説明

原子力発電プラント制御システムおよび原子力発電プラント検査方法

【課題】原子力発電プラントの運転中に試験を実施することができる原子力発電プラント制御システムおよび原子力発電プラント検査方法を提供すること。
【解決手段】原子力発電プラント制御システム1は、制御対象装置40を制御するための操作を受け付ける制御ボタン21と、制御ボタン21が受け付けた操作に対応する制御信号が操作盤20から制御対象装置40へとつながる経路上の所定の位置へ伝達されたことを通知する通知ランプ12と、試験許可ボタン11が受け付けた操作に応じて、経路上の前記所定の位置から制御対象装置40までの途中において、制御信号が制御対象装置40へ到達することを阻止する制御信号阻止部33とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子力発電プラント制御システムおよび原子力発電プラント検査方法に関し、特に、原子力発電プラントの運転中に試験を実施することができる原子力発電プラント制御システムおよび原子力発電プラント検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラントを制御する原子力発電プラント制御システムは、高い信頼性を維持するために、各機能を定期的に試験することを求められている。原子力発電プラントを制御する原子力発電プラント制御システムの各機能の試験は、例えば、原子炉が停止される定期点検期間に試験装置を用いて行われる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
近年では、ディジタル制御装置の適用により、原子力発電プラント制御システムに含まれる制御装置内のソフトウェアは、自己診断により、従来のような定期試験なしに信頼性を維持可能となっている。このため、手動による試験が必要な部位は、入出力部や外部のハードワイヤード機器(スイッチ、ケーブル等)となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−108443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、定期点検期間の長さには限りがあるため、原子力発電プラント制御システムの各機能の試験は、できるだけプラントの運転中に行うことが望ましい。特に、米国では、定期点検期間が短縮されており、プラントの運転中に試験を可能にすることへの要望が強くなっている。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、原子力発電プラントの運転中に試験を実施することができる原子力発電プラント制御システムおよび原子力発電プラント検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、原子力発電プラント制御システムであって、原子力発電プラントの特定の部位を制御するための操作を受け付ける操作部と、前記操作部が受け付けた操作に対応する制御信号が前記部位へとつながる経路上の所定の位置へ伝達されたことを通知する通知手段と、前記経路上の前記所定の位置から前記部位までのいずれかの位置において、前記制御信号が前記部位へ到達することを阻止する阻止手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
この原子力発電プラント制御システムでは、制御信号が制御対象へ到達することを阻止可能にするとともに、制御信号を阻止した場合でも、制御信号が所定の位置で検出されたことを通知することとしたので、原子力発電プラントの運転を継続したままで、所定の位置まで制御信号が到達するか否かを試験することができる。
【0009】
また、本発明の望ましい態様としては、前記操作部は、前記原子力発電プラントの中央制御室に設けられ、前記通知手段は、前記中央制御室に所在する運転員に対して通知を行うことが好ましい。
【0010】
この態様では、中央制御室に所在する運転員が試験を実施することができるので、試験に必要な要員を減らすことができる。
【0011】
また、本発明の望ましい態様としては、前記阻止手段は、試験中である旨を示す信号を受信している場合に前記制御信号が前記部位へ到達することを阻止することが好ましい。
【0012】
この態様では、試験中である旨を示す信号を送信することによって、原子力発電プラントの運転を継続したままで試験を実施することができる。
【0013】
また、本発明の望ましい態様としては、前記阻止手段は、異なる経路を通じて複数の制御信号を受信した場合にのみ前記部位へ制御信号を到達させる多数決回路であることが好ましい。
【0014】
この態様では、複数の系統から信号を送信しないようにすることによって、原子力発電プラントの運転を継続したままで試験を実施することができる。
【0015】
また、本発明の望ましい態様としては、前記阻止手段は、複数の系統の検出手段のうち、少なくとも2系統の検出手段から制御信号として原子炉トリップ信号を受信した場合に前記部位へ原子炉トリップ信号を到達させる多数決回路であり、前記操作部は、前記複数の系統の検出手段のそれぞれに対応して設けられ、前記操作部が操作されたことを示す制御信号は、前記所定の位置で検出される前に、前記操作部に対応する系統の検出手段が出力する信号と論理和演算されることが好ましい。
【0016】
この態様では、1つの系統から信号を送信することによって、原子力発電プラントの運転を継続したままで、原子炉トリップに関する試験を実施することができる。
【0017】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、原子力発電プラント検査方法であって、原子力発電プラントの特定の部位を制御するための操作を受け付ける操作部を通じて操作を受け付けるステップと、前記操作部が受け付けた操作に対応する制御信号を、前記部位へとつながる経路上の所定の位置で検出するステップと、前記制御信号が前記所定の位置へ伝達されたことを通知するステップと、前記経路上の前記所定の位置から前記部位までのいずれかの位置において、前記制御信号が前記部位へ到達することを阻止するステップとを含むことを特徴とする。
【0018】
この原子力発電プラント検査方法では、制御信号が制御対象へ到達することを阻止可能にするとともに、制御信号を阻止した場合でも、制御信号が所定の位置で検出されたことを通知することとしたので、原子力発電プラントの運転を継続したままで、所定の位置まで制御信号が到達するか否かを試験することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る原子力発電プラント制御システムおよび原子力発電プラント検査方法は、原子力発電プラントの運転中に試験を実施することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、実施例1に係る原子力発電プラント制御システムの概略構成を示す図である。
【図2】図2は、実施例1に係る制御装置の動作を示すフロー図である。
【図3】図3は、実施例2に係る原子力発電プラント制御システムの概略構成を示す図である。
【図4】図4は、実施例2に係る原子力発電プラント制御システムの動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係る原子力発電プラント制御システムおよび原子力発電プラント検査方法の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【実施例1】
【0022】
まず、図1を参照しながら、実施例1に係る原子力発電プラント制御システムの構成について説明する。図1は、実施例1に係る原子力発電プラント制御システム1の概略構成を示す図である。図1に示すように、原子力発電プラント制御システム1は、操作端末10と、操作盤20と、制御装置30と、制御対象装置40とを有する。操作端末10と操作盤20は、中央制御室6内に設置される。
【0023】
操作端末10は、原子力発電プラントの運転のための各種操作を受け付けるとともに、原子力発電プラントの運転状況に関する各種情報を提示する。操作盤20は、制御ボタン21を有し、制御ボタン21が受け付けた操作に応じて、制御対象装置40を制御するための制御信号を制御装置30へ送信する。なお、操作盤20は、操作端末10と一体に設けられていてもよい。また、制御ボタン21は、物理的なボタンであってもよいし、画面上に表示される仮想的なボタンであってもよい。
【0024】
制御対象装置40は、操作盤20が送信した制御信号に基づいて所定の機能を発揮する。制御対象装置40は、例えば、原子力発電プラントに設けられた弁、ポンプ、ヒータ等に相当する。
【0025】
制御装置30は、入力された信号に基づいて所定の演算処理を行い、演算結果に応じた信号を出力する。また、制御装置30は、原子力発電プラントの運転を停止することなく制御ボタン21の操作に関する試験を行う機能をもつ。この機能に関連する構成として、制御装置30は、デジタル入力部(DI)31と、デジタル出力部(DO)32と、制御信号阻止部33とを有する。
【0026】
DI31は、操作盤20から送信された制御信号を受信する。DO32は、制御対象装置40へ制御信号を送信する。制御信号阻止部33は、NOT回路33aと、AND回路33bとを備え、操作端末10に対して行われた操作に基づいて、DI31で受信された制御信号がDO32から制御対象装置40へ送信されるのを阻止する。
【0027】
具体的には、操作端末10には、試験許可ボタン11が設けられており、操作端末10は、試験許可ボタン11に対して行われた操作に応じて、1(High)または0(Low)を試験許可信号として制御信号阻止部33へ送信する。ここで、試験許可信号が1である場合、制御ボタン21の操作に関する試験中であることを意味し、試験許可信号が0である場合、通常の運転中であることを意味するものとする。なお、試験許可ボタン11は、物理的なボタンであってもよいし、画面上に表示される仮想的なボタンであってもよい。
【0028】
制御信号阻止部33は、試験許可信号をNOT回路33aで反転させてAND回路33bに入力させる。また、制御信号阻止部33は、DI31で受信された制御信号をAND回路33bに入力させる。AND回路33bは、反転された試験許可信号と制御信号の論理積演算を行い、演算結果をDO32へ出力する。
【0029】
したがって、制御信号阻止部33は、試験許可信号が1の場合、すなわち、制御ボタン21の操作に関する試験中である場合には、DI31で受信された制御信号がDO32から制御対象装置40へ送信されるのを阻止する。また、制御信号阻止部33は、試験許可信号が0の場合、すなわち、通常の運転中である場合には、DI31で受信された制御信号をDO32から制御対象装置40へ送信させる。
【0030】
また、制御装置30は、DI31で受信された制御信号が制御信号阻止部33に入力される前に分岐され、分岐された制御信号が操作端末10へ送信されるように構成されている。操作端末10は、通知ランプ12を備え、制御装置30から制御信号が送信されると通知ランプ12を点灯させる。すなわち、原子力発電プラント制御システム1は、制御信号阻止部33が制御信号を阻止しているか否かに関わらず、制御ボタン21の操作に応じて送信された制御信号がDI31から制御信号阻止部33へ向けて出力されると、その旨が通知ランプ12によって通知されるように構成されている。
【0031】
以上のような構成を有する原子力発電プラント制御システム1において、原子力発電プラントの運転中に制御ボタン21の操作に関して図1に示す試験対象部分7(DI31の前後の部分)の試験が必要になった場合、中央制御室6内の運転員は以下のような操作を行う。
【0032】
まず、運転員は、試験許可ボタン11を操作して、制御ボタン21の操作に関する試験中であることを示す信号が操作端末10から制御装置30へ送信される状態とする。続いて、運転員は、制御ボタン21を操作し、操作に応じて通知ランプ12による通知が行われるのを確認する。このとき、制御信号は制御信号阻止部33によって阻止され、制御対象装置40へは到達しない。そして、通知ランプ12による通知を確認した後、制御ボタン21を元の状態へ戻し、さらに、試験許可ボタン11を元の状態へ戻す。
【0033】
このような操作により、原子力発電プラントが運転中であっても、制御対象装置40の制御状態を変更することなく、試験対象部分7が正常に機能するか否かを試験することができる。
【0034】
また、原子力発電プラント制御システム1には、試験に必要な設備と要員を減らすことができるという利点がある。従来、原子力発電プラント制御システムの試験は、原子力発電プラント制御システムに含まれる制御装置に付随する試験装置を用いて行われていた。このため、従来の原子力発電プラント制御システムでは、原子力発電プラントの運転中に試験を行うには、中央制御室内の運転員に加えて、制御装置近辺に試験装置を操作する操作員を配置する必要があった。原子力発電プラント制御システム1では、運転員が中央制御室6に所在したまま試験を実施できるため、制御装置30近辺に操作員を配置する必要がなく、また、試験装置が不要となっている。
【0035】
次に、図1に示した制御装置30の動作について図2を参照しながら説明する。図2は、制御装置30の動作を示すフロー図である。図2に示すように、ステップS10として、制御装置30のDI31で制御信号が受信されると、制御装置30は、ステップS11として、操作端末10の通知ランプ12を点灯させる。
【0036】
そして、操作端末10から送信される試験許可信号が1である場合、すなわち、制御ボタン21の操作に関する試験中である場合には(ステップS12,Yes)、制御信号阻止部33が、ステップS13として、制御信号が制御対象装置40へ送信されるのを阻止する。一方、操作端末10から送信される試験許可信号が0である場合、すなわち、通常の運転中である場合には(ステップS12,No)、制御信号阻止部33は、ステップS14として、制御信号を制御対象装置40へ送信させる。
【0037】
上述してきたように、実施例1では、試験許可ボタン11の操作に基づいて制御信号を阻止する制御信号阻止部33を設けるとともに、制御信号阻止部33の動作にかかわらず制御信号の状況を通知する通知ランプ12を設けたので、中央制御室6に所在する運転員が、原子力発電プラントの運転を継続したまま原子力発電プラント制御システム1の試験を実施することができる。
【実施例2】
【0038】
実施例1では、操作端末10を操作して操作端末10から制御信号阻止部33へ試験中である旨を示す信号を送信することによって試験中に制御信号が制御対象装置40へ到達するのを阻止する例を示したが、他の仕組みによって試験中に制御信号が制御対象の装置へ到達するのを阻止することとしてもよい。そこで、実施例2では、多数決回路を利用して、試験中に制御信号が制御対象の装置へ到達するのを阻止する例について説明する。
【0039】
まず、図3を参照しながら、実施例2に係る原子力発電プラント制御システムの構成について説明する。図3は、実施例2に係る原子力発電プラント制御システム2の概略構成を示す図である。図3に示すように、原子力発電プラント制御システム2は、操作端末50a〜50dと、検出部60a〜60dと、制御装置70a〜70dと、トリップ制御装置80と、制御棒駆動装置90とを有する。操作端末50a〜50dは、中央制御室6内に設置される。
【0040】
検出部60a〜60dは、それぞれ、原子炉のトリップが必要な事象の発生を検出するためのセンサと、センサの検出値を閾値演算するための閾値演算部とを有する。そして、検出部60a〜60dは、センサの検出値が閾値を超過した場合に、原子炉のトリップを実行させるための制御信号である原子炉トリップ信号を制御装置70へ送信する。このように、原子力発電プラント制御システム2は、4つの系統が、それぞれ独立して、原子炉のトリップが必要な事象の発生を検出するように構成されている。
【0041】
トリップ制御装置80は、検出部60a〜60dでの検出状況に応じて、制御棒駆動装置90への電源供給回路を開放する。具体的には、トリップ制御装置80は、多数決回路81を備え、多数決回路81は、4つの系統のうち、少なくとも2つ以上の系統から原子炉トリップ信号が送信された場合に、制御棒駆動装置90への電源供給回路を開放する。
【0042】
このように多数決回路81を設けることにより、一部の系統に異常が生じても、原子力発電プラント制御システム2を適正に動作させることができる。また、多数決回路81は、後述するように、試験中に制御棒駆動装置90への電源供給回路が開放されるのを阻止する制御信号阻止部としても機能する。
【0043】
制御棒駆動装置90は、トリップ制御装置80において電源供給回路が開放され、電源が供給されるようになると、制御棒を駆動して原子炉をトリップさせる。
【0044】
制御装置70a〜70dは、入力された信号に基づいて所定の演算処理を行い、演算結果に応じた信号を出力する。制御装置70aは、原子炉トリップ信号に関連する構成として、DI71aと、OR回路72aと、DO73aとを有する。制御装置70bは、原子炉トリップ信号に関連する構成として、DI71bと、OR回路72bと、DO73bとを有する。制御装置70cは、原子炉トリップ信号に関連する構成として、DI71cと、OR回路72cと、DO73cとを有する。制御装置70dは、原子炉トリップ信号に関連する構成として、DI71dと、OR回路72dと、DO73dとを有する。
【0045】
DI71a〜71dは、それぞれ、検出部60a〜60dから送信された原子炉トリップ信号を受信する。OR回路72a〜72dは、それぞれ、DI71a〜71dで受信された原子炉トリップ信号と操作端末50a〜50dから送信された擬似的な原子炉トリップ信号を論理和演算した信号をDO73a〜73dへ出力する。DO73a〜73dは、それぞれ、OR回路72a〜72dから出力された信号を、原子炉トリップ信号としてトリップ制御装置80へ送信する。すなわち、制御装置70a〜70dからは、検出部60a〜60dから送信された原子炉トリップ信号と、操作端末50a〜50dから送信された擬似的な原子炉トリップ信号のいずれもが、原子炉トリップ信号としてトリップ制御装置80へ送信される。
【0046】
操作端末50a〜50dは、原子力発電プラントの運転のための各種操作を受け付けるとともに、原子力発電プラントの運転状況に関する各種情報を提示する。操作端末50aは、原子力発電プラント制御システム2の試験に関する構成として、疑似トリップボタン51aと、通知ランプ52aとを有する。操作端末50bは、原子力発電プラント制御システム2の試験に関する構成として、疑似トリップボタン51bと、通知ランプ52bとを有する。操作端末50cは、原子力発電プラント制御システム2の試験に関する構成として、疑似トリップボタン51cと、通知ランプ52cとを有する。操作端末50dは、原子力発電プラント制御システム2の試験に関する構成として、疑似トリップボタン51dと、通知ランプ52dとを有する。
【0047】
操作端末50aは、制御装置70aと同一の系統である。操作端末50bは、制御装置70bと同一の系統である。操作端末50cは、制御装置70cと同一の系統である。操作端末50dは、制御装置70dと同一の系統である。なお、疑似トリップボタン51a〜51dは、物理的なボタンであってもよいし、画面上に表示される仮想的なボタンであってもよい。
【0048】
操作端末50a〜50dは、疑似トリップボタン51a〜51dが操作されると、行われた操作に応じて、対応する系統へ向けて擬似的な原子炉トリップ信号を送信する。操作端末50から送信された擬似的な原子炉トリップ信号は、同一系統の制御装置70を経て、トリップ制御装置80へと到達するが、上述したように、トリップ制御装置80は、少なくとも2つ以上の系統から信号が送信された場合に、制御棒駆動装置90への電源供給回路を開放する。このため、疑似トリップボタン51a〜51dの1つが操作されて擬似的な原子炉トリップ信号が送信されても、トリップ制御装置80によって、制御棒駆動装置90への電源供給回路が開放されることはない。
【0049】
また、原子力発電プラント制御システム2は、DO73a〜73dから送信された信号がトリップ制御装置80に到達する前に分岐され、分岐された信号が同一系統の操作端末50へ送信されるように構成されている。操作端末50a〜50dは、分岐された信号を受信すると、自装置の通知ランプ52を点灯させる。すなわち、原子力発電プラント制御システム2は、トリップ制御装置80が原子炉トリップ信号を阻止している場合であっても、疑似トリップボタン51a〜51dの操作に応じて送信された信号がDO73a〜73dからトリップ制御装置80へ向けて出力されると、その旨が通知ランプ52a〜52dによって通知されるように構成されている。
【0050】
以上のような構成を有する原子力発電プラント制御システム2において、原子力発電プラントの運転中に図3に示す試験対象部分8(DO73a〜73dから信号が出力される部分)の試験が必要になった場合、中央制御室6内の運転員は以下のような操作を行う。
【0051】
まず、運転員は、疑似トリップボタン51a〜51dの1つを操作して、擬似的な原子炉トリップ信号を操作端末50から送信させ、通知ランプ52a〜52dのうち操作したボタンに対応するものが点灯するのを確認する。運転員は、疑似トリップボタン51a〜51dの他のボタンについても同様の操作を行って点灯の確認を行う。
【0052】
このような操作により、原子力発電プラントが運転中であっても、制御棒駆動装置90への電源供給回路を開放させることなく、試験対象部分8が正常に機能するか否かを系統ごとに試験することができる。
【0053】
また、原子力発電プラント制御システム2では、運転員が中央制御室6に居ながらにして試験を行うことができるため、原子力発電プラント制御システム1と同様に、試験装置と、試験装置を操作する操作員とが不要となっている。
【0054】
次に、図3に示した原子力発電プラント制御システム2の動作について図4を参照しながら説明する。図4は、原子力発電プラント制御システム2の動作を示すフロー図である。図4に示すように、制御装置70は、ステップS20として、信号(原子炉トリップ信号または擬似的な原子炉トリップ信号)を受信すると、ステップS21として、受信した信号をトリップ制御装置80へ向けて送信する。
【0055】
このとき、原子力発電プラント制御システム2は、ステップS22として、通知ランプ52a〜52dのうち受信した信号に対応する系統のものを点灯させる。
【0056】
そして、トリップ制御装置80は、信号を2系統以上から受信していなければ(ステップS23,No)、ステップS24として、原子炉トリップ信号が制御棒駆動装置90へ送信されるのを阻止する。一方、トリップ制御装置80は、信号を2系統以上から受信していれば(ステップS23,Yes)、ステップS25として、原子炉トリップ信号を制御棒駆動装置90へ送信する。
【0057】
上述してきたように、実施例2では、多数決回路81を有するトリップ制御装置80へ1系統ずつ擬似的な原子炉トリップ信号を送信することを可能にするとともに、多数決回路81の動作にかかわらずトリップ制御装置80への信号の送信状況を通知する通知ランプ52a〜52dを設けたので、中央制御室6に所在する運転員が、原子力発電プラントの運転を継続したまま原子力発電プラント制御システム2の試験を実施することができる。
【0058】
なお、上記の各実施例で示した原子力発電プラント制御システムの構成は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で任意に変更することができる。例えば、上記の各実施例で示した原子力発電プラント制御システムの構成は、任意に組み合わせることができる。
【0059】
また、上記の各実施例では試験の結果を通知するために通知ランプを点灯させることとしたが、試験の結果を通知する方式としては、通知音を用いる方式、画面上に文字やシンボルを用いて結果を表示する方式等の各種方式を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上のように、本発明に係る原子力発電プラント制御システムおよび原子力発電プラント検査方法は、原子力発電プラントに有用であり、特に、原子力発電プラントの運転中に試験を実施する場合に適している。
【符号の説明】
【0061】
1、2 原子力発電プラント制御システム
6 中央制御室
7、8 試験対象部分
10、50a〜50d 操作端末
11 試験許可ボタン
12、52a〜52d 通知ランプ
20 操作盤
21 制御ボタン
30、70a〜70d 制御装置
31、71a〜71d DI
32、73a〜73d DO
33 制御信号阻止部
33a NOT回路
33b AND回路
40 制御対象装置
51a〜51d 疑似トリップボタン
60a〜60d 検出部
72a〜72d OR回路
80 トリップ制御装置
81 多数決回路
90 制御棒駆動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力発電プラントの特定の部位を制御するための操作を受け付ける操作部と、
前記操作部が受け付けた操作に対応する制御信号が前記部位へとつながる経路上の所定の位置へ伝達されたことを通知する通知手段と、
前記経路上の前記所定の位置から前記部位までのいずれかの位置において、前記制御信号が前記部位へ到達することを阻止する阻止手段と
を備えることを特徴とする原子力発電プラント制御システム。
【請求項2】
前記操作部は、前記原子力発電プラントの中央制御室に設けられ、
前記通知手段は、前記中央制御室に所在する運転員に対して通知を行うことを特徴とする請求項1に記載の原子力発電プラント制御システム。
【請求項3】
前記阻止手段は、試験中である旨を示す信号を受信している場合に前記制御信号が前記部位へ到達することを阻止することを特徴とする請求項1または2に記載の原子力発電プラント制御システム。
【請求項4】
前記阻止手段は、異なる経路を通じて複数の制御信号を受信した場合にのみ前記部位へ制御信号を到達させる多数決回路であることを特徴とする請求項1または2に記載の原子力発電プラント制御システム。
【請求項5】
前記阻止手段は、複数の系統の検出手段のうち、少なくともN(Nは2以上の整数)系統の検出手段から制御信号として原子炉トリップ信号を受信した場合に前記部位へ原子炉トリップ信号を到達させる多数決回路であり、
前記操作部は、前記複数の系統の検出手段のそれぞれに対応して設けられ、
前記操作部が操作されたことを示す制御信号は、前記所定の位置で検出される前に、前記操作部に対応する系統の検出手段が出力する信号と論理和演算されることを特徴とする請求項4に記載の原子力発電プラント制御システム。
【請求項6】
原子力発電プラントの特定の部位を制御するための操作を受け付ける操作部を通じて操作を受け付けるステップと、
前記操作部が受け付けた操作に対応する制御信号を、前記部位へとつながる経路上の所定の位置で検出するステップと、
前記制御信号が前記所定の位置へ伝達されたことを通知するステップと、
前記経路上の前記所定の位置から前記部位までのいずれかの位置において、前記制御信号が前記部位へ到達することを阻止するステップと
を含むことを特徴とする原子力発電プラント検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−79011(P2012−79011A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222485(P2010−222485)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】