説明

反射防止膜及びそれを備えた反射防止部材並びに透明導電層形成用塗布液

【課題】 反射色に干渉縞が生じる虞が無く、視認性、透明性、機械的強度、帯電防止性に優れ、しかも、安価な反射防止膜及びそれを備えた反射防止部材並びに透明導電層形成用塗布液を提供する。
【解決手段】 本発明の反射防止フィルム11は、透明基材12と、この透明基材12の一主面12aに形成され透明導電層13及び低屈折率層14を順次積層してなる反射防止膜15とから構成され、透明導電層13は、導電性微粒子16と、この導電性微粒子16と組成及び粒子径の異なる微粒子17とを、無機バインダー18中に分散させたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止膜及びそれを備えた反射防止部材並びに透明導電層形成用塗布液に関し、さらに詳しくは、プラズマディスプレイ(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、ブラウン管(CRT)、プロジェクション(PJTV)などの各種画像表示装置の表示面における反射防止機能を向上させる場合に好適に用いられ、特に、反射色に干渉縞が生じる虞が無く、視認性、透明性、機械的強度、帯電防止性に優れ、しかも、安価な反射防止膜及びそれを備えた反射防止部材並びに透明導電層形成用塗布液に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プラズマディスプレイ(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、ブラウン管(CRT)、プロジェクション(PJTV)などの各種画像表示装置では、その画像表示部の表示面にて外部からの光や影像が反射することにより、画像表示部に表示される画像や、画像表示部の内部を不明瞭にするなどの問題点が指摘されている。
このような反射を防止する方法としては、画像表示部を構成するポリエチレンテレフタレート(PET)などのプラスチック基材やガラス基材の表面に、例えば、スパッタリング法や蒸着法等の薄膜技術により直接、反射防止機能を有する光学薄膜を設ける方法が挙げられる。
【0003】
ところで、上記の各種画像表示装置においては、近年、各種画像表示装置の大型化、フラット化、低価格化に伴って、画像表示部に設けられる光学薄膜に対しても大型化、製造コストの低減などが要望されているが、従来の薄膜技術を用いた方法では、製造コストが高く、量産性にも劣っているために、対応することが難しい。
そこで、大型化への対応が容易である、製造が容易である、製造コストの低減が可能であるなどの理由から、画像表示装置の画像表示部の表示面に反射防止フィルムを貼着する技術が提案されている。
このような反射防止フィルムとしては、例えば、図4に示す反射防止フィルム1が提案されている(特許文献1参照)。この反射防止フィルム1は、基材プラスチックフィルム2の一主面2aに、ハードコート層3、反射防止層4を順次積層してなる反射防止膜5が形成されたものである。
【0004】
この基材プラスチックフィルム2としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)が、ハードコート層3としては、金属酸化物超微粒子を含有する電離放射線硬化型樹脂が、反射防止層4としては、低屈折率のMgF、SiO、金属材料等が、それぞれ用いられている。また、上記の金属酸化物としては、Sb、TiO、Y、ZrO、SnO、ITO(錫含有酸化インジウム)、La、Al、SnOとWOの固溶体等が用いられ、電離放射線硬化型樹脂としては、アクリル樹脂等が用いられている。
この反射防止フィルム1では、ハードコート層3に上記の金属酸化物を添加することで、このハードコート層3の屈折率を基材プラスチックフィルム2の屈折率と同程度としている。
【0005】
この反射防止フィルム1では、反射防止層4と基材プラスチックフィルム2との密着性が弱いために、基材プラスチックフィルム2上に直接、反射防止層4を形成すると、反射防止層4が基材プラスチックフィルム2から剥離したり等の不具合が生じる虞がある。そこで、基材プラスチックフィルム2と反射防止層4との間にハードコート層3を介在させることで、反射防止層4と基材プラスチックフィルム2との間の密着性を高めるようにしている。
【特許文献1】特開平7−151902号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の反射防止フィルムでは、ハードコート層と反射防止層を順次積層して反射防止膜としているために、このハードコート層の機械的強度を維持するためには、その膜厚を光学膜厚以上、例えば、1μm以上にする必要があり、その結果、反射防止膜全体の厚みが厚くなり過ぎてしまい、視認性に劣るという問題点があった。
また、基材プラスチックフィルムとハードコート層との間の屈折率差が大きいために、この反射防止フィルムを、例えば、蛍光灯の下にて見た場合、このフィルム上に虹の様な干渉縞が発生するという問題点があった。
【0007】
例えば、基材プラスチックフィルムをPETフィルムで構成すると、その屈折率は1.61程度となり、また、ハードコート層の樹脂をアクリル樹脂で構成すると、その屈折率は1.49程度となる。したがって、基材プラスチックフィルムとハードコート層との間の屈折率差、すなわちPETフィルムとアクリル樹脂との間の屈折率差は0.12と非常に大きなものになってしまい、このままでは、干渉縞の発生を防止することは極めて難しい。
【0008】
そこで、基材プラスチックフィルムとハードコート層との間の屈折率差を0.03未満とすれば、干渉縞の発生を防止することができるのであるが、屈折率と、機械的強度の双方を同時に満足する材料を選択することが難しく、したがって、基材プラスチックフィルムとハードコート層との間の屈折率差を0.03未満とすることは、極めて難しい。
一方、ハードコート層を構成する樹脂にSb、TiO、Y、ZrO、SnO、ITO等の金属酸化物を添加することで、ハードコート層の屈折率を制御することも可能であるが、樹脂に金属酸化物を添加した場合、ヘイズ値が高くなるという新たな問題点が発生する虞がある。
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、反射色に干渉縞が生じる虞が無く、視認性、透明性、機械的強度、帯電防止性に優れ、しかも、安価な反射防止膜及びそれを備えた反射防止部材並びに透明導電層形成用塗布液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記課題を解決するために、鋭意検討を行った結果、反射防止膜を、導電性微粒子及びこの導電性微粒子と組成及び粒子径の異なる第2の微粒子を無機組成物中に分散した透明導電層と、この透明導電層より屈折率が0.1以上低い低屈折率層とを積層した構造とすれば、反射色に干渉縞が生じる虞が無く、視認性及び透明性に優れており、しかも、機械的強度、帯電防止性にも優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の反射防止膜は、少なくとも導電性微粒子及びこの導電性微粒子と組成及び粒子径の異なる第2の微粒子を、これら導電性微粒子及び第2の微粒子と組成の異なる無機組成物中に分散してなる透明導電層と、この透明導電層上に形成され、この透明導電層より屈折率が0.1以上低い低屈折率層と、を備えてなることを特徴とする。
【0012】
前記導電性微粒子の粒子径は、50nm以上かつ200nm以下であることが好ましい。
前記導電性微粒子の粒子径と前記第2の微粒子の粒子径との差は、30nm以上であることが好ましい。
【0013】
前記第2の微粒子は、この第2の微粒子及び前記導電性微粒子の合計量に対して15重量%以上かつ40重量%以下含有してなることが好ましい。
前記無機組成物は、この無機組成物、前記導電性微粒子及び前記第2の微粒子の合計量に対して10重量%以上かつ40重量%以下含有してなることが好ましい。
【0014】
本発明の反射防止部材は、透明基材上に、本発明の反射防止膜を備えてなることを特徴とする。
前記透明基材は、透明高分子フィルムまたは透明高分子シートであることが好ましい。
【0015】
本発明の透明導電層形成用塗布液は、導電性微粒子と、この導電性微粒子と組成及び粒子径の異なる第2の微粒子と、これら導電性微粒子及び第2の微粒子と組成の異なる無機組成物またはその前駆体と、溶媒とを含有してなることを特徴とする。
【0016】
前記導電性微粒子の粒子径は、50nm以上かつ200nm以下であることが好ましい。
前記導電性微粒子の粒子径と前記第2の微粒子の粒子径との差は、30nm以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の反射防止膜によれば、少なくとも導電性微粒子及びこの導電性微粒子と組成及び粒子径の異なる第2の微粒子を、これら導電性微粒子及び第2の微粒子と組成の異なる無機組成物中に分散してなる透明導電層と、この透明導電層上に形成され、この透明導電層より屈折率が0.1以上低い低屈折率層と、を備えたので、反射色に干渉縞が生じる虞が無くなり、したがって、視認性、透明性を向上させることができる。
また、透明導電層上に低屈折率層を積層させたので、機械的強度、帯電防止性も向上させることができる。
【0018】
本発明の反射防止部材によれば、透明基材上に、本発明の反射防止膜を備えたので、反射色に干渉縞が生じる虞が無く、したがって、視認性、透明性に優れ、しかも、機械的強度、帯電防止性にも優れた反射防止部材を提供することができる。
また、この反射防止部材を表示装置の表示面に適用すれば、表示面の反射色に干渉縞が生じる虞が無く、したがって、視認性、透明性に優れ、さらには機械的強度、帯電防止性にも優れた表示装置を提供することができる。
【0019】
本発明の透明導電層形成用塗布液によれば、導電性微粒子と、この導電性微粒子と組成及び粒子径の異なる第2の微粒子と、これら導電性微粒子及び第2の微粒子と組成の異なる無機組成物またはその前駆体と、溶媒とを含有したので、反射色に干渉縞が生じる虞が無く、したがって、視認性、透明性に優れ、しかも、機械的強度、帯電防止性にも優れた反射防止膜を、容易かつ低価格にて形成することができる。
したがって、反射防止膜の低価格化を図ることができ、さらには、この反射防止膜を用いた各種製品の低価格化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の反射防止膜及びそれを備えた反射防止部材並びに透明導電層形成用塗布液を実施するための最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態の反射防止フィルム(反射防止部材)を示す概略断面図である。
この反射防止フィルム11は、透明基材12と、この透明基材12の一主面12aに形成され透明導電層13及び低屈折率層14を順次積層してなる反射防止膜15とから概略構成されている。
ここで、透明導電層13は、少なくとも導電性微粒子16、及びこの導電性微粒子16と組成及び粒子径の異なる(第2の)微粒子17を、これら微粒子16、17と組成の異なる無機バインダー(無機組成物)18中に分散させたものである。
また、低屈折率層14は、透明導電層13より屈折率が0.1以上低いものとされている。
【0022】
透明基材12としては、十分な強度があり、透明な高分子フィルムまたは透明な高分子シートであれば、特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム、ポリカーボネート(PC)フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)フィルム、ポリアリレートフィルム、ノルボルネン系フィルム、非晶質ポリオレフィンフィルムなどの透明プラスチックフィルム、あるいは、これらのシートなどが挙げられる。
【0023】
導電性微粒子16としては、例えば、酸化スズ(SnO、SnO等)、酸化インジウム(InO、InO、In等)、スズ含有酸化インジウム(ITO)、アンチモン含有酸化スズ(ATO)等の導電性金属酸化物微粒子、あるいは、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)から選択された1種または2種以上を含む金属微粒子が好適に用いられる。
【0024】
この導電性微粒子16の粒子径は、50nm以上かつ200nm以下が好ましく、より好ましくは80nm以上かつ200nm以下、さらに好ましくは80nm以上かつ160nm以下である。
ここで、導電性微粒子16の粒子径を50nm以上かつ200nm以下と限定した理由は、粒子径が50nm未満であると、粒子間の接触抵抗が増大し、帯電防止性能が悪化するからであり、粒子径が200nmを超えると、粒子の分散性が悪くなり、塗膜形成中に凝集する虞があるからである。
【0025】
微粒子17は、2次粒子径が100〜160nmであり、例えば、酸化チタン(TiO、Ti、Ti等)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化アンチモン(Sb、Sb、Sb等)、酸化亜鉛(ZnO)から選択された1種または2種以上を含む金属酸化物微粒子が好適に用いられる。
【0026】
この微粒子17の2次粒子径と導電性微粒子16の粒子径との差は、30nm以上が好ましく、より好ましくは50nm以上である。
ここで、微粒子17の2次粒子径と導電性微粒子16の粒子径との差を30nm以上と限定した理由は、粒子径の差が30nm未満であると、塗膜の物理的特性、特に膜強度及び密着性が悪化するからである。
図1の反射防止フィルム11では、導電性微粒子16の粒子径が、微粒子17の2次粒子径より30nm以上も小さいとされている。
【0027】
この微粒子17の比率(重量%)は、この微粒子17及び導電性微粒子16の合計量に対して15重量%以上かつ40重量%以下含有してなることが好ましい。
ここで、微粒子17の含有量を、上記の様に限定した理由は、微粒子17の含有量が15重量%未満であると、塗膜の物理的特性、特に膜強度及び密着性が悪化するからであり、微粒子17の含有量が40重量%を超えると、導電性粒子間の接触が少なくなり、帯電防止性能が悪化するからである。
【0028】
無機バインダー18は、微粒子16、17と組成の異なるもので、しかも微粒子16、17、透明基材12及び低屈折率層14と濡れ性が良くかつ機械的強度が高いものが好ましく、例えば、アルコキシシラン、チタンアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、あるいはこれらの加水分解物等が好適に用いられる。
【0029】
この無機バインダー18の比率(重量%)は、この無機バインダー18、導電性微粒子16及び微粒子17の合計量に対して10重量%以上かつ40重量%以下含有してなることが好ましい。
ここで、無機バインダー18の含有量を上記の様に限定した理由は、無機バインダー18の含有量が10重量%未満であると、塗膜の物理的特性、特に膜強度が悪化するからであり、また、その含有量が40重量%を超えると、帯電防止性能が悪化するからである。
【0030】
低屈折率層14は、透明導電層13より屈折率が0.1以上低いものであればよく、例えば、酸化ケイ素(SiO)、フッ化マグネシウム(MgF)、フッ素樹脂またはそれを含む化合物等が好適に用いられる。
ここで、低屈折率層14の屈折率が透明導電層13の屈折率より0.1以上低いこととした理由は、その屈折率差が0.1より小さいと、優れた反射防止特性が得られないからである。
【0031】
次に、本実施形態の反射防止フィルム11の製造方法について説明する。
「透明導電層形成用塗布液」
導電性微粒子16と、この導電性微粒子16と組成及び粒子径の異なる微粒子17と、これら微粒子16、17と組成の異なる無機バインダー18またはその前駆体を、それぞれ所定量、秤量し、これらを溶媒中に分散させて透明導電層形成用塗布液とする。
ここで、無機バインダー18の前駆体としては、熱処理等により無機バインダー18に変化するものであればよく、例えば、テトラメトキシシラン(Si(OCH)、テトラエトキシシラン(Si(OC)、トリメトキシメチルシラン(CHSi(OCH)等のアルコキシド、アルコキシシランオリゴマー等が好適に用いられる。
【0032】
「低屈折率層形成用塗布液」
透明導電層13より屈折率が0.1以上低い低屈折率材料を、所定量、溶媒中に分散させて低屈折率層形成用塗布液とする。
低屈折率材料としては、例えば、テトラメトキシシラン(Si(OCH)、テトラエトキシシラン(Si(OC)、トリメトキシメチルシラン(CHSi(OCH)等のアルコキシドが好適に用いられる。
【0033】
これらの塗布液に用いられる溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、β−オキシエチルメチルエーテル(メチルセロソルブ)、β−オキシエチルエーテル(エチルセロソルブ)、ブチル−β−オキシエチルエーテル(ブチルセロソルブ)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコールのモノエーテル類(セロソルブ類)、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエステル類等が好適に用いられる。
【0034】
「反射防止フィルム」
透明基材12の表面を、超音波洗浄装置等を用いて清浄化しておき、次いで、スピンコート法、スプレーコート法、ディップ法、バーコート法、インクジェット法、グラビアコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、ナイフコータ法、リバースロールコータ法、キスコータ法などの塗布方法により、透明基材12の一主面12aに透明導電層形成用塗布液を塗布し、その後、この透明導電層形成用塗布液に、例えば、ドライヤーやエアブローによる乾燥、加熱炉による熱処理、紫外線照射等により乾燥処理あるいは熱処理を施し、透明導電層13を形成する。
【0035】
次いで、上記と同様の方法により、透明導電層13上に低屈折率層形成用塗布液を塗布し、その後、上記と同様の方法により低屈折率層14を形成する。
以上により、透明基材12の一主面12aに、透明導電層13及び低屈折率層14を順次積層してなる反射防止膜15を形成してなる反射防止フィルム11を容易に得ることができる。
【0036】
本実施形態の反射防止膜15によれば、導電性微粒子16及び導電性微粒子16と組成及び粒子径の異なる微粒子17を、これら微粒子16、17と組成の異なる無機バインダー18中に分散させた透明導電層13と、この透明導電層13上に形成され透明導電層13より屈折率が0.1以上低い低屈折率層14とを積層した構成であるので、例えば、蛍光灯下においても反射色に干渉縞が生じる虞が無く、したがって、視認性、透明性を向上させることができる。
【0037】
また、透明導電層13と低屈折率層14とを積層させたので、機械的強度、帯電防止性も向上させることができる。
また、微粒子17の2次粒子径と導電性微粒子16の粒子径との差を、30nm以上としたので、微粒子17と導電性微粒子16とを最密充填することができ、したがって、導電性微粒子16の充填密度を高めることができ、透明導電層13を低抵抗化することができる。
【0038】
本実施形態の反射防止フィルム11によれば、透明基材12の一主面12aに、透明導電層13及び低屈折率層14を順次積層してなる反射防止膜15を形成したので、反射色に干渉縞が生じる虞が無く、したがって、視認性、透明性に優れ、しかも、機械的強度、帯電防止性にも優れた反射防止フィルムを容易かつ低価格で提供することができる。
また、この反射防止フィルムをプラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)等の表示装置の表示面に適用すれば、表示面の反射色に干渉縞が生じる虞が無く、したがって、視認性、透明性に優れ、さらには機械的強度、帯電防止性にも優れた表示装置を提供することができる。
【0039】
図2は、本実施形態の反射防止フィルム(反射防止部材)の変形例を示す概略断面図であり、この反射防止フィルム21が上述した反射防止フィルム11と異なる点は、上述した反射防止フィルム11では、反射防止膜15を構成する透明導電層13中の微粒子17の2次粒子径を、導電性微粒子16の粒子径より30nm以上大きいこととしたのに対し、この反射防止フィルム21では、反射防止膜23を構成する透明導電層22中の微粒子17の2次粒子径を、導電性微粒子16の粒子径より30nm以上小さいこととした点であり、その他の点については、上記の反射防止フィルム11と全く同様である。
この反射防止フィルム21においても、上述した反射防止フィルム11と同様の作用効果を奏することができる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例1〜7及び比較例1〜6により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
実施例1〜7及び比較例1〜6に共通の低屈折率層形成用塗布液を作製した。
テトラメトキシシラン(Si(OCH)7.6gと、0.1規定の硝酸0.23gと、純水9.0gと、メタノール73.52gを混合して加水分解反応を行った溶液に、プロピレングリコールモノエチルエーテル10gと、シリコンオイル(東レダウコーニング社製:SF8427)0.15gを攪拌機を用いて混合し、均一な低屈折率層形成用塗布液とした。
【0041】
「実施例1」
導電性微粒子として、粒子径が100nmのアンチモン含有酸化スズ(ATO)を、第2の微粒子として、2次粒子径が130nmの酸化チタン(TiO)を、無機バインダーとして、テトラエトキシシラン(Si(OC)の加水分解物を、それぞれ用い、第2の微粒子の比率及び無機バインダーの比率共に30重量%となる様に、アンチモン含有酸化スズ(ATO)、酸化チタン(TiO)、テトラエトキシシラン(Si(OC)の加水分解物をそれぞれ秤量し、これらを2−プロパノール中に分散させ、透明導電層形成用塗布液Aとした。
【0042】
次いで、透明基材としてポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用い、このPETフィルム上に、バーコート法により透明導電層形成用塗布液Aを塗布し、その後、電気炉を用いて100℃にて乾燥させ、実施例1の透明導電層を形成した。
次いで、上記と同様の方法により、透明導電層上に低屈折率層形成用塗布液を塗布し、その後、電気炉を用いて100℃にて乾燥させ、実施例1の低屈折率層を形成した。
以上により、実施例1の反射防止フィルムを作製することができた。
【0043】
「実施例2」
導電性微粒子として、粒子径が50nmのスズ含有酸化インジウム(ITO)を用いた他は、実施例1と同様にして実施例2の反射防止フィルムを作製した。
【0044】
「実施例3」
無機バインダーの比率を10重量%とした他は、実施例1と同様にして実施例3の反射防止フィルムを作製した。
【0045】
「実施例4」
第2の微粒子として、2次粒子径が160nmの酸化ジルコニウム(ZrO)を用いた他は、実施例1と同様にして実施例4の反射防止フィルムを作製した。
【0046】
「実施例5」
第2の微粒子の比率を40重量%とした他は、実施例1と同様にして実施例5の反射防止フィルムを作製した。
【0047】
「実施例6」
第2の微粒子の比率を15重量%とした他は、実施例1と同様にして実施例6の反射防止フィルムを作製した。
【0048】
「実施例7」
導電性微粒子として、粒子径が200nmのアンチモン含有酸化スズ(ATO)微粒子分散液を用いた他は、実施例1と同様にして実施例7の反射防止フィルムを作製した。
【0049】
「比較例1」
電離線硬化型の液状のアクリル樹脂に酸化チタン(TiO)微粒子を分散させてハードコート層形成用塗布液を作製した。
次いで、実施例1にて用いたPETフィルム上に、スピンコート法によりハードコート層形成用塗布液を塗布し、その後、紫外線を照射し、ハードコート層を形成した。
次いで、このハードコート層上に、実施例1と同様にして透明導電層、低屈折率層を順次形成し、比較例1の反射防止フィルムを作製した。
【0050】
「比較例2」
無機バインダーの比率を50重量%とした他は、実施例1と同様にして比較例2の反射防止フィルムを作製した。
【0051】
「比較例3」
第2の微粒子の比率を50重量%とした他は、実施例1と同様にして比較例3の反射防止フィルムを作製した。
【0052】
「比較例4」
第2の微粒子として、粒子径が110nmの酸化セリウム(CeO)微粒子分散液を用いた他は、実施例1と同様にして比較例4の反射防止フィルムを作製した。
【0053】
「比較例5」
第2の微粒子の比率を10重量%とした他は、実施例1と同様にして比較例5の反射防止フィルムを作製した。
【0054】
「比較例6」
無機バインダーの比率を0重量%(無添加)とした他は、実施例1と同様にして比較例6の反射防止フィルムを作製した。
【0055】
表1に、実施例1〜7及び比較例1〜6各々について、ハードコート層の有無、導電性微粒子及び第2の微粒子それぞれの粒子径、第2の微粒子の比率、無機バインダーの比率を示してある。
【0056】
【表1】

【0057】
「反射防止フィルムの評価」
実施例1〜7及び比較例1〜6それぞれの反射防止フィルムの評価を行った。
評価項目は、最小反射率、視感度反射率、全光線透過率、ヘイズ、表面抵抗、密着性、耐摩傷性、反射色(最大値及び最小値)、反射光の色度(Δ)の9項目とした。
【0058】
評価方法は以下の通りである。
(1)最小反射率
紫外・可視光分光光度計(V−570:日本分光社製)を用いて、反射防止フィルムの5°正反射率を測定することにより、反射防止フィルムの最小反射率を測定した。
(2)視感度反射率
紫外・可視光分光光度計(V−570:日本分光社製)を用いて、反射防止フィルムの5°正反射率を測定し、この測定値に比視感度値を掛けて、反射防止フィルムの視感度反射率を算出した。
【0059】
(3)全光線透過率
日本工業規格JIS K 7105「プラスチックの光学的特性試験方法」に準拠して、反射防止フィルムの全光線透過率を測定した。
(4)ヘイズ(曇価)
日本工業規格JIS K 7105「プラスチックの光学的特性試験方法」に準拠して、反射防止フィルムのヘイズ値を測定した。
(5)表面抵抗(Ω/□)
日本工業規格JIS K 6911「熱硬化性プラスチック一般試験方法」に準拠して、反射防止フィルムの表面抵抗を測定した。
【0060】
(6)密着性
日本工業規格JIS K 5600−5−6「塗料一般試験法」の碁盤目剥離法の操作に準拠して、反射防止フィルムの低屈折率層の表面にて、10mm角の各辺にカッターナイフで1mm間隔の切り込みを、縦11本、横11本入れ、合計100個の升目を形成し、その上に24mm幅のセロハンテープを密着させ、素早くこのセロハンテープを60度方向に強制剥離した。セロハンテープの密着、剥離を3回繰り返し、残存する升目の数を測定した。
ここでは、残存する升目の数が90以上を「○」、80〜89を「△」、79以下を「×」とした。
【0061】
(7)耐摩傷性
#0000のスチールウールに250g/cmの荷重を負荷しながら、反射防止フィルムの低屈折率層の表面上を10回往復させた後、低屈折率層の表面に発生した傷の本数を目視にて計数した。
ここでは、傷の本数が10本以下を「○」、11〜19本を「△」、20本以上を「×」とした。
【0062】
(8)反射色(最大値及び最小値)
実施例1〜7及び比較例1〜6それぞれの反射防止フィルムから、300mm×300mmの大きさの測定用サンプルを9点採取し、これらのサンプルの反射色をカラーアナライザ(TOPSCAN TC1800 MKII:東京電色社製)を用いて測定した。ここでは、視野を2°とし、光源を、連続光(C光)を出射する光源とした。
【0063】
(9)反射光の色度(Δ)
CIE表色系を用い、CIE色度図における白色点(x=0.3137、y=0.3198)からのズレの距離Δx、Δyを用いて、下記の式
√(Δx+Δy
により算出した。
実施例1〜7及び比較例1〜6それぞれの反射防止フィルムの評価結果を表2及び表3に示す。
また、図3に、実施例1及び比較例1各々の反射率の波長依存性を示す。
【0064】
【表2】

【0065】
【表3】

【0066】
以上の評価結果によれば、実施例1〜7の反射防止フィルムは、比較例1〜6の反射防止フィルムに対して、帯電防止性能に優れ、かつ耐擦傷性、密着性等の物理特性についても問題が無く、しかも、反射防止特性についても十分な反射防止性能を有し、反射色の面内バラツキも小さいものとなっている。
したがって、実施例1〜7の反射防止フィルムは、比較例1〜6の反射防止フィルムと比べて、反射色に干渉縞が生じる虞が無く、視認性、透明性が向上していることが分かった。
また、密着性及び耐摩傷性が優れていることから、機械的強度も向上していることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の反射防止膜は、少なくとも導電性微粒子及びこの導電性微粒子と組成及び粒子径の異なる第2の微粒子を、これら導電性微粒子及び第2の微粒子と組成の異なる無機組成物中に分散してなる透明導電層と、この透明導電層上に形成され、この透明導電層より屈折率が0.1以上低い低屈折率層と、を備えたものであるから、干渉縞の無い反射色、視認性、透明性、機械的強度、帯電防止性等が求められるあらゆる物に適用可能で、特に、プラズマディスプレイ(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、ブラウン管(CRT)、プロジェクション(PJTV)などの各種画像表示装置の表示面における反射防止機能を向上させる場合に非常に効果的であり、その産業的利用価値は非常に大きなものである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施形態の反射防止フィルムを示す概略断面図である。
【図2】本発明の一実施形態の反射防止フィルムの変形例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の実施例1及び比較例1各々の反射率の波長依存性を示す図である。
【図4】従来の反射防止フィルムの一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0069】
11、21 反射防止フィルム
12 透明基材
12a 一主面
13、22 透明導電層
14 低屈折率層
15、23 反射防止膜
16 導電性微粒子
17 第2の微粒子
18 無機バインダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも導電性微粒子及びこの導電性微粒子と組成及び粒子径の異なる第2の微粒子を、これら導電性微粒子及び第2の微粒子と組成の異なる無機組成物中に分散してなる透明導電層と、
この透明導電層上に形成され、この透明導電層より屈折率が0.1以上低い低屈折率層と、
を備えてなることを特徴とする反射防止膜。
【請求項2】
前記導電性微粒子の粒子径は、50nm以上かつ200nm以下であることを特徴とする請求項1記載の反射防止膜。
【請求項3】
前記導電性微粒子の粒子径と前記第2の微粒子の粒子径との差は、30nm以上であることを特徴とする請求項1または2記載の反射防止膜。
【請求項4】
前記第2の微粒子は、この第2の微粒子及び前記導電性微粒子の合計量に対して15重量%以上かつ40重量%以下含有してなることを特徴とする請求項1、2または3記載の反射防止膜。
【請求項5】
前記無機組成物は、この無機組成物、前記導電性微粒子及び前記第2の微粒子の合計量に対して10重量%以上かつ40重量%以下含有してなることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載の反射防止膜。
【請求項6】
透明基材上に、請求項1ないし5のいずれか1項記載の反射防止膜を備えてなることを特徴とする反射防止部材。
【請求項7】
前記透明基材は、透明高分子フィルムまたは透明高分子シートであることを特徴とする請求項6記載の反射防止部材。
【請求項8】
導電性微粒子と、この導電性微粒子と組成及び粒子径の異なる第2の微粒子と、これら導電性微粒子及び第2の微粒子と組成の異なる無機組成物またはその前駆体と、溶媒とを含有してなることを特徴とする透明導電層形成用塗布液。
【請求項9】
前記導電性微粒子の粒子径は、50nm以上かつ200nm以下であることを特徴とする請求項8記載の透明導電層形成用塗布液。
【請求項10】
前記導電性微粒子の粒子径と前記第2の微粒子の粒子径との差は、30nm以上であることを特徴とする請求項8または9記載の透明導電層形成用塗布液。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−337489(P2006−337489A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−159319(P2005−159319)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】