説明

原稿搬送装置及びこれを用いた画像読取装置

【課題】より簡単な構成で確実に原稿の搬送方向を切り替えることができる原稿搬送装置及びこれを用いた画像読取装置を提供する。
【解決手段】モータ41の駆動力を搬送ローラ15に伝達する複数のギア51〜59,61〜65の少なくとも一部を可動部材70により保持する。モータ41の駆動力により可動部材70が移動して、複数のギア51〜59,61〜65の組み合わせが変化することにより、搬送ローラ15の回転方向が逆転する。これにより、ソレノイドなどを用いる場合と比較して、より簡単な構成で原稿の搬送方向を切り替えることができる。また、原稿の搬送方向を切り替えるときには、複数のギア51〜59,61〜65の組み合わせが完全に切り替えられるので、搬送ローラ15の回転方向を精度よく逆転させて、確実に原稿の搬送方向を切り替えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送ローラにより原稿を搬送するための原稿搬送装置及びこれを用いた画像読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば両面読取が可能な画像読取装置などの中には、原稿の第1面の画像を読み取った後、原稿の搬送方向を切り替えて、その後に原稿の第2面の画像を読み取るような原稿搬送装置が備えられているものがある。原稿の搬送方向を切り替える構成としては、例えばソレノイドを用いて原稿の搬送方向を切り替える構成(例えば、特許文献1参照)、又は、モータを逆回転させることにより原稿の搬送方向を切り替える構成(例えば、特許文献2参照)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−76881号公報
【特許文献2】特開2007−302417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ソレノイドを用いて原稿の搬送方向を切り替えるような構成では、構造が複雑になり、製造コストが高くなるといった問題がある。また、モータを逆回転させることにより原稿の搬送方向を切り替えるような構成では、ギア間にスプリングクラッチなどの特殊な部材を介在させる場合があるが、当該部材が精度よく動作しなければ、回転精度が悪くなるといった問題がある。また、モータを逆回転させることによる時間的ロスも発生する。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、より簡単な構成で確実に原稿の搬送方向を切り替えることができる原稿搬送装置及びこれを用いた画像読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る原稿搬送装置は、搬送ローラにより原稿を搬送するための原稿搬送装置であって、一方向にのみ回転するモータと、前記モータの駆動力を前記搬送ローラに伝達する複数のギアと、前記複数のギアの少なくとも一部を保持する可動部材とを備え、前記モータの駆動力により前記可動部材が移動して、前記複数のギアの組み合わせが変化することにより、前記搬送ローラの回転方向が逆転することを特徴とする。
【0007】
このような構成によれば、モータの駆動力を利用して可動部材を移動させ、複数のギアの組み合わせを変化させることにより、搬送ローラの回転方向を逆転させることができる。したがって、ソレノイドなどを用いる場合と比較して、より簡単な構成で原稿の搬送方向を切り替えることができる。また、原稿の搬送方向を切り替えるときには、複数のギアの組み合わせが完全に切り替えられるので、搬送ローラの回転方向を精度よく逆転させて、確実に原稿の搬送方向を切り替えることができる。また、モータの逆転動作を行わずに済むため、迅速な切り替えが可能となる。
【0008】
前記可動部材には、前記複数のギアのうち少なくとも第1ギア及び第2ギアが保持されており、前記第1ギアを介して前記搬送ローラに前記モータの駆動力を伝達するか否かを切り替えるための第1入力切替部と、前記第2ギアを介して前記搬送ローラに前記モータの駆動力を伝達するか否かを切り替えるための第2入力切替部とを備え、前記第1入力切替部により前記第1ギアを介して前記搬送ローラに前記モータの駆動力が伝達されているときには、前記搬送ローラが一方向に回転し、前記第2入力切替部により前記第2ギアを介して前記搬送ローラに前記モータの駆動力が伝達されるときに、前記モータの駆動力により前記可動部材が移動して、前記複数のギアの組み合わせが変化することにより、前記搬送ローラの回転方向が逆転するようになっていてもよい。
【0009】
このような構成によれば、モータの駆動力を第1ギア又は第2ギアのいずれを介して伝達するかを切り替えることにより、搬送ローラが一方向に回転する状態と、モータの駆動力により可動部材を移動させて、搬送ローラの回転方向が逆転した状態とを切り替えることができる。
【0010】
前記第2入力切替部により前記第2ギアを介して前記搬送ローラに前記モータの駆動力が伝達されるときに、前記モータの駆動力により前記可動部材が移動するのに伴い、前記第1ギアを介さずに前記搬送ローラに前記モータの駆動力が伝達されるようになっていてもよい。
【0011】
このような構成によれば、搬送ローラの回転方向を逆転させるときに、第1ギアを介さずにモータの駆動力が伝達されるので、回転精度が向上し、より確実に原稿の搬送方向を切り替えることができる。
【0012】
前記可動部材は、前記モータの駆動力により回動するようになっていてもよい。
【0013】
このような構成によれば、モータの駆動力により可動部材を回動させるという簡単な構成で原稿の搬送方向を切り替えることができる。
【0014】
本発明に係る画像読取装置は、前記原稿搬送装置により、原稿を読取位置に搬送して第1面の画像を読み取った後、ループ状搬送路を介して原稿を表裏反転させ、第1面の読取時とは逆方向に原稿を前記読取位置に搬送して第2面の画像を読み取る画像読取装置であって、原稿の第1面の読取時における前記読取位置の下流側に設けられ、前記第1入力切替部により前記第1ギアを介して前記搬送ローラに前記モータの駆動力が伝達されているときに、原稿を挟持して、前記搬送ローラと同方向に原稿を搬送するように回転することにより、原稿を前記ループ状搬送路に搬送する第1搬送ローラ対と、前記第2入力切替部により前記第2ギアを介して前記搬送ローラに前記モータの駆動力が伝達されているときに、前記ループ状搬送路に沿って搬送されることにより表裏反転された原稿を挟持して、回転方向が逆転した前記搬送ローラと同方向に原稿を搬送するように回転することにより、原稿を前記ループ状搬送路から前記読取位置に搬送する第2搬送ローラ対とを備えることを特徴とする。
【0015】
このような構成によれば、原稿を読取位置に搬送して第1面の画像を読み取った後、ループ状搬送路を介して原稿を表裏反転させ、第1面の読取時とは逆方向に原稿を読取位置に搬送して第2面の画像を読み取る画像読取装置に、前記原稿搬送装置を適用することができる。したがって、より簡単な構成で確実に原稿の搬送方向を切り替えることができる画像読取装置を提供することができる。
【0016】
前記画像読取装置は、前記ループ状搬送路を介して前記第2搬送ローラ対に搬送される直前の原稿を検知する原稿検知部と、前記原稿検知部により原稿の先端部を検知したことに基づいて、前記第2入力切替部により前記第2ギアを介して前記搬送ローラに前記モータの駆動力が伝達されるように制御する制御部とを備えていてもよい。
【0017】
このような構成によれば、原稿検知部により原稿の先端部が検知されるまで、搬送ローラと同方向に第1搬送ローラ対を回転させて原稿を搬送し、当該原稿の第1面の画像を読み取らせることができる。その後、原稿検知部により原稿の先端部が検知されて第2ギアを介してモータの駆動力が伝達されることにより、回転方向が逆転した搬送ローラと同方向に第2搬送ローラ対を回転させて原稿を搬送し、当該原稿の第2面の画像を読み取らせることができる。
【0018】
前記制御部は、前記原稿検知部により原稿の先端部を検知したことに基づいて、前記ループ状搬送路を介して搬送される原稿の先端部を停止状態の前記第2搬送ローラ対に衝突させることにより、原稿の斜行を補正した後、前記読取位置における原稿の第2面の読取タイミングに合わせて前記第2搬送ローラ対の回転を開始させるように制御するものであってもよい。
【0019】
このような構成によれば、停止状態の第2搬送ローラ対に原稿の先端部を衝突させて良好に斜行を補正することができるとともに、斜行補正後は、原稿の第2面の読取タイミングに合わせて第2搬送ローラ対の回転を開始させることにより、良好に読取を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る原稿搬送装置が備えられた画像読取装置の一例を示した概略断面図である。
【図2】搬送ローラ、第1搬送ローラ対及び第2搬送ローラ対の駆動機構について説明するための概略斜視図である。
【図3】搬送ローラ、第1搬送ローラ対及び第2搬送ローラ対の駆動機構について説明するための概略斜視図である。
【図4】搬送ローラの駆動機構について説明するための概略断面図である。
【図5】搬送ローラの駆動機構について説明するための概略断面図である。
【図6】原稿の両面の画像を読み取る際の制御部による処理の一例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る原稿搬送装置1が備えられた画像読取装置の一例を示した概略断面図である。当該画像読取装置は、原稿搬送路10に沿って原稿を搬送し、読取位置11において原稿の画像を読み取ることができる。より具体的には、原稿搬送装置1により、原稿を読取位置11に搬送して第1面の画像を読み取った後、原稿を表裏反転させ、第1面の読取時とは逆方向に原稿を読取位置11に搬送して第2面の画像を読み取ることができるようになっている。
【0022】
原稿は、原稿トレイ(図示せず)に積層した状態でセットすることができ、当該原稿がピックアップローラ12により送り出される。ピックアップローラ12により複数枚の原稿が送り出された場合には、分離ローラ13により1枚の原稿のみが分離され、原稿搬送路10に搬送されるようになっている。原稿は、原稿搬送路10に沿って搬送ローラ14,15により読取位置11に搬送され、当該読取位置11において第1面の画像が読み取られる。
【0023】
原稿の読取は、読取位置11に設けられたスキャナ16により行われる。当該スキャナ16は、読取位置11を通過する原稿に対して下方から光を照射し、原稿からの反射光を受光することにより、当該反射光の受光量に基づいて画像データを生成する。原稿搬送路10の読取位置11よりも上流側(搬送ローラ15の直前であってもよい。)には、第1原稿センサ17が設けられており、当該第1原稿センサ17により原稿の先端部を検知してから所定時間が経過した後に(所定搬送距離を搬送した後に)、スキャナ16による原稿の第1面の読取が開始されるようになっている。
【0024】
読取位置11で第1面の画像が読み取られた原稿は、原稿搬送路10の一部を構成するループ状搬送路18に搬送される。当該ループ状搬送路18は、読取位置11の下流側からループ状に延び、読取位置11に再び戻るような形状となっている。読取位置11において第1面の画像が読み取られた原稿は、ループ状搬送路18を介して表裏反転された後、第1面の読取時とは逆方向に読取位置11を通過し、当該読取位置11において第2面の画像が読み取られる。
【0025】
原稿の第1面の読取時における読取位置11の下流側には、ループ状搬送路18の入口となる位置に、第1搬送ローラ対191,192が設けられている。当該第1搬送ローラ対191,192は、第1駆動ローラ191と、第1駆動ローラ191に外周面同士が接触する第1従動ローラ192とからなる。第1駆動ローラ191は、モータ(図示せず)の駆動力により回転し、当該第1駆動ローラ191に外周面同士が接触する第1従動ローラ192は、第1駆動ローラ191の回転に伴って回転する。第1搬送ローラ対191,192は、読取位置11で第1面の画像が読み取られた後の原稿を挟持してループ状搬送路18に搬送する。
【0026】
原稿の第2面の読取時における読取位置11の上流側には、ループ状搬送路18の出口となる位置に、第2搬送ローラ対193,194が設けられている。該第2搬送ローラ対193,194は、第2駆動ローラ193と、第2駆動ローラ193に外周面同士が接触する第2従動ローラ194とからなる。第2駆動ローラ193は、モータ(図示せず)の駆動力により回転し、当該第2駆動ローラ193に外周面同士が接触する第2従動ローラ194は、第2駆動ローラ193の回転に伴って回転する。第2搬送ローラ対193,194は、ループ状搬送路18に沿って搬送されることにより表裏反転された原稿を挟持してループ状搬送路18から読取位置11に搬送する。
【0027】
ループ状搬送路18の途中には、第1搬送ローラ対191,192によりループ状搬送路18に搬送された原稿を第2搬送ローラ対193,194へと搬送する搬送ローラ20が設けられている。ループ状搬送路18における第2搬送ローラ対193,194の直前には、第2原稿センサ21が設けられており、当該第2原稿センサ21により原稿の先端部を検知してから所定時間が経過した後に(所定搬送距離を搬送した後に)、スキャナ16による原稿の第2面の読取が開始されるようになっている。第2原稿センサ21は、ループ状搬送路18を介して第2搬送ローラ対193,194に搬送される直前の原稿を検知する原稿検知部として機能する。
【0028】
ループ状搬送路18の入口と出口との合流部には、可撓性を有するフィルム22が設けられている。このフィルム22の作用により、第1面の画像が読み取られた後の原稿を入口からループ状搬送路18へと良好に搬送することができるとともに、ループ状搬送路18を介して表裏反転された原稿を出口から読取位置11へと良好に搬送することができる。このように、本実施形態では、ループ状搬送路18を介して連続する一連の原稿搬送路10(ワンパス)に沿って原稿を搬送し、当該原稿の両面の画像を読み取ることができる。
【0029】
読取位置11で第2面の画像が読み取られた原稿は、原稿搬送路10から分岐した分岐路23に搬送される。このとき、搬送ローラ15の回転方向は逆転している。分岐路23は、ループ状搬送路18と部分的に合流及び分岐することにより交差している。分岐路23に搬送された原稿は、当該分岐路23に設けられた搬送ローラ24、及び、分岐路23とループ状搬送路18との合流部に設けられた搬送ローラ20を介して、排出ローラ25へと搬送され、機外に排出される。本実施形態では、排出ローラ25は、図1に示すように3連ローラにより構成されている。当該3連ローラは、ループ状搬送路18においては当該ループ状搬送路18に沿って原稿を搬送する搬送ローラとして機能し、分岐路23においては原稿を機外に排出する上述の排出ローラ25として機能している。原稿搬送路10から分岐路23が分岐する部分、及び、分岐路23とループ状搬送路18との合流部における搬送ローラ20の下流側の分岐部分には、それぞれ図示しないガイドが設けられており、当該ガイドにより原稿の搬送経路が適切に選択されるようになっている。
【0030】
なお、原稿の第1面のみを読み取る場合には、読取位置11で第1面の画像が読み取られた原稿が、ループ状搬送路18へと搬送された後、当該ループ状搬送路18の途中で交差している分岐路23を介して排出ローラ25へと搬送され、機外に排出されるようになっている。
【0031】
図2及び図3は、搬送ローラ15、第1搬送ローラ対191,192及び第2搬送ローラ対193,194の駆動機構について説明するための概略斜視図である。
【0032】
第1搬送ローラ対191,192の第1駆動ローラ191には、モータ41の駆動力を第1駆動ローラ191に入力するための第1駆動入力ギア51と、第1駆動ローラ191を介してモータ41の駆動力を出力する第1駆動出力ギア52とが取り付けられている。第1駆動入力ギア51は、第1駆動ローラ191の回転軸の一端部に同軸上に取り付けられており、第1駆動出力ギア52は、第1駆動ローラ191の回転軸の他端部に同軸上に取り付けられている。
【0033】
第2搬送ローラ193,194の第2駆動ローラ193には、モータ41の駆動力を第2駆動ローラ193に入力するための第2駆動入力ギア53と、第2駆動ローラ193を介してモータ41の駆動力を出力する第2駆動出力ギア54とが取り付けられている。第2駆動入力ギア53は、第2駆動ローラ193の回転軸の一端部に同軸上に取り付けられており、第2駆動出力ギア54は、第2駆動ローラ193の回転軸の他端部に同軸上に取り付けられている。
【0034】
図2の状態では、モータ41の駆動軸に取り付けられた駆動ギア55には、複数の中間ギア56及び第1クラッチギア57を介して、第1駆動入力ギア51が連結されている。第1クラッチギア57は、隣接するギアに駆動力を伝達する伝達状態と、隣接するギアに駆動力を伝達しない解除状態とに切り替え可能となっている。図2のように第1クラッチギア57が伝達状態のときには、モータ41の駆動に伴って、当該モータ41の駆動力が第1駆動入力ギア51に入力され、第1搬送ローラ対191,192が回転する。
【0035】
この例では、中間ギア56及び第1クラッチギア57を併せた数が偶数(例えば4つ)であり、図2に矢印で示すように、モータ41の回転方向と第1駆動ローラ191の回転方向とが逆方向になっている。この図2に矢印で示すような方向に第1駆動ローラ191を回転させることにより、読取位置11で第1面の画像が読み取られた後の原稿をループ状搬送路18に搬送する方向に、第1搬送ローラ対191,192を回転させることができる。
【0036】
図3の状態では、モータ41の駆動軸に取り付けられた駆動ギア55には、複数の中間ギア58及び第2クラッチギア59を介して、第2駆動入力ギア53が連結されている。第2クラッチギア59は、隣接するギアに駆動力を伝達する伝達状態と、隣接するギアに駆動力を伝達しない解除状態とに切り替え可能となっている。図3のように第2クラッチギア59が伝達状態のときには、モータ41の駆動に伴って、当該モータ41の駆動力が第2駆動入力ギア53に入力され、第2搬送ローラ対193,194が回転する。
【0037】
この例では、中間ギア58及び第2クラッチギア59を併せた数が奇数(例えば3つ)であり、図3に矢印で示すように、モータ41の回転方向と第2駆動ローラ193の回転方向とが同方向になっている。この図3に矢印で示すような方向に第2駆動ローラ193を回転させることにより、ループ状搬送路18を介して表裏反転された原稿をループ状搬送路18から読取位置11に搬送する方向に、第2搬送ローラ対193,194を回転させることができる。
【0038】
このように、本実施形態では、モータ41が一方向にのみ回転するようになっており、第1クラッチギア57又は第2クラッチギア59のいずれか一方を伝達状態とすることにより、第1搬送ローラ対191,192又は第2搬送ローラ対193,194のいずれか一方を回転させることができる。モータ41、第1クラッチギア57及び第2クラッチギア59の動作は、例えばCPUなどにより構成される制御部40によって制御される。当該制御部40には、第1原稿センサ17及び第2原稿センサ21も接続されている。
【0039】
図4及び図5は、搬送ローラ15の駆動機構について説明するための概略断面図である。図2〜図5に示すように、搬送ローラ15には、モータ41の駆動力を搬送ローラ15に入力するための駆動入力ギア61が同軸上に取り付けられている。
【0040】
図2及び図4の状態では、第1搬送ローラ対191,192の第1駆動ローラ191に取り付けられた第1駆動出力ギア52に、複数の中間ギア62,63,64を介して、搬送ローラ15の駆動入力ギア61が連結されている。これにより、モータ41の駆動力が、伝達状態の第1クラッチギア57を介して第1駆動ローラ191に入力されるとともに、当該第1駆動ローラ191から搬送ローラ15に入力され、搬送ローラ15が回転するようになっている。
【0041】
この例では、第1駆動出力ギア52と駆動入力ギア61との間に介在する中間ギア62〜64の数が奇数(例えば3つ)であり、図2及び図4に矢印で示すように、第1駆動ローラ191の回転方向と搬送ローラ15の回転方向が同方向になっている。すなわち、第1クラッチギア57によりモータ41の駆動力が伝達されているときには、第1搬送ローラ対191,192が、読取位置11で第1面の画像が読み取られた後の原稿を挟持して、搬送ローラ15と同方向に原稿を搬送するように回転する。
【0042】
図3及び図5の状態では、第2搬送ローラ対193,194の第2駆動ローラ193に取り付けられた第2駆動出力ギア54に、複数の中間ギア65,63,64を介して、搬送ローラ15の駆動入力ギア61が連結されている。これにより、モータ41の駆動力が、伝達状態の第2クラッチギア59を介して第2駆動ローラ193に入力されるとともに、当該第2駆動ローラ193から搬送ローラ15に入力され、図2及び図4の状態とは逆方向に搬送ローラ15が回転するようになっている。
【0043】
この例では、第2駆動出力ギア54と駆動入力ギア61との間に介在する中間ギア63〜65の数が奇数(例えば3つ)であり、図3及び図5に矢印で示すように、第2駆動ローラ193の回転方向と搬送ローラ15の回転方向が同方向になっている。すなわち、第2クラッチギア59によりモータ41の駆動力が伝達されているときには、第2搬送ローラ対193,194が、ループ状搬送路18を介して表裏反転された原稿を挟持して、回転方向が逆転した搬送ローラ15と同方向に原稿を搬送するように回転する。
【0044】
図2〜5に示すように、当該原稿搬送装置1には、搬送ローラ15に平行な回転軸線を中心に回転可能な可動部材70が備えられている。当該可動部材70は、モータ41の駆動力を搬送ローラ15に伝達する複数のギア51〜59,61〜65のうち、第1ギアとしての中間ギア62と、第2ギアとしての中間ギア65を保持している。当該可動部材70には、第2駆動出力ギア54に噛み合わせるためのギア部71が形成されている。第2駆動出力ギア54には、同軸上に2つのギア部541,542が形成されている。ギア部541は可動部材70のギア部71に噛み合うことができ、ギア部542は中間ギア65に噛み合うことができるようになっている。
【0045】
図2及び図4の状態では、可動部材70のギア部71は第2駆動出力ギア54のギア部541に噛み合っているが、第2搬送ローラ対193,194の第2駆動ローラ193が回転しないため、モータ41の駆動力は可動部材70のギア部71に伝達されない。この状態で、第1クラッチギア57が解除状態とされ、第2クラッチギア59が伝達状態とされた場合には、第2搬送ローラ対193,194の第2駆動ローラ193が回転し、当該第2駆動ローラ193に第2駆動出力ギア54を介して連結された可動部材70が回動する。
【0046】
可動部材70が回動するのに伴い、図3及び図5に示すように、中間ギア65が第2駆動出力ギア54のギア部542に噛み合うとともに、中間ギア62が第1駆動出力ギア52に噛み合わない状態となる。この状態では、可動部材70のギア部71は第2駆動出力ギア54のギア部541に噛み合っていない。可動部材70は、ばねなどの付勢部材(図示せず)により付勢されており、第2クラッチギア59が解除状態となったときに、図3及び図5に示す状態から図2及び図4に示す状態に戻るようになっている。このように、第1クラッチギア57は、中間ギア62を介して搬送ローラ15にモータ41の駆動力を伝達するか否かを切り替えるための第1入力切替部として機能する。また、第2クラッチギア59は、中間ギア65を介して搬送ローラ15にモータ41の駆動力を伝達するか否かを切り替えるための第2入力切替部として機能する。
【0047】
上述の通り、第1クラッチギア57により中間ギア62を介して搬送ローラ15にモータ41の駆動力が伝達されているときには、搬送ローラ15が一方向に回転する。そして、第2クラッチギア59により中間ギア65を介して搬送ローラ15にモータ41の駆動力が伝達される際に、モータ41の駆動力により可動部材70が回動して、複数のギア51〜59,61〜65の組み合わせが変化することにより、搬送ローラ15の回転方向が逆転するようになっている。すなわち、モータ41の駆動力を中間ギア62又は中間ギア65のいずれを介して伝達するかを切り替えることにより、搬送ローラ15が一方向に回転する状態と、モータ41の駆動力により可動部材70を回動させて、搬送ローラ15の回転方向が逆転した状態とを切り替えることができる。
【0048】
本実施形態では、モータ41の駆動力を利用して可動部材70を回動させ、複数のギア51〜59,61〜65の組み合わせを変化させることにより、搬送ローラ15の回転方向を逆転させることができる。したがって、ソレノイドなどを用いる場合と比較して、より簡単な構成で原稿の搬送方向を切り替えることができる。また、原稿の搬送方向を切り替えるときには、複数のギア51〜59,61〜65の組み合わせが完全に切り替えられるので、搬送ローラ15の回転方向を精度よく逆転させて、確実に原稿の搬送方向を切り替えることができる。
【0049】
また、本実施形態では、第2クラッチギア59により中間ギア65を介して搬送ローラ15にモータ41の駆動力が伝達される際に、モータ41の駆動力により可動部材70が回動するのに伴い、中間ギア62を介さずに搬送ローラ15にモータ41の駆動力が伝達されるようになっている。そのため、搬送ローラ15の回転方向を逆転させるときに、中間ギア62を介さずにモータ41の駆動力が伝達されるので、回転精度が向上し、より確実に原稿の搬送方向を切り替えることができる。
【0050】
図6は、原稿の両面の画像を読み取る際の制御部40による処理の一例を示したフローチャートである。まず、モータ41の回転が開始され(ステップS101)、原稿トレイからピックアップローラ12により送り出された原稿は、原稿搬送路10を介して読取位置11に搬送され、当該読取位置11において第1面の画像が読み取られる(ステップS102)。このとき、複数のギア51〜59,61〜65は、図2及び図4に示すような態様でモータ41に連結されており、第1搬送ローラ対191,192が、読取位置11で第1面の画像が読み取られた後の原稿を挟持して、搬送ローラ15と同方向に原稿を搬送するように回転する。
【0051】
第1面の画像が読み取られ、ループ状搬送路18に搬送された原稿は、当該ループ状搬送路18に設けられた第2原稿センサ21により原稿の先端部が検知される(ステップS103でYes)。その後、所定時間が経過したときに(ステップS104でYes)、第1クラッチギア57を解除状態にするとともに、第2クラッチギア59を伝達状態にする(ステップS105)。
【0052】
これにより、第1搬送ローラ対191,192の回転が停止されるとともに、第2搬送ローラ対193,194の回転が開始される。このとき、第2搬送ローラ対193,194の第2駆動ローラ193の回転に伴い、可動部材70が回動し、複数のギア51〜59,61〜65が、図3及び図5に示すような態様でモータ41に連結された状態となる。したがって、搬送ローラ15の回転方向が逆転し、第2搬送ローラ対193,194が、ループ状搬送路18を介して表裏反転された原稿を挟持して、回転方向が逆転した搬送ローラ15と同方向に原稿を搬送するように回転する。
【0053】
このようにして、表裏反転された原稿が読取位置11に搬送され、当該読取位置11において第2面の画像が読み取られる(ステップS106)。原稿の第2面の画像が読み取られた後、第1クラッチギア57を伝達状態にするとともに、第2クラッチギア59を解除状態にする(ステップS107)。これにより、複数のギア51〜59,61〜65が、図2及び図4に示すような態様でモータ41に連結された状態に戻る。
【0054】
本実施形態では、第2原稿センサ21により原稿の先端部を検知したことに基づいて、第2クラッチギア59により中間ギア65を介して搬送ローラ15にモータ41の駆動力が伝達されるように制御される。したがって、第2原稿センサ21により原稿の先端部が検知されるまで、搬送ローラ15と同方向に第1搬送ローラ対191,192を回転させて原稿を搬送し、当該原稿の第1面の画像を読み取らせることができる。その後、第2原稿センサ21により原稿の先端部が検知されて中間ギア65を介して搬送ローラ15にモータ41の駆動力が伝達されることにより、回転方向が逆転した搬送ローラ15と同方向に第2搬送ローラ対193,194を回転させて原稿を搬送し、当該原稿の第2面の画像を読み取らせることができる。
【0055】
本実施形態のような原稿搬送装置1では、原稿の搬送方向が若干ずれることにより、読取位置11に向かって原稿が斜めに傾いた状態で搬送される現象(いわゆる、「斜行」)が生じる場合がある。そこで、本実施形態では、ループ状搬送路18に搬送された原稿の先端部を停止状態の第2搬送ローラ対193,194に衝突させることにより、原稿の先端部を第2搬送ローラ対193,194において揃え、原稿の斜行を補正することができるようになっている。
【0056】
具体的には、上記所定時間(ステップS104)が、第2原稿センサ21により原稿の先端部が検知されてから、原稿の先端部が第2搬送ローラ対193,194に到達するまでの時間よりも長く設定されている。これにより、停止状態の第2搬送ローラ対193,194に原稿の先端部を衝突させて良好に斜行を補正することができる。
【0057】
また、上記所定時間は、読取位置11における原稿の第2面の読取タイミングに合わせて第2搬送ローラ対193,194の回転を開始させることができるような値に設定されている。すなわち、原稿の先端部が第2搬送ローラ対193,194から読取位置11に到達するタイミングで読取が開始されるように、上記所定時間が設定されている。このように、斜行補正後は、原稿の第2面の読取タイミングに合わせて第2搬送ローラ対193,194の回転を開始させることにより、良好に読取を行うことができる。
【0058】
以上の実施形態では、可動部材70が2つの中間ギア62,65を保持する構成について説明した。しかし、可動部材70は、複数のギア51〜59,61〜65の少なくとも一部を保持するものであればよく、中間ギア62,65だけでなく他のギアも保持するような構成であってもよいし、中間ギア62,65以外のギアを保持するような構成であってもよい。
【0059】
本実施形態のようにモータ41の駆動力により可動部材70を回動させるような構成であれば、簡単な構成で原稿の搬送方向を切り替えることができる。しかし、可動部材70は、回動するような構成に限らず、例えばスライドなどのように他の態様で移動するような構成であってもよい。
【0060】
本実施形態における原稿搬送装置1は、ループ状搬送路18を介して原稿を表裏反転させるような構成となっているが、このような構成に限らず、例えば原稿をスイッチバックさせて原稿を表裏反転させるような構成などであってもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 原稿搬送装置
10 原稿搬送路
11 読取位置
15 搬送ローラ
16 スキャナ
17 第1原稿センサ
18 ループ状搬送路
21 第2原稿センサ
23 分岐路
40 制御部
41 モータ
51 第1駆動入力ギア
52 第1駆動出力ギア
53 第2駆動入力ギア
54 第2駆動出力ギア
55 駆動ギア
57 第1クラッチギア(第1入力切替部)
59 第2クラッチギア(第2入力切替部)
61 駆動入力ギア
56 中間ギア
58 中間ギア
62 中間ギア(第1ギア)
63 中間ギア
64 中間ギア
65 中間ギア(第2ギア)
70 可動部材
71 ギア部
191 第1駆動ローラ
192 第1従動ローラ
193 第2駆動ローラ
194 第2従動ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送ローラにより原稿を搬送するための原稿搬送装置であって、
一方向にのみ回転するモータと、
前記モータの駆動力を前記搬送ローラに伝達する複数のギアと、
前記複数のギアの少なくとも一部を保持する可動部材とを備え、
前記モータの駆動力により前記可動部材が移動して、前記複数のギアの組み合わせが変化することにより、前記搬送ローラの回転方向が逆転することを特徴とする原稿搬送装置。
【請求項2】
前記可動部材には、前記複数のギアのうち少なくとも第1ギア及び第2ギアが保持されており、
前記第1ギアを介して前記搬送ローラに前記モータの駆動力を伝達するか否かを切り替えるための第1入力切替部と、
前記第2ギアを介して前記搬送ローラに前記モータの駆動力を伝達するか否かを切り替えるための第2入力切替部とを備え、
前記第1入力切替部により前記第1ギアを介して前記搬送ローラに前記モータの駆動力が伝達されているときには、前記搬送ローラが一方向に回転し、前記第2入力切替部により前記第2ギアを介して前記搬送ローラに前記モータの駆動力が伝達されるときに、前記モータの駆動力により前記可動部材が移動して、前記複数のギアの組み合わせが変化することにより、前記搬送ローラの回転方向が逆転することを特徴とする請求項1に記載の原稿搬送装置。
【請求項3】
前記第2入力切替部により前記第2ギアを介して前記搬送ローラに前記モータの駆動力が伝達されるときに、前記モータの駆動力により前記可動部材が移動するのに伴い、前記第1ギアを介さずに前記搬送ローラに前記モータの駆動力が伝達されることを特徴とする請求項2に記載の原稿搬送装置。
【請求項4】
前記可動部材は、前記モータの駆動力により回動することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の原稿搬送装置。
【請求項5】
請求項2又は3に記載の原稿搬送装置により、原稿を読取位置に搬送して第1面の画像を読み取った後、ループ状搬送路を介して原稿を表裏反転させ、第1面の読取時とは逆方向に原稿を前記読取位置に搬送して第2面の画像を読み取る画像読取装置であって、
原稿の第1面の読取時における前記読取位置の下流側に設けられ、前記第1入力切替部により前記第1ギアを介して前記搬送ローラに前記モータの駆動力が伝達されているときに、原稿を挟持して、前記搬送ローラと同方向に原稿を搬送するように回転することにより、原稿を前記ループ状搬送路に搬送する第1搬送ローラ対と、
前記第2入力切替部により前記第2ギアを介して前記搬送ローラに前記モータの駆動力が伝達されているときに、前記ループ状搬送路に沿って搬送されることにより表裏反転された原稿を挟持して、回転方向が逆転した前記搬送ローラと同方向に原稿を搬送するように回転することにより、原稿を前記ループ状搬送路から前記読取位置に搬送する第2搬送ローラ対とを備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項6】
前記ループ状搬送路を介して前記第2搬送ローラ対に搬送される直前の原稿を検知する原稿検知部と、
前記原稿検知部により原稿の先端部を検知したことに基づいて、前記第2入力切替部により前記第2ギアを介して前記搬送ローラに前記モータの駆動力が伝達されるように制御する制御部とを備えることを特徴とする請求項5に記載の画像読取装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記原稿検知部により原稿の先端部を検知したことに基づいて、前記ループ状搬送路を介して搬送される原稿の先端部を停止状態の前記第2搬送ローラ対に衝突させることにより、原稿の斜行を補正した後、前記読取位置における原稿の第2面の読取タイミングに合わせて前記第2搬送ローラ対の回転を開始させるように制御することを特徴とする請求項6に記載の画像読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−51706(P2012−51706A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196859(P2010−196859)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】