説明

反射防止フィルム

【課題】透明基材の少なくとも一方の面にハードコート層と、反射防止層をこの順番で積層したフィルムであって、反射防止層中の表面調整剤の局在化を促進し、反射防止層中の低屈折率成分の相対的減少による反射率の上昇をすることなく、耐擦傷性および色ムラに優れた反射防止フィルムを提供する。
【解決手段】透明基材の少なくとも一方の面にハードコート層と、反射防止層を順次積層した反射防止フィルムにおいて、ハードコート層にフッ素含有基とシリコーン骨格の両方もしくはどちらか一方を有する表面調整剤が含まれ、フッ素含有量が0.01〜3atom%の範囲内であり、シリコーン骨格を有するケイ素含有量が0.01〜5atom%の範囲内で含有しており、且つ、反射防止層にフッ素含有基を有する表面調整剤が含まれ、フッ素含有量が0.01〜10atom%の範囲内で含有していることを特徴とする反射防止フィルムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶ディスプレイ(LCD)、CRTディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ(PDP)、表面電解ディスプレイ(SED)などのディスプレイの表面に設けられる反射防止フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
LCDやCRT、プラズマディスプレイ等の光学表示装置においては、室内外での使用を問わず、外光等が入射する環境下で使用される。この外光等の入射光は、ディスプレイ表面等において正反射され、それによる反射像が表示画像と混合することにより、画面表示品質を低下させてしまう。そのため、ディスプレイ表面等に反射防止機能を付与することが多く、反射防止機能の高性能化、反射防止機能以外の機能の複合化が求められている。
【0003】
ディスプレイの中でもLCDはその機構上、パネル表面に偏光板を用いる必要があり、偏光板は一般的にポリビニルアルコール(PVA)が使用される。偏光板(PVA)は強度、耐水性が極めて弱いため、保護フィルムとしてトリアセチルセルロース(TAC)フィルムを使用するのが一般的である。しかしTACフィルムも、その表面が比較的柔軟であることから、表面硬度を付与するために、一般にアクリル多官能化合物の重合体からなるハードコート層を設け、その上に反射防止多層膜を形成するという手法が用いられている。このハードコート層はアクリル樹脂の特性により、高い表面硬度、光沢性、透明性、耐擦傷性を有する。
【0004】
一般に反射防止機能は、透明基材もしくは前記ハードコート層上にそれらより屈折率の低い反射防止層を形成することで得られる。さらに、反射防止性能を向上させるため、透明基材もしくは前記ハードコート層上に金属酸化物等の透明材料からなる高屈折率層と反射防止層の繰り返し構造による多層構造を形成する場合もある。この多層構造からなる反射防止層は、化学蒸着(CVD)法や、物理蒸着(PVD)法といったドライコーティング法により形成することができる。
【0005】
ドライコーティング法を用いて反射防止層を形成するに当たっては、各層の膜厚を精密に制御できるという利点があるが、成膜を真空中で行わなければならないため大型の設備が必要であり、かつ生産性が低く大量生産に適していないという問題を抱えている。一方、反射防止層の形成方法として大面積化、連続生産、低コスト化が可能である塗液を用いたウェットコーティング法を用いた反射防止フィルムの生産が注目されている。
【0006】
このように生産された反射防止フィルムは、近年のLCD−TVの普及、大型化によって大量に用いられるようになったが、同時にさらなる高機能化、高品質化の要求が高まっている。中でも表面への傷つきを防ぐための耐擦傷性の向上、色ムラを目立たなくするという要求は最も大きなものになっている。
【0007】
ここで色ムラとは画面上に見られる反射色の差であり、これは反射防止層の微小な膜厚変動による反射分光スペクトルの変化によるものである。この色ムラを改善するために、反射防止層を形成する塗液にフッ素含有基、シリコーン骨格を有する表面調整剤を添加することが知られている。これらの表面調整剤は反射防止層最表面に局在化し、ウェット状態の塗膜の表面を均一化すると共に反射防止層最表面に滑り性を付与し、耐擦傷性の向上にも効果を発揮する。しかし、表面調整剤の局在化は完全ではないため、耐擦傷性の向上を目的として多量の表面調整剤を添加した場合、反射防止層中の低屈折率成分が相対的に減少してしまうため、反射率の上昇(悪化)を招いてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−102206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記の問題点に鑑み、反射防止層中の表面調整剤の局在化を促進し、反射防止層中の低屈折率成分の相対的減少による反射率の上昇をすることなく、耐擦傷性および色ムラに優れた反射防止フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために請求項1に記載の発明は、透明基材の少なくとも一方の面にハードコート層と、反射防止層を順次積層した反射防止フィルムにおいて、前記ハードコート層にフッ素含有基とシリコーン骨格の両方もしくはどちらか一方を有する表面調整剤が含まれ、フッ素含有量が0.01〜3atom%の範囲内であり、シリコーン骨格を有するケイ素含有量が0.01〜5atom%の範囲内で含有しており、且つ、前記反射防止層にフッ素含有基を有する表面調整剤が含まれ、フッ素含有量が0.01〜10atom%の範囲内で含有していることを特徴とする反射防止フィルムである。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、前記ハードコート層に含まれるフッ素含有基が、パーフルオロアルキル基またはフッ素化アルケニル基を有する化合物であり、シリコーン骨格を有するケイ素含有基が、(化1)に示す構造を有しており、且つ、前記反射防止層に含まれるフッ素含有基が、R´Si(OR)4−z(但し、式中R´はアルキル基、フルオロアルキル基又はフルオロアルキレンオキサイド基を有する非反応性官能基を示し、zは1≦z≦3を満たす整数である)で示されるケイ素アルコキシドの加水分解物を含有していることを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルムである。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1乃至請求項2に記載の反射防止フィルムと、当該反射防止フィルムの反射防止層非形成面に第1の偏光板を備えたことを特徴とする反射防止性偏光板である。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、観察者側から順に、請求項3に記載の反射防止性偏光板と、液晶セル、第2の偏光板、バックライトユニットをこの順に備え、前記反射防止性偏光板の反射防止層非形成面側に液晶セルを保持していることを特徴とする透過型液晶ディスプレイである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、透明基材の少なくとも一方の面にハードコート層と、反射防止層をこの順番で積層したフィルムであって、前記ハードコート層にフッ素含有基とシリコーン骨格の両方、もしくはどちらか一方を含有する表面調整剤が含まれていることで、反射防止層中の表面調整剤の局在化を促進し、反射防止層中の低屈折率成分の相対的減少による反射率の上昇をすることなく、耐擦傷性および色ムラに優れた反射防止フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施例の反射防止フィルムを示す概略断面図である。
【図2】本発明の一実施例の反射防止フィルムを有する偏光板を示す概略断面図である。
【図3】(a)及び(b)は、本発明の一実施例の反射防止フィルムを有する透過型液晶ディスプレイを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ、説明する。実施の形態において、同一構成要素には同一符号を付け、実施の形態の間において重複する説明は省略する。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム(1)を示す概略断面図である。
【0018】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム(1)は、透明基材(11)、ハードコート層(12)、反射防止層(13)を備えており、透明基材(11)上に、ハードコート層(12)およびハードコート層(12)上に反射防止層(13)が積層されている。
【0019】
本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム(1)の透明基材(11)は、種々の有機高分子からなるフィルムまたはシートを用いることができる。例えば、ディスプレイ等の光学部材に通常使用される透明基材(11)が挙げられ、透明性や光の屈折率等の光学特性、さらには耐衝撃性、耐熱性、耐久性などの諸物性を考慮して、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セロファン等のセルロース系、6−ナイロン、6,6−ナイロン等のポリアミド系、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、エチレンビニルアルコール等の有機高分子からなるものが用いられる。上述した透明基材(11)の中でも特にトリアセチルセルロースが好ましい。さらに、これらの有機高分子に添加剤、例えば紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、酸化防止剤、難燃剤等を添加することにより機能を付加させたものを用いることができる。
【0020】
本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム(1)のハードコート層(12)には、ハードコート材料を含有している。ハードコート材料は、透明基材(11)上に形成されるものであり、紫外線硬化型材料、電子線硬化型材料等の電離放射線硬化型材料を用いることができる。
【0021】
紫外線硬化型材料または電子線硬化型材料としては、ハードコート層(12)の表面及び反射防止層(13)の表面の改質を目的として、スチールウールラビング試験による耐擦傷性、鉛筆引っかき試験による表面硬度、粘着テープ剥離試験による密着性、最小曲げ試験によるクラック性等の諸特性について、要求されるスペックを満足させるように樹脂を選択して使用することができる。
【0022】
電離放射線硬化型材料として用いられる光重合性ポリマーとしては、例えばポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリオールアクリレート系等のプレポリマーが挙げられる。これらの光重合性ポリマーは1種を用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0023】
電離放射線硬化型材料として用いられる光重合性モノマーとしては、例えばポリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。特に本発明の実施の形態においては、ハードコート層(12)は、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能性モノマーを主成分とする重合体からなることが好ましい。
【0024】
また、ハードコート材料には必要に応じて光重合開始剤が加えられる。光重合開始剤としては、例えばアセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類等を用いても良い。
【0025】
また、反射防止フィルムに帯電防止機能を付与するため、ハードコート層に導電剤を添加することもできる。導電剤は特に限定されるものではなく、イオン伝導機構を有する4級アンモニウム塩、電子伝導機構を有する金属酸化物微粒子、π共役系導電性高分子等が上げられる。
【0026】
なお、本発明の実施の形態において「(メタ)アクリルモノマー」とは「アクリルモノマー」と「メタクリルモノマー」の両方を示している。
【0027】
本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム(1)においては、ハードコート層(12)の形成用塗液を透明基材(11)上に湿式成膜法により塗布することにより形成することができる。
【0028】
ハードコート層(12)の形成用塗液には、表面硬度の向上を目的としてさらに(メタ)アクリルモノマーもしくはその重合体を加えることができる。
【0029】
(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレートや、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2−ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε−カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等を用いることができる。
【0030】
このとき、ハードコート層(12)の形成用塗液には、必要に応じて、溶媒が加えられる。溶媒を加えることにより、塗工適性を向上させることができる。溶媒としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、n−ヘキサンなどの炭化水素類、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、ジオキサン、ジオキソラン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール及びフェネトール等のエーテル類、また、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、及びメチルシクロヘキサノン等のケトン類、また蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸n−ペンチル、及びγ−プチロラクトン等のエステル類、さらには、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール等のアルコール類、水等の中から塗工適正等を考慮して適宜選択される。
【0031】
ハードコート層(12)の形成用塗液にあっては、本発明の効果を発揮するためにフッ素含有基とシリコーン骨格の両方、もしくはどちらか一方を含有する表面調整剤と呼ばれる添加剤が加えられることを特徴とする。表面調整剤は、その働きに応じて、レベリング剤、消泡剤、界面張力調整剤、表面張力調整剤とも呼ばれるが、いずれも形成される塗膜の表面張力を低下させる働きを備える。この表面調整剤の添加によって、形成される塗膜においてハジキ、ムラといった塗膜欠陥の発生を防止することができる。
【0032】
表面調整剤に含まれるシリコーン骨格を有する化合物としては、シリコーン骨格と有機変性部を分子内に含むシリコーン系表面調整剤を好適に用いることができる。シリコーン骨格を有する化合物は(化1)に示す構造を有しており、シリコーンユニットである(化1)中のn数や有機変性部を変化させることで表面張力を任意にコントロールすることができる。
【0033】
【化1】

【0034】
前記シリコーンユニットである(化1)中のn数や有機変性部を変化させる一例として、(化2)のような構造であり、側鎖を付与することによりシリコーン骨格を変性させることができる。 なお、(化2)の構造におけるRの一例としては、CH、CHCH、(CHCHなどがある。また、Rの一例としては、ポリエーテル、ポリエステル、アラルキルなどがある。また、(化3)のような構造であっても用いることが可能であり、シリコーン鎖は数個のSi−O結合からなり、Rに当たる平均1個のポリエーテル鎖などを有することができる。よって、(化2)及び(化3)いずれにおいても、表面張力のコントロールや、相溶性の調整を任意におこなうことができる。
【0035】
【化2】

【0036】
【化3】

【0037】
また、表面調整剤に含まれるフッ素を有する化合物としては、パーフルオロアルキル基またはフッ素化アルケニル基を有する化合物を用いることができる。パーフルオロアルキル基は−C2n+1(n=自然数)の構造を有し、疎水・疎油基として機能する。そのため、剛直で曲がりにくく、表面に整然と配列する特徴を持つため、少量で表面を覆う表面調整剤として機能することができる。このとき、親油基と組み合わせることで、さらに表面調整剤としての効果を増加させることが可能となる。また、パーフルオロアルケニル基は分子内にC=C結合を有しているため、表面に配列する際に嵩高いためパーフルオロアルキル基に比べ密度が低下する。そのため、パーフルオロ基が持つリコート性阻害を抑えることができる。
【0038】
前記表面調整剤の添加に際しては、表面張力を任意にコントロールや相溶性の調整をすること、またリコート性阻害を抑えるなどの特性を得るためには、以下の含有量が好ましい。
【0039】
フッ素含有基を有する表面調整剤の添加によるハードコート層(12)に含まれるフッ素含有量が0.01〜3atom%、またはシリコーン骨格を有する表面調整剤の添加によるケイ素含有量が0.01〜5atom%の範囲内であることが好ましく、フッ素含有量およびケイ素含有量が0.01atom%未満の場合、反射防止層に含有される表面調整剤の局在化が促進されないため、耐擦傷性の向上を目的として多量の表面調整剤を添加した場合、反射防止層中の低屈折率成分が相対的に減少してしまうため、反射率の上昇(悪化)を招いてしまう。
【0040】
また、ハードコート層(12)に含まれるフッ素含有量が3atom%以上、かつケイ素含有量が5atom%以上であると、ハードコート層(12)中に含まれる表面調整剤が最適量を超えてしまうため、反射防止層(13)の形成用塗液をハードコート層(12)上に湿式成膜法により塗布する際にハジキ、ムラが発生するか、ハードコート層(12)と反射防止層(13)の層間密着力が発現せず、簡単に反射防止層(13)が剥離してしまう不具合が発生する。
【0041】
ハードコート層(12)の形成用塗液においては、塗液中に先に述べた表面調整剤のほかにも、他の添加剤を加えても良い。機能性添加剤としては、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、密着性向上剤、硬化剤などを用いることができる。
【0042】
上述した材料を調整して得られるハードコート層(12)の形成用塗液を湿式成膜法により透明基材(11)上に塗布し、塗膜を形成し、ハードコート層(12)を形成することができる。電離放射線硬化型材料を用いた場合にあっては、必要に応じて塗膜の乾燥を行ったあとに、電離放射線である紫外線もしくは電子線を照射することにより、ハードコート層(12)が形成される。また、バインダマトリックス形成材料として熱乾燥型材料を用いた場合にあっては、乾燥、加熱等によりハードコート層(12)が形成される。
【0043】
このとき、湿式成膜法としては、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーターを用いた塗布方法を用いることができる。
【0044】
次に具体的な反射防止層形成の一実施例を説明する。
【0045】
反射防止層(13)として、低屈折率粒子とバインダマトリックス形成材料とを含む低屈折率層の形成塗液をハードコート層(12)の表面に塗布し、湿式成膜法を用いる場合について述べる。このとき反射防止層(13)である低屈折率層の単層の膜厚(d)は、その膜厚(d)に低屈折率層の屈折率(n)をかけることによって得られる光学膜厚(nd)が可視光の波長の1/4と等しくなるように設計される。低屈折率層としてはバインダマトリックス中に低屈折粒子を分散させたものを用いることができる。ここで、反射防止層(13)を低屈折率層という場合もある。
【0046】
低屈折粒子としては、LiF、MgF、3NaF・AlFまたはAlF(いずれも、屈折率1.4)、または、NaAlF(氷晶石、屈折率1.33)等の低屈折材料からなる低屈折率粒子を用いることができるが、よりよい反射防止性能(低屈折率)を得るためには、粒子内部に空隙を有する粒子を好適に用いることができる。粒子内部に空隙を有する粒子にあっては、空隙の部分を空気の屈折率(≒1)とすることができるため、非常に低い屈折率を備える低屈折率粒子とすることができる。具体的には、多孔質シリカ粒子、内部に空隙を有する低屈折率シリカ粒子を用いることができる。
【0047】
反射防止層に用いられる低屈折率粒子としては、粒径が1nm以上100nm以下であることが好ましい。さらに好ましくは、粒径が30nm以上70nm以下である。粒径が100nmを超える場合、レイリー散乱によって光が著しく反射され、反射防止層が白化して低透湿度反射防止フィルムの透明性が低下する傾向にある。一方、粒径が1nm未満の場合、粒子の凝集による反射防止層における粒子の不均一性等の問題が生じる。
【0048】
バインダマトリックス形成材料としては、ケイ素アルコキシドの加水分解物を用いることができる。さらには、一般式(A)、RSi(OR)4−x(但し、式中Rはアルキル基を示し、xは0≦x≦3を満たす整数である。)で示されるケイ素アルコキシドの加水分解物を用いることができる。
【0049】
一般式(A)で表されるケイ素アルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−iso−プロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラペンタエトキシシラン、テトラペンタ−iso−プロポキシシラン、テトラペンタ−n−プロキシシラン、テトラペンタ−n−ブトキシシラン、テトラペンタ−sec−ブトキシシラン、テトラペンタ−tert−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメチルプロポキシシラン、ジメチルブトキシシラン、メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン等を用いることができる。ケイ素アルコキシドの加水分解物は、一般式(A)で示される金属アルコキシドを原料として得られるものであればよく、例えば塩酸にて加水分解することで得られるものである。
【0050】
さらには、反射防止層のバインダマトリックス形成材料としては、一般式(A)で表されるケイ素アルコキシドに、一般式(B)、R´Si(OR)4−z(但し、式中R´はアルキル基、フルオロアルキル基又はフルオロアルキレンオキサイド基を有する非反応性官能基を示し、zは1≦z≦3を満たす整数である。)で示されるケイ素アルコキシドの加水分解物をさらに含有することにより低透湿度反射防止フィルム(1)の反射防止層(低屈折率層)(13)の表面に防汚性を付与することができ、さらに、低屈折率層の屈折率をさらに低下することができる。
【0051】
一般式(B)で示されるケイ素アルコキシドとしては、例えば、オクタデシルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0052】
また、バインダマトリックス形成材料として、電離放射線硬化型材料を用いることもできる。電離放射線硬化型材料としては、ハードコート材料として例示した光重合性ポリマー、光重合性モノマーを使用でき、多官能ウレタンアクリレート等の多官能アクリレートを使用することができる。またこれらの他にも、電離放射線型材料として、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができる。
【0053】
なお、反射防止層の形成溶塗液には、必要に応じて、溶媒や各種添加剤を加えることができる。溶媒としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、n−ヘキサンなどの炭化水素類、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、ジオキサン、ジオキソラン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール及びフェネトール等のエーテル類、また、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、及びメチルシクロヘキサノン等のケトン類、また蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸n−ペンチル、及びγ−プチロラクトン等のエステル類、さらには、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、水等の中から塗工適正等を考慮して適宜選択される。また、塗液には添加剤として、表面調整剤、屈折率調整剤、密着性向上剤、光増感剤等を加えることも可能であり、本発明はフッ素含有基を有する表面調整剤が含まれていることが特徴である。
【0054】
表面調整剤の添加により、反射防止層中のフッ素含有量が0.01〜10atom%であることが好ましい。フッ素含有量が0.01atom%以下である場合、十分な表面調整剤の効果が現れず、色ムラの悪化および耐擦傷性の悪化が見られる。フッ素含有量が10atom%以上である場合、反射防止層中の表面調整剤含有量が最適値を超えてしまい、反射防止層表面に油状に浮き上がってしまう不具合や、反射防止層中の低屈折率剤が相対的に減少してしまうため、反射率の上昇(悪化)を招いてしまう。
【0055】
バインダマトリックス形成材料として電離放射線硬化型材料を用い、紫外線を照射することにより反射防止層を形成する場合には、塗液に光重合開始剤が加えられる。光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類等が挙げられる。
【0056】
以上の材料を調整して得られる反射防止層の形成用塗液を湿式成膜法によりハードコート層(12)上に塗布し、塗膜を形成し、反射防止層(低屈折率層)(13)を形成することができる。バインダマトリックス形成材料として電離放射線硬化型材料を用いた場合にあっては、必要に応じて塗膜の乾燥を行ったあとに、電離放射線である紫外線もしくは電子線を照射することにより、低屈折率層が形成される。また、バインダマトリックス形成材料として金属アルコキシドを用いた場合には、乾燥、加熱等により低屈折率層が形成される。
【0057】
前記反射防止層の形成用塗液においては、湿式成膜法を用いることができ、湿式成膜法としては、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーターを用いた塗布方法を用いることができる。また、同じ湿式成膜法を用いることにより、ハードコート層形成と反射防止層形成を連続的に形成することが可能である。
【0058】
ハードコート層(12)および反射防止層(13)に含有する表面調整剤に起因するフッ素およびケイ素含有量は、XPSなどの表面解析装置を使用することで簡便に求めることができる。
【0059】
XPSとはX線電子分光分析装置のことを示し、試料にエネルギー(hν)のX線を照射すると、光電効果により元素内の内核電子が放出される。この時の光電子の運動エネルギー(Ek)は、一般式(3)Ek=hν−Eb−φで表される。ここでEbは内核電子のエネルギーレベルであり、これは元素固有の値であり、その元素の化学状態によって変化する。φは装置や試料の仕事関数である。また、固体内で電子がエネルギーを保持したまま通過できる距離は数十Å程度である。
【0060】
したがって、試料表面から放出された光電子のEkとその数量を測定することによって、試料表面から数十Åの深さまでに存在する元素の種類、含有量、および化学状態を分析することができる。
【0061】
図2は、本発明の実施の形態に係る反射防止フィルム(1)を有する第1の偏光板(2)を示す概略断面図である。
【0062】
本発明の実施の形態に係る第1の偏光板(2)は、透明基材(11)の反射防止層(13)の形成面と反対側の面に偏光層(23)と透明基材(21)を順に備えている。
【0063】
図3に本発明の防眩フィルムを用いた透過型液晶ディスプレイを示した。図3(a)の透過型液晶ディスプレイにおいては、反射防止フィルム(1)を、一方の面に貼り合わせた第1の偏光板(2)を反射防止層非形成面に備えた反射防止性偏光板(200)、液晶セル(3)、第2の偏光板(4)、バックライトユニット(5)をこの順に備えている。このとき、反射防止フィルム(1)側が観察側すなわちディスプレイ表面となる。
【0064】
図3(a)にあっては、反射防止フィルム(1)の透明基材(11)と第1の偏光板(2)の透明基材を別々に備える透過型液晶ディスプレイとなっている。
【0065】
バックライトユニット(5)は、光源と光拡散板を備える。液晶セル(3)は、一方の透明基材に電極が設けられ、もう一方の透明基材に電極及びカラーフィルタを備えており、両電極間に液晶が封入された構造となっている。液晶セル(3)を挟むように設けられる第1、第2の偏光板にあっては、透明基材(21、22、41、42)間に偏光層(23、43)を挟持した構造となっている。
【0066】
また、図3(b)にあっては、透明基材(11)の一方の面に反射防止層(13)を備えた反射防止フィルム(1)と、当該反射防止フィルムの反射防止層非形成面に、偏光層(23)、透明基材(22)を順に備えて、反射防止性偏光板(210)を形成し、反射防止性偏光板(210)、液晶セル(3)、第2の偏光板(4)、バックライトユニット(5)をこの順に備えている。このとき、反射防止フィルム(1)の反射防止層(13)側が観察側すなわちディスプレイ表面となる。
【0067】
図3(b)にあっては、反射防止フィルムの反射防止層非形成面に、第1の偏光板として、偏光層(23)と透明基材(22)をこの順に備えた反射防止性偏光板(210)を備えた透過型液晶ディスプレイとなっている。
【0068】
図3(a)と同様に、バックライトユニット(5)は、光源と光拡散板を備える。液晶セルは、一方の透明基材に電極が設けられ、もう一方の透明基材に電極及びカラーフィルタを備えており、両電極間に液晶が封入された構造となっている。液晶セル(3)を挟むように設けられる第1、第2の偏光板にあっては、透明基材(11、22、41、42)間に偏光層(23、43)を挟持した構造となっている。
【0069】
また、本発明の透過型液晶ディスプレイにあっては、他の機能性部材を備えても良い。他の機能性部材としては、例えば、バックライトから発せられる光を有効に使うための、拡散フィルム、プリズムシート、輝度向上フィルムや、液晶セルや偏光板の位相差を補償するための位相差フィルムが挙げられるが、本発明の透過型液晶ディスプレイはこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0070】
以下にハードコート層の形成用塗液の調整例を示す。
【0071】
(ハードコート層の形成用塗液1)
ウレタンアクリレート 100重量部 に対して、
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 50重量部
・ペンタエリスリトールトリアクリレート 50重量部
・光重合開始剤
(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、イルガキュア184) 10重量部
・アルキルポリエーテル変性シリコーンオイル
(GE東芝シリコーン社製、TSF4460) 0.2重量部
を用いて、メチルエチルケトンに溶解してハードコート層の形成用塗液1を調整した。
【0072】
(ハードコート層の形成用塗液2)
ウレタンアクリレート 100重量部 に対して、
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 50重量部
・ペンタエリスリトールトリアクリレート 50重量部
・光重合開始剤
(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、イルガキュア184) 10重量部
・パーフルオロアルキル基・親水性基・親油性基含有オリゴマー
(DIC社製、メガファックF−470) 0.2重量部
を用いて、メチルエチルケトンに溶解してハードコート層の形成用塗液2を調整した。
【0073】
(ハードコート層の形成用塗液3)
ウレタンアクリレート 100重量部 に対して、
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 50重量部
・ペンタエリスリトールトリアクリレート 50重量部
・光重合開始剤
(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、イルガキュア184) 10重量部
・アルキルポリエーテル変性シリコーンオイル
(GE東芝シリコーン社製、TSF4460) 0.2重量部
・パーフルオロアルキル基・親水性基・親油性基含有オリゴマー
(DIC社製、メガファックF−470) 0.2重量部
を用いて、メチルエチルケトンに溶解してハードコート層の形成用塗液3を調整した。
【0074】
(ハードコート層の形成用塗液4)
ウレタンアクリレート 100重量部 に対して、
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 50重量部
・ペンタエリスリトールトリアクリレート 50重量部
・光重合開始剤
(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、イルガキュア184) 10重量部
・アルキルポリエーテル変性シリコーンオイル
(GE東芝シリコーン社製、TSF4460) 1重量部
を用いて、メチルエチルケトンに溶解してハードコート層の形成用塗液4を調整した。
【0075】
(ハードコート層の形成用塗液5)
ウレタンアクリレート 100重量部 に対して、
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 50重量部
・ペンタエリスリトールトリアクリレート 50重量部
・光重合開始剤
(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、イルガキュア184) 10重量部
・パーフルオロアルキル基・親水性基・親油性基含有オリゴマー
(DIC社製、メガファックF−470) 1重量部
を用いて、メチルエチルケトンに溶解してハードコート層の形成用塗液5を調整した。
【0076】
(ハードコート層の形成用塗液6)
ウレタンアクリレート 100重量部 に対して、
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 50重量部
・ペンタエリスリトールトリアクリレート 50重量部
・光重合開始剤
(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、イルガキュア184) 10重量部
・アルキルポリエーテル変性シリコーンオイル
(GE東芝シリコーン社製、TSF4460) 1重量部
・パーフルオロアルキル基・親水性基・親油性基含有オリゴマー
(DIC社製、メガファックF−470) 1重量部
を用いて、メチルエチルケトンに溶解してハードコート層の形成用塗液6を調整した。
【0077】
(ハードコート層の形成用塗液7)
ウレタンアクリレート 100重量部 に対して、
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 50重量部
・ペンタエリスリトールトリアクリレート 50重量部
・光重合開始剤
(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、イルガキュア184) 10重量部
を用いて、メチルエチルケトンに溶解してハードコート層の形成用塗液7を調整した。
【0078】
次に、反射防止層の形成用塗液の調整例を示す。
【0079】
(反射防止層の形成用塗液1)
・多孔質シリカ微粒子分散液(平均粒子径50nm、固形分20%、溶剤:メチルイソブチルケトン) 14.94重量部
・EO変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(日本化薬社製、DPEA−12) 1.99重量部
・光重合開始剤
(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、イルガキュア184) 0.07重量部
・パーフルオロアルキル基・親水性基・親油性基含有オリゴマー
(DIC社製、メガファックF−470) 0.20重量部
を用いて、溶媒であるメチルイソブチルケトン82重量部で希釈して反射防止層の形成用塗液1を調整した。
【0080】
(反射防止層の形成用塗液2)
・多孔質シリカ微粒子分散液(平均粒子径50nm、固形分20%、溶剤:メチルイソブチルケトン) 14.94重量部
・EO変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(日本化薬社製、DPEA−12) 1.99重量部
・光重合開始剤
(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、イルガキュア184) 0.07重量部
・パーフルオロアルキル基・親水性基・親油性基含有オリゴマー
(DIC社製、メガファックF−470) 1.99重量部
を用いて、溶媒であるメチルイソブチルケトン82重量部で希釈して反射防止層の形成用塗液2を調整した。
【0081】
(反射防止層の形成用塗液3)
・多孔質シリカ微粒子分散液(平均粒子径50nm、固形分20%、溶剤:メチルイソブチルケトン) 14.94重量部
・EO変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(日本化薬社製、DPEA−12) 1.99重量部
・光重合開始剤
(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、イルガキュア184) 0.07重量部
を用いて、溶媒であるメチルイソブチルケトン82重量部で希釈して反射防止層の形成用塗液3を調整した。
【0082】
前記ハードコート層の形成用塗液の調整例及び反射防止層の形成用塗液の調整例で示した、それぞれの塗液を用いて、以下に説明する実施例1〜実施例3及び比較例1〜比較例7の反射防止フィルムを形成した。
【0083】
(実施例1)
(ハードコート層の形成)
まず、図1に示すように、透明基材(11)には、膜厚80μmのトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム製)を用いた。次に、透明基材(11)上にハードコート層の形成用塗液1を塗布し、60℃・60秒オーブンで乾燥し、乾燥後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン、光源Hバルブ)を用いて照射線量300mJ/mで紫外線照射を行うことにより乾燥膜厚5μmの透明なハードコート層(12)を形成した。
【0084】
(反射防止層の形成)
前記ハードコート層上に反射防止層の形成用塗液1を塗布し、60℃・60秒オーブンで乾燥し、乾燥後、窒素雰囲気下にて紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン、光源Hバルブ)を用いて照射線量300mJ/mで紫外線照射を行うことにより乾燥膜厚0.1μmの反射防止層を形成することで、反射防止フィルム(1)を得た。
【0085】
(実施例2)
ハードコート層の形成用塗液2を使用した以外は、(実施例1)と同様に形成し、反射防止フィルムを得た。
【0086】
(実施例3)
ハードコート層の形成用塗液3を使用した以外は、(実施例1)と同様に形成し、反射防止フィルムを得た。
【0087】
(比較例1)
ハードコート層の形成用塗液4を使用した以外は、(実施例1)と同様に形成し、反射防止フィルムを得た。
【0088】
(比較例2)
ハードコート層の形成用塗液5を使用した以外は、(実施例1)と同様に形成し、反射防止フィルムを得た。
【0089】
(比較例3)
ハードコート層の形成用塗液6を使用した以外は、(実施例1)と同様に形成し、反射防止フィルムを得た。
【0090】
(比較例4)
ハードコート層の形成用塗液7を使用した以外は、(実施例1)と同様に形成し、反射防止フィルムを得た。
【0091】
(比較例5)
反射防止層の形成用塗液2を使用した以外は、(実施例1)と同様に形成し、反射防止フィルムを得た。
【0092】
(比較例6)
ハードコート層の形成用塗液3を使用し、反射防止層の形成用塗液2を使用した以外は、(実施例1)と同様に形成し、反射防止フィルムを得た。
【0093】
(比較例7)
ハードコート層の形成用塗液3を使用し、反射防止層の形成用塗液3を使用した以外は、(実施例1)と同様に形成し、反射防止フィルムを得た。
【0094】
前記(実施例1)〜(実施例3)、(比較例1)〜(比較例7)で得られた反射防止フィルムついて、以下の方法で評価を行った。
【0095】
(平均視感反射率)
得られた反射防止フィルムの反射防止層表面について、自動分光光度計(日立製作所製、U−4000)を用い、入射角5°における分光反射率を測定した。また、得られた分光反射率曲線から平均視感反射率を求めた。なお、測定の際には透明基材であるトリアセチルセルロースフィルムのうち反射防止層の形成されていない面につや消し黒色塗料を塗布し、反射防止の処置をおこなった。その結果を(表1)に示す。
【0096】
(耐擦傷性)
スチールウール「ボンスター#0000」(日本スチールウール製)により荷重200g/cm、500g/cmで各10回擦り、傷の有無を目視判定した。その結果を(表1)に示す。また、判定基準を下記に示す。
○:傷を確認することが出来ない。
△:僅かに傷を確認できる。
×:明確に傷を確認できる。
【0097】
(色ムラ)
得られた反射防止フィルムのうち反射防止層の形成されていない面につや消し黒色塗料を塗布し、反射防止の処置をおこなった上で、3波長蛍光灯下で色ムラの観察を行った。その結果を(表1)に示す。また、判定基準を下記に示す。
○:色ムラが見られない
△:僅かに色ムラが見られる
×:明確に色ムラが見られる
【0098】
(フッ素およびケイ素含有量)
得られた反射防止フィルムの反射防止層およびハードコート層について、JEOL製X線電子分光分析装置JSP−90SXVを用いてフッ素およびケイ素含有率を測定した。その結果を(表1)に示す。
【0099】
【表1】

【0100】
(表1)に示すように、(実施例1)〜(実施例3)では平均視感反射率、耐擦傷性、色ムラ全てに優れた反射防止フィルムが得られている。
【符号の説明】
【0101】
1 反射防止フィルム
11 透明基材
12 ハードコート層
13 反射防止層
2 第1の偏光板
21 透明基材
22 透明基材
23 偏光層
200 反射防止性偏光板
210 反射防止性偏光板
3 液晶セル
4 第2の偏光板
41 透明基材
42 透明基材
43 偏光層
5 バックライトユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材の少なくとも一方の面にハードコート層と、反射防止層を順次積層した反射防止フィルムにおいて、
前記ハードコート層にフッ素含有基とシリコーン骨格の両方もしくはどちらか一方を有する表面調整剤が含まれ、フッ素含有量が0.01〜3atom%の範囲内であり、シリコーン骨格を有するケイ素含有量が0.01〜5atom%の範囲内で含有しており、
且つ、前記反射防止層にフッ素含有基を有する表面調整剤が含まれ、フッ素含有量が0.01〜10atom%の範囲内で含有していることを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項2】
前記ハードコート層に含まれるフッ素含有基が、パーフルオロアルキル基またはフッ素化アルケニル基を有する化合物であり、シリコーン骨格を有するケイ素含有基が、(化1)に示す構造を有しており、且つ、前記反射防止層に含まれるフッ素含有基が、R´Si(OR)4−z(但し、式中R´はアルキル基、フルオロアルキル基又はフルオロアルキレンオキサイド基を有する非反応性官能基を示し、zは1≦z≦3を満たす整数である)で示されるケイ素アルコキシドの加水分解物を含有していることを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
請求項1乃至請求項2に記載の反射防止フィルムと、当該反射防止フィルムの反射防止層非形成面に第1の偏光板を備えたことを特徴とする反射防止性偏光板。
【請求項4】
観察者側から順に、請求項3に記載の反射防止性偏光板と、液晶セル、第2の偏光板、バックライトユニットをこの順に備え、前記反射防止性偏光板の反射防止層非形成面側に液晶セルを保持していることを特徴とする透過型液晶ディスプレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−221332(P2011−221332A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91219(P2010−91219)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】