説明

反射防止フィルム、それを用いた偏光板及びディスプレイ装置

【課題】 上下層の密着性、耐擦傷性・防汚性・耐久性に優れた反射防止フイルム、該反射防止フィルムを用いた偏光版やディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】 透明支持体上に機能層及び低屈折率層を有する反射防止フィルムにおいて、該機能層が水酸基または加水分解可能な基がケイ素に直接接合している特定のオルガノシランの加水分解物および/またはその部分縮合物を含み、かつ該低屈折率層が、特定のオルガノシラン化合物の加水分解物および/またはその部分縮合物を少なくとも1種含有することを特徴とする反射防止フィルム及び該フィルムを有する偏光板及び画像表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止フィルム、偏光板およびそれを用いたディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
反射防止フイルムは、一般に陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や液晶表示装置(LCD)のようなディスプレイ装置において、外光の反射によるコントラスト低下や像の写りこみを防止するために、光学干渉の原理を用いて反射率を低減する目的で使用される。また、ぎらつきの少ない表示性能を得るために表面を凹凸にして反射光を散乱させる防眩層を付与したり、バインダーと屈折率の異なる粒子を導入することでディスプレイ内部からの光を拡散させて視野角の向上を計る検討がなされている。
【0003】
このような反射防止フィルムは、支持体上に機能層(ハードコート層、防眩層、光拡散層、高屈折率層など)、さらにその上に適切な膜厚の低屈折率層を形成することにより作製できる。低い反射率を実現するために低屈折率層にはできるだけ屈折率の低い材料が望まれる。また反射防止フィルムはディスプレイの最表面に用いられるため高い耐擦傷性が要求される。厚さ100nm前後の薄膜において高い耐擦傷性を実現するためには、皮膜自体の強度、および下層との密着性が必要である。
【0004】
特許文献1には含フッ素ポリマーを利用した低屈折率層素材にシランカップリング剤を添加することにより下層への密着性を強くし耐擦傷性が改良されることが記載されている。また、下層となるハードコート層素材にも同様にシランカップリング剤を添加することで、上下層の密着性がより強化され、耐擦傷性が大幅に改良されることも記載されている。しかしながら沸点が低いシランカップリング剤は塗布乾燥工程で揮散する問題があり、揮発分を考慮した過剰量の添加を必要とし、安定した性能を得るのが難しいという問題があった。
【0005】
この揮発性を低くするための手段として、特許文献2では、シランカップリング剤を酸触媒もしくは金属キレート触媒を用いて予め反応させて、加水分解および/または脱水縮合物を形成させ、それを塗布液に添加するという方法で、塗布乾燥工程での揮散を抑えるという記載がされている。 ただし、この方法を用い下層となるハードコート層素材にシランカップリング剤を添加した場合には、シランカップリング剤の加水分解および/または脱水縮合の進行の度合いによって、必要な密着性、耐擦傷性および光学性能を安定に発現させることができないという問題があった。
【0006】
また、耐擦傷性の高い保護膜として、アルコキシシランの加水分解縮合物のゾルゲル膜を用いることが知られている。例えば特許文献3にはゾルゲル膜を用いた3層光干渉型の反射防止フィルム、特許文献4にはプラスチック基板上にゾルゲル膜を塗設して反射率を低下させる方法、特許文献5にはアルコキシシランと低屈折率無機微粒子を含有するゾルゲル膜、特許文献6には含エチレン性不飽和基含有有機シリル化合物のゾルゲル膜、特許文献7にはゾルゲル膜と防汚層とを組み合わせること、特許文献8にはフッ素含オルガノシランからなる低屈折率コーティング剤、の記載がある。
しかしながら、一般にゾルゲル膜は、初期強度は強いものの、膜が脆く、汚れがつきやすいという欠点があった。また、フッ素系の有機シリル化合物を併用すると防汚性は改良されるものの膜強度が低下したり、帯電性が悪化してほこりの付着が増加してしまうなどの問題を有していた。
【0007】
【特許文献1】特開2003−222704号公報
【特許文献2】特開2004−170901号公報
【特許文献3】特開平10−728号公報
【特許文献4】特開昭63−21601号公報
【特許文献5】特開平8−211202号公報
【特許文献6】特開2002−275403号公報
【特許文献7】特開2002−277604号公報
【特許文献8】特開2002−265866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上下層の密着性、耐擦傷性・防汚性・耐久性に優れた反射防止フイルムを提供することにある。さらにはそのような反射防止フィルムを高い生産性で得ることのできる製造方法を提供することにある。加えて、そのような反射防止フイルムを用いた偏光版やディスプレイ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は鋭意努力の末、機能層に必要な分子量分布を持つシランカップリング剤の加水分解および/または部分縮合物を含み、低屈折率層に特定の有機シリル化合物の加水分解物および/または部分縮合物を用いることで上記目的を達成しうることを見出した。
本発明によれば、下記構成の反射防止フィルム、偏光板、および画像表示装置が提供され、上記目的が達成される。
【0010】
(1)透明支持体上に機能層及び低屈折率層を有する反射防止フィルムにおいて、該機能層が下記一般式(1)で表される水酸基または加水分解可能な基がケイ素に直接接合しているオルガノシランの加水分解物および/またはその部分縮合物を含み、かつ該低屈折率層が、下記一般式(2−1)および(2−2)で表されるオルガノシラン化合物の加水分解物および/またはその部分縮合物を少なくとも1種含有することを特徴とする反射防止フィルム。
【0011】
一般式(1): (R1)m1Si(X1)4-m1
(式中、R1は、置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表す。X1は水酸基または加水分解可能な基を表す。m1は0〜3の数を表す。R1及びX1のそれぞれについて、複数存在するときは同じでも異なっていてもよい。)
【0012】
一般式(2−1): Si(X2)4
一般式(2−2): (R3)m2Si(X3)n2
(X2及びX3は、水酸基、ハロゲン原子、−OR10基、又は−OCOR10基を表し、R10はアルキル基を表す。R3はアルキル基、アルケニル基又はアリール基を表す。m2+n2は4であり、m2及びn2はそれぞれ正の整数である。複数のX2は、同じでも異なっていてもよい。R3及びX3のそれぞれについても複数存在するときは、同じでも異なっていてもよい。)
【0013】
(2)一般式(1)で表されるオルガノシランの加水分解物および/または部分縮合物において、重量平均分子量が1000未満のものを30質量%以上含むことを特徴とする上記(1)に記載の反射防止フィルム。
(3)一般式(1)で表されるオルガノシランの加水分解物および/または部分縮合物において、少なくとも一つのR1が重合性官能基であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の反射防止フィルム。
【0014】
(4)一般式(1)で表されるオルガノシランの加水分解物および/または部分縮合物における、重合性官能基を含有するオルガノシランの割合が30質量%〜100質量%であることを特徴とする上記(3)に記載の反射防止フィルム。
(5)一般式(1)で表されるオルガノシランの加水分解物および/または部分縮合物において、少なくとも一つのR1がフッ素化アルキル基であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【0015】
(6)前記低屈折率層中に、平均粒径が該低屈折率層の厚みの30%以上120%以下で且つ中空構造からなる、屈折率が1.15〜1.40である無機微粒子を含有することを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の反射防止フィルム。
(7)前記低屈折率層の上層に防汚層を有することを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の反射防止フィルム。
(8)前記低屈折率層が設けられる面がアルカリ処理されていることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【0016】
(9)上記(1)〜(8)のいずれかに記載の反射防止フィルムを、偏光板における偏光層の2枚の保護フィルムのうちの少なくとも一方に用いたことを特徴とする偏光板。
(10)偏光板を構成するフイルムの少なくとも1つのフィルムは、そのReレターデーション値が20以上70nm以下であり、Rthレターデーション値が70以上400nm以下であることを特徴とする上記(9)に記載の偏光板。
(11)上記(1)〜(8)のいずれかに記載の反射防止フィルム、または、上記(9)及び(10)のいずれかに記載の偏光板のいずれかを有するディスプレイ装置であり、当該低屈折率層が視認側になるように配置したことを特徴とするディスプレイ装置。
【発明の効果】
【0017】
本発明の反射防止フィルムは、上下層の密着性が良く、高い耐擦傷性を持ちながら必要な光学性能を安定に示す。更に、防塵性、防汚性にも優れる。また本発明の反射防止フィルムは高い生産性で製造できる。本発明の反射防止フィルムを備えたディスプレイ装置、並びに本発明の反射防止フィルムを用いた偏光板を備えたディスプレイ装置は、外光の映り込みや背景の映り込みが少なく、極めて視認性が高く、表示ムラが少なく、表示品位が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施の一形態として、本発明の反射防止フィルムの基本的な構成を図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において、「(数値1)〜(数値2)」という記載は「(数値1)以上(数値2)以下」の意味を表す。
【0019】
図1に模式的に示される断面図は、本発明の反射防止フィルムの一例であり、反射防止フィルム1は、透明支持体2、二種類の機能層(帯電防止層3、防眩性ハードコート層4)、及び低屈折率層5の順序の層構成を有する。防眩性ハードコート層4には、マット粒子6が分散しており、防眩性ハードコート層4のマット粒子6以外の部分の素材の屈折率は1.50〜2.00の範囲にあることが好ましく、低屈折率層5の屈折率は1.20〜1.49の範囲にあることが好ましい。本発明において機能層は、このように帯電防止層でもよいし、防眩性を有するハードコート層でもよいし、防眩性を有しないハードコート層でもよく、また光拡散層でもよく、1層でもよいし、複数層、例えば2層〜4層で構成されていてもよい。低屈折率層は最外層に塗設される。
【0020】
さらに、低屈折率層は下記数式(I)を満たすことが低反射率化の点で好ましい。
数式(I): (mλ/4)×0.7<n11<(mλ/4)×1.3
数式(I)中、mは正の奇数であり、n1は低屈折率層の屈折率であり、そして、d1
低屈折率層の膜厚(nm)である。また、λは波長であり、500〜550nmの範囲の値である。
なお、上記数式(I)を満たすとは、上記波長の範囲において数式(I)を満たすm(正の奇数、通常1である)が存在することを意味している。
【0021】
本発明の反射防止フィルムは、内部散乱性を持つことが好ましい。内部散乱性は一般的には内部ヘイズで表され、通常測定する全ヘイズより表面ヘイズ分を除いたものが、内部ヘイズとなる。内部散乱性を持つ本発明の反射防止フィルムをディスプレイ装置の最表面に組み込んだ際に、ディスプレイ装置の他の構成要素それぞれが持つ光学的なムラ(例え
ば、光源の輝度ムラや、カラーフィルターの色度ムラなど)を低減させることができ好ま
しい。ただし、内部ヘイズが高くなりすぎると、コントラストの低下を招くため、内部ヘイズとしては、1〜50%が好ましく、1〜45%が更に好ましく、1〜40%が特に好ましい。
【0022】
本発明の反射防止フィルムは、透明支持体上に機能層を少なくとも一層と低屈折率層とを有する。
【0023】
〔A.機能層〕
本発明の反射防止フィルムを構成する機能層のうちの少なくとも1層の形成するための塗布液は、特定のオルガノシラン化合物の加水分解物および/またはその部分縮合物の少なくとも一種の成分、いわゆるゾル成分(以降このように称する場合もある)を含有する。特に低屈折率層と該低屈折率層直下の機能層を形成するための塗布液は共に反射防止能と耐擦傷性を両立させるためにそれぞれ特定のゾル成分を含有することが好ましい。このゾル成分は、塗布液を塗布後、乾燥、加熱工程で縮合して硬化物を形成し上記層のバインダーの一部となる。また、該硬化物が重合性不飽和結合を有する場合、活性光線の照射により3次元構造を有するバインダーが形成される。
【0024】
(オルガノシラン化合物)
本発明において機能層のうちの少なくとも1層が含有するオルガノシラン化合物は、水酸基または加水分解可能な基がケイ素に直接接合している、下記一般式(1)で表されるオルガノシラン化合物である。
【0025】
一般式(1): (R1)m1Si(X1)4-m1
(式中、R1は、置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表す。X1は水酸基または加水分解可能な基を表す。m1は0〜3の整数を表す。R1及びX1のそれぞれについて、複数存在するときは同じでも異なっていてもよい。)
【0026】
上記一般式(1)において、R1は置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表す。アルキル基としては、炭素数1〜30のアルキル基か好ましく、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは1〜6のものである。アルキル基の具体例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ヘキシル、デシル、ヘキサデシル等が挙げられる。アリール基としてはフェニル、ナフチル等が挙げられ、好ましくはフェニル基である。
後述する機能層を形成するバインダーと反応したり、該バインダー中への溶解性を高めることにより、機能層内に本発明のオルガノシラン加水分解物/部分縮合物を効率良く残留させるように作用する。従って機能層を形成するバインターの種類に応じて採用すべき官能基を選択するのが好ましい。また、該官能基は機能層と透明支持体との密着性を向上させるようにも作用する。
【0027】
1は、水酸基または加水分解可能な基を表し、例えばアルコキシ基(炭素数1〜5の
アルコキシ基が好ましい。例えばメトキシ基、エトキシ基等が挙げられる)、ハロゲン原子(例えばCl、Br、I等)、及びR2aCOO(R2aは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。例えばCH3COO、C25COO等が挙げられる)で表される基が挙げられ、好ましくはアルコキシ基であり、特に好ましくはメトキシ基またはエトキシ基である。
1は0〜3の数を表し、好ましくは1〜2である。
【0028】
1が複数存在するとき、複数のX1はそれぞれ同じであっても異なっていても良い。
1に含まれる置換基としては特に制限はないが、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素等)、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基(メチル、エチル、i−プロピル、プロピル、t−ブチル等)、アリール基(フェニル、ナフチル等)、芳香族ヘテロ環基(フリル、ピラゾリル、ピリジル等)、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、i−プロポキシ、ヘキシルオキシ等)、アリールオキシ(フェノキシ等)、アルキルチオ基(メチルチオ、エチルチオ等)、アリールチオ基(フェニルチオ等)、アルケニル基(ビニル、1−プロペニル等)、アシルオキシ基(アセトキシ、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル等)、カルバモイル基(カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N−メチル−N−オクチルカルバモイル等)、アシルアミノ基(アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、アクリルアミノ、メタクリルアミノ等)等が挙げられ、これら置換基は更に置換されていても良い。
【0029】
1は置換アルキル基もしくは置換アリール基であることが好ましく、重合性官能基で
置換されたアルキル基もしくはアリール基が好ましい。重合性官能基としては、たとえば、ビニル重合性基、エポキシ基、イソシアナート基などが挙げられる。
一般式(1)で表されるオルガノシラン化合物として、特に下記一般式(2)で表されるビニル重合性の置換基を有するオルガノシラン化合物が好ましい。
一般式(2)
【0030】
【化1】

【0031】
上記一般式(2)において、R3は水素原子、メチル基、メトキシ基、アルコキシカル
ボニル基、シアノ基、フッ素原子、または塩素原子を表す。アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。水素原子、メチル基、メトキシ基、メトキシカルボニル基、シアノ基、フッ素原子、および塩素原子が好ましく、水素原子、メチル基、メトキシカルボニル基、フッ素原子、および塩素原子が更に好ましく、水素原子およびメチル基が特に好ましい。
Yは単結合もしくは*−COO−**、*−CONH−**または*−O−**を表し、単結合、*−COO−**および*−CONH−**が好ましく、単結合および*−COO−**が更に好ましく、*−COO−**が特に好ましい。*は=C(R3)−に結合する位置を、**はLに結合する位置を表す。
【0032】
Lは2価の連結鎖を表す。具体的には、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、内部に連結基(例えば、エーテル、エステル、アミドなど)
を有する置換もしくは無置換のアルキレン基、内部に連結基を有する置換もしくは無置換のアリーレン基が挙げられ、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、内部に連結基を有するアルキレン基が好ましく、無置換のアルキレン基、無置換のアリーレン基、内部にエーテルあるいはエステル連結基を有するアルキレン基が更に好ましく、無置換のアルキレン基、内部にエーテルあるいはエステル連結基を有するアルキレン基が特に好ましい。置換基は、ハロゲン、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基、アリール基等が挙げられ、これら置換基は更に置換されていても良い。
【0033】
nは0〜1の数を表す。Xが複数存在するとき、複数のXはそれぞれ同じであっても異なっていても良い。
2は一般式(1)におけるR1と同義であり、置換もしくは無置換のアルキル基、無置換のアリール基が好ましく、フッ化アルキル基やビニル重合基とは異なる重合性官能基(例えば、エポキシ基、イソシアナート基)が特に好ましい。
Xは一般式(1)におけるX1と同義であり、ハロゲン原子、水酸基、無置換のアルコキシ基が好ましく、塩素原子、水酸基、無置換の炭素数1〜6のアルコキシ基が更に好ましく、水酸基、炭素数1〜3のアルコキシ基が更に好ましく、メトキシ基が特に好ましい。
【0034】
一般式(1)、一般式(2)の化合物は2種類以上を併用しても良い。以下に一般式(1)、一般式(2)で表される化合物の具体例を示すが、限定されるものではない。
【0035】
【化2】

【0036】
【化3】

【0037】
【化4】

【0038】
【化5】

【0039】
【化6】

【0040】
【化7】

【0041】
【化8】


【0042】
これらのうち、(M−1)、(M−2)、および(M−25)が特に好ましい。
【0043】
またフッ化アルキル基含有シラン化合物の加水分解物或いは完全加水分解物を使用することも、本発明のオルガノシランの加水分解物/部分縮合物中にフッ化アルキル基を導入できるので好ましい。
フッ化アルキル基含有シラン化合物の部分加水分解物或いは完全加水分解物としては、下記一般式(3)で示されるものが好ましい。
【0044】
【化9】

【0045】
式中、Rfは、Cn2n+1、または、下記の基を表す。
【0046】
【化10】

【0047】
(nは1〜20の整数、mは1以上、好ましくは1〜20、特に1〜10の整数)で表されるエーテル結合を1個以上含んでいてもよいポリフルオロアルキル基を示す。
Mは−CH2−、−CH2O−、−NR2b−、−COO−、−CONR2b−、−S−、−SO3−又は−SO2−N(R2b)−(R2bは水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基)の1種又は2種以上の結合基を示す。
1bは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基又は水酸基を示す。
aは0〜3の整数、bは1〜3の整数、cは0〜2の整数である。
【0048】
Rfは、Cn2n+1又はCF3CF2CF2O(CFCF3CF2O)mCFCF3−(n,mは上記の通り)であり、Cn2n+1としては、CF3−、C25−、C37−、C49−、C613−、C817−、C1021−、C1225−、C1429−、C1633−、C1837−、C2041−などが挙げられる。
【0049】
一般式(3)で表されるシラン化合物としては、下記のものを例示することができる

Rf(CH22Si(OH)3
Rf(CH22SiCH3(OH)2
Rf(CH22Si(OCH3)(OH)2
Rf(CH22Si(OCH2CH3)(OH)2
Rf(CH22Si(CH32(OH)
Rf(CH22Si(OCH32(OH)
Rf(CH22Si(OCH2CH32(OH)
Rf(CH23Si(OH)3
Rf(CH23SiCH3(OH)2
Rf(CH23Si(OCH3)(OH)2
Rf(CH23Si(OCH2CH3)(OH)2
Rf(CH23Si(CH32(OH)
Rf(CH23Si(OCH32(OH)
Rf(CH23Si(OCH2CH32(OH)
RfNH(CH22Si(OH)3
RfNH(CH22SiCH3(OH)2
RfNH(CH22Si(OCH3)(OH)2
RfNH(CH22Si(OCH2CH3)(OH)2
RfNH(CH22Si(CH32(OH)
RfNH(CH22Si(OCH32(OH)
RfNH(CH22Si(OCH2CH32(OH)
RfNH(CH22NH(CH22Si(OH)3
RfNH(CH22NH(CH22SiCH3(OH)2
RfNH(CH22NH(CH22Si(OCH3)(OH)2
RfNH(CH22NH(CH22Si(OCH2CH3)(OH)2
RfNH(CH22NH(CH22Si(CH32(OH)
RfNH(CH22NH(CH22Si(OCH32(OH)
RfNH(CH22NH(CH22Si(OCH2CH32(OH)
RfCONH(CH22Si(OH)3
RfCONH(CH22SiCH3(OH)2
RfCONH(CH22Si(OCH3)(OH)2
RfCONH(CH22Si(OCH2CH3)(OH)2
RfCONH(CH22Si(CH32(OH)
RfCONH(CH22Si(OCH32(OH)
RfCONH(CH22Si(OCH2CH32(OH)
【0050】
好ましいものとして下記のものが挙げられる。
CF3(CH22Si(OH)3
CF3(CH22SiCH3(OH)2
CF3(CH22Si(OCH3)(OH)2
CF3(CH22Si(CH32(OH)
CF3(CH22Si(OCH32(OH)
817(CH22Si(OH)3
817(CH22SiCH3(OH)2
817(CH22Si(OCH3)(OH)2
817(CH22Si(CH32(OH)
817(CH22Si(OCH32(OH)
37(CF(CF3)CF2O)3CF(CF3)CH2O(CH23Si(OH)3
37(CF(CF3)CF2O)3CF(CF3)CH2O(CH23SiCH3(OH)2
37(CF(CF3)CF2O)3CF(CF3)CH2O(CH23Si(OCH3)(OH)2
37(CF(CF3)CF2O)3CF(CF3)CH2O(CH23Si(OCH32
(OH)
【0051】
これらの化合物はフッ化アルキル基含有ハロゲノシラン化合物やフッ化アルキル基含有アルコキシシラン化合物に加水分解相当量の水を加え、加水分解し、シラノール化することにより得られるものである。
【0052】
本発明のオルガノシランの加水分解物およびその部分縮合物の少なくともいずれかは塗
布品性能の安定化のためには揮発性を抑えることが好ましく、具体的には、105℃における1時間当たりの揮発量が5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが特に好ましい。
【0053】
本発明のオルガノシランの加水分解物およびその部分縮合物の少なくともいずれかにおける前記ビニル重合性基を含有するオルガノシランの含有量は、30質量%〜100質量%が好ましく、50質量%〜100質量%がより好ましく、70質量%〜100質量%が特に好ましい。前記ビニル重合性基を含有するオルガノシランの含有量が30質量%より少ないと、固形分が生じたり、液が濁ったり、ポットライフが悪化したり、分子量の制御が困難(分子量の増大)であったり、重合性基の含有量が少ないために重合処理を行った場合の性能(例えば反射防止膜の耐傷性)の向上が得られにくいために好ましくない。
ビニル重合性基を含有するオルガノシラン化合物としては、前記の(M−1)、(M−2)、および(M−25)が特に好ましく、これらに対し、ビニル重合性基を含まないオルガノシラン化合物として(M−19)から(M−21)、および(M−48)を組み合わせて用いるのが好ましい。
【0054】
本発明に用いられるゾル成分は上記オルガノシランを加水分解および/または部分縮合することにより調製される。
加水分解縮合反応は加水分解性基(X)1モルに対して0.05〜2.0モル、好ましくは0.1〜1.0モルの水を添加し、本発明に用いられる触媒の存在下、25〜100℃で、撹拌することにより行われる。
【0055】
本発明のオルガノシランの加水分解物およびその部分縮合物の少なくともいずれかにおいて、ビニル重合性基を含有するオルガノシランの加水分解物およびその部分縮合物いずれかの重量平均分子量は、300〜20000が好ましく、350〜10000がより好ましく、400〜5000が更に好ましい。
オルガノシランの加水分解物および/またはその部分縮合物において、分子量が20000より大きい成分は10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることが更に好ましい。10質量%より多く含有すると、そのようなオルガノシランの加水分解物および/またはその部分縮合物を含有する硬化性組成物を硬化させて得られる硬化皮膜は、透明性や基板との密着性が劣る場合がある。
【0056】
ここで、重量平均分子量及び分子量は、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したGPC分析装置により、溶媒THF、示差屈折計検出によるポリスチレン換算で表した分子量であり、含有量は、分子量が300以上の成分のピーク面積を100%とした場合の、前記分子量範囲のピークの面積%である。
分散度(重量平均分子/数平均分子量)は3.0〜1.1が好ましく、2.5〜1.1がより好ましく、2.0〜1.1が更に好ましく、1.5〜1.1が特に好ましい。
【0057】
本発明のオルガノシランの加水分解物および部分縮合物の29Si−NMR分析により一般式(1)のXが−OSiの形で縮合している状態を確認できる。
この時、Siの3つの結合が−OSiの形で縮合している場合(T3)、Siの2つの結合が−OSiの形で縮合している場合(T2)、Siの1つの結合が−OSiの形で縮合している場合(T1)、Siが全く縮合していない場合を(T0)とした場合に縮合率αは下記数式(II)で表される。
数式(II):α=(T3×3+T2×2+T1×1)/3/(T3+T2+T1+T0)
縮合率αは、0.1〜0.95が好ましく、0.3〜0.93がより好ましく、0
.4〜0.9がとくに好ましい。
縮合率αが、0.1より小さいと加水分解や縮合が十分でなく、モノマー成分が増える
ため硬化が十分でなく、0.95より大きいと加水分解や縮合が進みすぎ、加水分解可能な基が消費されてしまうため、バインダーポリマー、樹脂基板、無機微粒子などの相互作用が低下してしまい、これらを用いても効果が得られにくくなる。
【0058】
本発明で用いるオルガノシラン化合物の加水分解物および部分縮合物について詳細を説明する。
オルガノシランの加水分解反応、それに引き続く縮合反応は、一般に触媒の存在下で行われる。触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸類;シュウ酸、酢酸、酪酸、マレイン酸、クエン酸、ギ酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の有機酸類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩基類;トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基類;トリイソプロポキシアルミニウム、テトラブトキシジルコニウム、テトラブチルチタネート、ジブチル錫ジラウレート等の金属アルコキシド類;Zr、TiまたはAlなどの金属を中心金属とする金属キレート化合物等;KF、NH4Fなどの含F化合
物が挙げられる。
上記触媒は単独で使用しても良く、或いは複数種を併用しても良い。
【0059】
オルガノシランの加水分解・縮合反応は、無溶媒でも、溶媒中でも行うことができるが成分を均一に混合するために有機溶媒を用いることが好ましく、例えばアルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類などが好適である。
溶媒はオルガノシランと触媒を溶解させるものが好ましい。また、有機溶媒が塗布液あるいは塗布液の一部として用いることが工程上好ましく、含フッ素ポリマーなどのその他の素材と混合した場合に、溶解性あるいは分散性を損なわないものが好ましい。
【0060】
このうち、アルコール類としては、例えば1価アルコールまたは2価アルコールを挙げることができ、このうち1価アルコールとしては炭素数1〜8の飽和脂肪族アルコールが好ましい。
これらのアルコール類の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテルなどを挙げることができる。
【0061】
また、芳香族炭化水素類の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどを、エーテル類の具体例としては、テトラヒドロフラン、ジオキサンなど、ケトン類の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどを、エステル類の具体例としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、炭酸プロピレンなどを挙げることができる。
これらの有機溶媒は、1種単独であるいは2種以上を混合して使用することもできる。該反応における固形分の濃度は特に限定されるものではないが通常1%〜100%の範囲である。
【0062】
オルガノシランの加水分解性基1モルに対して0.05〜2モル、好ましくは0.1〜1モルの水を添加し、上記溶媒の存在下あるいは非存在下に、そして触媒の存在下に、25〜100℃で、撹拌することにより行われる。
本発明においては、一般式R13OH(式中、R13は炭素数1〜10のアルキル基を示す)で表されるアルコールと一般式R14COCH2COR15 (式中、R14は炭素数1〜10のアルキル基、R15は炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のアルコキシ基を示す)で表される化合物とを配位子とした、Zr、TiまたはAlから選ばれる金属を中心金属とする少なくとも1種の金属キレート化合物の存在下で、25〜100℃で撹拌することにより加水分解を行うことが好ましい。
もしくは触媒に含F化合物を使用する場合、含F化合物が完全に加水分解・縮合を進行させる能力が有るため、添加する水量を選択することにより重合度が決定でき、任意の分子量の設定が可能となるので好ましい。すなわち、平均重合度Mのオルガノシラン加水分解物/部分縮合物を調製するためには、Mモルの加水分解性オルガノシランに対して(M−1)モルの水を使用すれば良い。
【0063】
金属キレート化合物は、一般式R13OH(式中、R13は炭素数1〜10のアルキル基を示す)で表されるアルコールとR14COCH2COR15(式中、R14は炭素数1〜10のアルキル基、R15は炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のアルコキシ基を示す)で表される化合物とを配位子とした、Zr、Ti、Alから選ばれる金属を中心金属とするものであれば特に制限なく好適に用いることができる。この範疇であれば、2種以上の金属キレート化合物を併用しても良い。本発明に用いられる 金属キレート化合物は、一般式Zr(OR13p1(R14COCHCOR15p2、Ti(OR13q1(R14COCHCOR15q2、およびAl(OR13r1(R14COCHCOR15r2で表される化合物群から選ばれるものが好ましく、前記オルガノシラン化合物の加水分解物および部分縮合物の縮合反応を促進する作用をなす。
金属キレート化合物中のR13およびR14は、同一または異なってもよく炭素数1〜10のアルキル基、具体的にはエチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec −ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、フェニル基などである。また、R5は、前記と同様の炭素数1〜10のアルキル基のほか、炭素数1〜10のアルコキシ基、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec −ブトキシ基、t−ブトキシ基などである。また、 金属キレート化合物中のp1、p2、q1、q2、r1、およびr2は、それぞれp1+p2=4、q1+q2=4、r1+r2=3となる様に決定される整数を表す。
【0064】
これらの金属キレート化合物の具体例としては、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシトリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウムなどのジルコニウムキレート化合物;ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトン)チタニウムなどのチタニウムキレート化合物;ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、ジイソプロポキシアセチルアセトナートアルミニウム、イソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、イソプロポキシビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノアセチルアセトナート・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウムなどのアルミニウムキレート化合物などが挙げられる。
これらの金属キレート化合物のうち好ましいものは、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウムである。これらの金属キレート化合物は、1種単独であるいは2種以上混合して使用することができる。また、これらの金属キレート化合物の部分加水分解物を使用することもできる。
【0065】
金属キレート化合物は、前記オルガノシラン化合物に対し、好ましくは0.01〜50質量%、より好ましくは0.1〜50質量%、さらに好ましくは0.5〜10質量%の割合で用いられる。金属キレート化合物が上記範囲で用いられることによりオルガノシラン化合物の縮合反応が早く、塗膜の耐久性が良好であり、オルガノシラン化合物の加水分解物および部分縮合物と金属キレート化合物を含有してなる組成物の保存安定性が良好であ
る。
【0066】
本発明に用いられる機能層および低屈折率層の塗布液には、上記ゾル成分および金属キレート化合物を含む組成物に加えて、β−ジケトン化合物およびβ−ケトエステル化合物の少なくともいずれかが添加されることが好ましい。以下にさらに説明する。
【0067】
本発明で使用されるのは、一般式R14COCH2COR15で表されるβ−ジケトン化合
物およびβ−ケトエステル化合物の少なくともいずれかであり、本発明に用いられる組成物の安定性向上剤として作用するものである。すなわち、前記金属キレート化合物(ジルコニウム、チタニウムおよびアルミニウム化合物の少なくともいずれかの化合物)中の金属原子に配位することにより、これらの金属キレート化合物によるオルガノシラン化合物の加水分解物および部分縮合物の縮合反応を促進する作用を抑制し、得られる組成物の保存安定性を向上させる作用をなすものと考えられる。β−ジケトン化合物およびβ−ケトエステル化合物を構成するR14およびR15は、前記金属キレート化合物を構成するR14およびR15と同様である。
【0068】
このβ−ジケトン化合物およびβ−ケトエステル化合物の具体例としては、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−n−プロピル、アセト酢酸−i−プロピル、アセト酢酸−n−ブチル、アセト酢酸−sec-ブチル、アセト酢酸−t−ブチル、2,4−ヘキサン−ジオン、2,4−ヘプタン−ジオン、3,5−ヘプタン−ジオン、2,4−オクタン−ジオン、2,4−ノナン−ジオン、5−メチル−ヘキサン−ジオンなどを挙げることができる。これらのうち、アセト酢酸エチルおよびアセチルアセトンが好ましく、特にアセチルアセトンが好ましい。これらのβ−ジケトン化合物およびβ−ケトエステル化合物は、1種単独でまたは2種以上を混合して使用することもできる。本発明においてβ−ジケトン化合物およびβ−ケトエステル化合物は、金属キレート化合物1モルに対し好ましくは2モル以上、より好ましくは3〜20モル用いられる。2モル未満では得られる組成物の保存安定性に劣るおそれがあり好ましいものではない。
【0069】
上記オルガノシラン化合物の加水分解物および部分縮合物の含有量は、効果の発現、 屈折率、膜の形状・面状等を考慮すると、添加される各機能層の全固形分の0.1〜50質量%が好ましく、0.5〜30質量%がより好ましく、1〜15質量%が最も好ましい。
各機能層へのオルガノシラン化合物の加水分解物および部分縮合物の添加は、各機能 層形成用の塗布液中に、他の成分と同様に、オルガノシラン化合物の加水分解物および 部分縮合物を所定量添加することで行うことができる。
【0070】
次に本発明の反射防止フィルムにおける機能層について説明する。
本発明における機能層とは、光学機能層および物理機能層のどちらでもよく、光学機能層としては、高屈折率層や光拡散層が挙げられ、物理機能層としてはハードコート層や帯電防止層などが挙げられる。もちろん光学機能層と物理機能層と兼ねる場合もあり、例えば防眩性ハードコート層などが該当する。
【0071】
(a)帯電防止層
帯電防止層を形成する方法は、例えば、導電性微粒子と反応性硬化樹脂などのバインダーを含む導電性塗工液を塗工する方法、或いは透明膜を形成する金属や金属酸化物等を蒸着やスパッタリングして導電性薄膜を形成する方法等の従来公知の方法を挙げることができる。帯電防止層は、基材フィルム(透明支持体)に直接又は基材フィルムとの接着を強固にするプライマー層を介して形成することができる。また、帯電防止層を反射防止膜の一部として使用することもできる。この場合、最表層から近い層で使用する場合には、膜の厚さが薄くても十分に帯電防止性を得ることができる。
【0072】
帯電防止層の厚さは、0.01〜10μmが好ましく、0.03〜7μmであることがより好ましく、0.05〜5μmであることがさらに好ましい。帯電防止層の、25℃55%RHにおける表面抵抗値(log SR)は12 Ω/sq以下であることが好ましく、10 Ω/sq以下であることがより好ましい。また、表面抵抗値は、塗膜の透明性と両立するために5 Ω/sq以上であることが好ましい。すなわち、帯電防止層の25℃55%RHにおける表面抵抗値は5〜12 Ω/sqであることが好ましく、5〜10Ω/sqであることがより好ましい。
帯電防止層の表面抵抗は、四探針法により測定することができる。
帯電防止層の表面抵抗を上記範囲とすることで、透明でかつ、防塵性の良い反射防止フィルムが得られる。
また帯電防止層は環境の温湿度で表面抵抗値に変化の少ない電子伝導型であることが好ましい。
帯電防止層は、実質的に透明であることが好ましい。具体的には、帯電防止層のヘイズが、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。さらに、波長550nmの光の透過率が、50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、65%以上であることがさらに好ましく、70%以上であることが最も好ましい。
帯電防止層は、強度が優れており、具体的な帯電防止層の強度は、1kg荷重の鉛筆硬度(JIS−K−5400の規定)で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがより好ましく、3H以上であることがさらに好ましく、4H以上であることが最も好ましい。
【0073】
(帯電防止層の導電性微粒子)
導電性微粒子としては、無機微粒子(導電性無機微粒子)が好ましい。
比表面積は、10〜400m2/gであることが好ましく、20〜200m2/gであることがさらに好ましく、30〜150m2/gであることが最も好ましい。
【0074】
導電性無機微粒子は、金属の酸化物または窒化物から形成することが好ましい。金属の酸化物または窒化物の例には、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛および窒化チタンが含まれる。中でも、酸化錫および酸化インジウムが特に好ましい。導電性無機微粒子は、これらの金属の酸化物または窒化物を主成分とし、さらに他の元素を含むことができる。主成分とは、粒子を構成する成分の中で最も含有量(質量%)が多い成分を意味する。他の元素の例には、Ti、Zr、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Al、Mg、Si、P、S、B、Nb、In、Vおよびハロゲン原子が含まれる。酸化錫および酸化インジウムの導電性を高めるために、Sb、P、B、Nb、In、Vおよびハロゲン原子を添加することが好ましい。Sbを含有する酸化錫(ATO)およびSnを含有する酸化インジウム(ITO)が特に好ましい。ATO中のSbの割合は、3〜20質量%であることが好ましい。ITO中のSnの割合は、5〜20質量%であることが好ましい。
【0075】
帯電防止層に用いる導電性無機微粒子の一次粒子の平均粒子径は、1〜150nmであることが好ましく、5〜100nmであることがさらに好ましく、5〜70nmであることが最も好ましい。形成される帯電防止層中の導電性無機微粒子の平均粒子径は、1〜200nmであり、5〜150nmであることが好ましく、10〜100nmであることがさらに好ましく、10〜80nmであることが最も好ましい。導電性無機微粒子の平均粒子径は、粒子の質量を重みとした平均径であり、光散乱法や電子顕微鏡写真により測定できる。
【0076】
導電性無機微粒子を表面処理してもよい。表面処理は、無機化合物または有機化合物を
用いて実施する。表面処理に用いる無機化合物の例には、アルミナおよびシリカが含まれ、シリカ処理が特に好ましい。表面処理に用いる有機化合物の例には、ポリオール、アルカノールアミン、ステアリン酸、シランカップリング剤およびチタネートカップリング剤が含まれ、シランカップリング剤が最も好ましい。二種類以上の表面処理を組み合わせて実施してもよい。
導電性無機微粒子の形状は、米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状あるいは不定形状であることが好ましい。
二種類以上の導電性無機微粒子を帯電防止層内で併用してもよい。
【0077】
帯電防止層中の導電性無機微粒子の割合は、20〜90質量%であることが好ましく、25〜85質量%であることが好ましく、30〜80質量%であることがさらに好ましい。
【0078】
導電性無機微粒子は、分散物の状態で帯電防止層の形成に使用する。導電性無機微粒子の分散媒体は、沸点が60〜170℃の液体を用いることが好ましい。分散媒体の例には、水、アルコール(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラハイドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)が含まれる。トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンおよびブタノールが特に好ましい。導電性無機微粒子は、分散機を用いて媒体中に分散できる。分散機の例には、サンドグラインダーミル(例、ピン付きビーズミル)、高速インペラーミル、ペッブルミル、ローラーミル、アトライターおよびコロイドミルが含まれる。サンドグラインダーミルおよび高速インペラーミルが特に好ましい。また、予備分散処理を実施してもよい。予備分散処理に用いる分散機の例には、ボールミル、三本ロールミル、ニーダーおよびエクストルーダーが含まれる。
【0079】
(帯電防止層のバインダー)
帯電防止層は、架橋しているポリマーをバインダーとして用いることができる。該架橋性ポリマーはアニオン性基を有していることが好ましい。アニオン性基を有する架橋性ポリマーは、アニオン性基を有するポリマーの主鎖が架橋している構造を有する。アニオン性基は、導電性無機微粒子の分散状態を維持する機能を有する。架橋構造は、ポリマーに皮膜形成能を付与して、帯電防止層を強化する機能を有する。
【0080】
ポリマーの主鎖の例には、ポリオレフィン(飽和炭化水素)、ポリエーテル、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミン、ポリアミドおよびメラミン樹脂が含まれる。ポリオレフィン主鎖、ポリエーテル主鎖およびポリウレア主鎖が好ましく、ポリオレフィン主鎖およびポリエーテル主鎖がさらに好ましく、ポリオレフィン主鎖が最も好ましい。
ポリオレフィン主鎖は、飽和炭化水素からなる。ポリオレフィン主鎖は、例えば、不飽和重合性基の付加重合反応により得られる。ポリエーテル主鎖は、エーテル結合(−O−)によって繰り返し単位が結合している。ポリエーテル主鎖は、例えば、エポキシ基の開環重合反応により得られる。ポリウレア主鎖は、ウレア結合(−NH−CO−NH−)によって、繰り返し単位が結合している。ポリウレア主鎖は、例えば、イソシアネート基とアミノ基との縮重合反応により得られる。ポリウレタン主鎖は、ウレタン結合(−NH−CO−O−)によって、繰り返し単位が結合している。ポリウレタン主鎖は、例えば、イソシアネート基と、水酸基(N−メチロール基を含む)との縮重合反応により得られる。ポリエステル主鎖は、エステル結合(−CO−O−)によって、繰り返し単位が結合している。ポリエステル主鎖は、例えば、カルボキシル基(酸ハライド基を含む)と水酸基(N−メチロール基を含む)との縮重合反応により得られる。ポリアミン主鎖は、イミノ結合(−NH−)によって、繰り返し単位が結合している。ポリアミン主鎖は、例えば、エチレンイミン基の開環重合反応により得られる。ポリアミド主鎖は、アミド結合(−NH−CO−)によって、繰り返し単位が結合している。ポリアミド主鎖は、例えば、イソシアネート基とカルボキシル基(酸ハライド基を含む)との反応により得られる。メラミン樹脂主鎖は、例えば、トリアジン基(例、メラミン)とアルデヒド(例、ホルムアルデヒド)との縮重合反応により得られる。なお、メラミン樹脂は、主鎖そのものが架橋構造を有する。
【0081】
アニオン性基は、ポリマーの主鎖に直接結合させるか、あるいは連結基を介して主鎖に結合させる。アニオン性基は、連結基を介して側鎖として、主鎖に結合させることが好ましい。
アニオン性基の例としては、カルボン酸基(カルボキシル)、スルホン酸基(スルホ)およびリン酸基(ホスホノ)などが挙げられ、スルホン酸基およびリン酸基が好ましい。
アニオン性基は、塩の状態であってもよい。アニオン性基と塩を形成するカチオンは、アルカリ金属イオンであることが好ましい。また、アニオン性基のプロトンは、解離していてもよい。
アニオン性基とポリマーの主鎖とを結合する連結基は、−CO−、−O−、アルキレン基、アリーレン基、およびこれらの組み合わせから選ばれる二価の基であることが好ましい。
【0082】
架橋構造は、通常、二以上の主鎖を化学的に結合(好ましくは共有結合)するが、帯電性層における架橋構造は、三以上の主鎖を共有結合することが好ましい。架橋構造は、−CO−、−O−、−S−、窒素原子、リン原子、脂肪族残基、芳香族残基およびこれらの組み合わせから選ばれる二価以上の基からなることが好ましい。
【0083】
アニオン性基を有する架橋性ポリマーは、アニオン性基を有する繰り返し単位と、架橋構造を有する繰り返し単位とを有するコポリマーであることが好ましい。コポリマー中のアニオン性基を有する繰り返し単位の割合は、2〜96質量%であることが好ましく、4〜94質量%であることがさらに好ましく、6〜92質量%であることが最も好ましい。繰り返し単位は2つ以上のアニオン性基を有していてもよい。コポリマー中の架橋構造を有する繰り返し単位の割合は、4〜98質量%であることが好ましく、6〜96質量%であることがさらに好ましく、8〜94質量%であることが最も好ましい。
【0084】
アニオン性基を有する架橋性ポリマーの繰り返し単位は、アニオン性基と架橋構造の双方を有していてもよい。また、その他の繰り返し単位(アニオン性基も架橋構造もない繰り返し単位)が含まれていてもよい。
その他の繰り返し単位としては、アミノ基または四級アンモニウム基を有する繰り返し単位およびベンゼン環を有する繰り返し単位が好ましい。アミノ基または四級アンモニウム基は、アニオン性基と同様に、無機微粒子の分散状態を維持する機能を有する。なお、アミノ基、四級アンモニウム基およびベンゼン環は、アニオン性基を有する繰り返し単位あるいは架橋構造を有する繰り返し単位に含まれていても、同様の効果が得られる。
アミノ基または四級アンモニウム基を有する繰り返し単位では、アミノ基または四級アンモニウム基は、ポリマーの主鎖に直接結合させるか、あるいは連結基を介して主鎖に結合させる。アミノ基または四級アンモニウム基は、連結基を介して側鎖として、主鎖に結合させることが好ましい。アミノ基または四級アンモニウム基は、二級アミノ基、三級ア
ミノ基または四級アンモニウム基であることが好ましく、三級アミノ基または四級アンモニウム基であることがさらに好ましい。二級アミノ基、三級アミノ基または四級アンモニウム基の窒素原子に結合する基は、アルキル基であることが好ましく、炭素原子数が1〜12のアルキル基であることが好ましく、炭素原子数が1〜6のアルキル基であることがさらに好ましい。四級アンモニウム基の対イオンは、ハライドイオンであることが好ましい。アミノ基または四級アンモニウム基とポリマーの主鎖とを結合する連結基は、−CO−、−NH−、−O−、アルキレン基、アリーレン基、およびこれらの組み合わせから選ばれる二価の基であることが好ましい。架橋しているアニオン性基を有するポリマーが、アミノ基または四級アンモニウム基を有する繰り返し単位を含む場合、その割合は、0.06〜32質量%であることが好ましく、0.08〜30質量%であることがさらに好ましく、0.1〜28質量%であることが最も好ましい。
【0085】
上記バインダーに対して、例えば特開2003−39586公開広報に記載の以下の反応性有機珪素化合物と併用することもできる。反応性有機珪素化合物は、バインダーと反応性有機珪素化合物の合計に対して10〜100重量%の範囲で使用される。特に下記の(3)の電離放射線硬化性有機珪素化合物を使用する場合には、これだけを樹脂成分として帯電防止層を形成することが可能である。以下に、反応性有機珪素化合物の具体例を挙げる。
【0086】
(1)珪素アルコキシド
RmSi(OR′)nで表せる化合物であり、ここでR、R′は炭素数1〜10のアルキル基を表し、m及びnはそれぞれm+n=4となる整数である。例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラペンタエトキシシラン、テトラペンタ−iso−プロポキシシラン、テトラペンタ−n−プロキシシラン、テトラペンタ−n−ブトキシシラン、テトラペンタ−sec−ブトキシシラン、テトラペンタ−tert−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルプロポキシシラン、ジメチルブトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0087】
(2)シランカップリング剤
例えば、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルメトキシシラン・塩酸塩、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アミノシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、オクタデシルジメチル[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロライド、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン等が挙げられる。
【0088】
(3)電離放射線硬化性珪素化合物
電離放射線によって反応架橋する複数の基、例えば、重合性二重結合基を有する分子量5,000以下の有機珪素化合物が挙げられる。このような反応性有機珪素化合物は、片末端ビニル官能性ポリシラン、両末端ビニル官能性ポリシラン、片末端ビニル官能ポリシロキサン、両末端ビニル官能性ポリシロキサン、或いはこれらの化合物を反応させたビニ
ル官能性ポリシラン、又はビニル官能性ポリシロキサン等が挙げられる。
【0089】
その他の化合物としては、3−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等の(メタ)アクリロキシシラン化合物等が挙げられる。
帯電防止層は、例えば、上記成分を溶媒に溶解した塗布液を塗布、乾燥し、必要により電離放射線の照射または加熱により架橋または重合を行い、形成することができる。
【0090】
(b)防眩性ハードコート層
防眩性ハードコート層は、ハードコート性を付与するためのバインダー、防眩性を付与するためのマット粒子を含有し、好ましくは、高屈折率化、架橋収縮防止、高強度化のために、無機フィラーを含有する。
【0091】
(防眩性ハードコート層のバインダー)
防眩性ハードコート層のバインダーとしては、飽和炭化水素鎖またはポリエーテル鎖を主鎖として有するポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素鎖を主鎖として有するポリマーであることがさらに好ましい。これらの防眩性ハードコート層のバインダーポリマーは反応性架橋基を有することが好ましい。
【0092】
飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーとしては、エチレン性不飽和モノマーの重合体(バインダー前駆体)が好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有し、かつ反応性架橋基を有するバインダーポリマーとしては、二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの(共)重合体が好ましい。
【0093】
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、ビニルベンゼンおよびその誘導体(例、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)およびメタクリルアミドが挙げられる。上記モノマーは2種以上併用してもよい。
【0094】
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
従って、エチレン性不飽和基を有するモノマー、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤、無機微粒子などのマット粒子を含有する塗液を調製し、該塗液を透明支持体上に塗布後、電離放射線または熱による重合反応により硬化して、防眩性ハードコート層を形成する。
【0095】
光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類が挙げられる。アセトフェノン類の例には、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノンおよび2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンが含まれる。ベンゾイン類の例には、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノンおよびp−クロロベンゾフェノンが含まれる。ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドが含まれる。
【0096】
最新UV硬化技術(P.159,発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1
991年発行)にも種々の例が記載されており本発明に有用である。
市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製のイルガキュア(651,184,907)等が好ましい例として挙げられる。
また特開平6−41468に記載されているように、光重合開始剤を2種併用することも好ましく用いられる。
光重合開始剤は、多官能モノマー100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。
光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトンおよびチオキサントンを挙げることができる。
【0097】
熱ラジカル開始剤としては、有機あるいは無機過酸化物、有機アゾ及びジアゾ化合物等を用いることができる。
具体的には、有機過酸化物として過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシド、無機過酸化物として、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等、アゾ化合物として2−アゾービスーイソブチロニトリル、2−アゾービスープロピオニトリル、2−アゾ−ビスーシクロヘキサンジニトリル等、ジアゾ化合物としてジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム等を挙げることができる。
【0098】
ポリエーテルを主鎖として有するポリマーは、多官能エポシキシ化合物の開環重合体が好ましい。多官能エポキシ化合物の開環重合は、光酸発生剤あるいは熱酸発生剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
従って、多官能エポキシ化合物、光酸発生剤あるいは熱酸発生剤、マット粒子、好ましくは更に無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を透明支持体上に塗布後、電離放射線または熱による重合反応により硬化して、低屈折率層を形成する。
【0099】
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりにまたはそれに加えて、架橋性官能基を有するモノマーを用いてポリマー中に架橋性官能基を導入し、この架橋性官能基の反応により、架橋構造をバインダーポリマーに導入してもよい。
架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基および活性メチレン基が含まれる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステルおよびウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。すなわち、本発明において架橋性官能基は、すぐには反応を示すものではなくとも、分解した結果反応性を示すものであってもよい。
これら架橋性官能基を有するバインダーポリマーは塗布後、加熱することによって架橋構造を形成することができる。
【0100】
また高屈折率するために、前記エチレン性不飽和モノマーの構造中に芳香族環や、フッ素以外のハロゲン原子、硫黄原子、リン原子、及び窒素原子から選ばれた少なくとも1種の原子を含むことが好ましい。
高屈折率モノマーの具体例としては、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロキシフェニル−4'−メトキシフェニルチオエーテル等が挙げられる。これらのモノマーも2種以上併用してもよい。
【0101】
防眩性ハードコート層のバインダーは、該層の塗布組成物の固形分量に対して20〜95質量%添加する。
【0102】
(マット粒子)
防眩性ハードコート層には、防眩性付与の目的で、フィラー粒子より大きく、平均粒径が1〜10μm、好ましくは1.5〜7.0μmのマット粒子、例えば無機化合物の粒子または樹脂粒子が含有される。
上記マット粒子の具体例としては、例えばシリカ粒子、TiO2粒子等の無機化合物の
粒子;アクリル粒子、架橋アクリル粒子、ポリスチレン粒子、架橋スチレン粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子等の樹脂粒子が好ましく挙げられる。なかでも架橋スチレン粒子、架橋アクリル粒子、シリカ粒子が好ましい。
マット粒子の形状は、真球あるいは不定形のいずれも使用できる。
【0103】
また、粒子径の異なる2種以上のマット粒子を併用して用いてもよい。より大きな粒子径のマット粒子で防眩性を付与し、より小さな粒子径のマット粒子で別の光学特性を付与することが可能である。例えば、133ppi以上の高精細ディスプレイに反射防止フィルムを貼り付けた場合に、ギラツキと呼ばれる光学性能上の不具合のないことが要求される。ギラツキは、フィルム表面に存在する凹凸(防眩性に寄与)により、画素が拡大もしくは縮小され、輝度の均一性を失うことに由来するが、防眩性を付与するマット粒子より小さな粒子径で、バインダーの屈折率と異なるマット粒子を併用することにより大きく改善することができる。
【0104】
さらに、上記マット粒子の粒子径分布としては単分散であることが最も好ましく、各粒子の粒子径は、それぞれ同一に近ければ近いほど良い。例えば平均粒子径よりも20%以上粒子径が大きな粒子を粗大粒子と規定した場合には、この粗大粒子の割合は全粒子数の1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましくは
0.01%以下である。このような粒子径分布を持つマット粒子は通常の合成反応後に、分級によって得られ、分級の回数を上げることやその程度を強くすることにより、より好ましい分布のマット剤を得ることができる。
【0105】
上記マット粒子は、形成された防眩性ハードコート層中のマット粒子量が好ましくは10〜2000mg/m2、より好ましくは100〜1400mg/m2となるように防眩性ハードコート層に含有される。
マット粒子の粒度分布はコールターカウンター法により測定し、測定された分布を粒子数分布に換算する。
【0106】
(無機フィラー)
防眩性ハードコート層には、層の屈折率を高めるために、上記のマット粒子に加えて、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなり、平均粒径が0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.06μm以下である無機フィラーが含有されること
が好ましい。
また逆に、マット粒子との屈折率差を大きくするために、高屈折率マット粒子を用いた防眩性ハードコート層では層の屈折率を低目に保つためにケイ素の酸化物を用いることも好ましい。好ましい粒径は前述の無機フィラーと同じである。
防眩性ハードコート層に用いられる無機フィラーの具体例としては、TiO2、ZrO2、Al23、In23、ZnO、SnO2、Sb23、ITOとSiO2等が挙げられる。TiO2およびZrO2が高屈折率化の点で特に好ましい。該無機フィラーは表面をシランカップリング処理又はチタンカップリング処理されることも好ましく、フィラー表面にバインダー種と反応できる官能基を有する表面処理剤が好ましく用いられる。
これらの無機フィラーの添加量は、防眩性ハードコート層の全質量の10〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは20〜80質量%であり、特に好ましくは30〜75質量%である。
なお、このようなフィラーは、粒径が光の波長よりも十分小さいために散乱が生じず、バインダーポリマーに該フィラーが分散した分散体は光学的に均一な物質として振舞う。
【0107】
防眩性ハードコート層のマット粒子を除いた部分の屈折率は、1.50〜2.00であることが好ましく、より好ましくは1.50〜1.80である。屈折率を上記範囲とするには、バインダー及び無機フィラーの種類及び量割合を適宜選択すればよい。
【0108】
防眩性ハードコート層の膜厚は1〜10μmが好ましく、1.2〜8μmがより好ましい。
【0109】
(c)光拡散層
本発明の反射防止フィルムにおける光拡散層の目的は、液晶表示装置の視野角(特に下方向視野角)を拡大し、観察方向の視角が変化してもコントラスト低下、階調または黒白反転、あるいは色相変化を抑止することである。
本発明者等は、ゴニオフォトメーターで測定される散乱光の強度分布が視野角改良効果に相関することを確認した。すなわち、バックライトから出射された光が視認側の偏光板表面に設置された光拡散フィルムに含有される透光性微粒子の内部散乱の効果により拡散されればされるほど視野角特性がよくなる。しかし、あまり拡散されすぎると、後方散乱が大きくなり、正面輝度が減少する、あるいは、散乱が大きすぎて画像鮮明性が劣化する等の問題が生じる。従って、散乱光強度分布をある範囲に制御することが必要となる。そこで、鋭意検討の結果、所望の視認特性を達成するには、散乱光プロファイルの出射角0°の光強度に対して、特に視認角改良効果と相関ある30°の散乱光強度が0.01%〜0.2%であることが好ましく、0.02%〜0.15%が更に好ましく、0.03%〜0.1%が特に好ましい。
散乱光プロファイルは、作成した光散乱フィルムについて、(株)村上色彩技術研究所製の自動変角光度計GP−5型を用いて測定できる。
【0110】
光拡散層はバインダーである透光性樹脂、無機フィラーおよび少なくとも一種類の透光性微粒子から形成されることが好ましい。バインダー及び無機フィラーは前述の防眩性ハードコート層と同様のものが使用でき、透光性微粒子は前述のマット粒子と同様のものが用いられる。
透光性粒子は平均粒子径0.1〜5μmであることが好ましい。透光性粒子及び無機フィラーは、透光性樹脂に分散されており、該透光性粒子と該透光性樹脂との屈折率の差は0.02〜0.2であることが好ましい。
透光性粒子は光拡散層全固形分中に3〜30質量%含有されていることが好ましい。透光性粒子がこの配合量で含有されることで、良好な視野角特性が得られる。
【0111】
光拡散性層のバインダーは、該層の塗布組成物の固形分量に対して、5〜80質量%添
加する。
光拡散層膜厚は、1〜10μmが好ましく、1.2〜8μmがより好ましい。
【0112】
(d)ハードコート層
ハードコート層は、反射防止フィルムに物理強度を付与するために防眩性ではない、いわゆる平滑なハードコート層も好ましく用いられ、透明支持体の表面に設ける。特に、透明支持体と前記機能層(帯電防止層、防眩性ハードコート層、光拡散層)の間に設けることが好ましい。
ハードコート層は、電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成されることが好ましい。例えば、電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーを含む塗布組成物を透明支持体上に塗布し、多官能モノマーや多官能オリゴマーを架橋反応、又は、重合反応させることにより形成することができる。
電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。
光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
【0113】
光重合性官能基を有する光重合性多官能モノマーの具体例としては、防眩性ハードコート層で例示したものが挙げられ、光重合開始剤、光増感剤を用いて重合することが好ましい。光重合反応は、ハードコート層の塗布および乾燥後、紫外線照射により行うことが好ましい。
【0114】
ハードコート層は、脆性の付与のために重量平均分子量が500以上のオリゴマーおよび/またはポリマーを添加してもよい。
オリゴマー、ポリマーとしては、(メタ)アクリレート系、セルロース系、スチレン系の重合体や、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート等が挙げられる。好ましくは、側鎖に官能基を有するポリ(グリシジル(メタ)アクリレート)やポリ(アリル(メタ)アクリレート)等が挙げられる。
【0115】
ハードコート層におけるオリゴマーおよび/またはポリマーの含有量は、ハードコート層の全質量に対し5〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは25〜70質量%、特に好ましくは35〜65質量%である。
ハードコート層のバインダーは、該層の塗布組成物の固形分量に対して30〜95質量%添加する。
【0116】
ハードコート層は、一次粒子の平均粒径が200nm以下の無機微粒子を含有することが好ましい。ここでいう平均粒径は質量平均径である。一次粒子の平均粒径を200nm以下にすることで透明性を損なわないハードコート層を形成できる。
無機微粒子はハードコート層の硬度を高くすると共に、塗布層の硬化収縮を抑える機能がある。また、ハードコート層の屈折率を制御する目的にも添加される。
無機微粒子としては、高屈折率層で例示した無機微粒子に加え、二酸化珪素、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、硫酸カルシウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化錫、ITO、酸化亜鉛などの微粒子が挙げられる。好ましくは、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化錫、ITO、酸化亜鉛である。
【0117】
無機微粒子の一次粒子の好ましい平均粒径は5〜200nm、より好ましくは10〜150nmであり、さらに好ましくは20〜100nm、特に好ましくは20〜50nmである。
ハードコート層の中において、無機微粒子はなるべく微細に分散されていることが好ま
しい。
ハードコート層の中における無機微粒子の粒子サイズは、好ましくは平均粒径で5〜300nm、より好ましくは10〜200nmであり、さらに好ましくは20〜150nm、特に好ましくは20〜80nmである。
【0118】
ハードコート層における無機微粒子の含有量は、ハードコート層の全質量に対し10〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは15〜80質量%、特に好ましくは15〜75質量%である。
【0119】
ハードコート層の膜厚は用途により適切に設計することができる。ハードコート層の膜厚は、0.2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜7μm、特に好ましくは0.7〜5μmである。
【0120】
ハードコート層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
また、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ない
ほど好ましい。
ハードコート層の形成において、電離放射線硬化性の化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成される場合、架橋反応、又は、重合反応は酸素濃度が10体積%以下の雰囲気で実施することが好ましい。酸素濃度が10体積%以下の雰囲気で形成することにより、物理強度や耐薬品性に優れたハードコート層を形成することができる。
好ましくは酸素濃度が6体積%以下の雰囲気で電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成することであり、更に好ましくは酸素濃度が4体積%以下、特に好ましくは酸素濃度が2体積%以下、最も好ましくは1体積%以下である。
【0121】
酸素濃度を10体積%以下にする手法としては、大気(窒素濃度約79体積%、酸素濃度約21体積%)を別の気体で置換することが好ましく、特に好ましくは窒素で置換(窒素パージ)することである。
ハードコート層は、透明支持体の表面に、無機微粒子を含有するハードコート層形成用の塗布組成物を塗布することで形成することが好ましい。
【0122】
〔B.低屈折率層〕
次に本発明の低屈折率層について以下に説明する。
本発明の反射防止フィルムが有する前記低屈折率層を形成するための組成物(低屈折率層形成用組成物)は、特定の有機シリル化合物(オルガノシラン化合物)の加水分解物および/またはその部分縮合物を含有する。
本発明の反射防止フィルムの低屈折率層の屈折率は、一般的には1.20〜1.49であり、好ましくは1.30〜1.44の範囲にある。
【0123】
[低屈折率層用オルガノシラン化合物]
本発明の低屈折率層形成用組成物に用いられる特定のオルガノシラン化合物は、下記一般式(2−1)および(2−2)で表される化合物である。
【0124】
一般式(2−1): Si(X)4
一般式(2−2): (R)m2Si(X)n2
【0125】
及びXは、水酸基、ハロゲン原子、−OR10基、又は−OCOR10基を表す。Rはアルキル基、アルケニル基又はアリール基を表し、R10はアルキル基を表す。m+nは4であり、m及びnはそれぞれ正の整数である。
詳しくは、Rは炭素数1〜10の、置換もしくは無置換のアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、2−プロピル、ブチル、ヘキシル、オクチル)、炭素数2〜10の、置換もしくは無置換のアルケニル基(例えば、ビニル、アリル、2−ブテン−1−イル)、又は炭素数6〜10の、置換もしくは無置換のアリール基(例えば、フェニル、ナフチル)を表し、R10はRで表されるアルキル基と同じ意味の基を表す。R又はR10で表される基が置換基を有する場合の好ましい置換基は、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素等)、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基(メチル、エチル、i−プロピル、プロピル、t−ブチル等)、アリール基(フェニル、ナフチル等)、芳香族ヘテロ環基(フリル、ピラゾリル、ピリジル等)、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、i−プロポキシ、ヘキシルオキシ等)、アリールオキシ(フェノキシ等)、アルキルチオ基(メチルチオ、エチルチオ等)、アリールチオ基(フェニルチオ等)、アルケニル基(ビニル、1−プロペニル等)、アシルオキシ基(アセトキシ、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル等)、カルバモイル基(カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N−メチル−N−オクチルカルバモイル等)、アシルアミノ基(アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、アクリルアミノ、メタクリルアミノ等)等が挙げられる。
【0126】
一般式(2−1)および(2−2)の化合物は、加水分解して相互に縮合して所謂ゾル−ゲル法によってマトリックスを形成する。一般式(2−1)の化合物の具体的化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン等が挙げられる。特にテトラメトキシシラン又はテトラエトキシシランが好ましい。
【0127】
一般式(2−2)の化合物は、以下の3つの一般式で表される。
(a) RSi(X2)
(b) (R)Si(X2)
(c) (R)Si(X2
【0128】
次に(a)成分について説明する。
(a)成分において、Rは、一般式(2−2)におけるRと同じ意味の基を表し、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基などのアルキル基、そのほかγ−クロロプロピル基、ビニル基、CFCHCHCH− 、CCHCHCH−、CCHCHCH−、CCHCH− 、CFOCHCHCH−、COCHCHCH−、COCHCHCH−、(CF)CHOCHCHCH−、CCHOCHCHCH−、3−(パーフルオロシクロヘキシルオキシ)プロピル、H(CF)CHOCHCHCH−、H(CF)CHCHCH−、3−グリシドキシプロピル基、3−アクリルオキシプロピル基、3−メタクリルオキシプロピル基、3−メルカプトプロピル基、フェニル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基などが挙げられる。
また、X2は、−OH、ハロゲン原子、−OR10基、又は−OCOR10基を表す。R10は、一般式(2−1)についてのR10と同じ意味の基を表す。好ましくは、炭素数1〜5のアルコキシ基または炭素数1〜4のアシルオキシ基であり、例えば、塩素原子、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、i−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、アセチルオキシ基などが挙げられる。
【0129】
これらの(a)成分の具体例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメ
トキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシラン、CFCHCHCHSi(OCH) 、CCHCHCHSi(OCH)、CCHCHSi(OCH) 、CCHCHCHSi(OCH)、COCHCHCHSi(OCH) 、COCHCHCHSi(OC)、(CF)CHOCHCHCHSi(OCH) 、CCHOCHCHCHSi(OCH)、H(CF)CHOCHCHCHSi(OCH 、3−(パーフルオロシクロヘキシルオキシ)プロピルシラン等を挙げることができる。
【0130】
このうち、フッ素原子を有するオルガノシラン化合物が好ましい。また、Rとしてフッ素原子を有さないオルガノシラン化合物を用いる場合、メチルトリメトキシシランまたはメチルトリエトキシシランを用いる事が好ましい。上記の有機シリル化合物は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用する事もできる。
【0131】
次に(b) 成分について説明する。
(b) 成分は、一般式(R)Si(X)(式中、Rおよび(X)は前記(a) 成分に使用されるオルガノシラン化合物で定義されたR および(X)と同じ)で表されるオルガノシラン化合物である。ただし、複数あるRはお互いに同じ置換基でなくてもよい。本発明の組成物中では加水分解、縮合して得られる加水分解物および/または部分縮合物となり、組成物中における結合剤としての働きをするとともに、塗膜を柔軟化し耐アルカリ性を向上させるものである。
【0132】
これらのオルガノシラン化合物の具体例は、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−i−プロピルジメトキシシラン、ジ−i−プロピルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、(CFCHCH)Si(OCH) 、(CFCHCHCH)Si(OCH)、(COCHCHCH)Si(OCH)、〔H(CF)CHOCHCHCH Si(OCH) 、(CCHCH)Si(OCH)などを挙げる事ができ、好ましくはフッ素原子を有するオルガノシラン化合物である。またR としてフッ素原子を有さないオルガノシラン化合物を用いる場合には、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランが好ましい。また、(b)成分で表されるオルガノシラン化合物は、1種単独で用いてもよいし、あるいは2種以上を併用することもできる。
【0133】
次に(c) 成分について説明する。
(c) 成分は、一般式(R)Si(X2)(式中Rおよび(X2)は前記(a) 成分に使用されるオルガノシラン化合物で定義されたR および(X2)と同じ)で表されるオルガノシラン化合物である。ただし、複数あるRはお互いに同じ置換基でなくてもよい。本発明の組成物中では膜を疎水的にする働きをするとともに、塗膜の耐アルカリ性を向上させるものである。
これらのオルガノシラン化合物の具体例は、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエ
トキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリ−n−プロピルメトキシシラン、トリ−n−プロピルエトキシシラン、トリ−i−プロピルメトキシシラン、トリ−i−プロピルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルエトキシシランなどが挙げられる。
【0134】
本発明において一般式(2−1)および一般式(2−2)の(a)〜(c)の各成分は、それぞれ単独で用いることもできるが、混合して用いても良く、その際の配合割合は、一般式(2−1)成分を100質量部とした場合、(a)成分は一般式(2−1)成分を基準に0〜100質量%、好ましくは1〜60質量%、さらに好ましくは1〜40質量%である。(b)成分は一般式(2−1)成分を100質量部とした場合、好ましくは0〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部、さらに好ましくは0.5〜3質量部である。(c)成分は一般式(2−1)成分を100質量部とした場合に好ましくは0〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部、さらに好ましくは0.5〜3質量部である。
一般式(2−1)成分の割合がオルガノシラン化合物中30質量%を下回ると得られる塗膜の密着性、硬化性が低下する場合があるので、30質量%以上とするのが好ましい。
【0135】
[重合性モノマー]
本発明においては、前記オルガノシラン化合物に加えて、重合性のモノマーを併用することが好ましい。特に、フッ素原子を含むモノマー(以下含フッ素モノマーと称す)は屈折率が低いという点から好ましく用いられる。含フッ素モノマーはモノマーがフッ素原子を含有しているものであれば特に制限はないが、フッ素原子をパーフルオロアルキル基として有するものがフッ素含量の点で特に好ましい。
【0136】
前記重合性モノマーの具体例としては、例えばアクリルまたはメタクリル酸の部分及び完全フッ素化アルキル、アルケニル、アリールエステル類(例えば下記一般式で表される化合物)、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類、完全または部分フッ素化ビニルエステル類、完全または部分フッ素化ビニルケトン類等である。
前記重合性モノマーの配合量は、低屈折率層の全固形分中1〜50質量%とするのが好ましい。
【0137】
[無機微粒子]
また、低屈折率層には、無機微粒子を添加することが好ましい。
無機微粒子の塗設量は、1mg/m〜100mg/mが好ましく、より好ましくは5mg/m〜80mg/m、更に好ましくは10mg/m〜60mg/mである。少なすぎると、耐擦傷性の改良効果が減少する場合があり、多すぎると、低屈折率層表面に微細な凹凸ができ、黒の締まりなどの外観や積分反射率が悪化する場合があるので好ましくない。該無機微粒子は、低屈折率層に含有させることから、低屈折率であることが望ましい。例えば、フッ化マグネシウムやシリカの微粒子が挙げられる。特に、屈折率、分散安定性、コストの点で、シリカ微粒子が好ましい。
【0138】
以下、無機微粒子を代表してシリカ微粒子について詳述する。
シリカ微粒子の平均粒径は、低屈折率層の厚みの30%以上150%以下が好ましく、より好ましくは35%以上80%以下、更に好ましくは40%以上60%以下である。即ち、低屈折率層の厚みが100nmであれば、シリカ微粒子の粒径は30nm以上150nm以下が好ましく、より好ましくは35nm以上80nm以下、更に好ましくは、40nm以上60nm以下である。
シリカ微粒子の粒径が小さすぎると、耐擦傷性の改良効果が少なくなる場合があり、大きすぎると低屈折率層表面に微細な凹凸ができ、黒の締まりといった外観、積分反射率が悪化する場合があるので好ましくない。シリカ微粒子は、結晶質でも、アモルファスのいずれでも良く、また単分散粒子でも、所定の粒径を満たすならば凝集粒子でも構わない。
形状は、球径が最も好ましいが、不定形であっても問題無い。ここで、無機微粒子の平均粒径はコールターカウンターにより測定される。
【0139】
低屈折率層の屈折率上昇をより一層少なくするために、中空のシリカ微粒子を用いることが好ましく、該中空シリカ微粒子は屈折率が好ましくは1.15〜1.40、より好ましくは1.17〜1.35、さらに好ましくは1.17〜1.30である。
ここでの屈折率は、粒子全体としての屈折率を表し、中空シリカ粒子を形成している外殻のシリカのみの屈折率を表すものではない。
この時、粒子内の空腔の半径をa、粒子外殻の半径をbとすると、空隙率xは、下記数式(II)で表される。
数式(II): x=(4πa3/3)/(4πb3/3)×100
【0140】
空隙率xは、好ましくは10〜60%、さらに好ましくは20〜60%、最も好ましくは30〜60%である。
中空のシリカ粒子を上述の範囲より低屈折率に、空隙率を上述の範囲より大きくしようとすると、外殻の厚みが薄くなり、粒子の強度としては弱くなるため、耐擦傷性の観点から1.15未満の低屈折率の粒子は好ましくない。
なお、これら中空シリカ粒子の屈折率はアッベ屈折率計(アタゴ(株)製)にて測定をおこなった。
【0141】
また、平均粒径が低屈折率層の厚みの25%未満であるシリカ微粒子(「小サイズ粒径のシリカ微粒子」と称す)の少なくとも1種を上記の好ましい平均粒径の範囲内のシリカ微粒子(「大サイズ粒径のシリカ微粒子」と称す)と併用することが好ましい。
【0142】
シリカ微粒子は、分散液中あるいは低屈折率層形成用組成物中で、分散安定化を図るために、あるいはマトリックス成分との親和性、結合性を高めるために、プラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理、界面活性剤やカップリング剤等による化学的表面処理がなされていても良い。カップリング剤の使用が特に好ましい。カップリング剤としては、アルコキシメタル化合物(例、チタンカップリング剤、シランカップリング剤)が好ましく用いられる。なかでも、シランカップリング処理が特に有効である。
【0143】
上記カップリング剤は、低屈折率層の無機フィラーの表面処理剤として低屈折率層形成用組成物調製以前にあらかじめ表面処理を施すために用いられるが、低屈折率層形成用組成物調製時にさらに添加剤として添加して該層に含有させることが好ましい。シリカ微粒子は、表面処理前に、媒体中に予め分散されていることが、表面処理の負荷軽減のために好ましい。
以上、シリカ微粒子について述べたことは、他の無機粒子についても適用される。
すなわち、前記低屈折率層は、平均粒径が該低屈折率層の厚みの30%以上120%以下で且つ中空構造からなる、屈折率が1.17〜1.40である無機微粒子を含有するのが好ましい。
【0144】
上記低屈折率層に好ましく用いることのできる無機微粒子は、予め分散されていることが好ましい。分散媒体は、沸点が60〜170℃の液体を用いることが好ましい。分散媒体の例には、水、アルコール(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラハイドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)が含まれる。特に水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールが好ましい。
無機微粒子の分散物における無機微粒子の濃度は、3〜300g/リットルとするのが好ましい。
【0145】
[触媒]
前記低屈折率層形成用組成物には、前記オルガノシラン化合物の加水分解/部分縮合反応を促進する目的で、種々の触媒化合物を好ましく用いることができる。用いられる触媒は特に制限はなく、用いたゾル液の構成成分に応じて適量を使用すれば良い。一般に有効であるのは下記(e1)〜(e5)の化合物であり、これらの中から好ましい化合物を必要量添加することができる。また、これらの群の中2種以上をお互いの促進効果が阻害されない範囲内で適宜選択して併用することができる。
【0146】
(e1)有機または無機の酸
無機酸としては、塩酸、臭化水素、ヨウ化水素、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、燐酸、亜燐酸など、有機酸化合物としてはカルボン酸類(蟻酸、シュウ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、コハク酸、シクロヘキサンカルボン酸、オクタン酸、マレイン酸、2−クロロプロピオン酸、シアノ酢酸、トリフルオロ酢酸、パーフルオロオクタン酸、安息香酸、ペンタフルオロ安息香酸、フタル酸など)、スルホン酸類(メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸)、p−トルエンスルホン酸、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸など)、燐酸・ホスホン酸類(燐酸ジメチルエステル、フェニルホスホン酸など)、ルイス酸類(三フッ化ホウ素エーテラート、スカンジウムトリフレート、アルキルチタン酸、アルミン酸など)、ヘテロポリ酸(燐モリブデン酸、燐タングステン酸など)を挙げることができる。
【0147】
(e2)有機または無機の塩基
無機塩基としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アンモニアなど、有機塩基化合物としてはアミン類(エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、トリエチルアミン、ジブチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、エタノールアミン、ジアザビシクロウンデセン、キヌクリジン、アニリン、ピリジンなど)、ホスフィン類(トリフェニルホスフィン、トリメチルホスフィンなど)、金属アルコキシド(ナトリウムメチラート、カリウムエチラートなど)を挙げることができる。
【0148】
(e3)金属キレート化合物
一般式R18OH(式中、R18は炭素数1〜6のアルキル基を示す)で表されるアルコールとR19COCHCOR20(式中、R19は炭素数1〜6のアルキル基、R20は炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜16のアルコキシ基を示す)で表されるジケトンを配位子とした、金属を中心金属とするものであれば特に制限なく好適に用いることができる。この範疇であれば、2種以上の金属キレート化合物を併用しても良い。本発明の金属キレート化合物として特に好ましいものは中心金属にAl、Ti、Zrを有するものであり、一般式Zr(ORi18)p1(Ri19COCHCORi20)p2、Ti(ORi18)q1(Ri19COCHCORi20)q2およびAl(ORi18)1(Ri19COCHCORi20)r2で表される化合物群から選ばれるものが好ましく、前記オルガノシラン化合物の縮合反応を促進する作用をなす。
【0149】
金属キレート化合物中のR18およびR19は、同一または異なってもよく炭素数1〜6のアルキル基、具体的にはエチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基
、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、フェニル基などである。また、R20は、前記と同様の炭素数1〜6のアルキル基のほか、炭素数1〜16のアルコキシ基、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ラウリル基、ステアリル基などである。また、金属キレート化合物中のp1〜r2は4あるいは6座配位となる様に決定される整数を表す。
【0150】
これらの金属キレート化合物の具体例としては、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシトリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウムなどのジルコニウムキレート化合物;ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトン)チタニウムなどのチタニウムキレート化合物;ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、ジイソプロポキシアセチルアセトナートアルミニウム、イソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、イソプロポキシビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノアセチルアセトナート・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウムなどのアルミニウムキレート化合物などが挙げられる。これらの金属キレート化合物のうち好ましいものは、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウムである。これらの金属キレート化合物は、1種単独であるいは2種以上混合して使用することができる。また、これらの金属キレート化合物の部分加水分解物を使用することもできる。
【0151】
(e4)有機金属化合物
好ましい有機金属化合物としては特に制限はないが有機遷移金属が活性が高く、好ましい。中でもスズの化合物は安定性と活性が良く特に好ましい。これらの具体的化合物例としては、(C)Sn(OCOC1123) 、(C)Sn(OCOCH=CHCOOCH)、(C)Sn(OCOCH=CHCOOC) 、(C17)Sn(OCOC1123)、(C17)Sn(OCOCH=CHCOOCH)、(C17)Sn(OCOCH=CHCOOC)、(C17)Sn(OCOCH=CHCOOC17)2 、Sn(OCOCC17)などのカルボン酸型有機スズ化合物;(C)Sn(SCHCOOC17)、(C)Sn(SCHCOOC17)、(C17)Sn(SCHCOOC17) 、(C17)Sn(SCHCHCOOC17)、(C17)Sn(SCHCOOC17) 、(C17)Sn(SCHCOOC1225)などのメルカプチド型有機スズ化合物、(C)SnO、(C17)SnO 、または(C)SnO、(C17)SnO などの有機スズオキサイドとエチルシリケートマレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、フタル酸ジオクチルなどのエステル化合物との反応生成物などの有機スズ化合物などを挙げることができる。
【0152】
(e5)金属塩類
金属塩類としては有機酸のアルカリ金属塩(例えばナフテン酸ナトリウム、ナフテン酸カリウム、オクタン酸ナトリウム、2−エチルヘキサン酸ナトリウム、ラウリル酸カリウムなど)が好ましく用いられる。
【0153】
前記触媒の低屈折率層形成用組成物中の割合は、前記有機シリル化合物100質量部に
対し、好ましくは0.01〜50質量部、より好ましくは0.1〜50質量部、さらに好ましくは0.5〜10質量部である。
【0154】
[キレート配位化合物]
前記触媒として前記金属キレート化合物を用いる場合、硬化反応速度の調節や液安定性向上の観点でキレート配位能のある化合物を用いることも好ましい。好ましく用いられるものとしては一般式R18COCHCOR19 で表されるβ−ジケトン類および/またはβ−ケトエステル類であり、前記低屈折率層形成用組成物の安定性向上剤として作用するものである。すなわち、前記促進液中に存在する金属キレート化合物(好ましくはジルコニウム、チタニウムおよび/またはアルミニウム化合物)中の金属原子に配位することにより、これらの金属キレート化合物によるオルガノシラン化合物の縮合反応を促進する作用を抑制し、得られる膜の硬化速度をコントロールするものと考えられる。R18およびR19は、前記金属キレート化合物を構成するR18およびR19と同義であるが、使用に際して同一構造である必要はない。
【0155】
このβ−ジケトン類および/またはβ−ケトエステル類の具体例としては、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−n−プロピル、アセト酢酸−i−プロピル、アセト酢酸−n−ブチル、アセト酢酸−sec-ブチル、アセト酢酸−t−ブチル、2,4−ヘキサン−ジオン、2,4−ヘプタン−ジオン、3,5−ヘプタン−ジオン、2,4−オクタン−ジオン、2,4−ノナン−ジオン、5−メチル−ヘキサン−ジオンなどを挙げることができる。これらのうち、アセト酢酸エチルおよびアセチルアセトンが好ましく、特にアセチルアセトンが好ましい。これらのβ−ジケトン類および/またはβ−ケトエステル類は、1種単独でまたは2種以上を混合して使用することもできる。かかるβ−ジケトン類および/またはβ−ケトエステル類の使用量は、金属キレート化合物1モルに対し2モル以上、好ましくは3〜20モルである。2モル以上用いる事により、組成物の保存安定性が向上する。
【0156】
[低屈折率層形成用組成物の調製]
前記低屈折率層形成用組成物は、低屈折率層を形成するためのものであり、塗設可能な液状物である。
すなわち、前記低屈折率層形成用組成物は、前記有機シリル化合物の加水分解物および/または部分縮合物と、溶媒、更に必要に応じて前記重合性モノマー、前記無機微粒子、後述する含フッ素化合物やポリシロキサンを有していればよい。
この際用いることができる溶媒としては、例えば、アルコール(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、2−ブタノール等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)が挙げられる。
また、本発明においては、前記低屈折率層用組成物に、前記オルガノシラン化合物の加水分解・縮合反応用として水を添加することが好ましい。水の使用量は、(a)〜(d)成分1モルに対し、通常、1.2〜3.0モル、好ましくは1.3〜2.0モル、程度である。
また、前記低屈折率層形成用組成物の全固形分濃度は、好ましくは0.1〜50質量%、更に好ましくは1〜40質量%であり、50質量%を超えると、組成物の保存安定性が悪化する場合があり好ましくない。
前記低屈折率層形成用組成物を調製する際には、予め有機シリル化合物を水と触媒の存在下で反応させ、部分的に加水分解後縮重合させることが好ましい。シロキサンオリゴマーのGPCによるエチレングリコール/ポリエチレンオキサイド換算の相対分子量は700〜1500が好ましく、更に好ましくは900〜1000である。反応温度は5〜50℃が好ましく、更に好ましくは10〜40℃、最も好ましくは15〜30℃である。
【0157】
[塗布・乾燥・硬化]
塗布工程に特に制限はないが、例えばディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書参照)により透明支持体上に塗布し、加熱・乾燥するが、マイクログラビアコート法が特に好ましい。
また、ダイコート法を用いても塗布量の少ない塗布液を膜厚均一性高く塗布することができ、さらにダイコート法は前計量方式のため膜厚制御が比較的容易であり、さらに塗布部における溶剤の蒸散が少ないため、好ましい。また二層以上を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書および原崎勇次著、コーティング工学、253頁、朝倉書店(1973)に記載がある。
乾燥、硬化条件は特には制限がないが、50℃〜150℃、好ましくは70〜120℃の低温において、100時間以下、更には0.5時間〜10時間で行うことができる。
【0158】
[低屈折率層の膜厚]
前記低屈折率層の膜厚は、50〜200nmが好ましく、更に好ましくは60〜150nm、最も好ましくは70〜120nmである。膜厚が厚過ぎると強度は向上するものの脆くなる傾向にあり、膜厚が薄すぎると膜強度が低下する場合があるので、上述の範囲とするのが好ましい。
【0159】
[表面自由エネルギー]
本発明においては、防汚性向上の観点から、反射防止フィルム表面の表面自由エネルギーを下げることが好ましい。具体的には、含フッ素化合物やポリシロキサン構造を有する化合物などの表面自由エネルギー低下用化合物を最表面に存在させることにより達成できる。表面自由エネルギーは、26mJ/m以下が好ましく、更に好ましくは24mJ/m以下であり、最も好ましくは22mJ/m以下である。
含フッ素化合物は例えば、前記一般式(2)のオルガノシラン化合物のなかでフッ素原子を有する前述の化合物が好ましく挙げられる。
ポリシロキサン構造を有する添加剤としては、反応性基含有ポリシロキサン(例えばKF-100T、 X-22-169AS、 KF-102、X-22-3701IE、 X-22-164B、 X-22-5002、 X-22-173B、 X-22-174D、X-22-167B、 X-22-161AS(以上商品名、信越化学工業社製)、AK-5、 AK-30、 AK-32(以上商品名、東亜合成社製)、サイラプレーンFMO725, サイラプレーンFMO721(以上商品名、チッソ社製)等)を添加するのも好ましい。また、特開2003−112383号公報の表2、表3に記載のシリコーン系化合物も好ましく使用できる。低屈折率層が本発明の反射防止フィルムの最外表面の層である場合には、これらの表面自由エネルギー低下用化合物は低屈折率層形成用組成物全固形分の0.1〜10質量%の範囲で添加されることが好ましく、特に好ましくは1〜5質量%の場合である。
【0160】
[防汚層]
前記表面自由エネルギー低下用化合物は、低屈折率層が最外表面の層である場合には、前記オルガノシラン化合物と予め混合しておき縮合させておいたり、乾燥硬化時に縮合させることもできる。また、低屈折率層を形成した後にその上に前記表面自由エネルギー低下用化合物を塗設して防汚層を形成することにより、上述の好ましい表面自由エネルギーの範囲とすることもできる。
防汚層を形成する場合に好ましく用いることのできる化合物は以下の一般式(III)で
表されるパーフルオロポリエーテル基含有シランカップリング剤である。
【0161】
一般式(III)
Rif−(OC)−O−(CF)−(CH)l−O−(CH)−Si(ORi)
【0162】
上記一般式(III)において、Rifは炭素数1〜16の直鎖状または分岐状パーフルオロアルキル基であり、特に、CF−、C−、C−が好ましい。Rは炭素数1〜5の直鎖状または分岐状アルキル基であり、特に、−CH 、−C が好ましい。 また、n は1〜50の整数 、m は0〜3の整数、l は0〜3の整数、s は0〜6の整数、但し、6≧m+l>0である。
【0163】
塗布方法は均一に塗布される方法であれば、いかなる方法でも構わない。例えば各種のウェットコーティング法(ディップコーティング法、スピンコーティング法、フローコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアコーティング法、エアードクターコーティング法、ブレードコーティング法、ワイヤードクターコーティング法、ナイフコーティング法、リバースコーティング法、トランスファーロールコーティング法、マイクログラビアコーティング法、キスコーティング法、キャストコーティング法、スロットオリフィスコーティング法、カレンダーコーティング法、ダイコーティング法等)又は真空蒸着法、反応性蒸着法、イオンビームアシスト法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD(Physical Vapor Deposition)法あるいはCVD(Chemical Vapor Deposition)法等の公知の方法がある。防汚層の成膜後必要ならば、加熱、加湿、紫外線照射、電子線照射等を行っても良い。
【0164】
防汚層の膜厚は特に限定されるものではないが、防汚性、耐擦傷性、及び光学部材の光学性能の点から1〜50nmが好ましい。
【0165】
[層構成]
本発明の反射防止フイルムは、透明支持体と低屈折率層とを必須の層とし、更に必要に応じて後述のハードコート層や、光学干渉によって反射率が減少するように屈折率、膜厚、層の数、層順等を考慮して種々の層を積層することができる。最も単純な構成は、透明支持体上に低屈折率層のみを塗設した構成である。更に反射率を低下させるには、反射防止層を、透明支持体よりも屈折率の高い高屈折率層と、透明支持体よりも屈折率の低い低屈折率層を組み合わせて構成することが好ましい。構成例としては、透明支持体側から高屈折率層/低屈折率層の2層のものや、屈折率の異なる3層を、中屈折率層(透明支持体またはハードコート層よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているもの等があり、更に多くの反射防止層を積層するものも提案されている。中でも、耐久性、光学特性、コストや生産性等から、透明支持体上にハードコート層を設置しその上に中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層の順に塗布された反射防止フイルムが好ましい。
【0166】
本発明の反射防止フイルムの好ましい層構成の例を下記に示す。なお、以下の例示においては、防汚層を設ける場合の記載を省略する。
透明支持体/防眩層/低屈折率層、
透明支持体/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層、
透明支持体/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
透明支持体/防眩層/高屈折率層/低屈折率層、
透明支持体/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
透明支持体/帯電防止層/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
帯電防止層/透明支持体/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
透明支持体/帯電防止層/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
帯電防止層/透明支持体/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
帯電防止層/透明支持体/防眩層/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層
【0167】
光学干渉により反射率を低減できるものであれば、特にこれらの層構成のみに限定されるものではない。
また、帯電防止層は導電性ポリマー粒子または金属酸化物微粒子(例えば、SnO、ITO)を含む層であることが好ましく、塗布または大気圧プラズマ処理等によって設けることができる。
【0168】
以下、本発明において採用することができる各層や透明支持体について説明する。
[バインダー]
バインダーとして用いられる前記透光性樹脂としては、飽和炭化水素鎖またはポリエーテル鎖を主鎖として有するバインダーポリマーが好ましく、飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーであることがさらに好ましく用いられる。また、バインダーポリマーは架橋構造を有することが好ましい。
飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーとしては、エチレン性不飽和モノマーの重合体が好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有し、かつ架橋構造を有するバインダーポリマーとしては、二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの(共)重合体が好ましい。
高屈折率にするには、これらのモノマーの構造中に芳香族環や、フッ素以外のハロゲン原子、硫黄原子、リン原子、及び窒素原子から選ばれた少なくとも1種の原子を含む高屈折率モノマーを用いることが好ましい。
【0169】
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、ビニルベンゼンおよびその誘導体(例、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)およびメタクリルアミドが挙げられる。上記モノマーは2種以上併用してもよい。
【0170】
高屈折率モノマーの具体例としては、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロキシフェニル−4'−メトキシフェニルチオエーテル等が挙げられる。これらのモノマーも2種以上併用してもよい。
【0171】
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
従って、エチレン性不飽和基を有するモノマー、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤、透光性粒子および無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を該層を設置する面に塗布後、電離放射線または熱による重合反応により硬化してハードコート層を形成することができる。
【0172】
光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類が挙げられる。アセトフェノン類の例には、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノンおよび2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンが含まれる。ベンゾイン類の例には、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノンおよびp−クロロベンゾフェノンが含まれる。ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドが含まれる。
【0173】
最新UV硬化技術(p.159,発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1991年発行)にも種々の例が記載されており本発明に有用である。
市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、日本チバガイギー(株)製のイルガキュア(651,184,907)等が好ましい例として挙げられる。
光重合開始剤は、上述したモノマーの総量100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。
光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトンおよびチオキサントンを挙げることができる。
【0174】
熱ラジカル開始剤としては、有機あるいは無機過酸化物、有機アゾ及びジアゾ化合物等を用いることができる。
具体的には、有機過酸化物として過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシド、無機過酸化物として、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等、アゾ化合物として2−アゾービスーイソブチロニトリル、2−アゾービスープロピオニトリル、2−アゾ−ビスーシクロヘキサンジニトリル等、ジアゾ化合物としてジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム等を挙げることができる。
【0175】
ポリエーテル鎖を主鎖として有するバインダーポリマーは、多官能エポシキシ化合物の開環重合体が好ましい。多官能エポシキ化合物の開環重合は、光酸発生剤あるいは熱酸発生剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
従って、多官能エポシキシ化合物、光酸発生剤あるいは熱酸発生剤、透光性粒子および無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液をを該層を設置する面に塗布後、電離放射線または熱による重合反応により硬化してハードコート層を形成することができる。
【0176】
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりにまたはそれに加えて、架橋性官能基を有するモノマーを用いてポリマー中に架橋性官能基を導入し、この架橋性官能基の反応により、架橋構造をバインダーポリマーに導入してもよい。
架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基および活性メチレン基が含まれる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステルおよびウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。すなわち、本発明において架橋性官能基は、すぐには反応を示すものではなくとも、分解した結果反応性を示すものであってもよい。
これら架橋性官能基を有するバインダーポリマーは塗布後、加熱することによって架橋構造を形成することができる。
【0177】
[チキソトロピー剤]
また、本発明の反射防止フィルムにおいては、いずれかの層にチキソトロピー剤が含有されるのが好ましい。特に、ハードコート層の樹脂皮膜の形成に際して、前記の粒子と共にチキソトロピー剤が併用されることが好ましい。チキソトロピー剤は、分散液を薄膜展開する際の高剪断力が作用するときには低い粘度特性を示して良好な塗工性を示し、薄膜展開後の静止状態では高い粘度特性を示して微粒子が沈降しにくい特性を付与することを目的とする。
これにより、前記塗工層を硬化処理するまでの間における含有粒子の沈降を抑制でき、表面部に多数の粒子が残存して高密度に分布し、微細性に優れて小画素からの表示光に対し充分に小さい凹凸構造を形成することができる。
【0178】
従ってチキソトロピー剤としては、透明で塗工液の増粘等により含有粒子の沈降を抑制しうるものを適宜用いることができ、公知のチキソトロピー剤のいずれも用いうる。ちなみにその例としては、エアロジルや層状有機粘土、ポリアクリル酸やエチルセルロースなどがあげられる。
チキソトロピー剤の配合量は、分散液の粘度特性などに応じて適宜に決定しうるが、一般には塗工性と微粒子沈降の抑制性の両立性などの点より、前記バインダー100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、更に好ましくは0.05〜8質量部、特に好ましくは0.1〜5質量部である。
【0179】
〔反射防止フィルム全体の物性〕
このようにして形成された本発明の反射防止フィルムは、ヘイズ値が好ましくは0.3〜70%、より好ましくは0.5〜60%の範囲にあり、そして450nmから650nmの平均反射率が好ましくは3.0%以下、より好ましくは2.5%以下である。
本発明の反射防止フィルムが上記範囲のヘイズ値及び平均反射率であることにより、透過画像の劣化を伴なわずに良好な防眩性又は内部散乱性および反射防止性が得られ、好ましい。
【0180】
[反射防止フィルムの中心線平均粗さ(Ra)]
本発明において、視認性を向上させる観点及び膜の強度を向上させる観点から、本発明に係る反射防止フィルムの最表面は制御された微細な凹凸を有する必要がある。前記の凹凸としては、JIS B 0601で規定される中心線平均表面粗さRaが0.005〜0.20μmの範囲が好ましく、より好ましくは、0.07〜0.15μmの範囲である。この範囲に調整するためには大別して2つの手段がある。一つは、前述の透光性粒子の種類、粒子サイズ、量、ハードコート層の膜厚を制御することで調節することである。別の方法は、塗布液の乾燥速度や粘度、塗布液記の温度を制御することで調整する方法である。この方法では、ハードコート層に透光性粒子を含有してもしなくても良い。
【0181】
[透明支持体]
本発明の反射防止フィルムの透明支持体としては、プラスチックフィルムを用いることが好ましい。プラスチックフィルムを形成するポリマーとしては、セルロースアシレート(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、代表的には富士写真フイルム社製TAC−TD80U,TD80UFなど)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリスチレン、ポリオレフィン、ノルボルネン系樹脂(アートン:商品名、JSR社製)、非晶質ポリオレフィン(ゼオネックス:商品名、日本ゼオン社製)、などが挙げられる。このうちトリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、が好ましく、特にトリアセチルセルロースが好ましい。
【0182】
トリアセチルセルロースは、単層または複数の層からなる。単層のトリアセチルセルロースは、特開平7−11055号公報等で開示されているドラム流延、あるいはバンド流延等により作成され、後者の複数の層からなるトリアセチルセルロースは、公開特許公報の特開昭61−94725号公報、特公昭62−43846号公報等で開示されている、いわゆる共流延法により作成される。すなわち、原料フレークをハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン等、アルコール類(メタノール、エタノール、ブタノール等)、エステル類(蟻酸メチル、酢酸メチル等)、エーテル類(ジオキサン、ジオキソラン、ジエチルエーテル等)等の溶剤にて溶解し、これに必要に応じて可塑剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、滑り剤、剥離促進剤等の各種の添加剤を加えた溶液(ドープと称する)を、水平式のエンドレスの金属ベルトまたは回転するドラムからなる支持体の上に、ドープ供給手段(ダイと称する)により流延する際、単層ならば単一のドープを単層流延し、複数の層ならば高濃度のセルロースエステルドープの両側に低濃度ドープを共流延し、支持体上である程度乾燥して剛性が付与されたフィルムを支持体から剥離し、次いで各種の搬送手段により乾燥部を通過させて溶剤を除去することからなる方法である。
【0183】
上記のような、トリアセチルセルロースを溶解するための溶剤としては、ジクロロメタンが代表的である。しかし地球環境や作業環境の観点から、溶剤はジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素を実質的に含まないことが好ましい。「実質的に含まない」とは、有機溶剤中のハロゲン化炭化水素の割合が5質量%未満(好ましくは2質量%未満)であることを意味する。
ジクロロメタン等を実質的に含まない溶剤を用いてトリアセチルセルロースのドープを調製する場合には、後述するような特殊な溶解法が必須となる。
【0184】
第一の溶解法は、冷却溶解法と称され、以下に説明する。まず室温近辺の温度(−10〜40℃)で溶剤中にトリアセチルセルロースを撹拌しながら徐々に添加する。次に、混合物は−100〜−10℃(好ましくは−80〜−10℃、さらに好ましくは−50〜−20℃、最も好ましくは−50〜−30℃)に冷却する。冷却は、例えば、ドライアイス・メタノール浴(−75℃)や冷却したジエチレングリコール溶液(−30〜−20℃)中で実施できる。このように冷却すると、トリアセチルセルロースと溶剤の混合物は固化する。さらに、これを0〜200℃(好ましくは0〜150℃、さらに好ましくは0〜120℃、最も好ましくは0〜50℃)に加温すると、溶剤中にトリアセチルセルロースが流動する溶液となる。昇温は、室温中に放置するだけでもよいし、温浴中で加温してもよい。
【0185】
第二の方法は、高温溶解法と称され、以下に説明する。まず室温近辺の温度(−10〜40℃)で溶剤中にトリアセチルセルロースを撹拌しながら徐々に添加される。トリアセチルセルロース溶液は、各種溶剤を含有する混合溶剤中にトリアセチルセルロースを添加し予め膨潤させることが好ましい。本法において、トリアセチルセルロースの溶解濃度は30質量%以下が好ましいが、フィルム製膜時の乾燥効率の点から、なるべく高濃度であることが好ましい。次に有機溶剤混合液は、0.2MPa〜30MPaの加圧下で70〜240℃に加熱される(好ましくは80〜220℃、更に好ましく100〜200℃、最も好ましくは100〜190℃)。次にこれらの加熱溶液はそのままでは塗布できないため、使用された溶剤の最も低い沸点以下に冷却する必要がある。その場合、−10〜50℃に冷却して常圧に戻すことが一般的である。冷却はトリアセチルセルロース溶液が内蔵されている高圧高温容器やラインを、室温に放置するだけでもよく、更に好ましくは冷却水などの冷媒を用いて該装置を冷却してもよい。ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素を実質的に含まないセルロースアセテートフィルムおよびその製造法については発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、以下公開技報2001−1745号と略す)に記載されている。
【0186】
本発明の反射防止フィルムを液晶表示装置に用いる場合、片面に粘着層を設ける等してディスプレイの最表面に配置する。また、本発明の反射防止フィルムと偏光板を組み合わせてもよい。該透明支持体がトリアセチルセルロースの場合は偏光板の偏光膜を保護する保護フィルムとしてトリアセチルセルロースが用いられるため、本発明の反射防止フィルムをそのまま保護フィルムに用いることがコストの上では好ましい。
【0187】
本発明の反射防止フィルムは、片面に粘着層を設ける等してディスプレイの最表面に配置したり、そのまま偏光板用保護フィルムとして使用される場合には、十分に接着させるためには透明支持体上に最外層を形成した後、鹸化処理を実施することが好ましい。鹸化処理は、公知の手法、例えば、アルカリ液の中に該フィルムを適切な時間浸漬して実施される。アルカリ液に浸漬した後は、該フィルムの中にアルカリ成分が残留しないように、水で十分に水洗したり、希薄な酸に浸漬してアルカリ成分を中和することが好ましい。
鹸化処理することにより、最外層を有する側とは反対側の透明支持体の表面が親水化される。
親水化された表面は、ポリビニルアルコールを主成分とする偏光膜との接着性を改良するのに特に有効である。また、親水化された表面は、空気中の塵埃が付着しにくくなるため、偏光膜と接着させる際に偏光膜と反射防止フィルムの間に塵埃が入りにくく、塵埃による点欠陥を防止するのに有効である。
鹸化処理は、最外層を有する側とは反対側の透明支持体の表面の水に対する接触角が40゜以下になるように実施することが好ましい。更に好ましくは30゜以下、特に好ましくは20゜以下である。
【0188】
アルカリ鹸化処理の具体的手段としては、以下の(1)及び(2)の2つの手段から選択することができる。汎用のトリアセチルセルロースフィルムと同一の工程で処理できる点で(1)が優れているが、反射防止膜面まで鹸化処理されるため、表面がアルカリ加水分解されて膜が劣化する点、鹸化処理液が残ると汚れになる点が問題になり得る。その場合には、特別な工程となるが、(2)が優れる。
(1)透明支持体上に反射防止層を形成後に、アルカリ液中に少なくとも1回浸漬することで、該フィルムの裏面を鹸化処理する。
(2)透明支持体上に反射防止層を形成する前または後に、アルカリ液を該反射防止フィルムの反射防止フィルムを形成する面とは反対側の面に塗布し、加熱、水洗および/または中和することで、該フィルムの裏面だけを鹸化処理する。
【0189】
[塗布方式]
本発明の反射防止フィルムは以下の方法で形成することができるが、この方法に制限されない。
まず、各層を形成するための成分を含有した塗布液が調製される。次に、機能層を形成するための塗布液をディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やダイコート法により透明支持体上に塗布し、加熱・乾燥するが、マイクログラビアコート法、ワイヤーバーコート法、ダイコート法がより好ましく、ダイコート法が特に好ましい。更に、構成を後述のように工夫したダイを使用して塗布を行うことが最も好ましい。
その後、光照射あるいは加熱して、機能層を形成するモノマーを重合して硬化する。これにより機能層が形成される。ここで必要であれば、機能層を複数層とすることができる。
次に、同様にして低屈折率層を形成するための塗布液を機能層上に塗布し、光照射あるいは加熱し低屈折率層が形成される。このようにして本発明の反射防止フィルムが得られる。
【0190】
[ダイコーターの構成]
図2は、本発明の実施の際に使用したスロットダイを用いたコーターの断面図である。コーター10はバックアップロール11に支持されて連続走行するウェブ12に対して、スロットダイ13から塗布液14をビード14aにして塗布することにより、ウェブ12上に塗膜14bを形成する。
【0191】
スロットダイ13の内部にはポケット15、スロット16が形成されている。ポケット15は、その断面が曲線及び直線で構成されており、たとえば、図2に示されるような略円形でもよいし、又は半円形でもよい。ポケット15は、スロットダイ13の幅方向にその断面形状をもって延長された塗布液の液溜め空間で、その有効延長の長さは、塗布幅と同等か若干長めにするのが一般的である。
【0192】
ポケット15への塗布液14の供給は、スロットダイ13の側面から、又はスロット開口部16aとは反対側の面の中央から行う。また、ポケット15には塗布液14が漏れ出ることを防止する栓が設けられている。
【0193】
スロット16は、ポケット15からウェブ12への塗布液14の流路であり、ポケット15と同様にスロットダイ13の幅方向にその断面形状をもち、ウェブ側に位置する開口部16aは、一般に、図示しない幅規制板のようなものを用いて、概ね塗布幅と同じ長さの幅になるように調整する。このスロット16のスロット先端における、バックアップロール11のウェブ走行方向の接線とのなす角は、30°以上90°以下が好ましい。
【0194】
スロット16の開口部16aが位置するスロットダイ13の先端リップ17は、先細り状に形成されており、その先端はランドと呼ばれる平坦部18とされている。このランド18であって、スロット16に対してウェブ12の走行方向の上流側を上流側リップランド18a、下流側を下流側リップランド18bと称する。
【0195】
図3は、スロットダイ13の断面形状を従来のものと比較して示すもので、(A)は、スロットダイ13を示し、(B)は、従来のスロットダイ30を示している。従来のスロットダイ30では、上流側リップランド31aと下流側リップランド31bのウェブ12との距離は等しい。なお、(B)において、符号32はポケット、33はスロットを示している。これに対して、スロットダイ13では、下流側リップランド長さILOが短くされており、これによって、湿潤膜厚が20μm以下の塗布を精度よく行うことができる。
【0196】
上流側リップランド18aのランド長さIUPは特に限定はされないが、100μm〜1mmの範囲が好ましく採用される。下流側リップランド18bのランド長さILOは30μm以上100μm以下であり、好ましくは30μm以上80μm以下、更に好ましくは30μm以上60μm以下である。
【0197】
下流側リップのランド長さILOが30μmよりも短い場合は、先端リップ17のエッジ又はランドが欠けやすく、塗膜にスジが発生しやすくなり、結果的には塗布が不可能になる。また、下流側の濡れ線位置の設定が困難になり、塗布液が下流側で広がりやすくなるという問題も発生する。この下流側での塗布液の濡れ広がりは、濡れ線の不均一化を意味し、塗布面上にスジなどの不良形状を招くという問題につながることが従来より知られている。
【0198】
一方、下流側リップのランド長さILOが100μmよりも長い場合は、ビードそのものを形成することができないために、薄層塗布を行うことは不可能である。
【0199】
更に、下流側リップランド18bは、上流側リップランド18aよりもウェブ12に近接したオーバーバイト形状であり、このため減圧度を下げることができて、薄膜塗布に適
したビード形成が可能となる。下流側リップランド18bと上流側リップランド18aのウェブ12との距離の差(以下、オーバーバイト長さLOと称する)は30μm以上120μm以下が好ましく、更に好ましくは30μm以上100μm以下、最も好ましくは30μm以上80μm以下である。
【0200】
スロットダイ13がオーバーバイト形状のとき、先端リップ17とウェブ12の隙間GLとは、下流側リップランド18bとウェブ12の隙間を示す。
【0201】
図4は、本発明の実施に使用された塗布工程のスロットダイ及びその周辺を示す斜視図である。ウェブ12の走行方向側とは反対側に、ビード14aに対して充分な減圧調整を行えるよう、接触しない位置に減圧チャンバー40を設置する。減圧チャンバー40は、その作動効率を保持するためのバックプレート40aとサイドプレート40bを備えており、バックプレート40aとウェブ12の間、サイドプレート40bとウェブ12の間にはそれぞれ隙間GB、GSが存在する。
【0202】
図5及び図6は、近接している減圧チャンバー40とウェブ12を示す断面図である。サイドプレート40bとバックプレート40aは、図5のようにチャンバー本体と一体のものであってもよいし、図6のように適宜隙間を変えられるように、チャンバーにネジ40cなどで留められている構造でもよい。
【0203】
いかなる構造であっても、バックプレート40aとウェブ12の間、サイドプレート40bとウェブ12の間に実際にあいている部分を、それぞれ隙間GB、GSと定義する。減圧チャンバー40のバックプレート40aとウェブ12との隙間GBとは、減圧チャンバー40を図4のようにウェブ12及びスロットダイ13の下方に設置した場合、バックプレート40aの最上端からウェブ12までの隙間を示す。
【0204】
バックプレート40aとウェブ12との隙間GBを、スロットダイ13の先端リップ17とウェブ12との隙間GLよりも大きくして設置するのが好ましい。これにより、バックアップロール11の偏心に起因するビード近傍の減圧度変化を抑制することができる。
【0205】
たとえば、スロットダイ13の先端リップ17とウェブ12との隙間GLが30μm以上100μm以下のとき、バックプレート40aとウェブ12の間の隙間GBは100μm以上500μm以下とするのが好ましい。
【0206】
[材質、精度]
ウェブ12の走行方向側の先端リップ17のウェブ走行方向における長さは、長いほどビード形成に不利であり、この長さがスロットダイ幅方向における任意の個所間でばらつくと、かすかな外乱によりビードが不安定になる。したがって、この長さをスロットダイ幅方向における変動幅が20μm以内とすることが好ましい。
【0207】
また、スロットダイの先端リップ17の材質については、ステンレス鋼などのような材質を用いるとダイ加工の段階でだれてしまい、前記のようにスロットダイ先端リップ17のウェブ走行方向における長さを30〜100μmの範囲にしても、先端リップ17の精度を満足できない。
【0208】
したがって、高い加工精度を維持するためには、特許第2817053号公報に記載されているような超硬材質のものを用いることが重要である。具体的には、スロットダイの少なくとも先端リップ17を、平均粒径5μm以下の炭化物結晶を結合してなる超硬合金にすることが好ましい。
【0209】
超硬合金としては、タングステンカーバイド(以下、WCと称す)などの炭化物結晶粒子をコバルトなどの結合金属によって結合したものなどがあり、結合金属としては他にチタン、タンタル、ニオブ及びこれらの混合金属を用いることもできる。WC結晶の平均粒径としては、粒径3μm以下が更に好ましい。
【0210】
高精度な塗布を実現するためには、先端リップ17のウェブ走行方向側のランドの前記長さ及びウェブとの隙間のスロットダイ幅方向のばらつきも重要な因子となる。この二つの因子の組み合わせ、すなわち、隙間の変動幅をある程度抑えられる範囲内の真直度を達成することが望ましい。好ましくは、前記隙間のスロットダイ幅方向における変動幅が5μm以下になるように先端リップ17とバックアップロール11との真直度を出す。
【0211】
本発明で用いられるマイクログラビアコート法とは、直径が約10〜100mm、好ましくは約20〜50mmで全周にグラビアパターンが刻印されたグラビアロールを支持体の下方に、かつ支持体の搬送方向に対してグラビアロールを逆回転させると共に、該グラビアロールの表面からドクターブレードによって余剰の塗布液を掻き落として、定量の塗布液を前記支持体の上面が自由状態にある位置におけるその支持体の下面に塗布液を転写させて塗工することを特徴とするコート法である。ロール形態の透明支持体を連続的に巻き出し、該巻き出された支持体の一方の側に、少なくともハードコート層乃至含フッ素ポリマーを含む低屈折率層の内の少なくとも一層をマイクログラビアコート法によって塗工することができる。
【0212】
マイクログラビアコート法による塗工条件としては、グラビアロールに刻印されたグラビアパターンの線数は50〜800本/インチが好ましく、100〜300本/インチがより好ましく、グラビアパターンの深度は1〜600μmが好ましく、5〜200μmがより好ましく、グラビアロールの回転数は3〜800rpmであることが好ましく、5〜200rpmであることがより好ましく、支持体の搬送速度は0.5〜100m/分であることが好ましく、1〜50m/分がより好ましい。
【0213】
偏光板は、偏光膜を両面から挟む2枚の保護フィルムで主に構成される。本発明の反射防止フィルムは、偏光膜を両面から挟む2枚の保護フィルムのうち少なくとも1枚に用いることが好ましい。本発明の反射防止フィルムが保護フィルムを兼ねることで、偏光板の製造コストを低減できる。また、本発明の反射防止フィルムを最表層に使用することにより、外光の映り込み等が防止され、耐傷性、防汚性等も優れた偏光板とすることができる。
【0214】
偏光膜としては公知の偏光膜や、偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光膜から切り出された偏光膜を用いてもよい。偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光膜は以下の方法により作成される。
即ち、連続的に供給されるポリマーフィルムの両端を保持手段により保持しつつ張力を付与して延伸した偏光膜で、少なくともフィルム幅方向に1.1〜20.0倍に延伸し、フィルム両端の保持装置の長手方向進行速度差が3%以内であり、フィルム両端を保持する工程の出口におけるフィルムの進行方向と、フィルムの実質延伸方向のなす角が、20〜70゜傾斜するようにフィルム進行方向を、フィルム両端を保持させた状態で屈曲させてなる延伸方法によって製造することができる。特に45°傾斜させたものが生産性の観点から好ましく用いられる。
【0215】
ポリマーフィルムの延伸方法については、特開2002−86554号公報の段落[0020]〜[0030]に詳しい記載がある。
偏光子の2枚の保護フィルムのうち、反射防止フィルム以外のフィルムが、光学異方層を含んでなる光学補償層を有する光学補償フィルムであることも好ましい。光学補償フィ
ルム(位相差フィルム)は、液晶表示画面の視野角特性を改良することができる。
光学補償フィルムとしては、公知のものを用いることができるが、視野角を広げるという点では、特開2001−100042号公報に記載されているディスコティック構造単位を有する化合物からなる光学補償層を有し、該ディスコティック化合物と支持体とのなす角度が層の深さ方向において変化していることを特徴とする光学補償フィルムが好ましい。
該角度は光学異方性層の支持体面側からの距離の増加とともに増加していることが好ましい。
【0216】
偏光子の2枚の保護フィルムのうち、少なくとも1枚の保護フィルムの透明支持体が下記式(I)および(II)を満たすことが、液晶表示画面の斜め方向からの表示改良効果が高く好ましく、特に、透明支持体が下記式(I)および(II)を満たすことが特に好ましい。
(I):0≦Re(630)≦10、かつ|Rth(630)|≦25
(II):|Re(400)−Re(700)|≦10、かつ|Rth(400)−Rth(700)|≦35
【0217】
本発明の反射防止フィルムは、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような画像表示装置に適用することができる。本発明の反射防止フィルムは透明支持体を有しているので、透明支持体側を画像表示装置の画像表示面に接着して用いられる。
【0218】
本発明の反射防止フィルムは、偏光膜の表面保護フィルムの片側として用いた場合、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等のモードの透過型、反射型、または半透過型の液晶表示装置に好ましく用いることができる。
【0219】
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech.
Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無
印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
【0220】
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置であり、米国特許4583825号、同5410422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend) 液晶モードとも呼ばれる。ベンド配向モードの液晶表示装置は、応答速度が速いとの利点がある。
【0221】
さらに、ベンド配向モードの液晶セル、光学異方層を含む偏光板を含めた全体として、波長450nm、波長550nmおよび波長630nmのいずれの測定においても、下記式(1')を満足する光学特性を有することが、液晶表示画面の斜め方向からの表示改良
効果が高く好ましく、特に本発明の光学フィルムを保護フィルムとした偏光板が下記式(
1')をみたすことが特に好ましい。
式(1'):0.05<(Δn×d)/(Re×Rth)<0.20
[式(1')中、Δnは液晶セル中の棒状液晶性分子の固有複屈折率であり;dはnmを
単位とする液晶セルの液晶層の厚さであり;Reは光学異方層全体の面内レターデーション値であり;Rthは光学異方層全体の厚み方向のレターデーション値である。
【0222】
ECBモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向しており、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。例えば「EL、PDP、LCDディスプレイ」東レリサーチセンター発行(2001)などに記載されている。
【0223】
特にTNモードやIPSモードの液晶表示装置に対しては、特開2001-10004
3該公報等に記載されているように、視野角拡大効果を有する光学補償フィルムを偏光膜の裏表2枚の保護フィルムの内の本発明の反射防止フィルムとは反対側の面に用いることにより、1枚の偏光板の厚みで反射防止効果と視野角拡大効果を有する偏光板を得ることができ、特に好ましい。
【実施例】
【0224】
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特別の断りの無い限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0225】
(パーフルオロオレフィン共重合体(1)の合成)
【0226】
【化11】

【0227】
内容量100mlのステンレス製撹拌機付オートクレーブに酢酸エチル40ml、ヒドロキシエチルビニルエーテル14.7gおよび過酸化ジラウロイル0.55gを仕込み、系内を脱気して窒素ガスで置換した。さらにヘキサフルオロプロピレン(HFP)25gをオートクレーブ中に導入して65℃まで昇温した。オートクレーブ内の温度が65℃に達した時点の圧力は5.4kg/cm2であった。該温度を保持し8時間反応を続け、圧
力が3.2kg/cm2に達した時点で加熱をやめ放冷した。室温まで内温が下がった時
点で未反応のモノマーを追い出し、オートクレーブを開放して反応液を取り出した。得られた反応液を大過剰のヘキサンに投入し、デカンテーションにより溶剤を除去することにより沈殿したポリマーを取り出した。さらにこのポリマーを少量の酢酸エチルに溶解してヘキサンから2回再沈殿を行うことによって残存モノマーを完全に除去した。乾燥後ポリマー28gを得た。次に該ポリマーの20gをN,N−ジメチルアセトアミド100ml
に溶解、氷冷下アクリル酸クロライド11.4gを滴下した後、室温で10時間攪拌した。反応液に酢酸エチルを加え水洗、有機層を抽出後濃縮し、得られたポリマーをヘキサンで再沈殿させることによりパーフルオロオレフィン共重合体(1)を19g得た。得られたポリマーの屈折率は1.421であった。
【0228】
(ゾル液a−1の調製)
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器、メチルエチルケトン120部、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−5103、信越化学工業(株)製)100部、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート3部を加え混合したのち、イオン交換水30部を加え、60℃で4時間反応させたのち、室温まで冷却し、ゾル液a−1を得た。
質量平均分子量は1800であり、オリゴマー成分以上の成分のうち、分子量が1000〜20000の成分は100%であった。29Si−NMR測定から算出される前述の数式(IX)による縮合率αは0.88であった。また、ガスクロマトグラフィー分析から、原料のアクリロキシプロピルトリメトキシシランは全く残存していなかった。
【0229】
(ゾル液a−2の調製)
オルガノシランのゾル組成物a−1の調製において、メチルエチルケトン120部をシクロヘキサノン120部に変更し、反応後室温まで冷却した後、アセチルアセトン6部を添加する以外はオルガノシランのゾル組成物a−1の調製と同様の操作で、透明なゾル液a−2を得た。質量平均分子量は1600であり、オリゴマー成分以上の成分のうち、分子量が1000〜20000の成分は100%であった。29Si−NMRによる縮合率αは0.82であった。またガスクロマトグラフィー分析から、原料のアクリロキシプロピルトリメトキシシランは全く残存していなかった。
【0230】
(ゾル液a−3の調製)
温度計、窒素導入管、滴下ロートを備えた1,000mlの反応容器に、アクリロキシオキシプロピルトリメトキシシラン187g(0.80mol)、メチルトリメトキシシラン27.2g(0.20mol)、メタノール320g(10mol)とKF0.06g(0.001mol)を仕込み、攪拌下室温で水15.1g(0.86mol)をゆっくり滴下した。滴下終了後室温で3時間攪拌した後、メタノール還溜下2時間加熱攪拌した。この後、低沸分を減圧留去し、更にろ過することによりゾル液a―3を120g得た。このようにして得た物質をGPC測定した結果、質量平均分子量は1500であり、オリゴマー成分以上の成分のうち、分子量が1000〜20000の成分は30%であった。
【0231】
また1H−NMRの測定結果から、得られた物質の構造は、以下の一般式で表される構造であった。
【0232】
平均組成式
【化12】

【0233】
更に、29Si−NMR測定による縮合率αは0.56であった。この分析結果から、本シランカップリング剤ゾルは直鎖状構造部分が大部分であることが分かった。
また、ガスクロマトグラフィー分析から、原料のアクリロキシプロピルトリメトキシシランは5%以下の残存率であった。
【0234】
以下同様にして、使用するシランカップリング剤また触媒の種類および量を変化させて、表1に示すようなゾル液a−4〜a−6、a−8、a−9を合成した。
【0235】
(ゾル液a−7の調製)
攪拌機、コンデンサー及び温度計を備えた0.5Lフラスコに、イオン交換水230g、35%塩酸0.2gを仕込み、攪拌しているところに、C613(CH2)2SiCH3(OH)2を22.4g(0.056mol)、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン12g(0.056mol)、メチルイソブチルケトン168g及びジブトキシ−(ビス−2,4−ペンタジオネート)チタン0.42g(0.001mol)を仕込み、80℃まで加熱により内温を上昇させ、そのまま1時間反応させたところ、薄黄色透明溶液を得た。このものの固形分濃度は18.0%であった。またこのもののGPCによる分子量は約1,000であった。
【0236】
【表1】

【0237】
(フルオロ樹脂含有ポリマー(FP−8)の合成)
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器に、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルアクリレート39.93g、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート1.1g、2−ブ
タノン30gを加え窒素雰囲気下で6時間78℃に加熱して反応を完結させた。質量平均分子量は2.9×104であった。
【0238】
〔防眩性ハードコート層用塗布液A−1の組成〕
PET−30 50.0g
イルガキュア184 1.0g
イルガキュア907 1.0g
SX−350(30%) 1.5g
架橋アクリル−スチレン粒子(30%) 13.5g
FP−1 0.03g
KBM−5103 10.0g
トルエン 23.0g
シクロヘキサノン 15.5g
【0239】
上記塗布液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して防眩性ハードコート層用塗布液A−1を調製した。
【0240】
(防眩性ハードコート層用塗布液A−2c及びA−3〜A−10の組成)
上記、防眩性ハードコート層用塗布液A−1のKBM−5103 10.0gを表2に記載したようなゾル液の添加量に変更した以外は、上記塗布液A−1cと全く同様にして防眩性ハードコート層用塗布液A−2c、A−3〜A−10を調製した。
A−1c及びA−2cは、比較用の防眩性ハードコート層用塗布液である。
なお、A−2cは、防眩性ハードコート層用塗布液A−1においてKBM−5103 10.0gを添加せずに調製した塗布液である。
【0241】
【表2】

【0242】
〔光拡散層用塗布液B−1cの組成〕
デソライトZ7404 100g
DPHA 30g
KBM−5103 10g
KE−P150 9.0g
MXS−300 3.5g
MEK 25g
MIBK 20g
FP−1 0.75g
【0243】
上記塗布液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して光拡散層用塗布液B−1cを調製した。
【0244】
(光拡散層用塗布液B−2c及びB−3〜B−10の組成)
上記、光拡散層用塗布液B−1cのKBM−5103 10.0gを表3に記載したようなゾル液の添加量に変更した以外は、上記塗布液B−1cと全く同様にして光拡散層用塗布液B−2c、B−3〜B−10を調製した。
なお、B−1c及びB−2cは、比較用の光拡散層用塗布液である。
【0245】
【表3】

【0246】
〔低屈折率層形成用組成物C−1cの調製〕
オプスターJTA−113(6%) 18.0g
MEK 2.0g
シクロヘキサノン 0.6g
【0247】
上記組成物を孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して比較用の低屈折率層形成用組成物C−1cを調製した。
【0248】
〔低屈折率層形成用組成物C−2の調製〕
トリフルオロプロピルトリメトキシシラン 100g
トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン 200g
テトラエトキシシラン 1700g
イソブタノール 200g
アルミニウムアセチルアセトナート 6g
【0249】
上記組成物をフラスコに仕込み、撹拌した。次に0.25モル/Lの酢酸水500gを少量ずつ滴下した。滴下終了後、室温で3時間撹拌した。その後、ジアセトンアルコール600gを添加して、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して低屈折率層形成用組成物C−2を調製した。
【0250】
(低屈折率層形成用組成物C−3の調製)
上記の低屈折率層形成用組成物C−2調製工程において、0.25モル/Lの酢酸水を滴下する前に、KBM−5103を50gを加えたこと以外は全く同様にして、低屈折率層形成用組成物C−3を調製した。
【0251】
〔低屈折率層形成用組成物C−4の調製〕
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 100g
トリフルオロプロピルトリメトキシシラン 1000g
ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン 400g
テトラエトキシシラン 500g
イソブタノール 200g
【0252】
上記組成物をフラスコに仕込み、撹拌した。次に0.25モル/Lの酢酸水419gを少量ずつ滴下した。滴下終了後、室温で3時間撹拌した。次にアルミニウムアセチルアセトナート6gを加え、更に撹拌を3時間行った。その後、ジアセトンアルコール600gを添加して、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して低屈折率層形成用組成物C−4を調製した。
【0253】
(低屈折率層形成用組成物C−5の調製)
上記の低屈折率層形成用組成物C−4調製工程において、0.25Nの酢酸水を滴下する前に、KBM−5103を50gを加えたこと以外は全く同様にして、低屈折率層形成用組成物C−5を調製した。
【0254】
(低屈折率層形成用組成物D−1の調製)
上記低屈折率層形成用組成物C−3の100gに対して、更に、中空シリカ微粒子ゾルを97g添加し、攪拌の後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層形成用組成物D−1を調製した。
【0255】
(低屈折率層形成用組成物D−2の調製)
上記低屈折率層形成用組成物C−3の100gに対して、更に、中空シリカ微粒子ゾルを147g添加し、攪拌の後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層形成用組成物D−2を調製した。
【0256】
(低屈折率層形成用組成物D−3の調製)
上記低屈折率層形成用組成物C−5の100gに対して、更に、中空シリカ微粒子ゾルを97g添加し、攪拌の後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層形成用組成物D−3を調製した。
【0257】
上記で調製した低屈折率層形成用組成物において、C−1cは比較用の低屈折率層形成用組成物である。
それぞれ使用した化合物を以下に示す。
KBM−5103:シランカップリング剤(アクリロキシプロピルトリメトキシシラン)[信越化学工業(株)製]
PET−30:ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物[日本化薬(株)製]
DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物[日本化薬(株)製]
イルガキュア184:重合開始剤[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製]
イルガキュア907:光重合開始剤[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製]
SX−350:SX−350H(商品名:平均粒径3.5μm架橋ポリスチレン粒子{屈折率1.60、綜研化学(株)製})の30質量%トルエン分散液。ポリトロン分散機にて10000rpmで20分分散後使用。
架橋アクリル−スチレン粒子:SX−350HL(商品名:平均粒径3.5μm{屈折率1.55、綜研化学(株)製})30質量%トルエン分散液。ポリトロン分散機にて10000rpmで20分分散後使用。
FP−1:フッ素系表面改質剤
【0258】
デソライトZ7404:ZrO2微粒子含有ハードコート剤[屈折率1.62、固形分濃度60.4%、JSR(株)製]
KEP−150:平均粒径1.5μmシリカ粒子[屈折率1.46、日本触媒(株)製、30%MEK分散液、ポリトロン分散機にて10000rpmで20分分散後使用]
MXS−300:平均粒径3μmPMMA粒子[屈折率1.49、綜研化学(株)製、
30%MIBK分散液、ポリトロン分散機にて10000rpmで20分分散後使用]
【0259】
オプスターJTA−113:JN7228Aに比して塗布膜強度を高めたもの[屈折率1.44、固形分濃度6%、JSR(株)製]
中空シリカ微粒子ゾル:イソプロピルアルコールシリカゾル、平均粒子径60nm、シェル厚み10nm、シリカ濃度20質量%、シリカ粒子の屈折率1.31、特開2002−79616の調製例4に準じサイズを変更して作成。
【0260】
(1)機能層の塗設
80μmの厚さのトリアセチルセルロースフイルム(TAC−TD80U、富士写真フイルム(株)製)をロール形態で巻き出して直接、各々表1、2に記載の機能層(防眩性ハードコート層または光拡散層)用塗布液を線数135本/インチ、深度60μmのグラビアパターンを有する直径50mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、搬送速度10m/分の条件で塗布し、60℃で150秒乾燥の後、さらに窒素パージ下で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量250mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、防眩性ハードコート層(厚さ6μm)または光拡散層(厚さ3.4μm)の機能層を形成し、巻き取った。
【0261】
(2)低屈折率層の塗設
上記低屈折率層用塗布液の揮発性有機溶媒が蒸発した後の固形分に対して1質量%のイソホロンジイソシアネートを塗布液に塗布直前に混合し、押し出しコーターで、該ハードコート層を塗設したトリアセチルセルロースフイルム上に塗布した。80℃で5分間乾燥の後、更に115℃で15分硬化させた。その後、窒素パージ下で240W/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量150mJ/cm2の紫外線を照射し、厚さ100nmの低屈折率層を形成させ巻き取った。
【0262】
(3)反射防止フィルムの鹸化処理
製膜後、前記試料について、以下の処理を行った。1.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を調製し、55℃に保温した。0.01mol/Lの希硫酸水溶液を調製し、35℃に保温した。 作製した反射防止フィルムを上記の水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬した後、水に浸漬し水酸化ナトリウム水溶液を十分に洗い流した。次いで、上記の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。
このようにして、鹸化処理済み反射防止フィルム1〜30および101〜130を作製した。
【0263】
(反射防止フィルムの評価)
得られたこれらの反射防止フィルム試料について、以下の項目の評価を行った。結果を表4、5に示した。
(1)揮発性評価
各ゾル液の計算上算出される固形分濃度(i)と、該ゾル液を130℃2時間乾燥させた前後の重量変化より算出される実測の固形分濃度(ii)との差を以下のように評価した。
◎: 3%未満
○: 3%以上〜5%未満
△: 5%以上〜10%未満
×: 10%以上
【0264】
(2)密着性評価
反射防止フィルムの低屈折率層を有する側の表面にカッターナイフで碁盤目状に縦11本、横11本の切り込みを入れて合計100個の正方形の升目を刻み、日東電工(株)製のポリエステル粘着テープ(NO.31B)を圧着して密着試験を同じ場所で繰り返し3回行った。剥がれの有無を目視で観察し、下記の4段階評価を行った。
◎: 100個の升目中に剥がれが全く認められなかったもの
○: 100個の升目中に剥がれが認められたものが2升以内のもの
△: 100個の升目中に剥がれが認められたものが3〜10升のもの
×: 100個の升目中に剥がれが認められたものが10升を超えたもの
【0265】
(3)スチールウール耐傷性評価
ラビングテスターを用いて、以下の条件でこすりテストをおこなった。
評価環境条件:25℃、60%RH
こすり材:試料と接触するテスターのこすり先端部(1cm×1cm)にスチールウール(日本スチールウール(株)製、ゲレードNo.0000)を巻いて、動かないようバンド固定した。
移動距離(片道):13cm、こすり速度:13cm/秒、荷重:500g/cm2、先端部接触面積:1cm×1cm、こすり回数:10往復。
こすり終えた試料の裏側に油性黒インキを塗り、反射光で目視観察して、こすり部分の傷を、以下の基準で評価した。
◎ : 非常に注意深く見ても、全く傷が見えない。
○ : 非常に注意深く見ると僅かに弱い傷が見える。
○△: 弱い傷が見える。
△ : 中程度の傷が見える。
×〜××: 一目見ただけで分かる傷がある。
【0266】
(4)消しゴム擦り耐性
反射防止フィルムをガラス面上に粘着剤で固定し、直径8mm、厚さ4mmにくりぬいた消しゴム、MONO(商品名、トンボ製)を擦り試験機のヘッドとして反射防止フィルムの表面に500g/cm2の荷重で垂直に上方から押し付けた後、25℃60RH%の条件下においてストローク長3.5cm、擦り速度1.8cm/sにて200往復擦った後、付着した消しゴムを除去後、試料の擦り部を目視で確認し、表面の傷つき度合いを上記テストを3回繰り返し、平均して5段階で評価した。
◎: キズが認められない。
○: ほとんどキズが認められない。
△: 僅かにキズが認められる。
×: はっきりとキズが認められる。
【0267】
(5)平均反射率
分光光度計(日本分光(株)製)を用いて、380〜780nmの波長領域において、入射角5°における分光反射率を測定した。結果には450〜650nmの平均反射率を用いた。
【0268】
(6)防汚性テスト
25℃、60%RHの環境下、マジックインキ No.700(M700−T1 黒)極細を用い試料の上に直径5mmの円を描いて塗りつぶした。3分乾燥後、ラビングテスターを用いて、以下の条件でマジック跡のふき取りテストを行った。
評価環境条件:25℃、60%RH
こすり材:試料と接触するテスターのこすり先端部(1cm×1cm)にベンコット(旭化成(株)製)を巻いて、動かないようバンド固定した。その上で下記条件の往復こすり運動を与えた。
移動距離(片道):5cm、こすり速度:10cm/秒、
荷重:500g/cm2、先端部接触面積:1cm×1cm、
こすり回数:10往復。
こすり終えた試料を観察し、マジック跡が消えているかを評価した。マジック跡が消えていた場合には、再度上記条件でマジック跡と付けふき取りテストを繰り返した。同一試料を4回評価しマジックを跡をふき取ることができた回数の平均値を防汚性回数とした。
【0269】
【表4】

【0270】
【表5】

【0271】
表4及び5に示される結果より、以下のことが明らかである。
本発明の反射防止フィルムは、ゾル液での揮発性が低く、密着性、耐擦傷性、防塵性、防汚性に優れている。
また本発明のゾル液a−3の代わりに、X−40−2671G(シランカップリング剤、信越化学工業(株)製)を用いても同様な反射防止フィルムが得られ、高い性能が得られた。
また低屈折率層塗布液に使用しているゾル液a−1の代わりに、ゾル液a−2を用いたところ、塗布液の貯蔵安定性が良くなり、連続塗布に対する適性が高くなった。
【0272】
[実施例2]
(低屈折率層形成用組成物E−1の調製)
テトラエトキシシラン2000g、イソブタノール200g、アルミニウムアセチルアセトナート6gをフラスコに仕込み、撹拌した。次に0.25モル/Lの酢酸水500gを少量ずつ滴下した。滴下終了後、室温で3時間撹拌した。その後、ジアセトンアルコール600gを添加して、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して低屈折率層形成用組成物E−1を調製した。
【0273】
(低屈折率層形成用組成物E−2の調製)
37−(OC36)24−O−(CF2)2−C24−O−CH2Si(OCH3)3からなるパーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物160g、テトラエトキシシラン1840g、イソブタノール200g、アルミニウムアセチルアセトナート6gをフラスコに仕込み、撹拌した。次に0.25モル/Lの酢酸水500gを少量ずつ滴下した。滴下終了後、室温で3時間撹拌した。その後、ジアセトンアルコール600gを添加して、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して低屈折率層形成用組成物(E−2)を調製した。
【0274】
(防汚層用塗布液F−1の調製)
37−(OC36)24−O−(CF2)2−C24−O−CH2Si(OCH3)3からなるパーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物をパーフルオロヘキサンで9.5質量%に希釈した塗布液を調製した。
【0275】
(防汚層用塗布液F−2の調製)
トリデカフルオロオクチルトリメトキシシランをイソプロピルアルコールで6.0%に希釈した塗布液を調製した。
【0276】
実施例1の試料8において、低屈折率層の塗布液はE−1を用いた以外はまったく同様にして試料201を作製した。その上に、防汚層F−1を塗布し、120℃で乾燥して、厚さ8nmの防汚層を作製し、試料202を作製した。その他、低屈折率層組成、防汚層
の処方を表6に示すように変更した試料203〜204を作製し、実施例1と同様に評価した。
【0277】
【表6】

【0278】
本発明の反射防止フィルムにおいて防汚層を塗設した試料は密着性、耐擦傷性、防汚性に更に優れていることがわかる。
【0279】
[実施例3]
1.5mol/L、55℃のNaOH水溶液中に2分間浸漬したあと中和、水洗した、80μmの厚さのトリアセチルセルロースフイルム(TAC−TD80U、富士写真フイルム(株)製)と、実施例1および2の本発明試料(鹸化処理済み)に、ポリビニルアルコールにヨウ素を吸着させ、延伸して作製した偏光膜の両面を接着、保護して偏光板を作製した。このようにして作製した偏光板を、反射防止膜側が最表面となるように透過型TN液晶表示装置搭載のノートパソコンの液晶表示装置(偏光選択層を有する偏光分離フィルムである住友3M(株)製のD−BEFをバックライトと液晶セルとの間に有する)の視認側の偏光板と貼り代えたところ、背景の映りこみが極めて少なく、表示品位の非常に高い表示装置が得られた。
【0280】
〔帯電防止層用塗布液AS−1cの調製〕
ペルトロンC−4456−S7 100g
シクロヘキサノン 30g
MEK 10g
KBM−5103 1.5g
上記塗布液を孔径10μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して帯電防止層用塗布液AS−1を調製した。
【0281】
(帯電防止層用塗布液AS−2の調製)
上記帯電防止層用塗布液AS−1cの調製において、KBM−5103をゾル液a−6に変えた以外は上記帯電防止層用塗布液AS−1cと全く同様にして、帯電防止層用塗布液AS−2を調製した。
【0282】
実施例1の試料1および8において、防眩性ハードコート層の下に上記帯電防止層用塗布液AS−1及びAS−2を用いて以外はまったく同様にして試料303c、304〜306を作製し、実施例1と同様に評価し、結果を表7に示した。実施例1の試料1cおよび8を、それぞれ301cおよび302として表7に示した。
【0283】
【表7】

【0284】
本発明の反射防止フィルムにおいて帯電防止層に本発明のオルガノシラン化合物を含有する試料は密着性、耐擦傷性、防汚性に優れていることがわかる。
【0285】
[実施例4]
PVAフィルムをヨウ素2.0g/l、ヨウ化カリウム4.0g/lの水溶液に25℃にて240秒浸漬し、さらにホウ酸10g/lの水溶液に25℃にて60秒浸漬後、特開2002−86554号公報に記載の図2の形態のテンター延伸機に導入し、5.3倍に延伸し、テンターを延伸方向に対し図2の如く屈曲させ、以降幅を一定に保った。80℃雰囲気で乾燥させた後テンターから離脱した。左右のテンタークリップの搬送速度差は、0.05%未満であり、導入されるフィルムの中心線と次工程に送られるフィルムの中心
線のなす角は、46゜であった。ここで|L1−L2|は0.7m、Wは0.7mであり、|L1−L2|=Wの関係にあった。テンター出口における実質延伸方向Ax−Cxは、次工程へ送られるフィルムの中心線22に対し45゜傾斜していた。テンター出口におけるシワ、フィルム変形は観察されなかった。
【0286】
さらに、PVA((株)クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤としてケン化処理した富士写真フィルム(株)製フジタック(セルローストリアセテート、レターデーション値3.0nm)と貼り合わせ、さらに80℃で乾燥して有効幅650mmの偏光板を得た。得られた偏光板の吸収軸方向は、長手方向に対し45゜傾斜していた。この偏光板の550nmにおける透過率は43.7%、偏光度は99.97%であった。さらに310×233mmサイズに裁断したところ、91.5%の面積効率で辺に対し45゜吸収軸が傾斜した偏光板を得た。
次に、実施例1、2の本発明試料(鹸化処理済み)の各々のフィルムを上記偏光板と貼り合わせて反射防止付き偏光板を作製した。この偏光板を用いて反射防止層を最表層に配置した液晶表示装置を作製したところ、外光の映り込みがないために優れたコントラストが得られ、反射像が目立たず優れた視認性を有していた。
【0287】
[実施例5]
実施例1、2の本発明試料を貼りつけた透過型TN液晶セルの視認側の偏光板の液晶セル側の保護フィルム、およびバックライト側の偏光板の液晶セル側の保護フィルムとして、光学補償フィルム(ワイドビューフィルムエース、富士写真フイルム(株)製)を用いたところ、明室でのコントラストに優れ、且つ上下左右の視野角が非常に広く、極めて視認性に優れ、表示品位の高い液晶表示装置が得られた。
また、本発明試料104〜132(光拡散層品)は、出射角0°に対する30°の散乱光強度が0.06%であり、この光拡散性により、特に下方向の視野角アップ、左右方向の黄色味が改善され、非常に良好な液晶表示装置であった。比較として、該光拡散層用塗布液B−1〜B−10から、架橋PMMA粒子、シリカ粒子を除去した以外、全く本発明試料104〜132と同じく作製したフィルムでは、出射角0°に対する30°の散乱光強度が実質0%であり、下方向視野角アップ、黄色味改善効果は全く得られなかった。
【0288】
[実施例6]
アセチル置換度2.94のセルロースアシレートを用い、光学的異方性低下剤A−19を49.3%(対セルロースアシレート)、波長分散調整剤UV−102を7.6%(対セルロースアシレート)となるようにして、共流延法により厚み80μmのセルロースアシレート試料301を作製した。得られたフィルムのレターデーションReは−1.0nm(TD方向に遅相軸のため負とする)、厚み方向のレターデーションRthは−2.0nmといずれも十分に小さい値であった。このセルロースアシレートフィルム試料を偏光子の2枚の保護フィルムのうちセル側の保護フィルムの透明支持体に、本発明の実施例1を偏光子の視認側の保護フィルムとしたところ、特開平10−48420号公報の実施例1に記載の液晶表示装置、特開平9−26572号公報の実施例1に記載のディスコティック液晶分子を含む光学異方性層、ポリビニルアルコールを塗布した配向膜、特開2000−154261号公報の図2〜9に記載のVA型液晶表示装置、特開2000−154261号公報の図10〜15に記載のOCB型液晶表示装置での評価をしたところ、いずれの場合においてもコントラスト視野角が良好な性能が得られた。
【0289】
A−19
【化13】

【0290】
UV−102
【化14】

【0291】
[実施例7]
実施例1及び2における本発明に従った試料を、有機EL表示装置の表面のガラス板に粘着剤を介して貼り合わせたところ、ガラス表面での反射が抑えられ、視認性の高い表示装置が得られた。
【0292】
[実施例8]
実施例1及び2における本発明に従った試料を用いて、片面反射防止フィルム付き偏光板を作製し、偏光板の反射防止膜を有している側の反対面にλ/4板を張り合わせ、反射防止膜側が最表面になるように、有機EL表示装置の表面のガラス板に貼り付けたところ、表面反射および、表面ガラスの内部からの反射がカットされ、極めて視認性の高い表示が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0293】
【図1】図1は防眩性反射防止フィルムの層構成を示す断面模式図である。
【図2】本発明を実施したスロットダイコーターの断面図である。
【図3】(A)は本発明を実施したスロットダイの断面図であり、(B)は従来のスロットダイの断面図である。
【図4】本発明を実施したスロットダイ及び周辺装置の斜視図である。
【図5】本発明を実施した塗布装置のウェブ及び減圧チャンバーの断面図である。
【図6】本発明の別の実施形態である塗布装置のウェブ及び減圧チャンバーの断面図である。
【符号の説明】
【0294】
1 反射防止フィルム
2 透明支持体
3 ハードコート層
4 防眩性ハードコート層
5 低屈折率層
6 微粒子
12 ウェブ
13 スロットダイ
17 先端リップ
18a 上流側リップランド
18b 下流側リップランド
40 減圧チャンバー
40a バックプレート
IUP 上流側リップランドの長さ
ILO 下流側リップランドの長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明支持体上に機能層及び低屈折率層を有する反射防止フィルムにおいて、該機能層に下記一般式(1)で表される水酸基または加水分解可能な基がケイ素に直接接合しているオルガノシランの加水分解物および/またはその部分縮合物を少なくとも1種含み、かつ該低屈折率層が、下記一般式(2−1)および(2−2)で表されるオルガノシランの加水分解物および/またはその部分縮合物を少なくとも1種含有することを特徴とする反射防止フィルム。
一般式(1): (R1)m1Si(X1)4-m1
(R1は、置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を表す。X1は水酸基または加水分解可能な基を表す。m1は0〜3の数を表す。R1及びX1のそれぞれについて、複数存在するときは同じでも異なっていてもよい。)
一般式(2−1): Si(X2)4
一般式(2−2): (R3)m2Si(X3)n2
(X2及びX3は、水酸基、ハロゲン原子、−OR10基、又は−OCOR10基を表し、R10はアルキル基を表す。R3はアルキル基、アルケニル基又はアリール基を表す。m2+n2は4であり、m2及びn2はそれぞれ正の整数である。複数のX2は、同じでも異なっていてもよい。R3及びX3のそれぞれについても複数存在するときは、同じでも異なっていてもよい。)
【請求項2】
一般式(1)で表されるオルガノシランの加水分解物および/または部分縮合物において、重量平均分子量が1000未満のものを30質量%以上含むことを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
一般式(1)で表されるオルガノシランの加水分解物および/または部分縮合物において、少なくとも一つのR1が重合性官能基であることを特徴とする請求項1、2に記載の反射防止フィルム。
【請求項4】
一般式(1)で表されるオルガノシランの加水分解物および/または部分縮合物における、重合性官能基を含有するオルガノシランの割合が30質量%〜100質量%であることを特徴とする請求項3に記載の反射防止フィルム。
【請求項5】
一般式(1)で表されるオルガノシランの加水分解物および/または部分縮合物において、少なくとも一つのR1がフッ素化アルキル基であることを特徴とする請求項1〜4に記載の反射防止フィルム。
【請求項6】
前記低屈折率層中に、平均粒径が該低屈折率層の厚みの30%以上120%以下で且つ中空構造からなる、屈折率が1.15〜1.40である無機微粒子を含有することを特徴とする請求項1〜5に記載の反射防止フィルム。
【請求項7】
前記低屈折率層の上層に防汚層を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項8】
前記低屈折率層が設けられる面がアルカリ処理されていることを特徴とする請求項1〜7いずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項9】
請求項1〜8に記載の反射防止フィルムを、偏光板における偏光層の2枚の保護フィルムのうちの少なくとも一方に用いたことを特徴とする偏光板。
【請求項10】
偏光板を構成するフイルムの少なくとも1つのフィルムは、そのReレターデーション値が20以上70nm以下であり、Rthレターデーション値が70以上400nm以下
であることを特徴とする請求項9に記載の偏光板。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれかに記載の反射防止フィルムまたは請求項9及び10のいずれかに記載の偏光板を有するディスプレイ装置であり、当該低屈折率層が視認側になるように配置したことを特徴とするディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−11033(P2007−11033A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−192311(P2005−192311)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】