説明

印字装置

【課題】用紙のばたつきや撓みによる用紙の移動量の検出誤差を抑制し、印字位置の誤差を許容範囲内に抑える。
【解決手段】用紙4の搬送経路に沿ってサーマルヘッド5から所定の距離Bだけ離れた位置に第2センサ8が配置され、距離Bより長い所定の距離Aだけサーマルヘッド5から離れた位置に第1センサ7が配置され、ステッピングモータ9の回転速度に応じて変化する用紙4の搬送速度の大小および用紙ピッチの大小に応じて、第1センサ7および第2センサ8のいずれか一方の検出信号を選択して用紙4の送り量を計測することにより、用紙のばたつきや撓み等による用紙の移動量の検出誤差を抑制し、印字位置が許容範囲を超えてずれることを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印字装置に関し、特に、用紙の搬送位置を検出する2つのセンサを有する印字装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用紙の種類に応じて、用紙の送り量を検出するセンサを用紙の幅方向に移動させるようにしていた。しかしながら、センサを用紙の幅方向に移動させるためには、この移動を許容するスペースをプリンタ本体内に確保する必要があった。このため、プリンタを小型化する場合の障害となり易いという問題があった。また、センサを移動させるための駆動機構が必要となり、プリンタの構成が複雑になるという問題があった。
そこで、2つのセンサを用紙の幅方向に所定の間隔だけずらして配置し、用紙の種類に応じていずれか一方のセンサのみを選択して使用することにより、センサを移動させることなく、各種用紙に対応させることができるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平3−128265号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、背景技術では、2つのセンサは、用紙の搬送方向に対してはほぼ同一位置に配置されている。従って、これらの2つのセンサを用いて用紙のばたつきや撓み等による移動量或いは用紙位置の検出誤差を抑制することはできないという問題があった。
【0005】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、用紙の搬送経路に沿って所定の間隔だけずらして2つのセンサを配置し、適宜いずれか一方のセンサを選択して使用することにより、用紙のばたつきや撓み等による用紙の移動量や用紙位置の検出誤差を抑制し、印字位置が許容範囲を超えてずれることを抑制することができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の印字装置は、複数のラベルからなる所定の用紙に所定の印字データを印字する印字手段と、印字手段に用紙を搬送する搬送手段と、印字手段から用紙に沿って第1の距離だけ離れた地点に設けられ、搬送手段によって搬送される用紙のラベルの位置を検出する第1の検出手段と、印字手段から用紙に沿って第1の距離より短い第2の距離だけ離れた地点に設けられ、搬送手段によって搬送される用紙のラベルの位置を検出する第2の検出手段と、用紙の搬送速度に応じて、第1の検出手段および第2の検出手段のいずれか一方による検出結果を用いて、ラベルの位置を認識し、印字手段がラベルに対して印字を行うタイミングを制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
また、請求項1に記載の印字装置において、制御手段は、印字手段がラベルに対して印字を行うタイミングを、用紙の搬送速度と、ラベルのピッチに応じて制御するようにすることができる。
また、請求項1に記載の印字装置において、用紙の搬送速度とラベルのピッチの組み合わせに応じて、第1の検出手段および第2の検出手段のいずれの検出結果を用いるべきかを示すデータを記憶する記憶手段をさらに備え、制御手段は、データに基づいて印字手段がラベルに対して印字を行うタイミングを制御するようにすることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の印字装置によれば、用紙の搬送経路に沿って所定の間隔だけずらして2つのセンサを配置し、用紙の搬送速度等に応じて適宜いずれか一方のセンサの検出結果を選択して使用するようにしたので、用紙のばたつきや撓み等による用紙の移動量や用紙位置の検出誤差を抑制し、印字位置が許容範囲を超えてずれることを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、本発明の一実施の形態としてのサーマルプリンタ100の概略構成図である。同図に示すように、サーマルプリンタ100は、台紙2上にラベル1が剥離可能に貼付された用紙4の上記ラベル1に所定の印字データを印字するサーマルヘッド5と、用紙4をサーマルヘッド5との間で挟持しつつサーマルヘッド5側に押圧して回転し、所定の搬送方向に搬送するプラテンローラ6と、サーマルヘッド5の印字位置から所定の距離Aだけ離れた位置に配置され、台紙2の裏面(ラベル1が貼付されていない面)に対して所定の光を照射し、その反射光を受光して台紙2の裏面に形成された黒色の矩形形状等の識別マークを検出し、検出信号を出力する反射型の第1センサ7と、第1センサ7から所定の距離B(距離Aより短い)だけ離れた位置に配置され、台紙2の裏面に対して所定の光を照射し、その反射光を受光して台紙2の裏面に形成された黒色の矩形形状等の識別マークを検出し、検出信号を出力する反射型の第2センサ8と、後述する制御部10の制御により回転駆動され、プラテンローラ6に対して図示しない歯車等を介して回転駆動力を伝達するステッピングモータ9と、各部を制御するとともに各種処理を実行する制御部10等から構成されている。第1センサ7および第2センサ8は、台紙2の裏面に対して光を照射し、その反射光を受光し、受光した光の強度(単位時間あたりの受光量)に対応する電圧値を有する検出信号を出力するようになっている。なお、サーマルヘッド5、第2センサ8、第1センサ7は、用紙4の搬送経路に沿ってこの順で配置されている。即ち、サーマルヘッド5に近い方を上流側とすると、第2センサ8が上流側に配置され、第1センサ7が下流側に配置されている。
【0009】
図2は、図1の制御部10の構成例を示すブロック図である。同図に示すように、制御部10は、後述するROM(Read Only Memory)12に記憶されている制御プログラムに従って各種処理を実行するとともに、各部を制御するCPU(Central Processing Unit)11と、制御プログラムや各種設定データ等を記憶するROM12と、CPU11が各種処理を実行する上で必要となる各種データを一時的に記憶したり、印字データが展開されるRAM13と、パーソナルコンピュータ等の外部機器との間で行われる印字データ等の各種データやコマンド等の送受信を制御する外部インタフェース14と、各種ボタン等で構成され、所定のコマンドやデータを入力するときに操作される操作部16と、操作部16において操作されたボタンに対応するコードをバス25を介してCPU11に供給するインタフェース15と、CPU11より供給された表示データに対応する表示信号を表示部18に供給するインタフェース17と、インタフェース17より供給された表示信号に従って表示データに対応する文字や記号等を表示する表示部18と、CPU11の制御下、ステッピングモータ9に対して制御信号を供給するモータ制御部19と、CPU11の制御下、CPU11より供給された印字データに対応する制御信号をサーマルヘッド5に供給する印字制御部21と、CPU11の制御下、第1センサ7に対して制御信号を供給し、駆動制御するとともに、第1センサ7から供給される検出信号に対応する検出データをバス25を介してCPU11に供給する第1センサ制御部22と、CPU11の制御下、第2センサ8に対して制御信号を供給し、駆動制御するとともに、第2センサ8から供給される検出信号に対応する検出データをバス25を介してCPU11に供給する第2センサ制御部23と、図3に示すテーブル等の電源がオフされても保持すべき各種データや各種ユーザ設定データ等を記憶するフラッシュROM24等から構成されている。
【0010】
上述したように、ステッピングモータ9は、モータ制御部19より供給された制御信号に従って駆動され、所定の角速度で回転するようになっている。また、サーマルヘッド5は、印字制御部21より供給された制御信号に従って所定の印字データに対応する文字や図形等を用紙4のラベル1に印字するようになっている。
【0011】
用紙4は、プラテンローラ6によってサーマルヘッド5に押圧されながらプラテンローラ6の回転によって生じる摩擦力により所定の方向に搬送される。しかしながら、プラテンローラ6は回転と停止を繰り返すため、用紙がばたついたり撓んだりすることがある。そのため、サーマルヘッド5の近傍では用紙4の送り量や用紙位置を正確に検出することができない場合がある。この傾向は搬送速度が速くなるほど強まり、また、用紙ピッチが短いほど強まる。
【0012】
一方、サーマルヘッド5により近い位置(用紙4の搬送経路に沿ってサーマルヘッド5の印字位置から距離Bだけ離れた位置)に配置された第2センサ8の方が、サーマルヘッド5からより遠い位置(用紙4の搬送経路に沿ってサーマルヘッド5の印字位置から距離Aだけ離れた位置)に配置された第1センサ7より、検出信号の精度が高い。これは、目視では、用紙4にばたつきや撓みがない場合でも、多少は撓んでいる場合があるため、サーマルヘッド5に近ければ近いほど、用紙4の移動量や用紙位置をより正確に検出できるからである。従って、可能な限り第2センサ8の検出信号を使用することが望ましい。
【0013】
そこで、用紙4の用紙ピッチの大小および搬送速度の大小に応じて、サーマルヘッド5から所定の距離Aだけ離れた位置に配置された第1センサ7、およびサーマルヘッド5から距離Aより短い所定の距離Bだけ離れた位置に配置された第2センサ8のいずれかの検出信号を選択的に用いて、用紙4の送り量や用紙位置を検出するようにする。
【0014】
図3は、用紙4の用紙ピッチの大小および搬送速度の大小に応じて第1センサ7および第2センサ8のいずれの検出信号を選択すべきかを判断するための基準となるデータの集合からなるテーブルである。この例では、用紙ピッチが9ミリメートル(mm)、16mm、25mm、および37mmの各用紙4において、用紙4の搬送速度が50mm/秒以下の場合、75mm/秒以下の場合、100mm/秒以下のそれぞれの場合に、第1センサ7、および第2センサ8のいずれの検出信号を選択すべきかが示されている。
【0015】
図3の記号「○」は、サーマルヘッド5に近い位置(距離B)に配置された第2センサ8の検出信号を選択的に用いることを示しており、記号「×」は、サーマルヘッド5から遠い位置(距離A)に配置された第1センサ7の検出信号を選択的に用いることを示している。
【0016】
即ち、搬送速度が50mm/秒以下の場合、用紙ピッチの大小に拘わらず、第2センサ8の検出信号が選択される。これは、搬送速度が比較的低速の場合には、用紙4の搬送中および停止時に発生するばたつきや撓みが比較的少ないからである。
【0017】
また、搬送速度が50mm/秒より速く、75mm/秒以下の場合、用紙ピッチが25mm以上のときには第2センサ8の検出信号が選択され、用紙ピッチが25mmより小さいときには第1センサ7の検出信号が選択される。
【0018】
さらに、搬送速度が75mm/秒より速く、100mm/秒以下の場合、用紙ピッチが37mm以上のときには第2センサ8の検出信号が用いられ、用紙ピッチが37mmより小さいときには第1センサ7の検出信号が選択される。
【0019】
図4は、用紙4をラベル1が貼付された側(表面)から見たときの図である。用紙ピッチは、ラベル1の先端(または後端)から、隣接する次のラベル1の先端(または後端)までの距離で表される。
【0020】
図5は、用紙4をラベル1が貼付されていない側(裏面)から見たときの図である。用紙4の送り量や用紙位置を検出するときに用いられる識別マーク3は、台紙2の表面に貼付されているラベル1の先端(または後端)の位置に対応する台紙2の裏面に印刷等により形成されている。識別マーク3の形状は例えば矩形形状とされ、色は例えば黒とされる。この識別マーク3は、第1センサ7および第2センサ8によって検出される。
【0021】
図6は、制御部10の制御により、用紙ピッチおよび搬送速度に応じて第1センサ7および第2センサ8のいずれかの検出信号が選択される手順を示すフローチャートである。
【0022】
まず最初に、ステップS1において、CPU11により、用紙4の搬送速度が50mm/秒以下であるか否かが判定される。用紙4の搬送速度は、ステッピングモータ9の回転速度から推定することができる。
【0023】
その結果、用紙4の搬送速度が50mm/秒以下であると判定された場合、フラッシュROM24等に予め記憶されている、或いはユーザによって操作部16が操作されて入力され、設定された図3に示したようなテーブルを構成する各データに基づき、ステップS7に進み、第2センサ8の検出信号が選択される。一方、用紙4の搬送速度が50mm/秒より速いと判定された場合、ステップS2に進む。
【0024】
ステップS2においては、用紙4の搬送速度が75mm/秒以下であるか否かが判定される。その結果、用紙4の搬送速度が75mm/秒以下であると判定された場合、ステップS4に進む。一方、用紙4の搬送速度が75mm/秒以下より速いと判定された場合、ステップS3に進む。
【0025】
ステップS4においては、用紙ピッチが25mm以上であるか否かが判定される。その結果、用紙ピッチが25mm以上であると判定された場合、ステップS7に進み、第2センサ8の検出信号が選択される。一方、ステップS4において用紙ピッチが25mmより小さいと判定された場合、ステップS6に進み、第1センサ7の検出信号が選択される。
【0026】
また、ステップS3においては、用紙4の搬送速度が100mm/秒以下であるか否かが判定される。その結果、用紙4の搬送速度が100mm/秒以下であると判定された場合、ステップS5に進む。一方、用紙4の搬送速度が100mm/秒より大きいと判定された場合、ステップS6に進み、第1センサ7の検出信号が選択される。
【0027】
ステップS5においては、用紙ピッチが37mm以上であるか否かが判定される。その結果、用紙ピッチが37mm以上であると判定された場合、ステップS7に進み、第2センサ8の検出信号が選択される。一方、用紙ピッチが37mmより小さいと判定された場合、ステップS6に進み、第1センサ7の検出信号が選択される。
【0028】
ステップS7における処理、またはステップS6における処理が終了すると、ステップS8に進み、サーマルプリンタ100の図示しない確定ボタンが操作されたか否かが判定される。確定ボタンが操作されたと判定された場合、処理を終了し、その後、選択されたセンサと搬送速度で印字発行の処理が実行されることになる。一方、確定ボタンが操作されていないと判定された場合、ステップS1に戻り、ステップS1以降の処理が繰り返し実行される。
【0029】
以上説明したように、用紙4の用紙ピッチの大小および搬送速度の大小に応じて、第1センサ7および第2センサ8のうちの検出誤差が少ない方の検出信号が選択され、選択された検出信号に基づいて用紙4の送り量や用紙位置が求められ、サーマルヘッド5による印字データの印字タイミングが制御される。これにより、用紙4のラベル1上での印字位置の誤差を抑制することができる。
【0030】
なお、上記実施の形態の構成及び動作は例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、例えば、サーマルプリンタのみならず、他の様々な印刷装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明が適用されるサーマルプリンタの概略構成例を示す図である。
【図2】図1の制御部の構成例を示すブロック図である。
【図3】用紙ピッチおよび搬送速度に応じて第1センサおよび第2センサのいずれの検出信号を選択すべきかを示すデータの集合からなるテーブルである。
【図4】用紙の例を示す図である。
【図5】台紙の裏面に形成された識別マークの例を示す図である。
【図6】用紙ピッチの大小および搬送速度の大小に応じて制御部が第1センサおよび第2センサのいずれかの検出信号を選択する手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0033】
1 ラベル
2 台紙
3 識別マーク
4 用紙
5 サーマルヘッド
6 プラテンローラ
7 第1センサ
8 第2センサ
9 ステッピングモータ
10 制御部
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 外部インタフェース
15,17 インタフェース
16 操作部
18 表示部
19 モータ制御部
21 印字制御部
22 第1センサ制御部
23 第2センサ制御部
24 フラッシュROM
25 バス
100 サーマルプリンタ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のラベルからなる所定の用紙に所定の印字データを印字する印字手段と、
前記印字手段に前記用紙を搬送する搬送手段と、
前記印字手段から前記用紙に沿って第1の距離だけ離れた地点に設けられ、前記搬送手段によって搬送される前記用紙の前記ラベルの位置を検出する第1の検出手段と、
前記印字手段から前記用紙に沿って第1の距離より短い第2の距離だけ離れた地点に設けられ、前記搬送手段によって搬送される前記用紙の前記ラベルの位置を検出する第2の検出手段と、
前記用紙の搬送速度に応じて、前記第1の検出手段および前記第2の検出手段のいずれか一方による検出結果を用いて、前記ラベルの位置を認識し、前記印字手段が前記ラベルに対して印字を行うタイミングを制御する制御手段と
を備えることを特徴とする印字装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記印字手段が前記ラベルに対して印字を行うタイミングを、前記用紙の搬送速度と、前記ラベルのピッチに応じて制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の印字装置。
【請求項3】
前記用紙の搬送速度と前記ラベルのピッチの組み合わせに応じて、前記第1の検出手段および前記第2の検出手段のいずれの検出結果を用いるべきかを示すデータを記憶する記憶手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記データに基づいて前記印字手段が前記ラベルに対して印字を行うタイミングを制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の印字装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−55604(P2008−55604A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−231428(P2006−231428)
【出願日】平成18年8月29日(2006.8.29)
【出願人】(000130581)株式会社サトー (1,153)
【Fターム(参考)】