説明

反応器に挿入されるか、反応器に組み合わされる液体混合デバイス

実質的に次の帯域:
運転条件下で可能ならば気体の第1流体を軸方向に入れる手段を備えた第1供給帯域;
前記流体が内部に均一に分配される、軸に対して好ましくは平行なパイプ束を含有する下方に位置している分配帯域;
第2流体を好ましくは平行なパイプ束を含有する分配帯域に入れ、前記の平行なパイプの外側に均一に分配するための手段を備えた第2供給帯域;
前記の平行なパイプを支持するパイププレートにより分配帯域から分離されている混合帯域であり、ここで、前記パイププレートが、前記第2流体を軸方向で混合領域へと均一に放出するためのスリット又は開口部を有し、前記の平行なパイプが前記パイププレートを越えて、前記混合帯域へと延びている混合帯域
から実質的になる、反応器に挿入されるか、反応器に組み合わされる、接触部分酸化のためにも使用し得る2種の流体を混合するためのデバイスが記載されている。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、反応器に挿入して、又は反応器と組み合わせて、接触部分酸化法(catalytic partial oxidation)においても短い接触時間で使用し得る、2種の流体、好ましくは炭化水素燃料及び酸化流、例えば空気、濃縮空気又は酸素を混合するためのデバイスに関する。
【0002】
短接触時間−接触部分酸化(SCT−CPO)は、合成ガスを製造するために使用される方法である。短い接触時間での接触部分酸化では、炭化水素燃料、オキシダント(空気、濃縮空気又は酸素)及び任意選択で蒸気の予備混合流を、101325〜8106000Pa(1〜80ATM)の範囲の圧力及び低温(T<400℃)で、白熱する触媒表面に供給する。
【0003】
短接触時間−接触部分酸化法で使用される試薬混合物は、可燃性であり得る。したがって、火炎のトリガリング及び伝播を回避するために、限られた体積、火炎のトリガリング温度未満の温度、難燃時間未満の短い時間で、混合を行うことが賢明である。接触部分酸化では、予備混合流の「冷たい」ガスが、高温の触媒に達する際に、試薬ガスが、高い直線速度を有して、触媒表面から気体試薬の流への熱逆伝播現象を制限することも適している。さらに、ガスの直線速度が、火炎の伝播速度を超える場合にも、ガスは火炎を消火する。
【0004】
したがって、通常、燃料流及びオキシダント流を混合しつつ、火炎反応を回避することを必要とする全ての方法におけるように、混合系の特性は、このタイプのプロセスでは非常に重要である。
【0005】
様々な文献記録が、炭化水素及びオキシダント流を混合するための機器を記載している。
米国特許出願公開第2005/0095186号明細書は、燃料及びオキシダントを、燃料の接線運動により混合する装置を請求している。我々の意見では、この方法は、火炎反応を誘発し得るので潜在的に有害な酸素濃度勾配の局地的発生を妨げない。
米国特許出願公開第2004/0133057号明細書は、乱流運動下に維持されている流体で混合を行い、したがって、微細な量の試薬のみを密接に接触させ、起こりうる火炎反応が混合物全体へと広がることを防ぐので、オキシダント及び燃料流を安全な条件下に混合することができるミキサーを製造する方法を記載している。我々の意見では、この装置は製造及び運転が簡単ではないだけでなく、2種の流がミキサーの出口で完全に混合されていることも保証しない。
【0006】
米国特許出願公開第2004/0067180号明細書は、オキシダント及び燃料がその中に別々に供給されるマイクロチャネルからなるミキサーを記載している。しかしながら、その配置が、触媒領域に近接していることが賢明であり、このことは、我々の意見では、重大な熱逆伝播問題を、火炎反応をトリガリングする可能性と共にもたらし得る。
米国特許第6726850号明細書は、酸素全体を、いくつかの反応工程の間に増分して供給するCPO法を請求している。該特許は、噴射装置の配置に関しては何ら開示していないが、炭化水素混合物/酸素の短い接触時間を示している(第1工程で10ミリ秒(msec)未満、後続工程で1ミリ秒未満)。
【0007】
米国特許第5883138号明細書は、匹敵する運動量で、一連のチャネル及び触媒領域に向かって開いている穴部からなるミキサーを介して、加圧及び予備加熱試薬をそこから噴射する装置を請求している。該特許は、HC/O2混合物の滞留時間が9ミリ秒より長いと、メタン及び酸素混合物が、望ましくない無触媒反応を気相で開始し得ることを開示している。米国特許出願公開第2004/0067180号明細書に関して成された同様の考察が、この特許に関しても当てはまる。
【0008】
米国特許第6863867号明細書は、装入物を放射方向かつ接線方向の両方向で導入するように配置された拡散ミキサー群の使用を請求している。各ミキサーは、装入物を一方の末端から受け、それを反対側の末端で放出する一連のダクトからなる。この場合にも、該特許は、酸素/炭化水素比が可燃性範囲以内にある領域の形成を最小化する方法を開示していない。
【0009】
2つの供給流の一方の区分化出口の仕組みを使用して、既知の技術の技術的限界を克服し、前記の要求を満たすデバイスを発見した。
【0010】
反応器に挿入されるか、反応器に組み合わされる、2種の流体を混合するための本発明の対象であるデバイスは、次の帯域:
運転条件下で可能ならば気体の第1流体を軸方向に入れる手段を備えた第1供給帯域;
前記流体が内部に均一に分配される、軸に対して好ましくは平行なパイプ束を含有する下方に位置している分配帯域;
第2流体を好ましくは平行なパイプ束を含有する分配帯域に入れ、前記の平行なパイプの外側に均一に分配するための手段を備えた第2供給帯域;
前記の好ましくは平行なパイプを支持するパイププレートにより分配帯域から分離されている混合帯域であり、ここで、前記パイププレートが、前記第2流体を軸方向で混合領域へと均一に放出するためのスリット又は開口部を有し、前記の平行なパイプが前記パイププレートを越えて、前記混合帯域へと延びている混合帯域
を実質的に含む。
【0011】
平行なパイプの最終部分は好ましくは、その中に分配されている流体の出口を混合帯域において軸方向、放射方向及び/又は横断方向に区分化するために適した手段を備えている。
パイププレートを越えて延びている前記の平行なパイプは、様々な長さを有し得る。
起こりうる火炎の戻りを阻止するために、適切なエレメントが混合領域中、パイププレート付近に配置され得る。
【0012】
多孔性エレメントは混合帯域中、パイププレートのすぐ下に配置され得、これは、パイプ自体を越えて延び得る。
本発明の対象であるデバイスは、反応器の入口に位置し得る。
気体流体(オキシダント)のパイプ及び「スリット」の直径を算出して、2種の流の直線速度が、一方では、混合のために有用であり得るとしても、他方では、混合帯域でのガスの滞留時間を高めて、トリガリング現象及び火炎反応伝播の機会を増やす流自体の再循環領域を防ぐようにする。
【0013】
起こりうる火炎戻りを遮断するためのエレメントとパイプ束の末端との間の距離は、一部の燃料の再循環を酸化流内部で発生させて、火炎形成の機会を増やし得る渦の形成を最小化するような距離である。
本発明の対象であるデバイスは好ましくは、反応器の入口に挿入するか、反応器と組合せ得る:特に、イタリア特許出願公開第MI96A000690号明細書に記載されている反応器を使用し得る。
前記デバイスは、反応器自体の一部でもあり得、この場合、前記デバイスを含む機器がさらに、本発明の対象である。
【0014】
炭化水素の接触部分酸化を行うための該装置は、前記の混合デバイスを含み、装置の軸に沿った一定又は漸増性区画を伴う触媒床からなる反応帯域(R)をさらに含むことを特徴とする。
本発明の他の対象は、前記デバイスを有する機器により行われる、気体又は液体燃料の接触酸化法に関する。
この炭化水素化合物、天然ガス及び/又はLPGから選択される気体燃料の接触部分酸化法は、適切な触媒系により、前記装置を使用し、次の工程:
前記燃料及び酸素又は空気又は酸素濃縮空気からなる試薬を予備混合し、可能ならば25〜400℃の範囲の温度に、可能ならば蒸気及び/又はCO2の存在下に加熱する工程;
5〜500℃の範囲の入口温度、1000〜1000000Nl試薬/L触媒×h(Nl regents/L cat. x h)の範囲の空間速度比で、450〜1500℃の範囲の温度を達成して、触媒帯域で試薬を反応させる工程
を介して行われる。
【0015】
特に、本発明による方法は、合成ガス又は不飽和炭化水素(エチレン、スチレンなど)を得るために、液体又は気体燃料から出発して行い得る。
触媒は、貴金属、例えばRh、Ru、Ir、Pt及び/又は他の遷移金属、例えばNi、Fe、Coがその上に堆積している酸化物担体からなり得る。酸化物担体は、同様の金属がその上に堆積する様々な形状を伴う金属スポンジ又は金属繊維担体からなり得る。
【0016】
触媒は、貴金属及び他の遷移金属、例えばRh、Ru、Ir、Pt、Ni、Fe、Coを含有する窒化物又はオキシ窒化物からなり得る。これらの金属は、金属凝集物として、窒化物種の上に支持され得るが、これらは、窒化物又はオキシ窒化物の化学式中にも挿入され得る(これらの触媒のさらに詳細な記載は、イタリア特許出願公開第MI2002A000214号明細書で見ることができる)。
本発明の方法で使用される触媒は、任意の形態、好ましくは、流体、特にガスが透過しうる固定床の形態であり得る。固定床は、任意の形態を有し、好ましくは0.4〜0.95、さらに好ましくは0.6〜0.9の範囲の真空度を有し得る。
本発明のいくつかの好ましい実施形態を、図1〜5を援用して提供する。
【0017】
図1に示されているデバイスは、燃料用とオキシダント用の2種の異なる入口を備えている。特には、酸化流をミキサーの頂部から入れ、低減されている直径を有する一連のパイプ中に分配する。燃料を側面(複数の入口が存在し得る)から入れ、酸素が循環するパイプを囲む混合室に放射方向に分配するが、最終的には、パイププレートに存在する「スリット」により、混合室に入れる。
オキシダント、即ち空気、濃縮空気又は好ましくは酸素のパイプは、パイププレートを越える長さに延びているので、オキシダントは、「リッチ」雰囲気で燃料に放出される(逆は、潜在的に危険である)
【0018】
オキシダントパイプの最終部分は、適切な制限エレメント、例えば、金属合金もしくは焼結セラミックス又は適切な寸法を有する一連の開口部を備えていて、供給の出口軸に沿って区分化が行われる。前記区分化出口の利点は、混合物の形成が、可燃範囲内に低減されるという事実にある。図1に示されているオキシダント及び燃料の入口は、単なる説明であり、本発明の制限であると理解されるべきではなく;他の入口、例えば、上方からの燃料も可能であり、ミキサー内部でのオキシダント/燃料相分離及び出口の相対的位置決定(燃料に対して下流でオキシダント)がなお存在する。
図2に示されているように、酸素含有流は、関連ダクト(1)からの出口で、垂直及び平行の両方の軌跡又はそれらのベクトルの組合せに従い炭化水素相(3)と交差する一連の流に装入物を区分化することができる適切なエレメント(2)を介して流れる。流の迅速な混合が、可燃領域内の組成物の局所的形成を妨げる。
【0019】
2つの流の交差が、相の迅速な混合をさらに容易にする。
図3に示されているミキサーのための別のスキームは、酸素放出をさらに区分化するために様々な長さを伴い、その結果生じる利点を全て伴うオキシダントパイプを描いている。
【0020】
図4は、図2の装置内に、起こりうる火炎戻りを阻止することができる適切なエレメントを包含している。
図5に示されている他の配置では、多孔性エレメント(5)は、炭化水素流の出口に位置し、オキシダント流の出口も、多孔性エレメント内部に、可能であれば様々な高さおよび炭化水素流の入口の下流で配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のデバイスの概略図である。
【図2】本発明のデバイスの概略図である。
【図3】本発明のデバイスの概略図である。
【図4】本発明のデバイスの概略図である。
【図5】本発明のデバイスの概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応器に挿入されるか、反応器に組み合わされる、2種の流体を混合するためのデバイスであって、次の帯域:
運転条件下で気体の第1流体を軸方向に入れる手段を備えた第1供給帯域;
前記流体が内部に均一に分配される、軸に対して平行なパイプ束を含有する下方に位置している分配帯域;
第2流体を平行なパイプ束を含有する分配帯域に入れ、前記の平行なパイプの外側に均一に分配するための手段を備えた第2供給帯域;
前記の平行なパイプを支持するパイププレートにより分配帯域から分離されている混合帯域であり、ここで、前記パイププレートが、前記第2流体を軸方向で混合領域へと均一に放出するためのスリット又は開口部を有し、前記の平行なパイプが前記パイププレートを越えて、前記混合帯域へと延びている混合帯域
から実質的になる2種の流体を混合するためのデバイス。
【請求項2】
パイプの末端部分が、その中に分配されている流体の出口を混合帯域において軸方向、放射方向及び/又は横断方向に区分化する手段を備えている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記パイププレートを越えて延びている前記パイプが、様々な長さを有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
適切なエレメントが前記混合帯域中、前記パイププレート付近に配置されていて、起こりうる火炎の戻りを阻止する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
多孔性エレメントが前記混合帯域中、前記パイププレートのすぐ後に配置されていて、前記パイプ自体を越えて延びている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
炭化水素の接触部分酸化を行うための装置であって、請求項1〜6の少なくとも1項に記載されている混合デバイスを含み、装置の軸に沿った一定又は漸増性区画を伴う触媒床からなる反応帯域(R)をさらに含むことを特徴とする装置。
【請求項7】
炭化水素化合物、天然ガス及び/又はLPGから選択される気体燃料の接触部分酸化法であって、適切な触媒系により、請求項6に記載の機器及び次の工程:
前記燃料及び酸素又は空気又は酸素濃縮空気からなる試薬を予備混合し、可能ならば25〜400℃の範囲の温度に、可能ならば蒸気及び/又はCO2の存在下に加熱する工程;
5〜500℃の範囲の入口温度、1000〜1000000Nl試薬/L触媒×hの範囲の空間速度比で、450〜1500℃の範囲の温度を達成して、触媒帯域で試薬を反応させる工程
で行われる接触部分酸化法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−512544(P2009−512544A)
【公表日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−535964(P2008−535964)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【国際出願番号】PCT/EP2006/010049
【国際公開番号】WO2007/045457
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(599068430)エニ、ソシエタ、ペル、アチオニ (16)
【氏名又は名称原語表記】ENI S.P.A.
【Fターム(参考)】