説明

即湯システム

【課題】即湯のために湯水の循環運転を行う際においても、ヒートポンプにおける沸き上げ時の熱効率の低下を防止した即湯システムを提供する。
【解決手段】即湯システム1は、給湯配管7から分岐して貯湯タンク2へ戻る循環配管8を有し、この循環配管8に設置した循環ポンプ4を用いて即湯循環運転を行う。循環配管8の途中には、循環配管8内を通る湯水の熱量を利用する中温水利用機器3を備える。この構成により、即湯システム1では、中温水利用機器3で中温水の熱量を利用して、温度が低くなった水を貯湯タンク2に戻すことができ、ヒートポンプ9における沸き上げ時の熱効率の低下を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、即湯を行うことができる即湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、出湯時に即時に湯を出湯する即湯を行うことができる即湯システムがある。この即湯システムにおいては、出湯端末と貯湯タンクとを接続する配管内に貯湯タンク内の湯を循環させることにより、配管内の湯水温度を高温に保つようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図6に示すように、この種の即湯システム60は、給湯配管61の出湯端末側の給湯水栓の近くの部位と貯湯タンク62とを接続する循環配管63を備える。この即湯システム60では、給湯配管61の内部の水温が低下したときに循環ポンプ64を動作させて、循環配管63内にヒートポンプ65を用いて沸き上げられ貯湯タンク62に貯められた湯水を循環させる。このため、即湯システム60では、長時間湯の使用がない場合でもすぐに湯を出湯端末から出湯させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−157551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の即湯システムにおいては、即湯のため中温水の循環運転をするため、配管内に残っている中温水が貯湯タンクに直接戻る。このため、貯湯タンクに貯められる中温水が増加し、ヒートポンプは貯湯タンクから循環する中温水から湯を沸き上げることとなり、沸き上げ時における熱効率が低下してしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、即湯のために湯水の循環運転を行う際においても、ヒートポンプにおける沸き上げ時の熱効率の低下を防止した即湯システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、給湯配管から分岐して貯湯タンクへ戻る循環配管を有し、この循環配管に設置した循環ポンプを用いて即湯循環運転を行う即湯システムにおいて、前記循環配管の途中に、当該循環配管内を通る湯水の熱量を利用する熱利用機器を備えることを特徴とするものである。
【0008】
また、前記即湯システムにおいて、前記熱利用機器は、融雪に利用することができる融雪パネルであることが好ましい。
【0009】
また、前記即湯システムにおいて、前記熱利用機器は、暖房の熱源に利用することができる温水輻射パネルであることが好ましい。
【0010】
また、前記即湯システムにおいて、前記熱利用機器は、前記貯湯タンクに放熱が可能な熱交換器であることが好ましい。
【0011】
また、前記即湯システムにおいて、前記熱利用機器は、凍結防止用に前記循環配管に接触、又は隣接して配設される他の配管であることが好ましい。
【0012】
また、前記即湯システムにおいて、前記循環配管の途中に、前記熱利用機器を利用する経路と、前記熱使用機器を利用しない経路との切替えが可能な切替弁がさらに設けられることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る即湯システムによれば、循環配管の途中に湯水の熱を利用する熱利用機器を設け、湯水を冷やしてから貯湯タンクに戻すため、即湯のための湯水の循環運転を行う際にも、ヒートポンプにおける沸き上げ時の熱効率の低下を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る即湯システムの構成図。
【図2】実施形態の変形例1に係る即湯システムの構成図。
【図3】実施形態の変形例2に係る即湯システムの構成図。
【図4】実施形態の変形例3に係る即湯システムの構成図。
【図5】実施形態の変形例4に係る即湯システムの構成図。
【図6】従来の即湯システムの構成図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態に係る即湯システムに関して図面を参照して説明する。
本実施形態に係る即湯システム1は、湯水を貯える貯湯タンク2、中温水利用機器(熱利用機器)3、即湯用の循環ポンプ4、開閉弁5、及び逆止弁6を備えている。この即湯システム1は、図1の点線の矢印に示すように貯湯タンク2、給湯配管7、及びこの給湯配管7から分岐して貯湯タンク2へ戻る循環配管8から成る湯水の循環経路を有し、循環配管8に設置した循環ポンプ4を用いて即湯循環運転を行う機能を有している。この機能により、給湯配管7及び循環配管8内の湯水を所定温度以上に保ち、出湯端末からすぐに湯を出湯できる。
【0016】
貯湯タンク2は、熱源機であるヒートポンプ9に給水すると共に、断熱材を用いてヒートポンプ9で加熱された湯を保温しながら貯留する機能を有する。貯湯タンク2内の上層部から高温水を給湯配管7に出湯し、給水管からの水と混合し、所定温度にして出湯端末へ給湯している。なお、貯湯タンク2の上層部から出湯が行なわれると、貯湯タンク2の下層部にその出湯分だけ水が供給される。また、貯湯タンク2には、半導体などの電気抵抗が温度で変化することを利用して温度を測る温度センサが側壁の上部から下部にかけて複数備えられている。
【0017】
中温水利用機器3は、循環配管8を循環する中温水を熱源として利用する機器であり、例えば、融雪パネルや床暖房用の温水輻射パネルである。この中温水利用機器3において循環する湯水の熱を利用することで中温水の温度を下げてから貯湯タンク2に戻すことが可能となる。
【0018】
循環ポンプ4は、循環配管8内の湯水を循環させるためのポンプであり、この循環ポンプ4が駆動されることにより、循環経路中の水を貯湯タンク2の中の比較的温度が高い湯水により暖めることができる。開閉弁5は、回転させて循環配管8の流路を開閉する弁体である。逆止弁6は、循環配管8に取り付けられ、湯水が貯湯タンク2から循環配管8を経由して出湯端末に流れることを防止する。
【0019】
ヒートポンプ(加熱源)9は、自然冷媒(CO2)を用いた熱交換式の電気給湯器であり、大気の熱を自然冷媒に移し、その熱で貯湯タンク2から循環する水を加熱する。ヒートポンプ9は、加熱した湯を貯湯タンク2に送るポンプを有し、加熱された湯は貯湯タンク2に貯められる。
【0020】
本構成により、中温水利用機器3は、即湯のため循環運転される中温水の熱量を利用でき、即湯システム1では、中温水利用機器3で熱源として利用された後の十分温度が低下した水を貯湯タンク2に戻すことができる。従って、即湯システム1では、即湯のために中温水の循環運転を行っても貯湯タンク2に中温水が貯まることを防止してヒートポンプ9における水の沸き上げ時の熱効率を良くすることができる。
【0021】
(第1の変形例)
本実施形態の第1の変形例について、図2を参照して説明する。本変形例1に係る即湯システム1は、循環配管8の途中に中温水利用機器を利用する経路、又は利用しない経路に切替える切替弁10と、融雪パネル11とを備えている。なお、上記実施形態に係る即湯システム1と同様の構成に関しては同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0022】
本変形例1では、冬季などの融雪が必要な時期には、融雪パネル11を利用できる経路に切替弁10を切り替えることで、融雪パネル11の融雪用熱源として循環配管8内の中温水を利用し、温度が低下した水を貯湯タンク2に戻すことができる。一方、夏場など、融雪パネル11への熱供給が不要な時期には、融雪パネル11を利用しない経路に切替弁10を切替える。
【0023】
この構成により、本変形例1では、即湯により循環運転される中温水を融雪パネル11の熱源として利用して、十分温度が低下した水を貯湯タンク2に戻すことで、ヒートポンプ9における沸き上げ時の熱効率の低下を防止できる。
【0024】
(第2の変形例)
本実施形態の第2の変形例について、図3を参照して説明する。本変形例2に係る即湯システム1は、循環配管8の途中に中温水利用機器を利用する経路、又は利用しない経路に切替える切替弁10と、暖房用熱源となる温水輻射パネル12とを備えている。そして、床暖房などが必要な時期には、温水輻射パネル12を利用できる経路に切替弁10を切り替えて循環される中温水を利用し、十分温度が低下した水を貯湯タンク2に戻すことができる。一方、温水輻射パネル12への熱供給が不要な場合には、温水輻射パネル12を利用しない経路に切替弁10を切替える。
【0025】
この構成により、本変形例2では、即湯により循環運転される中温水を温水輻射パネル12の熱源として利用して、十分温度が低下した水を貯湯タンク2に戻すことで、ヒートポンプ9における沸き上げ時の熱効率の低下を防止できる。
【0026】
(第3の変形例)
本実施形態の第3の変形例について、図4を参照して説明する。本変形例3に係る即湯システム1は、循環配管8の途中に熱交換器13を備えている。この熱交換器13は、循環配管8を通る中温水から得た熱量を貯湯タンク2へ放熱する機能を有し、貯湯タンク2内の雰囲気温度を上昇させて、貯湯タンク2の保温性能を向上させることができる。
【0027】
(第4の変形例)
本実施形態の第4の変形例について、図5を参照して説明する。本変形例4に係る即湯システム1は、循環配管8を、給水管や混合給湯管などの貯湯タンク2内の凍結の恐れのある配管14に接触、又は隣接させて配設する。この構成により、本変形例4では、循環配管8を通る中温水の熱を、凍結の虞のある他の配管14に伝熱させて、配管14内を通る水が凍結することを防止できる。また。貯湯タンク2内において配管14の凍結防止用ヒータ装備などが不要となり低コスト化を図ることができる。
【0028】
なお、本発明は、上記実施形態及び変形例の構成に限られず、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、中温水利用機器3は、融雪パネル11や温水輻射パネル12などに限定されず、家庭園芸用の地熱発生機器とすることも考えられる。
【符号の説明】
【0029】
1 即湯システム
2 貯湯タンク
3 中温水利用機器(熱利用機器)
4 循環ポンプ
5 開閉弁
6 逆止弁
7 給湯配管
8 循環配管
9 ヒートポンプ
10 切替弁
11 融雪パネル
12 温水輻射パネル
13 熱交換器
14 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給湯配管から分岐して貯湯タンクへ戻る循環配管を有し、この循環配管に設置した循環ポンプを用いて即湯循環運転を行う即湯システムにおいて、
前記循環配管の途中に、当該循環配管内を通る湯水の熱量を利用する熱利用機器を備えることを特徴とする即湯システム。
【請求項2】
前記熱利用機器は、融雪に利用することができる融雪パネルであることを特徴とする請求項1記載の即湯システム。
【請求項3】
前記熱利用機器は、暖房の熱源に利用することができる温水輻射パネルであることを特徴とする請求項1記載の即湯システム。
【請求項4】
前記熱利用機器は、前記貯湯タンクに放熱が可能な熱交換器であることを特徴とする請求項1記載の即湯システム。
【請求項5】
前記熱利用機器は、凍結防止用に前記循環配管に接触、又は隣接して配設される他の配管であることを特徴とする請求項1記載の即湯システム。
【請求項6】
前記循環配管の途中に、前記熱利用機器を利用する経路と、前記熱使用機器を利用しない経路との切替えが可能な切替弁がさらに設けられることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の即湯システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−32079(P2012−32079A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171748(P2010−171748)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】