収差補正型質量分離装置
【課題】イオンビーム装置を提供する。
【解決手段】イオンビーム装置は第1軸142に沿って放射されるイオンビーム170を発生させるためのイオンビーム源110と、イオンビームを整形するよう適合された開口ユニットと、所定の質量のイオンビームのイオンを偏向角でもって偏向するよう適合された収差補正型偏向ユニット162を含む。収差補正型偏向ユニットは電場を発生させるための電場発生コンポーネントと、実質的に電場に直交する磁場を発生させるための磁場発生コンポーネントを含む。装置は所定の質量とは異なる質量のイオンをブロックし、かつ既定の質量を有するイオンがその内部に侵入可能となるよう適合された質量分離開口部154と、第1軸に対して傾斜した第2光軸を有する対物レンズ124を更に含む。
【解決手段】イオンビーム装置は第1軸142に沿って放射されるイオンビーム170を発生させるためのイオンビーム源110と、イオンビームを整形するよう適合された開口ユニットと、所定の質量のイオンビームのイオンを偏向角でもって偏向するよう適合された収差補正型偏向ユニット162を含む。収差補正型偏向ユニットは電場を発生させるための電場発生コンポーネントと、実質的に電場に直交する磁場を発生させるための磁場発生コンポーネントを含む。装置は所定の質量とは異なる質量のイオンをブロックし、かつ既定の質量を有するイオンがその内部に侵入可能となるよう適合された質量分離開口部154と、第1軸に対して傾斜した第2光軸を有する対物レンズ124を更に含む。
【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明はイオンビーム装置に関する。特には、本発明はイオンビーム装置用の収差補正型質量分離装置と、収差補正型質量分離装置を有するイオンビーム装置に関する。より詳細には、本発明は液体合金イオン源(LMAIS)と収差補正型質量分離装置を有するイオンビーム装置に関する。具体的には、本発明はイオンビーム装置とイオンビーム装置の操作方法に関する。
【発明の背景】
【0002】
ナノメートルスケールでの試料の構造化及びプロービングは、マイクロエレクトロニクス、マイクロメカニクス、及びバイオテクノロジーといったテクノロジーに高い需要がある。マイクロメートル及びナノメートルスケールの処理制御、検査又は構造化は荷電粒子ビームを用いて行われることが多く、例えば、プロービング又は構造化は荷電粒子ビーム装置で発生・集束された荷電粒子ビームで行うことが多い。荷電粒子ビーム装置の例としては、イオンビームパターン発生装置はもとより、イオンビーム注入装置、電子顕微鏡、電子ビームパターン発生装置、イオン顕微鏡が挙げられる。荷電粒子ビームは、光子ビームと比較すると、同等の粒子エネルギーでのその波長の短さから空間分解能に優れている。
【0003】
イオンビーム装置は複数のアプリケーションに利用可能である。その例にはイオンミリングによる半導体デバイスの切断面の形成、イオンミリングによる微細構造の構成、量子ドット、量子細線、磁気ナノドット等の構造のイオン注入による書き込み、スパッタリング、検査又はその他のアプリケーションが含まれる。そのため、様々なミリング速度、スパッタ速度又はその他の特性が求められ、これらは異なるビーム電流を必要とする。ビーム電流は、例えば、集光レンズのコリメート量により調整する。
【0004】
しかしながら、異なるビーム路の適用とウィーンフィルタ、セクタ等による質量分離の同時実現は困難である。これを踏まえ、例えば、タイチャー(Teicher)及びチウノフ(Tiunov)は2つのExBフィルタの使用を提案しており、これによりこういったシステムの回転中心が光軸に沿って移動可能となる("Design of an achromatic mass separator for a focused ion beam”, SPIE Vol. 2014 Charged Particle Optics (1993)/85)。しかしながら、こういったシステムは調心が複雑であり、高額、かつビーム路ごとの較正は困難である。
【概要】
【0005】
上記を踏まえ、本発明は独立請求項1に記載のイオンビーム装置及び独立請求項17に記載のイオンビーム装置の操作方法を提供する。
【0006】
一実施形態により、イオンビーム装置を提供する。イオンビーム装置は第1軸に沿って放射されるイオンビームを発生させるためのイオンビーム源と、イオンビームの開口数を規定するよう適合された開口ユニットと、既定の質量のイオンビームのイオンを偏向角でもって偏向するよう適合された収差補正型偏向ユニットを含み、収差補正型偏向ユニットは電場を発生させるための電場発生コンポーネントと、実質的に電場に直交する磁場を発生させるための磁場発生コンポーネントを含む。イオンビーム装置は既定の質量とは異なる質量のイオンをブロックし、かつ既定の質量を有するイオンがその内部に侵入可能となるよう適合された質量分離開口部と、第2光軸を有する対物レンズを更に含み、第2光軸は第1次軸に対して傾斜している。
【0007】
上記の実施形態と併用可能な更なる利点、構成、態様及び詳細は、従属請求項、本文、及び図面により明白である。
【0008】
別の実施形態では、イオンビーム装置の操作方法を提供する。この方法は第1質量と第1質量とは異なる第2質量とを有する2つのイオン種を含むイオンビームを放射し、第1質量を有するイオンを少なくとも0.1°、又は例えば少なくとも0.3°の偏向角で偏向し、第2質量を有するイオンをブロックし、第1質量を有するイオンのイオンビームを試料上に集束させることを含む。
【0009】
実施形態は開示した方法を実施するための装置も対象としており、記載の各方法工程を実行するための装置部品を含む。これらの方法工程はハードウェアコンポーネント、適当なソフトウェアによりプログラムされたコンピュータ、この2つのいずれの組合せ又はその他のやり方で実行することができる。更に、実施形態は記載の装置の操作方法も対象としており、装置の全機能を実行するための方法工程を含む。
【発明の詳細な説明】
【0010】
ここで本発明の様々な実施形態に詳細に言及し、その1つ以上の実施例を図面にて示す。各実施例は本発明の説明のためのものであり、本発明を制限することを意図するものではない。例えば、一実施形態の一部として説明又は記載した構成を別の実施形態で使用する又は併用することで、更に別の実施形態とすることが可能である。本発明はこういった改変や変形を含む。
【0011】
本願の保護範囲を限定することなく、以下においてイオンビーム装置又はそのコンポーネントは、一部の実施形態において、例示的に二次電子の検出を含むイオンビーム装置と称される。本発明は電子又はイオン、光子、X線又はその他の微粒子の形態の二次及び/又は後方散乱粒子を検出して試料の像を得る装置及びコンポーネントにも応用可能である。通常、微粒子と言う場合、イオン、原子、電子又はその他の粒子であるところの粒子のみならず光信号として理解され、この場合、微粒子は光子である。
【0012】
図面についての以下の説明において、同一の参照番号は同一のコンポーネントを示す。概して、個々の実施形態についての差異のみを記載する。
【0013】
本願で称するところの「試料」とは半導体ウェハ、半導体加工対象物、及びメモリディスク等のその他の加工対象物を含むがこれらに限定されない。本発明の実施形態はその上に材料を堆積する又は構造化するいずれの加工対象物にも応用することができる。試料には構造化する、又はその上に層を堆積するところの表面が含まれる。
【0014】
以下の説明において、ローレンツ力という用語はFm=q・(vxB)の力について使用する。クーロン力という用語はFe=q・Eの力について使用する。
【0015】
図1にはイオンビーム装置100が図示されている。一実施形態において、イオンビーム装置はイオンビーム源110を含む。イオンビーム源は第1軸142に沿ってイオンビームを放射する。集光レンズ122を用いてイオンビームをコリメートする。円形、スリット状、矩形、又はその他所望の形状の絞りとしての開口部152を用いることでイオンビームシステムの開口数が決まる。
【0016】
図1には、イオンビーム源110から発せられるイオンビーム170が収差補正型偏向ユニット162に進入する様子が図示されている。収差補正型偏向ユニットにおいて、所定の質量とは異なる質量を有するイオンは、イオンビーム171と173で示されるように第2光軸144から逸れて偏向される。従って、イオンビーム171及びイオンビーム173はそれぞれ所定の質量より小さい質量を有するイオン又は所定の質量より大きい質量を有するイオンから成るイオンビームを表している。所定の質量又は所定の質量範囲のイオンを含む選択されたイオンビーム172は質量分離開口部154を通過し、対物レンズ124により試料130上に集束される。イオンビーム172は多数のアプリケーションに利用可能である。
【0017】
一実施形態において、イオン源110は液体合金イオン源(LMAIS)である。この実施形態において、例えば、合金はタングステンヘアピン又は別の金属線上に取り付けられ、加熱可能である。一実施形態において、合金はSiPr、SiAu等の二元合金、又はAuSiMn又はシリコンとその他の金属との組合せが可能である。典型的には、金属は質量100g/モル以上の重金属である。別の例としては、Mnを重金属と又は別の金属と組み合わせてもよく、例えばAuSiMn又はGaMnが挙げられる。更なる例はCoNdである。
【0018】
別の実施形態において、合金は共晶である。このため、この合金の融点は個々の元素の融点と比較すると低下する。
【0019】
一実施形態においてはイオン源用のエミッタが設置され、前記エミッタは二元合金PrSiをイオン源材料として含む。従って、本発明のこの態様では少量のクラスタ及び分子イオンのみならずPrとSiイオンのみがイオン源から発生する。従って、このイオン源で発生させたイオンビームで半導体材料を加工する場合、不純物が混入しない。更に、PrイオンはSiイオンよりはるかに重い。このため、半導体表面を構造化する際、Prで迅速な表面分解を行い、より軽いSiイオンを用いて微細な分解又は検査を行うことが可能である。従って、二元合金PrSiでは単一のイオン源で、検査のみならず迅速で微細な表面加工が可能となる。最後に、純粋なPrとは対照的に、二元合金PrSiは空気に曝されても十分に安定しているため、PrSiイオン源は容易に製造及び取付け可能である。
【0020】
概して、本願の実施形態に従って液体合金イオン源を用いる場合、高質量のイオンを放射すると、例えばガリウムイオン源と比較して高いミリング速度が得られる。更に、著しく質量の異なるイオンを発生可能である。このため、異なる動作モードを設定可能である。一部の実施形態において、発生したイオンの質量における差は、例えば、少なくとも5g/モル、10g/モル、50g/モル、100g/モル又はそれ以上である。ある動作モードでは重イオン種を選択し、別の動作モードでは軽イオン種を選択可能である。
【0021】
しかしながら、更なる実施形態においては、Ga、Bi、In、Sn、Sb等から成る液体金属イオン源LMISも使用可能である。このため、収差補正型偏向ユニット162及び質量分離開口部154を放射されたイオンから異なるアイソトープを選択するよう適合させることも可能である。
【0022】
LMISにおいては、典型的にはW、Ta、Ti又はNiから成る微小なヘアピン及びフィラメントをエミッタとして使用する。また、ヘアピンを備えた/備えていないリザーバタイプのエミッタ及び多孔性エミッタが知られている。
【0023】
液体合金イオン源を適用する場合、イオン質量の増大とイオンが二重に帯電する可能性が高くなることから、より高いエネルギーと、それに伴う高いスパッタリング速度が得られる。通常、イオンビーム源により異なるイオン種が放射される場合、種の選択は以下のように行うことができる。収差補正型偏向ユニットを用いることで、イオン種をq/mについて収差補正をして選択することが可能である。つまり、殆どのアプリケーションについてイオン種をその質量及び/又はその電荷に基づいて選択可能である。
【0024】
本願で記載の実施形態に関し、典型的には、静電レンズを用いてイオンビームのコリメート、整形又は集束を行う。静電レンズはアインツェルレンズ、加速レンズ、減速レンズとして適用可能である。或いは又はそれに加え、幾つかの磁界集束素子を設置することも可能であるが、高磁場が必要とされる。
【0025】
次に、収差補正型偏向ユニット162及び質量分離開口部154に関しての更なる実施形態について説明する。これらの詳細は本願に記載の実施形態のいずれとも組合せ可能である。最先端型のイオンビーム装置は多くの場合ウィーン又はExB速度フィルタを用いて異なる質量と電荷を有するイオンを分離する。このため、z軸(光軸)に対して垂直な実質的に直交する静電場及び磁場が用いられる。イオンに作用する力はクーロン力
Fe=q・E (1)、
及びローレンツ力
Fm=q・(vxB) (2)、
によって付与される。
【0026】
共に長さがlである電場及び磁場におけるイオンの偏向角は以下の方程式で現すことが可能である。
θ=ql(νB−E)/(mν2) (3)
【0027】
図1Bにウィーンフィルタ62及びブロック開口部54が図示されている。図1に図示のビーム路は、番号2のイオン源からのイオンが異なる質量と速度を有する場合のウィーンフィルタ62の背後に見られるような仮想ビーム源2、2’、2”、3、5を示す。方程式3から見て取れるように、偏向角はフィルタ内の種の電荷、フィルタの長さl、種の質量及び種の速度に依存する。この結果、例えば異なる質量を有するイオンは異なる仮想イオン源から生じるように見える。これは図1Bに仮想光源3、5として描かれている。こういった選択は質量分離装置には望ましい。しかしながら、異なる速度又はエネルギーには所望の質量を有するイオンの仮想イオン源を不鮮明にしてしまうという影響もある。図1Bにおいて、これはイオン源2、2’、2”により示される。上述の実施形態によるイオン源に関し、速度又はエネルギーにおける変動はそれぞれ5〜15eV又はそれよりも高くなる場合がある。このため、所望のイオン種の不鮮明化はイオンビームの質に大きな影響を与える可能性がある。
【0028】
図1Cは収差補正型質量分離装置の一実施形態を表す。この図にはコイル巻線163及びプレート型電極165が図示されている。コイル163は磁場31を発生させる。磁場はイオンビーム170について磁力32を生じる。磁力は方程式2に従って生じる。磁場31に実質的に直交して電場が電極165間に発生する。これにより、実質的に磁力と反対の電気力33が発生する。
【0029】
図1Cに図示の実施形態では直交する均一な磁場と電場が発生する。その他の実施形態においては、例えば、四重極配列が利用可能である。これは例えば米国特許第4590379号の図2に図示されており、収差を補正する屈折と組み合わせた四重極レンズが描写されている。或いは4つの通電電極が記載されており、これらは基本的に磁場及び電場をそれぞれ発生させるために使用する偏向装置の光軸に沿って延びる。
【0030】
図1Cにおいて、イオンビーム路170はイオンが収差補正型偏向装置に進入する際に、軸142に対して若干傾斜する。イオンは収差補正型偏向装置内で偏向され、収差補正型偏向装置に侵入後、基本的に軸144に沿って進む。これは方程式3の導関数、つまり、
dθ/dν=−(ql/mν2)(1−2E/νB) (4)、
の観点から理解することが可能である。
【0031】
磁力が電気力の2倍に等しいという条件が満たされる限り、偏向角はイオンの速度とは無関係である。図1Cにおいて、これは矢印32、33を示す力の長さで表わされている。
【0032】
本願に記載の実施形態において、収差補正型偏向装置162(図1を参照のこと)は以下の構成の少なくとも1つにより説明可能である。一実施形態において、収差補正型偏向ユニットのインダクタンスは0.05μH〜2μH、又は例えば0.1〜2.0μHである。
【0033】
偏向については、例えばLMAISの重イオンを偏向させるためには比較的高い磁束密度を印加する。この結果、磁場は0.02T〜0.5Tとなる。対応する電場は4V/mm〜75V/mmとなる。
【0034】
0.02T〜0.5Tの磁束密度は電磁石、永久磁石、永久磁石と電磁石の組合せ又はその他の磁気装置により発生可能である。
【0035】
上記を踏まえ、本願に記載のその他の実施形態と組合せ得る別の実施形態においては、75〜500アンペアターン又は数千アンペアターンをも供給し得る。更に別の実施形態においては、約10〜400コイル巻線を設置可能である。更に別の実施形態においては、50〜500のコイル巻線を設置可能である。いずれにせよ、更に多くのコイル巻線、例えば数千にも上るコイル巻線を設置可能である。
【0036】
質量分離用に適合させた収差補正型偏向ユニットの更なる実施形態において、磁極片の材料には軟磁性材料が含まれ、例えばμ−金属である。
【0037】
更に別の実施形態において、収差補正型偏向角は0.3°〜7°となる。更に別の実施形態において、偏向角は1°〜3°である。収差を補正した偏向角は図1において角度164として図示されている。
【0038】
概して、本願に記載の実施形態によるイオンビーム装置は収差補正型質量分離ユニットを設け、装置動作における高い柔軟性を保っている。より良く理解するために、3つの異なるビーム路を図2A〜2Cに図示している。図2A〜2Cはイオンビーム源110、集光レンズ122、質量分離装置262、及び対物レンズ124を含む。質量分離装置262は収差補正型偏向ユニットと質量分離開口部を有し、簡略化によりこれらのコンポーネントは双方共に図2A〜2Cでは明確に図示されていない。
【0039】
イオンビームはまず軸142に沿って進む。質量分離装置の収差補正型偏向装置内で、イオンビームは軸144に向かって偏向され、最終的に対物レンズ124により試料130上に集束される。図2Aは集光レンズ122の電源がオフ、又は励磁が小さい状態を図示している。従って、ビーム路271のプローブ電流、スポットサイズは小さくなり、高分解能となる。図2Bにおいて、集光レンズ122は中程度に励磁されている。励磁は、例えば、10〜14kVの範囲内である。図2Aと比較した場合、プローブ電流は増大し、より早いミリング又はスパッタリング速度、及び分解能の低下へとつながる。図2Cのビーム路273は強い励磁、例えば28〜22kVの範囲の状況を示す。これにより大きなプローブ電流、大きなスポットサイズ、更に早いミリング又はスパッタリング速度、及び低分解能が実現される。
【0040】
上記を踏まえると、本願に記載の実施形態のイオンビーム装置は異なるビーム電流、ミリング/スパッタリング速度、更には多様な分解能を提供可能なシステムを可能とする。このシステムは、更に、たとえシステム内に収差補正型偏向ユニットとしてのExB質量分離ユニットが1つしかない場合であってもイオン源を試料上に画像化可能である。更に、このシステムは異なる動作アプリケーションについての較正と調心が容易である。
【0041】
更なる実施形態において、クロスオーバを含むイオンビーム装置も提供可能である。
【0042】
本願に記載の実施形態において、最初に調心してしまえば、集光レンズは収差補正型偏向ユニットを再調整する必要なくいずれの励磁も開始可能となる。従って、時間のかかる質量分離装置の調心や再調整をすることなく、集光レンズ設定を所望のアプリケーションに対して最適化することが可能である。
【0043】
図3には別のイオンビーム装置300が図示されている。一実施形態において、イオンビーム装置はイオンビーム源110を含み、イオンビーム源はイオンビームを第1軸142に沿って放射する。開口部152がビームの整形及び/又はシステムの開口数を決定するために設けられている。イオンビーム源110から発せられるイオンビーム170が収差補正型偏向ユニット162に進入する様子が図示されている。収差補正型偏向ユニット内において、所定又は公称質量とは異なる質量を有するイオンは光軸144から偏向される。公称質量、つまり所定の質量又は所定の質量範囲のイオンを含む選択されたイオンビーム172は質量分離開口部154を通過して、対物レンズ124により試料130上に集束される。イオンビーム172は複数のアプリケーションに利用可能である。
【0044】
一実施形態において、イオン源110は液体合金イオン源(LMAIS)である。この場合、例えば、合金はタングステンヘアピン又はその他の加熱可能な金属線上に設けられる。一実施形態において、合金はSiPr、SiAu等の二元合金、又はAuSiMn又はシリコンとその他の金属との組合せである。典型的には、金属は質量100g/モル以上の重金属である。別の実施例において、Mnは重金属と又はその他の金属と組み合わせてもよく、GaMnが挙げられる。別の実施形態において、合金は共晶である。このため、この合金の融点は個々の元素の融点と比較すると低下する。別の実施形態において、発生したイオンの質量における差は、例えば、少なくとも5g/モル、10g/モル、50g/モル、100g/モル又はそれ以上である。ある動作モードでは重イオン種を選択し、別の動作モードでは軽イオン種を選択可能である。実施形態によっては、1つ以上の動作モード、例えばスパッタリング/ミリング及び検査について1つのイオン種も選択可能である。液体合金イオン源を適用する場合、イオンの質量の増大とイオンが二重に帯電する可能性が高くなることから、より高いエネルギーと、それに伴って高いスパッタリング速度が得られる。
【0045】
図3に示されるように、イオンビーム装置は追加してコレクタレンズ321を含む。更に、集光レンズ322と対物レンズ124が存在する。コレクタレンズ321及び集光レンズ322を含む電子ビーム装置はシステム内のビーム路の複数の固定開口絞り直径について開口数の調整が可能である。そのため、より広範囲のビーム電流値に亘って改善された分解能が得られる。
【0046】
図1Cに関し例示的に説明したように、ExB偏向ユニットでは、一実施形態において、電気及び磁気双極子場が重畳している。このため、更に別の実施形態において、各双極子強度E(z)及びB(z)は同じ形状を有する。E(z)とB(z)の形状が同一であることにより、収差補正型偏向ユニットをイオンビームの軌跡全体に沿って方程式4を満たすように適合させることが可能となる。
【0047】
更なる実施形態において、電気及び磁気双極子場及び/又は電気及び磁気双極子場を発生するコンポーネントは互いに離間される、つまり、コンポーネントは光軸の方向に沿って重ならない。このため、対応するシステムは典型的には光軸に沿って短い偏向領域でもって配置可能となる。
【0048】
個別の電気及び磁気双極子を含む実施形態について、傾斜したイオンビームは複合型偏向装置である収差補正型偏向ユニットの回転中心で光軸に交差する。
【0049】
図4は電子ビーム装置400を図示する。この図においては、磁気偏向装置464と静電偏向装置466が収差補正型偏向ユニット462に含まれている。
【0050】
磁気偏向装置464はイオンビームを角度2γで偏向する。実質的に軸144上で、静電偏向装置466はイオンビームを角度γでもって軸144方向に偏向する。このため、複合式の収差補正型偏向ユニット462により複合偏向角が実現される。
【0051】
図4Bにおいては、更なるイオンビーム装置400が図示されている。この図において、静電偏向装置466は磁気偏向装置464の上方に設置され、これにより複合式の収差補正型偏向ユニット462が構成される。図4と同様に、また磁力は電気力の2倍に等しいという条件に従って、静電偏向装置462はビームを角度γで偏向する。この後、磁気偏向装置464はイオンビームを角度2γで偏向し、イオンビームを軸144に沿って再偏向する。
【0052】
概して、本願に記載の実施形態において、システムの光軸は軸144と称され、これは軸144が実質的に対物レンズ124の軸と一致するからである。しかしながら、本願に記載の実施形態のイオンビーム装置の最初の「光」軸、つまり軸142は光軸144に対して傾斜していることに留意する必要がある。
【0053】
図1、4A及び4Bに関して記載の実施形態において、磁気及び電気双極子場は実質的に重畳する又は重畳しない。従って、当然ながら、重畳しない場とは異なる場を発生させる要素が軸方向に沿った軸に沿って、重ならない場合に生じる。ここで、隣接する場のクロストークは無視する。
【0054】
更なる実施形態において、磁場及び電場は部分的に重畳する。更に別の実施形態において、双極子、四重極子、八重極子、又は更に高い又は上位の場を印加可能である。更なる実施形態を図5A及び5Bについて説明する。図5Aにおいて、電場及び磁場を発生させるコンポーネントは筐体566に固定されている。このため、筐体が例えば共通フレームとなる。磁気双極子場はコイル569により発生され、コア564周囲に巻線されている。磁極片568はコアに隣接しており、磁場は2つの磁極片間に発生する。更に、電極567はフレーム565に取り付けられている。磁極片間の間隙及び電極間の間隙内には、実質的に直交する場が発生する。一実施形態において、磁極片間の間隙は2〜10mm、電極間の間隙は1〜8mmである。
【0055】
更なる実施形態において、磁極片、コア、及び筐体566はμ−金属から成る。
【0056】
更に別の実施形態においては、コイルを封入筐体内に設置して大気圧下に置き、これにより冷却を向上させる。
【0057】
更に別の実施形態において、筐体566によって定められるシステム全長は40mmから120mmであるが、長さは150又は200mmであってもよい。通常、偏向領域が短いと偏向ユニットの軸に対して入射するイオンビームの距離も短くなり、軸から逸れたイオンビームによって発生する収差は軽減される。更に別の実施形態において、イオンビーム軌道の軸に沿った磁極片及び電極の長さは30mm〜100mmの範囲である。偏向ユニットの筐体の長さに関して記載したように、より長い電場/磁場発生要素、例えば140及び190mmを使用可能である。しかしながら、これは収差の拡大につながる可能性がある。
【0058】
磁場と電場が重畳している収差補正型偏向ユニットの一部の実施形態において、電場・磁場は偏向ユニットの光軸に沿って同様に整形可能である。このため、その前縁及び後縁で電極の形状を(Z方向に)面取りする、或いは凹状電極形状等の一般的に使用される磁場・電場整形技法が使用できる。
【0059】
更に、本願に記載の収差補正型偏向ユニットは公称エネルギーを有するイオンについて公称の偏向を引き起こす。この結果、電極及び磁極片又は磁場及び電場をそれぞれ直線的に配列する場合、イオンビームは偏向ユニットに軸とは外れて進入する。このため、上方の多極コンポーネントが十分に小さくないと、システムの偏向特性が低下する。
【0060】
本願に記載の一部の実施形態においては、実質的に純粋な双極子場を含むシステムが使用可能である。図5Bは8個の電極と磁極片を有するシステムを図示している。コア564は筐体566に絶縁体563を介して接続されている。コア及びそれに付随して磁極片を励磁するためのコイルはコア564周囲に巻回されている。コアのもう一方の端部には、電極・磁極片567/8が設けられている。例えば図5Bに図示されるような偏向ユニットを利用する実施形態においては、フリンジ電界を磁場及び電場について同様となるよう発生させることが可能であり、高度に純粋な双極子場が発生する。しかしながら、8個のコイルと8個の電極を含むシステムはより多くの電流及び電圧源を必要とするため、コストが向上する。この結果、本願に記載の実施形態では典型的には各2つの極(電極及び磁極)を有する最適化したシステムを使用する。
【0061】
本願に記載の実施形態によるイオンビーム装置で使用し得る、本願に記載の収差補正型偏向ユニット(例えば、図1C、図5A、図5Bと共に本文の一部を参照すること)は、イオンビームの質量分離用に適合可能である。一実施形態において、適合には比較的高い質量を有する種の偏向が含まれる。更に、非動的偏向、つまり調整可能な静的偏向を提供可能である。非動的偏向は一動作モードについて静的であり、ある静的偏向モードから別の静的偏向モードへと切り替え可能である。
【0062】
例えばSi、Pr又は液体金属イオン源、特には液体合金イオン源に使用可能なその他の金属の高質量を踏まえると、加速電圧は比較的低い速度につながる。そのため、偏向については、比較的高い磁束密度が印加される。一実施形態において、収差補正型偏向ユニットの偏向角は0.3°〜7°である。別の実施形態において、偏向角は1°〜3°である。更に別の実施形態において、磁場は0.2T〜0.5Tとなる。対応する電場は4V/mm〜75V/mmとなる。
【0063】
上記を踏まえ、本願に記載のその他の実施形態と組み合わせ得る更なる実施形態においては75〜500アンペアターンを供給し得る。更に別の実施形態においては、約10〜400コイル巻線を設置可能である。更に別の実施形態においては、50〜500のコイル巻線を設置可能である。いずれにせよ、更に多くのコイル巻線、例えば数千にもなるコイル巻線を設置可能である。
【0064】
質量分離用に適合させた収差補正型偏向ユニットの更なる実施形態において、磁極片の材料は軟磁性材料を含み、例えばμ−金属である。
【0065】
図1及び図3を再度参照して本願に開示の質量分離を含むもう一方のイオンビーム装置に言及すると、質量分離開口部、例えば開口絞りが設けられている。一実施形態において、開口部の開放部位は質量分離開口部がシステムの開口数を規定しないような形状と位置となっている。更なる実施形態において、開口部開放部位の直径は0.6〜3mm、例えば1mm〜2mmである。これは、例えば0.2〜0.9mmのビーム直径に使用可能である。更に別の実施形態において、質量選択開口部は収差補正型偏向ユニットと対物レンズとの間に設置される。典型的には対物レンズに近く配置され、例えば、対物レンズの100mm以内に配置される。
【0066】
次に、本願に記載のイオンビーム装置のアプリケーションについて図6〜図8に関連して説明する。これに関し、Si及びPrを含む液体合金イオン源について言及するが、当然ながら、アプリケーションはこれらの元素に限定されない。通常、アプリケーションは典型的には液体金属イオン源又は液体合金イオン源に使用可能である。そのため、一部の実施形態においては、異なる質量、例えば少なくとも30g/モルの差を有するイオンを放射するイオン源を設置する。
【0067】
上記で記載した異なるプローブ電流に更に加え、Si及びPrを放出するイオンビーム装置は以下のように使用可能である。一方では、Siと比較して高い質量を有するPrのイオンが質量分離開口部に侵入して試料上に集束されるようにとPrを偏向させる。これによりPrイオンが選択され、Siイオンはブロックされる。Prイオンは質量がより大きいことから、ミリング速度又はスパッタリング速度が上昇する。これにより、例えば、試料内でのカスケード衝突からアモルファス化が発生する場合がある。もう一方で、収差補正型偏向ユニットを調節し、Siイオンを質量分離開口部に侵入させ検査目的に使用することが可能である。
【0068】
異なる動作モードを適用する方法を次に説明する。図6において、まず工程702でイオンビームを発生させる。一実施形態において、イオンビームは共晶合金を加熱することで発生させることができる。工程704で低質量のイオンを高質量のイオンから分離する。
【0069】
このため、ビーム整形開口部が設置され、イオンビームは収差補正された上で偏向され、低質量のイオンが質量分離開口部の開放部位に侵入可能となる。通常、本願に記載の実施形態において、収差補正型の偏向とは同一質量を有するが速度の異なる(ΔE±120eVの範囲内)イオンが実質的に同じ偏向角で偏向される事実に言及するものである。
【0070】
選択されるイオンであるところの公称質量を有するイオンとは反対に、公称質量とは異なる質量を有するイオンは質量分離開口部でブロックされる。異なる実施形態においては、ある元素のアイソトープは質量分離開口部に侵入可能だが、その他の元素はブロックされる。典型的には分離されたイオンの質量には少なくとも10g/モル、及び/又、50g/モルから150g/モルの差がある。試料は工程706で低質量イオンビームを用いて検査する。検査ではイオンビームを試料上でラスター走査し、得られた二次及び/又は後方散乱粒子を検出装置で検出する。
【0071】
図7において、イオンビームは工程702で発生させる。工程804において、高質量イオンは偏向されて質量分離開口部に侵入し、低質量イオンは質量分離開口部によりブロックされるようにイオンビームを偏向させる。ミリング又はスパッタリングに応用する場合、高質量イオンビームで試料を走査したり試料上にビームを集束することができる。
【0072】
図8は異なる動作モードを組み合わせた実施形態を表す。方法は工程112から開始される。ここで次のアプリケーション方式を定める。工程114で、図2に関連して説明したようにイオンビーム電流を選択する。工程112で選択したモードに従って、本方法は次に図6及び7に関連して説明した方法のいずれかを実行する。この方法は工程112又は工程114でアプリケーションモードを変更する又はイオンビーム電流を調整するまで複数回実行可能である。
【0073】
本願においては、イオンビーム装置の実施形態を提供する。イオンビーム装置は第1質量を有する第1イオン種と第2質量を有する第2イオン種を含むイオンビームを発生させるためのイオンビーム源を含む。イオンビームは第1軸に沿って放射される。システムは集光レンズと、イオンビームを整形するよう適合された開口ユニットと、イオンビームのイオンを偏向するよう適合された収差補正型偏向ユニットを含む。収差補正型偏向ユニットは電場を発生させるための電場発生コンポーネントと、実質的に電場に直交する磁場を発生させるための磁場発生コンポーネントを含む。イオンビーム装置は第1質量(第2質量)とは異なる第2質量(第1質量)のイオンをブロックし、かつ第1質量(第2質量)のイオンの質量分離装置への侵入を可能にするよう適合された質量分離開口部を更に含む。装置は第2光軸を有する対物レンズを更に含み、第2光軸は第1軸に対して傾斜している。
【0074】
従って、質量分離ユニットがイオンビーム装置内に設置される。質量分離ユニットは非直線視覚システムである。非直線視覚システムは柔軟なビーム路と組合せ可能である。ビーム路における柔軟性は、線形近似に関し、同様の質量を有するイオンは速度が異なっていてもイオン源の像を不鮮明にしないという事実により保たれている。
【0075】
イオンビーム装置のある特定の実施形態において、イオンビーム源は液体合金イオン源である。このため、液体合金イオン源はシリコンと100g/モルを超える質量の材料との二元合金を含む。二元合金の例としてPrSiが挙げられる。その他の例も可能である。典型的には、合金は例えば共晶である。
【0076】
更なる実施形態において、ビームを整形するための開口ユニットをビーム偏向装置上方に設置することも可能である。このため、上記はビーム方向がシステムの上部から底部に向かうイオンビーム装置であると踏まえた上で理解される。
【0077】
更に別の実施形態において、偏向ユニットの偏向角は少なくとも0.5°であることから、イオンビーム装置全体は非直線視覚システムである。このため、収差補正型ユニットを電場を発生させるための1つの電場発生コンポーネントと、実質的に電場に直交する磁場を発生させるための1つの磁場発生コンポーネントから成るものとすることが可能である。
【0078】
独立して或いは上記記載の実施形態のいずれかに追加して実現可能な更に別の実施形態において、イオンビーム装置は調節可能な静的な偏向を付与するように適合されている。これにより、異なる動作モード及び/又は異なるイオン種選択ごとに励磁を変更可能である。しかしながら、偏向を走査等に使用しないという意味では、励磁は静的である。従って、電場発生コンポーネント及び磁場発生コンポーネントは調節式DC電源に接続可能である。更に、或いは又はこれに加え、磁場発生コンポーネントは0.1〜2μHのインダクタンス及び/又は50〜数千アンペアターンを有する。これは、例えば、少なくとも30、好ましくは少なくとも50の巻数を有するコイルを含む磁場発生コンポーネントで実現可能である。
【0079】
独立して或いは上記記載の実施形態のいずれかに追加して実現可能な更に別の実施形態において、質量分離開口部の直径はイオンビームのビーム直径よりも大きい直径を有する。このイオンビームは、所定の質量を有するイオンから成る群のイオンから成る。典型的には、質量分離開口部の直径は例えば、所定のイオン質量を有するイオン及び所定の質量±5g/モル範囲にあるイオン及び/又は直径約0.5mm〜3mmのイオンから成る群のイオンから成るイオンビームの直径より大きい。
【0080】
更なる実施形態においては、イオンビーム装置の操作方法を提供する。本方法はイオンビームを放射することを含み、ここでイオンビームは第1質量及び第1質量とは異なる第2質量を有する2つのイオン種を含む。本方法は更に第1質量を有するイオンを少なくとも0.5°の偏向角で偏向し、第2(第1)質量を有するイオンをブロックし、第1(第2)質量を有するイオンのイオンビームを試料上に集束させることを含む。更なる実施形態において、この2つの質量には少なくとも10g/モルの差がある。
【0081】
異なる動作モードにおいて、第1質量を有するイオンのイオンビームは試料を改変可能である。或いは、一方のイオンのイオンビームを用いて試料を検査する、又は試料を改変するのに使用することが可能である。このため、アプリケーションごとにイオンビーム電流を偏向することが、追加又は代替として可能である。典型的には、イオンビーム電流は偏向角を変えることなくアプリケーションに応じて変更可能である。
【0082】
上記は本発明の実施形態を対象としているが、本発明の基本的な範囲から逸脱することなく本発明のその他および更に別の実施形態を考案することができ、本発明の範囲は特許請求の範囲に基づいて定められる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
本発明の上記記載の態様及びその他のより詳細な態様の一部は詳細な説明に記載され、部分的に図面を参照して説明される。
【図1A】本願に記載の実施形態によるイオンビームの質量分離を含むイオンビーム装置の概略図である。
【図1B】イオンビームの質量分離用ウィーンフィルタ及び異なる質量及び速度に対応する仮想ビーム路の概略図である。
【図1C】本願に記載の実施形態による質量分離用収差補正型偏向システムの概略図である。
【図2A】〜
【図2C】本願に記載の実施形態によるイオンビーム装置の概略図であり、異なるビーム路を描きだすことでこのシステムの柔軟性を説明する図である。
【図3】本願に記載の更なる実施形態によるイオンビームの質量分離を含むイオンビーム装置の概略図である。
【図4A】本願に記載の更なる実施形態によるイオンビーム用の複合型質量分離偏向ユニットを含むイオンビーム装置の概略図である。
【図4B】本願に記載の更なる実施形態による別のイオンビーム用複合型質量分離偏向ユニットを含むイオンビーム装置の概略図である。
【図5A】本願に記載の実施形態による質量分離用収差補正型偏向システムの概略図であり、双極子を利用している図である。
【図5B】本願に記載の実施形態による質量分離用収差補正型偏向システムの概略図であり、八重極子を利用している図である。
【図6】質量分離アセンブリを含むイオンビーム装置の、本願に記載の実施形態による第1動作モードを説明するフロー図である。
【図7】質量分離アセンブリを含むイオンビーム装置の、本願に記載の実施形態による第2動作モードを説明するフロー図である。
【図8】質量分離アセンブリを含むイオンビーム装置の、本願に記載の実施形態による異なる動作モードを統合するための方法を説明するフロー図である。
【発明の分野】
【0001】
本発明はイオンビーム装置に関する。特には、本発明はイオンビーム装置用の収差補正型質量分離装置と、収差補正型質量分離装置を有するイオンビーム装置に関する。より詳細には、本発明は液体合金イオン源(LMAIS)と収差補正型質量分離装置を有するイオンビーム装置に関する。具体的には、本発明はイオンビーム装置とイオンビーム装置の操作方法に関する。
【発明の背景】
【0002】
ナノメートルスケールでの試料の構造化及びプロービングは、マイクロエレクトロニクス、マイクロメカニクス、及びバイオテクノロジーといったテクノロジーに高い需要がある。マイクロメートル及びナノメートルスケールの処理制御、検査又は構造化は荷電粒子ビームを用いて行われることが多く、例えば、プロービング又は構造化は荷電粒子ビーム装置で発生・集束された荷電粒子ビームで行うことが多い。荷電粒子ビーム装置の例としては、イオンビームパターン発生装置はもとより、イオンビーム注入装置、電子顕微鏡、電子ビームパターン発生装置、イオン顕微鏡が挙げられる。荷電粒子ビームは、光子ビームと比較すると、同等の粒子エネルギーでのその波長の短さから空間分解能に優れている。
【0003】
イオンビーム装置は複数のアプリケーションに利用可能である。その例にはイオンミリングによる半導体デバイスの切断面の形成、イオンミリングによる微細構造の構成、量子ドット、量子細線、磁気ナノドット等の構造のイオン注入による書き込み、スパッタリング、検査又はその他のアプリケーションが含まれる。そのため、様々なミリング速度、スパッタ速度又はその他の特性が求められ、これらは異なるビーム電流を必要とする。ビーム電流は、例えば、集光レンズのコリメート量により調整する。
【0004】
しかしながら、異なるビーム路の適用とウィーンフィルタ、セクタ等による質量分離の同時実現は困難である。これを踏まえ、例えば、タイチャー(Teicher)及びチウノフ(Tiunov)は2つのExBフィルタの使用を提案しており、これによりこういったシステムの回転中心が光軸に沿って移動可能となる("Design of an achromatic mass separator for a focused ion beam”, SPIE Vol. 2014 Charged Particle Optics (1993)/85)。しかしながら、こういったシステムは調心が複雑であり、高額、かつビーム路ごとの較正は困難である。
【概要】
【0005】
上記を踏まえ、本発明は独立請求項1に記載のイオンビーム装置及び独立請求項17に記載のイオンビーム装置の操作方法を提供する。
【0006】
一実施形態により、イオンビーム装置を提供する。イオンビーム装置は第1軸に沿って放射されるイオンビームを発生させるためのイオンビーム源と、イオンビームの開口数を規定するよう適合された開口ユニットと、既定の質量のイオンビームのイオンを偏向角でもって偏向するよう適合された収差補正型偏向ユニットを含み、収差補正型偏向ユニットは電場を発生させるための電場発生コンポーネントと、実質的に電場に直交する磁場を発生させるための磁場発生コンポーネントを含む。イオンビーム装置は既定の質量とは異なる質量のイオンをブロックし、かつ既定の質量を有するイオンがその内部に侵入可能となるよう適合された質量分離開口部と、第2光軸を有する対物レンズを更に含み、第2光軸は第1次軸に対して傾斜している。
【0007】
上記の実施形態と併用可能な更なる利点、構成、態様及び詳細は、従属請求項、本文、及び図面により明白である。
【0008】
別の実施形態では、イオンビーム装置の操作方法を提供する。この方法は第1質量と第1質量とは異なる第2質量とを有する2つのイオン種を含むイオンビームを放射し、第1質量を有するイオンを少なくとも0.1°、又は例えば少なくとも0.3°の偏向角で偏向し、第2質量を有するイオンをブロックし、第1質量を有するイオンのイオンビームを試料上に集束させることを含む。
【0009】
実施形態は開示した方法を実施するための装置も対象としており、記載の各方法工程を実行するための装置部品を含む。これらの方法工程はハードウェアコンポーネント、適当なソフトウェアによりプログラムされたコンピュータ、この2つのいずれの組合せ又はその他のやり方で実行することができる。更に、実施形態は記載の装置の操作方法も対象としており、装置の全機能を実行するための方法工程を含む。
【発明の詳細な説明】
【0010】
ここで本発明の様々な実施形態に詳細に言及し、その1つ以上の実施例を図面にて示す。各実施例は本発明の説明のためのものであり、本発明を制限することを意図するものではない。例えば、一実施形態の一部として説明又は記載した構成を別の実施形態で使用する又は併用することで、更に別の実施形態とすることが可能である。本発明はこういった改変や変形を含む。
【0011】
本願の保護範囲を限定することなく、以下においてイオンビーム装置又はそのコンポーネントは、一部の実施形態において、例示的に二次電子の検出を含むイオンビーム装置と称される。本発明は電子又はイオン、光子、X線又はその他の微粒子の形態の二次及び/又は後方散乱粒子を検出して試料の像を得る装置及びコンポーネントにも応用可能である。通常、微粒子と言う場合、イオン、原子、電子又はその他の粒子であるところの粒子のみならず光信号として理解され、この場合、微粒子は光子である。
【0012】
図面についての以下の説明において、同一の参照番号は同一のコンポーネントを示す。概して、個々の実施形態についての差異のみを記載する。
【0013】
本願で称するところの「試料」とは半導体ウェハ、半導体加工対象物、及びメモリディスク等のその他の加工対象物を含むがこれらに限定されない。本発明の実施形態はその上に材料を堆積する又は構造化するいずれの加工対象物にも応用することができる。試料には構造化する、又はその上に層を堆積するところの表面が含まれる。
【0014】
以下の説明において、ローレンツ力という用語はFm=q・(vxB)の力について使用する。クーロン力という用語はFe=q・Eの力について使用する。
【0015】
図1にはイオンビーム装置100が図示されている。一実施形態において、イオンビーム装置はイオンビーム源110を含む。イオンビーム源は第1軸142に沿ってイオンビームを放射する。集光レンズ122を用いてイオンビームをコリメートする。円形、スリット状、矩形、又はその他所望の形状の絞りとしての開口部152を用いることでイオンビームシステムの開口数が決まる。
【0016】
図1には、イオンビーム源110から発せられるイオンビーム170が収差補正型偏向ユニット162に進入する様子が図示されている。収差補正型偏向ユニットにおいて、所定の質量とは異なる質量を有するイオンは、イオンビーム171と173で示されるように第2光軸144から逸れて偏向される。従って、イオンビーム171及びイオンビーム173はそれぞれ所定の質量より小さい質量を有するイオン又は所定の質量より大きい質量を有するイオンから成るイオンビームを表している。所定の質量又は所定の質量範囲のイオンを含む選択されたイオンビーム172は質量分離開口部154を通過し、対物レンズ124により試料130上に集束される。イオンビーム172は多数のアプリケーションに利用可能である。
【0017】
一実施形態において、イオン源110は液体合金イオン源(LMAIS)である。この実施形態において、例えば、合金はタングステンヘアピン又は別の金属線上に取り付けられ、加熱可能である。一実施形態において、合金はSiPr、SiAu等の二元合金、又はAuSiMn又はシリコンとその他の金属との組合せが可能である。典型的には、金属は質量100g/モル以上の重金属である。別の例としては、Mnを重金属と又は別の金属と組み合わせてもよく、例えばAuSiMn又はGaMnが挙げられる。更なる例はCoNdである。
【0018】
別の実施形態において、合金は共晶である。このため、この合金の融点は個々の元素の融点と比較すると低下する。
【0019】
一実施形態においてはイオン源用のエミッタが設置され、前記エミッタは二元合金PrSiをイオン源材料として含む。従って、本発明のこの態様では少量のクラスタ及び分子イオンのみならずPrとSiイオンのみがイオン源から発生する。従って、このイオン源で発生させたイオンビームで半導体材料を加工する場合、不純物が混入しない。更に、PrイオンはSiイオンよりはるかに重い。このため、半導体表面を構造化する際、Prで迅速な表面分解を行い、より軽いSiイオンを用いて微細な分解又は検査を行うことが可能である。従って、二元合金PrSiでは単一のイオン源で、検査のみならず迅速で微細な表面加工が可能となる。最後に、純粋なPrとは対照的に、二元合金PrSiは空気に曝されても十分に安定しているため、PrSiイオン源は容易に製造及び取付け可能である。
【0020】
概して、本願の実施形態に従って液体合金イオン源を用いる場合、高質量のイオンを放射すると、例えばガリウムイオン源と比較して高いミリング速度が得られる。更に、著しく質量の異なるイオンを発生可能である。このため、異なる動作モードを設定可能である。一部の実施形態において、発生したイオンの質量における差は、例えば、少なくとも5g/モル、10g/モル、50g/モル、100g/モル又はそれ以上である。ある動作モードでは重イオン種を選択し、別の動作モードでは軽イオン種を選択可能である。
【0021】
しかしながら、更なる実施形態においては、Ga、Bi、In、Sn、Sb等から成る液体金属イオン源LMISも使用可能である。このため、収差補正型偏向ユニット162及び質量分離開口部154を放射されたイオンから異なるアイソトープを選択するよう適合させることも可能である。
【0022】
LMISにおいては、典型的にはW、Ta、Ti又はNiから成る微小なヘアピン及びフィラメントをエミッタとして使用する。また、ヘアピンを備えた/備えていないリザーバタイプのエミッタ及び多孔性エミッタが知られている。
【0023】
液体合金イオン源を適用する場合、イオン質量の増大とイオンが二重に帯電する可能性が高くなることから、より高いエネルギーと、それに伴う高いスパッタリング速度が得られる。通常、イオンビーム源により異なるイオン種が放射される場合、種の選択は以下のように行うことができる。収差補正型偏向ユニットを用いることで、イオン種をq/mについて収差補正をして選択することが可能である。つまり、殆どのアプリケーションについてイオン種をその質量及び/又はその電荷に基づいて選択可能である。
【0024】
本願で記載の実施形態に関し、典型的には、静電レンズを用いてイオンビームのコリメート、整形又は集束を行う。静電レンズはアインツェルレンズ、加速レンズ、減速レンズとして適用可能である。或いは又はそれに加え、幾つかの磁界集束素子を設置することも可能であるが、高磁場が必要とされる。
【0025】
次に、収差補正型偏向ユニット162及び質量分離開口部154に関しての更なる実施形態について説明する。これらの詳細は本願に記載の実施形態のいずれとも組合せ可能である。最先端型のイオンビーム装置は多くの場合ウィーン又はExB速度フィルタを用いて異なる質量と電荷を有するイオンを分離する。このため、z軸(光軸)に対して垂直な実質的に直交する静電場及び磁場が用いられる。イオンに作用する力はクーロン力
Fe=q・E (1)、
及びローレンツ力
Fm=q・(vxB) (2)、
によって付与される。
【0026】
共に長さがlである電場及び磁場におけるイオンの偏向角は以下の方程式で現すことが可能である。
θ=ql(νB−E)/(mν2) (3)
【0027】
図1Bにウィーンフィルタ62及びブロック開口部54が図示されている。図1に図示のビーム路は、番号2のイオン源からのイオンが異なる質量と速度を有する場合のウィーンフィルタ62の背後に見られるような仮想ビーム源2、2’、2”、3、5を示す。方程式3から見て取れるように、偏向角はフィルタ内の種の電荷、フィルタの長さl、種の質量及び種の速度に依存する。この結果、例えば異なる質量を有するイオンは異なる仮想イオン源から生じるように見える。これは図1Bに仮想光源3、5として描かれている。こういった選択は質量分離装置には望ましい。しかしながら、異なる速度又はエネルギーには所望の質量を有するイオンの仮想イオン源を不鮮明にしてしまうという影響もある。図1Bにおいて、これはイオン源2、2’、2”により示される。上述の実施形態によるイオン源に関し、速度又はエネルギーにおける変動はそれぞれ5〜15eV又はそれよりも高くなる場合がある。このため、所望のイオン種の不鮮明化はイオンビームの質に大きな影響を与える可能性がある。
【0028】
図1Cは収差補正型質量分離装置の一実施形態を表す。この図にはコイル巻線163及びプレート型電極165が図示されている。コイル163は磁場31を発生させる。磁場はイオンビーム170について磁力32を生じる。磁力は方程式2に従って生じる。磁場31に実質的に直交して電場が電極165間に発生する。これにより、実質的に磁力と反対の電気力33が発生する。
【0029】
図1Cに図示の実施形態では直交する均一な磁場と電場が発生する。その他の実施形態においては、例えば、四重極配列が利用可能である。これは例えば米国特許第4590379号の図2に図示されており、収差を補正する屈折と組み合わせた四重極レンズが描写されている。或いは4つの通電電極が記載されており、これらは基本的に磁場及び電場をそれぞれ発生させるために使用する偏向装置の光軸に沿って延びる。
【0030】
図1Cにおいて、イオンビーム路170はイオンが収差補正型偏向装置に進入する際に、軸142に対して若干傾斜する。イオンは収差補正型偏向装置内で偏向され、収差補正型偏向装置に侵入後、基本的に軸144に沿って進む。これは方程式3の導関数、つまり、
dθ/dν=−(ql/mν2)(1−2E/νB) (4)、
の観点から理解することが可能である。
【0031】
磁力が電気力の2倍に等しいという条件が満たされる限り、偏向角はイオンの速度とは無関係である。図1Cにおいて、これは矢印32、33を示す力の長さで表わされている。
【0032】
本願に記載の実施形態において、収差補正型偏向装置162(図1を参照のこと)は以下の構成の少なくとも1つにより説明可能である。一実施形態において、収差補正型偏向ユニットのインダクタンスは0.05μH〜2μH、又は例えば0.1〜2.0μHである。
【0033】
偏向については、例えばLMAISの重イオンを偏向させるためには比較的高い磁束密度を印加する。この結果、磁場は0.02T〜0.5Tとなる。対応する電場は4V/mm〜75V/mmとなる。
【0034】
0.02T〜0.5Tの磁束密度は電磁石、永久磁石、永久磁石と電磁石の組合せ又はその他の磁気装置により発生可能である。
【0035】
上記を踏まえ、本願に記載のその他の実施形態と組合せ得る別の実施形態においては、75〜500アンペアターン又は数千アンペアターンをも供給し得る。更に別の実施形態においては、約10〜400コイル巻線を設置可能である。更に別の実施形態においては、50〜500のコイル巻線を設置可能である。いずれにせよ、更に多くのコイル巻線、例えば数千にも上るコイル巻線を設置可能である。
【0036】
質量分離用に適合させた収差補正型偏向ユニットの更なる実施形態において、磁極片の材料には軟磁性材料が含まれ、例えばμ−金属である。
【0037】
更に別の実施形態において、収差補正型偏向角は0.3°〜7°となる。更に別の実施形態において、偏向角は1°〜3°である。収差を補正した偏向角は図1において角度164として図示されている。
【0038】
概して、本願に記載の実施形態によるイオンビーム装置は収差補正型質量分離ユニットを設け、装置動作における高い柔軟性を保っている。より良く理解するために、3つの異なるビーム路を図2A〜2Cに図示している。図2A〜2Cはイオンビーム源110、集光レンズ122、質量分離装置262、及び対物レンズ124を含む。質量分離装置262は収差補正型偏向ユニットと質量分離開口部を有し、簡略化によりこれらのコンポーネントは双方共に図2A〜2Cでは明確に図示されていない。
【0039】
イオンビームはまず軸142に沿って進む。質量分離装置の収差補正型偏向装置内で、イオンビームは軸144に向かって偏向され、最終的に対物レンズ124により試料130上に集束される。図2Aは集光レンズ122の電源がオフ、又は励磁が小さい状態を図示している。従って、ビーム路271のプローブ電流、スポットサイズは小さくなり、高分解能となる。図2Bにおいて、集光レンズ122は中程度に励磁されている。励磁は、例えば、10〜14kVの範囲内である。図2Aと比較した場合、プローブ電流は増大し、より早いミリング又はスパッタリング速度、及び分解能の低下へとつながる。図2Cのビーム路273は強い励磁、例えば28〜22kVの範囲の状況を示す。これにより大きなプローブ電流、大きなスポットサイズ、更に早いミリング又はスパッタリング速度、及び低分解能が実現される。
【0040】
上記を踏まえると、本願に記載の実施形態のイオンビーム装置は異なるビーム電流、ミリング/スパッタリング速度、更には多様な分解能を提供可能なシステムを可能とする。このシステムは、更に、たとえシステム内に収差補正型偏向ユニットとしてのExB質量分離ユニットが1つしかない場合であってもイオン源を試料上に画像化可能である。更に、このシステムは異なる動作アプリケーションについての較正と調心が容易である。
【0041】
更なる実施形態において、クロスオーバを含むイオンビーム装置も提供可能である。
【0042】
本願に記載の実施形態において、最初に調心してしまえば、集光レンズは収差補正型偏向ユニットを再調整する必要なくいずれの励磁も開始可能となる。従って、時間のかかる質量分離装置の調心や再調整をすることなく、集光レンズ設定を所望のアプリケーションに対して最適化することが可能である。
【0043】
図3には別のイオンビーム装置300が図示されている。一実施形態において、イオンビーム装置はイオンビーム源110を含み、イオンビーム源はイオンビームを第1軸142に沿って放射する。開口部152がビームの整形及び/又はシステムの開口数を決定するために設けられている。イオンビーム源110から発せられるイオンビーム170が収差補正型偏向ユニット162に進入する様子が図示されている。収差補正型偏向ユニット内において、所定又は公称質量とは異なる質量を有するイオンは光軸144から偏向される。公称質量、つまり所定の質量又は所定の質量範囲のイオンを含む選択されたイオンビーム172は質量分離開口部154を通過して、対物レンズ124により試料130上に集束される。イオンビーム172は複数のアプリケーションに利用可能である。
【0044】
一実施形態において、イオン源110は液体合金イオン源(LMAIS)である。この場合、例えば、合金はタングステンヘアピン又はその他の加熱可能な金属線上に設けられる。一実施形態において、合金はSiPr、SiAu等の二元合金、又はAuSiMn又はシリコンとその他の金属との組合せである。典型的には、金属は質量100g/モル以上の重金属である。別の実施例において、Mnは重金属と又はその他の金属と組み合わせてもよく、GaMnが挙げられる。別の実施形態において、合金は共晶である。このため、この合金の融点は個々の元素の融点と比較すると低下する。別の実施形態において、発生したイオンの質量における差は、例えば、少なくとも5g/モル、10g/モル、50g/モル、100g/モル又はそれ以上である。ある動作モードでは重イオン種を選択し、別の動作モードでは軽イオン種を選択可能である。実施形態によっては、1つ以上の動作モード、例えばスパッタリング/ミリング及び検査について1つのイオン種も選択可能である。液体合金イオン源を適用する場合、イオンの質量の増大とイオンが二重に帯電する可能性が高くなることから、より高いエネルギーと、それに伴って高いスパッタリング速度が得られる。
【0045】
図3に示されるように、イオンビーム装置は追加してコレクタレンズ321を含む。更に、集光レンズ322と対物レンズ124が存在する。コレクタレンズ321及び集光レンズ322を含む電子ビーム装置はシステム内のビーム路の複数の固定開口絞り直径について開口数の調整が可能である。そのため、より広範囲のビーム電流値に亘って改善された分解能が得られる。
【0046】
図1Cに関し例示的に説明したように、ExB偏向ユニットでは、一実施形態において、電気及び磁気双極子場が重畳している。このため、更に別の実施形態において、各双極子強度E(z)及びB(z)は同じ形状を有する。E(z)とB(z)の形状が同一であることにより、収差補正型偏向ユニットをイオンビームの軌跡全体に沿って方程式4を満たすように適合させることが可能となる。
【0047】
更なる実施形態において、電気及び磁気双極子場及び/又は電気及び磁気双極子場を発生するコンポーネントは互いに離間される、つまり、コンポーネントは光軸の方向に沿って重ならない。このため、対応するシステムは典型的には光軸に沿って短い偏向領域でもって配置可能となる。
【0048】
個別の電気及び磁気双極子を含む実施形態について、傾斜したイオンビームは複合型偏向装置である収差補正型偏向ユニットの回転中心で光軸に交差する。
【0049】
図4は電子ビーム装置400を図示する。この図においては、磁気偏向装置464と静電偏向装置466が収差補正型偏向ユニット462に含まれている。
【0050】
磁気偏向装置464はイオンビームを角度2γで偏向する。実質的に軸144上で、静電偏向装置466はイオンビームを角度γでもって軸144方向に偏向する。このため、複合式の収差補正型偏向ユニット462により複合偏向角が実現される。
【0051】
図4Bにおいては、更なるイオンビーム装置400が図示されている。この図において、静電偏向装置466は磁気偏向装置464の上方に設置され、これにより複合式の収差補正型偏向ユニット462が構成される。図4と同様に、また磁力は電気力の2倍に等しいという条件に従って、静電偏向装置462はビームを角度γで偏向する。この後、磁気偏向装置464はイオンビームを角度2γで偏向し、イオンビームを軸144に沿って再偏向する。
【0052】
概して、本願に記載の実施形態において、システムの光軸は軸144と称され、これは軸144が実質的に対物レンズ124の軸と一致するからである。しかしながら、本願に記載の実施形態のイオンビーム装置の最初の「光」軸、つまり軸142は光軸144に対して傾斜していることに留意する必要がある。
【0053】
図1、4A及び4Bに関して記載の実施形態において、磁気及び電気双極子場は実質的に重畳する又は重畳しない。従って、当然ながら、重畳しない場とは異なる場を発生させる要素が軸方向に沿った軸に沿って、重ならない場合に生じる。ここで、隣接する場のクロストークは無視する。
【0054】
更なる実施形態において、磁場及び電場は部分的に重畳する。更に別の実施形態において、双極子、四重極子、八重極子、又は更に高い又は上位の場を印加可能である。更なる実施形態を図5A及び5Bについて説明する。図5Aにおいて、電場及び磁場を発生させるコンポーネントは筐体566に固定されている。このため、筐体が例えば共通フレームとなる。磁気双極子場はコイル569により発生され、コア564周囲に巻線されている。磁極片568はコアに隣接しており、磁場は2つの磁極片間に発生する。更に、電極567はフレーム565に取り付けられている。磁極片間の間隙及び電極間の間隙内には、実質的に直交する場が発生する。一実施形態において、磁極片間の間隙は2〜10mm、電極間の間隙は1〜8mmである。
【0055】
更なる実施形態において、磁極片、コア、及び筐体566はμ−金属から成る。
【0056】
更に別の実施形態においては、コイルを封入筐体内に設置して大気圧下に置き、これにより冷却を向上させる。
【0057】
更に別の実施形態において、筐体566によって定められるシステム全長は40mmから120mmであるが、長さは150又は200mmであってもよい。通常、偏向領域が短いと偏向ユニットの軸に対して入射するイオンビームの距離も短くなり、軸から逸れたイオンビームによって発生する収差は軽減される。更に別の実施形態において、イオンビーム軌道の軸に沿った磁極片及び電極の長さは30mm〜100mmの範囲である。偏向ユニットの筐体の長さに関して記載したように、より長い電場/磁場発生要素、例えば140及び190mmを使用可能である。しかしながら、これは収差の拡大につながる可能性がある。
【0058】
磁場と電場が重畳している収差補正型偏向ユニットの一部の実施形態において、電場・磁場は偏向ユニットの光軸に沿って同様に整形可能である。このため、その前縁及び後縁で電極の形状を(Z方向に)面取りする、或いは凹状電極形状等の一般的に使用される磁場・電場整形技法が使用できる。
【0059】
更に、本願に記載の収差補正型偏向ユニットは公称エネルギーを有するイオンについて公称の偏向を引き起こす。この結果、電極及び磁極片又は磁場及び電場をそれぞれ直線的に配列する場合、イオンビームは偏向ユニットに軸とは外れて進入する。このため、上方の多極コンポーネントが十分に小さくないと、システムの偏向特性が低下する。
【0060】
本願に記載の一部の実施形態においては、実質的に純粋な双極子場を含むシステムが使用可能である。図5Bは8個の電極と磁極片を有するシステムを図示している。コア564は筐体566に絶縁体563を介して接続されている。コア及びそれに付随して磁極片を励磁するためのコイルはコア564周囲に巻回されている。コアのもう一方の端部には、電極・磁極片567/8が設けられている。例えば図5Bに図示されるような偏向ユニットを利用する実施形態においては、フリンジ電界を磁場及び電場について同様となるよう発生させることが可能であり、高度に純粋な双極子場が発生する。しかしながら、8個のコイルと8個の電極を含むシステムはより多くの電流及び電圧源を必要とするため、コストが向上する。この結果、本願に記載の実施形態では典型的には各2つの極(電極及び磁極)を有する最適化したシステムを使用する。
【0061】
本願に記載の実施形態によるイオンビーム装置で使用し得る、本願に記載の収差補正型偏向ユニット(例えば、図1C、図5A、図5Bと共に本文の一部を参照すること)は、イオンビームの質量分離用に適合可能である。一実施形態において、適合には比較的高い質量を有する種の偏向が含まれる。更に、非動的偏向、つまり調整可能な静的偏向を提供可能である。非動的偏向は一動作モードについて静的であり、ある静的偏向モードから別の静的偏向モードへと切り替え可能である。
【0062】
例えばSi、Pr又は液体金属イオン源、特には液体合金イオン源に使用可能なその他の金属の高質量を踏まえると、加速電圧は比較的低い速度につながる。そのため、偏向については、比較的高い磁束密度が印加される。一実施形態において、収差補正型偏向ユニットの偏向角は0.3°〜7°である。別の実施形態において、偏向角は1°〜3°である。更に別の実施形態において、磁場は0.2T〜0.5Tとなる。対応する電場は4V/mm〜75V/mmとなる。
【0063】
上記を踏まえ、本願に記載のその他の実施形態と組み合わせ得る更なる実施形態においては75〜500アンペアターンを供給し得る。更に別の実施形態においては、約10〜400コイル巻線を設置可能である。更に別の実施形態においては、50〜500のコイル巻線を設置可能である。いずれにせよ、更に多くのコイル巻線、例えば数千にもなるコイル巻線を設置可能である。
【0064】
質量分離用に適合させた収差補正型偏向ユニットの更なる実施形態において、磁極片の材料は軟磁性材料を含み、例えばμ−金属である。
【0065】
図1及び図3を再度参照して本願に開示の質量分離を含むもう一方のイオンビーム装置に言及すると、質量分離開口部、例えば開口絞りが設けられている。一実施形態において、開口部の開放部位は質量分離開口部がシステムの開口数を規定しないような形状と位置となっている。更なる実施形態において、開口部開放部位の直径は0.6〜3mm、例えば1mm〜2mmである。これは、例えば0.2〜0.9mmのビーム直径に使用可能である。更に別の実施形態において、質量選択開口部は収差補正型偏向ユニットと対物レンズとの間に設置される。典型的には対物レンズに近く配置され、例えば、対物レンズの100mm以内に配置される。
【0066】
次に、本願に記載のイオンビーム装置のアプリケーションについて図6〜図8に関連して説明する。これに関し、Si及びPrを含む液体合金イオン源について言及するが、当然ながら、アプリケーションはこれらの元素に限定されない。通常、アプリケーションは典型的には液体金属イオン源又は液体合金イオン源に使用可能である。そのため、一部の実施形態においては、異なる質量、例えば少なくとも30g/モルの差を有するイオンを放射するイオン源を設置する。
【0067】
上記で記載した異なるプローブ電流に更に加え、Si及びPrを放出するイオンビーム装置は以下のように使用可能である。一方では、Siと比較して高い質量を有するPrのイオンが質量分離開口部に侵入して試料上に集束されるようにとPrを偏向させる。これによりPrイオンが選択され、Siイオンはブロックされる。Prイオンは質量がより大きいことから、ミリング速度又はスパッタリング速度が上昇する。これにより、例えば、試料内でのカスケード衝突からアモルファス化が発生する場合がある。もう一方で、収差補正型偏向ユニットを調節し、Siイオンを質量分離開口部に侵入させ検査目的に使用することが可能である。
【0068】
異なる動作モードを適用する方法を次に説明する。図6において、まず工程702でイオンビームを発生させる。一実施形態において、イオンビームは共晶合金を加熱することで発生させることができる。工程704で低質量のイオンを高質量のイオンから分離する。
【0069】
このため、ビーム整形開口部が設置され、イオンビームは収差補正された上で偏向され、低質量のイオンが質量分離開口部の開放部位に侵入可能となる。通常、本願に記載の実施形態において、収差補正型の偏向とは同一質量を有するが速度の異なる(ΔE±120eVの範囲内)イオンが実質的に同じ偏向角で偏向される事実に言及するものである。
【0070】
選択されるイオンであるところの公称質量を有するイオンとは反対に、公称質量とは異なる質量を有するイオンは質量分離開口部でブロックされる。異なる実施形態においては、ある元素のアイソトープは質量分離開口部に侵入可能だが、その他の元素はブロックされる。典型的には分離されたイオンの質量には少なくとも10g/モル、及び/又、50g/モルから150g/モルの差がある。試料は工程706で低質量イオンビームを用いて検査する。検査ではイオンビームを試料上でラスター走査し、得られた二次及び/又は後方散乱粒子を検出装置で検出する。
【0071】
図7において、イオンビームは工程702で発生させる。工程804において、高質量イオンは偏向されて質量分離開口部に侵入し、低質量イオンは質量分離開口部によりブロックされるようにイオンビームを偏向させる。ミリング又はスパッタリングに応用する場合、高質量イオンビームで試料を走査したり試料上にビームを集束することができる。
【0072】
図8は異なる動作モードを組み合わせた実施形態を表す。方法は工程112から開始される。ここで次のアプリケーション方式を定める。工程114で、図2に関連して説明したようにイオンビーム電流を選択する。工程112で選択したモードに従って、本方法は次に図6及び7に関連して説明した方法のいずれかを実行する。この方法は工程112又は工程114でアプリケーションモードを変更する又はイオンビーム電流を調整するまで複数回実行可能である。
【0073】
本願においては、イオンビーム装置の実施形態を提供する。イオンビーム装置は第1質量を有する第1イオン種と第2質量を有する第2イオン種を含むイオンビームを発生させるためのイオンビーム源を含む。イオンビームは第1軸に沿って放射される。システムは集光レンズと、イオンビームを整形するよう適合された開口ユニットと、イオンビームのイオンを偏向するよう適合された収差補正型偏向ユニットを含む。収差補正型偏向ユニットは電場を発生させるための電場発生コンポーネントと、実質的に電場に直交する磁場を発生させるための磁場発生コンポーネントを含む。イオンビーム装置は第1質量(第2質量)とは異なる第2質量(第1質量)のイオンをブロックし、かつ第1質量(第2質量)のイオンの質量分離装置への侵入を可能にするよう適合された質量分離開口部を更に含む。装置は第2光軸を有する対物レンズを更に含み、第2光軸は第1軸に対して傾斜している。
【0074】
従って、質量分離ユニットがイオンビーム装置内に設置される。質量分離ユニットは非直線視覚システムである。非直線視覚システムは柔軟なビーム路と組合せ可能である。ビーム路における柔軟性は、線形近似に関し、同様の質量を有するイオンは速度が異なっていてもイオン源の像を不鮮明にしないという事実により保たれている。
【0075】
イオンビーム装置のある特定の実施形態において、イオンビーム源は液体合金イオン源である。このため、液体合金イオン源はシリコンと100g/モルを超える質量の材料との二元合金を含む。二元合金の例としてPrSiが挙げられる。その他の例も可能である。典型的には、合金は例えば共晶である。
【0076】
更なる実施形態において、ビームを整形するための開口ユニットをビーム偏向装置上方に設置することも可能である。このため、上記はビーム方向がシステムの上部から底部に向かうイオンビーム装置であると踏まえた上で理解される。
【0077】
更に別の実施形態において、偏向ユニットの偏向角は少なくとも0.5°であることから、イオンビーム装置全体は非直線視覚システムである。このため、収差補正型ユニットを電場を発生させるための1つの電場発生コンポーネントと、実質的に電場に直交する磁場を発生させるための1つの磁場発生コンポーネントから成るものとすることが可能である。
【0078】
独立して或いは上記記載の実施形態のいずれかに追加して実現可能な更に別の実施形態において、イオンビーム装置は調節可能な静的な偏向を付与するように適合されている。これにより、異なる動作モード及び/又は異なるイオン種選択ごとに励磁を変更可能である。しかしながら、偏向を走査等に使用しないという意味では、励磁は静的である。従って、電場発生コンポーネント及び磁場発生コンポーネントは調節式DC電源に接続可能である。更に、或いは又はこれに加え、磁場発生コンポーネントは0.1〜2μHのインダクタンス及び/又は50〜数千アンペアターンを有する。これは、例えば、少なくとも30、好ましくは少なくとも50の巻数を有するコイルを含む磁場発生コンポーネントで実現可能である。
【0079】
独立して或いは上記記載の実施形態のいずれかに追加して実現可能な更に別の実施形態において、質量分離開口部の直径はイオンビームのビーム直径よりも大きい直径を有する。このイオンビームは、所定の質量を有するイオンから成る群のイオンから成る。典型的には、質量分離開口部の直径は例えば、所定のイオン質量を有するイオン及び所定の質量±5g/モル範囲にあるイオン及び/又は直径約0.5mm〜3mmのイオンから成る群のイオンから成るイオンビームの直径より大きい。
【0080】
更なる実施形態においては、イオンビーム装置の操作方法を提供する。本方法はイオンビームを放射することを含み、ここでイオンビームは第1質量及び第1質量とは異なる第2質量を有する2つのイオン種を含む。本方法は更に第1質量を有するイオンを少なくとも0.5°の偏向角で偏向し、第2(第1)質量を有するイオンをブロックし、第1(第2)質量を有するイオンのイオンビームを試料上に集束させることを含む。更なる実施形態において、この2つの質量には少なくとも10g/モルの差がある。
【0081】
異なる動作モードにおいて、第1質量を有するイオンのイオンビームは試料を改変可能である。或いは、一方のイオンのイオンビームを用いて試料を検査する、又は試料を改変するのに使用することが可能である。このため、アプリケーションごとにイオンビーム電流を偏向することが、追加又は代替として可能である。典型的には、イオンビーム電流は偏向角を変えることなくアプリケーションに応じて変更可能である。
【0082】
上記は本発明の実施形態を対象としているが、本発明の基本的な範囲から逸脱することなく本発明のその他および更に別の実施形態を考案することができ、本発明の範囲は特許請求の範囲に基づいて定められる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
本発明の上記記載の態様及びその他のより詳細な態様の一部は詳細な説明に記載され、部分的に図面を参照して説明される。
【図1A】本願に記載の実施形態によるイオンビームの質量分離を含むイオンビーム装置の概略図である。
【図1B】イオンビームの質量分離用ウィーンフィルタ及び異なる質量及び速度に対応する仮想ビーム路の概略図である。
【図1C】本願に記載の実施形態による質量分離用収差補正型偏向システムの概略図である。
【図2A】〜
【図2C】本願に記載の実施形態によるイオンビーム装置の概略図であり、異なるビーム路を描きだすことでこのシステムの柔軟性を説明する図である。
【図3】本願に記載の更なる実施形態によるイオンビームの質量分離を含むイオンビーム装置の概略図である。
【図4A】本願に記載の更なる実施形態によるイオンビーム用の複合型質量分離偏向ユニットを含むイオンビーム装置の概略図である。
【図4B】本願に記載の更なる実施形態による別のイオンビーム用複合型質量分離偏向ユニットを含むイオンビーム装置の概略図である。
【図5A】本願に記載の実施形態による質量分離用収差補正型偏向システムの概略図であり、双極子を利用している図である。
【図5B】本願に記載の実施形態による質量分離用収差補正型偏向システムの概略図であり、八重極子を利用している図である。
【図6】質量分離アセンブリを含むイオンビーム装置の、本願に記載の実施形態による第1動作モードを説明するフロー図である。
【図7】質量分離アセンブリを含むイオンビーム装置の、本願に記載の実施形態による第2動作モードを説明するフロー図である。
【図8】質量分離アセンブリを含むイオンビーム装置の、本願に記載の実施形態による異なる動作モードを統合するための方法を説明するフロー図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸(142)に沿って放射されるイオンビーム(170)を発生させるためのイオンビーム源(110)と、
イオンビームを整形するよう適合された開口ユニット(152)と、
所定の質量のイオンビームのイオンを偏向角(146)でもって偏向するよう適合された収差補正型偏向ユニット(162)を含み、
収差補正型偏向ユニットは、
電場を発生させるための電場発生コンポーネント(165、466、567)と、
実質的に電場に直交する磁場を発生させるための磁場発生コンポーネント(163、464、569)を含み、
更に所定の質量とは異なる質量のイオンをブロックし、既定の質量を有するイオンがその内部に侵入可能となるよう適合された質量分離開口部(154)と、
第1軸に対して傾斜した第2光軸(144)を有する対物レンズ(124)を含むイオンビーム装置。
【請求項2】
イオンビーム源が液体金属合金イオン源である請求項1記載のイオンビーム装置。
【請求項3】
液体金属合金イオン源がシリコンと100g/モルを越える質量を有する材料とを含む二元合金である請求項2記載イオンビーム装置。
【請求項4】
二元合金がPrSiである請求項3記載のイオンビーム装置。
【請求項5】
金属合金が共晶である請求項2〜4のいずれか1項記載のイオンビーム装置。
【請求項6】
第1軸(142)と第2光軸(144)との傾斜が少なくとも0.5°である上記請求項のいずれか1項記載のイオンビーム装置。
【請求項7】
収差補正型偏向ユニットが、
電場を発生させるための1つの電場発生コンポーネントと、
実質的に電場に直交する磁場を発生させるための1つの磁場発生コンポーネントから成る上記請求項のいずれか1項記載のイオンビーム装置。
【請求項8】
電場発生コンポーネントと磁場発生コンポーネントが調節可能なDC電源に接続されている上記請求項のいずれか1項記載のイオンビーム装置。
【請求項9】
磁場発生コンポーネントのインダクタンスが0.1〜2μHである上記請求項のいずれか1項記載のイオンビーム装置。
【請求項10】
磁場発生コンポーネントが50〜250アンペアターンを有する上記請求項のいずれか1項記載のイオンビーム装置。
【請求項11】
磁場発生コンポーネントが少なくとも30、好ましくは少なくとも50の巻数を有するコイルを含む上記請求項のいずれか1項記載のイオンビーム装置。
【請求項12】
電場発生コンポーネントが4V/mm〜75V/mmの電場を発生するように適合されている上記請求項のいずれか1項記載のイオンビーム装置。
【請求項13】
質量分離開口部(154)が、所定の質量のイオンから成る群のイオンから成るイオンビームのビーム直径より大きい直径を有する上記請求項のいずれか1項記載のイオンビーム装置。
【請求項14】
質量分離開口部が、所定のイオン質量を有するイオン及び所定の質量±5g/モル範囲の質量を有するイオンから成る群のイオンから成るイオンビームのビーム直径より大きい直径を有する請求項1〜12のいずれか1項記載のイオンビーム装置。
【請求項15】
質量分離開口部の直径が約0.5mm〜3mmである上記請求項のいずれか1項記載のイオンビーム装置。
【請求項16】
更に集光レンズ(122、322)を含む上記請求項のいずれか1項記載のイオンビーム装置。
【請求項17】
第1質量と第1質量とは異なる第2質量とを有する2つのイオン種を含むイオンビーム(170)を放射し、
第1質量を有するイオンを少なくとも0.1°の偏向角で偏向し、
第2質量を有するイオンをブロックし、
第1質量を有するイオンのイオンビームを試料上に集束させることを含むイオンビーム装置の操作方法。
【請求項18】
第2質量が第1質量より少なくとも10g/モル分低い請求項17記載の方法。
【請求項19】
第1質量を有するイオンのイオンビームが試料を改変する請求項17〜18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
第2質量が第1質量よりも少なくとも10g/モル分高い請求項17記載の方法。
【請求項21】
第1質量を有するイオンのイオンビームを試料の検査に使用する請求項20記載の方法。
【請求項22】
イオンビーム電流をアプリケーションごとに変化させる請求項17〜21のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
イオンビーム電流を偏向角を変えることなくアプリケーションに応じて変化させる請求項17〜21のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
同一の質量と異なる速度を有するイオンが実質的に同一の偏向角で偏向される請求項17〜21のいずれか1項記載の方法。
【請求項1】
第1軸(142)に沿って放射されるイオンビーム(170)を発生させるためのイオンビーム源(110)と、
イオンビームを整形するよう適合された開口ユニット(152)と、
所定の質量のイオンビームのイオンを偏向角(146)でもって偏向するよう適合された収差補正型偏向ユニット(162)を含み、
収差補正型偏向ユニットは、
電場を発生させるための電場発生コンポーネント(165、466、567)と、
実質的に電場に直交する磁場を発生させるための磁場発生コンポーネント(163、464、569)を含み、
更に所定の質量とは異なる質量のイオンをブロックし、既定の質量を有するイオンがその内部に侵入可能となるよう適合された質量分離開口部(154)と、
第1軸に対して傾斜した第2光軸(144)を有する対物レンズ(124)を含むイオンビーム装置。
【請求項2】
イオンビーム源が液体金属合金イオン源である請求項1記載のイオンビーム装置。
【請求項3】
液体金属合金イオン源がシリコンと100g/モルを越える質量を有する材料とを含む二元合金である請求項2記載イオンビーム装置。
【請求項4】
二元合金がPrSiである請求項3記載のイオンビーム装置。
【請求項5】
金属合金が共晶である請求項2〜4のいずれか1項記載のイオンビーム装置。
【請求項6】
第1軸(142)と第2光軸(144)との傾斜が少なくとも0.5°である上記請求項のいずれか1項記載のイオンビーム装置。
【請求項7】
収差補正型偏向ユニットが、
電場を発生させるための1つの電場発生コンポーネントと、
実質的に電場に直交する磁場を発生させるための1つの磁場発生コンポーネントから成る上記請求項のいずれか1項記載のイオンビーム装置。
【請求項8】
電場発生コンポーネントと磁場発生コンポーネントが調節可能なDC電源に接続されている上記請求項のいずれか1項記載のイオンビーム装置。
【請求項9】
磁場発生コンポーネントのインダクタンスが0.1〜2μHである上記請求項のいずれか1項記載のイオンビーム装置。
【請求項10】
磁場発生コンポーネントが50〜250アンペアターンを有する上記請求項のいずれか1項記載のイオンビーム装置。
【請求項11】
磁場発生コンポーネントが少なくとも30、好ましくは少なくとも50の巻数を有するコイルを含む上記請求項のいずれか1項記載のイオンビーム装置。
【請求項12】
電場発生コンポーネントが4V/mm〜75V/mmの電場を発生するように適合されている上記請求項のいずれか1項記載のイオンビーム装置。
【請求項13】
質量分離開口部(154)が、所定の質量のイオンから成る群のイオンから成るイオンビームのビーム直径より大きい直径を有する上記請求項のいずれか1項記載のイオンビーム装置。
【請求項14】
質量分離開口部が、所定のイオン質量を有するイオン及び所定の質量±5g/モル範囲の質量を有するイオンから成る群のイオンから成るイオンビームのビーム直径より大きい直径を有する請求項1〜12のいずれか1項記載のイオンビーム装置。
【請求項15】
質量分離開口部の直径が約0.5mm〜3mmである上記請求項のいずれか1項記載のイオンビーム装置。
【請求項16】
更に集光レンズ(122、322)を含む上記請求項のいずれか1項記載のイオンビーム装置。
【請求項17】
第1質量と第1質量とは異なる第2質量とを有する2つのイオン種を含むイオンビーム(170)を放射し、
第1質量を有するイオンを少なくとも0.1°の偏向角で偏向し、
第2質量を有するイオンをブロックし、
第1質量を有するイオンのイオンビームを試料上に集束させることを含むイオンビーム装置の操作方法。
【請求項18】
第2質量が第1質量より少なくとも10g/モル分低い請求項17記載の方法。
【請求項19】
第1質量を有するイオンのイオンビームが試料を改変する請求項17〜18のいずれか1項記載の方法。
【請求項20】
第2質量が第1質量よりも少なくとも10g/モル分高い請求項17記載の方法。
【請求項21】
第1質量を有するイオンのイオンビームを試料の検査に使用する請求項20記載の方法。
【請求項22】
イオンビーム電流をアプリケーションごとに変化させる請求項17〜21のいずれか1項記載の方法。
【請求項23】
イオンビーム電流を偏向角を変えることなくアプリケーションに応じて変化させる請求項17〜21のいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
同一の質量と異なる速度を有するイオンが実質的に同一の偏向角で偏向される請求項17〜21のいずれか1項記載の方法。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図1B】
【図1C】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2008−192596(P2008−192596A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−278898(P2007−278898)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(501493587)アイシーティー インテグレーテッド サーキット テスティング ゲゼルシャフト フィーア ハルプライタープリーフテヒニック エム ベー ハー (25)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−278898(P2007−278898)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(501493587)アイシーティー インテグレーテッド サーキット テスティング ゲゼルシャフト フィーア ハルプライタープリーフテヒニック エム ベー ハー (25)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]