説明

原料供給装置および蒸着装置

【課題】 蒸着装置に用いる原料供給装置であって、蒸着装置の成膜速度の安定性が良好となる原料供給装置、および当該原料供給装置を有する蒸着装置を提供する。
【解決手段】 被処理基板を内部に保持する処理容器と、前記処理容器に原料を蒸発あるいは昇華して供給する原料供給装置とを有し、前記被処理基板に蒸発あるいは昇華された前記原料を蒸着させる蒸着装置であって、前記原料供給装置は、前記原料を第1の温度に加熱して当該原料を蒸発あるいは昇華させて気体原料とする気体発生室と、当該気体原料の温度を前記第1の温度より低い第2の温度に調整する温度調整室と、を有することを特徴とする蒸着装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸着装置および当該蒸着装置に用いる原料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば被処理基板の表面に薄膜などを形成する方法の一例としては、蒸着法がある。蒸着法とは、例えば蒸発あるいは昇華された蒸着原料を、被処理基板上に蒸着させることで薄膜を形成する方法である。
【0003】
例えば、蒸着法によって形成される薄膜としては、有機エレクトロミネッサンス(以下ELと表記する)素子に用いられる薄膜がある。有機EL素子を用いた表示装置は、小型化が容易であって、消費電力が小さく、面発光が可能であり、液晶ディスプレイと比較して印加電圧を大幅に低減できるため、フラットディスプレイ等の各種表示装置での利用が注目されている。
【0004】
例えば、有機EL素子は、陽極と陰極の間に発光層が形成された構造を有している。当該発光層は、電子と正孔との再結合により発光する層であり、発光層には、例えば、多環芳香族炭化水素、ヘテロ芳香族化合物、有機金属錯体化合物等の材料を用いることが可能であり、上記の材料は蒸着法により、形成することが可能である。また、必要に応じて陽極と発光層の間、または陰極と発光層の間に、例えば正孔輸送層、または電子輸送層など発光効率を良好とするための薄膜を形成することも可能であり、これらの層も蒸着法により、形成することが可能である。
【0005】
この場合、上記の薄膜の形成に用いる蒸着装置は、例えば内部を減圧状態に保持可能な処理容器と、当該処理容器内に設置された、蒸着原料を蒸発あるいは昇華させる蒸着源とを備えた構造を有しており、蒸着源から蒸発あるいは昇華された蒸着原料が被処理基板に蒸着されるように構成されている。
【特許文献1】特表2003−502494号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、蒸着装置により薄膜を形成する場合、蒸着源より蒸発あるいは昇華する蒸着原料の量を制御することが困難であるという問題が生じていた。
【0007】
これは、蒸着源より蒸発あるいは昇華する、単位時間当たりの蒸着原料の量が、例えば、時間経過や、蒸着源に保持される蒸着原料の量、または蒸着源の温度の僅かな変化に応じて変化してしまうために生じると考えられる。このため、蒸着膜の成膜速度を安定させることが困難となり、成膜速度が変化して膜厚にばらつきが生じる場合があった。
【0008】
また、上記の特許文献1(特表2003−502494号公報)には、蒸着源の容器内にバッフル板(多孔板)を設置することで蒸着原料の蒸発あるいは昇華量を安定させる発明が記載されている。しかし、上記の構造では、蒸着源を蒸発あるいは昇華させるための温度が考慮されておらず、蒸着源の温度によっては蒸発あるいは昇華が不安定になることが考えられる。
【0009】
そこで、本発明では上記の問題を解決した、新規で有用な蒸着装置を提供することを目的としている。
【0010】
本発明の具体的な課題は、蒸着装置に用いる原料供給装置であって、蒸着装置の成膜速度の安定性が良好となる原料供給装置、および当該原料供給装置を有する蒸着装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の課題を、請求項1に記載したように、
蒸着装置の処理容器に接続され、該処理容器に原料を蒸発あるいは昇華して供給する原料供給装置であって、
前記原料を第1の温度に加熱して当該原料を蒸発あるいは昇華させて気体原料とする気体発生室と、
当該気体原料の温度を前記第1の温度より低い第2の温度に調整する温度調整室と、を有することを特徴とする原料供給装置により、また、
請求項2に記載したように、
前記温度調整室には、前記気体原料の温度を、前記第2の温度とするための熱交換部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の原料供給装置により、また、
請求項3に記載したように、
前記熱交換部は、前記温度調整室内壁に設置された突起部を含むことを特徴とする請求項2記載の原料供給装置により、また、
請求項4に記載したように、
前記気体発生室と前記温度調整室を接続する配管部に、前記気体発生室と前記温度調整室を切り離す、切り離し手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至3のうち、いずれか1項記載の原料供給装置により、また、
請求項5に記載したように、
前記切り離し手段は、前記配管部に設置された遮断バルブを含むことを特徴とする請求項4記載の原料供給装置により、また、
請求項6に記載したように、
前記切り離し手段は、前記配管部に設置された継手部を含むことを特徴とする請求項4または5記載の原料供給装置により、また、
請求項7に記載したように、
前記気体原料と混合されて、当該気体原料とともに前記処理容器に供給されるキャリアガスを導入する、キャリアガス導入ラインを有することを特徴とする請求項1乃至6のうち、いずれか1項記載の原料供給装置により、また、
請求項8に記載したように、
被処理基板を内部に保持する処理容器と、前記処理容器に原料を蒸発あるいは昇華して供給する原料供給装置とを有し、前記被処理基板に蒸発あるいは昇華された前記原料を蒸着させる蒸着装置であって、
前記原料供給装置は、
前記原料を第1の温度に加熱して当該原料を蒸発あるいは昇華させて気体原料とする気体発生室と、
当該気体原料の温度を前記第1の温度より低い第2の温度に調整する温度調整室と、を有することを特徴とする蒸着装置により、また、
請求項9に記載したように、
前記温度調整室には、前記気体原料の温度を、前記第2の温度とするための熱交換部が形成されていることを特徴とする請求項8記載の蒸着装置により、また、
請求項10に記載したように、
前記熱交換部は、前記温度調整室内壁に設置された突起部を含むことを特徴とする請求項9記載の蒸着装置により、また、
請求項11に記載したように、
前記気体発生室と前記温度調整室を接続する配管部に、前記気体発生室と前記温度調整室を切り離す、切り離し手段を設けたことを特徴とする請求項8乃至10のうち、いずれか1項記載の蒸着装置により、また、
請求項12に記載したように、
前記切り離し手段は、前記配管部に設置された遮断バルブを含むことを特徴とする請求項11記載の蒸着装置により、また、
請求項13に記載したように、
前記切り離し手段は、前記配管部に設置された継手部を含むことを特徴とする請求項11または12記載の蒸着装置により、また、
請求項14に記載したように、
前記気体原料と混合されて、当該気体原料とともに前記処理容器に供給されるキャリアガスを導入する、キャリアガス導入ラインを有することを特徴とする請求項8乃至13のうち、いずれか1項記載の蒸着装置により、また、
請求項15に記載したように、
前記原料供給装置は前記処理容器の外側に設置されていることを特徴とする請求項8乃至14のうち、いずれか1項記載の蒸着装置により、解決する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、蒸着装置に用いる原料供給装置であって、蒸着装置の成膜速度の安定性が良好となる原料供給装置、および当該原料供給装置を有する蒸着装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明による原料供給装置は、原料を第1の温度に加熱して当該原料を蒸発あるいは昇華させて気体原料とする気体発生室と、当該気体原料の温度を前記第1の温度より低い第2の温度に調整する温度調整室と、を有することを特徴としている。
【0014】
上記の構造とすることで、蒸着に用いる原料の、温度に対する蒸発あるいは昇華量の特性に対応して蒸発あるいは昇華した原料を安定に供給することが可能になる。この理由について以下に説明する。
【0015】
図1は、蒸着原料の加熱温度に対して、当該蒸着原料が蒸発あるいは昇華する量(気体原料の発生量)の関係を模式的に示した図である。図1を参照するに、蒸着原料の温度が上昇するに従い、蒸発あるいは昇華する量は増大し、原料の分解温度付近で最大となっていることがわかる。
【0016】
例えば、蒸着原料の加熱温度を高くすると、蒸発あるいは昇華量が大きく、蒸着装置の成膜速度(蒸着速度)を大きくすることが可能となる。しかし、僅かな温度変動に対しても蒸発あるいは昇華量の変動幅が大きく、蒸発あるいは昇華量(成膜速度)が安定しづらい問題がある。
【0017】
一方、加熱温度を低くすると、温度変動に対する蒸発あるいは昇華量の変動が少なく、温度変化に対して蒸発あるいは昇華量は比較的安定するが、蒸発あるいは昇華量が小さい問題があった。特に、蒸着原料を保持し、蒸着原料を加熱して蒸発あるいは昇華させる部分を、メンテナンスのために切り離すことを考慮する場合、バルブや継手などの切り離し手段を設ける必要があり、これらの構造により蒸発あるいは昇華した原料を輸送する経路のコンダクタンスを十分に大きくすることができない場合がある。このために原料を蒸発あるいは昇華させる場合はできるだけ高い温度で加熱して蒸発あるいは昇華量を増大させ、実効的な成膜速度を確保する十分な量の気体原料を生成することが好ましい。
【0018】
そこで、本発明による原料供給装置では、たとえば、図1に示した、温度領域2の温度範囲に制御された気体発生室と、温度領域1の範囲に制御された温度調整室が接続された構造としている。当該気体発生室で蒸発あるいは昇華した原料は、当該温度調整室で温度が調整され、当該温度調整室では、原料の飽和蒸気圧の状態となり、蒸着装置の処理容器に供給される。このため、成膜速度を維持しながら、安定に成膜を行うことが可能となる。
【0019】
また、上記の構造としたために、前記気体発生室と前記温度調整室の間に、前記気体発生室を前記温度調整室より切り離す、切り離し手段を設けることが可能となっている。このため、原料の補充などのメンテナンスが容易となっている。
【0020】
次に、上記の原料供給装置を用いた蒸着装置の構成の一例について、図2に基づき、説明する。
【実施例1】
【0021】
図2は、本発明の実施例1による蒸着装置を模式的に示した図である。図1を参照するに、本実施例による蒸着装置200は、内部に内部空間201Aが画成される、処理容器201を有している。前記内部空間201Aには、被処理基板203を保持する保持台202が設置されている。前記保持台202は、ESC(静電吸着チャック)を有し、前記被処理基板は、その表面が、原料が供給される方向に向くようにして保持される。また、前記保持台202は、移動レール204に対して移動可能に接続され、前記被処理基板203に対して平行な方向に移動することが可能に構成されている。
【0022】
また、前記内部空間201Aは、前記処理容器201に接続された、例えばターボ分子ポンプよりなる排気手段205により排気され、当該排気手段205は、例えばドライポンプなどの排気手段(図示を省略)に接続されている。
【0023】
また、前記処理容器201の底面の開口部には、前記保持台203と対向するように、前記内部空間201Aに気体原料を供給する、原料供給装置100が設置されている。前記被処理基板203に成膜(蒸着)を行う場合には、前記原料供給装置100から供給される気体原料が被処理基板に到達することにより、行われる。
【0024】
前記原料供給装置100の概略は、内部に、たとえば粉末状の原料101Bを保持し、当該原料101Bを加熱して第1の温度とすることで蒸発あるいは昇華させ、気体原料とする気体発生室101と、当該気体原料の温度を低下させて第2の温度とする温度調整室105が、配管部102により接続された構造を有している。
【0025】
前記気体発生室101では、当該気体発生室101の外側に配置されたヒータ101Aにより、内部の原料101Bが、例えば前記第1の温度に加熱され、蒸発あるいは昇華されて気体原料とされる。当該気体原料は、前記配管部102を介して前記温度調整室105に送られる。この場合、前記配管部102は、当該配管部102に設置されたヒータ102Aにより、前記気体発生室101と同じ前記第1の温度で加熱されている。
【0026】
前記温度調整室105は、当該温度調整室105に設置されたヒータ105Aにより加熱されているが、加熱温度が、前記第1の温度より低い第2の温度に調整されている。前記温度調整室105には、前記気体原料の温度を、前記第2の温度とするための熱交換部106が形成されている。前記熱交換部106は、例えば、前記温度調整室105の内壁に設置された突起部を含む構造を有しており、効率よく熱交換を行って前記気体原料を前記第2の温度に調整することを可能としている。
【0027】
前記第2の温度とされた前記気体原料は、前記温度調整室105の出口近傍に設置された、スリット部107を通過することで、前記内部空間201内の前記被処理基板203に均一性が良好に蒸着される。
【0028】
本実施例による原料供給装置100では、前記気体発生室101で、高い温度(第1の温度)を用いて、前記原料101Bを効率よく蒸発あるいは昇華している。一方、前記温度調整室105では、蒸発あるいは昇華した原料(気体原料)を、当該第1の温度より低い第2の温度とすることで、前記気体原料が飽和した状態(飽和蒸気圧)としている。そのため、温度の僅かな変動に対して原料が供給される量が大きく変動することが抑制され、前記内部空間201Aに蒸着のための原料を安定に供給することが可能となっている。このため、蒸着装置の成膜速度を大きく維持しつつ、かつ蒸着速度を安定に保持することが可能となっている。
【0029】
また、前記配管部102には、前記気体発生室101を、前記温度調整室105から切り離すための切り離し手段104が設けられている。前記切り離し手段は、例えば遮断バルブ103Aと、配管継手部103Bとを有している。
【0030】
例えば、前記気体発生室101に原料を補充するなどのメンテナンスを行う場合には、前記遮断バルブ103Aを閉じて、前記配管継手部103Bを緩めることで、前記気体発生室101内の気密性を保持したまま、容易に当該気体発生室101を前記温度調整室105から切り離すことが可能である。
【0031】
例えば、従来の原料供給装置では、蒸着源とよばれる上記の気体発生室に相当する部分は、処理容器内部に設置されることが大半であり、メンテナンスが困難である問題があった。一方、本実施例による蒸着装置では、前記原料供給装置100(気体発生室101)を前記処理容器201の外側(前記内部空間201Aの外側)に設置しているため、原料を保持する部分のメンテナンスが容易となっている。
【0032】
また、上記のように前記気体発生室101を切り離し容易な構造にするためには、前記配管部102に、前記遮断バルブ103Aや配管継手部103Bを設置することが好ましい。しかし、遮断バルブによって遮断可能な配管の径は限られるため、前記配管部102の大きさ(コンダクタンス)はある程度メンテナンス上の理由から制限されてしまう懸念がある。この場合、前記気体発生室101で蒸発あるいは昇華する原料の量が少ないと、蒸着装置で十分な成膜速度を維持できない可能性がある。
【0033】
本実施例による原料供給装置では、気体発生室の下流側に原料の供給量の安定を図るための温度調整室が設けられているため、気体発生室で高い温度で原料を加熱して原料の蒸発あるいは昇華量を確保することが可能となっている。
【0034】
すなわち、本実施例による原料供給装置は、原料が供給される量が維持されるとともに、供給される量の変動が抑制される特徴があり、またメンテナンス性が良好である構造を有している。
【0035】
また、前記原料供給装置100には、前記気体原料と混合されて、当該気体原料とともに前記処理容器201に供給されるキャリアガスを導入する、キャリアガス導入ライン120が接続されていると好適である。
【0036】
前記キャリアガス導入ライン120は、例えば前記配管部102に接続されるが、前記気体発生室101か、または前記温度調整室105に接続されるようにしてもよい。前記キャリアガス導入ライン120には、バルブ121と質量流量コントローラ(MFC)122が設置され、キャリアガス供給源123に接続されている。
【0037】
前記キャリアガス導入ライン120からは、前記バルブ121を開放することで、前記MFC122によって流量を制御された、例えばArなどのキャリアガスが、前記配管部102に供給される。供給されたキャリアガスは、前記気体原料とともに前記内部空間201Aに供給される。
【0038】
また、前記温度調整室105には、例えば前記スリット部107近傍に、パージガスを導入するパージガス導入ライン110が接続されてパージガスが供給されるようにしてもよい。前記パージガス導入ライン110には、バルブ111とMFC112が設置され、パージガス供給源113に接続されている。
【0039】
前記パージガスガス導入ライン110からは、前記バルブ111を開放することで、前記MFC112によって流量を制御された、例えばArなどのパージガスが供給される。
【0040】
また、前記温度調整室105のうち、前記スリット部107より下流側(前記処理容器201に接続された側)は、前記温度調整室105の上流側(前記配管部102に接続された側)よりも高い温度になるようにしてもよい。この場合、当該下流側には、ヒータ105Aと別個独立のヒータ105Bが設置され、前記第2の温度より高い第3の温度で加熱されるようにしてもよい。この場合、気体原料の処理容器近傍での凝固を抑制し、パーティクルの発生を抑制する効果を奏する。
【0041】
例えば、前記処理容器101(図中領域A1で示す)から前記配管部102(図中領域A2で示す)は、前記第1の温度に、前記温度調整室105の上流側(図中領域A3で示す)は、当該第1の温度より低い前記第2の温度に、前記温度調整室105の下流側(図中領域A4で示す)は、当該第2の温度より高い前記第3の温度にされることが好ましい。
【0042】
この場合、前記ヒータ101Aは第1制御手段101aにより、また前記ヒータ102Aは第2制御手段102aによりそれぞれ前記第1の温度に制御され、同様に、前記ヒータ105Aは第3制御手段105aにより前記第2の温度に、前記ヒータ105Bは、第4制御手段105bにより前記第3の温度にそれぞれ制御される。
【0043】
例えば、上記の成膜装置200を用いて、有機EL素子を形成する場合に、前記原料101Bとしてアルミノキノリノール錯体(Alq3)、を用いることで、発光層のホスト材料を構成することができる。また、この場合ドーピング材にはルブレンを用いることができる。
【0044】
また、上記のAlq3を用いる場合、例えば、前記第1の温度は、350℃乃至400℃、前記第2の温度は300℃乃至350℃とし、当該第1の温度と当該第2の温度の温度差は、30℃乃至50℃程度とすればよい。また、前記第3の温度は、350℃乃至400℃とすればよいが、上記の領域A4の温度は前記領域A3の温度と同一であってもよい。
【実施例2】
【0045】
また、上記の蒸着装置200、および原料供給装置100は、本発明の構成の一例であり、様々に変形・変更して用いることが可能であることは明らかである。
【0046】
例えば、図3は、上記の温度調整室105の変形例を模式的に示した図である。ただし図中、先に説明した部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。図3を参照するに、本実施例の場合、実施例1の場合の突起部状の熱交換部106は、複数の多孔板106Aに相当する。当該多孔板106Aには、気体原料やキャリアガスが通過する穴部106aが複数形成されている。気体原料は、当該多孔板106Aと接触することで熱交換が生じ、前記第2の温度に制御される構造になっている。
【実施例3】
【0047】
また、図4は、上記の温度調整室105の別の変形例を模式的に示した図である。ただし図中、先に説明した部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。図4を参照するに、本実施例の場合、実施例1の場合の突起部状の熱交換部106は、前記気体原料やキャリアガスの流れを迂回させるための、例えば円筒状のガス流制御板106Bに相当する。また、前記配管部102は、前記温度調整室105の内部まで挿入された構造となっており、さらに前記ガス流制御板106Bの円筒内部に挿入された構造になっている。本実施例の場合、気体原料は、当該ガス流制御板106Bと接触することで熱交換が生じ、前記第2の温度に制御される構造になっている。
【0048】
以上、本発明を好ましい実施例について説明したが、本発明は上記の特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨内において様々な変形・変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、蒸着装置に用いる原料供給装置であって、蒸着装置の成膜速度の安定性が良好となる原料供給装置、および当該原料供給装置を有する蒸着装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】蒸着原料の蒸発あるいは昇華の特性を示す図である。
【図2】実施例1による原料供給装置と、該原料供給装置を用いた蒸着装置を示す図である。
【図3】図2の原料供給装置の変形例を示す図(その1)である。
【図4】図2の原料供給装置の変形例を示す図(その2)である。
【符号の説明】
【0051】
100 原料供給装置
101 気体発生室
101B 原料
101A ヒータ
102 配管部
102A ヒータ
103A 遮断バルブ
103B 配管継手部
104 切り離し手段
105 温度調整室
105A,105B ヒータ
106 熱交換部
107 スリット部
101a,102a,105a,105b 制御手段
110 パージガス導入ライン
120 キャリアガス導入ライン
111,121 バルブ
112,122 MFC
113,123 ガス供給源
200 蒸着装置
201 処理容器
201A 内部空間
202 保持台
203 被処理基板
204 移動レール
205 排気手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸着装置の処理容器に接続され、該処理容器に原料を蒸発あるいは昇華して供給する原料供給装置であって、
前記原料を第1の温度に加熱して当該原料を蒸発あるいは昇華させて気体原料とする気体発生室と、
当該気体原料の温度を前記第1の温度より低い第2の温度に調整する温度調整室と、を有することを特徴とする原料供給装置。
【請求項2】
前記温度調整室には、前記気体原料の温度を、前記第2の温度とするための熱交換部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の原料供給装置。
【請求項3】
前記熱交換部は、前記温度調整室内壁に設置された突起部を含むことを特徴とする請求項2記載の原料供給装置。
【請求項4】
前記気体発生室と前記温度調整室を接続する配管部に、前記気体発生室と前記温度調整室を切り離す、切り離し手段を設けたことを特徴とする請求項1乃至3のうち、いずれか1項記載の原料供給装置。
【請求項5】
前記切り離し手段は、前記配管部に設置された遮断バルブを含むことを特徴とする請求項4記載の原料供給装置。
【請求項6】
前記切り離し手段は、前記配管部に設置された継手部を含むことを特徴とする請求項4または5記載の原料供給装置。
【請求項7】
前記気体原料と混合されて、当該気体原料とともに前記処理容器に供給されるキャリアガスを導入する、キャリアガス導入ラインを有することを特徴とする請求項1乃至6のうち、いずれか1項記載の原料供給装置。
【請求項8】
被処理基板を内部に保持する処理容器と、前記処理容器に原料を蒸発あるいは昇華して供給する原料供給装置とを有し、前記被処理基板に蒸発あるいは昇華された前記原料を蒸着させる蒸着装置であって、
前記原料供給装置は、
前記原料を第1の温度に加熱して当該原料を蒸発あるいは昇華させて気体原料とする気体発生室と、
当該気体原料の温度を前記第1の温度より低い第2の温度に調整する温度調整室と、を有することを特徴とする蒸着装置。
【請求項9】
前記温度調整室には、前記気体原料の温度を、前記第2の温度とするための熱交換部が形成されていることを特徴とする請求項8記載の蒸着装置。
【請求項10】
前記熱交換部は、前記温度調整室内壁に設置された突起部を含むことを特徴とする請求項9記載の蒸着装置。
【請求項11】
前記気体発生室と前記温度調整室を接続する配管部に、前記気体発生室と前記温度調整室を切り離す、切り離し手段を設けたことを特徴とする請求項8乃至10のうち、いずれか1項記載の蒸着装置。
【請求項12】
前記切り離し手段は、前記配管部に設置された遮断バルブを含むことを特徴とする請求項11記載の蒸着装置。
【請求項13】
前記切り離し手段は、前記配管部に設置された継手部を含むことを特徴とする請求項11または12記載の蒸着装置。
【請求項14】
前記気体原料と混合されて、当該気体原料とともに前記処理容器に供給されるキャリアガスを導入する、キャリアガス導入ラインを有することを特徴とする請求項8乃至13のうち、いずれか1項記載の蒸着装置。
【請求項15】
前記原料供給装置は前記処理容器の外側に設置されていることを特徴とする請求項8乃至14のうち、いずれか1項記載の蒸着装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−92149(P2007−92149A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−285031(P2005−285031)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】