説明

反射防止層を有するノルボルネン系樹脂フィルムおよびその用途

【課題】本発明は、効率的に製造でき、クラック発生が充分に抑制され、波長板用途に有用な反射防止膜として好適に使用できる、反射防止層を有するノルボルネン系樹脂フィルムを提供することを課題としている。
【解決手段】本発明の反射防止層を有するノルボルネン系樹脂フィルムは、ノルボルネン系重合体を含む基材フィルムの両面に、隣接する層同士の屈折率が異なる3層以上の反射防止能を有する層が積層されてなる反射防止層を有し、該反射防止能を有する層がUV硬化性材料を用いて形成されてなることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止膜として有用な、反射防止層を有するノルボルネン系樹脂フィルムおよびその用途に関する。詳しくは、本発明は、ノルボルネン系重合体の両面に多層からなる反射防止層を具備したフィルム、それを有する光ピックアップモジュール用波長板、ならびに該波長板を有する光ピックアップモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルム上に反射防止層の形成された反射防止膜は、液晶表示パネル、フィルム型液晶素子、タッチパネル、冷陰極線管パネル、プラズマディスプレー等の各種表示素子において、外光の映りこみを防止して画質を向上させるために広く利用されている。特に液晶表示パネルでは、反射防止膜は、偏光板と張り合わせた状態で液晶ユニット上に設けられている。
【0003】
反射防止膜の反射防止層は、通常、基材となるフィルム上に、金属酸化物などを蒸着させて形成されている(特許文献1、2参照)。しかしながら、蒸着による反射防止層の製造は、生産性に劣るという問題があった。また、蒸着で形成された反射防止層は、熱履歴などにより基材フィルムが収縮を生じた場合には、反射防止層にクラックが発生しやすいという問題があり、改善が求められていた。
【0004】
本願出願人は、蒸着以外の方法で反射防止層を得る技術として、粒子を含有する硬化性樹脂組成物を用いて、耐擦傷性に優れた反射防止膜を製造することを提案している(特許文献3参照)。しかしながら、各種表示素子などに用いる反射防止膜としては、より高度な光学性能および耐熱性が求められており、また、さらに生産性よく製造できる反射防止膜が求められていた。
【特許文献1】特開平5−135115号公報
【特許文献2】特開平8−110406号公報
【特許文献3】特開2005−89536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、効率的に製造でき、クラック発生が充分に抑制され、波長板用途に有用な反射防止膜として好適に使用できる、反射防止層を有するノルボルネン系樹脂フィルムを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の反射防止層を有するノルボルネン系樹脂フィルムは、ノルボルネン系重合体を含む基材フィルムの両面に、隣接する層同士の屈折率が異なる3層以上の反射防止能を有する層が積層されてなる反射防止層を有し、該反射防止能を有する層がUV硬化性材料を用いて形成されてなることを特徴としている。
【0007】
このような本発明の反射防止層を有するノルボルネン系樹脂フィルムは、基材フィルムの両面に近い方からn番目の反射防止能を有する層同士の屈折率が、互いに等しいことが好ましい。
【0008】
本発明の反射防止層を有するノルボルネン系樹脂フィルムは、基材フィルムが延伸フィルムであることが好ましい。
本発明の反射防止層を有するノルボルネン系樹脂フィルムは、基材フィルムの波長55
0nmにおける面内位相差が80〜850nmであることが好ましい。
【0009】
本発明の反射防止層を有するノルボルネン系樹脂フィルムは、ノルボルネン系重合体が、下記式(I)で表される少なくとも1種の化合物を含む単量体を(共)重合して得られた樹脂であることが好ましい。
【0010】
【化1】

〔式(I)中、R1〜R4は、各々独立に水素原子;ハロゲン原子;酸素、窒素、イオウまたはケイ素を含む連結基を有していてもよい置換または非置換の炭素原子数1〜15の炭化水素基、極性基もしくはその他の1価の有機基を表す。あるいはR1とR2もしくはR3とR4が相互に結合してアルキリデン基を形成していてもよく、R1とR2、R3とR4またはR2とR3とが相互に結合して炭素環または複素環(これらの炭素環または複素環は単環構造でもよいし、他の環が縮合して多環構造を形成してもよい。)を形成してもよい。形成される炭素環または複素環は芳香環でもよいし非芳香環でもよい。また、xは0または1〜3の整数であり、yは0または1である。〕。
【0011】
本発明の反射防止層を有するノルボルネン系樹脂フィルムは、少なくとも1層の反射防止能を有する層が、波長589nmにおける屈折率が1.4以下である低屈折率層であり、中空シリカ超微粒子を含有することが好ましい。
【0012】
本発明の反射防止層を有するノルボルネン系樹脂フィルムは、少なくとも1層の反射防止能を有する層が、波長589nmにおける屈折率が1.7以上である高屈折率層であり、ジルコニア、チタニア、五酸化タンタル、五酸化ニオブよりなる群から選ばれる1種以上の超微粒子を含有することが好ましい。
【0013】
本発明の反射防止層を有するノルボルネン系樹脂フィルムは、波長589nmにおける屈折率が1.4以下である低屈折率層と、波長589nmにおける屈折率が1.7以上である高屈折率層とが隣接して積層されてなる反射防止層を有することが好ましい。
【0014】
本発明の反射防止層を有するノルボルネン系樹脂フィルムは、基材フィルムと反射防止層の間に、層状粘土化合物を含有するガスバリア層を有することが好ましい。
本発明の反射防止層を有するノルボルネン系樹脂フィルムは、反射防止能を有する層が、ディップコート法により形成されてなることが好ましい。
【0015】
本発明の反射防止層を有するノルボルネン系樹脂フィルムの製造方法は、前記本発明の反射防止層を有するノルボルネン系樹脂フィルムを製造する方法であって、ディップコート法により反射防止能を有する層を形成する工程を含むことを特徴としている。
【0016】
本発明の光ピックアップモジュール用波長板は、前記本発明の反射防止層を有するノル
ボルネン系樹脂フィルムを有することを特徴としている。また本発明の光ピックアップモジュールは、前記本発明の光ピックアップモジュール用波長板を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、反射防止能に優れ、耐熱性に優れるとともに、優れた生産性で製造でき、波長板等の用途に有用な、反射防止層を有するノルボルネン系樹脂フィルム、および該フィルムを用いた光ピックアップモジュール用波長板ならびに光ピックアップモジュールを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明の反射防止層を有するノルボルネン系樹脂フィルム(以下、反射防止膜ともいう)は、ノルボルネン系重合体を含む基材フィルムの両面に、3層以上の反射防止能を有する層が積層されてなる反射防止層を有する。
【0019】
基材フィルム
本発明の反射防止膜を構成する基材フィルムは、ノルボルネン系重合体を含む。
ノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン骨格を有する化合物を含む単量体を(共)重合し、必要に応じて水素添加した重合体を制限なく用いることができ、さらにその重合体を変性したものや官能基などで修飾したものも用いることができる。
【0020】
本発明においては、ノルボルネン系重合体が、下記式(I)で表される少なくとも1種の化合物(以下、「特定単量体(I)」ともいう)を含む単量体を(共)重合して得られた樹脂であることが好ましい。
【0021】
【化2】

〔式(I)中、R1〜R4は、各々独立に水素原子;ハロゲン原子;酸素、窒素、イオウまたはケイ素を含む連結基を有していてもよい置換または非置換の炭素原子数1〜15の炭化水素基、極性基もしくはその他の1価の有機基を表す。あるいはR1とR2もしくはR3とR4が相互に結合してアルキリデン基を形成していてもよく、R1とR2、R3とR4またはR2とR3とが相互に結合して炭素環または複素環(これらの炭素環または複素環は単環構造でもよいし、他の環が縮合して多環構造を形成してもよい。)を形成してもよい。形成される炭素環または複素環は芳香環でもよいし非芳香環でもよい。また、xは0または1〜3の整数であり、yは0または1である。〕
前記特定単量体(I)を含む単量体を(共)重合して得られた樹脂としては、好ましくは、次のような(共)重合体が挙げられる。
(1)前記特定単量体(I)の開環重合体。
(2)前記特定単量体(I)と共重合性単量体との開環共重合体。
(3)上記(1)又は(2)の開環(共)重合体の水素添加物。
【0022】
特定単量体(I)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
特定単量体(I)のうち好ましいのは、上記式(I)中、R1 及びR3が水素原子又は炭素数1〜10、さらに好ましくは1〜4、特に好ましくは1〜2の炭化水素基であり、R2 及びR4 が水素原子又は一価の有機基であって、R2 及びR4の少なくとも一つは水素原子及び炭化水素基以外の極性を有する極性基を示し、xは0または1〜3の整数であり、yは0または1である。特定単量体(I)は、得られるノルボルネン系重合体のガラス転移温度が高く、かつ機械的強度も優れたものとなる点で好ましい。
【0023】
特定単量体の極性基としては、カルボキシル基、水酸基、アルコキシカルボニル基、アリロキシカルボニル基、アミノ基、アミド基、シアノ基などが挙げられ、これら極性基はメチレン基などの連結基を介して結合していてもよい。また、カルボニル基、エーテル基、シリルエーテル基、チオエーテル基、イミノ基など極性を有する2価の有機基が連結基となって結合している炭化水素基なども極性基として挙げられる。これらの中では、カルボキシル基、水酸基、アルコキシカルボニル基又はアリロキシカルボニル基が好ましく、特にアルコキシカルボニル基又はアリロキシカルボニル基が好ましい。
【0024】
さらに、R2及びR4の少なくとも一つが式−(CH2nCOORで表される極性基である単量体は、得られるノルボルネン系重合体が高いガラス転移温度と低い吸湿性、各種材料との優れた密着性を有するものとなる点で好ましい。上記の特定の極性基にかかる式において、Rは炭素原子数1〜12、さらに好ましくは1〜4、特に好ましくは1〜2の炭化水素基、好ましくはアルキル基である。また、nは、通常、0〜5であるが、nの値が小さいものほど、得られるノルボルネン系重合体のガラス転移温度が高くなるので好ましく、さらにnが0である特定単量体(I)はその合成が容易である点で好ましい。
【0025】
また、上記式(I)においてR1又はR3がアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜4のアルキル基、さらに好ましくは1〜2のアルキル基、特にメチル基であることが好ましく、特に、このアルキル基が上記の式−(CH2nCOORで表される特定の極性基が結合した炭素原子と同一の炭素原子に結合されていることが、得られるノルボルネン系重合体の吸湿性を低くできる点で好ましい。
【0026】
<共重合性単量体>
共重合性単量体の具体例としては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、ジシクロペンタジエンなどのシクロオレフィンを挙げることができる。シクロオレフィンの炭素数としては、4〜20が好ましく、さらに好ましいのは5〜12である。これらは、単独で又は2種以上を併用することができる。
特定単量体/共重合性単量体の好ましい使用範囲は、重量比で100/0〜50/50であり、さらに好ましくは100/0〜60/40である。
【0027】
<開環重合触媒>
本発明において、(1)特定単量体(I)の開環重合体、及び(2)特定単量体(I)と共重合性単量体との開環共重合体を得るための開環重合反応は、メタセシス触媒の存在下に行われる。
【0028】
このメタセシス触媒は、(a)W、Mo及びReの化合物から選ばれた少なくとも1種と、(b)デミングの周期律表IA族元素(例えばLi、Na、Kなど)、IIA族元素(例えば、Mg、Caなど)、IIB族元素(例えば、Zn、Cd、Hgなど)、IIIA族元素(例えば、B、Alなど)、IVA族元素(例えば、Si、Sn、Pbなど)、あるいはIVB族元素(例えば、Ti、Zrなど)の化合物であって、少なくとも1つの該元素−炭
素結合あるいは該元素−水素結合を有するものから選ばれた少なくとも1種との組合せからなる触媒である。また、この場合に触媒の活性を高めるために、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類などの添加剤が添加されたものであってもよい。
【0029】
<重合反応用溶媒>
開環重合反応において用いられる溶媒(分子量調節剤溶液を構成する溶媒、特定単量体及び/又はメタセシス触媒の溶媒)としては、アルカン類、シクロアルカン類、芳香族炭化水素、ハロゲン化アルカン、ハロゲン化アリール、飽和カルボン酸エステル類、エーテル類などを挙げることができ、これらは単独であるいは混合して用いることができる。これらのうち、芳香族炭化水素が好ましい。
【0030】
溶媒の使用量としては、「溶媒:特定単量体(重量比)」が、通常、1:1〜10:1となる量、好ましくは1:1〜5:1となる量とすることができる。
<分子量調節剤>
得られる開環(共)重合体の分子量の調節は、重合温度、触媒の種類、溶媒の種類によっても行うことができるが、本発明においては、分子量調節剤を反応系に共存させることにより調節することが好ましい。
【0031】
(2)開環共重合体を得るには、開環重合工程において、特定単量体と共重合性単量体とを開環共重合させてもよいが、さらに、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどの共役ジエン化合物、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−非共役ジエン共重合体、ポリノルボルネンなどの主鎖に炭素−炭素間二重結合を2つ以上含む不飽和炭化水素系ポリマーなどの存在下に特定単量体を開環重合させてもよい。
【0032】
以上のようにして得られる開環(共)重合体は、そのままでも用いることができるが、この(共)重合体の分子中のオレフィン性不飽和結合を水素添加して得られた(3)水素添加(共)重合体は耐熱着色性や耐光性に優れ、位相差フィルムの耐久性を向上させることができるので好ましい。
【0033】
<水素添加触媒>
水素添加反応は、通常のオレフィン性不飽和結合を水素添加する方法が適用できる。すなわち、開環重合体の溶液に水素添加触媒を添加し、これに常圧〜300気圧、好ましくは3〜200気圧の水素ガスを0〜200℃、好ましくは20〜180℃で作用させることによって行われる。
【0034】
水素添加触媒としては、通常のオレフィン性化合物の水素添加反応に用いられるものを使用することができる。この水素添加触媒としては、不均一系触媒及び均一系触媒が挙げられる。
【0035】
水素添加(共)重合体の水素添加率は、500MHz、1H−NMRで測定した値が50%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上である。水素添加率が高いほど、熱や光に対する安定性が優れたものとなり、本発明の透明フィルムとして使用した場合に長期にわたって安定した特性を得ることができる。
【0036】
上記のようにして得られた開環(共)重合体には、公知の酸化防止剤、紫外線吸収剤などの添加剤を添加することによって安定化することができる。また、加工性を向上させる目的で、滑剤などの添加剤を添加することもできる。
【0037】
なお、本発明において用いられるノルボルネン系重合体として使用される水素添加(共)重合体は、当該水素添加(共)重合体中に含まれるゲル含有量が5重量%以下であるこ
とが好ましく、さらに1重量%以下であることが特に好ましい。
【0038】
本発明において用いられるノルボルネン系重合体の好ましい分子量は、固有粘度〔η〕inh で0.2〜5dl/g、さらに好ましくは0.3〜3dl/g、特に好ましくは0.4〜1.5dl/gであり、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)で測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は8,000〜100,000、さらに好ましくは10,000〜80,000、特に好ましくは12,000〜50,000であり、重量平均分子量(Mw)は20,000〜300,000、さらに好ましくは30,000〜250,000、特に好ましくは40,000〜200,000の範囲のものが好適である。
【0039】
固有粘度〔η〕inh、数平均分子量及び重量平均分子量が上記範囲にあることによって、ノルボルネン系重合体の耐熱性、耐水性、耐薬品性、機械的特性と、本発明の防眩フィルムとして使用したときの光学特性の安定性とのバランスが良好となる。
【0040】
本発明において用いられるノルボルネン系重合体のガラス転移温度(Tg)としては、通常、120℃以上、好ましくは120〜350℃、さらに好ましくは130〜250℃、特に好ましくは140〜200℃である。得られるノルボルネン系重合体フィルムの光学特性変化を安定にし、延伸加工など、Tg近辺まで加熱して加工する場合の樹脂の熱劣化を防止し、且つ光ピックアップモジュールにて使用する際の環境変化に対して位相差変化を十分に抑制するためである。
【0041】
また、光弾性係数(CP)は、好ましくは0〜100(×10-12Pa-1)、さらに好ましくは0〜80(×10-12Pa-1)、特に好ましくは0〜50(×10-12Pa-1)、より好ましくは0〜30(×10-12Pa-1)、最も好ましくは0〜20(×10-12Pa-1)である。反射防止層を積層した時に発生する応力、光ピックアップモジュールに固定した時に発生する応力、使用する際の環境変化などによって発生する応力による位相差変化を最小限に止めるためである。
【0042】
本発明において用いられるノルボルネン系重合体は、上記のような(1)〜(2)開環(共)重合体、または(3)開環(共)重合体の水素添加物より構成されるが、これに公知の酸化防止剤、紫外線吸収剤などを添加してさらに安定化することができる。また、加工性を向上させるために、滑剤などの従来の樹脂加工において用いられる添加剤を添加することもできる。
【0043】
本発明において用いられるノルボルネン系重合体は、公知の酸化防止剤あるいは紫外線吸収剤などを添加することによって安定化されていてもよい。また、加工性を向上させる目的で、滑剤などの添加剤が添加されていてもよい。
【0044】
本発明で用いる基材フィルムは、上述したノルボルネン系重合体を含む。本発明で用いる基材フィルムとしては、上記の環状オレフィン系樹脂を溶融成形法あるいは溶液流延法(溶剤キャスト法)など、公知の方法によりフィルムもしくはシート状に成形したものを用いることができる。このうち、膜厚の均一性及び表面平滑性が良好になる点から溶剤キャスト法が好ましい。また、製造コスト面からは溶融成形法が好ましい。
【0045】
本発明で用いる基材フィルム、すなわちノルボルネン系重合体フィルムの厚さは、通常は1〜500μm、好ましくは1〜300μm、さらに好ましくは10〜250μm、特に好ましくは50〜200μmである。良好なハンドリングを確保するとともに、ロール状への巻き取りを容易にするためである。
【0046】
本発明で用いる基材フィルム(ノルボルネン系重合体フィルム)の厚み分布は、通常は
平均値に対して±20%以内、好ましくは±10%以内、さらに好ましくは±5%以内、特に好ましくは±3%以内である。
【0047】
本発明で用いる基材フィルムとしては、具体的には、たとえばJSR(株)製、商品名「アートン」等が挙げられる。
本発明の反射防止膜に使用される基材フィルムとしては、必要に応じて延伸加工したものが好適に使用される。具体的には、公知の一軸延伸法あるいは二軸延伸法により製造することができる。すなわち、テンター法による横一軸延伸法、ロール間圧縮延伸法、周遠の異なるロールを利用する縦一軸延伸法などあるいは横一軸と縦一軸を組み合わせた二軸延伸法、インフレーション法による延伸法などを用いることができる。
【0048】
本発明で用いる基材フィルムは、位相差フィルムとしての機能を有するフィルムであることも好ましく、この場合、基材フィルムの波長550nmにおける面内位相差が、80〜850nm、好ましくは100〜400nm、より好ましくは100〜200nmであることが望ましい。
【0049】
反射防止層
本発明の反射防止膜を構成する反射防止層は、隣接する層同士の屈折率が異なる3層以上の反射防止能を有する層が積層されてなるものであって、前記基材フィルムの両面に形成される。好ましくは、本発明の反射防止膜は、上記基材フィルムの両面に、基材フィルムを挟んで対称に形成された、3層以上の反射防止能を有する層が積層されてなる反射防止層を有する。すなわち本発明の反射防止膜では、基材フィルムの両面に形成された反射防止層が、反射防止能を有する3層以上の層からなり、基材フィルムの両面に近い方からn番目の反射防止能を有する層同士の屈折率が、互いに等しいことが好ましい。
【0050】
反射防止層は、UV(紫外線)硬化性材料、好ましくは無機微粒子を含むUV硬化性材料を用いて、ディップコート法により形成されるのが望ましい。ディップコート法により反射防止層を形成する場合には、表裏対称な反射防止層が簡便に得られるため好ましい。
【0051】
反射防止層は、反射防止能を有する層として、低屈折率層および高屈折率層の少なくとも一方を有することが好ましく、低屈折率層と高屈折率層とを有することがより好ましく、低屈折率層と高屈折率層とを交互に有することが好ましい。本発明に係る反射防止層は、
中屈折率層を有していてもよい。
【0052】
・低屈折率層
本発明の反射防止膜を構成する低屈折率層は、低屈折率材料により形成される層であり、好ましくは波長589nmにおける屈折率が1.45以下、好ましくは1.4以下、より好ましくは1.38〜1.25である。
【0053】
低屈折率層を形成するUV硬化性材料としては、例えば、水酸基含有含フッ素重合体を含むフッ素樹脂系塗料、イソシアネート基含有不飽和化合物と水酸基含有含フッ素重合体とを反応させて得られる不飽和基含有含フッ素ビニル重合体を含む塗料用組成物等、ディップコート法での塗布が可能な、低屈折率層を形成しうる公知の材料をいずれも用いることができるが、好ましくは、下記成分(A)、(B)および(C)を必須成分として含み、さらに任意成分として下記成分(D)、(E)、(F)を含み得るUV硬化性樹脂組成物が挙げられる。
(A)エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体
(B)少なくとも2個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する多官能(メタ)アクリレート化合物及び/又は少なくとも1個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する含フッ素
(メタ)アクリレート化合物
(C)シリカを主成分とする粒子
(D)活性エネルギー線の照射により活性種を発生する化合物
(E)有機溶媒
(F)その他の添加剤
これらの成分について以下説明する。
【0054】
(A)エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体
エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体は、1個のイソシアネート基と、少なくとも1個のエチレン性不飽和基とを含有する化合物と、水酸基含有含フッ素重合体とをイソシアネート基/水酸基のモル比が1.1〜1.9の割合で反応させて得られる。
(A1)1個のイソシアネート基と、少なくとも1個のエチレン性不飽和基とを含有する化合物
1個のイソシアネート基と、少なくとも1個のエチレン性不飽和基とを含有する化合物としては、分子内に、1個のイソシアネート基と、少なくとも1個のエチレン性不飽和基を含有している化合物であれば特に制限されるものではない。
【0055】
また、上記エチレン性不飽和基として、後述する硬化性樹脂組成物をより容易に硬化させることができることから、(メタ)アクリロイル基を有する化合物がより好ましい。
このような化合物としては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネートの一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
(A2)水酸基含有含フッ素重合体
水酸基含有含フッ素重合体は、好ましくは、下記構造単位(a)、(b)及び(c)を含んでなる。
(a)下記式(1)で表される構造単位。
(b)下記式(2)で表される構造単位。
(c)下記式(3)で表される構造単位。
【0056】
【化3】

[式(1)中、R1はフッ素原子、フルオロアルキル基又は−OR2で表される基(R2はアルキル基又はフルオロアルキル基を示す)を示す]
【0057】
【化4】

[式(2)中、R3は水素原子又はメチル基を、R4はアルキル基、−(CH2)x−OR5若しくは−OCOR5で表される基(R5はアルキル基又はグリシジル基を、xは0又は1の
数を示す)、カルボキシル基又はアルコキシカルボニル基を示す]
【0058】
【化5】

[式(3)中、R6は水素原子又はメチル基を、R7は水素原子又はヒドロキシアルキル基を、vは0又は1の数を示す]
上記水酸基含有含フッ素重合体は、硬化後の塗膜の表面滑り性や塗膜の耐擦傷性を付与するためにポリシロキサンセグメントを有するアゾ基含有ポリシロキサン化合物により導入される構造単位、水酸基含有含フッ素重合体の溶剤への溶解性が向上させるために乳化作用を有する構造単位を含んで構成することも好ましい。
【0059】
水酸基含有含フッ素重合体は、さらに下記構造単位(d)を含んで構成することも好ましい。
(d)下記式(4)で表される構造単位。
【0060】
【化6】

[式(4)中、R18は乳化作用を有する基を示す]
式(4)において、R18の乳化作用を有する基としては、疎水性基及び親水性基の双方を有し、かつ、親水性基がポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等のポリエーテル構造である基が好ましい。
【0061】
このような乳化作用を有する基の例としては下記式(5)で表される基が挙げられる。
【0062】
【化7】

[式(5)中、nは1〜20の数、mは0〜4の数、uは3〜50の数を示す]
構造単位(d)は、反応性乳化剤を重合成分として用いることにより導入することができる。このような反応性乳化剤としては、下記式(6)で表される化合物が挙げられる。
【0063】
【化8】

[式(6)中、n、m及びuは、上記式(5)と同様である]
水酸基含有含フッ素重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで、テトラヒドロフランを溶剤として測定したポリスチレン換算数平均分子量が通常5,000〜500,000、好ましくは10,000〜300,000、より好ましくは10,000〜100,000である。
【0064】
低屈折率層を形成するUV硬化性樹脂組成物中における(A)成分の含有量については、特に制限されるものではないが、有機溶剤以外の組成物全量に対して通常3〜90重量%、好ましくは5〜80重量%、より好ましくは10〜60重量%の範囲内の値である。(A)成分の量が上記範囲内にあると十分な塗膜強度と低屈折率化を両立することが可能となる。
(B)少なくとも2個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する多官能(メタ)アクリレート化合物及び/又は少なくとも1個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する含フッ素(メタ)アクリレート化合物
(B1)少なくとも2個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する多官能(メタ)アクリレート化合物
少なくとも2個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する多官能(メタ)アクリレート化合物は、硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物及びそれを用いた反射防止膜の塗膜強度を高めるために用いられる。
【0065】
この化合物(B1)としては、たとえば、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート及びカプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートを挙げることができる。
(B2)少なくとも1個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する含フッ素(メタ)アクリレート化合物
少なくとも1個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する含フッ素(メタ)アクリレート化合物は、硬化性樹脂組成物の屈折率を低下させるために用いられる。
【0066】
この化合物(B2)については、少なくとも1個以上の(メタ)アクリロイル基を含有する含フッ素(メタ)アクリレート化合物であれば特に制限されるものではない。このような例として、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0067】
低屈折率層を形成するUV硬化性樹脂組成物中における(B)成分の含有量については、特に制限されるものではないが、有機溶剤以外の組成物全量に対して通常5〜90重量%、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは15〜60重量%の範囲内の値とするのが望ましい。(B)成分が上記範囲内で含有されると、硬化塗膜が低屈折率で十分な塗膜強度を有する。
(C)シリカを主成分とする粒子
(C1)シリカを主成分とする粒子
低屈折率層を形成するUV硬化性樹脂組成物には、当該硬化性樹脂組成物の硬化物の反射防止能を向上させる目的でシリカを主成分とする粒子を配合する。このシリカを主成分とする粒子としては、公知のものを使用することができ、また、その形状も、球状であれば通常のコロイダルシリカに限らず中空粒子、多孔質粒子、コア・シェル型粒子等であっても構わないが、組成物の屈折率を低減させる観点から中空粒子や多孔質粒子が好ましく、中空粒子がより好ましく、特に中空超微粒子が好ましい。本発明において、超微粒子とは粒子径が1〜100nm程度のものを意味する。また、球状に限らず、不定形の粒子であっても良い。動的光散乱法で求めた数平均粒子径が1〜100nm、固形分が10〜40重量%、pHが2.0〜6.5のコロイダルシリカが好ましい。特に粒子径が10〜50nm程度のものがシリカ粒子そのものの生産性および塗膜形成時の光散乱を抑制する点でより好ましい。
【0068】
シリカを主成分とする粒子の市販品としては、例えば、日産化学工業(株)製のスノーテックスO(動的光散乱法で求めた数平均粒子径7nm、固形分20重量%、pH2.7)、スノーテックスOL(動的光散乱法で求めた数平均粒子径:15nm、固形分:20重量%、pH2.5)等を挙げることができる。
【0069】
また、コロイダルシリカ表面に化学修飾等の表面処理を行ったものを使用することができ、例えば分子中に1以上のアルキル基を有する加水分解性ケイ素化合物又はその加水分解物を含有するもの等を反応させることができる。また、分子中に1以上の反応性基を有する加水分解性ケイ素化合物を使用することもできる。分子中に1以上の反応性基を有する加水分解性ケイ素化合物は、例えば反応性基としてNH2基を有するもの、OH基を有するもの、イソシアネート基を有するもの、チオシアネート基を有するもの、エポキシ基を有するもの、チオール基を有するものなどを挙げることができる。好ましい化合物として、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランを挙げることができる。
【0070】
シリカを主成分とする粒子は、重合性不飽和基を含む有機化合物(以下、「特定有機化合物」ということがある。)によって表面処理がなされたものであることが好ましい。かかる表面処理により、本発明で用いる低屈折率層を形成するUV硬化性樹脂組成物を硬化せしめた硬化物の塗膜強度を向上させることができる。
(C2)特定有機化合物
前記シリカを主成分とする粒子(C1)の表面処理に用いられ得る特定有機化合物(C2)は、分子内に重合性不飽和基含む重合性の化合物である。
【0071】
重合性不飽和基としては特に制限はないが、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、スチリル基、エチニル基、シンナモイル基、マレエ−ト基、アクリルアミド基を好適例として挙げることができる。
【0072】
この重合性不飽和基は、活性ラジカル種により付加重合をする構成単位である。
特定有機化合物(C2)は、分子内にさらに、[−O−C(=O)−NH−]、[−O−C(=S)−NH−]、[−S−C(=O)−NH−]、[−NH−C(=O)−NH−]、[−NH−C(=S)−NH−]、及び[−S−C(=S)−NH−]の6種より選ばれる基、を含むものであることが好ましい。これらの基は、1種単独で又は2種以上を組合わせて用いることができる。中でも、熱安定性の観点から、[−O−C(=O)−NH−]基と、[−O−C(=S)−NH−]基及び[−S−C(=O)−NH−]基の少なくとも1とを併用することが好ましい。
【0073】
このような特定有機化合物(C2)は、分子内にシラノール基を有する化合物(以下、「シラノール基含有化合物」ということがある)又は加水分解によってシラノール基を生
成する化合物(以下、「シラノール基生成化合物」ということがある)であることが好ましく、具体的には、アルコキシシリル基含有化合物又はアリールオキシシリル基含有化合物が好ましい。シラノール基又はシラノール基生成化合物のシラノール基生成部位は、縮合反応又は加水分解に続いて生じる縮合反応によって、酸化物粒子と結合する構成単位である。
【0074】
低屈折率層を形成するUV硬化性樹脂組成物中における、シリカを主成分とする粒子(C)の含有量は、有機溶剤以外の組成物全量に対して通常1〜90重量%が好ましく、5〜80重量%がより好ましく、10〜70重量%がさらに好ましく、20〜60重量%が特に好ましい。成分(C)が上記範囲内にあると十分な硬度の硬化塗膜が得られる。
(D)活性エネルギー線の照射により活性種を発生する化合物
紫外線などの活性エネルギー線の照射により活性種を発生する化合物は、低屈折率層を形成するUV硬化性樹脂組成物を硬化させるために用いられる。
【0075】
紫外線などの活性エネルギー線の照射により活性種を発生する化合物(以下「光重合開始剤」という。)としては、活性種として、ラジカルを発生する光ラジカル発生剤等が挙げられる。本発明では、一定のエネルギーレベルを有し、硬化速度が速く、しかも照射装置が比較的安価で、小型な観点から、活性エネルギー線として紫外線を使用することが好ましい。
【0076】
光重合開始剤の添加量は特に制限されるものではないが、有機溶剤以外の組成物全量に対して好ましくは0.01〜20重量%、より好ましくは0.05〜15重量%、さらに好ましくは0.1〜15重量%とすることができる。光重合開始剤の量が上記範囲内にあると硬化反応が十分に進行し、硬化塗膜の耐擦傷性が優れる。
(E)有機溶媒
低屈折率層を形成するUV硬化性樹脂組成物には、さらに有機溶媒を添加することが好ましい。このように有機溶媒を添加することにより、薄膜の反射防止膜を均一に形成することができる。このような有機溶媒としては、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、t−ブタノール、イソプロパノール等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
【0077】
有機溶媒の配合量については特に制限されるものではなく、ディップコート法による塗膜の形成が可能な濃度となる量であればよいが、エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体100重量部に対し、100〜100,000重量部とするのが好ましい。この理由は、添加量が100重量部未満となると、低屈折率層を形成するUV硬化性樹脂組成物の粘度調整が困難となる場合があるためであり、一方、添加量が100,000重量部を超えると、低屈折率層を形成するUV硬化性樹脂組成物の保存安定性が低下したり、あるいは粘度が低下しすぎて取り扱いが困難となる場合があるためである。
(F)添加剤
低屈折率層を形成するUV硬化性樹脂組成物には、本発明の目的や効果を損なわない範囲において、光増感剤、重合禁止剤、重合開始助剤、レベリング剤、濡れ性改良剤、界面活性剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、シランカップリング剤、(C)成分以外の無機充填剤若しくは顔料、染料等の添加剤をさらに含有させることも好ましい。
【0078】
低屈折率層の形成
低屈折率層は、好ましくは、上記各成分よりなるUV硬化性樹脂組成物から形成される。本発明の反射防止層を形成し得る、低屈折率層を形成するUV硬化性樹脂組成物は、上記(A)エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体、上記(B)成分及び(C)成分、又は必要に応じて上記(D)成分、(E)有機溶剤、及び(F)添加剤をそれぞれ添加して、
室温又は加熱条件下で混合することにより調製することができる。具体的には、ミキサ、ニーダー、ボールミル、三本ロール等の混合機を用いて、調製することができる。ただし、加熱条件下で混合する場合には、重合開始剤の分解開始温度以下で行うことが好ましい。
【0079】
低屈折率層を形成するUV硬化性樹脂組成物の硬化条件についても特に制限されるものではないが、例えば活性エネルギー線を用いた場合、露光量を0.01〜10J/cm2の範囲内の値とするのが好ましい。
【0080】
この理由は、露光量が0.01J/cm2未満となると、硬化不良が生じる場合があるためであり、一方、露光量が10J/cm2を超えると、硬化時間が過度に長くなる場合があるためである。また、このような理由により、露光量を0.1〜5J/cm2の範囲内の値とするのがより好ましく、0.3〜3J/cm2の範囲内の値とするのがより好ましい。
【0081】
低屈折率層は、上述した低屈折率層を形成するUV硬化性樹脂組成物の塗膜をディップコート法により基材フィルム上に設け、これを活性エネルギー線照射により硬化して得られる硬化物から好適に構成される。本発明の反射防止膜において、低屈折率層は、基材フィルム上に直接設けられてもよく、ガスバリア層、高屈折率層、中屈折率層などの1層以上の層を介して設けられてもよい。
【0082】
低屈折率層では、UV硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物である、低屈折率層の屈折率(Na−D線の屈折率、測定温度25℃)を、1.45以下とすることが好ましく、1.4以下とすることがより好ましく、1.38〜1.25とすることが特に好ましい。低屈折率層の屈折率がこのような範囲にあると、十分な反射防止効果が得られ、特に高屈折率膜と組み合わせた場合に、相乗的な反射防止効果が得られやすいため好ましい。
【0083】
尚、低屈折率層が複数設けられる場合には、そのうちの少なくとも一層が上述した範囲内の屈折率の値を有していればよく、その他の低屈折率層は1.45を超えた値であってもよい。
【0084】
上記低屈折率層を与えるUV硬化性樹脂組成物として好適に用いられる市販品としてはJSR製オプスターTUシリーズなどが挙げられる。
低屈折率層の1層の厚さについては特に制限されるものではないが、例えば、50〜300nmであることが好ましい。この理由は、低屈折率層の厚さが50nm未満となると、積層される他の反射防止能を有する層等に対する密着力が低下する場合があるためであり、一方、厚さが300nmを超えると、光干渉が生じて反射防止効果が低下する場合があるためである。従って、低屈折率層の1層の厚さを50〜250nmとするのがより好ましく、60〜200nmとするのがさらに好ましい。尚、より高い反射防止性を得るために、低屈折率層を複数層設けて多層構造とする場合には、その合計した厚さを50〜300nmとするのが好ましい。
【0085】
・高屈折率層
本発明の反射防止膜を構成する高屈折率層は、UV硬化性を有する高屈折率材料により形成される層であり、好ましくは波長589nmにおける屈折率が1.65以上、好ましくは1.7以上、より好ましくは1.7〜2.0である。
【0086】
高屈折率層を形成するためのUV硬化性樹脂組成物としては、特に制限されるものでないが、被膜形成成分として、エポキシ系樹脂、フェノ−ル系樹脂、メラミン系樹脂、アルキド系樹脂、シアネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂
、シロキサン樹脂等の一種単独又は二種以上の組み合わせを含むことが好ましい。これらの樹脂であれば、高屈折率層として、強固な薄膜を形成することができ、結果として、反射防止膜の塗膜強度を著しく向上させることができるためである。
【0087】
しかしながら、通常、これらの樹脂単独での屈折率は1.45〜1.62であり、高い反射防止性能を得るには十分で無い場合がある。そのため、高屈折率の無機粒子、例えば金属酸化物粒子を配合することがより好ましい。また、硬化形態としては、熱硬化、紫外線硬化、電子線硬化できる硬化性組成物を用いることができるが、より好適には生産性の良好な紫外線硬化性組成物が用いられる。
【0088】
高屈折率層の厚さは特に制限されるものではないが、例えば、50〜3,000nmであることが好ましい。この理由は、高屈折率層の厚さが50nm未満となると、低屈折率層と組み合わせた場合に、反射防止効果や基材に対する密着力が低下する場合があるためであり、一方、厚さが3,000nmを超えると、光干渉が生じて逆に反射防止効果が低下する場合があるためである。従って、高屈折率層の厚さを50〜1,000nmとするのがより好ましく、60〜500nmとするのがさらに好ましい。また、より高い反射防止性を得るために、高屈折率層を複数層設けて多層構造とする場合には、その合計した厚さを50〜3,000nmとすればよい。
【0089】
本発明の反射防止膜を構成する高屈折率層を形成するためのUV硬化性樹脂組成物としては、より好ましくは、(A)粒子成分、(B)重合性不飽和基を有しないメラミン化合物、及び(C)重合性不飽和基を2個以上有する化合物を含有し、さらに必要に応じて酸発生剤(D)、光重合開始剤(E)、および溶剤ならびに添加剤等のその他の成分(F)を含有する組成物が挙げられる。
【0090】
以下、高屈折率層を形成するためのUV硬化性樹脂組成物を構成するこれらの各成分について説明する。
(A)粒子成分
高屈折率層を構成する(A)粒子成分としては、ジルコニア、チタニア、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、ITO(錫ドープ酸化インジウム)よりなる群から選ばれる1種以上の超微粒子が挙げられる。
【0091】
本発明では、上記超微粒子の全量もしくはその一部として、下記式(7)で示される化合物のSi(OMe)3を加水分解し、上記超微粒子の表面水酸基を反応せしめ、AcrylOの重合性官能基を超微粒子表面に結合した超微粒子を用いることが好ましい。
【0092】
【化9】

【0093】
この場合、超微粒子全量に対して10〜100重量%の超微粒子に対して重合性官能基を結合させることが好ましく、より好ましくは50〜100重量%の超微粒子に対して重合性官能基を結合させることで、塗膜強度と高屈折率化を両立することができる。
これらの超微粒子の平均粒径は、好ましくは1〜100nm、より好ましくは5〜50nm程度である。
【0094】
高屈折率層を形成するためのUV硬化性樹脂組成物中における、粒子成分(A)の配合(含有)量は、有機溶剤を除く組成物全量を100重量%として、5〜90重量%が好ましく、15〜85重量%がさらに好ましい。5重量%未満であると、高屈折率のものを得られないことがあり、90重量%を超えると、成膜性が不十分となることがある。溶剤を除くUV硬化性樹脂組成物中における粒子成分(A)の含有量は、65〜90重量%であることが特に好ましい。
【0095】
尚、粒子成分(A)の量は、固形分を意味し、粒子成分(A)が溶剤分散ゾルの形態で用いられるときは、その配合量には溶剤の量を含まない。
(B)重合性不飽和基を有しないメラミン化合物
高屈折率層を形成するためのUV硬化性樹脂組成物を構成する、重合性不飽和基を有しないメラミン化合物(B)は、硬化物としたときの屈折率を高めるとともに、積層体の耐薬品性を向上するために好適に用いられる。
【0096】
このような化合物(B)の市販品としては、例えば、三井サイテック(株)製 商品名:サイメル238、XV805、XM2819、サイメル303;三和ケミカル(株)ニカラックE−1201等を挙げることができる。
【0097】
化合物(B)の数平均分子量は、300〜20,000であることが好ましい。より好ましくは、300〜5,000である。500未満であると、得られる積層体の耐薬品性が不十分になることがあり、20,000を超えると、塗工性が不十分になることがある。
【0098】
このような化合物(B)は、一種単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いても良い。
高屈折率層を形成するためのUV硬化性樹脂組成物中における化合物(B)の含有量は、有機溶剤を除く組成物全量を100重量%として、好ましくは、0.01〜50重量%、より好ましくは、1〜40重量%である。0.01重量%未満であると、積層体の耐薬品性が劣ることがあり、50重量%を超えると、硬化物の硬度が不十分となることがある。
【0099】
(C)重合性不飽和基を2個以上有する化合物
高屈折率層を形成するためのUV硬化性樹脂組成物を構成する成分(C)は、重合性不飽和基を2個以上有する化合物である。成分(C)は、組成物の成膜性を高めると共に本発明の組成物の硬化物の塗膜強度を改善するために好適に用いられる。
【0100】
成分(C)においては、重合性不飽和基の数は、2個以上が必要であり、3個以上が成膜性の観点から好ましい。重合性不飽和基が1個であると耐擦傷性が低下する。
成分(C)の具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリヒドロキシエチルトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート類;
イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート等のイソシアヌレートのポリ(メタ)アクリレート類;
トリシクロデカンジイルジメチルジ(メタ)アクリレート等のシクロアルカンのポリ(メタ)アクリレート類;
ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加体のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加体のジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加体のジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加体のジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加体のジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸とから得られる(メタ)アクリレート等のビスフェノールAの(メタ)アクリレート誘導体類;
3,3,4,4,5,5,6,6−オクタフルオロオクタンジ(メタ)アクリレート、3−(2−パーフルオロヘキシル)エトキシ−1,2−ジ(メタ)アクリロイルプロパン、N−n−プロピル−N−2,3−ジ(メタ)アクリロイルプロピルパーフルオロオクチルスルホンアミド等の含フッ素(メタ)アクリレート類が挙げられる。これらの多官能(メタ)アクリレート化合物は、1種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
【0101】
これらの多官能(メタ)アクリレート化合物のうち、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートなど、1分子内に含まれるアクリロイル基の数が多く、架橋密度の向上が図れ、優れた膜硬度を与える多官能(メタ)アクリレート化合物が特に好ましい。
【0102】
高屈折率層を形成するためのUV硬化性樹脂組成物中における成分(C)の配合(含有)量は、有機溶剤を除く組成物全量を100重量%として、通常3〜80重量%配合され、5〜50重量%が好ましく、5〜30重量%がさらに好ましい。3重量%未満だと、添加効果が得られないことがある。80重量%を超えると、硬化物としたときに高硬度のものを得られないことがある。
【0103】
尚、高屈折率層を形成するためのUV硬化性樹脂組成物中には、成分(C)の外に、必要に応じて、分子内に重合性不飽和基を有する化合物を含有させてもよい。
(D)酸発生剤
高屈折率層を形成するためのUV硬化性樹脂組成物においては、必要に応じて、前記反応性粒子(A)、化合物(B)及び化合物(C)以外の配合成分として、(D)酸発生剤を配合することができる。
【0104】
このような酸発生剤(D)としては、例えば、熱的にカチオン種を発生させる化合物等及び放射線(光)照射によりカチオン種を発生させる化合物等の、汎用されているものを挙げることができる。これらは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0105】
本発明において必要に応じて用いられる酸発生剤(D)の配合量は、有機溶剤を除く組成物全量100重量%に対して、0.01〜20重量%配合することが好ましく、0.1〜10重量%が、さらに好ましい。0.01重量%未満であると、成膜性が不十分となることがあり、20重量%を超えると、高硬度の硬化物が得られないことがある。
【0106】
(E)ラジカル重合開始剤
高屈折率層を形成するためのUV硬化性樹脂組成物においては、必要に応じて、前記反応性粒子(A)、化合物(B)、化合物(C)及び酸発生剤(D)以外の配合成分として、(E)ラジカル重合開始剤を配合することができる。
【0107】
このようなラジカル重合開始剤(E)としては、放射線(光)照射により活性ラジカル種を発生させる化合物等(放射線(光)重合開始剤)の、汎用されているものを挙げることができる。
【0108】
高屈折率層を形成するためのUV硬化性樹脂組成物中において必要に応じて用いられるラジカル重合開始剤(E)の配合量は、有機溶剤を除く組成物全量の合計100重量%に対して、0.01〜20重量%配合することが好ましく、0.1〜10重量%が、さらに好ましい。0.01重量%未満であると、硬化物としたときの硬度が不十分となることがあり、20重量%を超えると、硬化物としたときに内部(下層)まで硬化しないことがある。
【0109】
(F)その他の成分
高屈折率層を形成するためのUV硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、光増感剤、重合禁止剤、重合開始助剤、レベリング剤、濡れ性改良剤、界面活性剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、無機充填剤、顔料、染料等を適宜配合できる。
【0110】
また、UV硬化性樹脂組成物の調製には、ディップコート法での塗膜形成に適切な粘度となる量で、配合成分に応じて選択した溶剤を用いることが望ましい。
上記高屈折率層を与えるUV硬化性樹脂組成物として好適に用いられる市販品としてはJSR製オプスターZシリーズなどが挙げられる。
【0111】
高屈折率層の形成
本発明の反射防止膜の反射防止層を形成しうる高屈折率層は、好ましくは、上記各成分よりなるUV硬化性樹脂組成物から形成される。本発明の反射防止膜において、高屈折率層は、基材フィルム上に直接設けられてもよく、ガスバリア層、低屈折率層、中屈折率層などの1層以上の層を介して設けられてもよい。高屈折率層は、を形成するUV硬化性樹脂組成物は、上述した基材フィルム上に、必要に応じて上述した低複屈折率層あるいはその他の層を介し、ディップコート法を用いて基材フィルムを介して対称に塗膜を形成し、これをUV硬化して形成することができる。
【0112】
高屈折率層を形成するためのUV硬化性樹脂組成物から形成された塗膜は、放射線(光)によって硬化させることができる。放射線(光)による場合、その線源としては、組成物をコーティング後短時間で硬化させることができるものである限り特に制限はないが、例えば、赤外線の線源として、ランプ、抵抗加熱板、レーザー等を、また可視光線の線源として、日光、ランプ、蛍光灯、レーザー等を、また紫外線の線源として、水銀ランプ、ハライドランプ、レーザー等を、また電子線の線源として、市販されているタングステンフィラメントから発生する熱電子を利用する方式、金属に高電圧パルスを通じて発生させる冷陰極方式及びイオン化したガス状分子と金属電極との衝突により発生する2次電子を利用する2次電子方式を挙げることができる。また、アルファ線、ベータ線及びガンマ線の線源として、例えば、Co60等の核分裂物質を挙げることができ、ガンマ線については加速電子を陽極へ衝突させる真空管等を利用することができる。これら放射線は1種単独で又は2種以上を同時に又は一定期間をおいて照射することができる。
【0113】
UV硬化性樹脂組成物から形成された塗膜の硬化反応は、空気雰囲気下においても窒素等の嫌気的条件下においても行うことができ、嫌気的条件下で硬化せしめた場合においても、その硬化物は優れた塗膜強度を有する。
【0114】
高屈折率層は、具体的には、高屈折率層を形成するためのUV硬化性樹脂組成物を、ディップコート法を用いて、低複屈折率層あるいはその他の層を有していてもよい基材フィルム上の両面にコーティングして塗膜を形成し、好ましくは、0〜200℃で揮発成分を乾燥させた後、紫外線などの放射線で硬化処理を行うことにより形成することができる。放射線による場合、紫外線又は電子線を用いることが好ましい。そのような場合、好ましい紫外線の照射光量は0.01〜10J/cm2であり、より好ましくは、0.1〜2J/cm2である。また、好ましい電子線の照射条件は、加圧電圧は10〜300KV、電子密度は0.02〜0.30mA/cm2であり、電子線照射量は1〜10Mradである。
【0115】
このようにして形成された高屈折率層は、高硬度及び高屈折率を有するとともに、塗膜強度並びに基材及び低屈折率層との密着性に優れた塗膜(被膜)を形成し得る特徴を有している。
【0116】
反射防止膜
本発明の反射防止膜においては、低屈折率層、高屈折率層などの各反射防止層は、あらかじめ他層が形成されていてもよい基材フィルムをUV硬化性樹脂組成物に浸漬するディップコート法を用いて形成されるため、各反射防止層は、基材フィルムを介して対象となる構成で形成される。なお、形成される各反射防止層の厚みについては、塗膜形成時の乾燥条件などにもよるため、基材フィルムの両面で異なってもよい。本発明では、反射防止層をディップコート法で形成することにより、基材フィルムの両面に反射防止層を有する反射防止膜が、簡便に、かつ効率的に形成される。
【0117】
また、低屈折率層と高屈折率層とを設ける場合、より優れた反射防止効果が得られることから、両者の屈折率差を0.05以上の値とするのが好ましい。この理由は、低屈折率層と、高屈折率層との間の屈折率差が0.05未満の値となると、これらの反射防止膜層での相乗効果が得られず、却って反射防止効果が低下する場合があるためである。このため、低屈折率層と、高屈折率層との間の屈折率差を0.1〜0.5の範囲内の値とすることがより好ましい。
【0118】
本発明の反射防止膜では、低屈折率層と高屈折率層とが隣接して積層された部分を有していることが好ましく、より好ましくは、波長589nmにおける屈折率が1.4以下である低屈折率層と、波長589nmにおける屈折率が1.7以上である高屈折率層とが隣接して積層された部分を有していることが望ましい。
【0119】
本発明の反射防止膜は、基材フィルムの表面に直接反射防止層が形成されていてもよく、また、基材フィルムと反射防止層との間に、ガスバリア層などの1層以上の層を有していてもよい。
【0120】
本発明の反射防止膜が、基材フィルムと反射防止層との間に、ガスバリア層を有する場合、ガスバリア層は基材フィルムの片面のみに設けられていてもよく、両面に設けられていてもよい。ガスバリア層は、特に限定されるものではないが、層状粘土化合物を含有することが好ましい。層状粘土化合物としては、具体的には、(白雲母)、(Al,Mg)8(Si4O10)4(OH)8・12H2O(モンモリロナイト)、(Mg,Li)3Si4O10(OH)2Na0.3・4H2O(ヘクトライト)、(Mg,Fe)3(Al,Si)4O10(OH)2(Ca0.5,Na)0.3・4H2O(サポナイト)、(Ca,Na)0.3Al2(OH)2(Al,Si)4O10・4H2O(バイデライト)、Fe2(Al,Si)4O10(OH)2Na0.3・nH2O(ノントロナイト))などが挙げられる。
【0121】
本発明の反射防止膜は、基材フィルムが高度な耐熱性を有するとともに、反射防止層が
UV硬化性材料を用いて形成されたものであるため、蒸着により反射防止層が形成された反射防止膜よりも、基材フィルムにより近い熱線膨張率を有し、反射防止層がクラックを生じにくいため、熱履歴のかかる条件下においても好適に使用することができる。
【0122】
本発明の反射防止膜は、液晶表示パネル、フィルム型液晶素子、タッチパネル、冷陰極線管パネル、プラズマディスプレー等の各種表示素子に好適に用いることができ、また特に液晶表示パネルでは、偏光板と張り合わせた状態でも好適に用いることができる。さらに本発明の反射防止膜は、光ピックアップモジュール用波長板を構成する反射防止膜としても好適である。
【実施例】
【0123】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下において、「部」は、特に断りのない限り「重量部」を意味する。
【0124】
また、以下の実施例において、全光線透過率、ヘイズ値、分光反射率、位相差、熱クラック耐性については下記の方法により測定あるいは評価した。
[ヘイズ値]
スガ試験機(株)製のヘイズメーター「HGM−2DP型」を用い、全光線透過率を測定した。
【0125】
[分光反射率]
大塚電子(株)製の顕微分光反射率計FE−3000を使用し、波長380nmから780nmの反射率を測定した。
【0126】
[ガスバリア性]
酸素透過性をガス透過率測定装置BR−3(東洋精機社製)にてJIS K7126に準拠して測定した。
【0127】
[耐熱試験]
85℃の一定の温度に保たれた強制攪拌式の恒温層内にて、シリコンウエハ上にポリイミドテープで固定したフィルムサンプルを250時間保持した前後において、フィルムカット端部、およびフィルム中央部分について、クラックの有無を200倍の光学顕微鏡にて観察した。
【0128】
[耐光性]
680nmおよび405nmの半導体レーザーを100mW/mm2で照射し、1000時間後に照射部分を200倍の光学顕微鏡で観察し、以下の基準にて耐光性を評価した。
【0129】
A;レーザー照射前後で全く変化が認められなかった。
B;レーザーが照射後にごくわずかな表面形状変化が認められた。
C;レーザー照射後に明らかな表面形状変化、および/または白濁が認められた。
【0130】
D;レーザー照射後にフィルムに穴が開いていた。
[屈折率]
各塗料をシリコンウエハ上にドライ膜厚100nmになるよう、スピンコート後、溶剤乾燥、および紫外線硬化した塗布サンプルを用いて、大塚電子社製、分光エリプソメーターFE−5000を用いて波長589nmの屈折率を測定した。
【0131】
[作製例1]
環状オレフィン系樹脂からなる透明フィルムである、ARTON(登録商標) FILM(ジェイエスアール株式会社製、膜厚100μm)をテンター内で、Tg+10℃(175℃)に加熱し、延伸速度300%/分でフィルムの縦方向に1.3倍に延伸した後、Tg−20℃(145℃)の雰囲気下で約1分間この状態を保持しながら冷却し、更に室温で冷却し、テンター内から取り出すことにより、位相差フィルム(1)を得た。得られた位相差フィルム(1)の面内位相差を測定したところ波長550nmにおいて164nmであった。
【0132】
[作製例2]
環状オレフィン系樹脂からなる透明フィルムである、ARTON(登録商標) FILM(ジェイエスアール株式会社製、膜厚100μm)をテンター内で、Tg+10℃(175℃)に加熱し、延伸速度300%/分でフィルムの縦方向に1.1倍に延伸した後、Tg−20℃(145℃)の雰囲気下で約1分間この状態を保持しながら冷却し、更に室温で冷却し、テンター内から取り出すことにより、位相差フィルム(2)を得た。得られた位相差フィルム(2)の面内位相差を測定したところ波長550nmにおいて101nmであった。
【0133】
[作製例3]
ポリエーテル系ウレタン塗料であるハイドランWLS−201(大日本インキ化学工業社製)をメチルエチルケトン/メタノール混合溶剤(重量比80/20)を用いて3%に希釈し、プライマーコート液を調製した。
【0134】
[作製例4]
作製例1、および作製例2で得た位相差フィルム(1)及び(2)に100W/m2/minの放電圧にて大気下でコロナ処理を行ったところ、ともに表面張力が65mN/mとなった。
【0135】
[作製例5]
作製例4で得たフィルムをそれぞれカッターナイフにて75mm×100mmに切り出して、フィルム長手方向を稼動方向として、作製例3で調製したプライマーコート液を引き上げ速度300mm/minにてディップコートし、強制攪拌式の乾燥機にて100℃で3分間乾燥させた。さらに固形分濃度5%のガスバリアコート材であるユニレックスBHC−70(ブレンズ社製)をディップコートした。なお、ディップコート条件は、浸漬時間10秒、引き上げ速度400mm/minとした。
【0136】
コート後のフィルムサンプルを強制攪拌式の乾燥機にて100℃で3分間乾燥させて、両面にガスバリア層を有するガスバリアフィルム(1)、および(2)を得た。
このガスバリアフィルム(1)、および(2)のガスバリア性および位相差を測定したところ、それぞれ5cc/m2/day、164nm、および4cc/m2/day、101nmであった。
【0137】
[調製例1]
中空シリカ超微粒子を組成として含む低屈折率材料であるJSR社製オプスター(登録商標)(屈折率1.35、固形分濃度10%)にイソプロピルアルコールを添加して3%に希釈し、低屈折率コート材(A)を得た。
【0138】
[調製例2]
ジルコニア超微粒子を組成として含む高屈折率材料である、JSR社製オプスター(登録商標)(屈折率1.75、固形分濃度50%)に、メチルイソブチルケトンを添加して
3%に希釈し、高屈折率コート材(B)を得た。
【0139】
[実施例1]
作製例4で得たコロナ処理後の位相差フィルム(1)を作製例5と同様に切り出した後、ガスバリアコート材をディップコートすることなく基材フィルムとして用いた。この基材フィルム上に、表1に示した条件で、調製例1で得た低屈折率コート材(A)を用いて形成する屈折率層(A)と、調製例2で得た高屈折コート材(B)を用いて形成する屈折率層(B)とを、交互に形成して積層し、位相差を有する反射防止フィルム(1)を得た。なお、各層はディップコータにて1層塗布する毎に、大気下にて100℃で1分間の溶剤乾燥と500mJ/cm2(200mW/cm2)のメタルハライドランプ照射による紫外線硬化をおこなった。屈折率層(A)の屈折率は1.35であり、屈折率層(B)の屈折率は1.75であった。反射防止フィルム(1)について、ヘイズ値、分光反射率、ガスバリア性、熱クラック耐性、および熱クラック耐性評価前後の位相差を測定した。結果を表1に合わせて示した。
【0140】
[実施例2]
作製例5で得たガスバリアフィルム(1)に、表1の条件にて実施例1と同様に低屈折率層、高屈折率層を交互に積層し、位相差を有する反射防止フィルム(2)を得た。実施例1と同様の評価をおこなった結果を表1に合わせて示した。
【0141】
[実施例3]
作製例5で得たガスバリアフィルム(2)に表1の条件にて実施例1と同様に屈折率層(A)と屈折率層(B)とを交互に形成して積層し、位相差を有する反射防止フィルム(3)を得た。実施例1と同様の評価をおこなった結果を表1にあわせて示した。
【0142】
[比較例1]
作製例5で得たガスバリアフィルム(1)に真空蒸着装置を用いて、高屈折率材Nb25、低屈折率材SiO2を表1に示した膜厚になるよう交互積層し位相差を有する反射防止フィルム(a)を得たが、耐熱試験後に、反射防止層にクラックが発生した。
【0143】
【表1】

[実施例4]
市販品のBD/DVD/CDドライブを分解し、BD対物レンズ手前にある水晶からなる反射防止膜付き位相差板を取り除き、実施例3で作製した位相差を有する反射防止フィルム(3)を3mm×4mmに切り出したものをとりつけた後、再び、BD/DVD/C
Dドライブとして組み立てたところ。分解以前の同等と初期特性が得られた。また、10000時間連続で使用した時点でのドライブとしての不具合は観察されなかった。
【0144】
ちなみに水晶からなる位相差板は厚み270μmであったのに対して、実施例3で得られた位相差を有する反射防止フィルム(3)の厚みは93μmであった。
更に水晶からなる位相差板を取り除く際には、位相差板の角の部分に割れが生じたのに対して、位相差を有する反射防止フィルム(3)のつけ外しの際にフィルムの割れが生じることはなかった。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本発明の反射防止膜は、液晶表示パネル、フィルム型液晶素子、タッチパネル、冷陰極線管パネル、プラズマディスプレー等の各種表示素子に好適に用いることができ、また特に液晶表示パネルでは、偏光板と張り合わせた状態でも好適に用いることができる。さらに本発明の反射防止膜は、光ピックアップモジュール用波長板を構成する反射防止膜としても好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノルボルネン系重合体を含む基材フィルムの両面に、隣接する層同士の屈折率が異なる3層以上の反射防止能を有する層が積層されてなる反射防止層を有し、
該反射防止能を有する層がUV硬化性材料を用いて形成されてなることを特徴とする反射防止層を有するノルボルネン系樹脂フィルム。
【請求項2】
基材フィルムの両面に近い方からn番目の反射防止能を有する層同士の屈折率が、互いに等しいことを特徴とする請求項1に記載の反射防止層を有するノルボルネン系樹脂フィルム。
【請求項3】
基材フィルムが延伸フィルムであることを特徴とする請求項1または2に記載の反射防止層を有するノルボルネン系樹脂フィルム。
【請求項4】
基材フィルムの波長550nmにおける面内位相差が80〜850nmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の反射防止層を有するノルボルネン系樹脂フィルム。
【請求項5】
ノルボルネン系重合体が、下記式(I)で表される少なくとも1種の化合物を含む単量体を(共)重合して得られた樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の反射防止層を有するノルボルネン系樹脂フィルム;
【化1】

〔式(I)中、R1〜R4は、各々独立に水素原子;ハロゲン原子;酸素、窒素、イオウまたはケイ素を含む連結基を有していてもよい置換または非置換の炭素原子数1〜15の炭化水素基、極性基もしくはその他の1価の有機基を表す。あるいはR1とR2もしくはR3とR4が相互に結合してアルキリデン基を形成していてもよく、R1とR2、R3とR4またはR2とR3とが相互に結合して炭素環または複素環(これらの炭素環または複素環は単環構造でもよいし、他の環が縮合して多環構造を形成してもよい。)を形成してもよい。形成される炭素環または複素環は芳香環でもよいし非芳香環でもよい。また、xは0または1〜3の整数であり、yは0または1である。〕。
【請求項6】
少なくとも1層の反射防止能を有する層が、波長589nmにおける屈折率が1.4以下である低屈折率層であり、中空シリカ超微粒子を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の反射防止層を有するノルボルネン系樹脂フィルム。
【請求項7】
少なくとも1層の反射防止能を有する層が、波長589nmにおける屈折率が1.7以上である高屈折率層であり、ジルコニア、チタニア、五酸化タンタル、五酸化ニオブよりなる群から選ばれる1種以上の超微粒子を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の反射防止層を有するノルボルネン系樹脂フィルム。
【請求項8】
波長589nmにおける屈折率が1.4以下である低屈折率層と、波長589nmにおける屈折率が1.7以上である高屈折率層とが隣接して積層されてなる反射防止層を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の反射防止層を有するノルボルネン系樹脂フィルム。
【請求項9】
基材フィルムと反射防止層の間に、層状粘土化合物を含有するガスバリア層を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の反射防止層を有するノルボルネン系樹脂フィルム。
【請求項10】
反射防止能を有する層が、ディップコート法により形成されてなることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の反射防止層を有するノルボルネン系樹脂フィルム。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の反射防止層を有するノルボルネン系樹脂フィルムを製造する方法であって、ディップコート法により反射防止能を有する層を形成する工程を含むことを特徴とする反射防止層を有するノルボルネン系樹脂フィルムの製造方法。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれかに記載の反射防止層を有するノルボルネン系樹脂フィルムを有することを特徴とする光ピックアップモジュール用波長板。
【請求項13】
請求項12に記載の光ピックアップモジュール用波長板を有することを特徴とする光ピックアップモジュール。

【公開番号】特開2009−285859(P2009−285859A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137758(P2008−137758)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】