説明

収容箱の放熱構造

【課題】放熱効率が良い収容箱の放熱構造を提供する。
【解決手段】電子機器を収容する収容箱2と、送風機32を収容するボックス本体31と、収容箱2に形成された接続口2aとボックス本体31に形成された接続口31aに接続される連結パイプ5とを有し、ボックス本体31の接続口31aは送風機32の吸引側に位置し、収容箱2の外面には収容箱2の外側の空気を取り込む空気取込口2bが形成されている。ボックス本体31の接続口31aの断面が収容箱2の接続口2aの断面より大きく形成されていることがある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収容箱、特に四輪自動車に具備された電子機器を収容する収容箱の放熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、四輪自動車等の輸送機械用の電子機器収容箱を冷却する放熱構造として、ブロワから送風される新気を利用するものがある。例えば、ECUの収納箱では、空調用ダクト本体と一体構造にされ、空調用ダクト本体の内部と通気手段(通気孔)によって連通するものがある(例えば、特許文献1参照)。空調用ダクト本体を通って送風された調整風は通気孔を通ってECU収容箱内を循環する。
【0003】
また、冷却ボックスを構成する冷却室に空気入口と空気出口とが設けられているものがある(例えば、特許文献2参照)。空気入口は送風機の吹出ダクト部に連通し、空気出口が送風機の吸入口の上流部に連通しているので、空気の一部が分岐し、分岐した空気が空気入口より冷却室に流入し、冷却室の空気が空気出口から送風機に強制的に吸い込まれる。
【0004】
【特許文献1】特開2004−268629号公報(段落0012〜段落0025、図1、図2)
【特許文献2】特開2001−253306号公報(段落0023〜段落0035、図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の発明は、ECU収容箱(冷却ボックス)に流入した調整風(空気)は電子機器等を冷却するものの、電子機器によって加熱される。ブロワはその下流側でECU収容箱と連通しているため、加熱された調整風は再びブロワを通ってECU収容箱に戻ってくることもある。つまり、特許文献1等の発明は、加熱された調整風が再度ECU収容箱に流入する構造をなしているので、電子機器等の冷却効率が良くない。
【0006】
本発明の目的は斯かる課題に鑑みてなされたもので、放熱効率が良い収容箱の放熱構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係る発明は、電子機器を収容する収容箱と、送風機を収容するボックス本体と、前記収容箱に形成された接続口と前記ボックス本体に形成された接続口に接続される連結パイプとを有し、前記ボックス本体の接続口は前記送風機の吸引側に位置し、前記収容箱の外面には前記収容箱の外側の空気を取り込む空気取込口が形成されていることを特徴とする。
本発明の請求項2に係る発明は、前記収容箱と前記連結パイプとの間、又は前記ボックス本体と前記連結パイプとの間の少なくとも一方に、内部に円錐形状又は円錐台形状に形成された空間を有する接続部材が介在し、この接続部材には前記空間に連通する流出口及び流入口が形成され、前記空間の前記流出口に連通する位置の、前記空間の中心線に直交する断面は、前記空間の前記流入口に連通する位置の、前記空間の中心線に直交する断面より大きく、前記流出口が前記送風機側に配設されていることを特徴とする。
本発明の請求項3に係る発明は、前記ボックス本体の接続口の断面が前記収容箱の接続口の断面より大きく形成されていることを特徴とする。
本発明の請求項4に係る発明は、前記連結パイプの前記送風機側端部の断面が前記収容箱側端部の断面より大きく形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は上記の通り、電子機器を収容する収容箱と、送風機を収容するボックス本体と、収容箱に形成された接続口とボックス本体に形成された接続口に接続される連結パイプとを有し、ボックス本体の接続口は送風機の吸引側に位置し、収容箱の外面には収容箱の外側の空気を取り込む空気取込口が形成されているので、放熱効率を良くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
(実施の形態1)
図1に収容箱の放熱構造1(以下、放熱構造1という)が図2に示す車両用空調装置10に使用されている具体例を示す。詳細には、放熱構造1は四輪自動車の車両用空調装置10を構成する、電気接続箱2(JB:Junction Block)及び送風機ユニット3にかけて形成されている。放熱構造1は、四輪自動車の電気接続箱及び送風機ユニット以外の部分にも、また、四輪自動車の他に、例えば列車や二輪自動車等にも使用されることも可能である。
【0011】
送風機ユニット3は、図示しない車両計器盤の内側に配設され、並設される空調ユニット4と共に、車両用空調装置10を構成している。送風機ユニット3は、上流側に位置し、内気と外気を切替導入する内外気切替手段31と、下流側に位置し、内外気切替手段31に導入された内気又は外気を吸引して送風する送風機32と、内外気切替手段31を構成すると共に、送風機32を収容するボックス本体33とを有する。ボックス本体33は空調ユニット4に連通し、送風機32による送風空気の流路を形成している。送風空気は空調ユニット4を通って車室内(図示せず)へ吹き出される。図面では、送風機ユニットが縦向きに設置されているが、横向きに設置されても差し支えない。
【0012】
内外気切替手段31は、吸引する対象に内気又は外気のいずれか一方を選択するための内外気切替蓋34を備え、内外気切替蓋34はボックス本体33に回動自在に設けられている。ボックス本体33及び内外気切替蓋34の形状、材料の種類は問われない。
【0013】
ボックス本体33の内外気切替手段31を構成する部分、すなわちボックス本体33の、送風機32を収容する部分より上流側には、後述する連結パイプ5が接続される接続口33aが形成されている。送風機32は一方の側から空気を吸い込み、他方の側へ空気を吐き出す機能を有し、少なくとも接続口33aから空気を吸い込む能力を要する。
【0014】
したがって、吸引する対象が内気もしくは外気のいずれか一方で、内外気切替蓋34がどの位置にあっても送風機32による接続口33aにおける空気の吸引が可能となり、接続口33aと送風機32との間にも流路が形成されている。図面では接続口33aはボックス本体33の側壁33Aに形成されているが、送風機32により空気の吸引が可能で有れば、接続口33aが形成される位置は問われない。
【0015】
一方、電気接続箱2は例えば、ボックス本体33の横に配設されている。電気接続箱2には、例えば発熱源となるリレー、プリント配線板及びヒューズ等の電子機器(図示せず)が収容されている。
【0016】
電気接続箱2の天板2Bには、後述する連結パイプ5が接続される接続口2aが形成されている。接続口2aが形成される位置は天板2Bには限られないが、この接続口2aは電気接続箱2内で加熱した空気を送風機32によって吸い出すためのものであるので、加熱した空気は上昇することから電気接続箱2の高い位置に形成されていることが好ましい。
【0017】
一方、図3に示すように、電気接続箱2の側板2Aには空気取込口2bが形成され、空気取込口2bから電気接続箱2外の空気(電気接続箱2からみた外気)が電気接続箱2内に取り込まれる。電気接続箱2内の空気が連結パイプ5を通して送風機32に吸引されると共に、空気取込口2bから電気接続箱2内に空気が取り入れられるので、電気接続箱2内に空気流が発生する。この空気流によって、電子機器に加熱されて温度が上昇した空気が排除されるので、電子機器の放熱による冷却が進む。
【0018】
図面では、空気取込口2bは側板2Aの下端部に形成され、電気接続箱2の鉛直方向の中心線C1を挟んで電気接続箱2の接続口2aと反対側に位置するので、空気は電気接続箱2の中を広範囲にわたって流れる。したがって、効率よく電気接続箱2を冷却することができる。電気接続箱2は、電気接続箱2の空気が送風機32に吸引される際にその吸引力によって変形しない程度の剛性を必要とする。
【0019】
電気接続箱2内の空気を確実にボックス本体33内に輸送するための連結パイプ5が電気接続箱2の接続口2a及びボックス本体33の接続口33aに接続されている。連結パイプ5も電気接続箱2と同様に、送風機32による吸引力によって変形しない程度の剛性を必要とする。
【0020】
ボックス本体33と連結パイプ5との間には、内部にサイクロン構造60を具備する接続部材6が介在している。サイクロン構造60によって接続部材6の内部を通過する空気流は螺旋状に形成される。図4(a)、(b)に示すように、サイクロン構造60は具体的には、下部の円錐部60Aと上部の円柱部60Bからなる。つまり、接続部材6の内部に空間が形成され、円錐部60Aとは尖部が上流側を向く円錐形状の空間を、円柱部60Bとは、当該円錐形状の空間の底面に連続する円柱形状の空間を表す。円錐部60Aは、上流側に向かって縮径する円錐台形状の空間でもよい。
【0021】
接続部材6は、例えばボックス本体33の接続口33aに接続され、空気がサイクロン構造60から流出する流出口6aと、連結パイプ5に接続され、空気がサイクロン構造60に流入する流入口6bとを備える。接続部材6内の空気が円錐部60Aの斜面に沿って螺旋状に上昇しながら流れるために、流出口6aはサイクロン構造60の中心線C2に直交する方向に所定距離をおいた位置で接続部材6の外面から円柱部60Bまで貫通して形成されている。一方、流入口6bは接続部材6の外面から円錐部60Aの尖部まで、又は円錐台形状のサイクロン構造60の中心線C2に直交する断面が小さい部分まで貫通して形成されている。
【0022】
ここで、サイクロン構造60を流れる空気の流速は、円錐部60Aの径が小さくなるにつれて速くなるので、流出口6aにおける空気の流速より流入口6bにおける空気の流速の方が速くなる。また、円柱部60Bは形成されていなくてもよい。この場合、流出口6aは接続部材6の外面から円錐部60Aの底面辺り、つまり円錐部60Aのサイクロン構造60の中心線C2に直交する断面が大きい部分まで貫通して形成される。
【0023】
このように、接続部材6を介して電気接続箱2側の流速が送風機32側の流速より速くなるので、例えば送風機32の回転速度が遅く、送風機32に吸い込まれる空気の速度が遅い場合であっても、電気接続箱2内の空気の流速を速くし、暖かい空気の滞留時間を短くすることで、放熱効果を向上することができる。
【0024】
図面では、接続部材6はボックス本体33と連結パイプ5との間に介在しているが、電気接続箱2と連結パイプ5との間に介在させることも可能である。この場合、電気接続箱2内の空気の流速を速くするためには、流出口6aを連結パイプ5に接続し、流入口6bを電気接続箱2の接続口2aに接続する。また、接続部材6をボックス本体33と連結パイプ5との間、及び電気接続箱2と連結パイプ5との間の双方に介在させると、電気接続箱2内の空気の流速がさらに速くなるので、電子機器の放熱効果を促進させることができる。
【0025】
次に、実施の形態1についての作動を説明する。例えばエンジンが作動すると、電気接続箱2内のリレーが作動し、電流が流れ、リレー、プリント配線板、ヒューズ及びコネクタ等の電子機器が発熱する。電子機器の発熱によって、当該電子機器周辺の空気が加熱されて暖められ、上昇する。
【0026】
次いで、手動又は自動制御によって送風機32を作動させると、内外気切替手段31、接続部材6、連結パイプ5及び電気接続箱2の内部の空気は送風機32に吸引され、空調ユニット4へ吐き出される。つまり、電気接続箱2内で上昇した空気は強制的に空調ユニットへ輸送される。電気接続箱2内の空気が送風機32に吸引されることによって電気接続箱2内は負圧状態になるので、空気が強制的に排出されると同時に、空気取込口2bから新たな空気が供給される。
【0027】
新たな空気は電子機器によって加熱され、同様に空調ユニット4へ輸送される。このように、空気が連続的に電気接続箱2に供給され、電気接続箱2内を通過する途中で電子機器に加熱されるので、電子機器は効率よく放熱することができる。この結果、電子機器は冷却される。
【0028】
一方、送風機32が作動している間、接続部材6のサイクロン構造60では螺旋状に下流側へ移動(図において上昇)する空気流が発生する。上述したようにサイクロン構造60によって接続部材6の流入口6bにおける空気の流速は、流出口6aにおける空気の流速より速くなる。したがって、電気接続箱2内を流れる空気の流速も速くなるので、放熱の効率が向上する。
【0029】
電気接続箱2で暖められた空気は、内外気切替手段31に流入する空気と共に送風機32に吸い込まれ、その後は空調ユニット4に吐き出される。ここで、空気の流れに沿ってみたとき、送風機32から吐き出された空気が再び電気接続箱2に流入して、当該暖められた空気が循環することはない。つまり、送風機32以降の空気の流路は電気接続箱2から独立しているので、電子機器によって暖められた空気は電気接続箱2から確実に排出される。電気接続箱2には電子機器を冷却する空気のみが空気取込口2bから流入する。
【0030】
(その他の実施の形態)
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0031】
例えば、図5に示すように、ボックス本体33’の接続口33a’の断面が電気接続箱2’の接続口2a’の断面より大きく形成されている。よって、電気接続箱2’での空気の流速は送風機32に吸い込まれる空気の流速より速くなるので、電子機器の放熱の効率が向上する。また、連結パイプ5’の長さ方向の途中から連結パイプ5’の送風機32側端部の断面が電気接続箱2’側端部の断面より大きく形成されている。よって、電気接続箱2’での空気の流速は送風機32に吸い込まれる空気の流速より速くなるので、電子機器の放熱の効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】収容箱の放熱構造の概念図である。
【図2】図1の電子機器用の放熱構造が四輪自動車の空調装置に適用された様子を表す概念図である。
【図3】図1の電気接続箱の正面図である。
【図4】(a)は図1の接続部材の断面図、(b)は図4(a)のA−A断面図である。
【図5】その他の実施の形態における収容箱の放熱構造の概念図である。
【符号の説明】
【0033】
1………放熱構造
2………電気接続箱(収容箱)
2A……側板
2B……天板
2a……接続口
2b……空気取込口
3………送風機ユニット
4………空調ユニット
5………連結パイプ
6………接続部分
6a……流出口
6b……流入口
10……車両用空調装置
31……内外気切替手段
32……送風機
33……ボックス本体
33A…側板
33a…接続口
34……内外気切替蓋
60……サイクロン構造
60A…円錐部
60B…円柱部
C1……電気接続箱の鉛直方向の中心線
C2……サイクロン構造の中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器を収容する収容箱と、
送風機を収容するボックス本体と、
前記収容箱に形成された接続口と前記ボックス本体に形成された接続口に接続される連結パイプとを有し、
前記ボックス本体の接続口は前記送風機の吸引側に位置し、
前記収容箱の外面には前記収容箱の外側の空気を取り込む空気取込口が形成されていることを特徴とする収容箱の放熱構造。
【請求項2】
前記収容箱と前記連結パイプとの間、又は前記ボックス本体と前記連結パイプとの間の少なくとも一方に、内部に円錐形状又は円錐台形状に形成された空間を有する接続部材が介在し、
この接続部材には前記空間に連通する流出口及び流入口が形成され、
前記空間の前記流出口に連通する位置の、前記空間の中心線に直交する断面は、前記空間の前記流入口に連通する位置の、前記空間の中心線に直交する断面より大きく、
前記流出口が前記送風機側に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の収容箱の放熱構造。
【請求項3】
前記ボックス本体の接続口の断面が前記収容箱の接続口の断面より大きく形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の収容箱の放熱構造。
【請求項4】
前記連結パイプの前記送風機側端部の断面が前記収容箱側端部の断面より大きく形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の収容箱の放熱構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−202824(P2009−202824A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−49656(P2008−49656)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】