説明

危険な装置のスイッチを確実に切るための安全スイッチ、特に緊急停止スイッチ

【課題】危険な装置のスイッチを確実に切る安全スイッチにおいて、作動要素の位置を確実に検出する。
【解決手段】第1位置と少なくとも1つの第2位置との間で移動されうる作動要素38を有し、該位置の少なくとも1つにおける作動要素38を検出する検出器要素がある。検出器要素は、個々のトランスポンダ識別を持つトランスポンダ44とトランスポンダ識別を読み出すために設計された読取ユニット48とを含む。トランスポンダ44および読取ユニット48は、読取ユニット48が、作動要素38の第1位置ではあるが第2位置ではないトランスポンダ44を読み出すことができるようにして、互いに対向して配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、危険な装置のスイッチを確実に切る安全スイッチ、特に緊急停止スイッチに関し、第1位置と少なくとも1つの第2位置との間で可動な機械操作される作動要素と、該位置の少なくとも1つにおける作動要素を検出する検出器要素とを含む安全スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
そのような安全スイッチは、例えば下記特許文献1から公知である。
この種類の先行技術の安全スイッチは、自動設備において、危険な状況が生じる場合に該設備を安全状態にするためにしばしば用いられる。これは、例えば、緊急停止スイッチが手動操作されるとすぐ設備のスイッチが切られるということがあるかもしれない。しかしながら、応用によっては、安全な不活性位置が採られることあるいは設備の部分的な機能が阻止されることも可能である。手動操作される緊急停止スイッチ(「マッシュルームボタン」)の他に、一般的な種類の安全スイッチの例は、手動イネーブルボタンならびにレバー、ローラー、ヒンジ等を用いて機械操作される位置およびリミットスイッチである。この種類の安全スイッチの例は、下記特許文献2、下記特許文献3、下記特許文献4、または下記特許文献5によって開示されている。
【0003】
この種類の先行技術の安全スイッチの全ては、機械操作される作動要素を有するという共通の特性を共有し、そのそれぞれの位置は、検出器要素を用いてモニターされる。実施において、検出器要素は、今までは電子機械切換要素として通常形成されており、その接点は、可動作動要素によって開閉される。安全スイッチについて、これらの場合いわゆる正開配置が通常用いられ、例えば閉位置で付着する接点の場合のように、安全スイッチ自体に誤動作がある場合でも、安全スイッチの開放を保証する。安全スイッチ、特に一般的な種類の緊急停止スイッチを、長年の経験のためかつ多量に生じるため、かなり安価にかつ確実に製造することができる。
【0004】
しかしながら、実施において、安全スイッチの機能信頼性における「信用」は、それにもかかわらず制限される。例えば、自動車工業用製造設備の場合、全ての緊急停止スイッチは、それらの機能信頼性を検査するために、少なくとも年1度または2度手動操作されなければならないという必要条件がある。多数の緊急停止スイッチを持つ広範囲にわたる大設備の場合、これらの機能検査が、ある量の時間、したがってある量の努力を要するということを理解するのは容易である。したがって、緊急停止スイッチのための実際低い生産コストとは別に、緊急停止スイッチが用いられる設備の耐用寿命にわたって、規則的な機能検査のための運転費がある。
【0005】
下記特許文献6は、可動作動要素が、多数のフォーク状光バリアを用いて評価されるべきである電気制御機械用安全スイッチを開示している。代替的に、誘導性、容量性、または感圧性の、例えば圧電性の位置検知装置もまた提案されているが、さらなる説明はしない。これらの対策の目的は、未許可切換シーケンスの防止のための複雑な機構を避け、かつ同時に高機能信頼性を達成することである。
【0006】
下記特許文献7は、力または圧力センサを有し、その結果所望のまたは意図された動作状態とパニック状態とを区別することが可能である電気機械用安全スイッチを開示している。
さらに、下記特許文献8は、機械、設備等のコンピュータ支援制御装置におけるアクセス許可を検査するように意図されているキー操作スイッチを開示している。機械キーの代わりに、トランスポンダの使用は、アクセス許可を確立するよう想定されている。
【0007】
最後に述べたキー操作スイッチはまた、下記非特許文献1に示されている。この領域における技術開発の一般的な見通しとして、動作されると、固有のコードを、割り当てられた受信機に無線データ通信によって送信する送信機を、イネーブルスイッチに組み込むという考えをここでも述べ、それによってイネーブルスイッチのための従来はしばしば面倒だったケーブルを、不必要にすることができる。
【0008】
さらに、下記特許文献9または下記特許文献10は、接触なく動作する信号送信機(すなわちそれ自体、二部品の非機械操作される信号送信機)を開示しており、トランスポンダの原理でも動作する。これらの非接触信号送信機は、とりわけガードドアのモニターのために用いられるべきである。
【特許文献1】独国特許発明第38 41 458 号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第199 02 910 号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第199 02 919 号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第199 37 947 号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第34 30 090 号明細書
【特許文献6】独国特許出願公開第199 09 968 号明細書
【特許文献7】独国特許出願公開第100 23 199 号明細書
【特許文献8】独国特許出願公開第100 37 003 号明細書
【特許文献9】欧州特許出願公開第0 229 247 号明細書
【特許文献10】欧州特許第0 968 567 号明細書
【非特許文献1】「安全切換装置(Sicherheitsschaltgerate)」バーラッグ・モデルン・インダストリー(Verlag Moderne Industrie)第232巻、シリーズ「ビブリオテック・デル・テクニック(Bibliotek der Technik)」、ISBN 3−478−93234−3
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この背景と対照して、本発明の目的は、初めに述べた種類の安全スイッチを提供することであり、その機能を、それによって外部機能検査のための努力を減じるために、外部操作なく試験できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、初めに述べた、個々のトランスポンダ識別を有するトランスポンダを含み、かつトランスポンダ識別を読み出すために設計された読取ユニットを含む安全スイッチの検出器要素によって達成される。該トランスポンダおよび該読取ユニットは、作動要素の第1位置ではあるがその第2位置ではないトランスポンダを読み出すことができるようにして互いに対して配置される。
【0011】
よって、該新規安全スイッチおよび、一般的に配置されているトランスポンダは、読取ユニットから空間的に分離する。トランスポンダ識別を読み出すために、読取ユニットおよびトランスポンダは、互いに、すなわち少なくとも1つの電磁信号を用いて無線通信する。トランスポンダ、読取ユニット、および可動作動要素の配置は、作動要素が第1位置から第2位置に移動されれば、無線通信が断絶する(妨げられる)ように選択される。言い換えると、ここで、作動要素が第1位置にあれば、無線通信のみ可能である。読取ユニットがトランスポンダ識別を読み出すことができるかどうかによって、次に作動要素の位置を決定することができる。
【0012】
そのような配置を用いて、機械操作される、いわば一部品安全スイッチ(接触なく動作する信号送信機、すなわち本来2部品の信号送信機は除外して)の場合でも、作動要素の位置、よって動作状態を確実にモニターすることが驚くほど可能である。このことは、そのような安全スイッチの場合において、作動要素によって移動する際に走行される短い距離のため、最初に期待されるべきではない。しかしながら、一部品の機械操作される安全スイッチの場合において、トランスポンダが、動作状態を評価するために有利に用いられることも可能であるという実際の試験が現在示されている。
【0013】
個々のトランスポンダ識別のため、トランスポンダの使用は、例えば、フォーク状光バリアおよび他の予め公知の検出器要素より大きな、操作および誤検出に対する免疫性を既に本質的に有する。トランスポンダと読取ユニットとの間の通信はまた、絶えず繰り返されるより動的な工程であるので、安全スイッチ内の任意の誤動作は自動的に検出される。
さらに、トランスポンダの場合には、該トランスポンダと読取ユニットとの間の通信を、機械操作されなければならない作動要素なく、意図的に中断することも容易に可能である。したがって、新規安全スイッチを、その機能について、「電子」態様で試験することができ、それによりこれまでの慣習的な手動機能検査を除去するかあるいは排除さえすることが少なくとも基本的に可能となる。
【0014】
このように、上述の目的は、完全に達成される。
新規の安全スイッチは、さらに、接点を持つ検出器要素の使用なしですますことが可能であるという利点があり、その理由のために新規の安全スイッチは、完全に摩耗なく動作することができる。他方、特に既存の安全スイッチとの両立性を維持するために、接点を持つ切換要素を、トランスポンダと共に、検出器要素として用いることも依然として可能である。さらに、この場合多様な冗長性が生じることもあり、再度機能信頼性の増加が可能になる。
【0015】
さらなる利点として、新規の安全スイッチを、提案されたトランスポンダ識別によるより高レベルの評価ユニットにかなり容易に無線接続することができる。これにより、特に広範囲にわたる設備の場合に、ケーブル量が減じられる。
新規の安全スイッチの好ましい改良では、第1の位置は、作動要素の不活性位置を表す。
【0016】
このことは、能動動的トランスポンダ信号の故障が、モニターされた設備のスイッチを結果として自動的に切ることになるので、緊急停止スイッチとして使用するのが特に有利である。新規の安全スイッチの評価および設置が、結果として簡略化される。
さらなる改良では、トランスポンダは、可動作動要素上に配置される。トランスポンダは、好ましくは、ここでは受動トランスポンダとして形成される。
【0017】
受動トランスポンダ、すなわち、独自のエネルギー源なく操作可能なものは、これまで既に商業的に入手可能になっている。それらは、例えば自動二輪車用または工場式農場における個々の動物の識別用イモビライザーで用いられる。受動トランスポンダは、それによって大量に生じるため、低コスト部品として利用できる。受動トランスポンダを、例えば接着された可動作動要素に非常に容易に固着することができ、それにより低コストの生産が可能となる。さらに、トランスポンダは、作動要素と共に必然的に移動するので、この改良では、作動要素の位置を非常に確実に決定することができる。
【0018】
さらなる改良では、新規の安全スイッチは、電磁信号の選択的な遮蔽のための第1遮蔽要素を有し、該遮蔽要素およびトランスポンダおよび/または読取ユニットは、作動要素に依存して、互いに対して可動である。
そのような遮蔽要素を用いて、トランスポンダと読取ユニットとの間の無線通信が基づく電磁波の伝播経路は、選択的に制限されうる。結果として、この改良では、新規の安全スイッチの応答は、より制御されるようになり、そのことは、機能信頼性のさらなる増加の一因となる。さらに、そのような遮蔽要素を用いるため、作動要素の検出可能切換経路を、著しく減じることができ、その結果互いに区別されねばならない第1および第2位置は、空間的に非常に接近していることも可能である。結果として、新規の安全スイッチの全体的な大きさを減じることができる。さらに、より大きな感度により、より速くかつより信頼性もある機能がもたらされる。
【0019】
さらなる改良では、第1遮蔽要素は、作動要素の第1位置では、トランスポンダと読取ユニットとの間の、ほぼまっすぐな接続線上にある隙間を有する。
この改良では、第1遮蔽要素は、ピンホール絞りとしてある程度動作し、それを通してトランスポンダと読取ユニットとの間の通信が起こる。三つの要素の1つだけ、すなわちトランスポンダおよび/または読取ユニットおよび/または遮蔽要素の隙間のいずれかが、その他のものに対して変位され、該通信が、非常に素早く破壊する。隙間(「ピンホール絞り(pinhole diaphragm)」)を任意に寸法入れすることによって、新規の安全スイッチの切換挙動を、非常に正確に実現することができる。さらに、この改良では、トランスポンダおよび/または読取ユニットを、遮蔽要素に大きくあるいは完全にもカプセル封入することが可能であり、それによって新規の安全スイッチの機能信頼性がさらに増す。
【0020】
さらなる改良では、第1遮蔽要素は、作動要素上に配置される。よって、第1遮蔽要素を、例えば、作動要素にしっかりと固着することができ、その結果それは、作動要素の移動に追従する。さらに、第1遮蔽要素はまた、作動要素の一部となることができ、すなわち作動要素はまた、第1遮蔽要素と同時に作動する。
遮蔽要素および作動要素のこの種類の結合は、トランスポンダと読取ユニットとの間の通信の、作動要素を変位させることによる破壊を達成する簡単な方法である。作動要素は、この場合、ある程度、開いた状態ではあるが閉じた状態ではない、トランスポンダと読取ユニットとの間の通信経路を取り除くだけであるゲートの役目を果たす。改良は、トランスポンダと読取ユニットの両方を、それらが安全スイッチの適所に固定されるように配置することができ、そのため実際の実施における自由度が増す。特に、応答の最適化が、トランスポンダと読取ユニットとの間の距離を選択することによって、結果として可能である。
【0021】
さらなる改良では、第1遮蔽要素は、作動要素の移動方向に対してほぼ横に走行し、かつ作動要素が通過すべき開口部を有する部分を有する。
この改良では、安全スイッチが動作されると、作動要素は、第1遮蔽要素によって遮蔽された領域に入る。第1遮蔽要素は、作動要素に対比して支持部すなわちハウジングの壁にしっかりと固着されうるので、遮蔽要素を、比較的大きい表面積で形成することができる。有利なことに、遮蔽要素は、このように最大機能信頼性に関して最適化されうる。
【0022】
さらなる改良では、第1遮蔽要素は、電磁信号の画定された送信のための信号経路を有する。
この改良は、構成の後の段階において、考えられる不所望の送信経路を遮蔽要素によって塞ぐよりむしろ、トランスポンダと読取ユニットとの間の通信のためだけに1つの画定された送信経路を提供するという考えに基づいている。1つの経路は、例えば波長の形で実現されてもよく、それから送信信号は、選択された点でのみ現れうる。この対策により、特に高い機能信頼性が達成できるようになる。
【0023】
さらなる改良では、トランスポンダは、第2遮蔽要素に、特に一方側で開いている遮蔽ブッシュに配置される。
またさらなる改良では、読取ユニットは、第3遮蔽要素に配置される受信コイルを有する。
これらの2つの改良により、トランスポンダおよび読取ユニットの送信および受信特性がさらに狭い範囲に集中されるので、新規の安全スイッチの機能信頼性はさらに増加することができるようになる。特に、この対策により、通信が、それぞれの送信特性のサイドローブを経て生じるのを防止することができる。新規の安全スイッチの応答の正確さは、さらに増加される。
【0024】
さらなる改良では、遮蔽要素は、好ましくはアルミニウム、銅、銀、金またはこれらの組合せからなる、導電性の、非強磁性遮蔽要素である。
これの代替として、電磁波は、公知であるように、例えばフェライト等、磁気的に効果的な遮蔽要素によっても影響されうる。しかしながら、特定化された意図された使用のためここで生じる典型的な距離および周波数では、磁気的に大きな無効遮蔽要素がより効果的であることが分ってきた。したがって、遮蔽はより正確に起こりうる。機能信頼性は、さらに増加される。
【0025】
さらなる改良では、新規の安全スイッチは、切換要素を有し、それを用いて、トランスポンダ識別からの読み出しは、選択的に抑制されうる。切換要素は、好ましくは、読取ユニットの領域に配置される。
そのような切換要素を用いて、試験機能を、簡単な方法で実現することができる。特に、より高レベルの制御装置は、新規の安全スイッチが適切に応答するかどうかを検査するために、トランスポンダ識別からの読み出しを周期的に抑制することができる。これにより、新規の安全スイッチを持つ安全回路を、1つのチャンネルの実現として形成することが許可され、その結果より少ない部品およびより小さい設置空間が必要とされる。さらに、従来の安全スイッチの場合に実行される手動検査は、この改良においては自動態様で実行されることがあり、それにより、新規の安全スイッチが、指定の標準および利得容認に従うことがより容易になる。
【0026】
さらなる改良では、安全スイッチは、圧力センサを有し、それを用いて作動要素にかかる動作圧力が検出されうる。
そのような圧力センサでは、新規の安全スイッチの動作を、作動要素の位置の評価に関して、冗長態様で検出することができる。よって、機能信頼性は、さらに増加される。さらに、そのような圧力センサは、作動要素が、例えば割り込むか、さもないと移動が妨げられる場合には、新たな安全スイッチの検出動作の可能性を提供する。圧力センサでは、新規の安全スイッチはまた、機械操作をそこなうことがある、例えば塗装設備において、高レベルの汚染が生じる領域で用いることができる。
【0027】
さらなる改良では、作動要素は、非腐食材料から作成されかつ/または無塵態様でカプセル封入される。
これらの改良はまた、作動要素の不動性を妨げる一因となり、それにより誤動作の対応する除外が可能である。手動機能検査の頻度を、さらに減じることができる。
上記の特性および以下でなお説明されるべき特性を、本発明の範囲から逸脱することなく、それぞれ特定化された組合せだけでなく、他の組合せであるいはそのままで用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
図1は、新規安全スイッチの実施形態にかかる、自動態様で動作している設備を示す。この設備は、全体として、参照番号10で表記される。
設備10は、ここでは、一例として、ロボット12を含む。しかしながら、本発明は、これに制限されず、かつ機械操作される安全スイッチが用いられる他の設備で等しく用いられうる。
【0029】
ロボット12は、ここでは、それ自体公知の方法で、2つの接触器14,16を経て電源18に接続される。接触器14,16の常開接点は、冗長断路を実現するために、互いに直列に位置している。接触器14,16は、安全切換装置20またはいくつかの他の好適な安全制御器によって活性化(activate)される。本発明の実施形態によれば、緊急停止スイッチ22は、入力側で安全切換装置20に接続される。緊急停止スイッチとしての使用は、本発明の好ましい実施形態である。しかしながら、本発明は、これに制限されず、かつ他の機械操作される(一部品)安全スイッチの場合に等しく用いられうる。
【0030】
緊急停止スイッチ22は、接続部24を経て安全切換装置20に出力信号を供給し、かつそれから第2接続部26を経て、試験パルス30を持つ制御信号28を受信する。したがって、安全切換装置20は、以下でより詳細に説明するが、緊急停止スイッチ22をその機能について検査する可能性を有する。緊急停止スイッチ22への接続部24に基づいて、安全切換装置20が、未規定または不確定状態を検出すれば、または緊急停止スイッチ22が手動で動作され、かつ対応する信号が、接続部24を経て安全切換装置20に送られれば、安全切換装置20は、接触器14,16を経てロボット12のスイッチを切る。
【0031】
図2および図3では、緊急停止スイッチ22は、その2つの起こり得る動作状態で表される。図2は、不活性すなわち非動作状態の緊急停止スイッチ22を示す。図3は、動作された後の緊急停止スイッチ22を示す。緊急停止スイッチ22の動作ボタン32は、操作されると、矢印34の方向に下方に押される。移動に関連する走行量は、参照番号36によって図3に示される。
【0032】
緊急停止スイッチ22は、動作ボタン32にしっかりと接続される作動要素38を有する。作動要素38は、その一部がスイッチハウジング42に固着されるコンセント40に、矢印34の方向に可動に装着される。作動要素38の自由端には、商業的に入手可能な受動トランスポンダ44が配置され、その機能モードは、図4に基づき以下でなおより詳細に説明する。好ましい実施形態によれば、トランスポンダ44は、ここでは、トランスポンダ44を管状に囲みかつ一方側(すなわち図2および図3の左側)のみで開く遮蔽ブッシュ46内で接着される。
【0033】
トランスポンダ44を読み出す読取ユニットは、参照番号48で表記される。読取ユニット48は、技術用語では、タグリーダとも呼ばれ、かつそのトランスポンダ44に面する側に、受信コイル50を有し、それによってトランスポンダ44と無線通信する。
読取ユニット48を活性化しかつその出力信号を受信する評価論理回路は、参照番号52で表記される。機能ブロックの態様でここに表される方法からの変更として、受信コイル50を持つ読取ユニット48および評価論理回路52はまた、組み合わされた回路で接続されてもよい。
【0034】
接続部24,26(図1)を接続する接続ソケットは、参照番号54で表記される。これの代替として、緊急停止スイッチ22は、トランスポンダの独創的な使用のため、安全切換装置20または対応する安全制御器と無線通信することもあるだろう。
ここでスリーブの態様で作動要素38を囲む遮蔽要素は、参照番号56で表記される。遮蔽要素56は、緊急停止スイッチ22の不活性状態では、読取ユニット48(より正確には、その受信コイル50)とトランスポンダ44との間の仮想接続線60上にあるようにして配置される隙間58を有する。結果として、緊急停止スイッチ22の不活性状態では、トランスポンダ44と読取ユニット48との間での無線通信が可能であり、図2では参照番号62で示される。
【0035】
他方、作動要素38が、図3に示される位置にあれば、トランスポンダ44、受信コイル50および隙間58は、もはやまっすぐな接続線上にはない。したがって、遮蔽要素56のため、読取ユニット48とトランスポンダ44との間には通信が生じない。通信の断絶は、評価論理回路52によって検出され、かつ接続部24を経て安全切換装置20に報告される。次に、この装置は、ロボット12のスイッチを切る。
【0036】
図2および図3に表される実施形態では、作動要素38は、トランスポンダ44と共に、固定読取ユニット48および固定遮蔽要素56に対して移動する。これの代替として、読取ユニット48および/または遮蔽要素56は、作動要素38を用いて移動されうるだろう。
図2および図3に示される実施形態では、スリーブ状の遮蔽要素56の正味内径は、作動要素38の外形よりほんのわずかに大きい。結果として、作動要素38が図3に示される位置にあるとき、遮蔽ブッシュ56は、遮蔽ブッシュ46と共に、トランスポンダ44の実質的に閉じたシールドを形成する。遮蔽ブッシュ46および遮蔽要素56は、好ましくは、電導材料、ここでは特に銅またはアルミニムから少なくとも部分的に生成される。
【0037】
修正された実施形態では、動作ボタン32に配置される圧力センサは、図2では参照番号62で表記される。圧力センサ62の出力信号は、検出動作のための第2経路を提供するために、評価論理回路52に送られる。
図4では、トランスポンダ44および読取ユニット48が、簡略された電子回路図に表される。同じ参照番号は、それぞれこれまでと同じ要素を表記する。
【0038】
トランスポンダ44は、それ自体公知の方法では、送信および受信コイル66、および個々のトランスポンダ識別68が記憶されるメモリも有する。読取ユニット48は、トランスポンダ識別68を読み出す商業的に入手可能な集積回路である。無線通信については、読取ユニット48は、上記受信コイル50およびそれに平行に配置されるコンデンサ70を含む共振回路に接続される。好ましい実施形態では、コイル50とコンデンサ70との間に配置されるのはトランジスタ72であり、それを用いて共振回路の電源が切られ、それによって機能的に動作不能なものになる。トランジスタ72は、試験要素の役目を果たし、それを用いてトランスポンダ識別68からの読み出しは、「電子的に」抑制されうる。図示の配置の代替として、トランジスタ72はまた、参照番号70’によって示される、コイル50およびコンデンサ70を含む発振回路を読取ユニット48から分離するようにして接続されうる。
【0039】
それ自体公知の方法では、読取部48は、共振回路50,70を用いて、電磁呼掛け信号(interrogation signal)を発生する。トランスポンダ44が、共振回路50,70に十分近いなら、信号によって活性化され、かつ個々のトランスポンダ識別68を情報として持っている応答信号を送る。参照番号74によって図4に示されるこの応答信号は、共振回路50,70を用いて受信され、かつ評価のための読取ユニット48が利用できるようになる。読取ユニット58は、個々のトランスポンダ識別68を応答信号74から読み出し、かつ接続部76を経てマイクロプロセッサ78を利用できるようにする。マイクロプロセッサ78は、内部メモリ80内に、比較値を有し、それに基づき、読み出したトランスポンダ識別68が、期待値に一致するかどうかを検査することができる。この場合には、マイクロプロセッサ78は、増幅回路82を経て、出力86で、対応する出力信号78を出力する。出力信号84は、接続部24を経て、安全切換装置22に送られる。
【0040】
通常通り受動トランスポンダの場合には、この配置でのトランスポンダ識別68の読み出しは、トランスポンダ44が読取ユニット48の送受信回路に十分近い限りにおいてのみ機能する。それ以内でトランスポンダ識別68からの読み出しが可能である最大距離は、参照番号88によって図4に示される。
新規の安全スイッチ22の場合には、トランスポンダ44およびコイル50とコンデンサ70とを含む送受信回路は、作動要素38の第2位置(図3)での最大距離88を越えないようにして、互いに対して配置される。比較すると、作動要素38が第1位置にある(図2)場合、トランスポンダ44は、読取ユニット48に十分近い。作動要素38が、第1位置から第2位置へ変位されると、トランスポンダ44と読出部48との間の通信が断絶する。このことは、マイクロプロセッサ78によって検出され、かつ接続部24を経て安全切換装置22に報告される。
【0041】
図4では、それを経て安全切換装置20がトランジスタ72をオンおよびオフに切り替えることができる試験入力は、参照番号90で表記される。トランジスタ72のスイッチが切られると、応答信号74は、もはや発生されず、かつ読取ユニット48に達することができないので、このことは、トランスポンダ44が読取ユニット48の領域から除去された状況に対応する。よって、マイクロプロセッサ78は、まさに作動要素38が除去された場合のように応答しなければならない。そのようにしなければ、安全切換装置22は、このことを出力信号84に基づき検出することができ、かつ予防対策としてロボット12のスイッチを切ることができる。
【0042】
好ましい実施形態では、緊急停止スイッチ22は、電圧制御器回路92を経てここで提供されるそれ自体の供給電圧を有する。これにより、新規の緊急停止スイッチ22を異なる外部供給電圧で動作することができ、広範囲にわたる設備の中でその設備を簡略化する。
図5および図6では、新規の安全スイッチのさらなる実施形態は、全体として参照番号100で表記される。簡略化のために、再度、安全スイッチ100は、緊急停止スイッチとしてここで表される。同じ参照番号は、前と同じ要素を表記する。
【0043】
図2および図3からのスリーブ状遮蔽要素56の代わりに、安全スイッチ100は、ここではほぼ板の形である遮蔽要素102を有する。これは、作動要素38の移動方向34に関してほぼ横に配置され、かつ作動要素38が通過すべき開口部104を有する。トランスポンダ44は、作動要素38の自由端に再度固定される。
図5に表される不活性位置では、トランスポンダ44は、遮蔽要素102の上方にあり、そこには読取ユニット48(ここでは図示せず)および受信コイル50を持つ評価論理回路52も配置される。この位置では、トランスポンダ44と読取ユニット48との間で通信が起こることがあり、すなわち読取ユニット48は、個々のトランスポンダ識別をトランスポンダ44から周期的に読み出す。
【0044】
他方、作動要素38が動作した後、トランスポンダ44は、遮蔽要素102の下にある。しかも、開口部104は、次に作動要素38によって閉じられる。結果として、トランスポンダ44は、次に読取ユニット48から遮蔽される。通信は起こりえない(参照番号106によって示される。明確にするために、この位置では、信号は受動トランスポンダ44によって発せられないが、その代わり、受信コイル50は呼掛けパルスを送信し続けることを指摘すべきである)。ここに示される表示の代替として、遮蔽要素102はまた、ここではカップの形で形成されてもよく、第2位置の作動要素38は、対応するカップに「入る」。
【0045】
図7および図8では、新規の安全スイッチのさらなる実施形態は、全体として参照番号120で表記される。この実施形態では、受信コイル50を持つ読取ユニットおよびトランスポンダ44の両方は、安全スイッチ120のハウジング42の適所に固定されるように配置される。トランスポンダ44および受信コイル50の両方は、この場合、それぞれ遮蔽ブッシュ46および122において接着される。トランスポンダ44および受信コイル50は、全く反対にあり、作動要素38の自由端は、その間に残っている空間に入ることができる。図7に示される非動作位置では、作動要素38は、トランスポンダ44と読取ユニット48との間の通信を妨害しない。よって、読取ユニット48は、トランスポンダ識別を周期的に読み出すことができる。他方、図8に示される位置では、作動要素38の自由端は、2つの遮蔽ブッシュ46,122を閉じ、それによってトランスポンダ44と読取ユニット48との間の通信が中断される。
【0046】
図9および図10は、新規の安全スイッチのさらなる実施形態を示す。この場合、トランスポンダ44および読取ユニット48の受信コイル50の両方は、可動作動要素38上に配置される。遮蔽要素126は、信号経路128を提供するようにして形成され、その上で読取ユニットおよびトランスポンダは、作動要素38が図9に示される位置にあるとき、互いに通信することができる。比較すると、作動要素38がその第2位置へ変位されるなら、トランスポンダ44および読取ユニットの受信コイル50は、もはや信号経路28に接続されない。したがって、通信は再度断絶し、それに対応して評価論理52によって検出される。
【0047】
さらなる実施形態では、そのような経路は、原則として、トランスポンダおよび/または読取ユニットが作動要素とは別に配置される際に使用されてもよい。作動要素が変位される際に断絶する送信のための1つの画定された信号経路を提供する原理は、それによって保持される。
図7、図8、図9、および図10からの実施形態では、作動要素38自体が、電磁信号が通過するのが妨げられるかあるいは少なくとも減衰されるようにして形成される場合好ましい。トランスポンダと読取ユニットとの間の通信のために用いられる周波数によっては、それぞれの周波数で十分な減衰を有するさまざまな材料は、ここでは当業者に公知である。商業的に入手可能なトランスポンダにとって典型的である125kHzの周波数では、アルミニウム、銅、銀、または金等の電導性であるが非磁性の材料が好ましくは用いられる。例えば、商業的に入手可能な印刷回路基板の銅クラッドを、よい結果のために用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】新規の安全スイッチの実施形態が用いられている、自動態様で動作する設備の簡略化された表示を示す図である。
【図2】新規の安全スイッチの実施形態を、2つの異なる動作位置で示す図である。
【図3】新規の安全スイッチの実施形態を、2つの異なる動作位置で示す図である。
【図4】図2および図3からの安全スイッチの場合のトランスポンダおよび読取ユニットの簡略化された回路図である。
【図5】新規の安全スイッチのさらなる実施形態を、2つの異なる動作状態で示す図である。
【図6】新規の安全スイッチのさらなる実施形態を、2つの異なる動作状態で示す図である。
【図7】新規の安全スイッチのさらなる実施形態を、2つの異なる動作状態で示す図である。
【図8】新規の安全スイッチのさらなる実施形態を、2つの異なる動作状態で示す図である。
【図9】新規の安全スイッチのさらなる実施形態のための簡略化された基本表示を示す図である。
【図10】新規の安全スイッチのさらなる実施形態のための簡略化された基本表示を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
危険な装置(12)のスイッチを確実に切る安全スイッチ、特に緊急停止スイッチであって、
第1位置と少なくとも1つの第2位置との間で可動な機械操作される作動要素(38)と、
前記両位置の少なくとも1つにおける前記作動要素(38)を検出する検出器要素とを含み、
前記検出器要素は、個々のトランスポンダ識別(68)を有するトランスポンダ(44)を含み、かつ前記トランスポンダ識別(68)を読み出すために設計された読取ユニット(48)を含み、前記トランスポンダ(44)および前記読取部(48)は、前記読取ユニット(48)が、前記作動要素(38)の前記第1位置ではあるがその第2位置ではない前記トランスポンダ(44)を読み出すことができるようにして、互いに対して配置され、前記第1位置は、好ましくは前記作動要素の不活性位置であることを特徴とする、安全スイッチ。
【請求項2】
前記トランスポンダ(44)は、前記可動作動要素(38)上に配置されることを特徴とする、請求項1に記載の安全スイッチ。
【請求項3】
電磁信号(62)の前記選択遮蔽のための第1遮蔽要素(56;102;126)を有し、前記遮蔽要素(56;102;126)および前記トランスポンダ(44)および/または前記読取ユニット(48)は、前記作動要素(38)に依存して、互いに対して可動である、請求項1または2に記載の安全スイッチ。
【請求項4】
前記第1遮蔽要素(56)は、前記作動要素(38)の前記第1位置では、前記トランスポンダ(44)と前記読取ユニット(48)との間の、ほぼまっすぐな接続線(60)上にある隙間を有することを特徴とする、請求項3に記載の安全スイッチ。
【請求項5】
前記第1遮蔽要素は、前記作動要素上に配置されることを特徴とする、請求項3または4に記載の安全スイッチ。
【請求項6】
前記第1遮蔽要素(102)は、前記作動要素(38)の移動方向(34)に対してほぼ横に走行する部分を有し、かつ前記作動要素(38)が通過すべき開口部(104)を有することを特徴とする、請求項3または4に記載の安全スイッチ。
【請求項7】
前記第1遮蔽要素(126)は、電磁信号の前記規定された送信のための信号経路(128)を有することを特徴とする、請求項3または4に記載の安全スイッチ。
【請求項8】
前記トランスポンダ(44)は、第2遮蔽要素(46)に、好ましくは一方側で開いている遮蔽ブッシュに配置されることを特徴とする、請求項1ないし7のいずれかに記載の安全スイッチ。
【請求項9】
前記読取ユニット(48)は、第3遮蔽要素(122)に配置される受信コイル(50)を有することを特徴とする、請求項1ないし8のいずれかに記載の安全スイッチ。
【請求項10】
前記遮蔽要素(46;56;102;122;126)は、好ましくはアルミニウム、銅、銀、金またはこれらの組合せからなる、導電性の、非強磁性遮蔽要素であることを特徴とする、請求項3ないし9のいずれかに記載の安全スイッチ。
【請求項11】
好ましくは前記読取ユニット(48)の前記領域に配置される切換要素(72)を特徴とし、その切換要素を用いて、前記トランスポンダ識別(68)からの読み出しは、選択的に抑制されうる、請求項1ないし10のいずれかに記載の安全スイッチ。
【請求項12】
前記作動要素(38)にかかる作業圧力を検出する圧力センサ(62)を特徴とする、請求項1ないし11のいずれかに記載の安全スイッチ。
【請求項13】
前記作動要素は、非腐蝕性材料から作成されかつ/または無塵態様でカプセル封入されることを特徴とする、請求項1ないし12のいずれかに記載の安全スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2007−508667(P2007−508667A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534601(P2006−534601)
【出願日】平成16年8月13日(2004.8.13)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009081
【国際公開番号】WO2005/048453
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(501493037)ピルツ ゲーエムベーハー アンド コー.カーゲー (49)
【Fターム(参考)】