樹脂版、石英版、およびガラス版などが用いられる。ゴム版の材料としては、ポリジメチルシロキサン(PDMS)に代表されるシリコーンゴムなどがあげられる。
【0023】
印刷版3へのインキの塗布は、印刷版3を印刷版フォルダ31にセットする前におこなってもよく、また印刷版3を印刷版フォルダ31にセットした後におこなってもよい。なお印刷装置1は、インク充填機能を備えるインク供給手段をさらに有することが好ましく、このインク供給手段によって、印刷版フォルダ31にセットされた印刷版3にインキを塗布することが好ましい。
【0024】
アライメント機構は、印刷版3と、この印刷版に対して所定の間隔をあけて対向して配置される前記フレキシブル基板2との相対位置を調整する。アライメント機構は、互いに異なる2つ以上の位置に同時に焦点を合わせることが可能な光学系を備える。このような光学系としては2つの位置に同時に焦点を合わせることが可能な2焦点光学装置があげられる。より具体的には、2つの位置に同時に焦点を合わせることが可能な光学系としては、2重焦点光学鏡筒、2光路異焦点光学鏡筒、全焦点光学装置、および共焦点レーザー装置を用いた光学装置などがあげられ、装置コストおよび装置面積の観点からは、2重焦点光学鏡筒、または2光路異焦点光学鏡筒を用いることが好ましい。
【0025】
以下では一例として、2重焦点光学鏡筒を備える光学系について説明する。図3に2重焦点光学鏡筒8と受光装置16とを含む光学系32の構成を概略的に示す。2重焦点光学鏡筒8は、プリズム型の第1および第2のビームスプリッター11a,11bと、第1および第2のリレーレンズ12a,12bと、対物レンズ13と、レンズ14と、第1および第2のミラー15a,15bとを備える。
【0026】
焦点側から対物レンズ13に入射する光は、第1のビームスプリッター11aを通過するときに第1の経路17aと第2の経路17bに分岐する。第1の17aに分岐した光は、第1のミラー15a、第1のリレーレンズ12aを通って第2のビームスプリッター11bに入射する。第2の経路17bに分岐した光は、第2のリレーレンズ12b、第2のミラー15bを通って第2のビームスプリッター11bに入射する。第1の経路17aおよび第2の経路17bを通って第2のビームスプリッター11bに入射した光は、第2のビームスプリッター11bで合流して、レンズ14を通り、受光装置16に入射する。
【0027】
2重焦点光学鏡筒8は、第1のリレーレンズ12aと第2のリレーレンズ12bとに互いに異なるリレーレンズを採用することにより、第1の焦点と第2の焦点とを有する。なお第1の17aおよび第2の経路17bにはそれぞれシャッターが設けられており、第1の17aおよび第2の経路17bのうちのいずれかを閉じることによって、2重焦点光学鏡筒8の焦点を、第1の焦点および第2の焦点のいずれかに選択することができる。
【0028】
受光装置16はたとえばCCD(Charge Coupled Device Image Sensor)イメージセンサなどの固体撮像素子を備えるカメラなどによって実現される。第1の焦点と第2の焦点とを有する2重焦点光学鏡筒8を使用する場合ため、受光装置16はとくに第1の焦点および第2の焦点に位置する画像を拡大した画像に対応する画像情報を取得する。受光装置16によって取得される画像情報は必要に応じて所定の画面に出力される。このように2重焦点光学鏡筒8を用いることにより、とくに第1の焦点および第2の焦点に位置する画像が、鮮明な画像情報として取得される。この画像情報は後述する第1および第2のマークの位置情報を含む。
【0029】
光学系32は、本実施形態ではマウント部21に搭載される。印刷装置1は、マウント部21を移動可能に保持する移動手段を備え、当該移動手段(不図示)によって、マウント部21およびこのマウント部21に搭載される光学系32を所定の位置に移動する。フレキシブル基板2と印刷版3との位置合わせをおこなうさいには、光学系32は、フレキシブル基板2に設けられる第1のマークに第1の焦点が合い、かつ印刷版3に設けられる第2のマークに第2の焦点が合うような距離で、フレキシブル基板2および印刷版3上に配置される。図1に示す本実施形態では、フレキシブル基板2、印刷版3および光学系32がこの順で所定の間隔をあけて配置されるが、他の実施形態では、印刷版、フレキシブル基板および光学系がこの順で配置されていてもよい。
【0030】
図1、2に示す印刷装置1では2つの光学系32が設けられ、2つの離間した位置で、フレキシブル基板2と印刷版3との位置合わせをおこなう。なお1つの光学系32を移動させることによって、2つ以上の離間した位置で、フレキシブル基板2と印刷版3との位置合わせをおこなってもよい。
【0031】
フレキシブル基板2にはあらかじめ第1のマーク33が施されている。また印刷版3にはあらかじめ第2のマーク34が施されている。これら第1および第2のマーク33,34は、フレキシブル基板2および印刷版3の位置を特定するときのマークとして使用されうる形状および配置である限りにおいて、とくにその形状および配置に制限はない。たとえば第1のマーク33と第2のマーク34とは、マークの設けられる領域において、一方のマークは、他方のマークを除く領域に設けられる。なお一方のマークは、他方のマークを除く領域全てに設けられてもよいが、他方のマークおよびこのマークの周縁部を除く領域に設けられてもよい。具体的には、図4に示すように、第2のマーク34として十字形状のものが設けられた場合(図4<a>参照)、第1のマーク33には、十字の形状およびその周縁部を除く領域にマークが施された形状のものが設けられる(図4<b>参照)。図4<c>は、第1のマーク33と第2のマークと34を重ね合わせた状態を表す。図4<c>に示すように、第1のマーク33と第2のマーク34とを重ね合わせた状態では、前述の周縁部の幅だけ空白領域が生じる。たとえば位置合わせは、この空白領域が、第2のマーク34の全周を均等に覆う状態を基準にしておこなうことができる。空白領域に相当する前述の周縁部の幅は、たとえば1μm〜5μmに設定される。
【0032】
つぎに印刷をおこなうさいの印刷装置1の動作について説明する。
【0033】
まずフレキシブル基板2が載置される基板ステージ5の傾きを調整する。すなわち印刷版3に対してフレキシブル基板2が平行に配置されるように基板ステージ5の傾きを調整する。まず原点位置に配置された基板ステージ5上に、ダミーのフレキシブル基板2を載置する。このダミーのフレキシブル基板は、実際にインキが印刷されるフレキシブル基板ではなく、基板ステージ5の傾きを調整するために設けられるものである。基板ステージ5の傾きを調整するさいには真空吸着を解除し、基板ステージ5を変位可能な状態にする。この状態で、基板保持部10を印刷版3に向けて移動し、印刷版3とフレキシブル基板2とを所定の印圧で当接させる。このように印刷版3とフレキシブル基板2とを当接させると、基板ステージ5は、印刷版3の傾きに追従して変位し、印刷版3と平行な状態に調整される。この状態で、真空吸着により基板ステージ5を固定する。その後、基板保持部10を原点位置まで移動する。
【0034】
なおダミーのフレキシブル基板2にはどのような基板を用いてもよいが、印刷版3の汚染を防ぐためには洗浄された基板を用いることが好ましい。また印圧は、基板ステージ5の大きさや重さによりその最適な値は変わるが、少なくとも印刷版3の傾きに追従して基板ステージ5が傾く程度の圧力に設定され、例えば5N〜50Nの印圧が加えられる。
【0035】
なお本実施形態では実際の印刷に使用する印刷版3を使用して基板ステージ5の傾きを調整するが、他の実施形態として、印刷版にも、傾き調整用のダミーの印刷版を用いてもよい。たとえば印刷版3が、傾きを調整するさいの印圧に耐えられない場合に、ダミーの印刷版3として、実際に使用する印刷版よりも厚いものを使用することができる。
【0036】
つぎにフレキシブル基板2と印刷版3との位置合わせをおこなう。この位置合わせの前に、まず印刷版3にインキを供給する。たとえば上述したインク供給手段によって、印刷版3にインキを供給する。また、ダミーのフレキシブル基板2に代えて、実際に印刷を施すフレキシブル基板2を基板ステージ5上に載置する。フレキシブル基板2は当該フレキシブル基板2が適用される装置などによってその材質などが適宜選択されるが、たとえば金属ホイル基板や樹脂基板などが用いられる。樹脂基板の材料としてはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、全芳香族ポリアミド(別名:アラミド)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリオキシメチレン(POM、別名:ポリアセタール)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、および液晶ポリマー(LCP)などがあげられる。
【0037】
つぎに基板保持部10を印刷版3に向けて移動し、印刷版3にフレキシブル基板2を近接させる。フレキシブル基板2と印刷版3との間隔は、第1の焦点f1への第1の焦点距離f1と第1の焦点f1への第2の焦点距離f2の差の絶対値に設定される。なおフレキシブル基板2と印刷版3との間隔とは、フレキシブル基板2と印刷版3との対向する面同士の距離を意味する。
【0038】
フレキシブル基板2と印刷版3との間隔は、狭すぎると印刷版3にフレキシブル基板2が付着するおそれがあるため、300μm以上が好ましく、さらには500μm以上が好ましい。したがって、第1の焦点距離f1と第2の焦点距離f2の差の絶対値が300μm以上である光学系を用いることが好ましい。なおフレキシブル基板2と印刷版3との間隔の上限はとくに設定されるわけではないが、用いる光学系の仕様に依存し、たとえば1mmである。
【0039】
つぎに光学系32を所定の位置に配置する。すなわち第1の焦点が第1のマークに合い、かつ第2のマークに第2の焦点が合う位置に光学系32を配置する。つぎに前記第1および第2のマークの両方に同時に焦点を合わせることによって当該第1および第2のマークの位置情報を取得する。本実施形態では受光装置16によって検出される画像情報から、第1および第2のマークの位置情報を取得する。この位置情報に基づいて、印刷版3とフレキシブル基板2との位置合わせをおこなう。たとえば図4<3>に示すように、第1のマーク33と第2のマーク34との間の空白領域が、第2のマーク34を均等に覆うように、フレキシブル基板2および印刷版3の少なくともいずれか一方を移動する。前述したように空白領域はたとえば1μm〜5μmに設定されるが、これはたとえば印刷パターンの精細度や光学系の分解能によって適宜設定される。高精度に位置合わせをおこなうためには、分解能が2μm以下の光学系32を用いることが好ましい。
【0040】
なおフレキシブル基板2は、基板ステージ5上において、かならずしも基板ステージ5の表面に沿って貼り付くように基板ステージ上に載置されているわけではないため、その表面に凹凸が生じることがある。また、たとえば樹脂性の台のように表面の平坦性が低い台にフレキシブル基板を載置する場合にも、フレキシブル基板の表面に凹凸が生じることがある。更にはフレキシブル基板2の表面自体にも凹凸がある。そのため、たとえ印刷装置の設定に合わせて第1の焦点が第1のマークに合う位置に光学系32を配置したとしても、第1のマークに第1の焦点が合わないことも生じうる。このような場合であっても鮮明な画像情報を取得することを可能にするために、光学系32としては焦点深度の深いものを用いることが好ましい。光学系32の焦点深度は深いほど好ましいが、2μm以上が好ましく、さらには4μm以上が好ましく、さらには10μm以上が好ましい。なお焦点深度を深くする場合、分解能が低くなったり、特殊な装置を必要とするために装置費用が高くなったりするため、光学系の焦点深度はこれらの点を勘案して設定される。
【0041】
さらには、より鮮明な画像情報を取得するために、第1の焦点の距離は可変であって、調整可能であることが好ましい。たとえフレキシブル基板2の表面に凹凸が生じていたとしても、印刷版3、フレキシブル基板2および光学系32の位置を確定した後に、第1のマーク33に焦点が合うように第1の焦点の距離を調整することにより、第1のマーク33に焦点を合わせることができる。第1の焦点の調整可能な範囲、すなわち第1の焦点距離の最大値と最小値との差は20μm以上が好ましい。
【0042】
さらには、光学系は、第1の焦点距離f1と第2の焦点距離f2の差の絶対値が500μm以上1mm以下であり、焦点深度が4μm以上であり、第1の焦点距離f1が可変であって、その最大値と最小値との差が20μm以上であり、かつ対物レンズの倍率が10倍以上であることが好ましい。
【0043】
なお光学系により検出される第1および第2のマークの位置情報に基づいて、フレキシブル基板2および印刷版3の少なくともいずれか一方を移動させるための手段としては、たとえばFV−aligner(株式会社ファースト製)などがあげられる。
【0044】
位置合わせが終わると、つぎに印刷をおこなう。基板保持部10を印刷版3に向けて移動し、印刷版3とフレキシブル基板2とを所定の印圧で当接させ、インキを転写する。その後、印刷版3と基板保持部10とを離間する。これによってフレキシブル基板2上に所定のパターンでインキが印刷され、所定の薄膜が形成される。
【0045】
なお上述の動作を複数回繰り返すことにより、たとえば異なる層を積層したり、異なる層を異なる位置にパターン形成したりすることができる。
【0046】
このようにインキを印刷することによって、有機EL素子、光電変換素子およびトランジスタなどの少なくとも一部を構成する薄膜をパターン形成することができる。このような有機EL素子、光電変換素子およびトランジスタなどをフレキシブル基板上に形成することにより、回路基板、表示装置、照明装置および光電変換装置などを形成することができる。
【0047】
本発明の印刷装置は、印刷版を用いてフレキシブル基板に印刷を施す印刷装置であればどのような種類の印刷装置にも適用することができ、たとえば平版印刷装置、ナノインプリント装置、およびマイクロコンタクトプリント装置などに適用することができる。
【0048】
上述の実施形態では、光学系の例として図3に示す2重焦点光学鏡筒8について説明したが、光学系としては、2重焦点光学鏡筒8に限らず、2つ以上の位置に同時に焦点を合わせることが可能な装置を用いることができ、たとえば2光路異焦点光学鏡筒、全焦点光学装置、および共焦点レーザー装置を用いた光学装置なども用いることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 印刷装置
2 フレキシブル基板
3 印刷版
5 基板ステージ
6 アライメントステージ
7 球面摺動部
8 2重焦点光学鏡筒
9 フレキシブル基板
10 基板保持部
11a,11b ビームスプリッター
12a,12b リレーレンズ
13 対物レンズ
14 レンズ
15a,15b ミラー
16 受光装置
21 マウント部
31 印刷版フォルダ
32 光学系
33 第1のマーク
34 第2のマーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブル基板にインキを転写する印刷版と前記フレキシブル基板との相対位置を調整するアライメント機構を備える印刷装置であって、
前記アライメント機構は、互いに異なる2つ以上の位置に同時に焦点を合わせることが可能な光学系を有し、
前記光学系は、前記印刷版と前記フレキシブル基板とが所定の間隔をあけて対向して配置された状態において、前記フレキシブル基板に設けられる第1のマークに合わせられる第1の焦点と、前記印刷版に設けられる第2のマークに合わせられる第2の焦点とを有し、前記第1および第2のマークの両方に同時に前記第1および第2の焦点を合わせることによって当該第1および第2のマークの位置情報を取得し、
前記アライメント機構は、前記光学系によって取得される第1および第2のマークの位置情報に基づいて、前記印刷版と前記フレキシブル基板との位置合わせをおこなう、印刷装置。
【請求項2】
前記光学系は2焦点光学装置によって第1および第2のマークの両方に同時に焦点を合わせる請求項1記載の印刷装置。
【請求項3】
前記光学系は2重焦点光学鏡筒によって第1および第2のマークの両方に同時に焦点を合わせる請求項1または2記載の印刷装置。
【請求項4】
前記光学系は、前記第1の焦点までの第1の焦点距離f1と前記第2の焦点までの第2の焦点距離f2の差の絶対値が300μm以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項5】
前記光学系は、前記第1の焦点までの第1の焦点距離f1が可変であって、第1の焦点距離f1の最大値と最小値との差が20μm以上である、請求項1〜4のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項6】
前記光学系の分解能が2μm以下である請求項1〜5のいずれかに記載の印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−228872(P2012−228872A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−76380(P2012−76380)
【出願日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】