説明

反射防止フィルム、反射防止フィルムの製造方法、偏光板、それを用いた画像表示装置

【課題】十分な反射防止性能を有しながら耐擦傷性をより向上した反射防止フィルムおよび該反射防止フィルムの製造方法を提供すること。そのような反射防止フィルムを具備した偏光板及び画像表示装置を提供すること。
【解決手段】支持体上に少なくとも反射防止層を有する反射防止フィルムであって、支持体上に積層された層の少なくとも一層が、ラジカル重合開始剤と複数種の開始助剤の1種以上の化合物とを併用し、更に電離放射線硬化性化合物とを含有する組成物を電離放射線照射によって硬化させてなる層であることを特徴とする反射防止フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、十分な反射防止能を有しながら耐擦傷性をより向上した反射防止フィルムおよび安価にそれを提供する製造方法に関し、特に液晶表示装置などの画像表示装置に用いられる反射防止フィルムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や液晶表示装置(LCD)のようなディスプレイ装置において、背景の映り込みを防止し、視認性を向上するために反射防止フィルムが用いられている。
反射防止フィルムは、反射によるコントラスト低下や像の映り込みを防止するために、光学干渉の原理を用いて反射率を低減する様にディスプレイの最表面に配置される。そのため、傷がつく確立が高く、優れた耐擦性を付与することが重要な課題であった。
【0003】
このような反射防止フィルムは、最表面に適切な膜厚の低屈折率層、場合により支持体(基材)との間に適宜高屈折率層、中屈折率層、ハードコート層などを形成することにより作製できる。低い反射率を実現するために低屈折率層にはできるだけ屈折率の低い材料が望まれる。また反射防止フィルムはディスプレイの最表面に用いられるため高い耐擦傷性が要求される。厚さ100nm前後の薄膜において高い耐擦傷性を実現するためには、皮膜自体の強度、および下層への密着性が必要である。
【0004】
材料の屈折率を下げるには、フッ素原子を導入する、密度を下げる(空隙を導入する)という手段があるがいずれも皮膜強度および密着性が損なわれ耐擦傷性が低下する方向であり、低い屈折率と高い耐傷性の両立は困難な課題であった。
【0005】
特許文献1〜3には、含フッ素ポリマー中にポリシロキサン構造を導入することにより皮膜表面の摩擦係数を下げ、耐傷性を改良する手段が記載されている。該手段は耐傷性改良に対してある程度有効であるが、本質的な皮膜強度および界面密着性が不足している皮膜に対して該手法のみでは十分な耐傷性が得られなかった。
【0006】
一方、特許文献4には低酸素濃度で光硬化樹脂を硬化させることで硬度があがることが記載されている。しかしながら反射防止フィルムをウェッブで効率よく製造するためには、窒素置換できる濃度に限界があり、満足する硬度を得ることができなかった。
特許文献5〜10には、窒素置換するための具体的な手段が記載されているが、低屈折率層のような薄膜を十分に硬化するまでに酸素濃度を下げるためには、多量の窒素が必要であり、製造コストが上がってしまうという問題があった。
また特許文献11には熱ロール表面に巻きつけて電離放射線を照射する方法が記載されているが、これも低屈折率層のような特殊な薄膜を十分に硬化するまでに硬化するには不十分であった。
更に特許文献12には有機系ボレート塩化合物と、該有機系ボレート塩化合物と相互作用するカチオン性化合物と複数種の化合物を併用することにより、0.1〜50μmの膜厚の感光感熱記録材料の光感度を上げることが記載されている。しかし、反射防止フィルムのような構成層の膜厚が100nm前後の薄いものの硬化に対しては、反射防止フィルムとして用いるに十分な硬度まで硬化をすることができたかどうかは不明であった。
【0007】
【特許文献1】特開平11−189621号公報
【特許文献2】特開平11−228631号公報
【特許文献3】特開2000−313709号公報
【特許文献4】特開2002−156508号公報
【特許文献5】特開平11−268240号公報
【特許文献6】特開昭60−90762号公報
【特許文献7】特開昭59−112870号公報
【特許文献8】特開平4−301456号公報
【特許文献9】特開平3−67697号公報
【特許文献10】特開2003−300215号公報
【特許文献11】特公平7−51641号公報
【特許文献12】特開2001−222105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、十分な反射防止性能を有しながら耐擦傷性をより向上した反射防止フィルムおよび該反射防止フィルムの製造方法を提供することである。本発明の更なる目的は、そのような反射防止フィルムを具備した偏光板及び画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、鋭意検討の結果、以下の成分より構成された反射防止フィルム、及びその製造方法により本発明の上記目的が達成されることを見出した。
【0010】
1.支持体と、反射防止層を含む少なくとも1つの層とを有する反射防止フィルムであって、前記少なくとも1つの層の少なくとも1つが、下記一般式(1)〜(5)のいずれかで表される化合物、芳香族オニウム塩、及び有機過酸化物より選択された少なくとも1種以上の化合物を含有し、更にラジカル重合開始剤、及び電離放射線硬化性化合物を含有する組成物を電離放射線照射によって硬化させてなる層であることを特徴とする反射防止フィルム。
【0011】
【化1】

【0012】
〔一般式(1)中、R1は、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール
基、又は複素環基を表し、R2は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、
又はニトロ基を表す。〕
【0013】
【化2】

【0014】
〔一般式(2)中、Xは、NR3、酸素原子、硫黄原子、又は炭素原子を表し、R3は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。Aは、N=C−X部分とともに、炭素原子を持つ5員若しくは6員のヘテロ環を形成し、該Aは、単結合若しくは二重結合によりN=C−X部分と結合された、2個若しくは3個の炭素原子、互いに結合する2個の窒素原子、又は1個の炭素原子と結合した1個の窒素原子を表す。上記5員若しくは6員のヘテロ環には、さらに原子や原子団が結合していてもよい。〕
【0015】
【化3】

【0016】
〔一般式(3)中、Xは、NR4、酸素原子、硫黄原子、又は炭素原子を表し、R4は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。Dは、酸素原子又は硫黄原子を表す。Aは、N−C−X部分とともに、炭素原子を持つ5員若しくは6員のヘテロ環を形成し、該Aは、単結合若しくは二重結合によりN−C−X部分と結合された、2個若しくは3個の炭素原子、互いに結合する2個の窒素原子、又は1個の炭素原子と結合した1個の窒素原子を表す。上記5員若しくは6員のヘテロ環には、さらに原子や原子団が結合していてもよい。R5、R6は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、R7
、R8は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す
。R7及びR8は、互いに結合して窒素原子と共に、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン又はN−置換ピペラジン核を形成していてもよい。〕
【0017】
【化4】

【0018】
〔一般式(4)中、Qを有してなる環状基Bは、芳香族環基又は複素環基を表し、置換基を有していてもよい。Qは、窒素原子又は炭素原子を表す。R11は、アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン置換アルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。〕
【0019】
【化5】

【0020】
〔一般式(5)中、E1、E2は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、又は複素環基を表し、E1及びE2は同一でも異なっていてもよい。〕
【0021】
2.前記ラジカル重合開始剤が電離放射線照射により分解してラジカルを発生する化合物であることを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルム。
3.前記電離放射線硬化性化合物が二個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の反射防止フィルム。
【0022】
4.支持体上に少なくとも反射防止層を有する反射防止フィルムの製造方法であって、下記(1)の工程と、(2)の工程または(3)の工程によって、支持体上に積層される層の少なくとも1層を形成する工程を有することを特徴とする反射防止フィルムの製造方法。
(1)連続的に走行する、支持体を含むウェッブ上に、1.に記載の一般式(1)〜(5)のいずれかで表される化合物、芳香族オニウム塩、及び有機過酸化物より選択された少なくとも1種以上の化合物を含有し、更にラジカル重合開始剤、および電離放射線硬化性化合物を含む塗布液を塗布及び乾燥し、塗布層を形成する工程、
(2)前記ウェッブ上の塗布層に、酸素濃度3体積%以下の雰囲気下で電離放射線を0.5秒以上照射することにより、塗布層を硬化する工程、
(3)前記ウェッブ上の塗布層を加熱しながら、酸素濃度3%以下の雰囲気下で電離放射線照射を0.5秒以上照射して塗布層を硬化する工程。
5.前記塗布層を形成する工程(1)と、前記工程(2)または(3)との間に、さらに、(4)前記ウェッブ上の塗布層を加熱することにより塗布層を加熱硬化する工程を含む上記4に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【0023】
6.上記4または5に記載の反射防止フィルムの製造方法において、前記連続的に走行する塗布層を有するウェッブを、不活性ガスを注入して低酸素濃度にした前室に搬入し、さらに前記ウェッブを、前記前室と連続して設置された不活性ガスを注入した酸素濃度3体積%以下の電離放射線反応室に搬入し、前記電離放射線反応室内で前記塗布層の硬化工程を行うことを特徴とする反射防止フィルムの製造方法。
【0024】
7.前記6に記載の反射防止フィルムの製造方法において、前記電離放射線反応室に注入された不活性ガスが、前記電離放射線反応室の少なくともウェッブ入り口側から吹き出すようにしたことを特徴とする反射防止フィルムの製造方法。
8.前記塗布層の硬化工程において、酸素濃度3体積%以下の雰囲気下でウェッブ上の塗布層に30℃以上の温度に加熱しながら前記電離放射線を複数回照射し、且つ、そのうちの少なくとも2回の電離放射線照射を、連続した酸素濃度3体積%以下の電離放射線反
応室で30℃以上の温度に加熱しながら行うことを特徴とする上記6または7に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【0025】
9.前記電離放射線反応室および前室のウェッブ入り口側を構成する面の少なくとも一方において、ウェッブ上の塗布層表面とのギャップが0.2〜15mmであることを特徴とする上記6〜8のいずれかに記載の反射防止フィルムの製造方法。
10.前記電離放射線反応室および前室のウェッブ入り口側を構成する面の少なくとも一方において、前記ウェッブ入り口側を構成する面の少なくとも一部が可動となっており、ウェッブを接合した接合部材通過時に、少なくとも接合部材の厚み分を逃げる構成となっていることを特徴とする上記6〜9のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
【0026】
11.前記光学フィルムの製造方法が、バックアップロールによって支持されて連続走行するウェッブの表面に、スロットダイの先端リップのランドを近接させて、前記先端リップのスロットから塗布液を塗布する工程を有し、前記スロットダイのウェッブ進行方向側の先端リップのウェッブ走行方向におけるランド長さが30μm以上100μm以下であり、且つ前記スロットダイを塗布位置にセットしたときに、前記ウェッブの進行方向とは逆側の先端リップとウェッブの隙間を、前記ウェッブ進行方向側の先端リップとウェッブとの隙間よりも30μm以上120μm以下大きくなるように設置した塗布装置を用いて塗布されることを特徴とする上記4〜10のいずれかに記載の光学フィルムの製造方法。
【0027】
12.前記塗布液の塗布時における粘度が2.0[mPa・sec]以下であり、ウェッブの表面に塗り付けられる該塗布液の量が2.0〜5.0[ml/m2]であることを特徴とする上記11に記載の反射防止フィルムの製造方法。
13.前記塗布液を連続走行するウェッブの表面に25[m/min]以上の速度で塗設することを特徴とする上記11または12に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【0028】
14.前記4〜13のいずれかに記載の製造方法によって製造されたことを特徴とする反射防止フィルム。
15.前記1〜3、14に記載の反射防止フィルムにおいて、支持体上の反射防止層が低屈折率層を有し、該低屈折率層が前記4〜13のいずれかに記載の方法で形成されたことを特徴とする反射防止フィルム。
16.前記低屈折率層が、含フッ素ポリマー及び/またはポリシロキサン含有ビニル単量体を含有する塗布液を用いて形成されたことを特徴とする上記15に記載の反射防止フィルム。
【0029】
17.前記含フッ素ポリマーが、下記一般式1又は一般式2で表わされる熱硬化性および/または電離放射線硬化性の含フッ素ポリマーであることを特徴とする上記16に記載の反射防止フィルム。
【0030】
【化6】

【0031】
〔一般式1中、Lは炭素数1〜10の連結基を表し、mは0または1を表す。Xは水素原子またはメチル基を表す。Aは任意のビニルモノマーの重合単位を表し、単一成分であっても複数の成分で構成されていてもよい。また、シリコーン部位を含んでいても良い。x、y、zはそれぞれの構成成分のモル%を表し、30≦x≦60、5≦y≦70、0≦z≦65を満たす値を表す。〕
【0032】
【化7】


【0033】
一般式2においてRは炭素数1〜10のアルキル基、又は一般式1に示すエチレン性不飽和基(−C(=O)C(−X)=CH)を表す。
mは1≦m≦10の整数を表し、nは2≦n≦10の整数を表す。
Bは任意のビニルモノマーから導かれる繰返し単位を表わし、単一組成であっても複数の組成によって構成されていても良い。また、シリコーン部位を含んでいても良い。
x、y、z1およびz2はそれぞれの繰返し単位のmol%を表わし、x及びyは、それぞれ30≦x≦60、0≦y≦70を満たす。z1及びz2は、1≦z1≦65、1≦z2≦65を満たす。ただし、x+y+z1+z2=100である。
18.前記ポリシロキサン含有ビニル単量体が、下記一般式Iで表わされることを特徴とする上記16に記載の反射防止フィルム。
【0034】
【化8】

【0035】
一般式Iにおいて、R1、R2は同一であっても異なっていてもよく、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。Pは10〜500の整数を表す。R3、R4、R5は同一であっても異なっていてもよく、水素原子または1価の有機基を表し、R6は水素原子またはメチル基を表す。Lは単結合または2価の連結基を表し、nは0または1を表す。
【0036】
19.前記低屈折率層が中空シリカ微粒子を含有していることを特徴とする上記15〜18のいずれかに記載の反射防止フィルム。
20.上記1〜3、14〜19のいずれかに記載の反射防止フィルムが、偏光板における2枚の保護フィルムのうちの一方に用いられていることを特徴とする偏光板。
21.上記1〜3、14〜19のいずれかに記載の反射防止フィルムまたは上記20に記載の偏光板がディスプレイの最表面に用いられていることを特徴とする画像表示装置。
【発明の効果】
【0037】
本発明により製造された反射防止フィルムあるいは偏光板を備えた画像表示装置は、外光の映り込みや背景の映りこみが少なく、極めて視認性が高いだけでなく、従来のものに比較してより耐擦傷性に優れている。また、本発明の製造方法によれば、上記の反射防止フィルムを安価に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本明細書において、数値が物性値、特性値等を表す場合に、「(数値1)〜(数値2)」という記載は「(数値1)以上(数値2)以下」の意味を表す。
【0039】
[反射防止フィルムの層構成]
本発明の反射防止フィルムは、支持体(以後、基材あるいは基材フィルムと称することもある)上に、必要に応じて後述のハードコート層を有し、その上に光学干渉によって反射率が減少するように屈折率、膜厚、層の数及び層順等を考慮して積層された反射防止層を有する。該反射防止層の最も単純な構成は、基材上に低屈折率層のみを塗設したものである。更に反射率を低下させるには、反射防止層を、基材よりも屈折率の高い高屈折率層と、基材よりも屈折率の低い低屈折率層を組み合わせて構成することが好ましい。構成例としては、基材側から高屈折率層/低屈折率層の2層のものや、屈折率の異なる3層を、中屈折率層(基材またはハードコート層よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているもの等があり、更に多くの反射防止層を積層するものも提案されている。中でも、耐久性、光学特性、コストや生産性等から、ハードコート層を有する基材上に、中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているものが好ましい。また、本発明の反射防止フィルムは防眩性層や帯電防止層等の機能性層を有していてもよい。
【0040】
本発明の反射防止フィルムの好ましい構成の例を下記に示す。
基材フィルム/低屈折率層、
基材フィルム/防眩層/低屈折率層、
基材フィルム/ハードコート層/防眩層/低屈折率層、
基材フィルム/ハードコート層/高屈折率層/低屈折率層、
基材フィルム/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
基材フィルム/防眩層/高屈折率層/低屈折率層、
基材フィルム/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
基材フィルム/帯電防止層/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
帯電防止層/基材フィルム/ハードコート層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
基材フィルム/帯電防止層/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
帯電防止層/基材フィルム/防眩層/中屈折率層/高屈折率層/低屈折率層、
帯電防止層/基材フィルム/防眩層/高屈折率層/低屈折率層/高屈折率層/低屈折率層。
本発明の反射防止フィルムは、光学干渉により反射率を低減できるものであれば、特にこれらの層構成のみに限定されるものではない。高屈折率層は防眩性のない光拡散性層であってもよい。また、帯電防止層は導電性ポリマー粒子または金属酸化物微粒子(例えば、SnO2、ITO)を含む層であることが好ましく、塗布または大気圧プラズマ処理等によって設けることができる。
【0041】
[開始助剤(重合開始剤に対する添加剤)]
本発明の反射防止フィルムは、支持体上に光重合性組成物の重合感度を促進させる添加剤の成分として、下記一般式(1)〜(5)のいずれかで表される化合物、芳香族オニウム塩、及び有機過酸化物より選択された少なくとも1種以上の化合物を含有し、更にラジカル重合開始剤、及び電離放射線硬化性化合物を含有する組成物を電離放射線照射によって硬化させてなる層を有する。
以下、一般式(1)〜(5)で表される化合物について説明する。
【0042】
【化9】

【0043】
前記式中のR1は、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、又は複素環基を表し、置換されている場合の置換基としては、例えば、−OCH3、−Cl、−C65、−OC65、−NH2等が挙げられる。前記アルキル基としては、炭素数1〜15のアルキル基が好ましく、例えば、−CH3、−C613、−C817、−CH2CH(C25)CH2CH2CH2CH3等が挙げられる。前記アリール基としては、炭素数4〜30のアリール基が好ましく、例えば、下記群(i)のもの等が挙げられ、前記複素環基としては、例えば、下記群(ii)のもの等が挙げられる。
【0044】
【化10】

【0045】
一般式(1)中、R2は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、又はニ
トロ基を表す。前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子が好ましい。
【0046】
前記アルキル基としては、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、例えば、−CH3
、−C613、−C817、−CH2CH(C25)CH2CH2CH2CH3等が挙げられる
。前記アリール基としては、炭素数4〜30のアリール基が好ましく、例えば、下記構造のもの等が挙げられる。
【0047】
【化11】

【0048】
前記一般式(1)で表される化合物の具体例としては、以下に示す化合物(例示化合物1−1〜1−10)が挙げられるが、本発明においてはこれらに限定されるものではない。
【0049】
【化12】

【0050】
【化13】

【0051】
次に、一般式(2)で表される化合物について説明する。
【0052】
【化14】

【0053】
前記一般式(2)中、Xは、NR3、酸素原子、硫黄原子、又は炭素原子を表し、R3は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。前記炭素数1〜4のアルキル基としては、−CH3、−C25、−C36、−C49等が挙げられる。
【0054】
式中のAは、N=C−X部分とともに、炭素原子を持つ5員若しくは6員のヘテロ環を形成し、Aは、単結合若しくは二重結合によりN=C−X部分と結合された、芳香族の一部を構成して互いに結合する2個若しくは3個の炭素原子、互いに結合する2個の窒素原子、又は1個の炭素原子と結合した1個の窒素原子を表す。上記5員若しくは6員のヘテロ環には、さらに原子や原子団が結合していてもよい。前記Aとしては、CH2CH2、CHCH、N=N、又はベンゼン環若しくはナフタレン環の一部を構成しているCHCHCHの部分等が挙げられる。前記A及びN=C−X部分を含んで形成される5員若しくは6員のヘテロ環としては、例えば、下記構造のもの等が挙げられ、中でも、下記(1)が好ましい。
【0055】
【化15】

【0056】
前記一般式(2)で表される化合物の具体例としては、以下に示す化合物(例示化合物2−1〜2−15)が挙げられるが、本発明においてはこれらに限定されるものではない。
【0057】
【化16】

【0058】
【化17】

【0059】
次に、一般式(3)で表される化合物について説明する。
【0060】
【化18】

【0061】
前記一般式(3)中、Xは、NR4、酸素原子、硫黄原子、又は炭素原子を表し、R4は前記一般式(2)におけるR3と同義であり、Aも前記一般式(2)における場合と同義である。Dは、酸素原子又は硫黄原子を表す。上記5員若しくは6員のヘテロ環には、さらに原子や原子団が結合していてもよい。また、式中のR5、R6はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、前記アルキル基、アリール基は置換されていてもよい。該置換基としては、例えば、−Cl、−OCH3、−CH3、−N(CH32、−NH2等が挙げられる。
【0062】
前記アルキル基としては、炭素数1〜13のアルキル基が好ましく、例えば、−CH3、−C25、−C36、−C49、−C613等が挙げられる。前記アリール基としては、炭素数4〜30のアリール基が好ましく、例えば、下記構造のもの等が挙げられる。
【0063】
【化19】

【0064】
前記式中のR7、R8はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル又は基を表す。R7及びR8は、互いに結合して窒素原子と共に、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン又はN−置換ピペラジン核を形成していてもよい。
【0065】
前記一般式(3)で表される化合物の具体例としては、特開昭60−12543号公報、特開昭60−15544号公報に記載のもの、及び以下に示す化合物(例示化合物3−1〜3−18)が挙げられる。但し、本発明においてはこれらに限定されるものではない。
【0066】
【化20】

【0067】
【化21】

【0068】
次に、一般式(4)で表される化合物について説明する。
【0069】
【化22】

【0070】
前記一般式(4)中、Qを含んでなる環状基Bは、芳香族環基又は複素環基を表し、置換基を有していてもよい。該置換基としては、例えば、−CH3、−C25、−Cl、−
Br、−N(CH32、−OCH 3、−OC25、−COOCH3、−OC65等が挙げ
られる。前記Qは窒素原子又は炭素原子を表す。前記芳香族環基としては、炭素数4〜30の芳香族環基が好ましく、例えば、下記構造のもの等が挙げられる。
【0071】
【化23】

【0072】
前記複素環基としては、例えば、下記構造のもの等が挙げられる。
【0073】
【化24】

【0074】
前記式中のR11は、アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン置換アルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。前記アルキル基としては、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、例えば、−CH3、−C25、−C36、−C613等が挙げられる。R11における前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましい。前記ハロゲン置換アルキル基におけるアルキル基及びハロゲン基も、上記と同義である。
【0075】
前記芳香族環基としては、炭素数4〜30の芳香族環基が好ましく、例えば、下記構造のもの等が挙げられる。
【0076】
【化25】

【0077】
前記一般式(4)で表される化合物の具体例としては、以下に示す化合物(例示化合物4−1〜4−17)が挙げられるが、本発明においてはこれらに限定されるものではない。
【0078】
【化26】

【0079】
【化27】

【0080】
次に、一般式(5)で表される化合物について説明する。
【0081】
【化28】

【0082】
前記一般式(5)中、E1、E2は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、複素環基を表し、E1及びE2は同一でも異なっていてもよい。前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0083】
前記E1、E2が脂肪族基を表す場合、該脂肪族基としては、例えば、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アルキニル基、置換アルキニル基、アラルキル基、又は置換アラルキル基等が挙げられ、中でも、アルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アラルキル基、又は置換アラルキル基が好ましく、ア
ルキル基、置換アルキル基が特に好ましい。また、前記脂肪族基は、環状脂肪族基でも鎖状脂肪族基でもよい。鎖状脂肪族基は分岐を有していてもよい。
【0084】
前記アルキル基としては、直鎖状、分岐状、環状のアルキル基が挙げられ、該アルキル基の炭素原子数としては、1〜30が好ましく、1〜20がより好ましい。置換アルキル基のアルキル部分の炭素原子数の好ましい範囲については、アルキル基の場合と同様である。また、前記アルキル基は、置換基を有するアルキル基、無置換のアルキル基のいずれであってもよい。前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、ネオペンチル基、イソプロピル基、イソブチル基等が挙げられる。
【0085】
前記置換アルキル基の置換基としては、カルボキシル基、スルホ基、シアノ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、ヒドロキシ基、炭素数30以下のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基)、炭素数30以下のアルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、炭素数30以下のアシルアミノスルホニル基、炭素数30以下のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、ベンジルオキシ基、フェノキシエトキシ基、フェネチルオキシ基等)、炭素数30以下のアルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、メチルチオエチルチオエチル基等)、炭素数30以下のアリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、p−トリルオキシ基、1−ナフトキシ基、2−ナフトキシ基等)、ニトロ基、炭素数30以下のアルキル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、
【0086】
炭素数30以下のアシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基等)、炭素数30以下のアシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基等)、カルバモイル基(例えば、カルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、モルホリノカルボニル基、ピペリジノカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、モルホリノスルホニル基、ピペリジノスルホニル基等)、炭素数30以下のアリール基(例えば、フェニル基、4−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基、α−ナフチル基等)、置換アミノ基(例えば、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アシルアミノ基等)、置換ウレイド基、置換ホスホノ基、複素環基等が挙げられる。ここで、カルボキシル基、スルホ基、ヒドロキシ基、ホスホノ基は、塩の状態であってもよい。
【0087】
塩の状態を形成するカチオンとしては、例えば、有機カチオン性化合物、遷移金属配位錯体カチオン(特許2791143号公報に記載の化合物等)又は金属カチオン(例えば、Na+、K+、Li+、Ag+、Fe2+、Fe3+、Cu+、Cu2+、Zn2+、Al3+、1/2Ca2+等)が好適である。前記有機カチオン性化合物としては、例えば、4級アンモニウムカチオン、4級ピリジニウムカチオン、4級キノリニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン、スルホニウムカチオン、色素カチオン等が挙げられる。
【0088】
前記4級アンモニウムカチオンとしては、テトラアルキルアンモニウムカチオン(例えば、テトラメチルアンモニウムカチオン、テトラブチルアンモニウムカチオン)、テトラアリールアンモニウムカチオン(例えば、テトラフェニルアンモニウムカチオン)等が、前記4級ピリジニウムカチオンとしては、N−アルキルピリジニウムカチオン(例えば、N−メチルピリジニウムカチオン)、N−アリールピリジニウムカチオン(例えば、N−フェニルピリジニウムカチオン)、N−アルコキシピリジニウムカチオン(例えば、4−
フェニル−N−メトキシ−ピリジニウムカチオン)、N−ベンゾイルピリジニウムカチオン等が挙げられ、前記4級キノリニウムカチオンとしては、N−アルキルキノリニウムカチオン(例えば、N−メチルキノリニウムカチオン)、N−アリールキノリニウムカチオン(例えば、N−フェニルキノリニウムカチオン)等が、前記ホスホニウムカチオンとしては、テトラアリールホスホニウムカチオン(例えば、テトラフェニルホスホニウムカチオン)等が挙げられる。また、前記ヨードニウムカチオンとしては、ジアリールヨードニウムカチオン(例えば、ジフェニルヨードニウムカチオン)等が、前記スルホニウムカチオンとしては、トリアリールスルホニウムカチオン(例えば、トリフェニルスルホニウムカチオン)等が挙げられる。これら各カチオン性化合物において、そのアルキル基としては、炭素数が1〜30のアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ヘキシル等の無置換アルキル基;2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシブチル等のヒドロキシ基アルキル基等)が好ましく、炭素数1〜12のアルキル基が特に好ましく、そのアリール基としては、例えば、フェニル基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子)置換フェニル基、アルキル(例えば、メチル)置換フェニル基、アルコキシ(例えば、メトキシ)置換フェニル基が好ましい。更に、カチオンの具体的な例として、特開平9−188686号公報の段落[0020]〜[0038]に記載の化合物等も挙げることができる。
【0089】
前記アルケニル基としては、直鎖状、分岐状、環状のアルケニル基が挙げられ、該アルケニル基の炭素原子数としては、2〜30が好ましく、2〜20がより好ましい。置換アルケニル基のアルケニル部分の炭素原子数の好ましい範囲については、アルケニル基の場合と同様である。また、前記アルケニル基は、置換基を有するアルケニル基、無置換のアルケニル基のいずれであってもよい。前記置換アルケニル基の置換基としては、前記置換アルキル基の場合と同様の置換基が挙げられる。
【0090】
前記アルキニル基としては、直鎖状、分岐状、環状のアルキニル基が挙げられ、該アルキニル基の炭素原子数としては、2〜30が好ましく、2〜20がより好ましい。置換アルキニル基のアルキニル部分の炭素原子数の好ましい範囲については、アルキニル基の場合と同様である。また、前記アルキニル基は、置換基を有するアルキニル基、無置換のアルキニル基のいずれであってもよい。置換アルキニル基の置換基としては、前記置換アルキル基の場合と同様の置換基が挙げられる。
【0091】
前記アラルキル基としては、直鎖状、分岐状、環状のアラルキル基が挙げられ、該アラルキル基の炭素原子数としては、7〜35が好ましく、7〜25がより好ましい。置換アラルキル基のアラルキル部分の炭素原子数の好ましい範囲については、アラルキル基の場合と同様である。また、前記アラルキル基は、置換基を有するアラルキル基、無置換のアラルキル基のいずれであってもよい。置換アラルキル基の置換基としては、前記置換アルキル基の場合と同様の置換基が挙げられる。
【0092】
前記E1、E2が芳香族基を表す場合、該芳香族基としては、例えば、アリール基、置換アリール基が挙げられる。アリール基の炭素原子数としては、6〜30が好ましく、6〜20がより好ましい。置換アリール基のアリール部分の好ましい炭素原子数の範囲としては、アリール基と同様である。前記アリール基としては、例えば、フェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基等が挙げられる。置換アリール基の置換基としては、前記置換アルキル基の場合と同様の置換基が挙げられる。
【0093】
前記E1、E2が複素環基を表す場合、該複素環基としては、置換基を有する複素環基、無置換の複素環基が挙げられ、該複素環基の炭素原子数としては、4〜13が好ましい。前記複素環基としては、含窒素原子、含酸素原子、含硫黄原子の複素環が挙げられ、
より具体的には、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、キノリン環、
イソキノリン環、キノキサリン環、アクリジン環、フラン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、ピロリン環、オキサゾール環、チアゾール環、オキサジアゾール環、チアゾリン環、チオフェン環、インドール環等が挙げられる。置換基を有する複素環基の置換基としては、前記置換アルキル基の場合と同様の置換基が挙げられる。
【0094】
上記のうち、前記E1、E2としては、無置換のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、オクチル基、オクタデシル基等)、又は置換アルキル基が好ましい。また、前記置換アルキル基の中でも、置換オキシアルキル基(例えば、メトキシエチル基、フェノキシエチル基等)、置換オキシカルボニルアルキル基(例えば、ブトキシカルボニルメチル基、フェノキシエトキシカルボニルメチル基等)が特に好ましい。また、前記E1及びE2は、各々、隣接する他の置換基と互いに結合して環を形成していてもよく、該環としては、例えば、5員又は6員のヘテロ環が挙げられる。
【0095】
前記一般式(5)で表される化合物の具体例としては、以下に示す化合物(例示化合物5−1〜5−11)が挙げられるが、本発明においてはこれらに限定されるものではない。
【0096】
【化29】

【0097】
【化30】

【0098】
次に、芳香族オニウム塩について説明する。前記芳香族オニウム塩としては、周期律表の第V,VI及びVII族の元素、具体的にはN,P,As,Sb,Bi,O,S,Se,Te又はIの芳香族オニウム塩が含まれ、例えば、特公昭52−14277号公報、特公昭52−14278号公報、特公昭52−14279号公報に記載の化合物が挙げられる。具体的には、以下の化合物(例示化合物(iv)−1〜(iv)−27)が挙げられるが、本発明においては、これらに制限されるものではない。
【0099】
【化31】

【0100】
【化32】

【0101】
【化33】

【0102】
【化34】

【0103】
【化35】

【0104】
上記のうち、BF4塩、又はPF6塩の合物が好ましく、芳香族ヨードニウム塩のBF4塩、又はPF6塩がより好ましい。
【0105】
次に、有機過酸化物について説明する。前記有機過酸化物としては、分子中に酸素−酸素結合を1個以上有する有機化合物のほとんど全てが含まれ、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(ターシャリイブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(ターシャリイブチルパーオキシ)シクロヘキサン、 2,2−ビス(ターシャリイブチルパーオキシ)ブタン、ターシャリイブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジターシャリイブチルパーオキサイド、ターシャリイブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ビス(ターシャリイブチルパーオキイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリイブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリイブチルパーオキシ)ヘキシン−3、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、過酸化こはく酸、過酸化ベンゾイル、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、メタ−トルオイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ターシャリイブチルパーオキシアセテート、ターシャリイブチルパーオキシピバレート、ターシャリイブチルパーオキシネオデカノエート、ターシャリイブチルパーオキシオクタノエート、ターシャリイブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、ターシャリイブチルパーオキシラウレート、ターシャリイブチルパーオキシベンゾエート、ジターシャリイブチルジパーオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ターシャリイブチル過酸化マレイン酸、ターシャリイブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、3,3’,4,4’−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4, 2,2−ビス(ターシャリイブチルパーオキシ)ブタン、ターシャリイブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、パラメタンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジターシャリイブチルパーオキサイド、ターシャリイブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ビス(ターシャリイブチルパーオキイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ターシャリイブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−3,3’,4,4’−テトラ−(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、カルボニルジ(t−ブチルパーオキシ二水素二フタレート)、カルボニルジ(t−ヘキシルパーオキシ二水素二フタレート)等がある。
【0106】
上記のうち、3,3’,4,4’−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(t−アミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(t−オクチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(クミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフタレートなどの過酸化エステル系化合物が好ましい。
【0107】
本発明においては、前述の一般式(1)〜(5)のいずれかで表される化合物、芳香族オニウム塩及び有機過酸化物より選択される1種の化合物を使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。特には1−3、2−1、3−1、4−5、5−2、1V−11、などより2種及びそれ以上を組み合わせて用いることが好ましい。
【0108】
前記一般式(1)〜(5)のいずれかで表される化合物、芳香族オニウム塩及び有機過酸化物の総使用量としては、後述の皮膜形成バインダーに対して、0.1〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。前記総含有量が、0.1質量%以上で有効に効果を発現でき、20質量%以下で、塗布適性が良好となる。
【0109】
[ラジカル重合開始剤]
ラジカル重合開始剤としては、以下の光ラジカル重合開始剤、熱ラジカル重合開始剤等を使用することができる。
光ラジカル重合開始剤としてはアセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類、活性ハロゲン化合物などが挙げられる。アセトフェノン類の例には、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノンおよび2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンが含まれる。ベンゾイン類の例には、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノンおよびp−クロロベンゾフェノンが含まれる。ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドが含まれる。更に、活性ハロゲン化合物の例として下記の一般式(6)〜(9)で表わされる化合物でも良い。
【0110】
【化36】

【0111】
一般式(6)において、Xはハロゲン原子を表す。Yは−CX3、−NH2、−NHR’、−NR’2、−OR’を表す。ここでR’はアルキル基、アリール基を表す。またRは、−CX3、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、置換アルケニル基を表す。
【0112】
本発明で用いられる一般式(6)で表される化合物としては、Bull.Chem.Soc.Japan.42、2924(1969)記載の化合物たとえば、2−フェニル−4、6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロルフェニル)−4、6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4、6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−(p−ネトキシフェニル)−4、6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−(2'、4'−ジクロルフェニル)−4、6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2、4、6−トリス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4、6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−n−ノニル−4、6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−(α、α、β−トリクロルエチル)−4、6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。また英国特許1388492号明細書記載の化合物、たとえば、2−スチリル−4、6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−(p−メチルスチリル)−4、6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4、6−ビス(トリクロルメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4アミノ−6−トリクロルメチル−s−トリアジン等を挙げることができる。また、J.Org.Chem.、29、1527(1964)記載の化合物、例えば2−メチル−4、6−ビス(トリブロムメチル)−s−トリアジン、2、4、6−トリス(トリブロムメチル)−s−トリアジン、2、4、6−トリス(ジブロムメチル)−s−トリアジン、2−アミノ−4−メチル−6−トリブロムメチル−s−トリアジン、2−メトキシ−4−メチル−6−トリクロルメチル−s−トリアジン等を挙げることができる。
一般式(6)のうちYが−CX3である化合物を用いた場合が特に好ましい。Xとして
好ましくは、Cl、Br、F原子である。
一般式(6)で表される化合物の具体例は以下の通りである。
【0113】
【化37】

【0114】
【化38】

【0115】
【化39】

【0116】
【化40】

【0117】
【化41】

【0118】
【化42】

【0119】
式中、Aはフェニル基、ナフチル基、置換フェニル基または置換ナフチル基を表す。ここで置換基とはハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基もしくはメチレンジオキシ基である。Yはハロゲン原子を表し、nは1〜3の整数を示す。
一般式(7)で表される化合物の具体例は以下の通りである。
【0120】
【化43】

【0121】
【化44】

【0122】
式中、Wは無置換もしくは置換されたフェニル基又は無置換のナフチル基を表し、フェニル基の置換基はハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜3のアルキル基又は炭
素数1〜4のアルコキシ基である。置換基の数はハロゲン原子のときは1つ又は2つであり、その他の場合は1つである。Xは水素原子、フェニル基又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。Yはハロゲン原子を表し、nは1〜3の整数を示す。
一般式(8)で表される化合物の具体例は以下の通りである。
【0123】
【化45】

【0124】
【化46】

【0125】
式中、Aは無置換もしくは置換されたフェニル基又は無置換のナフチル基を表し、フェニル基の置換基はハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜4のアルコキシ基である。置換基の数はハロゲン原子のときは1つ又は2つであ
り、その他の場合は1つである。Xは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アリル基を表す。Yはハロゲン原子を表し、nは1〜3の整数を示す。
一般式(9)で表される化合物の具体例は以下の通りである。
【0126】
【化47】

【0127】
最新UV硬化技術(P.159,発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1991年発行)にも種々の光ラジカル重合開始剤の例が記載されており本発明に有用である。
市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製のイルガキュア(651,184,907)等が好ましい例として挙げられる。
【0128】
熱ラジカル開始剤としては、有機あるいは無機過酸化物、有機アゾ及びジアゾ化合物等を用いることができる。
具体的には、有機過酸化物として過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシド、無機過酸化物として、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等、アゾ化合物として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(プロピオニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)等、ジ
アゾ化合物としてジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム等が挙げられる。
【0129】
本発明において、ラジカル重合開始剤の使用量に特に制限はないが、後述の皮膜形成バインダー100質量部に対して、0.1〜20質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部である。またラジカル重合開始剤は1種でも複数種を使用しても良いし、他の光増感剤などと併用して使用しても良い。光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトンおよびチオキサントンを挙げることができる。
【0130】
[皮膜の硬化方法]
本発明では、乾燥後に直接電離放射線を照射して硬化させても、乾燥後に加熱硬化させ
更に電離放射線を照射して硬化させてもよい。
本発明の反射防止フィルムの製造方法は、下記(1)の工程の後に(2)または(3)の工程を行うことによって、あるいは(1)の工程後に(4)の加熱硬化処理を行った後に(2)または(3)の工程を行うことによって、支持体上に積層される層の少なくとも一層を形成する工程を有する。
(1)連続して走行する、支持体を含むウェッブ上に、前記の一般式(1)〜(5)のいずれかで表される化合物、芳香族オニウム塩、及び有機過酸化物より選択された少なくとも1種以上の化合物を含有し、更にラジカル重合開始剤、および電離放射線硬化性化合物を含む塗布液を塗布及び乾燥し、塗布層を形成する工程
(2)前記ウェッブ上の塗布層に、酸素濃度3体積%以下の雰囲気下で電離放射線を0.5秒以上照射することにより、塗布層を硬化する工程
(3)前記ウェッブ上の塗布層を加熱しながら、酸素濃度3体積%以下の雰囲気下で電離放射線を0.5秒以上照射することにより、塗布層を硬化する工程
(4)前記ウェッブ上の塗布層を、加熱することによって、加熱硬化する工程
【0131】
電離放射線の照射は、酸素濃度は3体積%以下の雰囲気下で行なうことが好ましい。より好ましくは1体積%以下であり、更に好ましくは0.1体積%以下である。必要以上に酸素濃度を低減するためには、不活性ガスの多量の使用量が必要であり、製造コストの観点から好ましくない。酸素濃度を低下させる手段としては、大気(窒素濃度約79体積%、酸素濃度約21体積%)を別の不活性気体で置換することが好ましく、特に好ましくは窒素で置換(窒素パージ)することである。
本発明では、ウェッブ上の塗布層に、酸素濃度3体積%以下の雰囲気下で30℃以上の温度に加熱しながら電離放射線を0.5秒以上の間照射することによって塗布層の硬化を行なうことが好ましい。照射時間は照射開始から0.7秒以上60秒以下が好ましく、0.7秒以上10秒以下がより好ましい。0.5秒以上で、硬化反応が完了でき、十分な硬化を行うことができる。
尚、本明細書中、「ウェッブ」とは、支持体自体であっても、支持体上に層を形成したものであってもよい。
【0132】
本発明では、前記の硬化工程を、所望の酸素濃度に制御された電離放射線反応室(以後、単に「反応室」ということもある)で行なうことが好ましい。不活性ガスを電離放射線反応室に供給する際、反応室のウェッブ入り口側(ウェッブを搬入する入り口である)にやや吹き出す条件にすることで、ウェッブ搬送にともなう導搬エアーを排除して反応室の酸素濃度を有効に下げられるとともに、酸素による硬化阻害の大きい極表面の実質の酸素濃度を効率よく低減することができる。反応室のウェッブ入り口側での不活性ガスの流れの方向は、反応室の給気、排気のバランスを調整することなどで制御できる。なお、ウェッブ上の塗布層に電離放射線を照射する直前に、不活性ガスをウェッブ上の塗布層表面に直接吹き付けることも、導搬エアーを除去する方法として好ましい。
特に最外層であり、且つ、膜厚が薄い低屈折率層がこの方法で硬化されることが好ましい。
【0133】
また反応室の前に前室を設けることも好ましい。前室は、不活性ガスで置換され、低酸素濃度であることが好ましく、好ましくは酸素濃度5体積%以下且つ酸素濃度0.01体積%以上であることが好ましい。前室内を電離放射線照射前のウェッブを通過(搬送)させるのみであってもよく、前記した導搬エアーを除去する方法である不活性ガスのウェッブ上の塗布層表面への直接吹き付けを行なってもよい。
前室を設けて、事前にウェッブの塗布層表面の酸素を排除することで、反応室の低酸素濃度を維持することが可能となり、より硬化を効率よく進めることができる。
【0134】
また電離放射線反応室または前室のウェッブ入り口側を構成する側面の少なくとも一方
は、不活性ガスを効率的に使用するために、ウェッブ上の塗布層表面とのギャップが0.2〜15mmであることが好ましく、より好ましくは、0.2〜10mmとするのがよく、0.2〜5mmとすることが最も好ましい。ここで、ギャップとは、ウェッブ上の塗布層表面とウェッブ入り口側を構成する側面におけるウェッブ入り口上端との間の長さを指す。
しかし、ウェッブを連続製造するには、ウェッブを接合して繋げていく必要があり、接合には接合テープなどで貼る方法が広く用いられている。このため、電離放射線反応室または前室の入り口とウェッブ上の塗布層表面とのギャップをあまり狭くすると、接合テープなどの接合部材が引っかかる問題が生じる。このためギャップを狭くするためには、電離放射線反応室または前室の入り口面の少なくとも一部を可動とし、接合部が入るときは接合厚み分だけギャップを広げるのが好ましい。この実現のためには、(A)電離放射線反応室または前室の入り口面を進行方向前後に可動にしておき、接合部が通過する際に前後に動いてギャップを広げる方法や、(B)電離放射線反応室または前室の入り口面をウェッブ面に対し、垂直方向に可動にし、接合部が通過する際に上下に動いてギャップを広げる方法を取ることが出来る。
【0135】
以下、前室のウェッブ入り口面の動作を例にとり、本発明で適用可能な反応室または前室のウェッブ入り口面の動作事例を、図1〜4を基に説明する(尚、以下の図面説明では、塗布層(図示せず)を有したウェッブを単に「ウェッブ」と称する)。
図1は、本発明において好ましく用いられる電離放射線反応室及び前室を具備した製造装置の模式図である。
図2は、本発明において好ましく用いられる電離放射線反応室及び前室を具備した製造装置のウェッブ入り口面の装置動作の一例を示した側面図であり、上記(A)の態様を示す。図2の構成を有する装置は、ウェッブ搬送時に、ウェッブを接合して繋げる接合部材が前室入り口に進入する前に、センサで接合部材を検知し、制御部(図示せず)を通して該センサと連動して作動する前室のウェッブ入り口面の少なくとも一部に取り付けられたエアシリンダによって、入り口面をウェッブの進行方向前後に動かせるようにしたものであり、これにより接合部材の厚み分を逃げることができるものである。
【0136】
図3及び図4は、上記(B)の態様を示した図であり、図3は前室のウェッブ入り口面を模式的に示した図であり、図4は前室のウェッブ入り口面の動作を模式的に示した図である。前室ウェッブ入り口面の一部を可動にし、ウェッブの幅両端をベアリングタッチロールで接触することでウェッブと入り口面とのギャップが決まる。接合部材が通過するときは、ベアリングタッチロールが接合部材を乗り越え、ウェッブ入り口面のギャップが一定に保たれる。入り口の可動手段は、接合部を逃げられるようになっていれば良く、限定されるものではない。
【0137】
本発明では、ウェッブ上の塗布層を硬化させる際、前記硬化工程における3体積%以下の雰囲気下で行なわれる電離放射線照射を複数回に分けて行うことも好ましい。
この場合、少なくとも2回の電離放射線照射が、連続した酸素濃度3体積%以下の反応室で行われることが好ましい。複数回の電離放射線照射を同一の低酸素濃度の反応室で行なうことにより、硬化に必要な反応時間を有効に確保することができる。特に高生産性のため製造速度を上げた場合には、硬化反応に必要な電離放射線のエネルギーを確保するために複数回の電離放射線照射が必要となり、硬化反応に必要な反応時間の確保とあわせ、上記の態様が有効である。
「連続した反応室」とは、酸素濃度3体積%以下の反応室内で少なくとも2回の電離放射線照射を行なう態様や、酸素濃度3体積%以下の反応室を少なくとも2室以上設け、反応室の間を酸素濃度3体積%以下の低酸素ゾーンとする態様等がある。後者の場合には各々の反応室は、酸素濃度3体積%以下であれば、酸素濃度が異なっていてもよい。
【0138】
本発明では、塗布層表面温度が25℃以上になるようにウェッブを加熱しながら、前記硬化工程を行なうことも好ましい。また電離放射線照射と同時および/または連続して酸素濃度3体積%以下の雰囲気で加熱することも好ましい。加熱しながら前記硬化工程を加熱と併用することで、硬化反応が熱で加速され、物理強度、耐薬品性に優れた皮膜を形成することができる。
【0139】
加熱は塗布層表面温度が25℃以上170℃以下で加熱されることが好ましい。25℃未満では加熱の硬化は少なく、一方、170℃を超えると基材の変形などの問題が生じる。更に好ましい温度は25℃〜100℃である。また塗布層表面温度が前記温度に保持される時間は、電離放射線照射開始から0.1秒以上、300秒以下が好ましく、更に10秒以下が好ましい。塗布層表面温度の温度を上記の温度範囲に保つ時間が短すぎると、皮膜を形成する硬化性組成物の反応を促進できず、逆に長すぎてもフィルムの光学性能が低下し、また設備が大きくなるなどの製造上の問題も生じる。
【0140】
加熱する方法に特に限定はないが、ロールを加熱してウェッブに接触させる方法、加熱した窒素を吹き付ける方法、遠赤外線あるいは赤外線の照射などが好ましい。特許2523574号に記載の回転金属ロールに温水や蒸気・オイルなどの媒体を流して加熱する方法も利用できる。加熱の手段としては誘電加熱ロールなどを使用しても良い。
【0141】
本発明における電離放射線種は特に制限されるものではなく、皮膜を形成する硬化性組成物の種類に応じて、紫外線、電子線、近紫外線、可視光、近赤外線、赤外線、X線などから適宜選択することができる。本発明では紫外線による照射が好ましい。重合速度が早く設備をコンパクトにできる、選択できる化合物種が豊富でかつ低価格であることから紫外線硬化が好ましい。
紫外線の場合は、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等が利用できる。また電子線照射の場合は、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器から放出される50〜1000keVのエネルギーを有する電子線が用いられる。
(4)の加熱硬化は、60℃以上が好ましく、基材の変形などの問題が生じにくい点で170℃以下が好ましい。フィルム面とは硬化しようとする層の膜面温度を指す。加熱時間は基材の変形が起こらない範囲内なら良く、2分から20分間が好ましく、3分〜15分間が更に好ましい。加熱硬化方法はヒーターで空気を加熱し、所望の温度に調整した後にブロアでゾーンに送風する熱風ブロア方式が好ましい。これ以外に加熱中に蒸気を混入し、湿度コントロールもすることも、併用しても良い。
【0142】
[皮膜形成バインダー]
本発明では、皮膜を形成する硬化性組成物の主たる皮膜形成バインダー成分として電離放射線硬化性化合物、好ましくはエチレン性不飽和基を有する化合物を用いることが、皮膜強度、塗布液の安定性、塗膜の生産性、などの点で好ましい。主たる皮膜形成バインダー成分とは、無機粒子を除く皮膜形成成分のうち10質量%以上100質量%以下を占めるものをいう。好ましくは、20質量%以上100質量%以下、更に好ましくは30質量%以上95%以下である。
また、本明細書において、「電離放射線硬化性化合物」とは、電離放射線照射によって硬化する化合物であればよい。
主たる皮膜形成バインダーとしては、飽和炭化水素鎖またはポリエーテル鎖を主鎖として有するポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素鎖を主鎖として有するポリマーであることがより好ましい。更に、これらポリマーは架橋構造を有していることが好ましい。
飽和炭化水素鎖を主鎖として有し、かつ架橋構造を有するバインダーポリマーとしては
、二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの(共)重合体が好ましい。
さらに、高屈折率な皮膜にする場合には、このモノマーの構造中に芳香族環や、フッ素以外のハロゲン原子、硫黄原子、リン原子、及び窒素原子から選ばれた少なくとも1種の原子を含むことが好ましい。
【0143】
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、ビニルベンゼンおよびその誘導体(例、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)およびメタクリルアミドが挙げられる。
上記モノマーは2種以上併用してもよい。尚、本明細書においては、「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリル酸」は、それぞれ「アクリレート又はメタクリレート」、「アクリロイル又はメタクリロイル」、「アクリル酸又はメタクリル酸」を表す。
【0144】
更に、高屈折率モノマーの具体例としては、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロキシフェニル−4’−メトキシフェニルチオエーテル等が挙げられる。これらのモノマーも2種以上併用してもよい。
【0145】
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、前述の光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
【0146】
本発明においてはポリエーテルを主鎖として有するポリマーを使用することもできる。多官能エポキシ化合物の開環重合体が好ましい。多官能エポキシ化合物の開環重合は、光酸発生剤あるいは熱酸発生剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。光酸発生剤および熱酸発生剤としては、公知ものが使用できる。
【0147】
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりにまたはそれに加えて、架橋性官能基を有するモノマーを用いてポリマー中に架橋性官能基を導入し、この架橋性官能基の反応により、架橋構造をバインダーポリマーに導入してもよい。
架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基および活性メチレン基が含まれる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステルおよびウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。すなわち、本発明において架橋性官能基は、すぐには反応を示すものではなくとも、分解した結果反応性を示すものであってもよい。
これら架橋性官能基を有するバインダーポリマーは塗布後、加熱することによって架橋構造を形成することができる。
【0148】
[低屈折率層用材料]
低屈折率層は、含フッ素ビニルモノマーから導かれる繰返し単位および側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する繰返し単位を必須の構成成分とする共重合体の硬化皮膜によって形成されるのが好ましい。該共重合体由来の成分は皮膜固形分の60質量%以上を占めることが好ましく、70質量%以上を占めることがより好ましく、80質量%以上を占めることが特に好ましい。低屈折率化と皮膜硬度の両立の観点から多官能(メタ)アクリレート等の硬化剤も相溶性を損なわない範囲の添加量で好ましく用いられる。
また特開平11−228631号公報記載の化合物も好ましく使用される。
【0149】
以下に本発明の低屈性率層に好ましく用いられる共重合体について説明する。
含フッ素ビニルモノマーとしてはフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等)、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート6FM(商品名、大阪有機化学工業(株)製)やR−2020(商品名、ダイキン工業(株)製)等)、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられるが、好ましくはパーフルオロオレフィン類であり、屈折率、溶解性、透明性、入手性等の観点から特に好ましくはヘキサフルオロプロピレンである。これらの含フッ素ビニルモノマーの組成比を上げれば屈折率を下げることができるが、皮膜強度は低下する。本発明では共重合体のフッ素含率が20〜60質量%となるように含フッ素ビニルモノマーを導入することが好ましく、より好ましくは25〜55質量%の場合であり、特に好ましくは30〜50質量%の場合である。
【0150】
本発明では共重合体は側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する繰返し単位を必須の構成成分として有するのが好ましい。これらの(メタ)アクリロイル基含有繰返し単位の組成比を高めれば皮膜強度は向上するが屈折率も高くなる。含フッ素ビニルモノマーから導かれる繰返し単位の種類によっても異なるが、一般に(メタ)アクリロイル基含有繰返し単位は5〜90質量%を占めることが好ましく、30〜70質量%を占めることがより好ましく、40〜60質量%を占めることが特に好ましい。
【0151】
本発明に有用な共重合体では上記含フッ素ビニルモノマーから導かれる繰返し単位および側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する繰返し単位以外に、基材への密着性、ポリマーのTg(皮膜硬度に寄与する)、溶剤への溶解性、透明性、滑り性、防塵・防汚性等種々の観点から適宜他のビニルモノマーを共重合することもできる。これらのビニルモノマーは目的に応じて複数を組み合わせてもよく、合計で共重合体中の0〜65モル%の範囲で導入されていることが好ましく、0〜40モル%の範囲であることがより好ましく、0〜30モル%の範囲であることが特に好ましい。
【0152】
併用可能なビニルモノマー単位には特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル等)、スチレン誘導体(スチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン、p−メトキシスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、不飽和カルボン酸類(アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等)、アクリルアミド類(N、N−ジメチルアクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類(N、N−ジメチルメタクリルアミド)、アクリロニトリル等を挙げることができる。
【0153】
本発明において下記一般式1又は一般式2で記載される含フッ素ポリマーが好ましく用いられる。
【0154】
【化48】

【0155】
一般式1中、Lは炭素数1〜10の連結基を表し、より好ましくは炭素数1〜6の連結基であり、特に好ましくは2〜4の連結基であり、直鎖であっても分岐構造を有していてもよく、環構造を有していてもよく、O、N、Sから選ばれるヘテロ原子を有していても良い。
好ましい例としては、*−(CH22−O−**,*−(CH22−NH−**,*−(CH24−O−**,*−(CH26−O−**,−(CH22−O−(CH22−O−**,*−CONH−(CH23−O−**,*−CH2CH(OH)CH2−O−**,*−CH2CH2OCONH(CH23−O−**(*はポリマー主鎖側の連結部位を表し、**は(メタ)アクリロイル基側の連結部位を表す。)等が挙げられる。mは0または1を表わす。
【0156】
一般式1中、Xは水素原子またはメチル基を表す。硬化反応性の観点から、より好ましくは水素原子である。
【0157】
一般式1中、Aは任意のビニルモノマーから導かれる繰返し単位を表わし、ヘキサフルオロプロピレンと共重合可能な単量体の構成成分であれば特に制限はなく、基材への密着性、ポリマーのTg(皮膜硬度に寄与する)、溶剤への溶解性、透明性、滑り性、防塵・防汚性等種々の観点から適宜選択することができ、目的に応じて単一あるいは複数のビニルモノマーによって構成されていても良い。
【0158】
好ましい例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、シクロへキシルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル、アリルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジルメタアクリレート、アリル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリレート類、スチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン等のスチレン誘導体、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸およびその誘導体等を挙げることができるが、より好ましくはビニルエーテル誘導体、ビニルエステル誘導体であり、特に好ましくはビニルエーテル誘導体である。
【0159】
x、y、zはそれぞれの構成成分のモル%を表わし、30≦x≦60、5≦y≦70、0≦z≦65を満たす値を表す。好ましくは、35≦x≦55、30≦y≦60、0≦z
≦20の場合であり、特に好ましくは40≦x≦55、40≦y≦55、0≦z≦10の場合である。
【0160】
本発明に用いられる共重合体の更に好ましい形態として一般式2も挙げられる。
一般式2
【0161】
【化49】


【0162】
一般式2において、Rは炭素数1〜10のアルキル基、又は一般式1に示すエチレン性不飽和基(−C(=O)C(−X)=CH)を表す。
mは1≦m≦10の整数を表わし、1≦m≦6であることが好ましく、1≦m≦4であることが特に好ましい。
nは2≦n≦10の整数を表わし、2≦n≦6であることが好ましく、2≦n≦4であることが特に好ましい。
Bは任意のビニルモノマーから導かれる繰返し単位を表わし、単一組成であっても複数の組成によって構成されていても良い。また、シリコーン部位を含んでいても良い。
x、y、z1およびz2はそれぞれの繰返し単位のmol%を表わし、x及びyは、それぞれ30≦x≦60、0≦y≦70を満たし、好ましくは、35≦x≦55、0≦y≦60の場合であり、特に好ましくは40≦x≦55、0≦y≦55の場合である。z1及びz2については、1≦z1≦65、1≦z2≦65を満たし、好ましくは1≦z1≦40、1≦z2≦10であり、1≦z1≦30、1≦z2≦5であることが特に好ましい。ただし、x+y+z1+z2=100である。
【0163】
更に、本発明の含フッ素ポリマーは、防汚性を付与するために下記ポリシロキサン構造を有する構成単位を有することも好ましい。
本発明において好ましい、ポリシロキサン構造を有する含フッ素ポリマーとしては、(a)含フッ素ビニルモノマー重合単位、(b)水酸基含有ビニルモノマー重合単位、および(c)側鎖に下記一般式3で表されるポリシロキサン繰り返し単位を含んでなるグラフト部位を有する重合単位をそれぞれ少なくとも1種類含み、主鎖が炭素原子のみからなる含フッ素ポリマーが挙げられる。
【0164】
一般式3
【0165】
【化50】

【0166】
一般式3中、R、Rは同一であっても異なっていてもよく、アルキル基又はアリール基を表す。アルキル基としては炭素数1〜4が好ましく、例としてメチル基、トリフル
オロメチル基、エチル基等が挙げられる。アリール基としては炭素数6〜20が好ましく、例としてフェニル基、ナフチル基が挙げられる。これらの中でもメチル基およびフェニル基が好ましく、特に好ましくはメチル基である。pは2〜500の整数を表わし、好ましくは5〜350であり、特に好ましくは8〜250の場合である。
【0167】
側鎖に一般式3であらわされるポリシロキサン構造を有するポリマーは、例えばJ.Appl.Polym.Sci.2000,78,1955、特開昭56−28219号公報等に記載のごとく、エポキシ基、水酸基、カルボキシル、酸無水物基等の反応性基を有するポリマーに対して、相対する反応性基(例えばエポキシ基、酸無水物基に対してアミノ基、メルカプト基、カルボキシル基、水酸基等)を片末端に有するポリシロキサン(例えばサイラプレーンシリーズ(チッソ株式会社製)など)を高分子反応によって導入する方法、ポリシロキサン含有シリコンマクロマーを重合させる方法によって合成することができ、どちらの方法も好ましく用いることができる。本発明ではシリコンマクロマーの重合によって導入する方法がより好ましい。
【0168】
シリコンマクロマーとしては、含フッ素オレフィンとの共重合が可能な重合性基を有しているものであれば良く、好ましくは一般式4〜7のいずれかで表わされる構造である。
【0169】
【化51】

【0170】
一般式4〜7においてR、Rおよびpは一般式3と同じ意味を表し、好ましい範囲もそれらと同じである。R〜Rはそれぞれ独立に、置換または無置換の1価の有機基または水素原子を表わし、炭素数1〜10のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、オクチル基等)、炭素数1〜10のアルコキシ基(例えばメトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基等)、炭素数6から20のアリール基(例えばフェニル基、ナフチル基等)が好ましく、炭素数1〜5のアルキル基が特に好ましい。Rは水素原子またはメチル基を表わす。Lは炭素数1〜20の任意の連結基を表わし、置換または無置換の直鎖、分岐または脂環式のアルキレン基、または置換または無置換のアリーレン基が挙げられるが、好ましくは、炭素数1〜20の無置換の直鎖アルキレン基であり、特に好ましくはエチレン基またはプロピレン基である。これらの化合物は例えば特開平6−322053号記載の方法で合成される。
【0171】
一般式4〜7で表される化合物はどれも本発明に好ましく用いることができるが、これらの中でも特に含フッ素オレフィンとの共重合性の観点から一般式4、5または6で表わされる構造のものが好ましい。上記のポリシロキサン部位はグラフト共重合体中の0.01〜20質量%を占めることが好ましく、より好ましくは0.05〜15質量%の場合であり、特に好ましくは、0.5〜10%の場合である。
【0172】
以下に本発明に有用な側鎖にポリシロキサン部位を含む重合体グラフト部位の重合単位の好ましい例を示すが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0173】
【化52】

【0174】
【化53】

【0175】
【化54】

【0176】
【化55】

【0177】
【化56】

【0178】
【化57】

【0179】
【化58】

【0180】
S−(36) サイラプレーン FM−0711 (チッソ(株)製)
S−(37) サイラプレーン FM−0721 (同上)
S−(38) サイラプレーン FM−0725 (同上)
【0181】
該ポリシロキサン構造の導入によって、皮膜に防汚性、防塵性が付与されると供に、皮膜表面に滑り性が付与され耐傷性にも有利である。
【0182】
以下に本発明で有用な含フッ素共重合体の好ましい例を示すが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0183】
【化59】

【0184】
【化60】

【0185】
【化61】

【0186】
【化62】

【0187】
【化63】

【0188】
【化64】

【0189】
本発明に用いられる共重合体は特開2004−45462号公報に記載の方法により合成することができる。また、本発明に用いられる共重合体の合成は、上記以外の種々の重合方法、例えば溶液重合、沈澱重合、懸濁重合、沈殿重合、塊状重合、乳化重合によって水酸基含有重合体等の前駆体を合成した後、前記高分子反応によって(メタ)アクリロイル基を導入することによって行なうこともできる。重合反応は回分式、半連続式、連続式等の公知の操作で行なうことができる。
【0190】
重合の開始方法はラジカル開始剤を用いる方法、電離放射線を照射する方法等がある。これらの重合方法、重合の開始方法は、例えば鶴田禎二,「高分子合成方法」改定版,日刊工業新聞社,1971年や大津隆行、木下雅悦共著,「高分子合成の実験法」,化学同人,昭和47年,124〜154頁に記載されている。
【0191】
上記重合方法のうち、特にラジカル開始剤を用いた溶液重合法が好ましい。溶液重合法で用いられる溶剤は、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールのような種々の有機溶剤の単独あるいは2種以上の混合物でも良いし、水との混合溶媒としても良い。
【0192】
重合温度は生成するポリマーの分子量、開始剤の種類などと関連して設定する必要があり0℃以下から100℃以上まで可能であるが、50〜100℃の範囲で重合を行なうことが好ましい。
【0193】
反応圧力は、適宜選定可能であるが、通常は、1〜100kPa、特に、1〜30kPa程度が望ましい。反応時間は、5〜30時間程度である。
【0194】
得られたポリマーの再沈殿溶媒としては、イソプロパノール、ヘキサン、メタノール等が好ましい。
【0195】
更に、本発明において低屈折率層形成に使用されるポリシロキサン含有ビニル単量体としては、下記一般式Iで表わされるものが好ましい。
【0196】
【化65】

【0197】
上記一般式Iにおいて、R1、R2は同一であっても異なっていてもよく、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。Pは10〜500の整数を表す。R3、R4、R5は同
一であっても異なっていてもよく、水素原子または1価の有機基を表し、R6は水素原子
またはメチル基を表す。Lは単結合または2価の連結基を表し、nは0または1を表す。
【0198】
一般式IにおいてR1,R2は水素原子、置換基を有していても良いアルキル基、アリール基を表わす。R1,R2は同一であっても異なっていてもよい。アルキル基としては炭素数1〜4が好ましく、例としてメチル基、トリフルオロメチル基、エチル基等が挙げられる。アリール基としては炭素数6〜20が好ましく、例としてフェニル基、ナフチル基が挙げられる。これらの中でもメチル基およびフェニル基が好ましく、特に好ましくはメチル基である。R1,R2において置換していても良い置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基(例えば、メチル、エチル)、炭素数6〜10のアリール基(例えば、フェニル)、炭素数1〜6のアルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ)、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル)、シアノ基、フッ素原子及び塩素原子が挙げられる。
pは10〜500の整数を表わし、好ましくは50〜300であり、特に好ましくは100〜250の場合である。
【0199】
3〜R5はそれぞれ、置換または無置換の1価の有機基または水素原子を表わし、好ましくは炭素数1〜10のアルキル基(メチル基、エチル基、オクチル基等)、炭素数1〜10のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基等)、炭素数6〜20のアリール基(フェニル基、ナフチル基等)を表わし、より好ましくはフェニル基または炭素数1〜5のアルキル基であり、特に好ましくはメチル基である。R3〜R5はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。R3〜R5の置換していても良い好ましい置換基としては、R1,R2の置換基として挙げたものと同じである。R6は水素原子またはメチル基
を表わす。Lは、単結合または2価の連結基を表し、好ましくは炭素数1〜25からなるものであり、重合可能なビニル基を連結し得るものであれば特に制限はないが、より好ましくは下記一般式IIあるいは一般式IIIで表されるような構造を有する。nは0または1を表す。
【0200】
【化66】

【0201】
【化67】

【0202】
上記一般式IIあるいは一般式IIIにおいてL'は置換もしくは無置換の直鎖、分岐
もしくは脂環式のアルキレン基、または置換もしくは無置換のアリーレン基を表し、好ましくは炭素数1〜25のアルキレン基、またはアリーレン基であり、より好ましくは、炭素数1〜25の無置換の直鎖アルキレン基であり、特に好ましくはエチレン基またはプロピレン基である。L'の置換基としては、R1,R2の置換基として挙げたものが好ましい

【0203】
以下にポリシロキサン含有ビニル単量体から誘導される本発明に有用な側鎖にポリシロキサン部位を含む重合単位(繰り返し単位)の好ましい例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0204】
【化68】

【0205】
【化69】

【0206】
【化70】

【0207】
【化71】

【0208】
【化72】

【0209】
【化73】

【0210】
【化74】


【0211】
含フッ素ポリマー本体に水酸基を含有する場合には、水酸基と反応しうる官能基を1分子内に2個以上有する硬化剤を用いることが好ましい。水酸基と反応しうる官能基を1分子内に2個以上有する硬化剤としては特に限定はなく、例えばポリイソシアネート類、イソシアネート化合物の部分縮合物、多量体や、多価アルコール、低分子量ポリエステル皮膜などとの付加物、イソシアネート基をフェノールなどのブロック化剤でブロックしたブロックポリイソシアネート化合物、アミノプラスト類、多塩基酸又はその無水物などを挙げることができる。これら硬化剤を用いる際には、水酸基含有のモノマーユニットの含率は2%以上80%以下が好ましく、更に好ましくは10%以上50%以下、最も好ましく
は25%以上50%以下である。
【0212】
水酸基と反応する硬化剤の中で、本発明では、保存時の安定性と架橋反応の活性の両立の観点、および形成される膜の強度の観点から、酸性条件下で水酸基含有化合物と架橋反応するアミノプラスト類が好ましい。アミノプラスト類としては、含フッ素ポリマー中に存在する水酸基と反応可能なアミノ基、すなわちヒドロキシアルキルアミノ基もしくはアルコキシアルキルアミノ基、又は窒素原子に隣接し、且つアルコキシ基で置換された炭素原子を含有する化合物であることが好ましい。具体的には、例えばメラミン系化合物、尿素系化合物、ベンゾグアナミン系化合物等を挙げることができる。
【0213】
上記メラミン系化合物は、一般にトリアジン環に窒素原子が結合した骨格を有する化合物として知られているもので、具体的にはメラミン、アルキル化メラミン、メチロールメラミン、アルコキシ化メチルメラミン等を挙げることができる。特に、メラミンとホルムアルデヒドを塩基性条件下で反応して得られるメチロール化メラミン及びアルコキシ化メチルメラミン、並びにその誘導体が好ましく、特に保存安定性からアルコキシ化メチルメラミンが特に好ましい。またメチロール化メラミン及びアルコシ化メチルメラミンについて特に制約はなく、例えば「プラスチック材料講座[8]ユリア・メラミン樹脂」(日刊工業新聞社)に記載されているような方法で得られる、各種樹脂の使用も可能である。
【0214】
また上記尿素化合物としては、尿素の他、ポリメチロール化尿素その誘導体であるアルコキシ化メチル尿素、さらには環状尿素構造であるグリコールウリル骨格や2−イミダゾリジノン骨格を有する化合物も好ましい。前記尿素誘導体等のアミノ化合物についても前記「ユリア・メラミン樹脂」等に記載の各種樹脂の使用が可能である。
【0215】
本発明において架橋剤として好適に用いられる化合物としては、含フッ素共重合体との相溶性の点から、特にメラミン化合物又はグリコールウリル化合物が好ましく、その中でも反応性の観点から、架橋剤が分子中に窒素原子を含有し、且つ該窒素原子に隣接するアルコキシ基で置換された炭素原子を2個以上含有する化合物であることが好ましい。特に好ましい化合物は下記H−1、H−2で表される構造を有する化合物、及びそれらの部分縮合体である。式中Rは炭素数1〜6のアルキル基又は水酸基を表す。
【0216】
【化75】

【0217】
含フッ素ポリマーに対するアミノプラストの添加量としては、共重合体100質量部当たり、1〜50質量部が好ましく、より好ましくは3〜40質量部であり、さらに好ましくは5〜30質量部である。1質量部以上であれば、本発明の特徴である薄膜としての耐久性を十分に発揮することができ、50質量部以下であれば、光学用途に利用する際に本発明における低屈折率層の特徴である低屈折率を維持できるので好ましい。硬化剤を添加しても屈折率を低く保つという観点からは、添加しても屈折率の上昇が少ない硬化剤が好ましく、その観点では上記化合物のうち、H−2で表される骨格を有する化合物がより好ましい。
【0218】
本発明のフイルム形成において、特にアミノプラスト系硬化剤を添加する場合には、加熱および/又は光照射しながら含フッ素ポリマーの水酸基と前記硬化剤との架橋反応で膜を硬化することが好ましい。この系では酸により硬化が促進される為、硬化性樹脂組成物に、酸性物質を添加することが望ましいが、通常の酸を添加すると塗布液中でも架橋反応が進行してしまい、故障(ムラ、ハジキなど)の原因となる。従って、熱硬化系で保存安定性と硬化活性を両立するために、加熱により酸を発生する化合物を硬化触媒として添加することがより好ましい。
【0219】
硬化触媒は、酸と有機塩基からなる塩であることが好ましい。酸としては、スルホン酸、ホスホン酸、カルボン酸など有機酸や硫酸、リン酸のような無機酸が挙げられ、ポリマーに対する相溶性の観点から有機酸がより好ましく、スルホン酸、ホスホン酸が更に好ましく、スルホン酸が最も好ましい。好ましいスルホン酸としては、p−トルエンスルホン酸(PTS)、ベンゼンスルホン酸(BS)、p−ドデシルベンゼンスルホン酸(DBS)、p−クロロベンゼンスルホン酸(CBS)、1,4−ナフタレンジスルホン酸(NDS)、メタンスルホン酸(MsOH)、ノナフルオロブタン−1−スルホン酸(NFBS)などが挙げられ、何れも好ましく用いることができる(( )内は略称)。
【0220】
硬化触媒は、酸と組み合わせる有機塩基の塩基性および沸点によって大きく変化する。以下にそれぞれの観点から本発明で好ましく用いられる硬化触媒について説明する。
【0221】
有機塩基の塩基性が低い方が加熱時の酸発生効率が高く、硬化活性の観点からは好ましいが、塩基性が低すぎると保存安定性が不十分になる。従って、適度な塩基性を有する有機塩基を用いることが好ましい。塩基性の指標として共役酸のpKaを用いて表すと、本発明で用いる有機塩基のpKaは5.0〜10.5が好ましく、6.0〜10.0であることがより好ましく、6.5〜10.0であることがさらに好ましい。有機塩基のpKaの値は水溶液中での値が化学便覧 基礎編(改訂5版、日本化学会編、丸善、20
04年)第2巻のII−334〜340頁に記載があるので、その中から適当なpKaを有する有機塩基を選ぶことができる。また、該文献に記載がなくても構造上適当なpKaを有すると推定できる化合物も好ましく用いることができる。下記表に該文献に記載の適当なpKaを有する化合物を示すが、本発明に好ましく用いることができる化合物はこれらに限定されるものではない。
【0222】
【表1】

【0223】
有機塩基の沸点が低い方が加熱時の酸発生効率が高く、硬化活性の観点からは好ましい。従って、適度な沸点を有する有機塩基を用いることが好ましい。塩基の沸点としては、120℃以下であることが好ましく、80℃以下であることがより好ましく、70℃以下であることがさらに好ましい。
【0224】
本発明で好ましく用いることができる有機塩基としては例えば以下の化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。( )内は沸点を示す。
b−3:ピリジン(115℃)、b−14:4−メチルモルホリン(115℃)、b−20:ジアリルメチルアミン(111℃)、b−19:トリエチルアミン(88.8℃)、b−21:t−ブチルメチルアミン(67〜69℃)、b−22:ジメチルイソプロピルアミン(66℃)、b−23:ジエチルメチルアミン(63〜65℃)、b−24:ジメチルエチルアミン(36〜38℃)。
本発明の有機塩基の沸点は35℃以上120℃以下が好ましい。耐擦傷性の点で120℃以下が好ましく、また塗布液の安定性の点で35℃以上が好ましい。40℃以上115℃以下であることが最も好ましい。
【0225】
本発明における酸触媒として用いる時には、前記酸と有機塩基からなる塩を単離して用いても良いし、酸と有機塩基を混合して溶液中で塩を形成させ、その溶液を用いても良い。また、酸、有機塩基とも1種類だけで用いても良いし、複数種類のものを混合して用いても良い。酸と有機塩基を混合して用いる時には、酸と有機塩基の当量比が1:0.9〜1.5となるように混合することが好ましく、1:0.95〜1.3であることがより好ましく、1:1.0〜1.1であることが好ましい。
【0226】
この酸触媒の使用割合は、上記硬化性樹脂組成物中の含フッ素ポリマー100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部、更に好ま
しくは0.2〜3質量部である。
【0227】
本発明では上述した熱酸発生剤の他に光照射により酸を発生する化合物、すなわち感光性酸発生剤をさらに添加しても良い。該感光性酸発生剤は当該硬化性樹脂組成物の塗膜に感光性を付与し、例えば、光等の放射線を照射することによって当該塗膜を光硬化させることを可能にする物質である。この感光性酸発生剤としては、例えば、(1)ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、ピリジニウム塩等の各種オニウム塩;(2)β−ケトエステル、β−スルホニルスルホンとこれらのα−ジアゾ化合物等のスルホン化合物;(3)アルキルスルホン酸エステル、ハロアルキルスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステル、イミノスルホネート等のスルホン酸エステル類;(4)スルホンイミド化合物類;(5)ジアゾメタン化合物類;(5)トリハロメチルトリアジン類;その他を挙げることができ、適宜使用することができる。
【0228】
感光性酸発生剤は、単独で、又は2種以上を併用することができ、さらに前記熱酸発生剤と併用することもできる。感光性酸発生剤の使用割合は、硬化性樹脂組成物中の含フッ素ポリマー100質量部に対して、好ましくは0.01〜20質量部、さらに好ましくは0.1〜10重量部である。感光性酸発生剤の割合が該上限値以下であれば、得られる硬化膜の強度が優れたものとなり、透明性も良好なので好ましい。
【0229】
尚、上記のオニウム化合物としては、ジアゾニウム塩、アンモニウム塩、イミニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、アルソニウム塩、セレノニウム塩等が挙げられる。中でも、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、イミニウム塩が、光重合開始の光感度、化合物の素材安定性等の点から好ましい。例えば特開2002−29162号明細書の段落番号[0058]〜[0059]に記載の化合物等が挙げられる。
【0230】
感光性酸発生剤の使用割合は、硬化性樹脂組成物100質量部に対して、好ましくは0.01〜20質量部、さらに好ましくは0.1〜10重量部である。
その他、具体的な化合物や使用法として、例えば特開2005―43876号記載の内容などを用いることができる。
【0231】
本発明の反射防止フィルムにおいて、低屈折率層に好ましく用いることのできる無機粒子について説明する。
無機微粒子の塗設量は、1mg/m2〜100mg/m2が好ましく、より好ましくは5mg/m2〜80mg/m2、更に好ましくは10mg/m2〜60mg/m2である。1mg/m2以上で、耐擦傷性の改良効果が十分であり、100mg/m2以下で、低屈折率層表面に微細な凹凸ができるのを防止でき、黒の締まりなどの外観や積分反射率の悪化を防止できる。
該無機微粒子は、低屈折率層に含有させることから、低屈折率であることが望ましく、例えば、シリカまたは中空シリカの微粒子が挙げられる。シリカ微粒子の平均粒径は、低屈折率層の厚みの30%以上150%以下が好ましく、より好ましくは35%以上80%
以下、更に好ましくは40%以上60%以下である。即ち、低屈折率層の厚みが100nmであれば、シリカ微粒子の粒径は30nm以上150nm以下が好ましく、より好ましくは35nm以上80nm以下、更に好ましくは、40nm以上60nm以下である。
シリカ微粒子の平均粒径が低屈折率層の厚みの30%以上で、耐擦傷性の改良効果が十分であり、150%以下で、低屈折率層表面に微細な凹凸ができるのを防止でき、黒の締まりといった外観、積分反射率の悪化を防止できる。シリカ微粒子は、結晶質でも、アモルファスのいずれでも良く、また単分散粒子でも、所定の粒径を満たすならば凝集粒子でも構わない。形状は、球径が最も好ましいが、不定形であっても問題無い。ここで、無機微粒子の平均粒径はコールターカウンターにより測定される。
【0232】
低屈折率層の屈折率を低下させるために、中空のシリカ微粒子を用いることが好ましい。該中空シリカ微粒子は屈折率が1.17〜1.40、より好ましくは1.17〜1.35、さらに好ましくは1.17〜1.30である。ここでの屈折率は粒子全体としての屈折率を表し、中空シリカ粒子を形成している外殻のシリカのみの屈折率を表すものではない。中空シリカ粒子の屈折率1.17以上で、十分な粒子の強度を持つ外殻の厚みとなり、耐擦傷性が良好となる。
この時、粒子内の空腔の半径をa、粒子外殻の半径をbとすると、空隙率xは下記数式(I)で算出される。
(数式I) x=(4πa3/3)/(4πb3/3)×100
空隙率xは、好ましくは10〜60%、さらに好ましくは20〜60%、最も好ましくは30〜60%である。空隙率60%以下で、十分な粒子の強度を持つ外殻の厚みとなり、耐擦傷性が良好となる。
なお、これら中空シリカ粒子の屈折率はアッベ屈折率計(アタゴ(株)製)にて測定をおこなった。
【0233】
また、中空粒子を低屈折率層に含有させることで該層の屈折率を低下させることができる。中空粒子を用いた場合に好ましい該層の屈折率は1.20以上1.46以下であり、更に好ましくは1.25以上1.41以下であり、最も好ましくは1.30以上1.39以下である。
【0234】
また、平均粒径が低屈折率層の厚みの25%未満であるシリカ微粒子(「小サイズ粒径のシリカ微粒子」と称す)の少なくとも1種を上記の粒径のシリカ微粒子(「大サイズ粒径のシリカ微粒子」と称す)と併用することが好ましい。
小サイズ粒径のシリカ微粒子は、大サイズ粒径のシリカ微粒子同士の隙間に存在することができるため、大サイズ粒径のシリカ微粒子の保持剤として寄与することができる。
小サイズ粒径のシリカ微粒子の平均粒径は、低屈折率層が100nmの場合、1nm以上20nm以下が好ましく、5nm以上15nm以下が更に好ましく、10nm以上15nm以下が特に好ましい。このようなシリカ微粒子を用いると、原料コストおよび保持剤効果の点で好ましい。
【0235】
本発明においては、膜強度の向上の点から、オルガノシランの加水分解物および/またはその部分縮合物(ゾル)を添加することが好ましい。ゾルの好ましい添加量は、無機酸化物粒子の2〜200質量%が好ましく、5〜100質量%が更に好ましく、最も好ましくは、10〜50質量%である。
【0236】
本発明においては、防汚性向上の観点から、反射防止膜表面の表面自由エネルギーを下げることが好ましい。具体的には、含フッ素化合物やポリシロキサン構造を有するシリコーン系化合物を低屈折率層に使用することが好ましい。好ましいシリコーン系化合物の例としては信越化学(株)製、X−22−174DX、X−22−2426、X−22−164B、X22−164C、X−22−170DX、X−22−176D、X−22−1821(以上商品名)やチッソ(株)製、FM−0725、FM−7725、FM−4421、FM−5521、FM6621、FM−1121やGelest製DMS−U22、RMS−033、RMS−083、UMS−182、DMS−H21、DMS−H31、HMS−301、FMS121、FMS123、FMS131、FMS141、FMS221(以上商品名)などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、特開2003−112383の表2、表3に記載のシリコーン系化合物も好ましく使用できる。これらのポリシロキサンは低屈折率層全固形分の0.1〜10質量%の範囲で添加されることが好ましく、特に好ましくは1〜5質量%の場合である。
【0237】
上記含フッ素ポリマーの重合は、前述の光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
従って、上記含フッ素ポリマー、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤、無機微粒子を含有する塗液を調製し、該塗液を支持体上に塗布後、電離放射線または熱による重合反応により硬化して、低屈折率層を形成することができる。
【0238】
低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.46であることが好ましく、1.25〜1.46であることがより好ましく、1.30〜1.46であることが特に好ましい。
低屈折率層の厚さは、50〜200nmであることが好ましく、70〜100nmであることがさらに好ましい。低屈折率層のヘイズは、3%以下であることが好ましく、2%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。具体的な低屈折率層の強度は、500g荷重の鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
また、反射防止フィルムの防汚性能を改良するために、表面の水に対する接触角が90゜以上であることが好ましい。更に好ましくは95゜以上であり、特に好ましくは100゜以上である。
【0239】
[ハードコート層]
ハードコート層は、フィルムの耐擦傷性を向上するためのハードコート性を有する。また、表面散乱および内部散乱の少なくともいずれかの散乱による光拡散性とをフィルムに寄与する目的でも好ましく使用される。従って、ハードコート性を付与するための透光性樹脂、及び光拡散性を付与するための透光性粒子を含有することが好ましく、更に必要に応じて高屈折率化、架橋収縮防止、高強度化のための無機フィラーを含有する。
【0240】
ハードコート層の膜厚は、ハードコート性を付与する目的で、1〜10μmが好ましく、1.2〜6μmがより好ましい。膜厚が上記範囲であれば、ハードコート性が十分付与され、しかもカールや脆性が悪化して加工適性が低下することもない。
【0241】
前記透光性樹脂は、飽和炭化水素鎖またはポリエーテル鎖を主鎖として有するバインダーポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーであることがさらに好ましい。また、バインダーポリマーは架橋構造を有することが好ましい。
飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーとしては、エチレン性不飽和モノマーの重合体が好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有し、かつ架橋構造を有するバインダーポリマーとしては、二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの(共)重合体が好ましい。
バインダーポリマーをより高屈折率にするには、このモノマーの構造中に芳香族環や、フッ素以外のハロゲン原子、硫黄原子、リン原子、及び窒素原子から選ばれた少なくとも1種の原子を含む高屈折率モノマーを選択することもできる。
【0242】
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、多価アルコールと(メタ)
アクリル酸とのエステル〔例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート〕、前記のエステルのエチレンオキサイド変性体、ビニルベンゼンおよびその誘導体〔例、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン〕、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)およびメタクリルアミドが挙げられる。これらモノマーは2種以上併用してもよい。
【0243】
高屈折率モノマーの具体例としては、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロキシフェニル−4’−メトキシフェニルチオエーテル等が挙げられる。これらのモノマーも2種以上併用してもよい。
【0244】
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、前述の低屈折率層に含まれる重合開始剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
従って、前記ハードコート層は、上述のエチレン性不飽和モノマー等の透光性樹脂形成用のモノマー、電離放射線または熱によりラジカルを発生する開始剤、透光性粒子および必要に応じて無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を支持体上に塗布後電離放射線または熱による重合反応により硬化させることにより形成することができる。
【0245】
電離放射線または熱によりラジカルを発生する重合開始剤に加えて、前述の低屈折率層に含有してもよい光増感剤を用いてもよい。
【0246】
ポリエーテルを主鎖として有するポリマーは、多官能エポキシ化合物の開環重合体が好ましい。多官能エポキシ化合物の開環重合は、光酸発生剤あるいは熱酸発生剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
従って、多官能エポキシ化合物、光酸発生剤あるいは熱酸発生剤、透光性粒子および無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を支持体上に塗布後電離放射線または熱による重合反応により硬化してハードコート層を形成することができる。
【0247】
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりにまたはそれに加えて、架橋性官能基を有するモノマーを用いてポリマー中に架橋性官能基を導入し、この架橋性官能基の反応により、架橋構造をバインダーポリマーに導入してもよい。
架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基および活性メチレン基が含まれる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステルおよびウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。すなわち、本発明において架橋性官能基は、すぐには反応を示すものではなくとも、分解した結果反応性を示すものであってもよい。
これら架橋性官能基を有するバインダーポリマーは塗布後、加熱することによって架橋構造を形成することができる。
【0248】
ハードコート層に用いられる透光性粒子は、防眩性又は光拡散性付与の目的で用いられるものであり、その平均粒径が0.5〜5μm、好ましくは1.0〜4.0μmである。平均粒径が0.5μm以上であると、光の散乱角度分布が広角にまで広がらず、ディスプレイの文字解像度の低下を防止でき、表面凹凸が形成しやすくなるため防眩性が十分である。5μm以下で、ハードコート層の膜厚を厚くする必要がなく、カールが大きくなる、素材コストが上昇してしまう、等の問題を防止できる。
前記透光性粒子の具体例としては、例えばシリカ粒子、TiO2粒子等の無機化合物の
粒子;アクリル粒子、架橋アクリル粒子、メタクリル粒子、架橋メタクリル粒子、ポリスチレン粒子、架橋スチレン粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、架橋アクリルスチレン粒子等の樹脂粒子が好ましく挙げられる。なかでも架橋スチレン粒子、架橋アクリル粒子、架橋アクリルスチレン粒子、シリカ粒子が好ましい。
透光性粒子の形状は、球状あるいは不定形のいずれも使用できる。
【0249】
また、粒子径の異なる2種以上の透光性粒子を併用して用いてもよい。より大きな粒子径の透光性粒子で防眩性を付与し、より小さな粒子径の透光性粒子で別の光学特性を付与することが可能である。例えば、133ppi以上の高精細ディスプレイに反射防止フィルムを貼り付けた場合に、ギラツキと呼ばれる光学性能上の不具合のないことが要求される。ギラツキは、フィルム表面に存在する凹凸(防眩性に寄与)により、画素が拡大もしくは縮小され、輝度の均一性を失うことに由来するが、防眩性を付与する透光性粒子より小さな粒子径で、バインダーの屈折率と異なる透光性粒子を併用することにより大きく改善することができる。
【0250】
さらに、前記透光性粒子の粒子径分布としては単分散であることが最も好ましく、各粒子の粒子径は、それぞれ同一に近ければ近いほど良い。例えば平均粒子径よりも20%以上粒子径が大きな粒子を粗大粒子と規定した場合には、この粗大粒子の割合は全粒子数の1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましくは0.01%以下である。このような粒子径分布を持つ透光性粒子は通常の合成反応後に、分級によって得られ、分級の回数を上げることやその程度を強くすることにより、より好ましい分布とすることができる。
【0251】
前記透光性粒子は、形成されたハードコート層中に、光散乱効果、像の解像度、表面の白濁及びギラツキ等を考慮して、ハードコート層全固形分中に好ましくは3〜30質量%含有されるように配合される。より好ましくは5〜20質量%である。
また、透光性粒子の密度は、好ましくは10〜1000mg/m2、より好ましくは1
00〜700mg/m2である。
透光性粒子の粒度分布はコールターカウンター法により測定し、測定された分布を粒子数分布に換算する。
【0252】
ハードコート層には、層の屈折率を高めるために、前記の透光性粒子に加えて、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、及びアンチモンのうちより選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなり、平均粒径が0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.06μm以下である無機フィラーが含有されることが好ましい。
また逆に、透光性粒子との屈折率差を大きくするために、高屈折率透光性粒子を用いたハードコート層では層の屈折率を低目に保つためにケイ素の酸化物を用いることも好ましい。好ましい粒径は上記の無機フィラーと同じである。
ハードコート層に用いられる無機フィラーの具体例としては、TiO2、ZrO2、Al23、In23、ZnO、SnO2、Sb23、ITOとSiO2等が挙げられる。TiO2およびZrO2が高屈折率化の点で特に好ましい。該無機フィラーは表面をシランカップ
リング処理又はチタンカップリング処理されることも好ましく、フィラー表面にバインダー種と反応できる官能基を有する表面処理剤が好ましく用いられる。
これらの無機フィラーを用いる場合、その添加量は、ハードコート層の全質量の10〜90%であることが好ましく、より好ましくは20〜80%であり、特に好ましくは30〜75%である。
なお、このような無機フィラーは、粒径が光の波長よりも十分小さいために散乱が生じず、バインダーポリマーに該フィラーが分散した分散体は光学的に均一な物質として振舞う。
また、ハードコート層にもオルガノシラン化合物、オルガノシランの加水分解物および/またはその部分縮合物(ゾル)の少なくともいずれかを用いることができる。
低屈折率層以外の層へのゾル成分の添加量は、含有層(添加層)の全固形分の0.001〜50質量%が好ましく、0.01〜20質量%がより好ましく、0.05〜10質量%が更に好ましく、0.1〜5質量%が特に好ましい。ハードコート層の場合には、前記オルガノシラン化合物またはそのゾル成分の添加量に対する制約が低屈折率層ほど厳しくないため、前記オルガノシラン化合物が好ましく用いられる。
【0253】
透光性樹脂と透光性粒子との混合物のバルクの屈折率は、1.48〜2.00であることが好ましく、より好ましくは1.50〜1.80である。屈折率を前記範囲とするには、透光性樹脂及び透光性粒子の種類及び量割合を適宜選択すればよい。どのように選択するかは、予め実験的に容易に知ることができる。
また透光性樹脂と透光性粒子との屈折率の差(透光性粒子の屈折率−透光性樹脂の屈折率)は0.02〜0.2が好ましく、より好ましくは0.05〜0.15である。この差が上記範囲であると、内部散乱の効果が十分であり、ギラツキが発生せず、しかもフィルム表面が白濁することもない。
また、前記透光性樹脂の屈折率は、1.45〜2.00であるのが好ましく、1.48〜1.70であるのが更に好ましい。
ここで、透光性樹脂の屈折率は、アッベ屈折計で直接測定するか、分光反射スペクトルや分光エリプソメトリーを測定するなどして定量評価できる。
【0254】
ハードコート層は、特に塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状均一性を確保するために、フッ素系、シリコーン系の何れかの界面活性剤、あるいはその両者をハードコート層形成用の塗布組成物中に含有する。特にフッ素系の界面活性剤は、より少ない添加量において、本発明の反射防止フィルムの塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状故障を改良する効果が現れるため、好ましく用いられる。
面状均一性を高めつつ、高速塗布適性を持たせることにより生産性を高めることが目的である
【0255】
[高(中)屈折率層]
本発明の反射防止フィルムには、より良い反射防止能を付与するために、高屈折率層及び/又は中屈折率層を設けることが好ましい。本発明の反射防止フィルムにおける高屈折率層の屈折率は、1.60乃至2.40であることが好ましく、1.70乃至2.20であることがさらに好ましい。中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.55乃至1.80であることが好ましい。高屈折率層および中屈折率層のヘイズは、3%以下であることが好ましい。屈折率は、添加する無機微粒子やバインダーの使用量などを調節することにより適宜調節できる。
【0256】
高(中)屈折率層には、層の屈折率を高めるため、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなり、平均粒径が0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0
.06μm以下である無機フィラーが含有されることが好ましい。
また、高(中)屈折率層に含有されるマット粒子との屈折率差を大きくするために、高屈折率マット粒子を用いた高(中)屈折率層では層の屈折率を低目に保つためにケイ素の酸化物を用いることも好ましい。好ましい粒径は前述のハードコート層における無機フィラーと同じである。
高(中)屈折率層に用いられる無機フィラーの具体例としては、TiO2、ZrO2、Al23、In23、ZnO、SnO2、Sb23、ITOとSiO2等が挙げられる。TiO2およびZrO2が高屈折率化の点で特に好ましい。該無機フィラーは表面をシランカップリング処理又はチタンカップリング処理されることも好ましく、フィラー表面にバインダー種と反応できる官能基を有する表面処理剤が好ましく用いられる。
これらの無機フィラーの添加量は、必要な屈折率に合わせて調節するが、高屈折率層の場合、全質量の10〜90%であることが好ましく、より好ましくは20〜80%であり、特に好ましくは30〜70%である。
なお、このようなフィラーは、粒径が光の波長よりも十分小さいために散乱が生じず、バインダーポリマーに該フィラーが分散した分散体は光学的に均一な物質として振舞う。
【0257】
本発明に用いる高(中)屈折率層は、前記のようにして分散媒体中に無機微粒子を分散した分散液に、好ましくは、さらにマトリックス形成に必要なバインダー前駆体(前述のハードコート層で説明した二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマー等)、光重合開始剤等を加えて高屈折率層形成用の塗布組成物とし、支持体上に高屈折率層形成用の塗布組成物を塗布して、電離放射線硬化性化合物(例えば、多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)の架橋反応又は重合反応により硬化させて形成することが好ましい。
【0258】
光重合性多官能モノマーの重合反応には、光重合開始剤を用いることが好ましい。光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤と光カチオン重合開始剤が好ましく、特に好ましいのは光ラジカル重合開始剤である。光ラジカル重合開始剤としては、前述の低屈折率層と同様のものが用いられる。
【0259】
高(中)屈折率層には、前記の成分(無機微粒子、重合開始剤、光増感剤など)以外に、樹脂、界面活性剤、帯電防止剤、カップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、防眩性付与粒子、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、導電性の金属微粒子、などを添加することもできる。
高(中)屈折率層の膜厚は用途により適切に設計することができる。高(中)屈折率層を光学干渉層として用いる場合、30〜200nmが好ましく、より好ましくは50〜170nm、特に好ましくは60〜150nmである。
【0260】
[支持体]
本発明の反射防止フィルムの支持体としては、透明であることが好ましく、プラスチックフィルムを用いることが好ましい。プラスチックフィルムを形成するポリマーとしては、セルロースアシレート(例、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、代表的には富士写真フイルム(株)製TAC−TD80U,TD80UFなど)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリスチレン、ポリオレフィン、ノルボルネン系樹脂(アートン:商品名、JSR社製)、非晶質ポリオレフィン(ゼオネックス:商品名、日本ゼオン社製)、などが挙げられる。このうちトリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、が好ましく、特にトリアセチルセルロースが好ましい。また、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素を実質的に含まないセルロースアシレートフィルムおよびその製造法については発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行)に記載されており、ここに記載されたセルロースアシレートも本発明に好ましく用いることができる。
【0261】
[鹸化処理]
本発明の反射防止フィルムを液晶表示装置に用いる場合、片面に粘着層を設ける等して通常ディスプレイの最表面に配置する。また、本発明の反射防止フィルムと偏光板と組み合わせて用いてもよい。支持体としての透明基材がトリアセチルセルロースの場合は偏光板の偏光層を保護する保護フィルムとして通常トリアセチルセルロースが用いられるため、本発明の反射防止フィルムをそのまま保護フィルムに用いることがコストの上では好ましい。
【0262】
本発明の反射防止フィルムは、片面に粘着層を設ける等してディスプレイの最表面に配置したり、そのまま偏光板用保護フィルムとして使用される場合には、十分に接着させるためには支持体に含フッ素ポリマーを主体とする最外層を形成した後、鹸化処理を実施することが好ましい。鹸化処理は、公知の手法、例えば、アルカリ液の中に該フィルムを適切な時間浸漬して実施される。アルカリ液に浸漬した後は、該フィルムの中にアルカリ成分が残留しないように、水で十分に水洗したり、希薄な酸に浸漬してアルカリ成分を中和することが好ましい。
鹸化処理することにより、最外層を有する側とは反対側の支持体の表面が親水化される。
親水化された表面は、ポリビニルアルコールを主成分とする偏光膜との接着性を改良するのに特に有効である。また、親水化された表面は、空気中の塵埃が付着しにくくなるため、偏光膜と接着させる際に偏光膜と反射防止フィルムの間に塵埃が入りにくく、塵埃による点欠陥を防止するのに有効である。
鹸化処理は、最外層を有する側とは反対側の支持体表面の水に対する接触角が40゜以下になるように実施することが好ましい。更に好ましくは30゜以下、特に好ましくは20゜以下である。
【0263】
アルカリ鹸化処理の具体的手段としては、以下の(1)及び(2)の2つの手段から選択することができる。汎用のトリアセチルセルロースフィルムと同一の工程で処理できる点で(1)が優れているが、反射防止層面まで鹸化処理されるため、表面がアルカリ加水分解されて反射防止層が劣化する点、鹸化処理液が残ると汚れになる点が問題になり得る。その場合には、特別な工程となるが、(2)が優れる。
(1)支持体上に反射防止層を形成後に、アルカリ液中に少なくとも1回浸漬することで、該フィルムの裏面を鹸化処理する。
(2)支持体上に反射防止層を形成する前または後に、アルカリ液を該反射防止フィルムの反射防止フィルムを形成する面とは反対側の面に塗布し、加熱、水洗および/または中和することで、該フィルムの裏面だけを鹸化処理する。
【0264】
[塗膜形成方法]
本発明の反射防止フィルムは以下の方法で形成することができるが、この方法に制限されない。
【0265】
[反射防止膜の形成]
多層構成の反射防止膜の各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ダイコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許第2681294号明細書記載)により、塗布により形成することができるが、ダイコート法で塗布することが好ましく、更には後述する新規ダイコーターを用いて塗布を行うことがより好ましい。二層以上を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許第2761791号、同2941898号
、同3508947号、同3526528号の各明細書および原崎勇次著「コーティング工学」朝倉書店(1973)253頁に記載がある。
【0266】
本発明の反射防止フィルムを連続的に製造するために、ロール状の基材フィルムを連続的に送り出す工程、塗布液を塗布・乾燥する工程、塗膜を硬化する工程、硬化した層を有する基材フィルムを巻き取る工程が行われる。
ロール状の基材フィルムから基材フィルムがクリーン室に連続的に送り出され、クリーン室内で、基材フィルムに帯電している静電気を静電除電装置により除電し、引き続き基材フィルム上に付着している異物を、除塵装置により除去する。引き続きクリーン室内に設置されている塗布部で塗布液が基材フィルム上に塗布され、塗布された基材フィルムは乾燥室に送られて乾燥される。
乾燥した塗布層を有する基材フィルムは乾燥室から放射線硬化室へ送り出され、放射線が照射されて塗布層に含有されるモノマーが重合して硬化する。さらに、放射線により硬化した層を有する基材フィルムは熱硬化部へ送られ、加熱されて硬化を完結させ、硬化が完結した層を有する基材フィルムは巻き取られてロール状となる。
【0267】
上記工程は、各層の形成毎に行ってもよいし、塗布部−乾燥室−放射線硬化部−熱硬化室を複数設けて、各層の形成を連続的に行うことも可能であるが、生産性の観点から各層の形成を連続的に行う事が好ましい。各層の塗布を連続的に行う装置の構成例を図5に示す。該装置はロール状の基材フィルムを連続的に送り出す工程1と、ロール状の基材フィルムを巻き取る工程2の間に製膜ユニット100,200,300,400を適宜必要な数だけ設置したものである。図5で示される装置は4層を巻き取ることなく連続的に塗布する際の構成の一例だが、層構成に合わせて製膜ユニット数を変化させることはもちろん可能である。製膜ユニット100は塗布液を塗布する工程101、塗膜を乾燥する工程102、塗膜を硬化する工程103から構成されている。
製膜ユニットが3つ設置された装置を用いて、前記ハードコート層を塗設したロール状の基材フィルムを連続的に送り出し、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層を各製膜ユニットで順次塗設した後に巻き取る事が生産性の観点からより好ましく、製膜ユニットが4つ設置された、図5に示す装置を用いて、ロール状の基材フィルムを連続的に送り出し、ハードコート層、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層を各製膜ユニットで順次塗設した後に巻き取る事が、塗布コストを大幅に低減する点で、更に好ましい。必要に応じて、塗布ステーションの数を2つに減らした装置構成として中屈折率層と高屈折率層の2層だけを一工程で形成し、面状、膜厚等をチェックした結果をフィードバックして得率を向上させたりすることも、別の好ましい形態として挙げられる。
【0268】
本発明では、より高い生産速度の観点から、塗布方法として、ダイコート法が好ましく用いられる。ダイコート法は、生産性と塗布ムラのない面状を高次元で両立できるため、好ましく用いられる。
本発明の反射防止フィルムの製造方法としては、このようなダイコート法を用いた以下の塗布方法が好ましい。
すなわち、バックアップロールによって支持されて連続走行するウェッブの表面に、スロットダイの先端リップのランドを近接させて、先端リップのスロットから塗布液を塗布する塗布工程を有する製造方法であり、本発明では、スロットダイのウェッブ進行方向側の先端リップのウェッブ走行方向におけるランド長さが30μm以上100μm以下であるスロットダイを有し、スロットダイを塗布位置にセットしたときに、ウェッブの進行方向とは逆側の先端リップとウェッブとを、両者の隙間が、ウェッブ進行方向側の先端リップとウェッブとの隙間よりも30μm以上120μm以下(以下、この数値限定については「オーバーバイト長さ」と称する)大きくなるように設置した塗布装置を用いて塗布することが好ましい。
特に、本発明の製造方法において好ましく用いることができるダイコーターについて、
以下に図面を参照して説明する。該ダイコーターは、ウエット塗布量が少ない場合(20ml/m2以下)に用いることが可能であり、好ましい。
【0269】
<ダイコーターの構成>
図6は本発明を好適に実施できるスロットダイを用いたコーター(塗布装置)の断面図である。
コーター10は、バックアップロール11とスロットダイ13とからなり、バックアップロール11に支持されて連続走行するウェッブWに対して、スロットダイ13から塗布液14がビード形状14aで吐出されて塗布されることにより、ウェッブW上に塗膜14bを形成する。
【0270】
スロットダイ13の内部には、ポケット15、スロット16が形成されている。ポケット15は、その断面が曲線及び直線で構成されており、略円形でもよいし、あるいは半円形でもよい。ポケット15は、スロットダイ13の幅方向(ここで、スロットダイ13の幅方向とは、図6の記載された図面に向かって手前方向又は奥側の方向を指す。)にその断面形状をもって延長された塗布液の液溜め空間で、その有効延長の長さは、塗布幅と同等か若干長めにするのが一般的である。ポケット15への塗布液14の供給は、スロットダイ13の側面から、あるいはスロット開口部16aとは反対側の面中央から行う。また、ポケット15には塗布液14が漏れ出ることを防止する栓が設けられている(図示せず)。
【0271】
スロット16は、ポケット15からウェッブWへの塗布液14の流路であり、ポケット15と同様にスロットダイ13の幅方向にその断面形状をもち、ウェッブ側に位置する開口部16aは、一般に、図示しない幅規制板のようなものを用いて、概ね塗布幅と同じ長さになるように調整する。このスロット16のスロット先端における、バックアップロール11のウェッブW走行方向の接線とのなす角度は、30°以上90°以下が好ましい。
【0272】
スロット16の開口部16aが位置するスロットダイ13の先端リップ17は先細り状に形成されており、その先端はランドと呼ばれる平坦部18とされている。このランド18であって、スロット16に対してウェッブWの進行方向の上流側(進行方向すなわち図中の矢印方向とは逆側)を上流側リップランド18a、下流側(進行方向側)を下流側リップランド18bと称する。
先端リップ17の形状は上流側に比べて下流側が伸びており(オーバーバイト形状)、その分上流側リップランド18aとウェッブWとの隙間は、下流側リップランド18bとウェッブWとの隙間よりも上述の範囲で大きい。また、下流側リップランドランド18bの長さは、上述の範囲である。
図7(A)を参照して上述した数値限定に関する部位について説明すると、ウェッブの進行方向側(下流側)のランド長さは、図7(A)のILOで示される部分であり、上記オーバーバイトの長さは、図7(A)のLOで示される部分である。
【0273】
次に図7を参照して本発明の反射防止フィルムの製造方法の実施に好適に用いられる塗布装置と従来の塗布装置とを比較して説明する。ここで、図7は、スロットダイ13の断面形状を従来のものと比較して示すもので、(A)は本発明の実施に好適なスロットダイ13を示し、(B)は従来のスロットダイ30を示している。
従来のスロットダイ30では、上流側リップランド31aと下流側リップランド31bのウェッブとの距離は等しい。なお、符号32はポケット、33はスロットを示している。これに対して、本発明の実施に好適なスロットダイ13では、下流側リップランド長さILOが短くされており、これによって、湿潤膜厚が20μm以下の塗布を精度良くおこなうことができる。
【0274】
上流側リップランド18aのランド長さIUPは特に限定はされないが、500μm〜1mmの範囲で好ましく用いられる。下流側リップランド18bのランド長さILOは、30μm以上100μm以下が好ましく、さらに好ましくは30μm以上80μm以下、最も好ましくは30μm以上60μm以下である。下流側リップのランド長さILOが30μm以上であれば、先端リップのエッジあるいはランドが欠けにくく、塗膜へのスジの発生を抑えることができ好ましい。また、下流側の濡れ線位置の設定がしやすい。さらには、塗布液の下流側における広がりを抑えることができ、好ましい。下流側における塗布液の濡れによる広がりは、濡れ線の不均一化を意味し、塗布面上にスジなどの不良形状を招くという問題につながる。一方、下流側リップのランド長さILOが100μm以下であれば、ビード14aを形成することができる。塗布液がビード14aを形成することにより、薄層塗布を行うことができる。
【0275】
さらに、下流側リップランド18bは、上流側リップランド18aよりもウェッブWに近接したオーバーバイト形状であり、このため減圧度を下げることができて薄膜塗布に適したビード形成14aが可能となる。下流側リップランド18bと上流側リップランド18aのウェッブWとの距離の差(以下、オーバーバイト長さLOと称する)は30μm以上120μm以下が好ましく、さらに好ましくは30μm以上100μm以下、もっとも好ましくは30μm以上80μm以下である。スロットダイ13がオーバーバイト形状のとき、先端リップ17とウェッブWの隙間GLとは、下流側リップランド18bとウェッブWの隙間を示す。
【0276】
次に、図8を参照して上記塗布工程全般について説明する。
図8は、本発明の製造方法を実施する塗布工程のスロットダイ13及びその周辺を示す斜視図である。スロットダイ13に対しウェッブWの進行方向側とは反対側(すなわちビード14aより上流側)に、ビード14aに対して十分な減圧調整を行えるよう、接触しない位置に減圧チャンバー40を設置する。減圧チャンバー40は、その作動効率を保持するためのバックプレート40aとサイドプレート40bを備えており、バックプレート40aとウェッブWの間には隙間GB、サイドプレート40bとウェッブWの間には隙間GSが存在する。
減圧チャンバー40とウェッブWとの関係について図9及び図10を参照して説明する。図9及び図10は、近接している減圧チャンバー40とウェッブWを示す断面図である。
サイドプレート40bとバックプレート40aは図9のようにチャンバー40本体と一体のものであってもよいし、例えば、図10のように適宜隙間GBを変えられるようにバ
ックプレート40aをチャンバー40にネジ40cなどで留められている構造でもよい。いかなる構造でも、バックプレート40aとウェッブWの間、サイドプレート40bとウェッブWの間に実際にあいている部分を、それぞれ隙間GB、GSと定義する。減圧チャンバー40のバックプレート40aとウェッブWとの隙間GBとは、減圧チャンバー40を図8のようにウェッブW及びスロットダイ13の下方に設置した場合、バックプレート40aの最上端からウェッブWまでの隙間を示す。
【0277】
バックプレート40aとウェッブWとの隙間GBをスロットダイ13の先端リップ17
とウェッブWとの隙間GL(図7(A)参照)よりも大きくして設置するのが好ましく、
これによりバックアップロール11の偏心に起因するビード近傍の減圧度変化を抑制することができる。例えば、スロットダイ13の先端リップ17とウェッブWとの隙間GL
30μm以上100μm以下のとき、バックプレート40aとウェッブWの間の隙間GB
は100μm以上500μm以下が好ましい。
【0278】
<材質、精度>
前記ウェッブの進行方向側の先端リップのウェッブ走行方向における長さ(図7(A)
に示す下流側リップランド長さILO)は、前述の範囲内とすることが好ましく、また、ILOのスロットダイ幅方向における変動幅を20μm以内とすることが好ましい。この範囲内であれば、かすかな外乱によってもビードが不安定になることがなく、好ましい。
スロットダイの先端リップの材質については、ステンレス鋼などのような材質を用いるとダイ加工の段階でだれてしまうため、好ましくない。ステンレス鋼などの場合、下流側リップランド長さILOを前記の30〜100μmの範囲にしても、先端リップの精度を満足することが困難である。高い加工精度を維持するには、特許第2817053号明細書に記載されているような超硬材質のものを用いることが好ましい。具体的には、スロットダイの少なくとも先端リップを、平均粒径5μm以下の炭化物結晶を結合してなる超硬合金にすることが好ましい。超硬合金としては、タングステンカーバイド(以下、WCと称す)などの炭化物結晶粒子をコバルトなどの結合金属によって結合したものなどがあり、結合金属としては他にチタン、タンタル、ニオブ及びこれらの混合金属を用いることも出来る。WC結晶の平均粒径としては、粒径3μm以下がさらに好ましい。
高精度な塗布の実現には、前記下流側リップランド長さILOが重要であり、さらに隙間GLのスロットダイ幅方向における変動幅を制御することが望ましい。前記バックアップ
ロール11と前記先端リップ17とは、隙間GLのスロットダイ幅方向における変動幅を
制御できる範囲内の真直度を達成することが望ましい。好ましくは、隙間GLのスロット
ダイ幅方向における変動幅が5μm以下になるように先端リップ17とバックアップロール11の真直度とすることである。
【0279】
反射防止フィルムを積層構造とした場合、ゴミ、ほこり等の異物が存在したとき、輝点欠陥が目立ちやすい。本発明における輝点欠陥とは、前記したように目視により、塗膜上の反射で見える欠陥のことで、塗布後の反射防止フィルムの裏面を黒塗りする等の操作により目視で検出できる。目視により見える輝点欠陥は、一般的に50μm以上である。輝点欠陥が多いと製造時の得率が低下し、大面積の反射防止フィルムを製造することができない。
本発明の反射防止フィルムは、輝点欠陥の数が1平方メートル当たり20個以下、好ましくは10個以下、さらに好ましくは5個以下、特に好ましくは1個以下とする。
【0280】
輝点欠陥の少ない反射防止フィルムを作成するためには、高屈折率層用塗布物中の高屈折率超微粒子分散度を精密に制御すること、および塗布液の精密濾過操作が挙げられる。と同時に、反射防止層を形成する各層は上記の塗布部における塗布工程および乾燥室で行われる乾燥工程が高い清浄度の空気雰囲気下で行われ、かつ塗布が行われる前に、フィルム上のゴミ、ほこりが充分に除かれていることが好ましい。塗布工程および乾燥工程の空気清浄度は、米国連邦規格209Eにおける空気清浄度の規格に基づき、クラス10(0.5μm以上の粒子が353個/(立方メートル)以下)以上であることが望ましく、更に好ましくはクラス1(0.5μm以上の粒子が35.5個/(立方メートル)以下)以上であることが望ましい。また、空気清浄度は、塗布−乾燥工程以外の送り出し、巻き取り部等においても高いことがより好ましい。
【0281】
塗布が行われる前工程としての除塵工程に用いられる除塵方法として、特開昭59−150571号公報に記載のフィルム表面に不織布や、ブレード等を押しつける方法、特開平10−309553号公報に記載の清浄度の高い空気を高速で吹き付けて付着物をフィルム表面から剥離させ、近接した吸い込み口で吸引する方法、特開平7−333613号公報に記載される超音波振動する圧縮空気を吹き付けて付着物を剥離させ、吸引する方法(伸興社製、ニューウルトラクリーナー等)等の乾式除塵法が挙げられる。
また、洗浄槽中にフィルムを導入し、超音波振動子により付着物を剥離させる方法、特公昭49−13020号公報に記載されているフィルムに洗浄液を供給したあと、高速空気の吹き付け、吸い込みを行なう方法、特開2001−38306号公報に記載のように、ウェッブを液体でぬらしたロールで連続的に擦った後、擦った面に液体を噴射して洗浄
する方法等の湿式除塵法を用いることができる。このような除塵方法の内、超音波除塵による方法もしくは湿式除塵による方法が、除塵効果の点で特に好ましい。
【0282】
また、このような除塵工程を行う前に、基材フィルム上の静電気を除電しておくことは、除塵効率を上げ、ゴミの付着を抑える点で特に好ましい。このような除電方法としては、コロナ放電式のイオナイザ、UV、軟X線等の光照射式のイオナイザ等を用いることができる。除塵、塗布前後の基材フィルムの帯電圧は、1000V以下が望ましく、好ましくは300V以下、特に好ましくは、100V以下である。
【0283】
<塗布用分散媒>
塗布用分散媒としては、特に限定されない。単独でも2種以上を混合して使用してもよい。好ましい分散媒体は、トルエン、キシレン、スチレン等の芳香族炭化水素類、クロルベンゼン、オルトージクロルベンゼン等の塩化芳香族炭化水素類、モノクロルメタン等のメタン誘導体、モノクロルエタン等のエタン誘導体等を含む塩化脂肪族炭化水素類、メタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、エチルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、エチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、ノルマルヘキサン等の脂肪族炭化水素類、脂肪族または芳香族炭化水素の混合物等が該当する。これら溶媒の中でもケトン類の単独あるいは2種以上の混合により作成される塗布用分散媒が特に好ましい。
【0284】
<濾過>
塗布に用いる塗布液は、塗布前に濾過することが好ましい。濾過のフィルターは、塗布液中の成分が除去されない範囲でできるだけ孔径の小さいものを使うことが好ましい。濾過には絶対濾過精度が0.1〜10μmのフィルターが用いられ、さらには絶対濾過精度が0.1〜5μmであるフィルタを用いることが好ましく用いられる。フィルターの厚さは、0.1〜10mmが好ましく、更には0.2〜2mmが好ましい。その場合、ろ過圧力は1.5MPa以下、より好ましくは1.0MPa以下、更には0.2MPa以下で濾過することが好ましい。
ろ過フィルター部材は、塗布液に影響を及ぼさなければ特に限定されない。具体的には、前記した無機化合物の湿式分散物のろ過部材と同様のものが挙げられる。
また、濾過した塗布液を、塗布直前に超音波分散して、脱泡、分散物の分散保持を補助することも好ましい。
【0285】
<塗布液物性>
本発明の塗布方式は液物性により塗布可能な上限の速度が大きく影響を受けるため、塗布する瞬間の液物性、特に粘度及び表面張力を制御する必要がある。
粘度については2.0[mPa・sec]以下であることが好ましく、更に好ましくは1.5[mPa・sec]以下、最も好ましくは1.0[mPa・sec]以下である。塗布液によってはせん断速度により粘度が変化するものもあるため、上記の値は塗布される瞬間のせん断速度における粘度を示している。塗布液にチキソトロピー剤を添加して、高せん断のかかる塗布時は粘度が低く、塗布液にせん断が殆どかからない乾燥時は粘度が高くなると乾燥時のムラが発生しにくくなり、好ましい。
また、液物性ではないが、ウェッブに塗り付けられる塗布液の量も塗布可能な上限の速度に影響を与える。ウェッブに塗り付けられる塗布液の量は2.0〜5.0[ml/m2
]であることが好ましい。ウェッブに塗り付けられる塗布液の量を増やすと塗布可能な上限の速度が上がるため好ましいが、ウェッブに塗り付けられる塗布液の量を増やしすぎると乾燥にかかる負荷が大きくなるため、液処方・工程条件によって最適なウェッブに塗り付けられる塗布液の量を決めることが好ましい。
表面張力については、15〜36[mN/m]の範囲にあることが好ましい。レベリング剤を添加するなどして表面張力を低下させることは乾燥時のムラが抑止されるため好ましい。表面張力が15[mN/m]以上で、塗布可能な上限の速度の低下を防止できる。17[mN/m]〜32[mN/m]の範囲がより好ましく、19[mN/m]〜26[mN/m]の範囲が更に好ましい。
【0286】
<塗布速度>
上記の様なダイコート法を用いた製造方法は、高速塗布時における膜厚の安定性が高く前計量方式であるために高速塗布時でも安定した膜厚の確保が容易である。前述したようにウエット塗布量が少ない場合(20ml/m2以下)、低塗布量の塗布液に対して、該
塗布方式は高速で膜厚安定性良く塗布が可能である。本発明の反射防止フィルムの製造方法においては、このようなダイコート法を用いた塗布方法が好ましい。ディップコート法は液受け槽中の塗布液振動が不可避であることから、段状のムラが発生しやすく、リバースロールコート法では、塗布に関連するロールの偏芯やたわみにより段状のムラが発生しやすく、さらに、これらの塗布方式は後計量方式であるため、安定した膜厚の確保が困難であるため、膜厚の安定性が高く前計量方式である上記したダイコート法による塗布方法を用いることが好ましい。上記のダイコート法による塗布方法を用い、25m/分以上で塗布することが生産性の面から好ましい。
【0287】
[偏光板]
偏光板は、偏光膜を両面から挟む2枚の保護フィルムで主に構成される。本発明の反射防止フィルムは、偏光膜を両面から挟む2枚の保護フィルムのうち少なくとも1枚に用いることが好ましい。本発明の反射防止フィルムが保護フィルムを兼ねることで、偏光板の製造コストを低減できる。また、本発明の反射防止フィルムを最表層に使用することにより、外光の映り込み等が防止され、耐傷性、防汚性等も優れた偏光板とすることができる。
【0288】
偏光膜としては公知の偏光膜や、偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光膜から切り出された偏光膜を用いてもよい。偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光膜は以下の方法により作成される。
即ち、連続的に供給されるポリマーフィルムの両端を保持手段により保持しつつ張力を付与して延伸した偏光膜で、少なくともフィルム幅方向に1.1〜20.0倍に延伸し、フィルム両端の保持装置の長手方向進行速度差が3%以内であり、フィルム両端を保持する工程の出口におけるフィルムの進行方向と、フィルムの実質延伸方向のなす角が、20〜70゜傾斜するようにフィルム進行方向を、フィルム両端を保持させた状態で屈曲させてなる延伸方法によって製造することができる。特に45°傾斜させたものが生産性の観点から好ましく用いられる。
【0289】
ポリマーフィルムの延伸方法については、特開2002−86554号公報の段落[0020]〜[0030]に詳しい記載がある。
【0290】
本発明の反射防止フィルムは、偏光膜の表面保護フィルムの片側として用いた場合、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等のモードの透過型、反射型、または半透過型の液晶表示装置に好ましく用いることができる。
【0291】
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチド
メイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech.Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
VAモードの液晶セル用には、2軸延伸したトリアセチルセルロースフィルムを本発明の反射防止フィルムと組み合わせて作成した偏光板が好ましく用いられる。2軸延伸したトリアセチルセルロースフィルムの作製方法については、例えば特開2001−249223号公報、特開2003−170492号公報などに記載の方法を用いることが好ましい。
【0292】
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置であり、米国特許第4583825号、同5410422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend)液晶モードとも呼ばれる。ベンド配向モードの液晶表示装置は、応答速度が速いとの利点がある。
【0293】
TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向しており、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。例えば「EL、PDP、LCDディスプレイ」東レリサーチセンター発行(2001)などに記載されている。
【0294】
特にTNモードやIPSモードの液晶表示装置に対しては、特開2001−100043号公報等に記載されているように、視野角拡大効果を有する光学補償フィルムを偏光膜の裏表2枚の保護フィルムの内の本発明の反射防止フィルムとは反対側の面に用いることにより、1枚の偏光板の厚みで反射防止効果と視野角拡大効果を有する偏光板を得ることができ、特に好ましい。
【実施例】
【0295】
[実施例1]
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれによっていささかも限定して解釈されるものではない。
(ハードコート層用塗布液の調製)
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌してハードコート層塗布液とした。
トリメチロールプロパントリアクリレート(ビスコート#295(大阪有機化学(株)製)750.0重量部に、質量平均分子量15000のポリグリシジルメタクリレート270.0質量部、メチルエチルケトン730.0質量部、シクロヘキサノン500.0質量部及び光重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)50.0質量部を添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層用の塗布液を調製した。ポリグリシジルメタクリレートはメチルエチルケトン(MEK)中にグリシジルメタクリレート(東京化成工業製)を溶解させ、熱重合開始剤V−65(和光純薬工業(株)製)を滴下しながら80℃で2時間反応させ、得られた反応溶液をヘキサンに滴下し、沈殿物を減圧乾燥して得た。
【0296】
(二酸化チタン微粒子分散液の調製)
二酸化チタン微粒子としては、コバルトを含有し、かつ水酸化アルミニウムと水酸化ジルコニウムを用いて表面処理を施した二酸化チタン微粒子(MPT−129C、石原産業
(株)製、TiO2:Co34:Al23:ZrO2=90.5:3.0:4.0:0.5重量比)を使用した。
この粒子257.1質量部に、下記分散剤41.1質量部、およびシクロヘキサノン701.8質量部を添加してダイノミルにより分散し、重量平均径70nmの二酸化チタン分散液を調製した。
【0297】
【化76】

【0298】
(中屈折率層用塗布液の調製)
上記の二酸化チタン分散液99.1質量部に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)68.0質量部、光ラジカル発生剤(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)3.6質量部、光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)1.2質量部、メチルエチルケトン279.6質量部およびシクロヘキサノン1049.0質量部を添加して攪拌した。十分に攪拌ののち、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して中屈折率層用塗布液を調製した。
【0299】
(高屈折率層用塗布液の調製)
上記の二酸化チタン分散液469.8質量部に、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)40.0質量部、光ラジカル発生剤(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)3.3質量部、光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)1.1質量部、メチルエチルケトン526.2質量部、およびシクロヘキサノン459.6質量部を添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して高屈折率層用の塗布液を調製した。
【0300】
(低屈折率層用塗布液の調製)
本発明に係る本文記載の共重合体P−3をメチルイソブチルケトンに7質量%の濃度になるように溶解し、末端メタクリレート基含有シリコーン樹脂X−22−164C(信越化学工業(株)製)を固形分に対して3%、前記光ラジカル発生剤(イルガキュア907、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を固形分に対して5質量%(試料No.112のみ10質量%)添加し、低屈折率層用塗布液を調製した。
【0301】
(反射防止フィルム101の作製)
膜厚80μmのトリアセチルセルロースフィルム(TD80UF、富士写真フイルム(株)製)上に、ハードコート層用塗布液をグラビアコーターを用いて塗布した。100℃で乾燥した後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量300mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ8μmのハードコート層を形成した。
ハードコート層の上に、中屈折率層用塗布液、高屈折率層用塗布液、低屈折率層用塗布液を3つの塗布ステーションを有するグラビアコーターを用いて5〜100m/分の速度で連続して塗布した。
【0302】
中屈折率層の乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら180W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度200mW/cm2、照射量200mJ/cm2の照射量とした。
硬化後の中屈折率層は屈折率1.630、膜厚67nmであった。
【0303】
高屈折率層の乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600mW/cm2、照射量400mJ/cm2の照射量とした。
硬化後の高屈折率層は屈折率1.905、膜厚107nmであった。
【0304】
低屈折率層の乾燥条件は90℃、30秒とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気になるように窒素パージ(0.2m3の反応室に1.40m3/分の窒素ガスを使用)しながら240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度200mW/cm2、照射量200mJ/cm2の照射量とした。照射時間は〜1sに設定した。
硬化後の低屈折率層は屈折率1.440、膜厚85nmであった。このようにして、反射防止フィルム101を作製した。
低屈折率層の開始剤の種類および硬化条件を表1の条件に変え、試料102〜113を作製した。開始剤の量は等質量で置き換え、更に添加剤(複数種の場合は質量基準で均等分立分)は該開始剤の質量の1/4分を本文記載の共重合体P−3に置き換えて添加した。窒素ガスの吹きつけは、UV照射室(反応室)直前に連続する前室を設け、膜面に直接不活性ガスがあたるようにノズルの位置を設置した。また前室のウェッブ入り口からは不活性ガスが吹き出るように照射室および前室の排気を調節した。ウェッブ入り口のウェッブの塗布層表面とのギャップは4mmとした。
なお塗布速度を変えた場合の紫外線照射量は、照度を変えることで照射量が一定になるように設定した。
【0305】
【表2】


【0306】
なお、上記例示化合物6等は、本明細書中に既に記載してあるものである。特に例示化合物6について、再度下に記す。
(例示化合物6)
【0307】
【化77】

【0308】
得られたフィルムに対して、以下の項目の評価を行った。その結果を表2に示す。
[鏡面反射率]
分光硬度計V−550(日本分光(株)製)にアダプターARV−474を装着して380〜780nmの波長領域において入射角5度における出射角−5度の鏡面反射率を測定し、450nm〜650nmの平均反射率を算出し、反射防止性を評価した。
[鉛筆硬度]
JIS K 5400に記載の鉛筆硬度評価を行った。反射防止フィルムを温度25℃、湿度60%RHで2時間調湿した後、JIS S 6006に規定するH〜5Hの試験用鉛筆を用いて、500gの荷重にて以下のとおりの判定で評価し、OKとなる最も高い硬度を評価値とした。
n=5の評価において傷なし〜傷1つ :OK
n=5の評価において傷が3つ以上 :NG
【0309】
[スチールウール擦り耐性]
#0000のスチールウールに1.96N/cm2の荷重をかけ30往復したときの傷
の状態を観察して、以下の5段階で評価した。
◎:傷が全くつかなかったもの
○:ほとんど見えない傷が少しついたもの
△:明確に見える傷がついたもの
×:明確に見える傷が顕著についたもの
××:膜の剥離が生じたもの
【0310】
【表3】

【0311】
光重合開始剤に加え、添加助剤を併用し、さらに本発明に係る硬化条件で硬化することにより、反射防止フィルムは十分な反射防止性能を有しながら耐擦傷性にも優れていることがわかる。その効果は光ラジカル発生剤に2種類以上の添加剤を併用した時に特に顕著となることがわかる。更に窒素吹きつけを行うことにより、反応室中の酸素濃度が同じでも耐擦傷性に優れている。
【0312】
[実施例2]
実施例1の試料103、105、108の作製方法において、紫外線照射時のウェッブ温度を上げたことのみ異なる試料114〜122を作製し、同様の評価を行った。
ウェッブの塗布表面の温度は、ウェッブ裏面に接触している金属版の温度を変えることで調整した。
【0313】
【表4】

【0314】
本発明の試料105については、UV照射時の温度を40℃以上にあげることで、さらに優れた耐擦傷性が得られた。又、試料108ではラジカル重合開始剤に2種類の添加助剤を併用することで加熱の有無にかかわらず優れた耐擦傷性が得られた。
【0315】
[実施例3]
実施例1で作製した試料108において、紫外線照射の分割回数および紫外線照射間を窒素置換の有無を変えることにより、表4の試料123〜126を作製した(比較例含む)。これらの試料に対し実施例1と同様の評価を行った。
なお紫外線照射の分割は、総照射量が一定になるように照度を調節した。結果を表5に示す。
紫外線照射を分割し、1回の照度をおとしても紫外線照射間を酸素濃度3体積%以下にすることで耐擦傷性の悪化がなくなり、高速生産適性があることが判った。
【0316】
【表5】

【0317】
【表6】

【0318】
[実施例4]
実施例1〜3において低屈折率層で用いた含フッ素ポリマーを本文記載のP−1、P−2にそれぞれ変え(等質量置き換え)同様の評価を行った結果、実施例1〜3と同様の効果が得られた。
【0319】
[実施例5]
(ハードコート層用塗布液の調製)
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌してハードコート層塗布液とした。
────────────────────────────────────
ハードコート層用塗布液組成
────────────────────────────────────
デソライトZ7404 100質量部
(ジルコニア微粒子含有ハードコート組成液:固形分濃度60wt%、
ジルコニア微粒子含量70wt%対固形分、平均粒子径約20nm、
溶剤組成MIBK:MEK=9:1、JSR(株)製)
DPHA(UV硬化性樹脂:日本化薬(株)製) 31質量部
KBM−5103(シランカップリング剤:信越化学工業(株)製)
10質量部
KE−P150(1.5μmシリカ粒子:日本触媒(株)製)
8.9質量部
MXS−300(3μm架橋PMMA粒子:綜研化学(株)製)
3.4質量部
メチルエチルケトン(MEK) 29質量部
メチルイソブチルケトン(MIBK) 13質量部
────────────────────────────────────
【0320】
(低屈折率層用塗布液の調製)
実施例1と同様の方法により低屈折率層用塗布液を調製した。
【0321】
(反射防止フィルム601の作製)
透明基材(支持体)としてトリアセチルセルロースフィルム(TD80U、富士写真フイルム(株)製)をロール形態で巻き出して、上記のハードコート層用塗布液を線数135本/インチ、深度60μmのグラビアパターンを有する直径50mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、搬送速度10m/分の条件で塗布し、60℃で150秒乾燥の後、さらに窒素パージ下で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量250mJ/c
2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、ハードコート層を形成し、巻き取った。硬化
後、ハードコート層の厚さが3.6μmとなるようにグラビアロール回転数を調整した。
【0322】
上記ハードコート層を塗設した透明基材を再び巻き出して、上記低屈折率層用塗布液を線数200本/インチ、深度30μmのグラビアパターンを有する直径50mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、搬送速度10m/分の条件で塗布し、90℃で30秒乾燥の後、酸素濃度0.1体積%雰囲気下で240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600mW/cm2、照射
量400mJ/cm2の紫外線を照射し、低屈折率層を形成し、巻き取った。硬化後、低
屈折率層の厚さが100nmとなるようにグラビアロール回転数を調整した。尚、照射時間は〜1.0sに設定した。
【0323】
低屈折率層の硬化条件を表6のように変え試料601〜617を作製した。
【0324】
【表7】

【0325】
これら試料に実施例1と同様の評価を行った。結果を表7に示す。
本発明に係る硬化方法により、反射防止性能を保ちつつ、優れた耐擦傷性が得られることがわかる。
【0326】
【表8】

【0327】
[実施例6]
実施例1〜5の低屈折率層を以下の低屈折率層A及びBにそれぞれ変更して、評価を行い、同様な本発明の効果を確認できた。
中空シリカ粒子を用いることで更に耐擦傷性が優れた低反射率の反射防止フィルムを作製することができた。
【0328】
(ゾル液aの調製)
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器、メチルエチルケトン120部、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−5103、信越化学工業(株)製)100部、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート(ケロープEP−12、ホープ製薬(株)製)3部を加え混合したのち、イオン交換水30部を加え、60℃で4時間反応させたのち、室温まで冷却し、ゾル液aを得た。質量平均分子量は1600であり、オリゴマー成分以上の成分のうち、分子量が1000〜20000の成分は100%であった。また、ガスクロマトグラフィー分析から、原料のアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランは全く残存していなかった。
【0329】
(中空シリカ微粒子分散液の調製)
中空シリカ微粒子ゾル(粒子サイズ約40〜50nm、シエル厚6〜8nm、屈折率1.31、固形分濃度20%、主溶媒イソプロピルアルコール、特開2002−79616の調製例4に準じて粒子サイズを変更して作製)500部に、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学(株)製、KBM−5103)30部、およびジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート(ケロープEP−12、ホープ製薬(株)製)1.5部加え混合した後に、イオン交換水を9部を加えた。60℃で8時間反応させた後に室温まで冷却し、アセチルアセトン1.8部を添加し、中空シリカ分散液を得た。得られた中空シリカ分散液の固形分濃度は18質量%、溶剤乾燥後の屈折率は1.31であった
【0330】
(低屈折率層用塗布液Aの調製)
DPHA 3.3g
中空シリカ微粒子分散液 40.0g
RMS−033 0.7g
例示化合物6,1−3,2−1 0.1、0.5、0.5g
ゾル液a 6.2g
メチルエチルケトン 290.6g
シクロヘキサノン 9.0g
【0331】
(低屈折率層用塗布液Bの調製)
DPHA 1.4g
共重合体 P−3 5.6g
中空シリカ微粒子分散液 20.0g
RMS−033 0.7g
例示化合物6,1−3,2−1 0.1、0.5、0.5g
ゾル液a 6.2g
メチルエチルケトン 306.9g
シクロヘキサノン 9.0g
【0332】
それぞれ使用した化合物を以下に示す。
KBM−5103:シランカップリング剤(信越化学工業(株)製)。
DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(日本化薬(株)製)
RMS−033:反応性シリコーン(Gelest(株)製)
【0333】
[実施例7]
実施例5の低屈折率層を以下の低屈折率層C、Dにそれぞれ変更して、評価を行い、同様な本発明の効果を確認できた。また低屈折率層CのオプスターJN7228Aをこれに対して架橋度を高めたJTA113(JSR(株)製)に等重量で置き換えた低屈折率層でも同様の効果が得られた。
(ゾル液aの調製)
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器、メチルエチルケトン120部、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(KBM5103(商品名);信越化学工業社製)100部、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート(ケロープEP−12、ホープ製薬(株)製)3部を加え混合したのち、イオン交換水30部を加え、60℃で4時間反応させたのち、室温まで冷却し、ゾル液aを得た。質量平均分子量は1800であり、
オリゴマー成分以上の成分のうち、分子量が1000〜20000の成分は100%であった。また、ガスクロマトグラフィー分析から、原料のアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランは全く残存していなかった。
【0334】
(低屈折率層用塗布液Cの調製)
熱架橋性含フッ素ポリマーJN−7228
(6%−メチルエチルケトン(MEK)) 50.9g
MEK−ST−L(30.0%/MEK) 5.4g
ゾル液a(29%/MEK) 2.5g
開始剤:例示化合物21(2.0%/MEK) 2.8g
例示化合物1−3 0.5g
例示化合物2−2 0.5g
メチルエチルケトン 38.4g
シクロヘキサノン 2.8g
上記混合添加により低屈折率層用塗布液を調製した。
【0335】
(低屈折率層用塗布液Dの調製)
本発明に記載の共重合体P−43(30%/MEK)
20.1g
MEK−ST−L(30.0%/MEK) 5.4g
ゾル液a(29%/MEK) 2.5g
サイメル303(10.0%/MEK) 5.3g
キャタリスト4050(1.0%/MEK) 5.1g
開始剤:例示化合物21(2.0%/MEK) 2.8g
例示化合物1−3 0.5g
例示化合物2−2 0.5g
メチルエチルケトン 54.6g
シクロヘキサノン 2.8g
上記混合添加により低屈折率層用塗布液を調製した。
【0336】
JN−7228:熱架橋性含フッ素ポリマー(屈折率1.42、固形分濃度6%、JSR(株)製)
JTA−113:熱架橋性含フッ素ポリマー(屈折率1.44、固形分濃度6%、JSR(株)製)
MEK−ST−L:シリカゾル(シリカ、MEK−STの粒子サイズ違い、平均粒径45nm、固形分濃度30%、日産化学(株)製)
「サイメル303」:日本サイテックインダストリーズ(株)製メチロール化メラミン、
「キャタリスト4050」:p-トルエンスルホン酸のトリメチルアンモニウム塩:日本サイテックインダストリーズ(株)製
【0337】
上記低屈折率層用塗布液C、Dを線数200本/インチ、深度30μmのグラビアパターンを有する直径50mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、搬送速度10m/分の条件で塗布し、120℃で150秒乾燥の後、更に110℃で10分間加熱硬化させてから窒素パージ下で240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度200mW/cm2、照射量450mJ/cm2の紫外線を照射し、低屈折率層を形成し、巻き取った。硬化後、低屈折率層の厚さが100nmとなるようにグラビアロール回転数を調整した。
【0338】
[実施例8]
(偏光板用保護フィルムの作製)
1.5 mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を50℃に保温した鹸化液を調整した。さらに、0.005mol/Lの希硫酸水溶液を調製した。
実施例1〜7で作製した本発明に係る反射防止フィルムにおいて、それぞれ本発明の低屈折率層を有する側とは反対側の透明基材(支持体)の表面を、上記鹸化液を用いて鹸化処理した。
鹸化処理した透明基材表面の水酸化ナトリウム水溶液を、水で十分に洗浄した後、上記の希硫酸水溶液で洗浄し、さらに希硫酸水溶液を水で十分に洗浄し、100℃で十分に乾燥させた。
反射防止フィルムの低屈折率層を有する側とは反対側の、鹸化処理した透明基材の表面の水に対する接触角を評価したところ、40度以下であった。このようにして、偏光板用保護フィルムを作製した。
【0339】
(偏光板の作製)
膜厚75μmのポリビニルアルコールフィルム((株)クラレ製)を水1000質量部、ヨウ素7質量部、ヨウ化カリウム105質量部からなる水溶液に5分間浸漬し、ヨウ素を吸着させた。
次いで、このフィルムを4質量%ホウ酸水溶液中で、4.4倍に縦方向に1軸延伸をした後、緊張状態のまま乾燥して偏光膜を作製した。
接着剤としてポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の一方の面に本発明の反射防止フィルム(偏光板用保護フィルム)の鹸化処理したトリアセチルセルロース面を貼り合わせた。さらに、偏光膜のもう片方の面には上記と同様にして鹸化処理したトリアセチルセルロースフィルムを同じポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合わせた。
【0340】
(画像表示装置の評価)
このようにして作製した本発明の偏光板を反射防止フィルムがディスプレイの最表面になるように装着したTN,STN,IPS,VA,OCBのモードの透過型、反射型、又は、半透過型の液晶表示装置は、反射防止性能に優れ、極めて視認性が優れていた。特にVAモードにおいてその効果は顕著であった。
【0341】
[実施例9]
(偏光板の作製)
光学補償層を有する光学補償フィルム(ワイドビューフィルムSA 12B、富士写真フイルム(株)製)において、光学補償層を有する側とは反対側の表面を実施例8と同様の条件で鹸化処理した。
実施例8で作製した偏光膜に、接着剤としてポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の一方の面に、実施例1〜7で作製した本発明に係る反射防止フィルム(偏光板用保護フィルム)の鹸化処理したトリアセチルセルロース面をそれぞれ貼り合わせた。さらに、偏光膜のもう片方の面には鹸化処理した光学補償フィルムのトリアセチルセルロース面を同じポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合わせた。
【0342】
(画像表示装置の評価)
このようにして作製した本発明の偏光板を反射防止フィルムがディスプレイの最表面になるように装着したTN,STN,IPS,VA,OCBのモードの透過型、反射型、又は、半透過型の液晶表示装置は、光学補償フィルムを用いていない偏光板を装着した液晶表示装置よりも明室でのコントラストに優れ、上下左右の視野角が非常に広く、さらに、反射防止性能に優れ、極めて視認性と表示品位が優れていた。
特にVAモードにおいてその効果は顕著であった。
【0343】
[実施例10]
実施例1の反射防止フィルムの作製方法において、低屈折率層の塗布液処方を下記LL−61に変え、下記ダイコーターを用いて25m/minの塗布速度で塗布した。その後90℃で30秒間乾燥した後、酸素濃度が0.1体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600mW/cm2、照射量400mJ/cm2の紫外線を照射し、低屈折率層(屈折率1.45、膜厚83nm)を形成した。このようにして、反射防止フィルム(11―1)を作製した。
さらに低屈折率層塗布液を下記LL−62〜65に変えることで反射防止フィルム(11−2)〜(11−5)を作製した。
【0344】
(ダイコーターの構成)
スロットダイ13は、上流側リップランド長IUPが0.5mm、下流側リップランド長ILOが50μmで,スロット16の開口部のウェッブ走行方向における長さが150μm、スロット16の長さが50mmのものを使用した。上流側リップランド18aとウェッブ12の隙間を、下流側リップランド18bとウェッブ12の隙間よりも50μm長くし(以下、オーバーバイト長さ50μmと称する)、下流側リップランド18bとウェッブ12との隙間GLを50μmに設定した。また、減圧チャンバー40のサイドプレート40bとウェッブ12との隙間GS、及びバックプレート40aとウェッブ12との隙間GBはともに200μmとした。
【0345】
(低屈折率層用塗布液(LL−61)の調製)
下記の含フッ素共重合体をメチルエチルケトンに23.7質量%の濃度になるように溶解した溶液152.4質量部、末端メタクリレート基含有シリコーン樹脂X−22−164C(信越化学(株)製)1.1質量部、光ラジカル発生剤(例示化合物6)1.8質量部、開始助剤1−3を0.9質量部、メチルエチルケトン815.9質量部、およびシクロヘキサノン28.8質量部を添加して攪拌した。孔径0.45μmのPTFE製フィルターで濾過して低屈折率層用塗布液(LL−61)を調製した。該塗布液の粘度は0.61[mPa・sec]、表面張力は24[mN/m]であり、透明支持体に塗り付けられる塗布液の量は2.8[ml/m2]とした。
【0346】
【化78】

【0347】
(低屈折率層用塗布液(LL−62)の調製)
上記の含フッ素共重合体をメチルエチルケトンに23.7質量%の濃度になるように溶解した溶液426.6質量部、末端メタクリレート基含有シリコーン樹脂X−22−164C(信越化学(株)製)3.0質量部、光ラジカル発生剤(例示化合物6)5.1質量部、開始助剤1−3を2.5質量部、開始助剤3−1を2.5質量部、メチルエチルケトン538.6質量部、およびシクロヘキサノン26.7質量部を添加して攪拌した。孔径0.45μmのPTFE製フィルターで濾過して低屈折率層用塗布液(LL−62)を調製した。該塗布液の粘度は1.0[mPa・sec]、表面張力は24[mN/m]であり、透明支持体に塗り付けられる塗布液の量は1.5[ml/m2]とした。
【0348】
(低屈折率層用塗布液(LL−63)の調製)
上記の含フッ素共重合体をメチルエチルケトンに23.7質量%の濃度になるように溶解した溶液213.3質量部、末端メタクリレート基含有シリコーン樹脂X−22−164C(信越化学(株)製)1.5質量部、光ラジカル発生剤(例示化合物6)2.5質量部、開始助剤1−3を1.2質量部、開始助剤3−1を1.2質量部、メチルエチルケトン754.3質量部、およびシクロヘキサノン28.4質量部を添加して攪拌した。孔径0.45μmのPTFE製フィルターで濾過して低屈折率層用塗布液(LL−63)を調製した。該塗布液の粘度は0.76[mPa・sec]、表面張力は24[mN/m]であり、透明支持体に塗り付けられる塗布液の量は2.0[ml/m2]とした。
【0349】
(低屈折率層用塗布液(LL−64)の調製)
上記の含フッ素共重合体をメチルエチルケトンに23.7質量%の濃度になるように溶解した溶液85.3質量部、末端メタクリレート基含有シリコーン樹脂X−22−164C(信越化学(株)製)0.6質量部、光ラジカル発生剤(例示化合物6)1.0質量部、開始助剤5−1を0.5質量部、開始助剤3−1を0.5質量部、開始助剤4−11を0.5質量部、メチルエチルケトン883.7質量部、およびシクロヘキサノン29.3質量部を添加して攪拌した。孔径0.45μmのPTFE製フィルターで濾過して低屈折率層用塗布液(LL−64)を調製した。該塗布液の粘度は0.49[mPa・sec]、表面張力は24[mN/m]であり、透明支持体に塗り付けられる塗布液の量は5.0[ml/m2]とした。
【0350】
(低屈折率層用塗布液(LL−65)の調製)
上記の含フッ素共重合体をメチルエチルケトンに23.7質量%の濃度になるように溶解した溶液71.1質量部、末端メタクリレート基含有シリコーン樹脂X−22−164C(信越化学(株)製)0.5質量部、光ラジカル発生剤(例示化合物6)0.8質量部、開始助剤5−1を0.4質量部、開始助剤3−1を0.4質量部、開始助剤4−11を0.4質量部、メチルエチルケトン898.1質量部、およびシクロヘキサノン29.5質量部を添加して攪拌した。孔径0.45μmのPTFE製フィルターで濾過して低屈折率層用塗布液(LL−65)を調製した。該塗布液の粘度は0.46[mPa・sec]、表面張力は24[mN/m]であり、透明支持体に塗り付けられる塗布液の量は6.0[ml/m2]とした。
低屈折率層用塗布液をLL−61〜LL−65に変えた際の面状を評価した。結果を表8に示す。透明支持体に塗り付けられる塗布液の量が2ml/m2以上では塗布液の塗り
付けが可能であるが、1.5ml/m2では全面均一に塗り付けることが出来ず、反射防
止フィルムを作成することができなかった。また、透明支持体に塗り付けられる塗布液の量が6ml/m2の時は塗り付けは可能であるが、塗布液の量が多いため乾燥が間に合わ
ず、風に起因する縦スジ状のムラが全面に発生した。
【0351】
[反射防止フィルムの評価]
得られた反射防止フィルムについて面状を評価した。また実施例1と同様にして平均反射率を測定した。
(面状)
全層塗布した後のフィルム1m2の裏面をマジックインキで黒塗りした後、塗布面の濃
度の均一性を目視で評価した。
○:濃淡差が目立たない
×:濃淡差が目立つ
得られた反射防止フィルム(11−1)、(11−3)、(11−4)を実施例8、9と同様の手順で表示装置を作成したところ、グラビアコーターで作製した実施例8、9の表示装置よりも色ムラも少なく、高品位であった。
【0352】
【表9】

【0353】
[実施例11]
下流側リップランド長IL0を10μm、30μm、70μm、100μm、120μmにした他は反射防止フィルム(11−1)と同様にして反射防止フィルム(12−1)〜
(12−5)を作製した。結果を表9に示す。下流側リップランド長が30μmから100μmの範囲で面状故障の発生しない反射防止フィルムが得られる。反射防止フィルム(12−1)ではベース長手方向にスジ状のムラが発生し、反射防止フィルム(12−5)では反射防止フィルム(12−1)と同様のスピードではビード14aの形成ができず、塗布不可能であった。塗布速度を半分に落とすことで塗布は可能となったが、ベース長手方向にスジ状のムラが発生した。反射防止フィルム(12−2)〜(12−4)を実施例8、9と同様の手順で表示装置を作成したところ、背景の映りこみが極めて少なく、反射光の色味が著しく低減され、更に表示面内の均一性が確保された表示品位の非常に高い表示装置が得られた。一方、反射防止フィルム(12−1)及び(12−5)で得られた反射防止フィルムを実施例8、9と同様の手順で表示装置を作成すると、表示装置内に色味ムラが視認され、高品位とは言えない。
【0354】
【表10】

【0355】
[実施例12]
ダイコーターのオーバーバイト長さLOを0μm、30μm、70μm、120μm、150μmとした他は、(11−1)と同様に塗布を行い、反射防止フィルム(13−1)〜(13−5)を作成した。結果を表10に示す。オーバーバイト長さが30μmから120μmまでの範囲で面状故障の発生しない反射防止フィルムが得られる。反射防止フィルム(13−1)では塗布は可能であったが、面状を見るとベース幅方向に段状ムラが認められた。また、反射防止フィルム(13−5)では(13−1)と同様のスピードではビード14aの形成ができず、塗布不可能であった。塗布速度を半分に落とすことで塗布は可能となったが、ベース長手方向にスジ状のムラが発生した。反射防止フィルム(13−2)〜(13−4)では実施例8、9と同様の手順で表示装置を作成したところ、背景の映りこみが極めて少なく、反射光の色味が著しく低減され、更に表示面内の均一性が確保された表示品位の非常に高い表示装置が得られた。一方、反射防止フィルム(13−1)及び(13−5)で実施例8、9と同様の手順で表示装置を作成すると、表示装置内に色味ムラが視認され、高品位とは言えない。
【0356】
【表11】



【図面の簡単な説明】
【0357】
【図1】本発明において好ましく用いられる、電離放射線照射反応室及び前室を具備した製造装置を示した模式図である。
【図2】本発明において好ましく用いられる、電離放射線照射反応室及び前室を具備した製造装置のウェッブ入り口面の動作の一例を示した側面図である。
【図3】本発明において好ましく用いられる、電離放射線照射反応室及び前室を具備した製造装置の、前室のウェッブ入り口面の一例を模式的に示した図である。
【図4】図3の前室のウェッブ入り口面の動作を模式的に示した側面図である。
【図5】本発明の反射防止フィルムの反射防止層の塗設及び硬化を行なう装置の一例を示す図である。
【図6】本発明において好ましく用いられるダイコーターの一実施形態を示す概略断面図である。
【図7】(A)図6のダイコーターの拡大図である。(B)従来のスロットダイを示す概略断面図である。
【図8】本発明の製造方法を実施する塗布工程のスロットダイ及びその周辺を示す斜視図である。
【図9】図8の減圧チャンバーとウェッブとの関係を模式的に示す断面図である。
【図10】図8の減圧チャンバーとウェッブとの関係を模式的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0358】
A 送り出しロール
B 巻き取りロール
100,200,300,400 製膜ユニット
101,201,301,401 塗布液塗布工程
102,202,302,402 塗膜乾燥工程
103,203,303,403 塗膜硬化工程
1 反射防止フィルム
2 透明支持体
3 光散乱層
4 低屈折率層
5 透光性粒子
W ウェッブ
10 コーター
11 バックアップロール
13 スロットダイ
14 塗布液
14a ビード形状
14b 塗膜
15 ポケット
16 スロット
16a スロット開口部
17 先端リップ
18 ランド(平坦部)
18a 上流側リップランド
18b 下流側リップランド
UP 上流側リップランド18aのランド長さ
LO 下流側リップランド18bのランド長さ
LO オーバーバイト長さ
L 先端リップ17とウェッブWの隙間
30 スロットダイ
31a 上流側リップランド
31b 下流側リップランド
32 ポケット
33 スロット
40 減圧チャンバー
40a バックプレート
40b サイドプレート
40c ネジ
B バックプレート40aとウェッブWの間の隙間
S サイドプレート40bとウェッブWの間の隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、反射防止層を含む少なくとも1つの層とを有する反射防止フィルムであって、前記少なくとも1つの層の少なくとも1つが、下記一般式(1)〜(5)のいずれかで表される化合物、芳香族オニウム塩、及び有機過酸化物より選択された少なくとも1種以上の化合物を含有し、更にラジカル重合開始剤、及び電離放射線硬化性化合物を含有する組成物を電離放射線照射によって硬化させてなる層であることを特徴とする反射防止フィルム。
【化1】


〔一般式(1)中、R1は、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール
基、又は複素環基を表し、R2は、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、
又はニトロ基を表す。〕
【化2】


〔一般式(2)中、Xは、NR3、酸素原子、硫黄原子、又は炭素原子を表し、R3は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。Aは、N=C−X部分とともに、炭素原子を持つ5員若しくは6員のヘテロ環を形成し、該Aは、単結合若しくは二重結合によりN=C−X部分と結合された、2個若しくは3個の炭素原子、互いに結合する2個の窒素原子、又は1個の炭素原子と結合した1個の窒素原子を表す。上記5員若しくは6員のヘテロ環には、さらに原子や原子団が結合していてもよい。〕
【化3】


〔一般式(3)中、Xは、NR4、酸素原子、硫黄原子、又は炭素原子を表し、R4は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。Dは、酸素原子又は硫黄原子を表す。Aは、N−C−X部分とともに、炭素原子を持つ5員若しくは6員のヘテロ環を形成し、該Aは、単結合若しくは二重結合によりN−C−X部分と結合された、2個若しくは3個の炭素原子、互いに結合する2個の窒素原子、又は1個の炭素原子と結合した1個の窒素原子を表す。上記5員若しくは6員のヘテロ環には、さらに原子や原子団が結合していてもよい。R5、R6は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、又はアリール基を表し、R7
、R8は、それぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基を表す
。R7及びR8は、互いに結合して窒素原子と共に、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン
又はN−置換ピペラジン核を形成していてもよい。〕
【化4】


〔一般式(4)中、Qを有してなる環状基Bは、芳香族環基又は複素環基を表し、置換基を有していてもよい。Qは、窒素原子又は炭素原子を表す。R11は、アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン置換アルキル基、又は置換基を有していてもよい芳香族環基を表す。〕
【化5】


〔一般式(5)中、E1、E2は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、脂肪族基、芳香族基、又は複素環基を表し、E1及びE2は同一でも異なっていてもよい。〕
【請求項2】
前記ラジカル重合開始剤が電離放射線照射により分解してラジカルを発生する化合物であることを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
前記電離放射線硬化性化合物が二個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の反射防止フィルム。
【請求項4】
支持体上に少なくとも反射防止層を有する反射防止フィルムの製造方法であって、下記(1)の工程と、(2)の工程または(3)の工程によって、支持体上に積層される層の少なくとも1層を形成する工程を有することを特徴とする反射防止フィルムの製造方法。(1)連続的に走行する、支持体を含むウェッブ上に、請求項1に記載の一般式(1)〜(5)のいずれかで表される化合物、芳香族オニウム塩、及び有機過酸化物より選択された少なくとも1種以上の化合物を含有し、更にラジカル重合開始剤、及び電離放射線硬化性化合物を含む塗布液を塗布及び乾燥し、塗布層を形成する工程、
(2)前記ウェッブ上の塗布層に、酸素濃度3体積%以下の雰囲気下で電離放射線を0.5秒以上照射することにより、塗布層を硬化する工程。
(3)前記ウェッブ上の塗布層を加熱しながら、酸素濃度3%以下の雰囲気下で電離放射線照射を0.5秒以上照射して塗布層を硬化する工程。
【請求項5】
前記塗布層を形成する工程(1)と、前記工程(2)または(3)との間に、さらに、(4)前記ウェッブ上の塗布層を加熱することにより塗布層を加熱硬化する工程を含む請
求項4に記載の反射防止フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記請求項4または5に記載の製造方法によって製造されたことを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項7】
前記反射防止層が低屈折率層を有し、該低屈折率層が含フッ素ポリマー及び/またはポリシロキサン含有ビニル単量体を含有する塗布液を用いて形成されたことを特徴とする請求項1〜3、6のいずれか一項に記載の反射防止フィルム。
【請求項8】
前記含フッ素ポリマーが、下記一般式1又は一般式2で表わされる熱硬化性および/または電離放射線硬化性の含フッ素ポリマーであることを特徴とする請求項7に記載の反射防止フィルム。
【化6】


〔一般式1中、Lは炭素数1〜10の連結基を表し、mは0または1を表す。Xは水素原子またはメチル基を表す。Aは任意のビニルモノマーの重合単位を表し、単一成分であっても複数の成分で構成されていてもよい。また、シリコーン部位を含んでいても良い。x、y、zはそれぞれの構成成分のモル%を表し、30≦x≦60、5≦y≦70、0≦z≦65を満たす値を表す。〕
【化7】



一般式2においてRは炭素数1〜10のアルキル基、又は一般式1に示すエチレン性不飽和基(−C(=O)C(−X)=CH)を表す。
mは1≦m≦10の整数を表し、nは2≦n≦10の整数を表す。
Bは任意のビニルモノマーから導かれる繰返し単位を表わし、単一組成であっても複数の組成によって構成されていても良い。また、シリコーン部位を含んでいても良い。
x、y、z1およびz2はそれぞれの繰返し単位のmol%を表わし、x及びyは、そ
れぞれ30≦x≦60、0≦y≦70を満たす。z1及びz2は、1≦z1≦65、1≦z2≦65を満たす。ただし、x+y+z1+z2=100である。
【請求項9】
前記ポリシロキサン含有ビニル単量体が、下記一般式Iで表わされることを特徴とする請求項7に記載の反射防止フィルム。
【化8】


一般式Iにおいて、R1、R2は同一であっても異なっていてもよく、水素原子、アルキル基またはアリール基を表す。Pは10〜500の整数を表す。R3、R4、R5は同一で
あっても異なっていてもよく、水素原子または1価の有機基を表し、R6は水素原子また
はメチル基を表す。Lは単結合または2価の連結基を表し、nは0または1を表す。
【請求項10】
前記低屈折率層が中空シリカ微粒子を含有していることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の反射防止フィルム。
【請求項11】
請求項1〜3、6〜10のいずれか一項に記載の反射防止フィルムが、偏光板における2枚の保護フィルムのうちの一方に用いられていることを特徴とする偏光板。
【請求項12】
請求項1〜3、6〜10のいずれか一項に記載の反射防止フィルム、または請求項11に記載の偏光板がディスプレイの最表面に用いられていることを特徴とする画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−285221(P2006−285221A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−59796(P2006−59796)
【出願日】平成18年3月6日(2006.3.6)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】