説明

原子力プラントの放水路放射線モニタ装置

【課題】本発明は、原子力プラントの放水路に設けられた放射線モニタ装置の大型化を抑制することを目的とする。
【解決手段】本発明は、原子力プラントから排出される海水が流れる放水路に設けられた、原子力プラントの放水路放射線モニタ装置であって、海水中の放射線を検出する検出器と、端部に検出器を収容し、海水面より下側に検出器を配置する円筒状の第1保護管と、第1保護管の外周側に設けられ、海水面より下側の第1保護管を覆う第2保護管と、第2保護管を固定構造物に固定する支持構造体とを備えることを特徴とする。
【効果】本発明によれば、原子力プラントの放水路に設けられた放射線モニタ装置の大型化を抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力プラントの放水路放射線モニタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントは、海水を取り入れて各種設備を冷却し、使用後の海水を放水路から海へ放出している。このとき、海水を放出する放水路の側壁には、放射線係数率を測定する水中機器として、放水路放射線モニタ装置を取り付けている。
【0003】
ここで、特開2001−151474号公報では、浮力を利用した水中機器の昇降装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−151474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この昇降装置は、水中機器に働く重力よりも大きな浮力を発生または外力を利用することによって、水中機器を移動させるための装置である。そのため、特許文献1には放水路放射線モニタ装置の設置構造は何ら開示されていない。
【0006】
また、放水路放射線モニタ装置を保護する保護管の全長は約7〜10mと長尺になる。そのため、放水路放射線モニタ装置の強度を確保するためには、装置を大型化する必要があった。
【0007】
そこで本発明は、原子力プラントの放水路に設けられた放射線モニタ装置の大型化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、海水中の放射線を検出する検出器と、端部に検出器を収容し、海水面より下側に検出器を配置する円筒状の第1保護管と、第1保護管の外周側に設けられ、海水面より下側の第1保護管を覆う第2保護管と、第2保護管を固定構造物に固定する支持構造体とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、原子力プラントの放水路に設けられた放射線モニタ装置の大型化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】放水路放射線モニタ装置の実施例である。
【図2】放水路放射線モニタ装置の比較例である。
【図3】本実施例の第2保護管の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
一般的に、測定器または発信機などの各種機器を水中で保持する場合、その周囲を保護する保護管および支持する支持構造体が付属する。また、支持構造体は、脱落や損傷が生じないよう十分な機械的強度を備えており、且つ、固定構造物に結合している。このとき、各種水中機器および支持構造体の合計質量が大きくなるほど、支持構造体を強固にする必要がある。そのため、支持構造体は過大もしくは過重量物となる傾向にある。
【0012】
また、水中の温度や電磁波などを測定するために機器を水中に設ける場合、その測定方法の種類により、測定器本体または測定器の周囲を水中に開放する必要がある。
【0013】
以下の実施例では、原子力プラントにおける放水路放射線モニタ装置を挙げる。原子力プラントは、各種設備を冷却するために取り入れた海水を放水路から海へ放出している。このとき、原子力プラントから放出される海水の放射線係数率を測定するため、放水路放射線モニタ装置が放水路に取り付けられている。
【0014】
図2は、放水路放射線モニタ装置の比較例を示す。比較例のモニタ装置は、検出器4を保護する第1保護管5と、この第1保護管5の外周側に設けられた第2保護管8,第2保護管を固定する支持構造体9を備える。そして、円筒状の第2保護管8は、海水中で開口している。そのため、第1保護管5の先端部は海水中で露出した構造である。
【0015】
比較例の場合、測定結果の正確性を重視しているため、第1保護管に直接海水が接し、端部がむき出しになっている。そのため、第1保護管の周囲には、海洋性生物が多数付着し、保守点検時にそれら海洋性生物の除去作業が発生してしまう。
【0016】
また、水中機器が海水腐食によって汚損する可能性があるため、耐食性を有した保護管が必要となる。但し、保護管の肉厚は7.1mm程度である。そのため、ステンレス鋼等の耐食性を有する金属材料を保護管に使用した場合、そのステンレス鋼が大きな遮蔽材となる。
【0017】
従って、主蒸気放射線モニタ装置に使用する保護管と同様に、放水路放射線モニタ装置にも遮蔽効果の小さいアルミ材等を使用する必要があった。なお、主蒸気放射線モニタ装置は、原子力発電所の蒸気タービンに供給される蒸気の放射線濃度を連続的に監視するシステムである。主蒸気放射線モニタ装置の保護管は、全長約2〜3mの構造物であり、監視計器の周囲を機械的・化学的に保護する金属管である。この主蒸気放射線モニタ保護管は、耐食アルミ材を用いている。
【0018】
一方、放水路放射線モニタ装置の保護管全長は約7〜10mと長尺である。十分な強度を担保するために、アルミ材(保護管)の厚みを大きくすると、アルミ材の厚さを7.1mmよりも大きくする必要があり、製造コスト面や施工性が低下する。また、放水路放射線モニタ保護管にアルミ材を適用する場合、モニタ装置の自重が大きくなり、強度不足の問題が生じていた。このように、強度を維持するためには、モニタ装置が大型化するという問題があった。
【実施例1】
【0019】
以下、実施例1を説明する。本実施例は、放射線係数率検出器を内包する放水路放射線モニタ装置である場合の一例である。
【0020】
図1は、本実施例のモニタ装置を示す。プラント内機器の冷却材として取り込まれた海水1は、主流路2より放出される。主流路の上部には、空間を有するコンクリートの側壁3で構成される接合槽が設置されている。
【0021】
放水路放射線モニタ装置は、放射線係数率を検出する検出器4,検出器を保護する2つの保護管,装置を側壁3に固定する支持構造体9を備える。検出器4の内部には、放射線係数率を検出させるシンチレータ7が設けられている。また、検出器4は、測定結果を伝送するためのケーブル11がコネクタ12により取り付けられている。ケーブル11の他端には、伝送されてきた信号を増幅するための増幅器13が接続されており、さらにケーブル14を介して、放射線モニタ19が接続されている。
【0022】
検出器4は、円筒状の第1保護管5,第2保護管15により保護されている。第1保護管5は、一方の端部が閉止され、他方の端部が開口した円筒状の構造物である。ケーブル11は、第1保護管5の開口部より外部へ引き出されている。また、第1保護管5は、海水面に対して垂直方向に設置され、閉止された端部が海水面より下側に位置する。検出器4は、第1保護管5の閉止された端部に位置する。
【0023】
そして、第1保護管5及び検出器4の周囲も含めて覆うように、第2保護管15が設けられている。図3は第2保護管15の構造を示す。第2保護管15は、強度補強用円筒鋼材15aに底板15bが溶着されている。また、底板15bの中心部に開けた穴15cと同等の内径を有する薄肉円筒鋼材15d、さらに底板15eが溶着されている。このように、第2保護管15は、内径が異なる2つの円筒を組み合わせて製作している。
【0024】
また、第1保護管5と第2保護管15は、その上部において第1保護管側フランジ16と第2保護管側フランジ17およびボルト18によって締結されている。
【0025】
支持構造体9は、第2保護管15など一式を支持固定するための金属製部材であり、保護管一式の全加重を支えている。支持構造体9は、側壁3に埋め込まれた金物プレート10および第2保護管15に溶着結合される。また、支持構造体9は、保護管一式の全荷重の大きさに見合った強度を保有させるために、複数個設置したり、寸法や取り付け方法を変更したりする場合がある。
【0026】
このように、本実施例(図1)の放水路放射線モニタ装置では、第1保護管5の外周側に設けられた第2保護管15は、海水面より下側の第1保護管5を覆うように固定されている。
【0027】
第2保護管15が海水面より下側の第1保護管5を覆うことにより、海水面より下側の装置体積が増加する。具体的には、比較例における水面下の装置体積は第1保護管5で決まるのに対し、本実施例では第2保護管15により決まる。そのため、比較例に比べて水面下の装置体積が増加する分、モニタ装置に働く浮力が増加し、支持構造体9の固定部に印加される荷重が小さくなる。従って、支持構造体の重量を増加させたり、支持構造体の設置数を増加させずに、モニタ装置の強度を保つことができ、放射線モニタ装置の大型化を抑制できる。そして、狭隘部への設置も可能となり、コスト低減が可能である。
【0028】
具体的には、実施例1に示すように、放射線モニタ装置の最外に位置する第2保護管15は水と接する範囲(水面下)に水の侵入口を作らず、内空体積による浮力と放射線モニタ装置との荷重の差を小さくすることである。この場合、放射線モニタ装置の全荷重から内空体積と水の密度および重力加速度の積を減算したものが、支持構造体に印加される実際の荷重となる。
【0029】
また、放水路放射線モニタ装置が設置される主流路2は、4m/s程度の早い流速で海水が流れる。そのため、第1保護管5が10mを超えるような長尺となる場合を考えると、比較例の構造では、保護管軸の法線方向に対する強度が低下する。また、比較例では、第1保護管と第2保護管の接点が最上部フランジだけであるため、装置の十分な強度を担保することは困難である。装置の強度を担保できない理由は、第1保護管5の先端(検出器周り)が水中に開放されているために、第1保護管5が直接的に流速の影響を受けているためである。
【0030】
そのため、本実施例では、第2保護管15が、海水面より下側の第1保護管5を覆うように固定することで、外径80mm,肉厚4mm程度の薄肉部材の第1保護管5でも強度不足を回避できる。第1保護管5の肉厚を4mm程度に抑えることで、検出器4の内部に格納される放射線係数率の検出を目的としたシンチレータ7への遮蔽影響を小さくし、k−40を3.7×10-2[Bq/cm3]の単位で優位に検出するという要求感度を満足させることができる。このように、第1保護管5の周囲に、アルミよりも大きな強度を有したステンレス鋼等の鉄鋼材料で作られた第2保護管15により第1保護管5の大部分を覆うことで強度を補強している。
【0031】
但し、上記は検出器の設置目的を阻害しないことが前提である。実施例1の場合であれば、円筒状の第2保護管は、検出器を覆う部分(薄肉円筒鋼材15d)の肉厚が、他の部分(強度補強用円筒鋼材15a)に比べて薄く形成されている。このように、測定器周囲の第2保護管(薄肉円筒鋼材15d)を従来の7.1mmの肉厚から5.5mmの肉厚に薄くすることで、放射線係数率測定における遮蔽影響を小さくできる。
【0032】
また、本実施例のモニタ装置は、第2保護管15が海水面より下側の第1保護管5を覆うことにより、第1保護管5と第2保護管15との間に海水が流入することを防止できる。そのため、水中生物が第1保護管5に付着したり、水中機器が腐食することを防止できる。また、水中生物の侵入・生育が防止され、さらに水および酸素と接することで発生する金属腐食についても、その懸念を払拭できる。
【0033】
更に図3に示すように、本実施例の第2保護管15は、下側内径が上側内径に比べて小さい。第1保護管5は、複数の管を中心軸方向に並べてボルト等で接合されている。このとき、第2保護管15の下側内径が上側内径に比べて小さくなるように内径を決めておけば、第1保護管5を第2保護管15の下端部で固定しつつ、第1保護管5の接合部を第1保護管5の外周側に設けることができる。このように、第1保護管5の接合部を第1保護管5の外周側に設けることで、第1保護管5の製作・分解が容易になる。
【符号の説明】
【0034】
1 海水
2 主流路
3 側壁
4 検出器
5 第1保護管
7 シンチレータ
8,15 第2保護管
11,14 ケーブル
12 コネクタ
13 増幅器
19 放射線モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力プラントから排出される海水が流れる放水路に設けられた、原子力プラントの放水路放射線モニタ装置であって、
前記海水中の放射線を検出する検出器と、
端部に前記検出器を収容し、前記海水面より下側に前記検出器を配置する円筒状の第1保護管と、
前記第1保護管の外周側に設けられ、前記海水面より下側の前記第1保護管を覆う第2保護管と、
前記第2保護管を固定構造物に固定する支持構造体とを備えることを特徴とする原子力プラントの放水路放射線モニタ装置。
【請求項2】
請求項1記載の放水路放射線モニタ装置であって、
前記第2保護管の下側内径が上側内径に比べて小さいことを特徴とする放水路放射線モニタ装置。
【請求項3】
請求項1記載の放水路放射線モニタ装置であって、
円筒状の前記第2保護管は、前記検出器を覆う部分の肉厚が、他の部分に比べて薄く形成されていることを特徴とする放水路放射線モニタ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−153831(P2011−153831A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13736(P2010−13736)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】