説明

反応性充填剤を有するはんだ材料、当該はんだ材料を有する担体要素又は部品、ならびに融剤の利用

本発明は、はんだ材料、はんだ化合物のための接触面を有する担体要素又は部品、ならびにはんだ付けのための融剤に関する。本発明によると、はんだ化合物を生成する際に、はんだ材料に加えて、反応性成分を有する充填剤が用いられる。有利には、反応性成分は、発熱反応に基づいて、はんだ化合物への入熱をもたらす。これによって、生成されるべきはんだ化合物は、残りのはんだ付けされるべきアセンブリよりも速く加熱されるので、より少ない外部入熱で作業することが可能になる。それによって、特に無鉛はんだ合金が、従来のプロセス温度Tで加工され得る。特に、はんだ付け炉内の温度Tは、はんだ貯蔵部の融解温度Tから外れていても良い。好ましくは、反応性成分は金属カルボニル化合物であり、酸素との発熱反応を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末又はペースト状のはんだ材料に関する。当該はんだ材料は、融点T又は融解範囲の下側境界Tを有する軟質はんだ合金の粒子と、ペースト、添加された硬質材料、又ははんだ材料粒子の被膜として形成され得る充填剤とを含有する。重要なのは、当該粒子が充填剤に包囲されていることである。この包囲は、熱伝導が生じ得るような被膜又は添加剤と粒子との単純な接触として理解される。
【0002】
さらに、本発明は、電気部品のための接触面を有する担体要素又は電気部品又は当該接触面を有する電気部品に関する。当該接触面には、融点T又は融点の下側境界Tを有するはんだ貯蔵部(Lotdepots)が設けられる。
【0003】
最後に、本発明は、粉末、ペースト状のはんだ材料又ははんだ半製品のための融剤の利用に関する。当該材料は、融点T又は融解範囲の下側境界Tを有する軟質はんだ合金から構成されている。
【背景技術】
【0004】
一般に、エレクトロニクス組立のためのはんだ合金は、可能な限り低い融点を有していることが望ましい。このことは、電子素子の加熱を極力抑えて、電気端子部のはんだ付けを行うことによって、当該電気端子部の破損を防ぐという目標設定と結びついている。
【0005】
例えばEUなどの、はんだ付けプロセスに鉛含有合金を今後は用いないという規定によって、鉛を含有しないゆえにより高い融点を有するはんだ合金を使用することが必要になる。しかしながら、それによって、はんだ付けされるべき部品にもより大きな熱的負荷が加えられる。結果として、適切な部品を使用すること、及び、必要なプロセス温度がより高くなることは、エレクトロニクス組立における費用の増大につながる。
【0006】
それゆえ、過去には、はんだ材料の融解に必要なエネルギー量を減少させるというアプローチが追及された。これは例えば、はんだ材料内に、より融点の低い合金の部分を設けた、はんだ材料の組成を通じて実現される。このいわゆる反応性はんだは、融解温度範囲を有している。当該融解温度範囲の下側境界に達するときにはすでに、はんだ材料の部分融解が実現しており、上側境界に達する前には、はんだ材料の完全な融解が実現している。しかしながら、この手段は、はんだ材料における合金成分に対する要求によって限定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
それゆえ、本発明の課題は、特に無鉛はんだ合金に必要なはんだ付け温度を低下させるための可能性を示すこと、及び、当該可能性を利用したはんだ材料、はんだ接点を有する担体要素、はんだ接点を有する部品又は融剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本課題はまず、冒頭に記載した本発明に係るはんだ材料によって解決される。当該はんだ材料では、充填剤が反応性成分を含有しており、当該反応性成分は、温度Tにおいて発熱反応を発生させる。このとき、温度TはTよりも低い。反応性成分は、複数の構成要素から構成されていても良いが、その反応性は、発熱反応が可能であるという基本的な能力によって与えられている。当該発熱反応は、特に空気中の酸素などの、酸素との反応によって得られる。自明のことながら、当該発熱反応は、反応性成分の様々な構成要素間でも生じ得る。
【0009】
さらに、本発明によると本課題は、冒頭に記載した接触面を有する担体要素もしくは接触面を有する電気部品によって解決される。当該接触面上に設けられたはんだ貯蔵部は、上述した特性を有する、すなわち反応性成分を含有するはんだ材料から形成されている。
【0010】
さらに、本課題は、上述した種類の、温度Tにおいて発熱反応を発生させる反応性成分を有する融剤を、本発明にしたがって使用することによって解決される。本発明によると、当該使用は、粉末、ペースト状のはんだ材料又ははんだ半製品のために行われるべきである。当該材料は、融点Tを有する軟質はんだ合金から構成されている。
【発明の効果】
【0011】
言い換えると、明らかに不安定な化学化合物(すなわち反応性成分)をはんだ付けプロセスにおいて使用することで、発熱反応が生じることによってエネルギーが放出される。このようにして、はんだ化合物において化学変換が行われている間、温度が上昇する。このエネルギー放出形態によって必然的に、はんだが融解するまでに必要な、外部から供給される熱量は削減される。当該反応とそれによって得られる追加のエネルギーとは、はんだ付け箇所に局所的に限定され続けるので、周囲の材料(プリント基板、部品)の信頼性には何ら影響を与えない。したがって、部品に与える熱的負荷を減少させることが可能になり、それによって、有利には部品の選択肢が増加する。さらに、はんだ付け炉による必要な熱供給も減少するので、有利にはエネルギーが節減される。それによって特に、例えばSnAgCuベースのはんだ合金などの無鉛はんだ合金が、従来の一般的なSnPb化合物において通常であった条件の下で加工され得る。このとき、一般に用いられているはんだ付け設備、基材、部品及び修理系をも利用することができる。さらに、はんだ付けに際する温度負荷が減少することによって、アセンブリの信頼性と、したがって製造されたアセンブリの寿命とが増大し、それによって品質上の問題が回避され得る。有利には、形成されたはんだ化合物の品質も改善され得る。なぜなら、はんだ付け中の温度負荷が減少することによって、はんだ付け箇所の酸化も減少するからである。それゆえ、はんだ付けに際して窒素の使用を省略することもできるので、さらに費用を減少させることが可能である。
【0012】
はんだ付けされるべきアセンブリに供給しなければならない必要なエネルギー量が減少することによって、はんだ付けに要する時間がさらに短縮されるので、有利には、既存の製造ライン内での通過速度が増大し得る。これによって、経済性の面でさらなる利益が得られる。修理プロセスも大幅に簡易化及び短縮され得る。さらに、はんだ材料の融点が低下することによって、両面に装備されたプリント基板での使用が特に有利である。生成されたはんだ化合物の融点は、プロセス温度よりもはるかに高いので、2回目の通過に際して背面にはんだ化合物が製造される場合に、プリント基板の前面においてはんだ化合物が軟化することはない。
【0013】
本発明の別の選択肢によると、当該はんだ材料は、はんだ半製品であっても良い。当該はんだ半製品は、融点T又は融解範囲の下側境界Tを有する軟質はんだ合金から構成されているとともに、充填剤によって包囲されているか、又は当該充填剤は当該はんだ半製品中に含有されている。すでに言及したように、本発明に係る充填剤は、温度Tにおいて発熱反応を発生させる反応性成分を含有している。このとき、温度TはTよりも低い。当該はんだ材料によって得られる利点については、すでに詳細に説明した。本発明のさらなる一態様によると、当該はんだ半製品は、好ましくは中空に形成されたはんだワイヤであるので、その内部に充填剤を注入することができる。その他の一態様によると、当該はんだ半製品ははんだ予成形部品である。当該はんだ予成形部品はプレフォームとも称されており、例えばはんだ球などの、特定のはんだ貯蔵部の形状を有する。これらのはんだ貯蔵部は、部品又はプリント基板などの担体要素の、適切に用意された端子部上に塗布され得る。好ましくは、はんだ予成形部品には、充填剤が塗布される。
【0014】
本発明の補足的な態様によると、当該反応性成分は酸素との発熱反応を発生させることが可能であり、特に金属カルボニル化合物である。この物質群は、化学構造を適切に変更することによって、その融点を調整できるという利点を有する(これについては以下で説明する)。このようにして、反応性成分は有利には、はんだ材料上で調整され、当該はんだ材料と共に用いられるべきである。さらに、酸素との反応は、このために空気中の酸素を利用することができるという利点を有する。この空気中の酸素が金属カルボニル化合物によって消費されることで、このような充填剤は同時に、はんだ材料のその他の成分のための酸化保護となる。これによって、はんだ付けプロセスを、例えば窒素などの不活性ガス中で行う必要はなくなる。その結果、有利には、本発明に係る充填剤を使用した場合に、さらに経済性の面で利益が得られる。
【0015】
さらに、反応性成分が第1の物質と第2の物質とを含有する混合物から構成されていると有利である。両方の物質は、互いに独立に、酸素との発熱反応を発生させる。これによって有利には、はんだ付けプロセス中に進行する反応をより正確に調整することが可能になる。特に有利なのは、第1の物質が、開始剤化合物、特に金属カルボニル化合物である場合である。当該化合物の、開始剤化合物を分解するための温度TR1は、第2の物質の当該温度TR2よりも低い。第1の物質が開始剤化合物として機能することができるためには、温度TR1での第1の物質の分解が十分でなければならない。それによって、第2の物質の発熱反応が開始される。さらに、第1の物質の分解生成物は、さらなる反応ステップにおいて発熱反応を発生させる。好ましくは、当該発熱反応は酸素との間で行われる。
【0016】
開始剤化合物を使用することによって、有利には、はんだ付けプロセスを引き起こすために必要なはんだ化合物への入熱はさらに減少する。すなわち、例えばリフローはんだ付け炉などにおいては、プロセス温度を低下させることができる。はんだ付けプロセスにおける入熱は、それによって、開始剤化合物の反応を得られるだけで良い。それによって、上述した連鎖反応が引き起こされ、まず第2の材料が発熱反応を発生させ、その結果、はんだ材料が融解する。
【0017】
特に有利なのは、第2の物質が、はんだ材料よりも容易に酸素との発熱反応を発生させる金属又は金属合金である場合である。これは、第2の物質が、生成されたはんだ化合物の合金形成に関与し得るという利点を有する。例えば、第2の物質が、形成されるべきはんだ合金中にいずれにせよ含有されることになるように、第2の物質を選択することが可能である。有利には、はんだ材料の多成分合金の場合、最も容易に酸素と反応する成分が選択される。自明のことながら、形成されるべきはんだ合金の構成要素を形成しない他の金属も用いることができる。当該金属は、はんだ化合物の所望される組織構造の形成にネガティブな影響を与えない程度、又はポジティブな影響を与える程度において用いられなければならない。第2の物質の酸化物は、例えばはんだ化合物の所望された組織の安定化に関与することができる。
【0018】
本発明のさらなる有利な実施形態は、添加剤中に酸素担体、特に過酸化物が含まれるときに得られる。当該酸素担体は、前記温度T(又は適用事例に応じてはTR1もしくはTR2)において、酸素を放出する。これは、発熱反応に必要な酸素が直接はんだ材料において利用可能であり、雰囲気からはんだ材料内部への酸素の拡散プロセスが不要であるという利点を有する。さらに、その他の理由から必要な場合、無酸素の保護雰囲気においてはんだ付けを行うことも可能である。発熱反応の反応相手は、はんだ材料の内部において提供されているからである。
【0019】
さらに、本課題は電気部品のための接触面を有する担体要素によっても、又は、その上に融点T又は融解範囲の下側境界Tを有するはんだ貯蔵部が設けられている接触面を有する電気部品によっても解決される。このとき、当該はんだ貯蔵部は、すでに説明した請求項に係るはんだ材料から形成されている。これによって、準備された要素が成立する。当該要素は、本発明に基づいて、容易かつ有利に、特にはんだ付け温度が比較的低い場合に加工され得る。これによってもたらされる利点についてはすでに説明した。
【0020】
最後に、本課題は、温度Tで発熱反応を発生させる反応性成分を有する融剤の使用によっても解決される。融点T又は融解範囲の下側境界Tを有する軟質はんだ合金から成るはんだ材料が使用される(T<T)。つまり、当該融剤によって、従来技術に係るはんだ材料が本発明に基づいて改善されるので、低下させた温度でのはんだ付けが可能になる。それによって、すでに説明したように、融剤からはんだ材料への追加的な入熱がもたらされ、反応性成分の発熱反応が融剤内で引き起こされる。融剤ははんだ材料に直接接触するので、はんだ付けプロセスを支援するための急速な熱伝導が保証される。融剤内の反応性成分の特別な態様については、はんだ材料内の使用された反応性成分に関する記載が対応して適用される。特に、有利には、金属カルボニル化合物が使用可能である。追加的に第2の物質を反応性成分として用いることが可能である。第2の成分は、特に金属又は金属合金である。発熱反応のために酸素を利用可能にする添加剤を用いても良い。第1の物質は、開始剤化合物として使用可能である(このことは、特に第1の成分として金属カルボニル化合物を使用することによって保証される)。
【0021】
以下に図を用いて、本発明のさらなる詳細を説明する。図中の同一又は対応する要素には、それぞれ同じ参照符号が付され、各図の間に差異が生じる限りにおいて、繰り返し言及される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】はんだ材料のペーストとしての実施例を示した図である。
【図2】はんだ材料のワイヤとしての実施例を示した図である。
【図3】担体要素上のはんだ材料という実施例を示した図である。
【図4】本発明に係るはんだ材料を使用した場合の、はんだ付けの間における温度変化を概略的に示した図である。
【図5】本発明に係る使用に適した金属カルボニル化合物の考えられる構造式の例を示す図である。
【図6】本発明に係る使用に適した金属カルボニル化合物の考えられる構造式の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1にははんだ材料11が図示されている。当該はんだ材料は、はんだ合金から成るはんだ粒子12と、ペースト状の充填剤13とを有している。当該充填材の中に、はんだ粒子12が組み込まれる。当該充填剤には、詳細には図示されていない方法で、本発明に係る反応性成分が与えられている。
【0024】
図2から明らかなように、はんだ材料は、はんだ半製品14の形態でも形成され得る。図2の実施例では、当該はんだ半製品は管状であり、反応性成分を含有する充填剤13は、形成された管の内部に設けられている。そこで、当該充填剤は、例えば手動はんだ付けの際に、はんだ半製品の融解プロセスを支援する。
【0025】
図3には、接触面16を備えた部品15が簡略化して図示されている。当該接触面には、例えば本発明に係る充填剤が塗布されているはんだ予成形部品17を設けても良い(図示されているのははんだ球である)。その他の可能性としては、接触面16に、本発明に係る反応性成分を含有する融剤18を塗布することが考えられる。
【0026】
図4には、形成されるべきはんだ化合物における温度Tの、時間tに応じた変化が、連続曲線として概略的に示されている。はんだ化合物が生成されるリフローはんだ付け炉内では、温度Tが支配的である。用意されたはんだ貯蔵部を有するアセンブリを組み込むことによって、温度は差し当たり上昇し、温度Tに漸近的に近づく。しかしながら、温度TR1に達すると、はんだ貯蔵部において、開始剤化合物としての金属カルボニル化合物の酸化が引き起こされ、追加的な入熱がもたらされる。これは、はんだ貯蔵部内の温度が突然上昇することの理由である。他方、残りの電子アセンブリの加熱は、破線に示したように、よりゆっくりと行われる(炉温度Tに漸近的に近づく)。しかしながら、はんだ貯蔵部内の温度が上昇すると、温度TR2を超過する。当該温度において、さらなる反応性成分、例えば容易に酸化する金属などが、やはり空気中の酸素との発熱反応を発生させる。これによって、はんだ貯蔵部内の温度はさらに急速に上昇し、炉温度Tをも超過し、融解温度Tを超過したときに、はんだ合金の融解がもたらされる。このとき、融解熱が生じるので、Tを超過した後の温度上昇は緩やかになる。必要なはんだ付け時間tに達すると、はんだ付けプロセスは中断される。はんだ化合物は凝固する。この時間tは、有利には、該当するはんだ合金に通常必要なはんだ付け時間を下回っている。
【0027】
は、はんだ合金の融解温度又ははんだ合金の融解範囲の下側境界を示している。当該融解範囲は、図4では斜線で示されている。
【0028】
以下に、本発明に係るはんだ材料の特別な実施例の製造について、より詳細に説明する。
【実施例1】
【0029】
調査の出発材料となったのは、Heraeus社のはんだペーストF610である。当該はんだペーストの主要構成成分は、Snが95、5Ag4Cuが0.5の合金から形成されている。さらに、溶剤及び天然樹脂などのはんだ付け補助剤が加えられた。このペーストが選択されたのは、他の研究テーマに関して、非常に良好に調査が行われたからである。これによって、この製品の貯蔵安定性は非常に高くはないということも知られている。しかしながら、はんだ粉末とは対照的に、ペーストの取り扱いは、対応する粉末状物質の取り扱いよりもはるかに容易である。特に、粒度がμmの下方領域にあり(約15μm〜50μm)、使用される添加剤の密度が比較的小さい場合は容易である。したがって、試料の均質性を保証し、実験経過における障害を回避するために、技術的な手段を追加する必要がない。実験経過は、図4に例示されている(時間tに関する温度変化T)。
【0030】
第1の手段は、少量の犠牲金属をはんだペーストに加えることである。当該犠牲金属は、酸素に対して、本来のはんだ金属よりも強い親和力を有している。つまり、はんだ付けプロセスにおいて一般的な温度TR2において、すでに酸化する。
【0031】
当該反応をより活性化するために、当該系にさらなる物質が添加された。当該物質は、より低い温度TR1においてすでに分解し、このときにそれ自身で酸化可能な構成要素を形成し、反応全体においてエネルギーを放出し、それによって犠牲金属の酸化反応が支援される。このために、好ましくは金属カルボニルが用いられる。この金属カルボニルは、所望された熱的効果を単独で生じ得るが、経済上の検討から、より安価な犠牲金属と共に用いることが有意義である。
【0032】
ここでは、純粋な金属の他に、金属化合物又は金属合金も使用可能であるが、当該金属化合物又は金属合金は、標準的な取り扱いが可能な程度に安定していなければならない。用いられる金属カルボニルは、単環式でも良いし、又は、複数の同じもしくは異なる金属核を有していても良い。
【0033】
犠牲金属の選択に際しては、酸素に対する親和性の他に、はんだペースト(密度は5g/cm未満、つまり軽金属の領域、であると有利である)との混合しやすさ、微粒子粉末の調製しやすさ、すなわち、各粒子は凝集してはならないこと、貯蔵安定性及び生理学的挙動が重要である。さらに、調達可能性が確立され、価格が適正でなければならない。好ましい金属としては、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、セリウム、チタン及びニッケルが考えられる。予期される酸化の他に、存在するスズ酸化物のはんだ材料への還元も可能である。それによって、この変換のポジティブな効果が増幅される。
【0034】
開始剤として適した、多数の不安定な有機化合物及び無機化合物から、金属カルボニルが選択された。この化合物クラスは、モル中における1つ又は複数の金属原子の存在を特徴としている。金属原子の周りには、電子配置に応じて、CO基が配置されている。反応条件と出発物質とに応じて、いわゆる「ホモレプティック」(配位子が一種類のみ)又は「ヘテロレプティック」(様々な種類の配位子)カルボニル化合物が得られる。中心原子として様々な金属が用いられる場合、「イソレプティック」なカルボニルもしくは錯体となる。このとき、エネルギーの作用下でさらにカルボニル二元化合物に対して反応可能な単環式化合物が形成され得る。製造に際しては、微細に分散した金属又は金属混合物が前提となっている。これらに、COが適切な条件下で直接吸収される。収率から見て特に有利な、対応するハロゲン化合物に関する合成の可能性は、最終生成物が汚染される可能性があるため、適用されなかった。
【0035】
COと特に容易に反応するのはニッケルである。80℃において標準圧で変換した場合に、満足できる収率が得られる。このために有利なのは、回転する反応器である。当該反応器では、軸が水平に配置されている。
【0036】
以下に、コバルト化合物を例に、反応の経過を示す:
Co+4CO→Co(CO)
【0037】
形成された単環式化合物は比較的揮発性を有しており、意図された利用のためには極力固体状物質が存在すべきであるが、当該固体状物質は、60℃から80℃の間で、極力所定の分解点を有するべきなので、二環式もしくは四環式コバルトカルボニルが好まれた。反応は以下の式で表される:
2Co(CO)→Co(CO)
【0038】
当該変換は、エネルギーを供給しながら、溶剤及び所定の圧力比を用いて、又は用いずに行われる。エネルギーの供給は、熱又はUV作用によって行われる(熱分解又は光分解)。使用される金属に応じて、光分解的な安定性は異なる。ルテニウム及びオスミウムのカルボニルが特に不安定である。
【0039】
コバルトテトラカルボニルから形成された二量体は、約100℃の融点を有し、当該温度において分解も行われるので、より融点の高い合金にも用いることができる。
【0040】
典型的なはんだ合金にとってより有利なのは、四量体化合物である。その製造は以下に式で表される:
2Co(CO)→Co(CO)12+4CO
【0041】
当該変換は、エネルギーを供給しながら、不活性溶剤中で行っても良い。
【0042】
当該化合物の融点及び安定性に関しては、金属の選択が重要になる。意図された利用には、以下の金属カルボニル化合物が特に適している:バナジウムヘキサカルボニル、モリブデンヘキサカルボニル、鉄ペンタカルボニル、マンガンペンタカルボニル、ニッケルテトラカルボニル、コバルトテトラカルボニル及びそれらのオリゴマー。さらに重要なのは、金属カルボニルの生理学的作用が、オリゴマーに向かってモル質量が増大するにつれて有利になることである。
【0043】
調査に際しては、測定技術的な装置が使用された。当該装置においては、出発温度、重量を測定し完全に混合されたはんだ材料における時間による温度変化、加熱時間及び加熱速度といったパラメータが可変であった。
【0044】
調査のためのはんだペーストの基本量は1.1gと規定された。添加される物質は、当該量に関連付けられる。計量及び混合は、特殊鋼のへらを用いて、陶磁器製るつぼ内で手によって行われた。混合物を設けられた小皿に入れた後、質量を正確に決定し、当該小皿を装置内に設置し、実験を実施し、評価を行った。
【0045】
はんだ付けプロセス中に進行する反応の測定技術的把握から、当該作用原則がエネルギーの放出につながることが明らかになった。これは、開始剤化合物についても、犠牲金属についても当てはまることである。犠牲金属の反応に際しては、以下にMgを例に示すように、主に酸化が行われる。
2Mg+O→2MgO
【0046】
開始剤の場合には、状況がより複雑なので、後続の反応方程式によってモデル化して表現されるのみである。テトラコバルト化合物がその元々の構成要素に分解される反応が重要である。一酸化炭素の二酸化炭素への酸化が定量的に行われないことは確実だが、熱量の面では、小さくはない役割を果たすかも知れない。コバルトのコバルト酸化物への変換は通常、非常に高温になってようやく行われる。しかしながら、選択された実験条件によって、可能であればコバルト水酸化物を介したコバルト酸化物への部分的な酸化が行われる可能性は排除できない。
【0047】
計画された適用事例のために選択されたカルボニル化合物の反応性が大きすぎる場合、又は融点が低すぎる場合は、当該化合物に存在するCO配位子を、シクロペンタジエンなどの他の構造と交換することが可能である。それによって、当該系の確実な安定化が行われる。生成された新しい化合物は、説明したように、逸脱的な挙動を示す。図5及び図6には、これに関して2つの例が示されている。図は単にモデル化したものであり、正確な分子構造はまだ明らかにはされていない。
【0048】
さらなる詳細は、必要な場合には、課題設定に応じて実験によって調査される。従来の調査では、例えば過酸化物などの適切な酸素担体を用いることも断念されていた。当該酸素担体は、一酸化炭素から二酸化炭素への変換を支援するものである。金属を含有する化合物によって、有機過酸化物が意図せず自然発生的な反応を発生させる危険があることが知られている。当該化合物には、取り扱われているカルボニルも含まれている。このことは、その比較的安定した結合ゆえに、当該適用に関して最も早く考慮対象になる脂環式パーオキシケタールにも当てはまる。この危険は、適用事例に応じて、得られる利益に対して考量される。
【0049】
実験によって、エネルギーの放出は、非常に短い時間の間に突然生じるものではなく、使用される開始剤の化学構造によって制御できるものであることが明らかになっている。得られる結果は、はんだ付けプロセスが標準的な酸素を含有する雰囲気下で行われることを前提としている。不活性ガス雰囲気において作業することが所望される場合、適切な酸素担体、例えば上述した過酸化物が調達される。
【0050】
基本的に、調査された物質の品質に関して言えば、用いられた補助剤は、前記はんだペーストに存在する物質を除外すれば、ハロゲン含有物質を用いず、酸又はアルカリを用いず、溶剤を追加せずに調製可能であった。用いられた物質は可燃性であり、略全ての金属のように、所定の粒度を下回ると自然発火する傾向がある。微細な粉塵の健康を害する作用は、多くの事例において知られている。したがって、適切な防護措置を考慮すべきである。
【0051】
金属粉末は製品として入手できる。オリゴマーのカルボニルの製品は知られていないが、当業者は文献を基に自身で製造できるであろう。これは、必要なペーストの製造についても当てはまる。
【符号の説明】
【0052】
11 はんだ材料
12 はんだ粒子
13 充填剤
14 はんだ半製品
15 部品
16 接触面
17 はんだ予成形部品
18 融剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点T又は融解範囲の下側境界Tを有する軟質はんだ合金から成る粒子と充填剤とを含有するはんだ材料であって、前記粒子は前記充填剤によって包囲されているはんだ材料において、
前記充填剤は、温度Tにおいて発熱反応を発生させる反応性成分を含有しており、温度TはTよりも低いことを特徴とするはんだ材料。
【請求項2】
融点T又は融解範囲の下側境界Tを有する軟質はんだ合金から成るはんだ半製品の形態であるはんだ材料であって、前記はんだ半製品は、充填剤によって包囲されているか、又は前記充填剤が前記はんだ半製品中に含有されているはんだ材料において、
前記充填剤は、温度Tにおいて発熱反応を発生させる反応性成分を含有しており、温度TはTよりも低いことを特徴とするはんだ材料。
【請求項3】
前記はんだ半製品ははんだワイヤであることを特徴とする請求項2に記載のはんだ材料。
【請求項4】
前記はんだ半製品ははんだ予成形部品であることを特徴とする請求項2に記載のはんだ材料。
【請求項5】
前記反応性成分は、酸素との発熱反応を発生させることが可能であり、特に金属カルボニル化合物であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のはんだ材料。
【請求項6】
前記反応性成分が、第1の物質と第2の物質とを含有する混合物から構成されており、両方の物質は、互いに独立に、酸素との発熱反応を発生させることが可能であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のはんだ材料。
【請求項7】
前記第1の物質が、開始剤化合物、特に金属カルボニル化合物であり、前記開始剤化合物が前記開始剤化合物を分解するために必要とする温度TR1は、前記第2の物質の当該温度TR2よりも低く、分解生成物と酸素との発熱反応を開始するためには、前記分解の後、前記温度TR1で十分であることを特徴とする請求項6に記載のはんだ材料。
【請求項8】
前記第2の物質が、前記はんだ材料よりも容易に酸素との発熱反応を発生させる金属又は金属合金であることを特徴とする請求項6又は7に記載のはんだ材料。
【請求項9】
前記添加剤中に酸素担体、特に過酸化物が含まれており、前記酸素担体又は前記過酸化物は、前記温度Tにおいて酸素を放出することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のはんだ材料。
【請求項10】
電気部品のための接触面を有する担体要素又は接触面を有する電気部品であって、前記接触面の上には、融点T又は融解範囲の下側境界Tを有するはんだ貯蔵部が設けられている担体要素又は電気部品において、
前記はんだ貯蔵部は、請求項1、2、又は4から9のいずれか一項に記載のはんだ材料から形成されていることを特徴とする担体要素又は電気部品。
【請求項11】
温度Tで発熱反応を発生させる反応性成分を有する融剤の、融点T又は融解範囲の下側境界Tを有する軟質はんだ合金から成るはんだ材料のための使用において、TがTよりも小さいことを特徴とする使用。
【請求項12】
前記反応性成分は特に金属カルボニル化合物であり、酸素との発熱反応を発生させることが可能であることを特徴とする請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記反応性成分が、第1の物質と第2の物質とを含有する混合物から構成されており、両方の物質は、互いに独立に、酸素との発熱反応を発生させることが可能であることを特徴とする請求項11又は12に記載の使用。
【請求項14】
前記第1の物質が、開始剤化合物、特に金属カルボニル化合物であり、前記開始剤化合物が前記開始剤化合物を分解するために必要とする温度TR1は、前記第2の物質の当該温度TR2よりも低く、分解生成物と酸素との発熱反応を開始するためには、前記分解の後、前記温度TR1で十分であることを特徴とする請求項13に記載の使用。
【請求項15】
前記第2の物質が、前記はんだ材料よりも容易に酸素との発熱反応を発生させる金属又は金属合金であることを特徴とする請求項13又は14に記載の使用。
【請求項16】
前記添加剤中に酸素担体、特に過酸化物が含まれており、前記酸素担体又は前記過酸化物は、前記温度Tにおいて酸素を放出することを特徴とする請求項11から15のいずれか一項に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−502798(P2012−502798A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526503(P2011−526503)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【国際出願番号】PCT/EP2009/061857
【国際公開番号】WO2010/029169
【国際公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(508008865)シーメンス アクティエンゲゼルシャフト (99)
【Fターム(参考)】