反応性充填材を有する配向した複合熱可塑性材料
延伸プロセスによって作られた高度に配向したポリマーと、流体と反応してセメント質結合を形成することの可能な粒子状充填材とを含む複合材料が提供される。充填材の量と分散の程度とは、充填材が流体と反応する際に、相互侵入ポリマーとセメント質網目とを形成するように選択される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高度に配向したポリマー全体に粒子状充填材が分散されている複合材料に関する。さらに詳細には、本発明は粒子状充填材が反応性であるそれらの複合材構造に関する。
【背景技術】
【0002】
発明者の以前のPCT特許出願(例えば、特許文献1参照。)は、複合材料とその複合材料を製造するプロセスを記載している。そのプロセスは、以下のプロセスステップを含む。
【0003】
i)配向性の押し出し可能な熱可塑性ポリマーを粒子状充填材と混合して、出発材料を形成すること、
ii)出発材料を加熱し押し出し成形して、第1の柱にすること、
iii)第1の柱の温度を延伸温度に調節すること、
iv)第1の柱を延伸ダイに供給し、そして、第1の柱の断面積より小さな断面積を有する第2の柱として、第1の柱を延伸ダイから排出すること、および、
v)第2の柱に引っ張り力を加えて、ポリマーを配向させ、かつ、第2の柱が密度を減じて複合材料を形成するのに十分な速度にて、延伸ダイを通して第1の柱を延伸すること。
【0004】
例えば、ポリプロピレンと木材鋸屑を用いて実施する時の上述のプロセスの驚くべき結果は、得られる製品が、木材に比肩し得るその特性の多くを備えた多孔質構造であり、また、多くの用途において木材の代替として適していることである。得られる製品は比較的水分を浸透せず、また、したがって、腐食をもたらす環境で木材よりもはるかに長持ちするので、多くの用途において、得られる製品は木材よりも有益であろう。
【0005】
本発明は、最終製品においてさらに向上した特性を得るために、反応性粒子状充填材の使用を考えている。
【0006】
【特許文献1】特許出願第PCT/CA00/01555号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、配向したポリマーとセメント質粒子状充填材とを含む複合材料を提供することであり、複合材料は、混合された出発材料の理論的な密度よりも小さい密度を有し、また、配向したポリマーは、セメント質充填材が適切な流体と反応して、配向したポリマー母材に相互侵入するセメント状結合構造を作ることができるように、セメント質粒子状充填材を全体にわたって分散する母材を形成する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
延伸プロセスによって製造された高度に配向した熱可塑性ポリマーと、流体と反応してセメント質結合を形成することのできる粒子状充填材とを有する複合材料が提供される。充填材の量と分散の程度とは、充填材が流体と反応して、複合材料中にポリマーと空隙との相互侵入網目を形成する程度である。
【0009】
粒子状充填材は、ケイ酸塩セメントまたは石膏とすることができる。
【0010】
本発明の1つの実施形態では、粒子状充填材は少なくとも1種のポルトランドセメントおよび硫酸カルシウム半水和物を含む。
【0011】
粒子状充填材は、木材鋸屑などの非反応性成分をさらに含むことができる。
【0012】
ここで、付随する図を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を例示の形で説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本出願に適した粒子状充填材を備える高度に配向した熱可塑性ポリマーを製造するための延伸プロセスは、特許文献1に記載されており、また、上述の背景技術の中で述べている。
【0014】
図1は、延伸プロセスを例示する。図1によれば、全体的に参照10で示される、配向した熱可塑性ポリマーと充填材料とを混合された供給材料は、出口24に向かって断面積が減少している通路22を有する押し出しダイ20を通して押し出される。混合材料は加熱され、端部30が現れるまで最初に出口24を通して押し出され、これは引取装置40によって掴むことができる。配向および密度減少の両方を起こさせるのに十分な引っ張り力は、矢44の方向に加えられ、最終結果は、その全体に粒子状充填材料と空気とが分散された、高度に配向した多孔質のポリマー母材である。
【0015】
図2は、図1に示したダイ20などの装置で使用する連続プロセスを示しており、主な相違は、図1に示すようなチェーン付クランプの構成の替わりに、参照40で示すような掴みベルトが使用されることである。ダイ20の上流(図の左方向)は、押出機120に供給する原材料ホッパー121であり、押出機は配向可能なポリマーと粒子状充填材との混合物を混合および溶融し、さらに混合した混合物を押し出しダイ122に駆動する。第1の引っ張り部125は、押し出された柱を連続炉126に供給し、柱の温度は引っ張り温度に調節される。プロセスのその他の部分は、実質上図1に示したものと同じである。
【0016】
上で述べたように、最初の仕事は、比較的不活性な充填材を用いて行われ、これは、一般的に、充填材がポリマーに対して非反応性であり、また典型的な用途環境中において非反応性であったことを意味する。
【0017】
本発明によれば、例えば、配向したポリマー母材に浸透する相互侵入網目系および/または抗菌特性を提供することのできる反応性粒子状充填材が意図されている。本技術には様々な反応性充填材での他の用途があろう。例として、いくつかのカルシウム化合物が可能性のある候補として考えられた。これらのいくつかの特性を以下に述べるが、これらは単なる例であり、網羅的なリストではないことを理解すべきである。
【0018】
熱可塑性プラスチックに使用される多くの充填材が存在するが、最初は最も経済的な影響の強いものを考えた。その水との反応性、および最初に充填された配向ポリマーを形成し、第2工程として、それを水と反応させる可能性のため、ポルトランドセメントおよび硫酸カルシウム(すなわち、石膏)が考えられる。これは、セメントおよび石膏製品を形成する歴史の中で独特である。
【0019】
表1は、これらの充填材の種類の概観を示す。
【0020】
【表1】
【0021】
[ケイ酸カルシウム(ポルトランドセメント)]
ポルトランドセメントは、1500℃(2,732°F)の温度に達する回転キルンと呼ばれる回転炉中で、主成分として石灰石、粘土および砂から製造される。高い熱は、化学反応を起こさせ、部分的に溶融した原材料は、クリンカーと呼ばれるペレットに変換される。いくらかの石膏と他の主要な材料とを加えた後、混合物は、「ポルトランドセメント」と呼ばれる非常に細かな灰色の粉(75ミクロン)に粉砕される。様々な物理的および化学的要件を満足するために製造された異なる種類のポルトランドセメントが存在する。米国試験材料協会(ASTM)の仕様C−150は、8種類のポルトランドセメントを規定している。例えば、タイプ1のポルトランドセメントは、あらゆる使用に適した通常の汎用セメントであり、この研究で使用するであろう種類である。
【0022】
ポルトランドセメント中の主な4種類の化合物は、ケイ酸三カルシウムC3S、ケイ酸二カルシウムC2S、アルミン酸三カルシウムC3A、テトラカルシウムアルミノフェライトC4AFに近い組成物を有する。石灰石含有量の小さな変化は、セメントのC3SおよびC2S含有量に大きな変化をもたらす。未結合石灰石または遊離石灰石の過剰な存在は、水和中に容積の増加を招き、硬化したペーストを弱くするので、セメントクリンカー中においては、回避されなければならない。
【0023】
無水セメント化合物は、水と混合してペーストを形成するとき、不安定な飽和石灰石溶液を生成し、そこから発熱反応によって水和製品が徐々に堆積する。それらが別々に水和されるとき、4種類の主な化合物は、それら自体の反応性生物を生成し、また異なる速度にて強度を得る。ケイ酸三カルシウムC3Sは、ポルトランドセメントのすべての特性を有する。細かく粉砕し、そして水と混合するとき、それは急速に水和され、水酸化カルシウムCa(OH)2の結晶が急速に沈澱する。元の粒子の周囲には、ゼラチン状の水和したケイ酸カルシウムが形成され、これは不透過性であり、さらなる水和を大きく遅らせる。水和C3Sは、数時間内で固化すなわち硬化し、そして、急速に強度を高め、1カ月内でその強度の大部分を獲得する。βケイ酸二カルシウムbC2Sは、C2Sの水硬性形態であって、明確な固化時間は示さないが、数日間かけてゆっくり硬化する。それは、約14日間で低い強度をもたらすが、1年後にはその強度はC3Sと等しくなる。C3Sのより高い反応性は、bC2Sのより高いイオン充填密度に比べて、C3Sの結晶格子のより開放的な構造に帰することができる。アルミン酸三カルシウムC3Aは、水と非常に速く反応し、そのペーストは、それが乾燥できるほどの熱を発生してほとんど瞬間的に固化する。セメントクリンカーに対する25〜50%のC3S含有量に相当する3〜4%の石膏の添加は、通常の固化時間をもたらす。水和C3Aは、低い強度をもたらし、また硫酸塩の攻撃に対して低い抵抗性を有する。テトラカルシウムアルミノフェライトC4AF、すなわちフェライト相は、水と急速に反応するが、C3Aよりも速くはなく、低い強度を有するようになる。
【0024】
4種類の主要化合物は、ポルトランドセメント中で一緒に混合されると、石膏の存在は、水和の速度および2種のケイ酸カルシウム化合物C3SとbC2Sとの反応生成物に対する影響は少ないが、C3AとC4AFには大きく影響する。石灰石と石膏溶液との存在下では、C3Aは、アルミン酸カルシウム水和物を生成するだけでなく、スルホアルミン酸カルシウム化合物をも生成する。C4AFの場合、類似のスルホフェライトが生成されるが、これらの硫酸塩化合物はセメント質が少ないかまったくない。
【0025】
カナダにおけるポルトランドセメントの製造者は、
− Ciment Quebec Inc.
− Essroc Italcementi Group www.essroc.com
− Federal White Cement Ltd.
− Glacier Northwest Canadian Ltd.www.glaciernw.com
− Lafarge North America Inc.
− Lehigh Inland Cement Limited
− Miller Cement www.millergroup.ca
− St.Lawrence Cement Inc.www.stlawrencecement.com
− St.Mary’sCement Company
である。
【0026】
[硫酸カルシウム(石膏)]
石膏は、水和硫酸カルシウム、CaSO4.2(H2O)である。それは、堆積環境中においてより一般的な鉱物の1つである。それは硬度が2であり、比重(ここでは相対比重と呼ぶ)が2.3+である。天然石膏石は、地中から採掘され、次いで、破砕され、細かな粉に粉砕される。次いで、それは焼成され、化学的に結合した水の3/4が除かれる。また、結果は、通常焼き石膏としても知られる非常に乾燥した粉体のスタッコであり、水と混合されると急速に再水和し、「固化」すなわち硬化する。
【0027】
北米における石膏の製造者は、
− National Gypsum Company www.national-gypsum.com
− G−P Gypsum www.gp.com/gypsum
− James Hardie Gypsum www.hardirock.com
− CGC Inc.www.cgcinc.com
− USG www.usg.com
− American Gypsum www.americangypsum.com
である。
【実施例】
【0028】
アスベストまたはセルロース繊維を使用する繊維強化セメントは、住宅建築業においてサイディング用途に広く使用されてきた。現在のセメントサイディング/セメント屋根板の構成の欠点は、輸送するためにはかなりの重量があり、そして、どちらかといえば、脆弱な構造で、繊細に取り扱わなければならないことである。
【0029】
対照的に、本発明によれば、セメント質結合を形成することができる特別の充填材料が、高度に配向したポリマー全体に分散され、しかし、それを固化させるであろう流体または触媒とは反応されない構造が提供される。これは、繊維セメントに比べて比較的軽量および強度があり、輸送するのに軽くて、堅牢かつ設置の容易な製品を生成する。その設置に続いて、それは、雰囲気の湿度によって自然に、または水をかけることによって水和され、セメント質材料の隣接する空隙間にセメント質結合を形成し、ポリマーとセメントとの相互侵入母材を生成する。また、水和は輸送の前に行ってもよい。
【0030】
粒子状充填材は、全体がセメント質材料であってもよいが、また、充填材、例えば、木材鋸屑または他の非反応性(環境の中で)充填材と混合されたセメント質材料であってもよい。
【0031】
粒子状充填材料の「ポケット(Pockets)」間の相互接続を得るために、ポリマーに対する充填材の割合は、多孔質の配向したポリマー母材の孔が実質上開放し、かつ粒子状充填材がポリマー母材の中の孔または空隙の比較的大部分を占めるのに十分でなければならない。これは、複合材料が、空気を含む実質上閉じた孔および粒子状充填材料で充填された、多孔質の配向したポリマー母材から作られた、本発明者の以前のPCT特許出願に記載された発明とは対照的である(特許文献1参照)。容積の大部分は空気であり、そして、粒子状充填材はポリマー母材中の孔または空隙の比較的小さな部分を占めていた。
【0032】
本発明では、充填材の割合があまりにも低いと、それは閉じられた孔で残り、それによって、セメント質反応を起こさせる反応流体と接触するのは不可能である。ポリマーに対する充填材の特定の割合は、延伸速度および温度などのプロセスパラメーターにある程度依存するであろう。しかしながら、相互侵入網目を確立するには、一般に、約50:50の容積比が必要であろうと思われる。容積比は、成分の密度に応じて、構成成分の重量比と大きく異なることを認識すべきである。例えば、ポルトランドセメントの比重は3.1であるが、ポリプロピレンの比重は0.9である。
【0033】
本発明の好ましい実施形態において、配向可能な熱可塑性ポリマーは、ポリプロピレンである。しかしながら、当業者は、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル(「PVC」)およびPETのような他の配向可能な熱可塑性ポリマーを使用できることを認識するであろう。前述のリストは、例示のためのものであり、また網羅的であることは意図しておらず、高温で延伸される結果として、おそらくその構成分子構造の「延伸」に起因して伸びに対する力の特性が増大する、任意の熱可塑性ポリマーを使用することができる。
【0034】
[現場水和されるダイ延伸発泡配向性セメントポリプロピレン]
通常のポルトランドセメントを、新鮮なポリプロピレンコポリマー(Basell PDC 1275、MFI 8−10)と、25重量%のポリプロピレンに対して75重量%のセメントとの割合で、Aclo配合機によって混練した。このコンパウンドを、さらに新鮮なホモポリマーのポリプロピレン(BP 10−6014、MFI約0.7)と混合し、ポルトランドセメントの様々なレベルを有する最終材料を製造した。これらのセメント/ポリプロピレン材料は、一軸スクリュー押出機(1.75インチ)Deltaplast)で、1.75インチ×0.375インチのダイを通して押し出した。
【0035】
最初の実験で、材料は、1ft/分で押し出され、ポリプロピレン中に、37.5重量%、52.5重量%、67.5重量%のセメントから構成された。次いで、これらの材料を、8ftの強制対流炉に145℃で通過させ、次いで、上部と底部のダイ角度が15度で、側部角度が25度であり、出口面積に対する部品サイズの比が1.8である、加熱した集束ダイ(145℃)を通して、連続的に引っ張った。
【0036】
これらの各レベルのセメント充填材は、下の表2に示されるように、最終部品において異なる密度をもたらした。複合材料の延伸(すなわち、ダイ延伸または自由延伸)は、相対密度がその出発ビレットのそれに比べて非常に低い材料をもたらした。膨張され配向された木材充填ポリプロピレンの場合のように、この密度の低下は、粒子状充填材とポリプロピレンが互いに接着せず(おそらく、粒子状充填材とポリプロピレンのそれぞれの極性の不一致によるものであろう)、むしろ分離したままであり、そして、それによって延伸プロセス中に空隙を作るためであると考えられる。
【0037】
表2における密度は、試料の寸法と質量とを測定し、容積を計算し、それによって密度を計算した。密度または容積測定の液体置換法は、材料がその多孔質構造の中に少量の液体を容易に吸収するので、この場合信頼性がない。
【0038】
【表2】
【0039】
セメントの量が増加すると、セメント粒子が作用して、延伸プロセス中に空隙を形成し、多孔質の最終材料をもたらすので、全体の密度は低下する。この多孔質の最終材料は、多孔質構造の空隙内のセメントを水和するために、水中に浸漬されることができる。水の摂取を加速するために、サンプルを通常の台所用品の圧力調理器の中に置いた。様々な時間で、サンプルを圧力調理器から取り出し、その表面を乾燥し、重量を計った。図3は、3種類のサンプルの一定時間にわたる水の摂取を例示している。
【0040】
延伸の前後の材料の密度を用いて、空隙の割合を計算した。水摂取試験の終わりに、セメント67.5%の場合においては、空隙容積の90%以下しか充填されなかった。この水は、セメントと反応して、多孔質材料の空隙の内部に水和生成物を形成するであろうと考えられた。セメントの水和の程度を試験するために、サンプルを雰囲気条件で空気中で硬化させ、その重量を追跡した(図4)。
【0041】
図4は、多くの水が失われることを明らかにしているが、サンプルが定常状態に達した後、いくらかは保持されている(16000分後の67.5%セメントのサンプルのように)。セメントに対する保持された水の質量比は、水和のレベルを示している。67.5%セメントのサンプルの場合においては、水に対するセメントの質量比は、6.3:1である。
【0042】
同じ試験を、図5にプロットするが、水に対するセメントの比は計算されたものである。試験の終わりに、保持された水があることが判る。水に対するセメントの比が小さいことが、完全な水和には望ましいことに留意すべきである。
【0043】
水和セメントへの燃焼の影響を試験するために、ポリプロピレン中のポルトランドセメント67.5%の水和サンプルと非水和サンプルを、目盛り付き箔平鍋上のワイア保持器内に置いた。これらのサンプルをブタン炎で着火し、そして、材料の燃焼、質量変化および炎の高さを記録した。燃焼が進むと、質量は減少し、減少の速度は、非水和サンプルに比べて水和サンプルのほうが遅かった。図6は、水和サンプルと非水和サンプルの質量変化の速度を例示しており、水和サンプルは、非水和サンプルよりも、より遅い質量損失の速度を示す。質量は、初期のサンプル質量の割合として表わされている。
【0044】
図7は、燃焼実験の質量と炎高さとのデータを示している。材料燃焼の速度(g/分/cm3)の結果を、炎高さと一緒にプロットした。燃焼速度は、炎高さに反映され、そして水和サンプルは著しく低い炎高さと材料燃焼速度とを示した。非水和サンプルは、118秒にて、大きな材料の塊を落下し始めたが、水和サンプルは、試験の間無傷に保たれたことが注目される。
【0045】
ポリプロピレンが効果的に材料から燃焼されたので、それは、明らかに、連続相であり、燃焼/発煙されると、表面に吸い出された。残渣が、未燃焼の元のサンプルよりも単に僅かに小さかったので、水和セメントは、非常に多孔質のセメントにて空隙を充填するか、または空隙の外壁を被覆し、そして、このようにして燃焼を停止した後に部品の容積を維持することは明らかである。残される水和セメントが、固体の塊として残り、そして直ちに灰にならなかったので、それは、第2の連続相を構成するか、または水和セメントのドメインが、単に機械的に一緒に保持されるか、または燃焼するポリプロピレンの灰によって保持されるのであろう。いずれにしても、ポリプロピレンが消費された後、残される材料は強度が低かったので、それは構造材料としては使用不可能であると考えられ、そして僅かな風で灰になったのであろう。顕微鏡検査(50倍で)では、水和の前後で、空隙の外観に変化はなかった。現在のところ、水和セメントの正確な形態は知られていない。
【0046】
これらの結果から、セメントはあるレベルの水和に達し、この水和セメントはポリプロピレンの燃焼を停止させないが、不活性充填材に比べてその燃焼プロセスを修正することが判る。また、セメントの残渣は、ポリプロピレンが取り除かれた後、直ちに崩壊しなかった。これは水和されたセメントが空隙中で小さな粒子の形ではなく、空隙(おそらく、大きなサイズの孔)の中に広がり、そして、粒子の付着された網目を形成するか、またはそれらの形状のために機械的に互いに固定されることのいずれかを示している。
【0047】
水和、および非水和のダイ延伸ポルトランドセメント−ポリプロピレンのサンプルを、(図8〜10に示されるように)16:1以上の厚さ比に対する試験範囲を用いて、3点曲げで試験を行った。結果は、すべての場合において、説明された水和プロセスに曝したサンプルは、許容荷重が増加することを示している。図8は、67.5重量%のセメント含有量を有するサンプルの比較を例示し、図9は、52.5重量%のセメント含有量を有するサンプルの比較を例示し、そして、図10は、37.5重量%のセメント含有量を有するサンプルの比較を例示している。
【0048】
[現場水和される自由延伸発泡配向性セメントポリプロピレン]
40、50、60%(重量で)のセメント含有量を有する押し出されたセメント/ポリプロピレンの小片を調製し、そして、延伸台を用いてバッチモードにて自由延伸した(すなわち、ダイを使用せずに延伸した)。長さにして48インチのサンプルを切断し、そして、一端から2インチに、3/8インチのピンのために穴を空けた。これらの切断サンプルを、最低30分間にわたって、150℃の炉の中に置いた。次いで、サンプルをその炉から取り出し、その末端部を数秒間水で冷却し、そして、末端部に通したピンを用いて延伸台(150℃)のチャンバーを通して設置した。次いで、他の端部を延伸台の掴み装置で掴み、そして、8.5ft/分で引っ張った。形成されたネック部が保持ピンの周りの冷却された材料に近づくまで、サンプルの第1の組を引っ張った。パーツが壊れるか、またはリグがもはや引っ張れなくなるまで、サンプルを引っ張るように、実験の第2の組を行った。サンプルの密度および線延伸比(LDR)は、表3に見ることができる。
【0049】
【表3】
【0050】
実験1からのサンプルを、台所用の圧力調理器の中に置き、装置の設計圧力で蒸気に暴露した。パーツを間隔をおいて取り出し、表面を乾燥し、そして、重量を計った。圧力調理器中に所定時間置いた後、部品を取り出し、そして、表面が冷却する時間がなく、かつ定期的に重量を測定するために、室温の水の中にすばやく置いた。この後、それらを雰囲気空気温度の中に置いて、硬化させた。
【0051】
水に対するセメントの質量比に関して、これらの自由延伸試験片は、その大きな空隙のために、高い初期の含水率を示すが、しばらくすると水和セメントは、前段落(図11)のダイ延伸セメントサンプルと同じように、定常状態に達するまで水を放出する。
【0052】
上記は、本発明を制限するのではなく、例示を意図するものである。当業者にとっては、以下に記載した請求項によって定義されるような本発明の精神および範囲から逸脱することなく、変更を加えることができよう。得られる製品に寄与するものと必然的に考えられる様々な機構を示唆したが、それらは単に本発明の理解を助けようとするために含まれるものである。これらの機構のいくつかは推論的であり、また、したがって、説明した本発明への制限として考えるべきではないことは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明による複合材料を形成するための形成方法を例示する断面図である。
【図2】本発明による複合材料を形成するための連続プロセスを例示する概略図である。
【図3】本発明の1つの実施形態による水和ダイ延伸複合材料の経時的な水の摂取を例示するグラフである。
【図4】本発明の1つの実施形態による水和ダイ延伸複合材料の経時的な水の損失を例示するグラフである。
【図5】本発明の1つの実施形態による水和複合材料の経時的な水の摂取と損失を例示するグラフである。
【図6】本発明の1つの実施形態による複合材料の水和および非水和サンプルの質量が、サンプルの燃焼する間に変化する速度を例示するグラフである。
【図7】図6のサンプルの燃焼速度に対応する炎高さを対応を例示するグラフである。
【図8】本発明の1つの実施形態による、第1の割合の充填材を有する水和および非水和複合材料の相対許容荷重を例示するグラフである。
【図9】本発明の1つの実施形態による、第2の割合の充填材を有する水和および非水和複合材料の相対許容荷重を例示するグラフである。
【図10】本発明の1つの実施形態による、第3の割合の充填材を有する、水和および非水和複合材料の相対許容荷重を例示するグラフである。
【図11】本発明の1つの実施形態による水和自由延伸複合材料の水の損失を例示するグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、高度に配向したポリマー全体に粒子状充填材が分散されている複合材料に関する。さらに詳細には、本発明は粒子状充填材が反応性であるそれらの複合材構造に関する。
【背景技術】
【0002】
発明者の以前のPCT特許出願(例えば、特許文献1参照。)は、複合材料とその複合材料を製造するプロセスを記載している。そのプロセスは、以下のプロセスステップを含む。
【0003】
i)配向性の押し出し可能な熱可塑性ポリマーを粒子状充填材と混合して、出発材料を形成すること、
ii)出発材料を加熱し押し出し成形して、第1の柱にすること、
iii)第1の柱の温度を延伸温度に調節すること、
iv)第1の柱を延伸ダイに供給し、そして、第1の柱の断面積より小さな断面積を有する第2の柱として、第1の柱を延伸ダイから排出すること、および、
v)第2の柱に引っ張り力を加えて、ポリマーを配向させ、かつ、第2の柱が密度を減じて複合材料を形成するのに十分な速度にて、延伸ダイを通して第1の柱を延伸すること。
【0004】
例えば、ポリプロピレンと木材鋸屑を用いて実施する時の上述のプロセスの驚くべき結果は、得られる製品が、木材に比肩し得るその特性の多くを備えた多孔質構造であり、また、多くの用途において木材の代替として適していることである。得られる製品は比較的水分を浸透せず、また、したがって、腐食をもたらす環境で木材よりもはるかに長持ちするので、多くの用途において、得られる製品は木材よりも有益であろう。
【0005】
本発明は、最終製品においてさらに向上した特性を得るために、反応性粒子状充填材の使用を考えている。
【0006】
【特許文献1】特許出願第PCT/CA00/01555号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、配向したポリマーとセメント質粒子状充填材とを含む複合材料を提供することであり、複合材料は、混合された出発材料の理論的な密度よりも小さい密度を有し、また、配向したポリマーは、セメント質充填材が適切な流体と反応して、配向したポリマー母材に相互侵入するセメント状結合構造を作ることができるように、セメント質粒子状充填材を全体にわたって分散する母材を形成する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
延伸プロセスによって製造された高度に配向した熱可塑性ポリマーと、流体と反応してセメント質結合を形成することのできる粒子状充填材とを有する複合材料が提供される。充填材の量と分散の程度とは、充填材が流体と反応して、複合材料中にポリマーと空隙との相互侵入網目を形成する程度である。
【0009】
粒子状充填材は、ケイ酸塩セメントまたは石膏とすることができる。
【0010】
本発明の1つの実施形態では、粒子状充填材は少なくとも1種のポルトランドセメントおよび硫酸カルシウム半水和物を含む。
【0011】
粒子状充填材は、木材鋸屑などの非反応性成分をさらに含むことができる。
【0012】
ここで、付随する図を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を例示の形で説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本出願に適した粒子状充填材を備える高度に配向した熱可塑性ポリマーを製造するための延伸プロセスは、特許文献1に記載されており、また、上述の背景技術の中で述べている。
【0014】
図1は、延伸プロセスを例示する。図1によれば、全体的に参照10で示される、配向した熱可塑性ポリマーと充填材料とを混合された供給材料は、出口24に向かって断面積が減少している通路22を有する押し出しダイ20を通して押し出される。混合材料は加熱され、端部30が現れるまで最初に出口24を通して押し出され、これは引取装置40によって掴むことができる。配向および密度減少の両方を起こさせるのに十分な引っ張り力は、矢44の方向に加えられ、最終結果は、その全体に粒子状充填材料と空気とが分散された、高度に配向した多孔質のポリマー母材である。
【0015】
図2は、図1に示したダイ20などの装置で使用する連続プロセスを示しており、主な相違は、図1に示すようなチェーン付クランプの構成の替わりに、参照40で示すような掴みベルトが使用されることである。ダイ20の上流(図の左方向)は、押出機120に供給する原材料ホッパー121であり、押出機は配向可能なポリマーと粒子状充填材との混合物を混合および溶融し、さらに混合した混合物を押し出しダイ122に駆動する。第1の引っ張り部125は、押し出された柱を連続炉126に供給し、柱の温度は引っ張り温度に調節される。プロセスのその他の部分は、実質上図1に示したものと同じである。
【0016】
上で述べたように、最初の仕事は、比較的不活性な充填材を用いて行われ、これは、一般的に、充填材がポリマーに対して非反応性であり、また典型的な用途環境中において非反応性であったことを意味する。
【0017】
本発明によれば、例えば、配向したポリマー母材に浸透する相互侵入網目系および/または抗菌特性を提供することのできる反応性粒子状充填材が意図されている。本技術には様々な反応性充填材での他の用途があろう。例として、いくつかのカルシウム化合物が可能性のある候補として考えられた。これらのいくつかの特性を以下に述べるが、これらは単なる例であり、網羅的なリストではないことを理解すべきである。
【0018】
熱可塑性プラスチックに使用される多くの充填材が存在するが、最初は最も経済的な影響の強いものを考えた。その水との反応性、および最初に充填された配向ポリマーを形成し、第2工程として、それを水と反応させる可能性のため、ポルトランドセメントおよび硫酸カルシウム(すなわち、石膏)が考えられる。これは、セメントおよび石膏製品を形成する歴史の中で独特である。
【0019】
表1は、これらの充填材の種類の概観を示す。
【0020】
【表1】
【0021】
[ケイ酸カルシウム(ポルトランドセメント)]
ポルトランドセメントは、1500℃(2,732°F)の温度に達する回転キルンと呼ばれる回転炉中で、主成分として石灰石、粘土および砂から製造される。高い熱は、化学反応を起こさせ、部分的に溶融した原材料は、クリンカーと呼ばれるペレットに変換される。いくらかの石膏と他の主要な材料とを加えた後、混合物は、「ポルトランドセメント」と呼ばれる非常に細かな灰色の粉(75ミクロン)に粉砕される。様々な物理的および化学的要件を満足するために製造された異なる種類のポルトランドセメントが存在する。米国試験材料協会(ASTM)の仕様C−150は、8種類のポルトランドセメントを規定している。例えば、タイプ1のポルトランドセメントは、あらゆる使用に適した通常の汎用セメントであり、この研究で使用するであろう種類である。
【0022】
ポルトランドセメント中の主な4種類の化合物は、ケイ酸三カルシウムC3S、ケイ酸二カルシウムC2S、アルミン酸三カルシウムC3A、テトラカルシウムアルミノフェライトC4AFに近い組成物を有する。石灰石含有量の小さな変化は、セメントのC3SおよびC2S含有量に大きな変化をもたらす。未結合石灰石または遊離石灰石の過剰な存在は、水和中に容積の増加を招き、硬化したペーストを弱くするので、セメントクリンカー中においては、回避されなければならない。
【0023】
無水セメント化合物は、水と混合してペーストを形成するとき、不安定な飽和石灰石溶液を生成し、そこから発熱反応によって水和製品が徐々に堆積する。それらが別々に水和されるとき、4種類の主な化合物は、それら自体の反応性生物を生成し、また異なる速度にて強度を得る。ケイ酸三カルシウムC3Sは、ポルトランドセメントのすべての特性を有する。細かく粉砕し、そして水と混合するとき、それは急速に水和され、水酸化カルシウムCa(OH)2の結晶が急速に沈澱する。元の粒子の周囲には、ゼラチン状の水和したケイ酸カルシウムが形成され、これは不透過性であり、さらなる水和を大きく遅らせる。水和C3Sは、数時間内で固化すなわち硬化し、そして、急速に強度を高め、1カ月内でその強度の大部分を獲得する。βケイ酸二カルシウムbC2Sは、C2Sの水硬性形態であって、明確な固化時間は示さないが、数日間かけてゆっくり硬化する。それは、約14日間で低い強度をもたらすが、1年後にはその強度はC3Sと等しくなる。C3Sのより高い反応性は、bC2Sのより高いイオン充填密度に比べて、C3Sの結晶格子のより開放的な構造に帰することができる。アルミン酸三カルシウムC3Aは、水と非常に速く反応し、そのペーストは、それが乾燥できるほどの熱を発生してほとんど瞬間的に固化する。セメントクリンカーに対する25〜50%のC3S含有量に相当する3〜4%の石膏の添加は、通常の固化時間をもたらす。水和C3Aは、低い強度をもたらし、また硫酸塩の攻撃に対して低い抵抗性を有する。テトラカルシウムアルミノフェライトC4AF、すなわちフェライト相は、水と急速に反応するが、C3Aよりも速くはなく、低い強度を有するようになる。
【0024】
4種類の主要化合物は、ポルトランドセメント中で一緒に混合されると、石膏の存在は、水和の速度および2種のケイ酸カルシウム化合物C3SとbC2Sとの反応生成物に対する影響は少ないが、C3AとC4AFには大きく影響する。石灰石と石膏溶液との存在下では、C3Aは、アルミン酸カルシウム水和物を生成するだけでなく、スルホアルミン酸カルシウム化合物をも生成する。C4AFの場合、類似のスルホフェライトが生成されるが、これらの硫酸塩化合物はセメント質が少ないかまったくない。
【0025】
カナダにおけるポルトランドセメントの製造者は、
− Ciment Quebec Inc.
− Essroc Italcementi Group www.essroc.com
− Federal White Cement Ltd.
− Glacier Northwest Canadian Ltd.www.glaciernw.com
− Lafarge North America Inc.
− Lehigh Inland Cement Limited
− Miller Cement www.millergroup.ca
− St.Lawrence Cement Inc.www.stlawrencecement.com
− St.Mary’sCement Company
である。
【0026】
[硫酸カルシウム(石膏)]
石膏は、水和硫酸カルシウム、CaSO4.2(H2O)である。それは、堆積環境中においてより一般的な鉱物の1つである。それは硬度が2であり、比重(ここでは相対比重と呼ぶ)が2.3+である。天然石膏石は、地中から採掘され、次いで、破砕され、細かな粉に粉砕される。次いで、それは焼成され、化学的に結合した水の3/4が除かれる。また、結果は、通常焼き石膏としても知られる非常に乾燥した粉体のスタッコであり、水と混合されると急速に再水和し、「固化」すなわち硬化する。
【0027】
北米における石膏の製造者は、
− National Gypsum Company www.national-gypsum.com
− G−P Gypsum www.gp.com/gypsum
− James Hardie Gypsum www.hardirock.com
− CGC Inc.www.cgcinc.com
− USG www.usg.com
− American Gypsum www.americangypsum.com
である。
【実施例】
【0028】
アスベストまたはセルロース繊維を使用する繊維強化セメントは、住宅建築業においてサイディング用途に広く使用されてきた。現在のセメントサイディング/セメント屋根板の構成の欠点は、輸送するためにはかなりの重量があり、そして、どちらかといえば、脆弱な構造で、繊細に取り扱わなければならないことである。
【0029】
対照的に、本発明によれば、セメント質結合を形成することができる特別の充填材料が、高度に配向したポリマー全体に分散され、しかし、それを固化させるであろう流体または触媒とは反応されない構造が提供される。これは、繊維セメントに比べて比較的軽量および強度があり、輸送するのに軽くて、堅牢かつ設置の容易な製品を生成する。その設置に続いて、それは、雰囲気の湿度によって自然に、または水をかけることによって水和され、セメント質材料の隣接する空隙間にセメント質結合を形成し、ポリマーとセメントとの相互侵入母材を生成する。また、水和は輸送の前に行ってもよい。
【0030】
粒子状充填材は、全体がセメント質材料であってもよいが、また、充填材、例えば、木材鋸屑または他の非反応性(環境の中で)充填材と混合されたセメント質材料であってもよい。
【0031】
粒子状充填材料の「ポケット(Pockets)」間の相互接続を得るために、ポリマーに対する充填材の割合は、多孔質の配向したポリマー母材の孔が実質上開放し、かつ粒子状充填材がポリマー母材の中の孔または空隙の比較的大部分を占めるのに十分でなければならない。これは、複合材料が、空気を含む実質上閉じた孔および粒子状充填材料で充填された、多孔質の配向したポリマー母材から作られた、本発明者の以前のPCT特許出願に記載された発明とは対照的である(特許文献1参照)。容積の大部分は空気であり、そして、粒子状充填材はポリマー母材中の孔または空隙の比較的小さな部分を占めていた。
【0032】
本発明では、充填材の割合があまりにも低いと、それは閉じられた孔で残り、それによって、セメント質反応を起こさせる反応流体と接触するのは不可能である。ポリマーに対する充填材の特定の割合は、延伸速度および温度などのプロセスパラメーターにある程度依存するであろう。しかしながら、相互侵入網目を確立するには、一般に、約50:50の容積比が必要であろうと思われる。容積比は、成分の密度に応じて、構成成分の重量比と大きく異なることを認識すべきである。例えば、ポルトランドセメントの比重は3.1であるが、ポリプロピレンの比重は0.9である。
【0033】
本発明の好ましい実施形態において、配向可能な熱可塑性ポリマーは、ポリプロピレンである。しかしながら、当業者は、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル(「PVC」)およびPETのような他の配向可能な熱可塑性ポリマーを使用できることを認識するであろう。前述のリストは、例示のためのものであり、また網羅的であることは意図しておらず、高温で延伸される結果として、おそらくその構成分子構造の「延伸」に起因して伸びに対する力の特性が増大する、任意の熱可塑性ポリマーを使用することができる。
【0034】
[現場水和されるダイ延伸発泡配向性セメントポリプロピレン]
通常のポルトランドセメントを、新鮮なポリプロピレンコポリマー(Basell PDC 1275、MFI 8−10)と、25重量%のポリプロピレンに対して75重量%のセメントとの割合で、Aclo配合機によって混練した。このコンパウンドを、さらに新鮮なホモポリマーのポリプロピレン(BP 10−6014、MFI約0.7)と混合し、ポルトランドセメントの様々なレベルを有する最終材料を製造した。これらのセメント/ポリプロピレン材料は、一軸スクリュー押出機(1.75インチ)Deltaplast)で、1.75インチ×0.375インチのダイを通して押し出した。
【0035】
最初の実験で、材料は、1ft/分で押し出され、ポリプロピレン中に、37.5重量%、52.5重量%、67.5重量%のセメントから構成された。次いで、これらの材料を、8ftの強制対流炉に145℃で通過させ、次いで、上部と底部のダイ角度が15度で、側部角度が25度であり、出口面積に対する部品サイズの比が1.8である、加熱した集束ダイ(145℃)を通して、連続的に引っ張った。
【0036】
これらの各レベルのセメント充填材は、下の表2に示されるように、最終部品において異なる密度をもたらした。複合材料の延伸(すなわち、ダイ延伸または自由延伸)は、相対密度がその出発ビレットのそれに比べて非常に低い材料をもたらした。膨張され配向された木材充填ポリプロピレンの場合のように、この密度の低下は、粒子状充填材とポリプロピレンが互いに接着せず(おそらく、粒子状充填材とポリプロピレンのそれぞれの極性の不一致によるものであろう)、むしろ分離したままであり、そして、それによって延伸プロセス中に空隙を作るためであると考えられる。
【0037】
表2における密度は、試料の寸法と質量とを測定し、容積を計算し、それによって密度を計算した。密度または容積測定の液体置換法は、材料がその多孔質構造の中に少量の液体を容易に吸収するので、この場合信頼性がない。
【0038】
【表2】
【0039】
セメントの量が増加すると、セメント粒子が作用して、延伸プロセス中に空隙を形成し、多孔質の最終材料をもたらすので、全体の密度は低下する。この多孔質の最終材料は、多孔質構造の空隙内のセメントを水和するために、水中に浸漬されることができる。水の摂取を加速するために、サンプルを通常の台所用品の圧力調理器の中に置いた。様々な時間で、サンプルを圧力調理器から取り出し、その表面を乾燥し、重量を計った。図3は、3種類のサンプルの一定時間にわたる水の摂取を例示している。
【0040】
延伸の前後の材料の密度を用いて、空隙の割合を計算した。水摂取試験の終わりに、セメント67.5%の場合においては、空隙容積の90%以下しか充填されなかった。この水は、セメントと反応して、多孔質材料の空隙の内部に水和生成物を形成するであろうと考えられた。セメントの水和の程度を試験するために、サンプルを雰囲気条件で空気中で硬化させ、その重量を追跡した(図4)。
【0041】
図4は、多くの水が失われることを明らかにしているが、サンプルが定常状態に達した後、いくらかは保持されている(16000分後の67.5%セメントのサンプルのように)。セメントに対する保持された水の質量比は、水和のレベルを示している。67.5%セメントのサンプルの場合においては、水に対するセメントの質量比は、6.3:1である。
【0042】
同じ試験を、図5にプロットするが、水に対するセメントの比は計算されたものである。試験の終わりに、保持された水があることが判る。水に対するセメントの比が小さいことが、完全な水和には望ましいことに留意すべきである。
【0043】
水和セメントへの燃焼の影響を試験するために、ポリプロピレン中のポルトランドセメント67.5%の水和サンプルと非水和サンプルを、目盛り付き箔平鍋上のワイア保持器内に置いた。これらのサンプルをブタン炎で着火し、そして、材料の燃焼、質量変化および炎の高さを記録した。燃焼が進むと、質量は減少し、減少の速度は、非水和サンプルに比べて水和サンプルのほうが遅かった。図6は、水和サンプルと非水和サンプルの質量変化の速度を例示しており、水和サンプルは、非水和サンプルよりも、より遅い質量損失の速度を示す。質量は、初期のサンプル質量の割合として表わされている。
【0044】
図7は、燃焼実験の質量と炎高さとのデータを示している。材料燃焼の速度(g/分/cm3)の結果を、炎高さと一緒にプロットした。燃焼速度は、炎高さに反映され、そして水和サンプルは著しく低い炎高さと材料燃焼速度とを示した。非水和サンプルは、118秒にて、大きな材料の塊を落下し始めたが、水和サンプルは、試験の間無傷に保たれたことが注目される。
【0045】
ポリプロピレンが効果的に材料から燃焼されたので、それは、明らかに、連続相であり、燃焼/発煙されると、表面に吸い出された。残渣が、未燃焼の元のサンプルよりも単に僅かに小さかったので、水和セメントは、非常に多孔質のセメントにて空隙を充填するか、または空隙の外壁を被覆し、そして、このようにして燃焼を停止した後に部品の容積を維持することは明らかである。残される水和セメントが、固体の塊として残り、そして直ちに灰にならなかったので、それは、第2の連続相を構成するか、または水和セメントのドメインが、単に機械的に一緒に保持されるか、または燃焼するポリプロピレンの灰によって保持されるのであろう。いずれにしても、ポリプロピレンが消費された後、残される材料は強度が低かったので、それは構造材料としては使用不可能であると考えられ、そして僅かな風で灰になったのであろう。顕微鏡検査(50倍で)では、水和の前後で、空隙の外観に変化はなかった。現在のところ、水和セメントの正確な形態は知られていない。
【0046】
これらの結果から、セメントはあるレベルの水和に達し、この水和セメントはポリプロピレンの燃焼を停止させないが、不活性充填材に比べてその燃焼プロセスを修正することが判る。また、セメントの残渣は、ポリプロピレンが取り除かれた後、直ちに崩壊しなかった。これは水和されたセメントが空隙中で小さな粒子の形ではなく、空隙(おそらく、大きなサイズの孔)の中に広がり、そして、粒子の付着された網目を形成するか、またはそれらの形状のために機械的に互いに固定されることのいずれかを示している。
【0047】
水和、および非水和のダイ延伸ポルトランドセメント−ポリプロピレンのサンプルを、(図8〜10に示されるように)16:1以上の厚さ比に対する試験範囲を用いて、3点曲げで試験を行った。結果は、すべての場合において、説明された水和プロセスに曝したサンプルは、許容荷重が増加することを示している。図8は、67.5重量%のセメント含有量を有するサンプルの比較を例示し、図9は、52.5重量%のセメント含有量を有するサンプルの比較を例示し、そして、図10は、37.5重量%のセメント含有量を有するサンプルの比較を例示している。
【0048】
[現場水和される自由延伸発泡配向性セメントポリプロピレン]
40、50、60%(重量で)のセメント含有量を有する押し出されたセメント/ポリプロピレンの小片を調製し、そして、延伸台を用いてバッチモードにて自由延伸した(すなわち、ダイを使用せずに延伸した)。長さにして48インチのサンプルを切断し、そして、一端から2インチに、3/8インチのピンのために穴を空けた。これらの切断サンプルを、最低30分間にわたって、150℃の炉の中に置いた。次いで、サンプルをその炉から取り出し、その末端部を数秒間水で冷却し、そして、末端部に通したピンを用いて延伸台(150℃)のチャンバーを通して設置した。次いで、他の端部を延伸台の掴み装置で掴み、そして、8.5ft/分で引っ張った。形成されたネック部が保持ピンの周りの冷却された材料に近づくまで、サンプルの第1の組を引っ張った。パーツが壊れるか、またはリグがもはや引っ張れなくなるまで、サンプルを引っ張るように、実験の第2の組を行った。サンプルの密度および線延伸比(LDR)は、表3に見ることができる。
【0049】
【表3】
【0050】
実験1からのサンプルを、台所用の圧力調理器の中に置き、装置の設計圧力で蒸気に暴露した。パーツを間隔をおいて取り出し、表面を乾燥し、そして、重量を計った。圧力調理器中に所定時間置いた後、部品を取り出し、そして、表面が冷却する時間がなく、かつ定期的に重量を測定するために、室温の水の中にすばやく置いた。この後、それらを雰囲気空気温度の中に置いて、硬化させた。
【0051】
水に対するセメントの質量比に関して、これらの自由延伸試験片は、その大きな空隙のために、高い初期の含水率を示すが、しばらくすると水和セメントは、前段落(図11)のダイ延伸セメントサンプルと同じように、定常状態に達するまで水を放出する。
【0052】
上記は、本発明を制限するのではなく、例示を意図するものである。当業者にとっては、以下に記載した請求項によって定義されるような本発明の精神および範囲から逸脱することなく、変更を加えることができよう。得られる製品に寄与するものと必然的に考えられる様々な機構を示唆したが、それらは単に本発明の理解を助けようとするために含まれるものである。これらの機構のいくつかは推論的であり、また、したがって、説明した本発明への制限として考えるべきではないことは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明による複合材料を形成するための形成方法を例示する断面図である。
【図2】本発明による複合材料を形成するための連続プロセスを例示する概略図である。
【図3】本発明の1つの実施形態による水和ダイ延伸複合材料の経時的な水の摂取を例示するグラフである。
【図4】本発明の1つの実施形態による水和ダイ延伸複合材料の経時的な水の損失を例示するグラフである。
【図5】本発明の1つの実施形態による水和複合材料の経時的な水の摂取と損失を例示するグラフである。
【図6】本発明の1つの実施形態による複合材料の水和および非水和サンプルの質量が、サンプルの燃焼する間に変化する速度を例示するグラフである。
【図7】図6のサンプルの燃焼速度に対応する炎高さを対応を例示するグラフである。
【図8】本発明の1つの実施形態による、第1の割合の充填材を有する水和および非水和複合材料の相対許容荷重を例示するグラフである。
【図9】本発明の1つの実施形態による、第2の割合の充填材を有する水和および非水和複合材料の相対許容荷重を例示するグラフである。
【図10】本発明の1つの実施形態による、第3の割合の充填材を有する、水和および非水和複合材料の相対許容荷重を例示するグラフである。
【図11】本発明の1つの実施形態による水和自由延伸複合材料の水の損失を例示するグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
延伸プロセスによって製造した高度に配向したポリマーと、
前記高度に配向したポリマーに接着せず、流体と反応してセメント質結合を形成することの可能な粒子状充填材と
を含む複合材料であって、
前記充填材の量および分散度は、前記充填材が前記流体と反応する際に、前記複合材料中に、ポリマーとセメント質との相互侵入網目を形成する程度のものであることを特徴とする複合材料。
【請求項2】
前記粒子状充填材は、ケイ酸塩セメントおよび石膏からなる群から選択される部材であることを特徴とする請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記粒子状充填材は、少なくとも1種のポルトランドセメントと硫酸カルシウム半水和物とを含むことを特徴とする請求項2に記載の複合材料。
【請求項4】
前記粒子状充填材は、非反応性成分をさらに含むことを特徴とする請求項3に記載の複合材料。
【請求項5】
前記非反応性成分は、木材鋸屑であることを特徴とする請求項4に記載の複合材料。
【請求項6】
前記延伸プロセスは、ダイ延伸プロセスであることを特徴とする請求項1に記載の複合材料。
【請求項7】
前記延伸プロセスは、自由延伸プロセスであることを特徴とする請求項1に記載の複合材料。
【請求項8】
配向したポリマーに対するポルトランドセメントの重量比は、37.5重量%〜67.5重量%であることを特徴とする請求項3に記載の複合材料。
【請求項9】
配向したポリマーに対するポルトランドセメントの重量比は、67.5重量%であることを特徴とする請求項3に記載の複合材料。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
延伸プロセスによって製造した高度に配向したポリマーと、
前記高度に配向したポリマーと接着せず、流体と反応してセメント質結合を形成することの可能な粒子状充填材と
を含む複合構造材料であって、
前記充填材は、前記充填材が前記流体と反応する際に、前記複合材料中に、ポリマーとセメント質の相互侵入網目を形成するのに十分な量存在し、十分な程度に分散されていることを特徴とする複合材料。
【請求項2】
前記粒子状充填材は、ケイ酸塩セメントおよび石膏からなる群から選択される部材であることを特徴とする請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記粒子状充填材は、少なくとも1種のポルトランドセメントと硫酸カルシウム半水和物を含むことを特徴とする請求項2に記載の複合材料。
【請求項4】
前記粒子状充填材は、非反応性成分をさらに含むことを特徴とする請求項3に記載の複合材料。
【請求項5】
前記非反応性成分は、木材鋸屑であることを特徴とする請求項4に記載の複合材料。
【請求項6】
前記延伸プロセスは、ダイ延伸プロセスであることを特徴とする請求項1に記載の複合材料。
【請求項7】
前記延伸プロセスは、自由延伸プロセスであることを特徴とする請求項1に記載の複合材料。
【請求項8】
配向したポリマーに対するポルトランドセメントの重量比は、37.5重量%〜67.5重量%であることを特徴とする請求項3に記載の複合材料。
【請求項9】
配向したポリマーに対するポルトランドセメントの重量比は、67.5重量%であることを特徴とする請求項3に記載の複合材料。
【請求項1】
延伸プロセスによって製造した高度に配向したポリマーと、
前記高度に配向したポリマーに接着せず、流体と反応してセメント質結合を形成することの可能な粒子状充填材と
を含む複合材料であって、
前記充填材の量および分散度は、前記充填材が前記流体と反応する際に、前記複合材料中に、ポリマーとセメント質との相互侵入網目を形成する程度のものであることを特徴とする複合材料。
【請求項2】
前記粒子状充填材は、ケイ酸塩セメントおよび石膏からなる群から選択される部材であることを特徴とする請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記粒子状充填材は、少なくとも1種のポルトランドセメントと硫酸カルシウム半水和物とを含むことを特徴とする請求項2に記載の複合材料。
【請求項4】
前記粒子状充填材は、非反応性成分をさらに含むことを特徴とする請求項3に記載の複合材料。
【請求項5】
前記非反応性成分は、木材鋸屑であることを特徴とする請求項4に記載の複合材料。
【請求項6】
前記延伸プロセスは、ダイ延伸プロセスであることを特徴とする請求項1に記載の複合材料。
【請求項7】
前記延伸プロセスは、自由延伸プロセスであることを特徴とする請求項1に記載の複合材料。
【請求項8】
配向したポリマーに対するポルトランドセメントの重量比は、37.5重量%〜67.5重量%であることを特徴とする請求項3に記載の複合材料。
【請求項9】
配向したポリマーに対するポルトランドセメントの重量比は、67.5重量%であることを特徴とする請求項3に記載の複合材料。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
延伸プロセスによって製造した高度に配向したポリマーと、
前記高度に配向したポリマーと接着せず、流体と反応してセメント質結合を形成することの可能な粒子状充填材と
を含む複合構造材料であって、
前記充填材は、前記充填材が前記流体と反応する際に、前記複合材料中に、ポリマーとセメント質の相互侵入網目を形成するのに十分な量存在し、十分な程度に分散されていることを特徴とする複合材料。
【請求項2】
前記粒子状充填材は、ケイ酸塩セメントおよび石膏からなる群から選択される部材であることを特徴とする請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記粒子状充填材は、少なくとも1種のポルトランドセメントと硫酸カルシウム半水和物を含むことを特徴とする請求項2に記載の複合材料。
【請求項4】
前記粒子状充填材は、非反応性成分をさらに含むことを特徴とする請求項3に記載の複合材料。
【請求項5】
前記非反応性成分は、木材鋸屑であることを特徴とする請求項4に記載の複合材料。
【請求項6】
前記延伸プロセスは、ダイ延伸プロセスであることを特徴とする請求項1に記載の複合材料。
【請求項7】
前記延伸プロセスは、自由延伸プロセスであることを特徴とする請求項1に記載の複合材料。
【請求項8】
配向したポリマーに対するポルトランドセメントの重量比は、37.5重量%〜67.5重量%であることを特徴とする請求項3に記載の複合材料。
【請求項9】
配向したポリマーに対するポルトランドセメントの重量比は、67.5重量%であることを特徴とする請求項3に記載の複合材料。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2006−504547(P2006−504547A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−522052(P2004−522052)
【出願日】平成15年7月18日(2003.7.18)
【国際出願番号】PCT/CA2003/001054
【国際公開番号】WO2004/009334
【国際公開日】平成16年1月29日(2004.1.29)
【出願人】(505028521)ピーエスエイ ポリマー シート アプリケーションズ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年7月18日(2003.7.18)
【国際出願番号】PCT/CA2003/001054
【国際公開番号】WO2004/009334
【国際公開日】平成16年1月29日(2004.1.29)
【出願人】(505028521)ピーエスエイ ポリマー シート アプリケーションズ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】
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