説明

反射フィルム

【課題】 400nm〜420nmの波長域においても良好な光反射性を有し、広い波長域に渡って良好な反射性を有する反射フィルムを提供すること。
【解決手段】 反射フィルムは、ルチル型酸化チタンを含有するB層と、ルチル型酸化チタン以外の微粉状充填剤を含有するA層とを有し、このA層は、反射使用面側の最外層に位置し、かつ、A層及びB層はそれぞれ延伸処理により空洞が形成されている。ここで、A層及びB層は、それぞれ独立に、熱可塑性樹脂を有する樹脂組成物から形成されて成り、この熱可塑性樹脂は、脂肪族ポリエステルである。反射フィルムは、A層とB層との2層構成、又は、A層、B層、A層をこの順に有する3層構成であることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射フィルムに関するものである。更に詳しくは、液晶ディスプレイの反射板等に使用される反射フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイの反射板、投影用スクリーンや面状光源の部材、照明用反射板等の分野で、反射フィルムが使用されている。例えば、液晶ディスプレイの反射板では液晶表示装置の大画面化及び表示性能の高度化の要求から、少しでも多くの光を液晶に供給してバックライトユニットの性能を向上させるために、高い反射率の反射フィルムが求められている。
【0003】
反射フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することもある)等のポリエステルに酸化チタンを添加して形成された白色シート(例えば、特許文献1参照)が知られているが、要求されるような高い光反射率を有するものではなく、また、画面の明るさが充分ではないという問題があった。さらにまた、ポリプロピレン樹脂に酸化チタンを添加してシートを成形した後、延伸することにより空隙を形成した反射フィルムが知られている(例えば、特許文献2参照)。このシートは、酸化チタンによる光反射のみならず、空隙によって生じる光散乱を利用して高い光反射率を得ている。しかしながら、酸化チタンを含有するシートでは、酸化チタン自体の光吸収作用により、420nm以下の波長域で反射率が低下し、画面の明るさが充分でないという問題があった。
【特許文献1】特公平8−16175号公報
【特許文献2】特開平11−174213号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記問題点を解決すべくなされたものであり、本発明の目的は、400nm〜420nmの波長域においても良好な光反射性を有し、広い波長域に渡って良好な反射性を有する反射フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の反射フィルムは、ルチル型酸化チタンを含有するB層と、ルチル型酸化チタン以外の微粉状充填剤を含有するA層とを有し、該A層は、反射使用面側の最外層に位置し、かつ、該A層及び該B層はそれぞれ延伸処理により空洞が形成されており、それぞれ独立に、熱可塑性樹脂を有する樹脂組成物から形成されて成り、該熱可塑性樹脂が、脂肪族ポリエステルであることを特徴とする。
【0006】
ここで、反射フィルムは、前記A層と前記B層との2層構成、又は、前記A層、前記B層、前記A層をこの順に有する3層構成であることができる。
また、前記脂肪族ポリエステルはポリ乳酸系重合体であることが好ましい。
【0007】
本発明の液晶表示装置用反射板は、上記いずれかの反射フィルムを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、広い波長域にわたって、良好な反射性を備えた、液晶ディスプレイの反射板等に使用される反射板を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明の反射フィルムは、ルチル型酸化チタンを含有するB層と、ルチル型酸化チタン以外の微粉状充填剤を含有するA層とを有する。ただし、光が入射する側の最外層にはA層が配置されている。
【0010】
A層は、微粉状充填剤及び熱可塑性樹脂を主成分として含む樹脂組成物から形成されることが好ましい。ただし、A層に含有される微粉状充填剤には、ルチル型酸化チタンは含まれない。A層に含有される微粉状充填剤としては、400nm〜700nmの波長域の光を吸収しない無機質微粉体、又は有機質微粉体等が挙げられる。
【0011】
用いられる無機質微粉体としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、アナターゼ型酸化チタン、アルミナ、水酸化アルミニウム、ヒドロキシアパタイト、シリカ、マイカ、タルク、カオリン、クレー、ガラス粉、アスベスト粉、ゼオライト、珪酸白土等が挙げられ、用いられる有機質微粉体としては、ポリマービーズ、ポリマー中空粒子等が挙げられる。本発明においては、これらから選ばれた少なくとも1種を用いることができ、無機質微粉体と有機質微粉体とを組み合わせて用いることもできる。得られるフィルムの光反射性を勘案すると、フィルムを構成する樹脂との屈折率差が大きいものを使用することが好ましく、例えば、屈折率が1.6以上である、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛を用いることが好ましく、更に、屈折率が2.5以上であるアナターゼ型酸化チタンを用いることが特に好ましい。微粉状充填剤の屈折率が高いものほど、フィルムを構成する樹脂との屈折率差を大きくすることができ、樹脂と微粉状充填剤との界面での屈折散乱作用により、フィルムに光反射性を容易に付与することができるからである。得られるフィルムの長期耐久性を勘案すると、酸やアルカリに対して安定なものを使用することが好ましく、例えば、硫酸バリウムを用いることが特に好ましい。フィルムを構成する熱可塑性樹脂の劣化を防ぐことができるからである。また、光が入射する側の最外層には、400nm〜700nmの波長域の光を吸収しない微粉状充填剤を使用することが必要である。したがって、かかる最外層にはルチル型酸化チタンを添加することはできない。
【0012】
本発明において、B層はルチル型酸化チタンを含有している。ルチル型酸化チタンとしては、その中でも純度の高い高純度酸化チタンを用いることが特に好ましい。本発明において高純度酸化チタンとは、可視光に対する光吸収能が小さい酸化チタンであり、バナジウム、鉄、ニオブ、銅、マンガン等の着色元素の含有量が少ないものをいう。本発明においては、酸化チタンに含まれるバナジウムの含有量が5ppm以下である酸化チタンを高純度酸化チタンと称すことにする。高純度酸化チタンは、光吸収能を小さくするという観点からは、酸化チタンに含まれる、鉄、ニオブ、銅、マンガン等の着色元素も少なくすることが好ましい。
【0013】
バナジウムの含有量が5ppm以下の酸化チタンとしては、例えば塩素法プロセスにより製造されるものが挙げられる。塩素法プロセスでは、酸化チタンを主成分とするルチル鉱を1,000℃程度の高温炉で塩素ガスと反応させて、まず、四塩化チタンを生成させる。次いで、この四塩化チタンを酸素で燃焼させることにより、高純度酸化チタンを得ることができる。なお、酸化チタンの工業的な製造方法としては硫酸法プロセスもあるが、この方法によって得られる酸化チタンには、バナジウム、鉄、銅、マンガン、ニオブ等の着色元素が多く含まれるので、可視光に対する光吸収能が大きくなる。したがって、硫酸法プロセスでは高純度酸化チタンは得られ難い。
【0014】
微粉状充填剤として酸化チタンを用いれば、フィルム内部に存在する空隙率が低くても高い光反射性を達成することができるので、例えば、15%以下の空隙率でも充分に高い光反射性を達成することができる。これは、酸化チタンの屈折率が高く、隠蔽力が高いことに起因すると推察される。また、充填剤の使用量を少なくすることができるならば、延伸により形成される空隙の数も少なくなる。したがって、酸化チタンを用いれば、フィルム内部に存在する空隙の数を少なくすることができるので、高い反射性能を維持しつつフィルムの機械的性質を向上させることができる。あるいは、充填剤の使用量が多い場合でも、延伸量を小さくして空隙の数を少なくすれば、充填剤の使用量を少なくした場合と同様に、機械的性質を向上させることができる。このようにしてフィルム内部に存在する空隙の数を少なくすることは、フィルムの寸法安定性の向上の点においても有利である。薄肉でも高い反射性能が確保されれば、例えば、ノート型パソコンや携帯電話等の小型、薄型の液晶ディスプレイ用の反射フィルム等として使用することができる。
【0015】
微粉状充填剤の樹脂への分散性を向上させるために、微粉状充填剤の表面に、脂肪酸、脂肪酸エステル等で表面処理を施したものを使用してもよい。
本発明に用いられる微粉状充填剤は、平均粒径が0.05μm以上、15μm以下であることが好ましく、より好ましくは平均粒径が0.1μm以上、10μm以下である。微粉状充填剤の粒径が0.05μm以上であれば、樹脂への分散性が低下することがないので、均質なフィルムが得られる。また平均粒径が15μm以下であれば、形成される空隙が粗くなることはなく、高い反射率のフィルムが得られる。
【0016】
微粉状充填剤は樹脂に分散配合されることが好ましい。微粉状充填剤の配合量は、光反射性の発現、生産性、機械的強度等を考慮すると、樹脂組成物中60質量%未満であり、10質量%以上、55質量%未満であることが好ましく、20質量%以上、50質量%未満であることが更に好ましい。微粉状充填剤の配合量が60質量%以上では、十分なフィルム強度を確保することができなくてフィルム延伸の際にフィルムの破断が生じることがあるからである。
【0017】
A層は、樹脂および上記微粉状充填剤を主成分として有する樹脂組成物から形成される。ここで、A層を形成する樹脂としては、フィルム状、シート状等に成形することができるものであることが好ましく、例えば、熱可塑性樹脂が好ましく使用される。また、良好な延伸性を有することが好ましく、この点を考慮すると、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル等が好ましいものとして挙げられる。
【0018】
なお、本発明においてシートとは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚さが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいう。ところで、フィルムとは長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいう(JIS K 6900)。したがって、シートの中でも厚さの特に薄いものがフィルムであるといえるが、シートとフィルムの境界は定かでなく、明確に区別しにくいので、本願においては、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
【0019】
フィルム内に微粉状充填剤を含有する反射フィルムは、フィルム内での界面における屈折散乱を利用して光反射性を付与している。A層を形成する樹脂としては、更にフィルムの光反射性を勘案すると、芳香環を含み、屈折率が約1.55以上である芳香族ポリエステルよりも、屈折率の小さい脂肪族ポリエステルの方が好ましく、脂肪族ポリエステルの中でも屈折率が最も小さいポリ乳酸系重合体が好ましい。かかる樹脂の屈折率が小さければ小さいほど、組み合わせる微粉状充填剤の屈折率との差が大きくなり、フィルムに光反射性を容易に付与することができるからである。さらにまた、脂肪族ポリエステルは、分子鎖中に芳香環を含まないので紫外線吸収を起こさず、反射フィルムが黄変したり、反射率が低下したりすることがない。
【0020】
一方、脂肪族ポリエステルとは、化学合成されたもの、微生物により発酵合成されたもの、及びこれらの混合物である。化学合成された脂肪族ポリエステルとしては、ラクトンを開環重合して得られるポリε−カプロラクタム等、二塩基酸とジオールとを重合して得られるポリエチレンアジペート、ポリエチレンアゼレート、ポリテトラメチレンサクシネート、シクロヘキサンジカルボン酸/シクロヘキサンジメタノール縮合重合体等、ヒドロキシカルボン酸を重合して得られるポリ乳酸系重合体、ポリグリコール等や、上記した脂肪族ポリエステルのエステル結合の一部を、例えばエステル結合の50%以下をアミド結合、エーテル結合、ウレタン結合等に置き換えた脂肪族ポリエステル等が挙げられる。また、微生物により発酵合成された脂肪族ポリエステルとしては、ポリヒドロキシブチレート、ヒドロキシブチレートとヒドロキシバリレートとの共重合体等が挙げられる。
【0021】
ここで、ポリ乳酸系重合体とは、D−乳酸またはL−乳酸の単独重合体またはそれらの共重合体をいい、具体的には、構造単位がD−乳酸であるポリ(D−乳酸)、構造単位がL−乳酸であるポリ(L−乳酸)、更にはL−乳酸とD−乳酸の共重合体であるポリ(DL−乳酸)があり、またこれらの混合体も含まれる。
【0022】
ポリ乳酸系重合体は、縮合重合法、開環重合法等の公知の方法で製造することが出来る。例えば、縮合重合法では、D−乳酸、L−乳酸、または、これらの混合物を直接脱水縮合重合して任意の組成を有するポリ乳酸系重合体を得ることができる。また、開環重合法では、乳酸の環状二量体であるラクチドを、必要に応じて重合調整剤等を用いながら、所定の触媒の存在下で開環重合することにより任意の組成を有するポリ乳酸系重合体を得ることができる。上記ラクチドには、L−乳酸の二量体であるL−ラクチド、D−乳酸の二量体であるD−ラクチド、D−乳酸とL−乳酸の二量体であるDL−ラクチドがあり、これらを必要に応じて混合して重合することにより、任意の組成、結晶性を有するポリ乳酸系重合体を得ることができる。
【0023】
本発明に用いられるポリ乳酸系重合体は、D−乳酸とL−乳酸との構成比が、D−乳酸:L−乳酸=100:0〜85:15であるか、またはD−乳酸:L−乳酸=0:100〜15:85であることが好ましく、さらに好ましくは、D−乳酸:L−乳酸=99.5:0.5〜95:5、または、D−乳酸:L−乳酸=0.5:99.5〜5:95である。D−乳酸とL−乳酸との構成比が100:0もしくは0:100であるポリ乳酸系重合体は非常に高い結晶性を示し、融点が高く、耐熱性および機械的物性に優れる傾向がある。すなわち、フィルムを延伸したり熱処理したりする際に、樹脂が結晶化して耐熱性及び機械的物性が向上するので好ましい。一方、D−乳酸とL−乳酸とで構成されたポリ乳酸系重合体は、柔軟性が付与され、フィルムの成形安定性及び延伸安定性が向上するので好ましい。したがって、得られる反射フィルムの耐熱性と、成形安定性及び延伸安定性とのバランスを勘案すると、本発明に用いられるポリ乳酸系重合体は、D−乳酸とL−乳酸との構成比が、D−乳酸:L−乳酸=99.5:0.5〜95:5、又は、D−乳酸:L−乳酸=0.5:99.5〜5:95であることが、より好ましい。
【0024】
本発明においては、D−乳酸とL−乳酸との共重合比が異なるポリ乳酸系重合体をブレンドしてもよい。この場合には、複数の乳酸系重合体のD−乳酸とL−乳酸との共重合比を平均した値が上記範囲内に入るようにすればよい。D−乳酸とL−乳酸のホモポリマーと、共重合体とをブレンドすることにより、ブリードのし難さと耐熱性の発現とのバランスをとることができる。
【0025】
本発明に用いられるポリ乳酸系重合体は、例えば、重量平均分子量が6万〜40万であることが好ましく、10万〜30万であることが更に好ましい。ポリ乳酸系重合体の重量平均分子量が5万以下であると、得られたフィルムが機械的物性に劣る場合がある。
【0026】
本発明の反射フィルムを構成するB層は、ルチル型酸化チタン及び樹脂を主成分とする樹脂組成物から形成される。微粉状充填剤として使用されるルチル型酸化チタンは、平均粒径が0.05μm以上、1μm以下であることが好ましく、より好ましくは平均粒径が0.1μm以上、0.5μm以下である。微粉状充填剤の粒径が0.05μm以上であれば、樹脂への分散性が低下することがないので、均質なフィルムが得られる。また平均粒径が1μm以下であれば、形成される空隙が粗くなることはなく、高い反射率のフィルムが得られる。
【0027】
ルチル型酸化チタンは樹脂に分散配合されることが好ましい。ルチル型酸化チタンの配合量は、光反射性の発現、生産性、機械的強度等を考慮すると、樹脂組成物中60質量%未満であり、10質量%以上、55質量%未満であることが好ましく、20質量%以上、50質量%未満であることが更に好ましい。ルチル型酸化チタンの配合量が60質量%以上では、十分なフィルム強度を確保することができず、フィルムを延伸する際にフィルムの破断が生じることがあるからである。
【0028】
上記したようにB層は、樹脂およびルチル型酸化チタンを主成分として有する樹脂組成物から形成される。ここで、B層を形成する樹脂としては、フィルム状、シート状等に成形することができるものであることが好ましく、例えば、A層を形成する樹脂と同様のものを使用することができる。例えば、熱可塑性樹脂が好ましく使用され、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリエステル等が挙げられる。これらの中では、脂肪族ポリエステルがより好ましく、ポリ乳酸系重合体が特に好ましく使用される。
【0029】
本発明の反射フィルムは、上述のA層を少なくとも一方の最外層に有する。例えば、A層/B層の2層構成、A層/B層/A層の3層構成等が例示されるが、A層とB層との間に他の層を有していてもよいし、A層、B層がそれぞれ複数層から構成されていてもよい。
【0030】
本発明の反射フィルムの光が入射する側の最外層に位置するA層は、内部に空隙を有する。また、B層にも空隙が形成されている。その空隙がフィルム中に占める割合(空隙率)は、A層及びB層共に、それぞれ、5%以上、50%以下であることが好ましく、さらには、10%以上、50%以下であることが好ましい。5%以上、50%以下の空隙率を有する反射フィルムは、フィルムの白化が十分に進行するので高い光反射性を達成することができ、また、フィルムの機械的強度が低下してフィルム製造中にフィルムが破断することがない。
【0031】
フィルム内部に空隙を形成させる手段としては、例えば、フィルムを少なくとも1軸方向に延伸することにより形成する方法がある。これは、延伸時に樹脂と微粉状充填剤等の延伸挙動が異なることを利用したものである。すなわち、樹脂に適した延伸温度で延伸を行うと、マトリックス(母体)となる樹脂は延伸されるが、微粉状充填剤はそのままの状態でとどまろうとするため、樹脂と微粉状充填剤との界面が剥離して、空隙が形成される。なお、延伸条件によっては反射フィルムの機能を付与することが困難となる場合があり、また十分な耐熱性を付与できなくなることがあるので、延伸条件は重要である。
【0032】
フィルム内部に5%以上の空隙率を有するフィルムを実現する場合には、得られたシートを面積倍率において5倍以上に延伸することが好ましく、7倍以上に延伸することが更に好ましい。ただし、延伸は、2軸方向に延伸されることが好ましい。1軸延伸のみで5倍以上の面積倍率を実現することは困難な場合があるが、2軸延伸することにより、容易に5倍以上の面積倍率を達成することができる。すなわち、2軸延伸することにより、より高い空隙率を有するフィルムが安定して得られ、その結果、フィルムの反射率を向上させることができる。
【0033】
更にまた、フィルムを1軸延伸したのみでは、形成される空隙は一方向に伸びた繊維状形態にしかならないが、2軸延伸することによって、その空隙は縦横両方向に伸ばされたものとなり円盤状形態になる。換言すれば、2軸延伸することによって、脂肪族ポリエステル系樹脂と微粉末状充填剤との界面の剥離面積が増大し、フィルムの白化が進行し、その結果、反射フィルムとして良好な反射率が得られる。
【0034】
フィルムを2軸延伸させることによりフィルムの機械的強度を増加させることができるので、フィルムの機械物性の面からも、2軸延伸することが好ましい。また、反射フィルムに耐熱性が要求される場合には、フィルムの収縮方向に異方性がない方がよいので、1軸のみの延伸は避けることが望ましい。
【0035】
シートを延伸する際の延伸温度は、樹脂のガラス転移温度(Tg)以上、(Tg+70℃)以下の範囲内の温度であることが好ましい。延伸温度がガラス転移温度(Tg)以上であれば、延伸時にフィルムが破断することなく安定して行うことができる。また、延伸温度が(Tg+70℃)以下の温度であれば、延伸配向が高くなり、その結果、空隙率が大きくなるので、高い反射率のフィルムが得られやすい。
【0036】
2軸延伸の延伸順序は特に制限されることはなく、例えば、同時2軸延伸でも逐次延伸でも構わない。延伸設備を用いて、溶融製膜した後、ロール延伸によってMD方向に延伸した後、テンター延伸によってTD方向に延伸しても良いし、チューブラー延伸等によって2軸延伸を行ってもよい。
【0037】
本発明においては、フィルムを延伸した後、コロナ放電等による表面処理を行うことができる。あるいはまた、反射フィルムに耐熱性および寸法安定性を付与するために、延伸後に熱固定を行うことが好ましい。フィルムを熱固定するための処理温度は{樹脂の融点(Tm)−100}℃〜Tm℃であることが好ましく、(Tm−80)℃〜(Tm−20)℃であることが更に好ましい。熱固定に要する処理時間は、好ましくは1秒〜5分である。また、延伸設備等については特に限定はないが、延伸後に熱固定処理を行うことができるテンター延伸を行うことが好ましい。
【0038】
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲内で、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、加水分解防止剤、滑剤、分散剤、紫外線吸収剤、白色顔料、蛍光増白剤、および、その他の添加剤を配合することができる。
【0039】
本発明の反射フィルムは、400nm〜420nm、及び、420nm〜700nmのそれぞれの光の波長域において、表面の平均反射率が90%以上であることが好ましく、95%以上であることが更に好ましい。フィルム表面の平均反射率が90%以上であれば、良好な反射特性を示し、液晶ディスプレイ等の画面も十分な明るさを実現することができる。このようにして得られた反射フィルムは、反射フィルムとして十分機能する所定の反射率を有するものとなる。光が入射する側の最外層(A層)にルチル型酸化チタン以外の微粉状充填剤を含有し、B層にルチル型酸化チタンを含有する構成の反射フィルムとすることによって、400nm〜420nmの波長域における反射率の低下を防止し、かつ、420nm〜700nmの波長域において充分な反射率を有することができるのである。
【0040】
反射フィルムを構成する樹脂として脂肪族ポリエステルを使用することにより、反射フィルムが紫外線に晒されても黄変することがなく、また、紫外線照射後でも優れた平均反射率を保持することができる。
【0041】
反射フィルムを構成する樹脂として生分解性樹脂を使用すれば、形成されたフィルムは埋め立て処理により微生物等によって分解されるので、廃棄上の問題が生じない。例えば、脂肪族ポリエステル系樹脂を埋め立て処理すると、エステル結合部が加水分解することによって分子量が1,000程度に低下し、引き続き土壌中の微生物等により生分解される。その結果、廃棄物埋め立て処理用地の短命化を促進したり、自然の景観や野生動植物の生活環境を損なう等の問題が生じることもない。
【0042】
以下に、本発明の反射フィルムの製造方法を一例を挙げて説明するが、下記製造法に何等限定されるものではない。
まず、A層を構成する樹脂に微粉状充填剤を配合し、B層を構成する樹脂にルチル型酸化チタンを配合し、各層には更に、加水分解防止剤、その他の添加剤等を必要に応じて配合して樹脂組成物を作製する。具体的には、樹脂に微粉状充填剤等を必要に応じて加えて、リボンブレンダー、タンブラー、ヘンシェルミキサー等で混合した後、バンバリーミキサー、1軸または2軸押出機等を用いて、樹脂の融点以上の温度で混練することにより各層用樹脂組成物を得ることができる。または、予め、微粉状充填剤等を樹脂に高濃度に配合した、いわゆるマスターバッチを作っておき、このマスターバッチと樹脂とを混合して所望の濃度の樹脂組成物とすることもできる。
【0043】
次に、このようにして得られた各層用樹脂組成物をそれぞれ溶融し、フィルム状に形成する。フィルム状に形成する方法としては、一般にインフレーション成形法やTダイを用いる押出成形法が好ましく用いられ、例えば、Tダイ2層の口金内で、A層/B層の2層構成となるようにラミネートしてもよい。あるいは、Tダイ3層の口金内で、A層用樹脂組成物を投入した押出機からA層用樹脂組成物が両表面層になるように、A層/B層/A層の3層構成となるようにラミネートしてもよい。具体的には、各層用樹脂組成物を乾燥した後、各押出機に供給し、樹脂の融点以上の温度に加熱して溶融する。あるいは、樹脂組成物を乾燥させずに押出機に供給しても良いが、乾燥させない場合には溶融押出する際に真空ベントを用いることが好ましい。押出温度等の条件は、分解によって分子量が低下すること等を考慮して設定されることが必要であるが、例えば、押出し温度は170〜300℃の範囲が好ましい。その後、溶融した各層用樹脂組成物をTダイのスリット状の吐出口から押し出し、冷却ロールに密着固化させてキャストシートを形成する。
【0044】
本発明の反射フィルムは少なくとも1軸方向に延伸されていることが好ましく、2軸方向に延伸されていることが更に好ましい。延伸は、ロール、テンター、エアーインフレーション、チューブラー、マンドレル等により行われることができる。例えば、ロールによってMD方向に延伸した後、テンターによってTD方向に延伸してもよいし、チューブラーによって2軸延伸してもよい。次に、必要に応じて、熱固定を行うことにより反射フィルムを得ることができる。
【0045】
本発明の反射フィルムの厚みは、特に限定されないが、通常は30μm〜500μmであり、実用面における取り扱い性を考慮すると50μm〜500μm程度の範囲内であることが好ましい。そのうち、光が入射する側の最外層に配置されるA層の厚みは、通常10μm〜70μmであり、好ましくは20μm〜70μmの範囲内である。A層の厚みが10μm以上であれば、400nm〜420nmの波長域の光に対して、高い反射性能を有するフィルムを得ることができる。また、A層の厚みが70μm以下であれば、420〜700nmの波長域の光に対して、高い反射性能を維持することができる。なお、B層は20μm以上であることが好ましい。
【実施例】
【0046】
以下に実施例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。なお、実施例に示す測定値および評価は以下に示すようにして行った。ここで、フィルムの引取り(流れ)方向をMD、その直交方向をTDと表示する。
【0047】
(測定および評価方法)
(1)平均粒径
(株)島津製作所製の型式「SS−100」の粉体比表面測定器(透過法)を用い、断面積2cm、高さ1cmの試料筒に試料3gを充填して、500mm水柱で20ccの空気透過の時間より算出した。
【0048】
(2)樹脂の屈折率と微粉状充填剤の屈折率との差
樹脂の屈折率(n1)を、JIS K−7142のA法に基づいて測定し、微粉状充填剤やルチル型酸化チタンの屈折率(n2)を、JIS K−7142のB法に基づいて測定した。得られた測定値より、樹脂の屈折率と、微粉状充填剤やルチル型酸化チタンの屈折率との差を算出した。ただし、充填剤成分としての炭酸カルシウムは、JIS K−7142のB法に基づいて求めた。
【0049】
(3)空隙率(%)
延伸前のフィルムの密度(「未延伸フィルム密度」と表記する)と、延伸後のフィルムの密度(「延伸フィルム密度」と表記する)を測定し、下記式に代入してフィルムの空隙率を求めた。

空隙率(%)=
{(未延伸フィルム密度−延伸フィルム密度)/未延伸フィルム密度}×100
【0050】
(4)平均反射率(%)
分光光度計(「U―4000」、(株)日立製作所製)に積分球を取付け、アルミナ白板を100%とした時の反射率を、波長400nm〜700nmにわたって2nm間隔で測定する。得られた測定値について、波長が400nm〜420nmの範囲内の反射率の平均値、及び、波長が420nm〜700nmの範囲内の反射率の平均値を計算し、これらの値をそれぞれの波長範囲内における平均反射率とした。ただし、積層構成のフィルムについては、A層側から光を照射したときの反射率を測定し、得られた測定値について平均反射率を求めた。
【0051】
実施例で用いられるポリ乳酸系重合体は以下のようにして製造された。
[ポリ乳酸系重合体(PLA)(I)の製造:L体含量99.5%]
ピューラックジャパン社製のL−ラクチド(商品名:PURASORB L)100kgに、オクチル酸スズを15ppm添加したものを、攪拌機と加熱装置とを備えた500Lのバッチ式重合槽に入れた。次いで、窒素置換を行い、温度185℃、攪拌速度100rpmの条件下で60分間重合を行い、溶融物を得た。得られた溶融物を、真空ベントを3段備えた三菱重工(株)製の40mmφ同方向2軸押出機に供し、ベント圧4Torrで脱揮しながら200℃でストランド状に押し出して、ペレット形状のポリ乳酸系重合体を得た。
得られたポリ乳酸系重合体の重量平均分子量は20万であり、L体含有量は99.5%、D体含有量は0.5%であった。また、ガラス転移温度(Tg)は65℃であった。
【0052】
[実施例1]
(A層用樹脂組成物の作製)
重量平均分子量20万のポリ乳酸系重合体(I)(D体含有量0.5%、ガラス転移温度65℃)のペレットと、平均粒径0.16μmのアナターゼ型酸化チタンとを50質量%/50質量%の割合で混合して混合物を得た。この混合物100質量部に対して、加水分解防止剤(ビス(ジプロピルフェニル)カルボジイミド)を4.5質量部添加して混合した後、二軸押出機を用いてペレット化して、いわゆるマスターバッチを作製した。このマスターバッチとポリ乳酸系重合体(I)とを40質量%:60質量%の割合で混合し、樹脂組成物を作製した。その後、樹脂組成物を220℃に加熱された押出機Aに供給した。
【0053】
(B層用樹脂組成物の作製)
重量平均分子量20万のポリ乳酸系重合体(I)(D体含有量0.5%、ガラス転移温度65℃)のペレットと、平均粒径0.25μmのルチル型酸化チタン(バナジウム含有量5ppm以下:塩素法プロセスにより製造)とを50質量%/50質量%の割合で混合して混合物を得た。この混合物100質量部に対して、加水分解防止剤(ビス(ジプロピルフェニル)カルボジイミド)を4.5質量部添加して混合した後、二軸押出機を用いてペレット化して、いわゆるマスターバッチを作製した。このマスターバッチとポリ乳酸系重合体(I)とを40質量%:60質量%の割合で混合し、樹脂組成物を作製した。その後、樹脂組成物を220℃に加熱された押出機Bに供給した。
【0054】
(フィルムの作製)
押出機A及び押出機Bから、溶融状態の樹脂組成物A及び溶融状態の樹脂組成物Bのそれぞれを、Tダイを用いてA層/B層の2層構成となるようにシート状に押し出し、冷却固化してフィルムを形成した。得られたフィルムを、温度65℃で、表1に示すようにMD方向に3倍、TD方向に3倍となるように二軸延伸した。その後、140℃で熱処理を行い、厚さ188μm(A層/B層=48μm/140μm)の反射フィルムを得た。
得られた反射フィルムについて、空隙率、平均反射率の測定と評価を行った。その結果を表1に示す。
【0055】
[実施例2]
実施例1において、アナターゼ型酸化チタンの替わりに、平均粒径が0.4μmの酸化亜鉛を混合した以外は実施例1と同様にして、厚さ188μmの反射フィルムを作製した。
得られた反射フィルムについて、実施例1と同様の測定及び評価を行った。その結果を表1に示す。
【0056】
[実施例3]
実施例1において、アナターゼ型酸化チタンの替わりに、平均粒径が0.15μmの炭酸カルシウムを混合した以外は実施例1と同様にして、厚さ188μmの反射フィルムを作製した。
得られた反射フィルムについて、実施例1と同様の測定及び評価を行った。その結果を表1に示す。
【0057】
[実施例4]
実施例1において、アナターゼ型酸化チタンの替わりに、平均粒径が0.7μmの硫酸バリウムを混合した以外は実施例1と同様にして、厚さ188μmの反射フィルムを作製した。
得られた反射フィルムについて、実施例1と同様の測定及び評価を行った。その結果を表1に示す。
【0058】
[比較例1]
重量平均分子量20万のポリ乳酸系重合体(I)(D体含有量0.5%、ガラス転移温度65℃)のペレットと、平均粒径0.25μmのルチル型酸化チタンとを50質量%/50質量%の割合で混合して混合物を得た。この混合物100質量部に対して、加水分解防止剤(ビス(ジプロピルフェニル)カルボジイミド)を4.5質量部添加して混合した後、二軸押出機を用いてペレット化して、いわゆるマスターバッチを作製した。このマスターバッチとポリ乳酸系重合体(I)とを40質量%:60質量%の割合で混合し、樹脂組成物を作製した。その後、樹脂組成物を一軸押出機を用いて、220℃に加熱された押出機によってTダイより押し出し、冷却固化してフィルムを作製した。
得られたフィルムを、温度65℃で、表1に示すようにMD方向に3倍、TD方向に3倍となるように二軸延伸した。その後、140℃で熱処理を行い、厚さ188μmの単層の反射フィルムを得た。
得られた反射フィルムについて、空隙率、平均反射率の測定と評価を行った。その結果を表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
表1から明らかなように、実施例1〜4の本発明の反射フィルムは、波長が400nm〜420nm、及び、420nm〜700nmのそれぞれの波長域にわたって、高い反射性能を示すことが分かった。
一方、微粉状充填剤としてルチル型酸化チタンを混合した樹脂組成物からなる単層構成の比較例1では、特に400nm〜420nmの波長域において、反射性能が劣っていることが分かった。
【0061】
なお、実施例1において、ポリ乳酸系重合体(I)の替わりにポリエチレンテレフタレート(PET)を用いて、A層用樹脂組成物及びB層用樹脂組成物を作製し、A層用樹脂組成物及びB層用樹脂組成物が投入される押出機の加熱温度を220℃から280℃に変更し、フィルムの延伸温度を65℃から130℃に変更し、熱処理温度を140℃から230℃に変更した以外は実施例1と同様にして、参考用の反射フィルムを作製し、紫外線照射試験を行った。すなわち、紫外線フェードメーター試験器内で、得られた反射フィルムに紫外線を1,000時間照射した。紫外線を照射する前と照射した後のそれぞれのフィルムについて、上記(4)平均反射率の測定方法に従って、反射率を測定し、その差(ΔR)を求めた。波長420nmの光に対する反射率のΔRは、実施例1の反射フィルムではΔR=3%であり、PETを用いて形成されたこの参考用の反射フィルムではΔR=32%であった。また、波長400nm〜700nmの平均反射率のΔRは、実施例1の反射フィルムではΔR=2%であり、参考用の反射フィルムではΔR=12%であった。すなわち、A層、B層を形成する樹脂としてポリ乳酸を使用した反射フィルムは、紫外線を照射しても平均反射率の低下が少ないことが分かった。ただし、樹脂成分としてのポリエチレンテレフタレートの屈折率は、フィルム形状に製膜してからJIS K−7142のA法に基づいて求めた。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の反射フィルムは、携帯電話、パソコン等の各種液晶ディスプレイ、面状光源の部材、投影用スクリーン等の反射板等に使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ルチル型酸化チタンを含有するB層と、ルチル型酸化チタン以外の微粉状充填剤を含有するA層とを有し、該A層は、反射使用面側の最外層に位置し、かつ、該A層及び該B層はそれぞれ延伸処理により空洞が形成されており、それぞれ独立に、熱可塑性樹脂を有する樹脂組成物から形成されて成り、該熱可塑性樹脂が、脂肪族ポリエステルであることを特徴とする反射フィルム。
【請求項2】
前記A層と前記B層との2層構成、又は、前記A層、前記B層、前記A層をこの順に有する3層構成であることを特徴とする請求項1記載の反射フィルム。
【請求項3】
前記脂肪族ポリエステルがポリ乳酸系重合体であることを特徴とする請求項1又は2記載の反射フィルム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の反射フィルムを備えていることを特徴とする液晶表示装置用反射板。

【国際公開番号】WO2005/045482
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【発行日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515245(P2005−515245)
【国際出願番号】PCT/JP2004/015047
【国際出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】