説明

反射防止フィルム

【課題】基材にPETフィルムを用いても、極めて高い透明性を有し、かつ機械特性に優れ、後加工性の良い高付加価値な性能を有した反射防止フィルムを提供する。
【解決手段】透明基材フィルムの一方の面上に、少なくともハードコート層と反射防止層とを順次積層してなる反射防止フィルムにおいて、前記反射防止層が、高屈折材料層の薄膜と低屈折率層の薄膜とを交互に積層させた4層以上の積層体からなり、前記積層体の最外層の薄膜が低屈折率層の薄膜であり、かつ、(1)透明基材フィルムが、ヘイズが0.5%以下のポリエチレンテレフタレートフィルムであり、(2)ハードコート層が光硬化性樹脂を含有し、その厚みが1.5μm以上4μm以下であり、(3)反射防止層の総厚が100〜300nmであり、(4)反射防止フィルムとしてのヘイズが0.3%以下、全光線透過率が92%以上であり、視感反射率が0.9%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後加工性が良く、透明性が高い反射防止フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
LCDやCRT、プラズマデイスプレイパネル等の光学表示装置においては、太陽光や蛍光灯等の外光の写り込みを防止する反射防止フィルムが使用されることが多い。特に、外光の写り込みが大きい屋外の使用においては、限りなくゼロに近い反射率を有する反射防止フィルムすなわちAR(Anti−Reflection)フィルムが求められている(以下ARフィルムと呼称する)。
【0003】
一般的に、ARフィルムの作製には、数nmレベルの薄膜の多層成膜が可能なドライコーティング技術が用いられる。中でも、スパッタリング法は、蒸着法やイオンプレーティング法、CVD(化学基相成長法)等の他のドライコーティング方法に比べて、膜厚均一性が高く、ピンホール等の欠陥が少ないため、より視認性に優れた薄膜の形成が可能である。また、緻密な膜の形成が可能であることから、機械特性に非常に優れた薄膜の形成が可能である。
【0004】
反射防止フィルムは、液晶表示装置(LCD)用途で使用されることが多く、偏光板の保護フィルムに積層した構成の反射防止層構成が、一般的である。トリアセチルセルロース(TAC)フィルムは、吸湿性の良さおよび非常に透明性が高く複屈折が無いことから、この偏光板の保護フィルムすなわち反射防止フィルムの基材として使用されている。しかし、このTACフィルムを、LCD用途以外で使用する場合、透明性の高さという大きな利点はあるものの、材料成分に依存する、加水分解などによる、変色、腐食等の外観不良が発生しやすく、環境耐久性が悪い問題がある。また、TACフィルムは、鏡面のエンドレスベルトに溶剤ドープを流延成膜し、乾燥後に剥離して巻き取り作製される。そのため、フィルムの両側端には、ブロッキング防止のためのナール加工による厚膜部があり、後工程での加工性が悪い問題がある。さらに、前記した方法で作製されるため、押し出し成形等で作成されるフィルム基材に比較して生産性が低く、LCD用途以外での供給が難しいと言う問題がある。そのため、LCD用途で使用する場合において、TAC以外の基材を使用した、透明性を持ち、更に、後加工性の良い反射防止フィルムの開発が望まれている。
【0005】
TAC以外の基材、特にポリエチレンテレフタレート(PET)を用いた反射防止フィルムは以前より提案されている。例えば、特許文献1には、PETフィルム基材の片面に反射防止膜が形成され、他方の面に易接着層が形成されたフィルムが開示されており、また、特許文献2には、特許文献1のフィルムの前記易接着層の上に剥離可能な保護フィルムが設けられたフィルムが提案されている。しかしながら、PETフィルムを用いても、優れた反射防止性能を付与させるためには、スパッタリング法を用いる必要がある。スパッタリング法では、前記したように、膜厚の均一性が高いため、複数の層を重ねたち密な光学設計に基づいた極めて低い反射率の性能を持った反射防止フィルムを作ることができる。その代償に、プロセスコストが高くなるという欠点がある。そのため、ウェット法で作成した反射防止膜よりも、高性能ではあるが高額な価格設定になる。そのため、TAC等に比べ光学性能で劣るPETフィルム等を基材に使用しても、需要がないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3141129号公報
【特許文献2】特開平9−193328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記した事情を鑑みてなされたもので、基材にポリエチレンテレフタレートフィルムを用いても、極めて高い透明性を有し、かつ機械特性に優れ、後加工性の良い高付加価値な性能を有した反射防止フィルムを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る発明は、透明基材フィルムの一方の面上に、少なくともハードコート層と反射防止層とを順次積層してなる反射防止フィルムにおいて、前記反射防止層が、高屈折材料層の薄膜と低屈折率層の薄膜とを交互に積層させた4層以上の積層体からなり、前記積層体の最外層の薄膜が低屈折率層の薄膜であり、以下の(1)から(4)の条件を全て満たすことを特徴とする反射防止フィルムである。
(1)透明基材フィルムが、ヘイズが0.5%以下のポリエチレンテレフタレートフィルムである。(2)ハードコート層が光硬化性樹脂を含有し、その厚みが1.5μm以上4μm以下である。(3)反射防止層の総厚が100〜300nmである。(4)反射防止フィルムとしてのヘイズが0.3%以下、全光線透過率が92%以上であり、視感反射率が0.9%以下である。
【0009】
また、本発明の請求項2に係る発明は、前記反射防止層の、前記低屈折率層の薄膜が酸化珪素であり、前記高屈折率層の薄膜が酸化ニオブであり、それぞれスパッタリング法を用いたドライコーティング法により積層されていることを特徴とする請求項1に記載する反射防止フィルムである。
【0010】
また、本発明の請求項3に係る発明は、前記スパッタリング法による前記反射防止層の前記薄膜が、圧力が0.1〜0.6Paで積層された薄膜であることを特徴とする請求項2に記載する反射防止フィルムである。
【0011】
また、本発明の請求項4に係る発明は、前記ハードコート層と前記反射防止層との間に、金属単体、2種類以上の金属からなる合金、金属化合物、または、それらの混合物からなる1層以上のプライマー層が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載する反射防止フィルムである。
【0012】
また、本発明の請求項5に係る発明は、前記反射防止層の上に、防汚層が設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載する反射防止フィルムである。
【0013】
また、本発明の請求項6に係る発明は、前記防汚層が、真空蒸着法により成膜されたフッ素化合物であることを特徴とする請求項5に記載する反射防止フィルムである。
【0014】
また、本発明の請求項7に係る発明は、前記反射防止層の上に設けられた前記防汚層表面の純水に対する接触角が100°以上であり、反射防止フィルムとしてのヘイズが0.3%以下であることを特徴とする請求項5または6記載の反射防止フィルムである。
【0015】
また、本発明の請求項8に係る発明は、前記反射防止層の上に設けられた前記防汚層が、該防汚層表面に対してスチールウール#0000を使用し、荷重1.0kg/cm、温度25℃、湿度55%R.H.の環境下で10往復擦っても傷が付かないことを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載する反射防止フィルムである。
【0016】
また、本発明の請求項9に係る発明は、前記ハードコート層が、鉛筆硬度試験において、2Hの鉛筆にて、500g荷重で、5回試験を行った時に、2本以上傷がつかないことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載する反射防止フィルムである。
【0017】
また、本発明の請求項10に係る発明は、前記反射防止フィルムが、直径12mmの丸棒に、前記反射防止層面を外側にして、荷重をかけずに、巻きつけた場合に、目視で確認できるハードコート層のクラックが発生しないことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載する反射防止フィルムである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の反射防止フィルムは、上記した構成であるため、基材にポリエチレンテレフタレートフィルムを用いても、極めて高い透明性を有し、耐擦傷性試験、鉛筆硬度試験などの機械特性に優れ、更に、断裁などの後工程において、クラックが入りにくい、後加工性に優れた反射防止フィルムの作製が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の反射防止フィルムの一実施形態の構成を断面で示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の反射防止フィルムを一実施形態に基づいて以下に説明する。
【0021】
図1は、本発明の反射防止フィルムの一実施形態の構成を断面で示す模式図である。図1において、本発明の反射防止フィルム100は、透明基材フィルム10上に、ハードコート層20、プライマー層30、反射防止層40が順次積層されている。さらに反射防止層40上に防汚層50が積層されている。
【0022】
透明基材フィルム10としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いる。透明基材フィルム10の厚さは、目的の用途に応じて、適宜選択すればよいが、通常70μm以上200μm以下のものを使用する。
【0023】
また、透明基材フィルム10であるPETフィルムには、可塑剤や紫外線吸収剤、劣化防止剤の添加物が含まれてもいてもよいが、高透明なフィルムを選択する必要があるため、粒子形状をした添加物等は光の透過性および光の直進性を低くしてしまい、透明性を下げる原因となるため、あまり好ましくない。できる限り、内部への粒子状の添加物は避ける必要がある。ハンドリング上、易接着層などは、必要となるが、PETの外側に、なるべく表面粗さを抑えた状態で、コーティングする必要がある。また、フィルムの透明度に関しては、ヘイズや光線透過率の値で、決めることが出来る。本発明の反射防止フィルムでは、ヘイズが0.5%以下、全光線透過率が88%以上のPETフィルムを使用する。
【0024】
透明基材フィルム10上に、反射防止層40の機械強度を十分に発揮させるためのハードコート層20を設ける。ハードコート層20としては、電離線や紫外線硬化型の樹脂が使用され、紫外線硬化型のアクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリル酸エステル類、メタクリルアミド等のアクリル系樹脂や有機珪素系樹脂やポリシロキサン樹脂が最適である。これらの材料の中には、硬化性を向上させるために、重合開始剤を添加してもよい。PETフィルムの片面に易接着層を有する場合は、易接着面側にハードコート樹脂を塗工することが好ましい。ヘイズを下げ、更に、ハードコート樹脂とPETフィルムの密着性を上げる効果がある。ハードコート層20の厚みとしては、物理膜厚1.5μm
以上4μm以下とすることが好ましい。ハードコート層20の厚みが1.5μm以下の場合は、機械強度の性能が出にくく、厚みが4μm以上の場合は、フィルムの曲げや引張りなどにより、ハードコート層にクラックが発生しやすく、後加工性が悪くなる。
【0025】
本発明の反射防止フィルムにおいては、反射防止層が極めて薄い薄膜の積層体であるため、反射防止フィルム全体の固さは、下地層であるハードコート層の固さの影響を受けやすい。そのため、できるだけ機械強度が高いハードコート層を選択する必要がある。鉛筆硬度試験において、2H、500g過重で、5回試験を行った時に、2本以上傷がつかないハードコート層を使用する。
【0026】
透明基材フィルム10と接する面とは反対側のハードコート層20の表面に表面処理を施しても良い。このとき、表面処理方法としては、コロナ放電処理や電子ビーム処理、火炎処理、グロー放電処理、大気圧プラズマ処理等の処理が挙げられる。本発明の反射防止フィルムでは、低温プラズマ表面処理を施すのが特に好ましい。低温プラズマ処理を行うことで、親水性の向上や、適度に表面を荒らすことにより、その後に積層する薄膜との密着性を向上させることができる。
【0027】
この後、ハードコート層20に、プライマー層30を設けてもよい。プライマー層30の材料としては、例えば、シリコン、ニッケル、クロム、錫、金、銀、白金、亜鉛、チタン、タングステン、アルミニウム、ジルコニウム、パラジウム等の金属単体、または、これら金属の2種類以上からなる合金、または、これらの酸化物、弗化物、硫化物、窒化物などが挙げられ、これは混合物であってもよい。また、プライマー層30は2層以上の構成であってもよい。
【0028】
プライマー層30は、密着性を向上させるために用いる。その厚みは、透明基材フィルム1の透明性を損なわない程度あればよく、好ましくは、物理膜厚で、1nm以上10nm以下程度である。これらのプライマー層は、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法、化学蒸着(CVD)法などのドライコーティング方法を用いることが好ましい。特に、スパッタリング法が好ましい。
【0029】
反射防止層40としては、波長550nmにおける光の屈折率が1.6未満でかつ波長550nmにおける光の消衰係数が0.5以下の低屈折率透明薄膜層単層からなるものや、波長550nmにおける光の屈折率が1.9以上の高屈折率透明薄膜層、光の屈折率1.6未満の低屈折率透明薄膜層、光の屈折率1.6〜1.9程度の中屈折率透明薄膜層などの屈折率の異なる光学薄膜を積層した複数層からなるものなどが挙げられる。複数層からなる反射防止層は反射率がきわめて低く、反射防止性能が高いため、特に好ましい。複数層からなる反射防止層40としては、基材側より順番に、高屈折率透明薄膜層、低屈折率透明薄膜層、高屈折率透明薄膜層、低屈折率透明薄膜層とを積層した構成のものが挙げられ、積層体の最外層は低屈折率透明薄膜とする。
【0030】
これらの光学薄膜層からなる反射防止層40は、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、蒸着法、イオンプレーティング法、化学蒸着(CVD)法などのドライコーティング方法で形成できる。膜厚均一性が高く、ピンホール等の欠陥が少ないため、視認性に優れ、緻密であり、耐擦傷性などの機械特性に優れた薄膜の形成が可能であるスパッタリング法を用いることが好ましい。中でも、より高い成膜速度と高い放電安定性により高生産性を得ることができることから、中周波領域の電圧印加により成膜を行うデュアル・マグネトロン・スパッタリング(DMS)法が最適である。
【0031】
高屈折率透明薄膜層の材料としては、インジウム、錫、チタン、シリコン、亜鉛、ジルコニウム、ニオブ、マグネシウム、ビスマス、セリウム、タンタル、アルミニウム、ゲル
マニウム、カリウム、アンチモン、ネオジウム、ランタン、トリウム、ハフニウム等の金属、あるいは、これら金属の2種類以上からなる合金、これらの酸化物、弗化物、硫化物、窒化物などが挙げられる。具体的には、酸化チタン、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化セリウム等が挙げられるがこれに限られるものではない。また、複数積層する場合、必ずしも同じ材料を選択する必要はなく、目的にあわせて、適宜選択すればよい。中でも、スパッタリング法を用いる場合は、作成した薄膜のピンホールの少なさから、酸化ニオブが適している。
【0032】
低屈折率透明薄膜層の材料としては、例えば、酸化シリコン、窒化チタン、弗化マグネシウム、弗化バリウム、弗化カルシウム、弗化ハフニウム、弗化ランタン等の材料が、挙げられるがこれに限られるものでなく、更に、複数積層する場合、必ずしも同じ材料を選択する必要なく、目的にあわせて、適宜選択すればよい。特に、光学特性、機械強度、コスト、成膜適正などの面などから、酸化シリコンが最適な材料である。
【0033】
必要に応じて、反射防止層40の上、最表面層に防汚層50を設けても良い。防汚層50は、反応性官能基と結合している珪素原子を2つ以上有するフッ素含有珪素化合物から得られた層である。ここで、反応性官能基とは、反射防止層40の最上層と反応し、結合しうる基を意味する。また防汚層50は、フッ素含有珪素化合物の反応性官能基同士を反応させることにより形成される層である。これにより、表面に汚れが付きにくく、更に、汚れが付いた場合でも拭き取り性能を上げることができる。ここで、防汚層の成膜方法は特に限定されないが、真空蒸着法による成膜方法が好適である。この方法によれば、連続的に成膜した場合、膜厚の均一性良く成膜することが可能である。
【0034】
この際、十分な防汚性能を有するためには、少なくとも、純水に対する接触角が100度以上必要である。これにより、表面の汚れのふき取り性が上がる。更に、摩擦係数も下がるため、より耐擦傷性能も向上することもできる。
【実施例】
【0035】
以下に、本発明の具体的実施例および比較例について説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0036】
<実施例1>
透明基材フィルムとして、ヘイズ0.34%、全光線透過率93.4%、厚さ100μmのPETフィルムを用い、紫外線硬化型アクリル系樹脂を塗布し、乾燥・紫外線硬化させて厚み2μmのハードコート層を設けた。ハードコート層の鉛筆硬度は、2H、500g過重で、5/5であった。次に、ハードコート層表面にグロープラズマ処理を施し、さらに、プライマー層として、スパッタリング法にて、SiO層を、膜厚3nmで成膜した。その後、スパッタリング法にて、0.3Paの成膜圧力条件にて反射防止層の成膜を実施した。層構成は、ハードコート層側からNb/SiO/Nb/SiO、各層の膜厚は、それぞれ15nm/25nm/105nm/85nmとなるように成膜を実施した。
【0037】
<実施例2>
透明基材フィルムとして、ヘイズ0.27%、全光線透過率90.4%、厚さ100μmのPETフィルムを用い、紫外線硬化型アクリル系樹脂を塗布し、乾燥・紫外線硬化させて厚み3μmのハードコート層を設けた。ハードコート層の鉛筆硬度は、2H、500g過重で、4/5であった。次に、ハードコート層表面にグロープラズマ処理を施し、さらに、プライマー層として、スパッタリング法にて、SiO層を、膜厚3nmで成膜した。その後、スパッタリング法にて、0.3Paの成膜圧力条件にて反射防止層の成膜を実施した。層構成および各層の膜厚は、実施例1と同様にした。
【0038】
<実施例3>
透明基材フィルムとして、ヘイズ0.34%、全光線透過率93.4%、厚さ100μmのPETフィルムを用い、紫外線硬化型アクリル系樹脂を塗布し、乾燥・紫外線硬化させて厚み2μmのハードコート層を設けた。ハードコート層の鉛筆硬度は、2H、500g過重で、5/5であった。次に、ハードコート層表面にグロープラズマ処理を施し、さらに、プライマー層として、スパッタリング法にて、SiO層を、膜厚3nmで成膜した。その後、スパッタリング法にて、1.0Paの成膜圧力条件にて反射防止層の成膜を実施した。層構成および各層の膜厚は、実施例1と同様にした。
【0039】
<比較例1>
透明基材フィルムとして、ヘイズ1.0%、全光線透過率89%、厚さ100μmのPETフィルムを用い、紫外線硬化型アクリル系樹脂を塗布し、乾燥・紫外線硬化させて厚み5μmのハードコート層を設けた。ハードコート層の鉛筆硬度は、2H、500g過重で、5/5であった。次に、ハードコート層表面にグロープラズマ処理を施し、さらに、プライマー層として、スパッタリング法にて、SiO層を、膜厚3nmで成膜した。その後、スパッタリング法にて、0.3Paの成膜圧力条件にて反射防止層の成膜を実施した。層構成および各層の膜厚は、実施例1と同様にした。
【0040】
<比較例2>
透明基材フィルムとして、ヘイズ0.34%、全光線透過率93.4%、厚さ100μmのPETフィルムを用い、紫外線硬化型アクリル系樹脂を塗布し、乾燥・紫外線硬化させて厚み6μmのハードコート層を設けた。ハードコート層の鉛筆硬度は、2H、500g過重で、5/5であった。次に、ハードコート層表面にグロープラズマ処理を施し、さらに、プライマー層として、スパッタリング法にて、SiO層を、膜厚3nmで成膜した。その後、スパッタリング法にて、0.3Paの成膜圧力条件にて反射防止層の成膜を実施した。層構成および各層の膜厚は、実施例1と同様にした。
【0041】
<比較例3>
透明基材フィルムとして、ヘイズ0.27%、全光線透過率90.4%、厚さ100μmのPETフィルムを用い、紫外線硬化型アクリル系樹脂を塗布し、乾燥・紫外線硬化させて厚み1μmのハードコート層を設けた。ハードコート層の鉛筆硬度は、2H、500g過重で、2/5であった。次に、ハードコート層表面にグロープラズマ処理を施し、さらに、プライマー層として、スパッタリング法にて、SiO層を、膜厚3nmで成膜した。その後、スパッタリング法にて、0.3Paの成膜圧力条件にて反射防止層の成膜を実施した。層構成および各層の膜厚は、実施例1と同様にした。
【0042】
その後、上記した実施例1〜3、比較例1〜3の反射防止層上に、フルオロアルコキシシランを真空蒸着にて反応成膜し、防汚層の成膜を行った。得られた実施例1〜3、比較例1〜3の反射防止フィルムの、防汚層表面の純水に対する接触角は108°であった。
【0043】
上記した実施例1〜3、比較例1〜3で得られたサンプルを、以下の方法で評価した。その結果を表1に示す。
【表1】

【0044】
[視感反射率測定]
日立製作所製U4000型の分光光度計を用いて、測定を実施した。サンプルの裏面側は艶消し黒塗りスプレーにより裏面からの反射をカットする処理を施し、測定の際には、正反射5°ユニットを使用した。
【0045】
(2)ヘイズおよび全光線透過率測定
ヘイズメーターを用いて、全光線透過率測定を実施した。この際、入射光は、防汚層(反射防止層)側より入射させた。ヘイズ測定に関しては、JIS−K7105に則して、行った。
ここで、ヘイズ(%)=T/T×100(T:全光線透過率、T:拡散透過率)
【0046】
[耐擦傷性試験]
スチールウール#0000を擦傷試験機に固定し、4.9Nおよび9.8Nの荷重をかけて、10往復の擦傷試験を各サンプルの反射防止層に対して行い、サンプルの磨耗状態(傷本数)を目視で観測した。判定基準を以下に示す。
◎:傷無し
○:傷10本未満
×:傷10本以上
【0047】
[鉛筆硬度試験]
鉛筆は2Hを使用し、それぞれの鉛筆に4.9Nの荷重をかけて、5回フィルム上をなぞり、サンプルの磨耗状態(傷本数)を目視で観測した。5回線を引き、傷のない場合は5/5、傷が5本入っている場合は、0/5と表記する。判定基準を以下に示す。
◎:5/5、4/5
○:3/5
△:2/5
×:1/5、0/5
【0048】
[曲げ試験]
直径12mmの丸棒に、サンプルに荷重をかけずに、反射防止層面を外側にして巻きつける。サンプルを棒よりはずした後、目視でクラックの発生を確認した。1サンプルにつき5回行う。判定基準を以下に示す。
◎:5回中5回、クラックが発生しない
○:5回中3〜4回、クラックが発生しない
△:5回中3回以上クラックは発生するが、クラックの本数が10本以内
×:5回中5回クラックが無数に発生
【0049】
<比較結果>
表1に示したように、実施例1、2で作成した反射防止フィルムを用いると、光学特性、機械特性、曲げ特性、全ての性能において、良い結果を得ることができた。これに対し、比較例1〜3で作成した反射防止フィルムに関しては、スパッタリング法による成膜のため、視感反射率はいずれも0.9%以下で、十分な反射防止性能を得ることができたが、しかし、それぞれ何かしらの評価項目において劣る結果となった。ハードコート層が厚い場合(比較例1では5μm、比較例2では6μm)は、曲げ試験でハードコート層にクラックが発生し、ハードコート層が薄い場合(比較例3では1μm)は、耐擦傷性試験および鉛筆硬度試験で表面が傷つく結果となった。また、基材フィルムとしてヘイズが1%のPETフィルムを用いた比較例1では反射防止フィルムとしてのヘイズを0.3%以下にすることが出来なかった。また、1.0Paとやや高い成膜圧力条件にて反射防止層の成膜を実施した実施例3では、耐擦傷性試験の結果が実施例1,2と比べて、やや劣る結果となった。以上のことにより、本発明の反射防止フィルムは、優れた反射防止機能、優れた機械特性、優れた環境耐久性、優れた加工特性を有していることが確認できた。
【符号の説明】
【0050】
10・・・透明基材フィルム 20・・・ハードコート層 30・・・プライマー層
40・・・反射防止層 50・・・防汚層 100・・・本発明の反射防止フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材フィルムの一方の面上に、少なくともハードコート層と反射防止層とを順次積層してなる反射防止フィルムにおいて、
前記反射防止層が、高屈折材料層の薄膜と低屈折率層の薄膜とを交互に積層させた4層以上の積層体からなり、前記積層体の最外層の薄膜が低屈折率層の薄膜であり、以下の(1)から(4)の条件を全て満たすことを特徴とする反射防止フィルム。
(1)透明基材フィルムが、ヘイズが0.5%以下のポリエチレンテレフタレートフィルムである。
(2)ハードコート層が光硬化性樹脂を含有し、その厚みが1.5μm以上4μm以下である。
(3)反射防止層の総厚が100〜300nmである。
(4)反射防止フィルムとしてのヘイズが0.3%以下、全光線透過率が92%以上であり、視感反射率が0.9%以下である。
【請求項2】
前記反射防止層の、前記低屈折率層の薄膜が酸化珪素であり、前記高屈折率層の薄膜が酸化ニオブであり、それぞれスパッタリング法を用いたドライコーティング法により積層されていることを特徴とする請求項1に記載する反射防止フィルム。
【請求項3】
前記スパッタリング法による前記反射防止層の前記薄膜が、圧力が0.1〜0.6Paで積層された薄膜であることを特徴とする請求項2に記載する反射防止フィルム。
【請求項4】
前記ハードコート層と前記反射防止層との間に、金属単体、2種類以上の金属からなる合金、金属化合物、または、それらの混合物からなる1層以上のプライマー層が設けられていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載する反射防止フィルム。
【請求項5】
前記反射防止層の上に、防汚層が設けられていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載する反射防止フィルム。
【請求項6】
前記防汚層が、真空蒸着法により成膜されたフッ素化合物であることを特徴とする請求項5に記載する反射防止フィルム。
【請求項7】
前記反射防止層の上に設けられた前記防汚層表面の純水に対する接触角が100°以上であり、反射防止フィルムとしてのヘイズが0.3%以下であることを特徴とする請求項5または6記載の反射防止フィルム。
【請求項8】
前記反射防止層の上に設けられた前記防汚層が、該防汚層表面に対してスチールウール#0000を使用し、荷重1.0kg/cm、温度25℃、湿度55%R.H.の環境下で10往復擦っても傷が付かないことを特徴とする請求項5から7のいずれか1項に記載する反射防止フィルム。
【請求項9】
前記ハードコート層が、鉛筆硬度試験において、2Hの鉛筆にて、500g荷重で、5回試験を行った時に、2本以上傷がつかないことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載する反射防止フィルム。
【請求項10】
前記反射防止フィルムが、直径12mmの丸棒に、前記反射防止層面を外側にして、荷重をかけずに、巻きつけた場合に、目視で確認できるハードコート層のクラックが発生しないことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載する反射防止フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2010−191144(P2010−191144A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34944(P2009−34944)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】