説明

双極型電池

【課題】双極型電池の電圧を精度良く測定するために、低抵抗の導電性部材を集電体の集電箔と負極活物質層との間に設けると、その分の抵抗が増大する。
【解決手段】集電体11の一方の面に正極活物質層12が形成され、かつ、他方の面に負極活物質層13が形成されてなる双極型電極を、電解質層15を介して積層することによって構成される双極型電池は、負極活物質層13および正極活物質層12のうちのいずれか一方の層であって、一方の層が他方の層と対向しない位置に、電圧を測定するための電圧検出線20を接続した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双極型電池に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂集電体を用いた双極型電池では、集電体の厚み方向に高い導電性を有しているが、面方向の導電性は低い。特許文献1には、集電体の面方向の導電性を補うために、低抵抗の導電性部材を設けて、この低抵抗の導電性部材に電圧検出用のリード線を接続することにより、樹脂集電体を用いた双極型電池の電圧を精度良く測定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−157449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では、低抵抗の導電性部材を集電体の集電箔と負極活物質層との間に設けるので、その分の抵抗が増大するという問題が生じる。
【0005】
本発明は、新たな部材を設けることなく、双極型電池の電圧を精度良く測定する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による双極型電池は、集電体の一方の面に正極活物質層が形成され、かつ、他方の面に負極活物質層が形成されてなる双極型電極を、電解質層を介して積層することによって構成される。負極活物質層および正極活物質層のうちのいずれか一方の層であって、一方の層が他方の層と対向しない位置に、電圧を測定するための電圧検出線を接続した。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、負極活物質層および正極活物質層のうちのいずれか一方の層であって、電池反応に影響がない位置に電圧検出線を接続するので、新たな部材を設けることなく、電池の電圧を精度良く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態における双極型電池の概略構成を示す断面図である。
【図2】第1の実施形態における双極型電池において、リード線の接続箇所を説明するための図である。
【図3】リード線と負極活物質層との接続箇所を1箇所とした場合の接続箇所の一例を示す図である。
【図4】リード線と負極活物質層との接続箇所を4箇所とした場合の接続箇所の一例を示す図である。
【図5】リード線と負極活物質層との接続箇所を多数とした場合の接続箇所の一例を示す図である。
【図6】第2の実施形態における双極型電池において、リード線の接続箇所を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態における双極型電池の概略構成を示す断面図である。本実施形態における双極型電池は、扁平型(積層型)であり、例えば、リチウムイオン二次電池である。なお、本実施形態における双極型電池では、電池の電圧をモニターするために、負極活物質層13にリード線が接続されているが、図1では省略している。
【0010】
図1に示す第1の実施形態における双極型電池10は、実際に充放電反応が進行する略矩形の発電要素(電池要素;積層体)17が、電池外装材であるラミネートフィルム22の内部に封止された構造を有する。
【0011】
図1に示すように、本実施形態における双極型電池10の発電要素17は、集電体11の一方面に電気的に結合した正極活物質層12が形成され、集電体11の反対側の面に電気的に結合した負極活物質層13が形成された複数の双極型電極を有する。各双極型電極は、電解質層15を介して積層されて発電要素17を形成する。
【0012】
なお、電解質層15は、基材としてのセパレータの面方向中央部に電解質が保持されてなる構成を有する。この際、一の双極型電極の正極活物質層12と、一の双極型電極に隣接する他の双極型電極の負極活物質層13とが電解質層15を介して向き合うように、各双極型電極および電解質層15が交互に積層されている。すなわち、一の双極型電極の正極活物質層12と、一の双極型電極に隣接する他の双極型電極の負極活物質層13との間に電解質層15が挟まれて配置されている。
【0013】
隣接する正極活物質層12、電解質層15、および負極活物質層13は、一つの単電池層(=電池単位ないし単セル)16を構成する。したがって、双極型電池10は、単電池層16が複数積層されてなる構成を有するともいえる。
【0014】
電解質層15からの電解液の漏れによる液絡を防止する目的で、各単電池層16の外周部には、シール部(絶縁層)23が配置されている。シール部23を設けることで、隣接する集電体11間を絶縁し、隣接する電極間の接触による短絡を防止することもできる。このようなシール部23の設置により、長期間の信頼性および安全性が確保され、高品質の双極型電池10が提供されうる。
【0015】
発電要素17の最上層には、最外層集電体11aが配置され、最下層には最外層集電体11bが配置される。最外層集電体11aには、片面のみに正極活物質層12が形成され、最外層集電体11bには、片面のみに負極活物質層13が形成されている。ただし、正極側の最外層集電体11aの両面に、正極活物質層12が形成されてもよい。同様に、負極側の最外層集電体11bの両面に、負極活物質層13が形成されてもよい。
【0016】
最外層集電体11aおよび11bは、電池外装材22の外部に導出されて、それぞれ正極タブ18および負極タブ19を構成している。ただし、最外層集電体11aを延長せず、正極側の最外層集電体11aに隣接するように正極集電板を配置し、これが延長されて電池外装材22から導出している構成としてもよい。また、最外層集電体11bを延長せず、負極側の最外層集電体11bに隣接するように負極集電板が配置され、同様にこれが延長されて電池外装材22から導出している構成としてもよい。
【0017】
なお、単電池層16の積層回数は、所望する電圧に応じて調節する。また、双極型電池10では、電池の厚みを極力薄くしても十分な出力が確保できれば、単電池層16の積層回数を少なくしてもよい。双極型電池10では、使用する際の外部からの衝撃、環境劣化を防止するために、発電要素17を電池外装材22に減圧封入する。正極集電板及び負極集電板を設けた場合には、これらを電池外装材22の外部に取り出した構造とするのがよい。最外層集電体は金属で構成されていても、樹脂で構成されていてもよい。
【0018】
[集電体]
集電体11は、必ずしも導電性を有している必要はないが、集電箔としての機能を果たすために、集電箔全体として導電性を有している。集電体11は、高分子材料を含む、いわゆる樹脂集電体である。
【0019】
集電箔が導電性を具えていない高分子材料を含む場合、導電性フィラー(導電性粒子)を当然に含む。導電性フィラーは、導電性を有し、電荷移動媒体として用いられるイオンに関して伝導性を有さない材料から選択される。また、導電性フィラーは、印加される正極電位および負極電位に耐えうる材料から選択される。具体的には、アルミニウム粒子、SUS粒子、カーボン粒子、銀粒子、金粒子、銅粒子、チタン粒子などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。合金粒子が用いられてもよい。導電性フィラーは、金属に限られず、カーボン粒子、カーボンナノチューブなどを用いる。また、いわゆるフィラー系導電性樹脂組成物として実用化されているものを用いることができる。このうち、特に電池において通常導電助剤として用いられる材料が好ましく、カーボン粒子が好ましい。カーボンブラックやグラファイトなどのカーボン粒子は電位窓が非常に広い。それゆえ、正極電位および負極電位の双方に対して幅広い範囲で安定であり、さらに導電性に優れているためである。また、カーボン粒子は非常に軽量なため、質量の増加が最小限になる。
【0020】
集電箔における導電性フィラーの分布は、均一ではなくてもよく、集電箔内部で粒子の分布が変化していてもよい。複数の導電性粒子が用いられ、集電体内部で導電性粒子の分布が変化してもよく、例えば、正極に接する部分と負極に接する部分とで、好ましい導電性フィラーを使い分けてもよい。正極側に用いる導電性フィラーとしては、アルミニウム粒子、SUS粒子、およびカーボン粒子が好ましく、カーボン粒子が特に好ましい。負極に用いる導電性フィラーとしては、銀粒子、金粒子、銅粒子、チタン粒子、SUS粒子、およびカーボン粒子が好ましく、カーボン粒子が特に好ましい。さらに、カーボン粒子は、電極の導電助剤として用いられることが多いため、これらの導電助剤と接触しても、同材料であるがゆえに接触抵抗が非常に低くなる。
【0021】
導電性フィラーの好ましい大きさは、特に制限はされないが、概ね数百nm〜数十μmのものを使用できる。粒径は、好ましくは0.1〜50μm、より好ましくは1〜20μm、さらに好ましくは1〜3μmである。さらに、該導電性フィラーの形状も特に制限されず、繊維状、板状、塊状であってもよい。
【0022】
導電性フィラーを使用する場合、集電箔は、導電性フィラーに加えて、当該導電性フィラーを結着させる高分子材料を含む。集電箔の構成材料として高分子材料を用いることで、導電性フィラーの結着性を高め、電池の信頼性を高めることができる。高分子材料は、印加される正極電位および負極電位に耐えうる材料から選択される。
【0023】
導電性を備えていない高分子材料は、好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリル、ポリエーテルニトリル、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリイミド、セルロース、カルボキシメチルセルロース、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体およびその水素添加物などの熱可塑性高分子、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリビニルアルコ
ール、ポリビニルプロピナール、ポリビニルブチラール、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のヒドロキシル基含有化合物、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)等のフッ素樹脂、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−HFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−HFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン系フッ素ゴム(VDF−PFP系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−ペンタフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFP−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−パーフルオロメチルビニルエーテル−テトラフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−PFMVE−TFE系フッ素ゴム)、ビニリデンフルオライド−クロロトリフルオロエチレン系フッ素ゴム(VDF−CTFE系フッ素ゴム)等のビニリデンフルオライド系フッ素ゴム等が挙げられる。これらの高分子材料は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0024】
これらの高分子材料は電位窓が非常に広く、正極電位および負極電位の双方に対して幅広い範囲で安定であり、活物質層との接着性を高めることが可能である。より好ましくは、高分子材料としてポリプロピレンおよびポリエチレンが用いられる。これらは汎用性があり取り扱いやすく、入手しやすいためである。
【0025】
集電箔における高分子材料の分布は、均一ではなくてもよく、集電箔内部で高分子材料の分布が変化していてもよい。複数の高分子材料が用いられ、集電箔内部で高分子材料の分布が変化してもよく、例えば、正極に接する部分と負極に接する部分とで、好ましい高分子材料を使い分けてもよい。なお、集電箔は、必要に応じて、その他の材料を含んでいてもよい。
【0026】
集電箔における、高分子材料と導電性粒子との比率は特に限定されない。適切な体積抵抗率となるよう、適宜調整する。
【0027】
導電性フィラーとしてカーボン粒子を用いる場合には、高分子材料および導電性フィラーの合計に対してカーボン粒子を3〜40質量%用いることが好ましい。ただし、適切な体積抵抗率となるよう、適宜調整する。
【0028】
集電箔における導電性フィラーの存在は必ずしも必要ではなく、高分子自体が導電性を具えていてもよい。すなわち、導電性高分子からなる膜(本明細書中、「導電性高分子」ともいう)を集電体として用いることもできる。
【0029】
導電性高分子は、導電性を有し、電荷移動媒体として用いられるイオンに関して伝導性を有さない材料から選択される。これらの導電性高分子は、共役したポリエン系がエネルギー帯を形成し伝導性を示すと考えられている。代表的な例としては電解コンデンサなどで実用化が進んでいるポリエン系導電性高分子を用いることができる。具体的には、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアクリロニトリル、ポリオキサジアゾール、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0030】
集電体の厚さについては、特に限定されず、通常電池に使用される厚さの集電体をいずれも使用できる。通常の高分子材料を含む集電体の厚みは、50〜200μmが好ましく、より好ましくは30〜150μm、さらに好ましくは10〜100μmである。ここで、集電体は、一般的に電池の出力密度を高める観点から薄いことが好ましい。
【0031】
集電箔の導電性については、体積抵抗率が10-2〜102Ω・cmであることが好ましい。双極型電池として、実使用上必要とされる性能を担保するには、体積抵抗率が102Ω・cm以下であることが好ましい。一方で、集電箔の特に面方向の導電性が低いことには、厚み方向に効率よく電流を通し面方向の電流の集中を避けられるという利点もあるため、この特性を生かすには10-2Ω・cmを下回らないことが好ましい。
【0032】
[活物質層]
集電体上には、電極となる活物質層が形成される。活物質層は、充放電反応の中心を担う活物質を含む層である。電極が正極として用いられる場合、活物質層は正極活物質を含む。一方、電極が負極として用いられる場合、活物質層は負極活物質を含む。
【0033】
例えば、電池がリチウムイオン二次電池である場合には、リチウム−遷移金属複合酸化物が好ましく、正極活物質としては、LiCoO2などのLi・Co系複合酸化物、LiNiO2などのLi・Ni系複合酸化物、スピネルLiMn24などのLi・Mn系複合酸化物、LiFeO2などのLi・Fe系複合酸化物などが挙げられる。この他、LiFePO4などの遷移金属とリチウムのリン酸化合物や硫酸化合物;V25、MnO2、TiS2、MoS2、MoO3などの遷移金属酸化物や硫化物;PbO2、AgO、NiOOHなどが挙げられる。場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。
【0034】
負極活物質としては、炭素材料が好ましい。炭素材料としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛等の黒鉛系炭素材料(黒鉛)、カーボンブラック、活性炭、カーボンファイバー、コークス、ソフトカーボン、ハードカーボン等が挙げられる。より好ましくは、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛などの黒鉛である。天然黒鉛は、例えば鱗片状黒鉛、塊状黒鉛などが使用できる。人造黒鉛としては塊状黒鉛、気相成長黒鉛、鱗片状黒鉛、繊維状黒鉛が使用できる。これらのなかで、特に好ましい材料は、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛である。鱗片状黒鉛、塊状黒鉛を用いた場合、充填密度が高い等の理由で、特に有利である。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。
【0035】
活物質の平均粒子径は特に制限されないが、好ましくは1〜100μmであり、より好ましくは1〜50μmであり、さらに好ましくは1〜20μmである。ただし、これらの範囲を外れる形態もまた、採用されうる。なお、本願において活物質の平均粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定(レーザ回折散乱法)により測定された値を採用するものとする。
【0036】
また、活物質層における活物質の含有量は、好ましくは活物質層の合計質量に対して70〜98質量%であり、より好ましくは80〜98質量%である。活物質の含有量が上記範囲であれば、エネルギー密度を高くすることができるため好適である。
【0037】
本実施の形態の電極において、活物質層の厚さ(塗布層の片面の厚さ)は、好ましくは、20〜500μmであり、より好ましくは20〜300μmであり、さらに好ましくは20〜150μmである。
【0038】
負極活物質層13の体積抵抗率は、10-4〜10-2Ω・cmであることが好ましい。これは、後述するように、電池の電圧をモニターするために、負極活物質層13にリード線を接続するが、電圧を精度良くモニタリングするためである。
【0039】
活物質層にはその他の物質が含まれてもよく、例えば、バインダ、導電助剤、支持塩(リチウム塩)等が含まれうる。これらの成分の配合比は、特に限定されず、双極型電池についての公知の知見を適宜参照することにより、調整されうる。
【0040】
活物質層に含まれるバインダとしては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルアクリレート(PMA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0041】
導電助剤とは、導電性を向上させるために配合される添加物をいう。導電助剤としては、黒鉛などのカーボン粉末や、気相成長炭素繊維(VGCF)などの種々の炭素繊維などが挙げられる。支持塩は、後述する電解質層に用いられるものと同様である。
【0042】
[電解質層]
電解質層を構成する電解質としては、電解液を含む多孔性フィルムセパレータまたはゲル電解質が用いられうる。電解液は、有機溶媒に支持塩であるリチウム塩等が溶解した形態である。
【0043】
有機溶媒は、支持塩を十分に溶解させ得るものであれば、いずれも使用できる。例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート等の環状カーボネート類;ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネート等の鎖状カーボネート類;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジブトキシエタン等のエーテル類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類;アセトニトリル等のニトリル類;プロピオン酸メチル等のエステル類;ジメチルホルムアミド等のアミド類;酢酸メチル、蟻酸メチルの中から選ばれる少なくとも1種類または2種以上を混合した、非プロトン性溶媒等の可塑剤(有機溶媒)を用いたものなどが使用できる。これら有機溶媒は、単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0044】
支持塩としては、従来公知のものが使用できる。具体例としては、Li(C25SO22N(LiBETI)、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiCF3SO3、Li(CF3SO22N、Li(C25SO22N等が挙げられる。
【0045】
また、セパレータの具体的な形態としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンからなる微多孔膜が挙げられる。
【0046】
ゲル電解質は、イオン伝導性ポリマーからなるマトリックスポリマーに、電解液が注入されてなる構成を有する。マトリックスポリマーとして用いられるイオン伝導性ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリアクリロニトリル(PAN)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン(VDF−HEP)の共重合体、ポリ(メチルメタクリレート(PMMA)およびこれらの共重合体等が挙げられる。かようなポリアルキレンオキシド系高分子には、リチウム塩などの電解質塩がよく溶解しうる。
【0047】
[電池外装材]
電池外装材としては、従来公知の金属缶ケースを用いることができるほか、アルミニウムを含むラミネートフィルムを用いた発電要素を覆うことができる袋状のケースを用いることができる。該ラミネートフィルムには、例えば、ポリプロピレン、アルミニウム、ナイロン(登録商標)をこの順に積層してなる3層構造のラミネートフィルム等を用いることができるが、これらに何ら制限されるものではない。
【0048】
[リード線]
図1では省略しているが、本実施形態における双極型電池では、電池の電圧をモニターするために、負極活物質層13にリード線(電圧検出線)が接続されている。このリード線は、例えば、双極型電池10の外部に設けられているコントローラ(不図示)に接続されている。
【0049】
図2は、第1の実施形態における双極型電池10において、リード線20の接続箇所を説明するための図である。第1の実施形態における双極型電池10では、負極活物質層13の端部において、正極活物質層12と対向しない位置が存在するように、負極活物質層13を正極活物質層12より大きくしておき、負極活物質層13のうち、正極活物質層12と対向しない位置に、リード線20を接続する。負極活物質層13のうち、正極活物質層12と対向しない位置にリード線20を接続することにより、電池反応に影響を及ぼさず、各セルの電圧を精度良く検出することができる。
【0050】
リード線20は、電圧検出対象のセルの負極活物質層13に接続する。従って、各セルの電圧を検出する場合には、各セルの負極活物質層13にリード線20を接続する。
【0051】
ここで、リード線20と負極活物質層13との接続箇所は、シール部23でシールされた発電要素17の内部である。このため、リード線20が電解液と反応しないように、リード線20は、負極電極が機能する電位範囲において、電気化学的に不活性である材質を用いる。このような材質としては、例えば、Cu(銅)、Ni(ニッケル)、SUS(ステンレス鋼)がある。
【0052】
なお、負極活物質層13のうち、正極活物質層12と対向しない部分をシール部23または他の絶縁体で覆ってしまう構成も考えられる。このような場合には、負極活物質層13のうち、シール部23または他の絶縁体で覆われている位置に、リード線20を接続するようにしてもよい。この場合には、リード線20が電解液と反応することはないので、リード線20の材質が上述した「負極電極が機能する電位範囲において、電気化学的に不活性である材質」に限定されることはなく、幅広い材質の中から選択することができる。
【0053】
また、電解質層15を構成する電解質として、電解液を含む多孔性フィルムセパレータまたはゲル電解質を用いる例を挙げたが、固体電解質を用いることもできる。この場合、電解質の流動性がなくなるので、リード線20と電解質との接触を考慮する必要がなくなる。すなわち、リード線20の材質が上述した「負極電極が機能する電位範囲において、電気化学的に不活性である材質」に限定されることはなく、幅広い材質の中から選択することができる。
【0054】
固体電解質としては、例えば、PEO、PPO、これらの共重合体などの公知の高分子固体電解質、セラミックなどのイオン伝導性を持つ無機固体型電解質が挙げられる。高分子固体電解質中には、イオン伝導性を確保するためにリチウム塩が含まれる。リチウム塩としては、LiPF6、LiBF4、LiClO4、LiAsF6、LiTaF6、LiSbF6、LiAlCl4、Li210Cl10、LiI、LiBr、LiCl、LiAlCl、LiHF2、LiSCN等の無機酸陰イオン塩、LiCF3SO3、Li(CF3SO22N、LiBOB(リチウムビスオキサイドボレート)、LiBETI(リチウムビス(パーフルオロエチレンスルホニルイミド);Li(C25SO22Nとも記載)等の有機酸陰イオン塩などが挙げられる。好ましくは、LiBF4、LiPF6、LiN(SO2CF32、LiN(SO2252が使用できる。なお、上記リチウム塩は、単独で使用されてもあるいは2種以上の混合物の形態で使用されてもよい。
【0055】
図3は、リード線20と負極活物質層13との接続箇所を1箇所とした場合の接続箇所の一例を示す図である。ただし、リード線20と負極活物質層13との接続箇所は、1箇所に限定されることはない。図4は、リード線20と負極活物質層13との接続箇所を4箇所とした場合の接続箇所の一例を示す図である。すなわち、1つの負極活物質層13の4箇所に、合計4本のリード線20が接続されている。この場合も、各リード線20は、負極活物質層13のうち、正極活物質層12と対向しない位置に接続する。
【0056】
図5は、リード線20と負極活物質層13との接続箇所を多数とした場合の接続箇所の一例を示す図である。図5に示す例では、正極活物質層12と対向しない、負極活物質層13の外周の全てに、リード線20を接続している。図4や図5に示すように、リード線20と負極活物質層13との接続箇所を2箇所以上とすれば、接続箇所を1箇所とする場合に比べて、より精度良く、電池の電圧を検出することができる。すなわち、接続箇所を複数とすることにより、接続箇所によって電位が異なるような場合でも、平均的な電圧を測定することができる。
【0057】
[組電池]
本実施の形態における双極型電池を複数個、直列または並列に接続することにより、組電池を構成することができる。双極型電池を直列または並列に接続することにより、容量および電圧を自由に調節することが可能になる。このような組電池は、例えば、電気自動車やハイブリッド車などの駆動用電源として用いることができる。
【0058】
以上、第1の実施形態における双極型電池では、負極活物質層13のうち、正極活物質層12と対向しない位置に、電圧を測定するためのリード線20を接続するので、電池反応に影響を及ぼさずに、電池の電圧を精度良く測定することができる。また、負極に直接リード線20を接続するので、集電体11にリード線20を接続する場合に比べて、集電体11の抵抗の影響を受けることなく、電池の電圧を精度良く測定することができる。
【0059】
ここで、後述する第2の実施形態のように、正極活物質層12にリード線20を接続する構成も考えられる。しかし、正極活物質層12に比べて負極活物質層13の方が導電性が高いので、負極活物質層13にリード線20を接続する構成の方が、より精度良く電圧を測定することができる。
【0060】
また、リード線20は、電極が機能する電位範囲において、電気化学的に不活性である材質を用いるので、リード線20が電解液と反応するのを防ぐことができる。
【0061】
また、電解質層15として、固体電解質層を用いた場合には、リード線20が電解質との接触を防ぐことができるので、リード線20の材質として、幅広い材質の中から選択することができる。
【0062】
さらに、負極活物質層13のうち、正極活物質層12と対向しない複数の位置に複数のリード線20を接続した場合には、1箇所にリード線20を接続した場合に比べて、より精度良く、電池の電圧を検出することができる。
【0063】
<第2の実施形態>
第1の実施形態における双極型電池では、正極活物質層12と対向しない位置が存在するように、負極活物質層13を正極活物質層12より大きくし、負極活物質層13のうち、正極活物質層12と対向しない位置に、リード線20を接続した。第2の実施形態における双極型電池では、負極活物質層13と対向しない位置が存在するように、正極活物質層12を負極活物質層13より大きくし、正極活物質層12のうち、負極活物質層13と対向しない位置に、リード線20を接続する。
【0064】
なお、第2の実施形態における双極型電池の断面図は、図1に示す第1の実施形態における双極型電池の断面図と同じである。また、負極活物質層13と対向しない位置が存在するように、正極活物質層12を負極活物質層13より大きくし、正極活物質層12のうち、負極活物質層13と対向しない位置にリード線20を接続した構成以外の構成についても、第1の実施形態における双極型電池と同じである。
【0065】
図6は、第2の実施形態における双極型電池において、リード線20の接続箇所を示す図である。図6に示すように、正極活物質層12は、負極活物質層13より大きく、負極活物質層13と対向しない位置が存在する。正極活物質層12のうち、負極活物質層13と対向しない位置にリード線20を接続することにより、電池反応に影響を及ぼさず、各セルの電圧を精度良く検出することができる。
【0066】
以上、第2の実施形態における双極型電池では、正極活物質層12のうち、負極活物質層13と対向しない位置に、電圧を測定するためのリード線20を接続するので、電池反応に影響を及ぼさずに、電池の電圧を精度良く測定することができる。また、正極に直接リード線20を接続するので、集電体11にリード線20を接続する場合に比べて、集電体11の抵抗の影響を受けることなく、電池の電圧を精度良く測定することができる。
【0067】
本発明は、上述した第1および第2の実施形態に限定されることはない。例えば、上述した実施形態では、集電体は、高分子材料を含む樹脂集電体として説明したが、樹脂集電体に限定されることはない。
【符号の説明】
【0068】
10…双極型電池
11…集電体
12…正極活物質層
13…負極活物質層
15…電解質層
20…リード線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体の一方の面に正極活物質層が形成され、かつ、他方の面に負極活物質層が形成されてなる双極型電極を、電解質層を介して積層することによって構成される双極型電池であって、
前記負極活物質層および前記正極活物質層のうちのいずれか一方の層であって、前記一方の層が他方の層と対向しない位置に、電圧を測定するための電圧検出線を接続したことを特徴とする双極型電池。
【請求項2】
前記一方の層は、前記負極活物質層である、
ことを特徴とする請求項1に記載の双極型電池。
【請求項3】
前記電圧検出線は、電極が機能する電位範囲において、電気化学的に不活性である、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の双極型電池。
【請求項4】
前記電解質層は、固体電解質層である、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の双極型電池。
【請求項5】
前記負極活物質層および前記正極活物質層のうちのいずれか一方の層であって、前記一方の層が他方の層と対向しない位置に、複数の前記電圧検出線を接続したことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の双極型電池。
【請求項6】
前記集電箔の体積抵抗率が、10-2〜102Ω・cmである、
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の双極型電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−33632(P2013−33632A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169129(P2011−169129)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】