説明

双方向スイッチ

【課題】 押圧操作を解除した際に、スイッチノブの非押圧付勢側の端部がスイッチ素子に当接して生じる音を効果的に低減できる双方向スイッチを提供する。
【解決手段】 ノブ本体部2aと一体に揺動変位可能に形成された摩擦受け部(ノブ主側壁部2b)の被摩擦面Sに当接するとともに、ノブ本体部2aのいずれかの端部に押圧操作が加わるに伴い、被摩擦面Sにより押し戻される向きに弾性変形し、その弾性復帰力による被摩擦面への押圧摩擦力により、押圧操作の解除に伴う揺動スイッチノブ2の中立位置へ向けた復帰動作を制動する摩擦制動部4a,4bを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は双方向スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2005−284092号公報
【0003】
従来から、車両のフロントパネルや各種機器に双方向スイッチ(シーソースイッチとも呼ばれる)が使用されている。これは一対のスイッチ素子と、そのスイッチ素子の間に設けられた揺動支点部によって揺動自在にされた揺動スイッチノブとを備えたもので、揺動スイッチノブのいずれか一方の端部が押圧操作されると、対応するスイッチ素子が押圧付勢される構造になっている。また、押圧操作に伴って弾性変形する弾性部材が設けられ、押圧操作が解除された場合に、この弾性部材の弾性復帰力によって揺動スイッチノブが中立位置へ復帰する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし従来の双方向スイッチは押圧操作を解除すると、弾性部材によってスイッチノブが中立位置に復帰する際に、非押圧付勢側の端部が反動によってスイッチ素子に当接し、いわゆるタタキ音が発生することがあった。このタタキ音により高級感が損なわれたり、ユーザに不快感を与えたりする問題があった。
【0005】
この問題を解決するために従来は、タタキ音が発生する部分にグリースやラバー等の緩衝材を配置していた。しかしこの方法は、製造工程数が増加したり、グリースがスイッチ素子に悪影響を与える等の問題があった。
【0006】
本発明の課題は、押圧操作を解除した際に、スイッチノブの非押圧付勢側の端部がスイッチ素子に当接して生じる音を、緩衝材を用いることなく効果的に低減できる双方向スイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の双方向スイッチ素子は、
支持体上にて予め定められた基準方向に所定の間隔を隔てて配置され、押圧付勢及び付勢解除により導通状態が切り替わる第一及び第二のスイッチ素子と、
揺動長手方向が基準方向と一致するよう支持体に揺動支点部を介して揺動可能に取り付けられるノブ本体部を有し、第一端部側に第一のスイッチ素子を付勢する第一スイッチ付勢部が、第二端部側に第二のスイッチ素子を付勢する第二スイッチ付勢部が形成され、ノブ本体部の第一端部又は第二端部に押圧操作が加わるに伴い、第一又は第二のスイッチ付勢部が対応するスイッチ素子に向けて接近する向きに揺動変位する揺動スイッチノブと、
押圧操作により第一又は第二のスイッチ付勢部のいずれかが対応するスイッチ素子に向けて揺動変位するに伴い弾性変形し、押圧操作の解除に伴い弾性復帰することにより揺動スイッチノブを押圧操作時とは逆向きに揺動変位させ、スイッチ付勢部を対応するスイッチ素子から離間させて中立位置に復帰させるノブ復帰手段と、
ノブ本体部と一体に揺動変位可能に形成された摩擦受け部の被摩擦面に当接するとともに、ノブ本体部のいずれかの端部に押圧操作が加わるに伴い、被摩擦面により押し戻される向きに弾性変形し、その弾性復帰力による被摩擦面への押圧摩擦力により、押圧操作の解除に伴なう揺動スイッチノブの中立位置へ向けた復帰動作を制動する摩擦制動部と、
を備えることを特徴とする。
【0008】
上記発明によると、揺動スイッチノブのノブ本体部と一体に揺動変位可能な摩擦受け部が形成され、その摩擦受け部の被摩擦面に当接する摩擦制動部を備える。この摩擦制動部は、ノブ本体部の第一端部および第二端部の内いずれかの端部に押圧操作が加わるのに伴って、被摩擦面により押し戻される向きに弾性変形する。そして、弾性復帰力による被摩擦面への押圧摩擦力により、押圧操作の解除に伴う揺動スイッチノブの中立位置へ向けた復帰動作を制動する。これにより、押圧操作を解除した時に揺動スイッチノブの揺動速度を下げることができ、非押圧側の端部がスイッチ素子に当接した時に発生する音を効果的に低減することが可能となる。
【0009】
この場合、摩擦受け部は、揺動スイッチノブの揺動支点部に関して第一端部側に形成された第一の摩擦受け部と、同じく第二端部側に形成された第二の摩擦受け部とを有し、摩擦制動部は第一の摩擦受け部と当接する第一の摩擦制動部と第二の摩擦受け部と当接する第二の摩擦制動部とを有する構成とすることができる。この構成によると、摩擦制動部および摩擦受け部が揺動スイッチノブの第一端部側と第二端部側にそれぞれ分けて設けられているため、押圧操作を解除した際の、揺動スイッチノブの中立位置への復帰動作を効果的に制動することができる。
【0010】
また本発明は、ノブ本体部の周縁からスイッチ素子側に延出するノブ側壁部が形成され、支持体上には支持体壁部と対向配置される支持体壁部が立設され、支持体壁部とノブ側壁部との各対向面の一方が被摩擦面とされ、他方に被摩擦面に向けて突出する形で摩擦制動部が形成される構成にすることができる。この構成によると、ノブ本体部に形成されたノブ側壁部と、支持体に形成された支持体壁部のいずれか一方に被摩擦面が形成され、他方に摩擦制動部が形成される。そのため、ノブ側壁部と支持体壁部を非摩擦面または摩擦制動部に利用することが可能となる。例えば摩擦制動部を支持体壁部に形成し、被摩擦面をノブ側壁部に形成することができる。
【0011】
また本発明は、ノブ本体部の揺動軸線方向における両端縁からスイッチ素子側に延出する形で1対のノブ主側壁部が形成され、支持体上には各ノブ主側壁部と対向する形で支持主壁部が立設され、各対向するノブ主側壁部と支持主壁部との対が揺動支点部により連結されてなり、摩擦制動部が支持主壁部の少なくとも一方に形成される構成にすることができる。この構成によると、比較的広く形成されたノブ主側壁部と支持主壁部との少なくとも一方に摩擦制動部を設けたで、揺動スイッチノブを制動しやすい。
【0012】
この場合、1対の支持主壁部が支持体上に予め定められた間隔で対向配置され、それら支持主壁部の外面に摩擦制動部が突出形成されるとともに、ノブ主側壁部が支持主壁部の外面側にて摩擦制動部を隠蔽する形で対向配置され、ノブ主側壁部の内面が被摩擦面とされるようにすることができる。この構成によると、摩擦制動部がノブ主側壁部によって隠蔽されるので、揺動スイッチノブがパネルに設けられている場合、そのパネルと揺動スイッチノブの隙間からユーザが内部を見ても摩擦制動部が見えず、高級感を出すことができる。
【0013】
例えば摩擦制動部は、ノブ側壁部側の対向面に向けて突出する片持ち梁形態の弾性爪部として形成することができる。この構成によると、片持ち梁形態の弾性爪部を第一端部側と第二端部側にそれぞれ分けて形成することが容易であり、揺動スイッチノブを効果的に制動できる。
【0014】
さらには、支持体壁部を厚さ方向に貫通する形で爪区画スリットが、爪基端側に位置する第一端から爪長手方向に延びて爪先端位置で方向転換するとともに、爪基端側に戻って第一端と爪幅方向に隔てられた第二端に至る形で形成され、弾性爪部は、爪区画スリットの内側に位置する舌状の爪本体と、爪本体の先端部においてノブ側壁部側に突出する摩擦突起部とを有するものとして形成されるようにしてもよい。この構成によると、支持体を例えば合成樹脂で成型した場合、支持体壁部と摩擦制動部を一体に成型できる。つまり、摩擦制動部を別体部材として設ける必要がなくなる。
【0015】
この場合、支持主壁部に対し第一の摩擦制動部が揺動支点部に関して基準方向における第一側に、第二の摩擦制動部が同じく第二側に形成することができる。この構成によると、揺動スイッチノブの第一端部と第二端部のどちらが押圧操作された場合でも、その押圧操作の解除に伴う揺動スイッチノブの中立位置への復帰動作を効果的に制動することができる。
【0016】
さらには、第一の摩擦制動部ないし第二の摩擦制動部は、ノブ本体部が中立状態のとき、ノブ主側壁部の内面に形成された被摩擦面によりその双方が弾性付勢状態とされるとともに、第一端部と第二端部との一方が押圧付勢状態となった場合に、ノブ本体部の揺動変位に伴い、ノブ主側壁部の非押圧付勢側において被摩擦面の端縁が第一の摩擦制動部ないし第二の摩擦制動部の対応する側のものから離脱する構成にしてもよい。このようにすると、揺動スイッチノブを押圧操作した場合に、非押圧付勢側の被摩擦面の端縁が摩擦制動部から離脱するため、摩擦力が加わらなくなり、揺動スイッチノブを押す力が軽くてすむ。
【0017】
この場合、ノブ主側壁部の非押圧付勢側において被摩擦面の端縁が第一の摩擦制動部ないし第二の摩擦制動部の対応する側のものから離脱するに伴い、非押圧付勢側の摩擦制動部が被摩擦面の延長よりも外側に突出する向きに変位する一方、押圧付勢側の摩擦制動部はこれと反対方向に連動変位するようにできる。この構成によると、非押圧付勢側の摩擦制動部は被摩擦面の延長よりも外側に突出する向きに変位して、当該被摩擦面の端縁から離脱する。これにより、非押圧付勢側の摩擦制動部による摩擦力が加わらなくなり、揺動スイッチノブを押す力が軽くてすむ。さらに、押圧付勢側の摩擦制動部はこれと反対方向に連動変位するため、押圧付勢側の摩擦制動部による摩擦力を低減もしくは無くすことができる。つまり上記構成によると、非押圧付勢側と押圧付勢側の双方において、摩擦制動部による摩擦力を低減できるため、軽い力で揺動スイッチノブを押すことが可能となる。また、押圧操作を解除した場合には、中立位置に復帰する揺動スイッチノブの端縁が非押圧付勢側と押圧付勢側の双方の摩擦制動部に当接するため、揺動スイッチノブが制動される。そのため、押圧操作を解除した際に、非押圧付勢側の端部とスイッチ素子との当接によって生じる音を低減できる。
【0018】
また、弾性爪部の先端側にノブ側壁部側に突出する摩擦突起部が形成されるとともに、摩擦突起部の被摩擦面の端縁に近い側の側面に、中立位置への復帰時に端縁が乗り上げるための傾斜状のガイド面を形成してもよい。このようにすると、揺動スイッチノブが中立位置へ復帰する時に、ノブ主側壁部の端縁と摩擦制動部との引っ掛かりを防止できる。
【0019】
例えば、第一の摩擦制動部をなす第一の弾性爪部と、第二の摩擦制動部をなす第二の弾性爪部とが、各々爪本体の基端側が揺動支点部側に位置し、先端側が基準方向にて互いに反対向きに延びるように配置され、それら2つの爪本体部を区画する爪区画スリットの第一端同士及び第二端同士が、基準方向にて互いに対向する位置関係で形成され、爪区画スリットの第一端同士の間に位置する部分と、同じく第二端同士の間に位置する部分とが、2つの爪本体部を連動変位させるためのねじれ支点部を形成するようにできる。このようにすると、支持体主壁部と、摩擦制動部と、ねじれ支点部とを一体に形成することが可能になる。すなわち、摩擦制動部と、ねじれ支点部とを別体部材とする必要がなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施形態を、図面を参照しながら以下に説明する。
図1は本発明に係る双方向スイッチ1が設けられたフロントパネル12の正面図である。このようにフロントパネル12には双方向スイッチ1の他、各種スイッチ群60とディスプレイ50とを備え、双方向スイッチ1によって、例えば車内エアコンの温度を設定できるようになっている。
【0021】
次に、双方向スイッチ1の分解斜視図を図2に示し、断面図を図3に示す。このように双方向スイッチ1は、支持体9と、第一のスイッチ素子11aおよび第二のスイッチ素子11bと、揺動支点部3を介して揺動自在にされた揺動スイッチノブ2と、ノブ復帰手段7と、摩擦制動部4とを備える。
【0022】
より詳しくは、第一及び第二のスイッチ素子11a,11bは、支持体9上に予め定められた基準方向に所定の間隔を隔てて配置され、押圧付勢及び付勢解除により導通状態が切り替わるものである。また、揺動スイッチノブ2は、揺動長手方向が基準方向と一致するよう支持体9に揺動支点部3を介して揺動可能に取り付けられるノブ本体部2aを有し、第一端部2d側に第一のスイッチ素子11aを付勢する第一スイッチ付勢部2fが形成され、第二端部2e側に第二のスイッチ素子11bを付勢する第二スイッチ付勢部2gが形成されている。そして、ノブ本体部2aの第一端部2d又は第二端部2eに押圧操作が加わるに伴い、第一又は第二のスイッチ付勢部2f,2gが対応するスイッチ素子11a,11bに向けて接近する向きに揺動変位する。本実施例では図3に示すように、第一又は第二のスイッチ付勢部2f,2gの裏面にガイド部10が設けられており、このガイド部10の先端に押される形で各スイッチ素子11a,11bが押圧付勢される。
【0023】
ノブ復帰手段7は、押圧操作により第一又は第二のスイッチ付勢部2f,2gのいずれかが対応するスイッチ素子11a,11bに向けて揺動変位するに伴い弾性変形し、押圧操作の解除に伴い弾性復帰することにより、揺動スイッチノブ2を押圧操作時とは逆向きに揺動変位させ、スイッチ付勢部2f,2gを対応するスイッチ素子11a,11bから離間させて中立位置に復帰させる。本実施例では、ノブ復帰手段7はバネ部材として構成されている。
【0024】
摩擦制動部4は、ノブ本体部2aと一体に揺動変位可能にされた摩擦受け部(本実施例では、ノブ主側壁部2b)の被摩擦面(本実施例では、ノブ主側壁部2bの内面)に当接するとともに、ノブ本体部2aのいずれかの端部2d,2eに押圧操作が加わるに伴い、被摩擦面により押し戻される向きに弾性変形し、その弾性復帰力による被摩擦面への押圧摩擦力により、押圧操作の解除に伴う揺動スイッチノブ2の中立位置へ向けた復帰動作を制動する。
【0025】
第一端部2dまたは第二端部2eを押圧操作すると、揺動スイッチノブ2が揺動し、第一又は第二のスイッチ素子11a,11bが押圧付勢される。その状態で押圧操作を解除すると、従来の双方向スイッチでは、ノブ復帰手段7の弾性復帰力によって揺動スイッチノブが中立位置に復帰し、その反動で非押圧付勢側のスイッチ素子にガイド部10が当接してタタキ音が発生していた。これに対して本発明は、上述した摩擦制動部4の押圧摩擦力により揺動スイッチノブ2を制動するため、タタキ音を効果的に低減できる。また、上述したグリース等の緩衝材を使用することもないので、スイッチ阻止11a,11bに悪影響を与えなくてすむ。
【0026】
一方、図2に示すように、ノブ本体本体部2aの周縁からはスイッチ素子11a,11bに延出する一対のノブ主側壁部2b,2cが形成され、支持体9の周縁から立設する支持主壁部9a,9bと対向するように配置されている。そして、対向するノブ主側壁部2b,2cと支持主壁部9a,9bの対が揺動支点部3により連結されている。より詳しくは、一方の支持主壁部9a,9bに支点突起3aが形成され、ノブ主側壁部2b,2cに支点係合孔3bが形成され、支点突起3aが支点係合孔3bに係合することで揺動支点部3を構成している。また、支持主壁部9a,9bのうち一方の支持主壁部9aに摩擦制動部4が形成されている。
【0027】
図4の拡大図に示すように、摩擦受け部(本実施例では、ノブ主側壁部2b)は、揺動支点部3に関して第一端部2d側に形成された第一の摩擦受け部2b1と、第二端部2e側に形成された第二の摩擦受け部2b2とを有し、摩擦制動部4は第一の摩擦受け部2b1と当接する第一の摩擦制動部4aと、第二の摩擦受け部2b2と当接する第二の摩擦制動部4bとを有する。
【0028】
摩擦制動部4は、ノブ側壁部2b側の対向面に向けて突出する片持ち梁形態の弾性爪部として形成されている。より詳しくは、摩擦制動部4は、第一端部2d側に位置する第一爪本体5aと、第二端部2e側に位置する第二爪本体5bと、第一爪本体5aの先端部においてノブ側壁部2b側へ向けて突出する第一の摩擦突起部6aと、第二爪本体5bの先端部においてノブ側壁部2b側へ向けて突出する第二の摩擦突起部6bと、第一および第二爪本体5a,5bと支持主壁部9aとを繋ぐねじれ支点部8とを備える。また、第一および第二の摩擦突起部6a,6bには、傾斜状のガイド面6c,6dと、端面6e,6fがそれぞれ形成されている。
【0029】
次に、双方向スイッチ1の別の実施例を図5に示す。この実施例では、支持主壁部9aと、第一および第二の爪本体5a,5bと、ねじれ支点部8と、第一および第二の摩擦突起部6a,6bが一体に構成されている。すなわち、支持主壁部9aを厚さ方向に貫通する形で爪区画スリット14が、爪基端側に位置する第一端14aから爪長手方向に延びて爪先端位置で方向転換し、爪基端側に戻って第一端14aと爪幅方向に隔てられた第二端14bに至る形で形成されている。また、ねじれ支点部8に関して対象となる方向にも、第二の爪本体5bが、爪区画スリット14により支持主壁部9aから区画される形で形成されている。このような構成にすると、例えば合成樹脂を使った成型方法によって支持体9(すなわち、支持主壁部9a)を成型すれば、爪本体5a,5bと、ねじれ支点部8と、摩擦突起部6a,6bとを同時に形成することが可能となる。つまり、爪本体5a,5b等を別体部材として用意する必要がなくなる。
【0030】
なお図5に示すように、支持体9上には、一対の支持主壁部9a,9bの各両端を、対応する支持体端部壁部9c,9dにてそれぞれ連結することにより枠状のスイッチ支持部が形成されている。また揺動スイッチノブ2は、ノブ本体部2aの揺動長手方向の両端縁からスイッチ素子11a,11bに延出する形で、一対のノブ端部壁2f,2gが形成されている。そして揺動スイッチノブ2は、これらノブ主側壁部2b,2c及びノブ端部壁2f,2gにより、ノブ本体部2aの周縁を取り囲む形でスイッチ支持部を覆うノブフード部として構成されている。これにより、フロントパネル12(図1参照)とノブ本体部2aの隙間をユーザが覗いた場合でも、内部に形成された揺動支点部3や摩擦制動部4a,4bが見えなくなり、高級感を増すことができる。
【0031】
さらには、揺動支点部3は、支持主壁部9a,9bの基準方向における中間位置に形成され、支持主壁部9a,9bの上縁面が揺動支点部3に対応する位置にて高さ極大となる山形に形成されている。このように山形に形成することにより、揺動スイッチノブ2の揺動ストロークを規制することが可能となる。
【0032】
次に、双方向スイッチ1の動作説明図を図6,図7に示す。まず、図6(A)の左図(側面図)および右図(横断面図)に示すように、中立位置では第一の摩擦突起部6aと第二の摩擦突起部6bの双方がノブ主側壁部2bの被摩擦面S(内面)に当接し、弾性付勢状態とされる。すなわち、第一の爪本体5a及び第二の爪本体5bの双方がノブ主側壁部2bへ向けて弾性付勢されており、この弾性付勢力により、摩擦突起部6a,6bが被摩擦面Sに押し付けられた形になっている。
【0033】
この状態から、例えば第二端部2eを押圧操作すると図6(B)に進み、さらに押圧すると図7(A)の状態になる。これらの図に示すように、第二の爪本体部5bはノブ主側壁部2bの被摩擦面Sにより内側へ押し戻される向きに弾性変形する。
【0034】
より詳しくは、第二端部2eを押圧すると、ノブ主側壁部2bの非押圧付勢側(この場合は第一端部2d側)において被摩擦面Sの端縁Lが第一の摩擦制動部4aから離脱する。すなわち、摩擦突起部6aが被摩擦面Sの延長よりも外側に突出する向きに変位する。これにより、第一の摩擦制動部4aによる押圧摩擦力が被摩擦面Sに加わらなくなり、より軽い力で第一端部2eを押圧付勢できるようになる。また、図7(A)に示すように、押圧付勢側である第二の摩擦制動部4bは、これと反対側に連動変位する。すなわち、第一の爪本体5aが外側へ突出するため、ねじれ支点部8がねじれ変形し、第二の爪本体5bが内側へ押し戻されるように弾性変形する。そのため、第二の摩擦制動部4b側においても、被摩擦面Sへの押圧摩擦力が軽減されるようになる。これにより、軽い力で第二端部2eを押圧付勢することが可能となる。
【0035】
押圧操作を解除すると、上述のノブ復帰手段7により揺動スイッチノブ2が中立位置に復帰する。このとき、非付勢側(すなわち、第一端部2d側)の被摩擦面Sに第一の摩擦突起部6aが当接することにより、ノブ主側壁部2bに押圧摩擦力が加わる。さらに、第二の爪本体5bがねじれ復帰するため、第二の摩擦突起部6bも被摩擦面Sに当接し、ノブ主側壁部2bに押圧摩擦力が加わる。これら第一および第二の摩擦突起部6a,6bの押圧摩擦力により、中立位置へ復帰する揺動スイッチノブ2が急速に制動される。
【0036】
次に、図8〜図10を用いて双方向スイッチ1の動作説明をする。まず、図8では揺動スイッチノブ2が中立位置にされている。図8(B)の横断面図に示すように中立位置では、第一および第二の爪本体5a,5bによって第一の摩擦突起部6aと第二の摩擦突起部6bの双方が被摩擦面Sへ向けて弾性付勢されている。このとき、図8(C)のA−A矢視図に示すように、被摩擦面Sの端縁Lは、ガイド面6c上に位置している。
【0037】
その後、第一端部2dを押圧付勢すると、図9(A)に示すように揺動スイッチノブ2が揺動する。このとき、図9(B)の横断面図に示すように、非押圧付勢側である第二の摩擦突起部6bは被摩擦面Sの端縁Lから離脱し、外側に突出する向きに変位する。そして、ねじれ支点8がねじれ変形し、押圧付勢側である第一の爪本体5aおよび第一の摩擦突起部6aは被摩擦面Sにより押し戻される向きに弾性変位する。これにより、第一および第二の摩擦突起部6a,6bによる被摩擦面Sへの押圧摩擦力が減少され、軽い力で第一端部2dを押圧付勢できるようになる。このとき、図9(C)のB−B矢視図に示すように、第一の摩擦突起部6aの端面6eは被摩擦面Sに接するか、または図示しないが被摩擦面Sよりも内側に位置するようになっている。
【0038】
次に押圧操作を解除すると、上述のノブ復帰手段7によって揺動スイッチノブ2が中立位置に復帰する。すなわち、第一端部2dは図10(A)の上向きに弾性付勢され、第二端部2eは下向きに揺動する。このとき、第一および第二の爪本体5a,5bがねじれ復帰するため、図10(B)の横断面図に示すように、第一および第二の摩擦突起部6a,6bの双方が被摩擦面Sに当接し、この押圧摩擦力によって揺動スイッチノブ2が急速に制動される。より詳しくは、図10(C)のC−C矢視図に示すように、第一の摩擦突起部6aのガイド面6cに被摩擦抵面Sの端縁Lが乗り上げ、また、図10(D)のD−D矢視図に示すように、第二の摩擦突起部6bのガイド面6dに被摩擦抵抗面Sの端縁Lが乗り上げる形になっている。このように傾斜状のガイド面6dが形成されているため、下向きに変位するノブ主側壁部2bの端縁Lが第二の摩擦突起部6bに引っ掛からず、スムーズに変位できる。
【0039】
なお、本発明のねじれ支点部8、爪部5a,5b、摩擦突起部6a,6bは、上述したように支持主壁部9aと一体に形成することができるが、図11に示すように別体部材として構成することも可能である。図11では、円柱状のねじれ支点部8と、係合孔8aが形成された爪本体5とをそれぞれ用意し、ねじれ支点部8を係合孔8aに係合している。このようにすると、ねじれ応力が加わってもねじれ支点部8が破損しにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】フロントパネルの例。
【図2】本発明にかかる双方向スイッチの分解斜視図。
【図3】双方向スイッチの断面図。
【図4】双方向スイッチの要部拡大図。
【図5】双方向スイッチの別の実施例。
【図6】動作説明図
【図7】図6に続く図。
【図8】中立状態における双方向スイッチの斜視図。
【図9】第一端部を押圧付勢した状態における双方向スイッチの斜視図
【図10】押圧操作を解除した状態における双方向スイッチの斜視図。
【図11】摩擦制動部の分解斜視図。
【符号の説明】
【0041】
1 双方向スイッチ
2 揺動スイッチノブ
2b,2c ノブ主側壁部
3 揺動支点部
4 摩擦制動部
5a,5b(第一および第二の)爪本体
6a,6b(第一および第二の)摩擦突起部
6c,6d ガイド面
7 ノブ復帰手段
8 ねじれ支点部
9 支持体
9a,9b 支持主壁部
10 ガイド部
11a,11b スイッチ素子
12 フロントパネル
13 螺子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上にて予め定められた基準方向に所定の間隔を隔てて配置され、押圧付勢及び付勢解除により導通状態が切り替わる第一及び第二のスイッチ素子と、
揺動長手方向が前記基準方向と一致するよう前記支持体に揺動支点部を介して揺動可能に取り付けられるノブ本体部を有し、第一端部側に前記第一のスイッチ素子を付勢する第一スイッチ付勢部が、第二端部側に前記第二のスイッチ素子を付勢する第二スイッチ付勢部が形成され、該ノブ本体部の前記第一端部又は前記第二端部に押圧操作が加わるに伴い、前記第一又は第二のスイッチ付勢部が対応するスイッチ素子に向けて接近する向きに揺動変位する揺動スイッチノブと、
前記押圧操作により前記第一又は第二のスイッチ付勢部のいずれかが対応するスイッチ素子に向けて揺動変位するに伴い弾性変形し、該押圧操作の解除に伴い弾性復帰することにより前記揺動スイッチノブを前記押圧操作時とは逆向きに揺動変位させ、前記スイッチ付勢部を対応するスイッチ素子から離間させて中立位置に復帰させるノブ復帰手段と、
前記ノブ本体部と一体に揺動変位可能に形成された摩擦受け部の被摩擦面に当接するとともに、前記ノブ本体部のいずれかの端部に押圧操作が加わるに伴い、該被摩擦面により押し戻される向きに弾性変形し、その弾性復帰力による前記被摩擦面への押圧摩擦力により、前記押圧操作の解除に伴なう前記揺動スイッチノブの前記中立位置へ向けた復帰動作を制動する摩擦制動部と、
を備えることを特徴とする双方向スイッチ。
【請求項2】
前記摩擦受け部は、前記揺動スイッチノブの前記揺動支点部に関して第一端部側に形成された第一の摩擦受け部と、同じく第二端部側に形成された第二の摩擦受け部とを有し、前記摩擦制動部は前記第一の摩擦受け部と当接する第一の摩擦制動部と前記第二の摩擦受け部と当接する第二の摩擦制動部とを有する請求項1記載の双方向スイッチ。
【請求項3】
前記ノブ本体部の周縁から前記スイッチ素子側に延出するノブ側壁部が形成され、前記支持体上には該支持体壁部と対向配置される支持体壁部が立設され、該支持体壁部と前記ノブ側壁部との各対向面の一方が前記被摩擦面とされ、他方に該被摩擦面に向けて突出する形で前記摩擦制動部が形成されてなる請求項1又は請求項2に記載の双方向スイッチ。
【請求項4】
前記摩擦制動部が前記支持体壁部に形成されている請求項3記載の双方向スイッチ。
【請求項5】
前記ノブ本体部の前記揺動軸線方向における両端縁から前記スイッチ素子側に延出する形で1対のノブ主側壁部が形成され、前記支持体上には各ノブ主側壁部と対向する形で支持主壁部が立設され、各対向するノブ主側壁部と支持主壁部との対が前記揺動支点部により連結されてなり、前記摩擦制動部が前記支持主壁部の少なくとも一方に形成されてなる請求項4記載の双方向スイッチ。
【請求項6】
1対の前記支持主壁部が前記支持体上に予め定められた間隔で対向配置され、それら支持主壁部の外面に前記摩擦制動部が突出形成されるとともに、前記ノブ主側壁部が前記支持主壁部の外面側にて前記摩擦制動部を隠蔽する形で対向配置され、当該ノブ主側壁部の内面が前記被摩擦面とされてなる請求項5記載の双方向スイッチ。
【請求項7】
前記摩擦制動部は、前記ノブ側壁部側の対向面に向けて突出する片持ち梁形態の弾性爪部として形成されてなる請求項4ないし請求項6のいずれか1項に記載の双方向スイッチ。
【請求項8】
前記支持体壁部を厚さ方向に貫通する形で爪区画スリットが、爪基端側に位置する第一端から爪長手方向に延びて爪先端位置で方向転換するとともに、前記爪基端側に戻って前記第一端と爪幅方向に隔てられた第二端に至る形で形成され、前記弾性爪部は、該爪区画スリットの内側に位置する舌状の爪本体と、該爪本体の先端部において前記ノブ側壁部側に突出する摩擦突起部とを有するものとして形成されている請求項7記載の双方向スイッチ。
【請求項9】
請求項2に記載の要件を備え、前記支持主壁部に対し前記第一の摩擦制動部が前記揺動支点部に関して前記基準方向における第一側に、前記第二の摩擦制動部が同じく第二側に形成されてなる請求項5ないし請求項8のいずれか1項に記載の双方向スイッチ。
【請求項10】
前記第一の摩擦制動部ないし前記第二の摩擦制動部は、前記ノブ本体部が中立状態のとき、前記ノブ主側壁部の内面に形成された前記被摩擦面によりその双方が弾性付勢状態とされるとともに、前記第一端部と第二端部との一方が押圧付勢状態となった場合に、前記ノブ本体部の揺動変位に伴い、前記ノブ主側壁部の非押圧付勢側において前記被摩擦面の端縁が前記第一の摩擦制動部ないし前記第二の摩擦制動部の対応する側のものから離脱する請求項9記載の双方向スイッチ。
【請求項11】
前記ノブ主側壁部の非押圧付勢側において前記被摩擦面の端縁が前記第一の摩擦制動部ないし前記第二の摩擦制動部の対応する側のものから離脱するに伴い、非押圧付勢側の前記摩擦制動部が前記被摩擦面の延長よりも外側に突出する向きに変位する一方、押圧付勢側の摩擦制動部はこれと反対方向に連動変位するようになっている請求項9記載の双方向スイッチ。
【請求項12】
請求項7記載の要件を備え、前記弾性爪部の先端側に前記ノブ側壁部側に突出する摩擦突起部が形成されるとともに、該摩擦突起部の前記被摩擦面の端縁に近い側の側面が、前記中立位置への復帰時に前記端縁が乗り上げるための傾斜状のガイド面とされてなる請求項11記載の双方向スイッチ。
【請求項13】
請求項8に記載の要件を備え、前記第一の摩擦制動部をなす第一の前記弾性爪部と、前記第二の摩擦制動部をなす第二の前記弾性爪部とが、各々前記爪本体の基端側が前記揺動支点部側に位置し、先端側が前記基準方向にて互いに反対向きに延びるように配置され、それら2つの爪本体部を区画する前記爪区画スリットの第一端同士及び第二端同士が、前記基準方向にて互いに対向する位置関係で形成され、該爪区画スリットの第一端同士の間に位置する部分と、同じく第二端同士の間に位置する部分とが、前記2つの爪本体部を連動変位させるためのねじれ支点部を形成してなる請求項11又は請求項12に記載の双方向スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−4394(P2008−4394A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−172849(P2006−172849)
【出願日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】