説明

収れん剤及びヒドロキシアルキル尿素を含む化粧品組成物

本発明は、顔の皮膚への局所的適用に適した生理学的に許容し得る媒体中に、(a)植物タンパク質とその加水分解物、混合シリケート、無機系充填剤のコロイド粒子、及び合成ポリマーから選択される少なくとも1つの収れん剤;並びに(b)指定の化学式の少なくとも1つのヒドロキシアルキル尿素を含む化粧品組成物、特に抗シワ組成物に関する。それはまた、収れん剤によりもたらされる収れん効果のレマネンスを改善するための、このヒドロキシアルキル尿素の使用に関し、そしてまた、このヒドロキシアルキル尿素と収れん剤を含む組成物を適用することにより、シワになった皮膚の処理方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔の皮膚への局所的適用に適した生理学的に許容し得る媒体中に、(a)植物タンパク質とその加水分解物、混合シリケート、無機系充填剤のコロイド粒子、及び合成ポリマーから選択される少なくとも1つの収れん剤;並びに(b)指定の化学式の少なくとも1つのヒドロキシアルキル尿素を含む化粧品組成物、特に抗シワ組成物に関する。
【0002】
それはまた、収れん剤によりもたらされる収れん効果のレマネンス(remanence)を改善するための、このヒドロキシアルキル尿素の使用に関し、そしてまた、このヒドロキシアルキル尿素と収れん剤を含む組成物を適用することにより、シワになった皮膚を処理するための方法に関する。
【0003】
本発明の全般的な分野は、従って、皮膚の老化という分野である。
【背景技術】
【0004】
皮膚の老化の経過の中で、特に皮膚の構造と機能の変化に反映される様々な兆候が生じる。これらの主要な兆候の1つが、微細な線と深いシワの出現であり、その大きさと数は年齢とともに増大する。皮膚の微小起伏がさらに少なくなると、非等方的な性質を示す。
【0005】
老化と闘い得る活性剤(例えば、α-ヒドロキシ酸、β-ヒドロキシ酸、アスコルビン酸、及びレチノイド等)を含む化粧品組成物で、これらの老化の徴候を処理することは一般的な行為である。これらの活性剤は、皮膚の死細胞を除去し、細胞の再生過程を加速させることにより、及び/または細胞外マトリックス成分(グリコサミノグリカン、コラーゲン、エラスチン)の合成を増大させることにより若しくはそれらの分解を防ぐことにより、特にシワに作用する。しかしながら、これらの活性剤は、それらをある程度の期間(すわなち、数日から数週間に及んでも良い期間)適用した後のみ、シワを処理するのに効果的であるという欠点を有している。
【0006】
現在、最新の需要は、即効性を得るための、急速にシワ及び/または微細な線をなめらかにし、且つ一時的でさえ疲労の痕跡なくすための組成物の製品へますます向かう傾向がある。そのような組成物は、収れん剤を含む組成物である。用語「収れん剤」は、収れん効果を有しうる化合物、すなわち、皮膚をぴんと張らせ、シワ、微細な線、及び疲労の痕跡の減少あるいは即座の消失をもたらしうる化合物を意味することを意図することを明記する。
【0007】
これらの収れん剤は、特に水性分散液状の天然あるは合成由来のポリマーであって良く、それは、角質層、表皮表面層あるいは表皮角質層の収縮をもたらす被膜を形成し得る。皮膚の老化の影響を減じるための、そのようなポリマー系の化粧用あるいは皮膚科学用の使用は、特許出願WO 98/29091に記載されている。他の収れん剤は、例えば、特許出願FR-A-2,823,113、FR-2,843,024及びFR-2,659,551、あるいは米国特許の第3,819,825号及び第4,777,041号に記載のような、特にシリカの無機系コロイド粒子からなる。さらに他の収れん剤は、例えば出願FR-2,816,315に記載されるような混合シリケートである。
【特許文献1】WO 98/29091
【特許文献2】FR-A-2,823,113
【特許文献3】FR-2,816,315
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これらの収れん剤はときどき若干の使用者、特に弱い肌を有する使用者に不快な感覚をもたらす。さらに、皮膚上に形成された被膜は表情の結果として壊れる傾向を有するため、前記収れん剤がもたらす収れん効果は非常に長くは持続しない。これに対する理由は、これらの収れん剤が皮膚上に比較的硬く柔軟性のない被膜を形成するためである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本出願人は、驚くべきことに、化粧品組成物中に収れん剤と組み合わせた特定のヒドロキシアルキル尿素の使用により、十分且つ長く持続する収れん効果を有する被膜を得ることが可能になることを認めた。前記被膜は、機械的な観点から、柔軟性があり変形可能である。
【0010】
従って、第一の主題に従い、本発明は、顔の皮膚への局所的適用に適した生理学的に許容し得る媒体中に:
(a)植物タンパク質とその加水分解物、混合シリケート、無機系充填剤のコロイド粒子、及び合成ポリマーから選択される少なくとも1つの収れん剤;並びに
(b)一般式(I)に相当するヒドロキシアルキル尿素、その塩、溶媒和物、及びその異性体から選択される少なくとも1つの化合物;
【化1】

[式中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に水素原子、C1-C4アルキル基、または1から5個のヒドロキシ基を含んで良いC2-C6ヒドロキシアルキル基を表し、R1-R4基の少なくとも1つはヒドロキシアルキル基を表す]
を含む化粧品組成物に関する。
【0011】
アルキル基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、及びt-ブチル基が挙げられる。
【0012】
化学式(I)の好ましい化合物は、ただ1つのヒドロキシアルキル基を含むものである。すなわち、R1がヒドロキシアルキル基であり、R2、R3及びR4が、それぞれ互いに独立して、水素原子またはC1-C4アルキル基を表すものである。R1がヒドロキシアルキル基であり、R2、R3及びR4がそれぞれ水素原子を表す化学式(I)の化合物は、より特に好ましい。
【0013】
前記ヒドロキシアルキル基の中で、1つのヒドロキシル基、特にヒドロキシエチル、ヒドロキシプロピル、ヒドロキシブチル、ヒドロキシペンチル、及びヒドロキシヘキシル基を含むものが好ましい。
【0014】
化学式(I)の好ましい化合物としては、N-(2-ヒドロキシエチル)尿素;N-(2-ヒドロキシプロピル)尿素;N-(3-ヒドロキシプロピル)尿素;N-(2, 3-ジヒドロキシプロピル)尿素;N-(2, 3, 4, 5, 6-ペンタヒドロキシヘキシル)尿素;N-メチル-N(1, 3, 4, 5, 6-ペンタヒドロキシ-2-ヘキシル)尿素;N-メチル-N’-(1-ヒドロキシ-2-メチル-2-プロピル)尿素;N-(1-ヒドロキシ-2-メチル-2-プロピル)尿素;N-(1, 3-ジヒドロキシ-2-プロピル)尿素;N-(トリスヒドロキシメチルメチル)尿素;N-エチル-N’-(2-ヒドロキシエチル)尿素;N, N-ビス-(2-ヒドロキシエチル)尿素;N, N’-ビス-(2-ヒドロキシエチル)尿素;N, N-ビス-(2-ヒドロキシプロピル)尿素;N, N’-ビス-(2-ヒドロキシプロピル)尿素;N, N-ビス-(2-ヒドロキシエチル)-N’-プロピル尿素;N, N-ビス-(2-ヒドロキシプロピル)-N’-(2-ヒドロキシエチル)尿素;N-t-ブチル-N’-(2-ヒドロキシエチル)-N’-(2-ヒドロキシプロピル)尿素;N-(1, 3-ジヒドロキシ-2-プロピル)-N’-(2-ヒドロキシエチル)尿素;N, N,-ビス-(2-ヒドロキシエチル)-N’, N’-ジメチル尿素;N, N, N’, N’-テトラキス-(2-ヒドロキシエチル)尿素;N’, N’-ビス-(2-ヒドロキシエチル)-N’, N’-ビス-(2-ヒドロキシプロピル)尿素が挙げられる。
【0015】
本発明における使用に特に好ましい化合物は、N-(2-ヒドロキシエチル)尿素(以下、「ヒドロキシエチル尿素」と表す)である。
【0016】
化学式(I)のヒドロキシアルキル尿素はDE-2,703,185の出願に記載されているように調製できる。これらの中で、ヒドロキシエチル尿素は、水中に50重量%の混合物の形態で、National Starch社からHydrovance(登録商標)という商標名で商業的に入手可能でもある。
【0017】
その塩としては、無機酸の塩(例えば硫酸、塩酸、臭化水素酸、よう化水素酸、リン酸またはホウ酸)が挙げられる。また、1つ以上のカルボン酸基、スルホン基、ホスホン基を含んで良い有機酸塩が挙げられる。それらは、直鎖状、分枝状若しくは環状脂肪酸、または他の芳香族酸であって良い。これらの酸は、例えばヒドロキシ基の形態で、OとNから選択される1つ以上の異種原子も含んで良い。特に、プロピオン酸、酢酸、テレフタル酸、クエン酸、及び酒石酸が挙げられる。
【0018】
用語「溶媒和物」は、例えば化学式(I)の化合物の合成から由来する混合物のような、1つ以上の水分子または有機溶媒和物を有する化学式(I)の前記化合物の化学量論的混合物を意味することを意図する。
【0019】
前記ヒドロキシアルキル尿素は、都合よく、当該組成物の総重量に対して、0.01から20重量%、好ましくは1から10重量%を示す。
【0020】
本発明に係る組成物のその他の必須成分は、収れん剤である。
【0021】
本発明に従い、用語「収れん剤」は、水中に7%の濃度で、40%の相対湿度下30℃で、伸縮計で測定して少なくとも0.9%の、好ましくは1.5%より多くの単離した角質層の収縮を生じるいずれかの薬剤を意味することを意図する。
【0022】
前記方法の原理は、可能性のある収れん剤を用いた処理の前と後に、外科的手術に由来する人間の皮膚から単離した角質層のテストサンプルの長さを測定することにある。
【0023】
これを実施するために、30℃で相対湿度40%の環境下で、一方が固定され、もう一方が可動性の装置の2つのかみ合い部の間にテストサンプルを置く。前記サンプルに張力をかけ、その長さ(ミリメーターで)の関数としての力(グラムで)の曲線を記録する。長さゼロは、前記装置の2つのかみ合い部の間の接点に相当する。その後、その曲線に対する接線を線形領域中にプロットする。この接線とX軸との交点が、ゼロの力で当該テストサンプルの見かけの長さL0に相当する。その後、前記テストサンプルを弛緩し、その後、テストされる組成物の2mg/cm2(検討中の収れん剤の7%溶液)を角質層に適用する。15分間の乾燥後、処理後のテストサンプルの長さL1を測定するために、前記工程を再度実施する。前記収縮率は、「収縮%=100×(L1−L0)/L0」により定義される。収れん効果を特徴づけするために、このパーセンテージは負の値でなければならず、収縮率の絶対値が大きければ大きいほど、収れん効果は大きい。
【0024】
前記収れん剤は:
a)植物タンパク質とその加水分解物;
b)混合シリケート;
c)無機系充填剤のコロイド粒子;
d)合成ポリマー;
並びに、それらの混合物から特に選択される。
【0025】
当業者は、上に列挙した化学的分類から、前述のような収れんテストに相当する材料を選択できるであろう。
【0026】
これらの様々な収れん剤の分類について、ここに記載する。
【0027】
a)植物タンパク質とその加水分解物
本発明に係る収れん剤として用いることができる植物タンパク質と植物タンパク質加水分解物の例は、トウモロコシ、ライ麦、コムギ、ソバ、ゴマ、スペルトコムギ、エンドウ、インゲン、レンズ豆、大豆、及びルピナスのタンパク質並びにタンパク質加水分解物からなる。
【0028】
b)混合シリケート
本発明に係り用いることができる収れん剤のもう1つの分類は、混合シリケートからなる。この表現は、アルカリ金属(例えば、Na、Li若しくはK)またはアルカリ土類金属(例えば、Be、Mg若しくはCa)、及び遷移金属から選択される、少なくとも2つの異なる陽イオンを含む天然または合成由来のいずれかのシリケートを意味することを意図する。
【0029】
フィロシリケート、すなわち金属陽イオンが取り囲まれたラメラ中にSiO4四面体が形成されている構造を有するシリケートの使用が好ましい。
【0030】
収れん剤として特に好ましいシリケート族の1つは、ラポナイト族である。ラポナイトは、モンモリロナイトのものに類似の層構造を有するマグネシウム、リチウム、ナトリウムシリケートである。ラポナイトは、「ヘクトライト」として知られる天然鉱物の合成形態である。例えば、Rockwood社からラポナイトXLSまたはラポナイトXLGの名称で販売されるラポナイトが用いられて良い。
【0031】
c)無機系充填剤のコロイド粒子
もう1つの変形例として、本発明に係る収れん剤として無機系充填剤のコロイド粒子が用いられて良い。用語「コロイド粒子」は、水性、水性−アルコール性またはアルコール性媒体中に分散した状態の、0.1から100nmの間、好ましくは3から30nmの間の数平均径を有する粒子を意味することを意図する。
【0032】
本発明に係るコロイド粒子は、水、アルコール、油または他のいずれかの溶媒中で増粘する性質を有しない。水中で15重量%以上の濃度で、こうして得られた当該溶液の粘度は、10s-1に等しい剪断速度に対し0.05Pa.s未満である。前記測定は、25℃で円すい−板状の形態のHaake RheoStress RS150流量計を用いて実施され、測定する円すいの計測値は、径60mmで角度2°である。
【0033】
これらの粒子は、一般にゾル−ゲル法に従って調製され、従って特に、より大きい凝集体を形成するために水中で凝集するヒュームドシリカの粒子とは異なる。
【0034】
無機系充填剤の例として、シリカ、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、及び二酸化チタンを含む。特に好ましい無機系充填剤はシリカである。コロイド状シリカ粒子は、Catalysts & Chemicals社からCosmo S-40及びCosmo S-50の商標名で、コロイド状シリカの水性分散物の形態で特に入手可能である。
【0035】
変形例として、それらは混合コロイド粒子で良く、少なくとも2つの異なるタイプの酸化金属を含み、例えば、1つ以上の物質でコートされた二酸化チタン(例えば、シリカコートされた二酸化チタン等)からなる。
【0036】
無機系充填剤のコロイド粒子の特定の例は、シリカ−アルミナ複合体のコロイド粒子からなって良い。用語「シリカ−アルミナ複合体」は、アルミニウム原子がシリカ原子で部分的に置換されたシリカ粒子を意味することを意図する。
【0037】
pH7で、これらのシリカ−アルミナ複合体のコロイド粒子は、-20mV未満、好ましくは-25mV未満のゼータ電位を有する。前記測定は、25℃でCoulter Scientific Instrument Delsa 440SX装置を用いて実施される。
【0038】
本発明に係る組成物に用いることができるシリカ−アルミナ複合体コロイド粒子としては、例えば、Grace社製のLudox AM、Ludox AM X 6021、Ludox HAS、及びLudox TMAの名称で販売されるものが挙げられる。
【0039】
d)合成ポリマー
収れん剤として用いることができる合成ポリマーは:
−ポリウレタンポリマー及びコポリマー;
−アクリルポリマー及びコポリマー;
−グラフトシリコーンポリマー;
−水溶性若しくは水分散性単位、及びLCSTを有する単位を含む水溶性または水分散性ポリマーから選択できる。
【0040】
本発明に係るポリウレタンコポリマー、アクリルコポリマー、及びその他の合成ポリマーは、特に重縮合物、ハイブリッドポリマー、及び互貫通性ポリマーネットワーク(IPN)から選択されて良い。
【0041】
本発明の目的のために、用語「互貫通性ポリマーネットワーク」は、2つのタイプのモノマーの併発重合及び/または架橋により得られる2つのかみ合ったポリマーの配合物を意味し、得られたこの配合物は1つのガラス転移温度を有する。
【0042】
本発明における使用に適したIPNの例、及びそれらを調製するための方法についても、例えば、特許US-6,139,322及びUS-6,465,001に記載されている。
【0043】
好ましくは、本発明に係るIPNは、少なくとも1つのポリアクリルポリマーを含み、より好ましくは少なくとも1つのポリウレタン、またはフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンのコポリマーも含む。
【0044】
好ましい実施態様に従い、本発明に係るIPNは、ポリウレタンポリマーとポリアクリルポリマーとを含む。そのようなIPNは、特にAir Products社から商業的に入手可能な
Hybridurシリーズのものである。
【0045】
特に好ましいIPNは、90から110nmの間の重量平均サイズ、及び約80nmの数平均サイズを有する粒子の水性分散物の形態をとる。このIPNは、好ましくは約-60℃から+100℃に及ぶガラス転移温度(Tg)を有する。このタイプのIPNは、特にAir Products社製のHybridur X-01602の商標名で販売されている。本発明における使用に適したもう1つのIPNは、Hybridur X18693-21に関連する。
【0046】
本発明における使用に適した他のIPNは、ポリウレタン及びフッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンのコポリマーとの配合物からなるIPNを含む。これらのIPNは、特に特許US-5,349,003に記載されるように調製されて良い。変形例として、それらはAtofina社からKynar RC-10,147及びKynar RC-10,151の商標名で、アクリルポリマーに対するフルオロコポリマーの比率が70:30から75:25の間にある、水中にコロイド状分散物の形態で商業的に入手可能である。
【0047】
グラフトシリコーンポリマーの例は、参考文献としてここに組み入れた出願EP-1,038,519に示されている。グラフトシリコーンポリマーの好ましい例は、ポリシリコーン-8(INCI名)であり、これは、チオプロピレンタイプの結合鎖を介して、ポリ(メタ)アクリル酸タイプとポリ(アルキル(メタ)アクリレート)タイプの混合ポリマー単位がグラフトしたポリジメチルシロキサンである。このタイプのポリマーは、特に3M社からVS 80の商標名で入手可能である。それは、プロピルチオ基を含むポリジメチルシロキサン、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、及びメタクリル酸のコポリマーである。
【0048】
前述の合成ポリマーは、ラテックスの形態をとっても良い。本発明に係る収れん剤として使用されて良い適切なラテックスとしては、特にNoveon社製のAvalure UR 405、UR 410、及びUR 450の商標名で販売されているもの等のポリエステル−ポリウレタン及びポリエーテル−ポリウレタン分散物が挙げられる。
【0049】
最後に、特に適切な合成ポリマーは、水溶性または水分散性の単位を含み、またLCSTを備える単位を含む水溶性または水分散性のポリマーであって良い。前記LCSTを備える単位は、特に、1%の質量濃度、5から40℃の水中で偏析温度を有する。このタイプのポリマーは、特許出願FR-2,819,429により十分に記載されている。
【0050】
本発明の好ましい実施態様に従い、合成ポリマーが存在する場合、それは、アクリル酸/イソブチルメタクリレート/エチルメタクリレート/n-t-オクチルアクリルアミドコポリマー(例えば、National Starch社製のDermacryl LTの商標名で販売されているもの等)とは異なる。
【0051】
前記収れん剤は、本発明に係る組成物中に、当該組成物の総重量に対して、0.01から20重量%、好ましくは1重量%から10重量%に及ぶ活性材料の量で含有されても良い。用語「活性材料」は、収れん剤が選択的に溶解している、または商業的な形態で分散している(例えば、コロイド粒子の分散物の状態の)溶媒を除外するつもりである。
【0052】
本発明に係る組成物は、生理学的に許容し得る溶媒、すなわち顔の皮膚に適した溶媒を含む。それは、好ましくは化粧品的に許容し得る溶媒、すなわち好ましい色、香料、及び感触を有し、消費者をこの組成物を使うことから遠ざけるかもしれないいずれかの許容できない不快感(刺すような痛み、引張感、赤み)を生じない溶媒である。
【0053】
本発明に係る組成物は、局所的適用に従来用いられるいずれかの製薬の形態、特に、水性ローションまたはゲルタイプの分散物の形態、水性相中の脂肪相の分散(O/W)または逆の(W/O)により得られる乳液タイプの液体または半液体の粘度を有するエマルションの形態、あるいはクリーム若しくはゲルタイプの柔軟な半固体若しくは固体の粘度を有する懸濁液またはエマルション、そうでなければ複合エマルション(W/O/W若しくはO/W/O)の形態をとる。これらの組成物は、通常の方法に従い調製される。
【0054】
本発明の好ましい実施態様に従い、組成物はエマルション、より好ましくは水中油(O/W)型エマルションの形態をとる。
【0055】
この組成物は、化粧品の分野で一般的に用いられる様々なアジュバント(例えば、乳化剤、充填剤、保存剤、金属イオン封鎖剤、香料、増粘剤、及び/またはゲル化剤)も含む。
【0056】
当然、当業者は、本発明に係る組成物の有利な性質が、予測される添加により損なわれることのない、または大幅に損なわれることのないような方法で、この若しくはこれらの選択的な付加的化合物及び/またはその量を選択するのに注意するであろう。
【0057】
本発明に係る組成物は、上に定義されたポリマーに相補的な効果を有する抗加齢活性剤(例えば、コラーゲン及び/若しくはエラスチン合成を刺激するための、またはその分解を防ぐための薬剤、抗グリコシル化剤、非収縮化剤あるいは筋弛緩剤、並びにそれらの混合物から選択される少なくとも1つの化合物)を含んでも良い。
【0058】
本発明の主題はまた、収れん剤によりもたらされる収れん効果のレマネンスを改善するための、上に定義したようなヒドロキシアルキル尿素の使用である。
【0059】
最後に、本発明の主題は、シワになった皮膚の美容処理方法であり、前記皮膚に、上に定義したようなヒドロキシアルキル尿素と少なくとも1つの収れん剤とを含む組成物を適用することにある工程を含む。
【0060】
前記適用は、通常の技術に従って、例えば、クリーム、ゲル、血清またはローションを処理したい皮膚、特に目の周りの皮膚に適用することにより実施される。この方法の状況において、前記組成物は、例えば、ケア組成物またはメイクアップ組成物であっても良い。
【0061】
もう1つの特徴点によれば、本発明はまた:
i)密閉部材を用いて閉じられる、少なくとも1つの区画を区分けしている容器;並びに
ii)上に定義したような、及び前記区画内に入れられた組成物、を含む化粧集成品に関する。
【0062】
前記容器は、いずれかの適切な形態をとって良い。それは、特にボトル、チューブ、広口ビン、ケース、箱、プラスチック製小容器または紙箱の形態をとって良い。
【0063】
前記密閉部材は、着脱可能な栓、蓋、キャップ、切取り細片または小袋の形態、特に、容器に付属の本体と本体から区切られた被覆キャップとを含むタイプの形態をとって良い。それはまた、容器を選択的に密閉する部材、特に、ポンプ、弁またはフラップ弁の形態をとって良い。
【0064】
当該生成物は、前記容器中に直接に、または間接的に包含されて良い。例として、当該生成物は、特に、箱またはプラスチック製小容器中に(個別に、若しくは複数で)置かれたワイプまたはパッドの形態で、含浸支持体上に置かれて良い。そのような生成物を含浸する支持体は、例えば、出願WO 01/03538に記載されている。
【0065】
前記密閉部材は、ねじ締めすることにより前記容器に連結していて良い。あるいは、密封部材と容器との間の連結は、ねじ締めする以外の方法によりなされ、特に、差込み構造を介して、クリックで締めること、グリップで締めること、溶接すること、接着すること、または磁気引力によりなされる。用語「クリックで締める」は、ある部分、特に前記密封部材の弾性変形による、材料の縁またはコードの交差、その後、前記部分が弾力的に不確定な位置へ戻ることを含む、いずれかのシステムを特に意味することを意図する。
【0066】
前記容器は、少なくとも部分的に熱可塑性材料から形成されても良い。熱可塑性材料の例としては、ポリプロピレンまたはポリエチレンが挙げられる。
【0067】
あるいは、前記容器は非熱可塑性材料、特にガラスまたは金属(または合金)から形成される。
【0068】
前記容器は、特にチューブまたはチューブ状のボトルの形態において、硬い側壁または変形可能な側壁を有して良い。
【0069】
前記容器は、前記組成物の配布を引き起こすこと、または容易にすることを目的とする方法を含んで良い。例として、容器内への陽圧に応じて組成物が出るように、容器は変形可能な側壁を有して良い。前記陽圧は、容器の側壁を弾力的に(または非弾力的に)絞ることにより引き起こされる。
【0070】
本発明はここで、非限定的な実例として提供される以下の実施例に関して記載するであろう。これらの実施例において、明記されない場合は、量は重量パーセンテージとして示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0071】
<実施例1:収れん効果のレマネンスの評価>
コロイド状シリカ分散物の収れん効果は、すでに出願FR-2,823,113において評価されている。コロイド状シリカにより形成される収れん被膜の亀裂を生じる力を増大させるために、本発明に係るヒドロキシアルキル尿素の力がここで評価される。
【0072】
[プロトコール]
下記の組成物AからCは、当該技術分野の方法で調製された。
【表1】

【0073】
(1)National Starch社製のHydrovance(登録商標)
(2)水中における平均粒子径18nmを有するコロイド状シリカ粒子の41重量%の分散物(Catalysts & Chemicals社製のCosmo S-40)
【0074】
グリセロールとヒドロキシエチル尿素の潜在的な強化力は、組成物A−Cからなる材料の破断強度を測定することにより定量化した。
【0075】
前記テストは、被膜−引張装置を使って、13mm厚のネオプレンからなる柔軟性のある変形可能な発砲体の表面に沈殿した前記材料に、破断するまで圧縮応力を加えることにある。この沈殿した材料の量は、24時間乾燥後に15から30μmの厚さを有する被膜を得ることができるような量である。この発砲支持体を使用することにより、その表面に沈殿した前記材料にかなりの変形を課すことが可能になり、従って、その破断強度を定量することが可能になる。機械的な圧縮応力は、被膜の乾燥後に、1mm径の円柱状穿孔機を使用して加えられる。その穿孔機の変位速度は0.1mm/sである。前記テストは、Stable Micro System社により販売されているTA-XT2iテクスチャー分析装置を用いて実施される。変位d(mmで)の関数としての力(Nで)の曲線はこのようにして得られ、これにより前記材料の破断点を決定できる。
【0076】
2つのパラメーターが、前記材料の破断強度を定量するために選択される。:
(1)F破断(N):破断強度
(2)W破断(J/m2):破断エネルギー:曲線「F=f(d)/穿孔機の表面積」に基づいて測定された表面積に相当する
【0077】
[結果]
得られた結果を、下の表に示す。
【表2】

【0078】
これらの結果は、コロイド状シリカ等の収れん剤の存在下における、本発明に係る組成物中に用いられるヒドロキシアルキル尿素の強化力を証明している。さらに、得られた被膜の力学的性質は、グリセロール等の従来の柔軟剤を用いた場合よりも、ヒドロキシアルキル尿素を用いた場合の方が明らかに優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔の皮膚への局所的適用に適した生理学的に許容し得る媒体中に、
(a)植物タンパク質とその加水分解物、混合シリケート、無機系充填剤のコロイド粒子、及び合成ポリマーから選択される少なくとも1つの収れん剤;並びに
(b)一般式(I)に相当するヒドロキシアルキル尿素、その塩、溶媒和物、及びその異性体から選択される少なくとも1つの化合物:
【化1】

[式中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に水素原子、C1-C4アルキル基、または1から5個のヒドロキシ基を含んで良いC2-C6ヒドロキシアルキル基を表し、R1-R4基の少なくとも1つは、ヒドロキシアルキル基を表す]
を含む化粧品組成物。
【請求項2】
R1がヒドロキシアルキル基であり、R2、R3及びR4がそれぞれ互いに独立して水素原子とC1-C4アルキル基を表すことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
R1がヒドロキシアルキル基であり、R2、R3及びR4がそれぞれ水素原子を表すことを特徴とする、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
化学式(I)の化合物が、N-(2-ヒドロキシエチル)尿素;N-(2-ヒドロキシプロピル)尿素;N-(3-ヒドロキシプロピル)尿素;N-(2, 3-ジヒドロキシプロピル)尿素;N-(2, 3, 4, 5, 6-ペンタヒドロキシヘキシル)尿素;N-メチル-N-(1, 3, 4, 5, 6-ペンタヒドロキシ-2-ヘキシル)尿素;N-メチル-N’-(1-ヒドロキシ-2-メチル-2-プロピル)尿素;N-(1-ヒドロキシ-2-メチル-2-プロピル)尿素;N-(1, 3-ジヒドロキシ-2-プロピル)尿素;N-(トリスヒドロキシメチルメチル)尿素;N-エチル-N’-(2-ヒドロキシエチル)尿素;N, N-ビス-(2-ヒドロキシエチル)尿素;N, N’-ビス-(2-ヒドロキシエチル)尿素;N, N-ビス-(2-ヒドロキシプロピル)尿素;N, N’-ビス-(2-ヒドロキシプロピル)尿素;N, N-ビス-(2-ヒドロキシエチル)-N’-プロピル尿素;N, N-ビス-(2-ヒドロキシプロピル)-N’-(2-ヒドロキシエチル)尿素;N-t-ブチル-N’-(2-ヒドロキシエチル)-N’-(2-ヒドロキシプロピル)尿素;N-(1, 3-ジヒドロキシ-2-プロピル)-N’-(2-ヒドロキシエチル)尿素;N, N,-ビス-(2-ヒドロキシエチル)-N’, N’-ジメチル尿素;N, N, N’, N’-テトラキス-(2-ヒドロキシエチル)尿素;N’, N’-ビス-(2-ヒドロキシエチル)-N’, N’-ビス-(2-ヒドロキシプロピル)尿素から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記ヒドロキシアルキル尿素がN-(2-ヒドロキシエチル)尿素であることを特徴とする、請求項3または4に記載の組成物。
【請求項6】
当該組成物の総重量に対して、1から10重量%のヒドロキシアルキル尿素を含むことを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記収れん剤が、トウモロコシ、ライ麦、コムギ、ソバ、ゴマ、スペルトコムギ、エンドウ、インゲン、レンズ豆、大豆、及びルピナスのタンパク質及びタンパク質加水分解物から選択されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記混合シリケートがラポナイトから選択されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記無機系充填剤のコロイド粒子がシリカまたはシリカ−アルミナ複合体のコロイド粒子であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記合成ポリマーが、ポリウレタンポリマー及びコポリマー、特にポリエーテル−ポリウレタン及びポリエステル−ポリウレタンコポリマー、アクリルポリマー及びコポリマー、並びにグラフトシリコーンポリマーから選択されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記合成ポリマーが互貫通性ポリマーネットワークから選択されることを特徴とする、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記互貫通性ポリマーが、90から110nmの間の重量平均サイズ、約80nmの数平均サイズ、並びに約-60℃から+100℃に及ぶガラス転移温度(Tg)を有する、ポリウレタン−及びポリアクリル−ベースの粒子の水性分散物の形態をとることを特徴とする、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記グラフトシリコーンポリマーが、チオプロピレンタイプの結合鎖を介して、ポリ(メタ)アクリル酸タイプとポリ(アルキル(メタ)アクリレート)タイプの混合ポリマー単位がグラフトしたポリジメチルシロキサンであることを特徴とする、請求項10に記載の組成物。
【請求項14】
前記収れん剤が、当該組成物の総重量に対して、1重量%から10重量%に及ぶ活性材料の量で当該組成物中に含有されることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
収れん剤によりもたらされる収れん効果のレマネンスを改善するための、請求項1から5のいずれか一項に定義されるヒドロキシアルキル尿素の使用。
【請求項16】
請求項1から5のいずれか一項に定義されるヒドロキシアルキル尿素と少なくとも1つの収れん剤とを含む組成物を、シワになった皮膚に適用することにある工程を含む、前記皮膚の美容処理方法。
【請求項17】
前記収れん剤が、水中に7%の濃度で、40%の相対湿度下30℃で、伸縮計で測定して0.9%より多くの単離した角質層の収縮を生じることを特徴とする、請求項15に記載の使用、または請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記収れん剤が、請求項1及び7から13のいずれか一項に定義されるようなものであることを特徴とする、請求項15に記載の使用、または請求項16に記載の方法。
【請求項19】
a)密閉部材を用いて閉じられる、少なくとも1つの区画を区分けしている容器;並びに
b)前記区画内に入れられた、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物;
を含む化粧集成品。

【公表番号】特表2008−521769(P2008−521769A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541887(P2007−541887)
【出願日】平成17年11月22日(2005.11.22)
【国際出願番号】PCT/EP2005/014176
【国際公開番号】WO2006/056491
【国際公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願人】(391023932)ロレアル (950)
【Fターム(参考)】