収納ケース付きスプール
【課題】簡易且つ容易に収納ケース内におけるスプールの回転を防止する。
【解決手段】筒状の胴部6を含み当該胴部6の外周面に釣糸Lが巻回される本体4、及び本体4に取り付けられ外周面に対面するベース板15を有するスプール2と、スプール2を収納する収納ケース3と、を備え、収納ケース3は、スプール2を収納するための収納口46と、収納口46を形成する縁部に設けられたフラップ36と、を有している。この収納ケース付きスプール1では、収納ケース3にスプール2が収納された状態にて、フラップ36R,36Lの先端側がベース板15に対して周方向の一方側及び他方側に位置してスプール2の回転を制限する。すなわち、フラップ36により、収納されたスプール2が収納ケース3に対して周方向に相対移動するのを制限することができる。
【解決手段】筒状の胴部6を含み当該胴部6の外周面に釣糸Lが巻回される本体4、及び本体4に取り付けられ外周面に対面するベース板15を有するスプール2と、スプール2を収納する収納ケース3と、を備え、収納ケース3は、スプール2を収納するための収納口46と、収納口46を形成する縁部に設けられたフラップ36と、を有している。この収納ケース付きスプール1では、収納ケース3にスプール2が収納された状態にて、フラップ36R,36Lの先端側がベース板15に対して周方向の一方側及び他方側に位置してスプール2の回転を制限する。すなわち、フラップ36により、収納されたスプール2が収納ケース3に対して周方向に相対移動するのを制限することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維体を巻回して収納する収納ケース付きスプールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、収納ケース付きスプールとして、筒状の胴部を有するスプールと、スプールを収納する収納ケースと、を備え、胴部の外周面に繊維体が巻回されると共に胴部の内周部に複数のリブが設けられたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−206470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、上述した収納ケース付きスプールでは、収納ケースにスプールを収納した後、当該収納ケースに別途設けられた止定部をスプールにおいて隣り合う2つのリブの間に挿嵌することにより、収納ケース内におけるスプールの回転を防止する。これに対し、近年の収納ケース付きスプールにおいては、収納ケースの構成を簡易にして製造コストを低減することが望まれていると共に、収納ケース内におけるスプールの回転を容易に防止することが要求されている。
【0004】
そこで、本発明は、簡易且つ容易に収納ケース内におけるスプールの回転を防止することができる収納ケース付きスプールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係る収納ケース付きスプールは、筒状の胴部を含み当該胴部の外周面に繊維体が巻回される本体、及び本体に取り付けられ胴部の外周面に対面する付属板を有するスプールと、スプールを収納する収納ケースと、を備え、収納ケースは、スプールを収納するための収納口と、収納口を形成する縁部に設けられた一対のフラップと、を有し、収納ケースにスプールが収納された状態において、フラップの一方は、その先端側が付属板に対して周方向の一方側に位置し、スプールの一方側への回転を制限するように構成されていると共に、フラップの他方は、その先端側が付属板に対して周方向の他方側に位置し、スプールの他方側への回転を制限するように構成されていることを特徴とする。
【0006】
この本発明に係る収納ケース付きスプールでは、収納ケースにスプールが収納された状態において、一方のフラップの先端側が付属板に対して周方向の一方側に位置してスプールの一方側への回転を制限すると共に、他方のフラップの先端側が付属板に対して周方向の他方側に位置してスプールの一方側への回転を制限する。すなわち、フラップにより、収納されたスプールが収納ケースに対して周方向に相対移動するのを制限することが可能となる。従って、簡易且つ容易に収納ケース内におけるスプールの回転を防止することができ、その結果、例えばスプールに表示部が設けられている場合、当該スプールが収納ケースに収納された状態での表示部を見易くすることができる。
【0007】
ここで、収納ケースにスプールが収納された状態において、フラップの先端側は、付属板と胴部の外周面との間にそれぞれ進入されることが好ましい。この場合、付属板がフラップで周方向に挟持されることになり、収納されたスプールが収納ケースに対して周方向に相対移動するのを抑止することができる。
【0008】
また、フラップには、先端側を内側に折り曲げるための折曲げ線がそれぞれ設けられていることが好ましい。これにより、例えばフラップの先端側を付属板と胴部の外周面との間に進入させる場合、フラップの先端側をこの間に容易に進入させることが可能となる。
【0009】
また、付属板は、繊維体の一端側を係止する係止部を有していることが好ましい。この場合、付属板により、巻回された繊維体がバラけるのを防止することができる。
【0010】
また、付属板は、繊維体を切断するための切断部を有していることが好ましい。この場合、巻回された繊維体を引き出して付属板により切断することができ、よって、所望の長さの繊維体を容易且つ効率的に得ることが可能となる。
【0011】
また、スプールには、繊維体に関する情報を表示する表示部が設けられていることが好ましい。この場合、表示部により巻回した繊維体に関する情報を表示することができる。加えて、上述したようにスプールの収納ケースに対する周方向の相対移動が制限されることから、スプールが収納ケースに収納された状態での表示部が見易くなる。
【0012】
また、繊維体としては、具体的には、釣糸が挙げられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡易且つ容易に収納ケース内におけるスプールの回転を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当する要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態に係る収納ケース付きスプールの構成について説明する。
【0016】
図1は本発明の第1実施形態に係る収納ケース付きスプールを示す斜視図である。この収納ケース付きスプールは、繊維体を巻回して収納するものである。繊維体としては、例えば、綿、羊毛等の天然繊維、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン等の合成繊維、金属繊維、ガラス繊維、若しくはこれらを組み合わせたものが挙げられ、その太さや強さは限定されず種々の糸状を呈するものが用いられる。図1に示すように、特に本実施形態の収納ケース付きスプール1では、釣りの利用に供する釣糸であってその号数が10号である釣糸(繊維体)Lを巻回して収納する。収納ケース付きスプール1は、釣糸Lが巻回されるスプール2と、当該スプール2を収納する収納ケース3と、を備えている。スプール2は、本体4と止め具(繊維体止め具)5とを有している。
【0017】
図2は図1の収納ケース付きスプールにおける本体を示す上面図、図3は図2のIII−III線に沿った断面図、図4は図1の収納ケース付きスプールにおける本体を示す正面図、図5は図1の収納ケース付きスプールにおける本体を示す背面図である。本体4は、例えば樹脂からなり、ここでは、巻回される釣糸Lの視認性の点で好ましいとして、透明樹脂により形成されている。図2及び図3に示すように、本体4は、胴部6とフランジ部7とを含んで構成されている。
【0018】
図3に示すように、本体4は、胴部6の内周面6aより内側が中空とされた非リブ構造の環状体となっている。胴部6は、円筒形状を呈しており、胴部6の外周面6bには、釣糸Lが例えば整列巻きで巻回される(図15参照)。フランジ部7は、所定の厚さを有するリング状を呈し、胴部6の軸線方向(以下、単に「軸線方向」という)における両端部にそれぞれ設けられている。具体的には、フランジ部7は、胴部6の外周面6bにおいて軸線方向における両端部に、径方向外側に突出するようにそれぞれ形成されている。
【0019】
両フランジ部7の外周面7cにおける周方向(以下、単に「周方向」という)の同位置には、その外側面7aから内側面7bまで延在し、且つ、フランジ部7の径方向(以下、単に「径方向」という)外側に開口する溝部9がそれぞれ形成されている。図4及び図5に示すように、溝部9は、フランジ部7の外周面7c側を矩形状に切り欠くようにして形成され、底面9a及び一対の側面9bを含んでいる。この溝部9の深さは、胴部6の外周面6bに釣糸Lが巻回された状態で釣糸Lがフランジ部7に納まるような深さ、つまり、軸線方向視において巻回される釣糸Lが溝部9から露出しない深さとなっている(図15参照)。
【0020】
図3〜図5に示すように、フランジ部7の外側面7aにおいて胴部6の内周面6a側には、凸部8がそれぞれ設けられている。凸部8は、内周面6aに連続するように周方向に延在し、且つ、軸線方向外側に突出している。そして、凸部8において溝部9側の部分、つまり、凸部8において溝部9の周方向における位置に対応する部分には、隙間10が設けられている。この隙間10は、軸線方向視において径方向内側に行くに従って狭くなるようなテーパ状を呈しており、止め具5を本体4に取り付けた状態(以下、単に「取付状態」という。なお、以下の説明において取付状態は図14又は図15を参照のこと)で、後述する止め具5の側板11が周方向に係合される。
【0021】
図3及び図5に示すように、フランジ部7のうち一方のフランジ部7Rの外側面7Raには、溝部9の底面9aに連接するように矩形状にその肉厚が薄くされてなる薄肉部12が設けられている。換言すると、薄肉部12により、外側面7Raにおいて溝部9と隙間10との間における底面9aに連接接する所定の領域の肉厚が、それ以外の領域の肉厚よりも僅かに薄くなっている。
【0022】
図3及び図4に示すように、フランジ部7のうち他方のフランジ部7Lの外側面7Laには、長溝13が設けられている。この長溝13は、外側面7Laにおいて溝部9と隙間10との間に略周方向に延在するように形成されている。
【0023】
図2に示すように、他方のフランジ部7Lの内側面7Lbには、溝部9から胴部6の外周面6bに向けて、径方向に対して傾斜して延在する段差14が設けられている。この段差14は、軸線方向視において胴部6の外周面6bに連接するように延在している。そして、段差14を介して、径方向外側におけるフランジ部7の肉厚が、径方向内側における肉厚よりも薄くなっている。すなわち、このようなフランジ部7の肉厚差による段差14が内側面7Lbに形成されるように、フランジ部7Lの内側面7Lbが切り欠かれたような形状とされている。
【0024】
図6は図1の収納ケース付きスプールにおける止め具を示す上面図、図7は図1の収納ケース付きスプールにおける止め具を示す下面図、図8は図6のVIII−VIII線に沿った断面図、図9は図1の収納ケース付きスプールにおける止め具を示す正面図。図10は図1の収納ケース付きスプールにおける止め具を示す背面図、図11は図6のXI−XI線に沿った断面図である。図6〜図11に示すように、止め具5は、ベース板15と、ベース板15の長手方向両端部にそれぞれ設けられた側板11と、を含んでいる。この止め具5は、本体4に着脱自在に取り付けられるものである。具体的には、取付状態において、止め具5におけるベース板15の内側の面15aが胴部6の外周面6bに対面し、当該ベース板15が一方のフランジ部7Rから他方のフランジ部7Lに架け渡される。そして、この止め具5は、取付状態にて巻回された繊維体Lの一端側(巻き終わりの端側)を係止する(詳しくは後述)。
【0025】
図6に示すように、ベース板15の外側の面15bには、例えば釣糸Lに関する情報、商品名、使用説明、マーク等の様々な文字や図形等を表示する表示部20が設けられている。なお、釣糸Lに関する情報としては、釣糸Lの号数、太さ寸法、断面積、強さ、材質、若しくはこれらの組み合わせたものが挙げられる。ここでの表示部20では、釣糸Lの号数が浮き彫りされて表示されている。
【0026】
図6及び図8に示すように、ベース板15の長手方向における一端部には、その一部が端面15cを含んで内側の面15aから外側の面15bまで開口する矩形状の開口部(実際には、樹脂成型による凹部である。以降の開口部も同じ)16が形成されている。図10に示すように、開口部16には、溝部9(図4参照)に対応する形状を呈し、且つ取付状態において径方向内側に凸状に突出する突出部17が設けられている。換言すると、溝部9と同様な外形形状を呈し、且つベース板15の内側の面15aに対して突出する突出部17が、開口部16に形成されている。そして、突出部17は、取付状態において溝部9に対応する位置に形成されている。すなわち、突出部17は、取付状態にて溝部9に係合するようになっている。
【0027】
図10及び図11に示すように、この突出部17は、一対の側壁(回り止め部)18と底壁(係止部)19とを有し、これら側壁18及び底壁19により凸状が構成されている。すなわち、図10に示すように、側壁18は、開口部16の対向する内面16aに結合され、且つベース板15の内側の面15aに対する垂直方向(図中における下方)に真っ直ぐ延在している。側壁18は、取付状態にて溝部9の側面9bに対面する。また、側壁18が延在する長さは、溝部9の深さよりも大きくなっている。換言すると、突出部17の突出高さは、溝部9の深さよりも大きくなっている。これにより、取付状態において本体4とベース板15との間には、隙間29(図15参照)が形成される。
【0028】
図6及び図7に示すように、底壁19は、側壁18,18に結合され且つベース板15の長手方向と交差する方向に延在している。底壁19は、取付状態にて底面9aに対面する。なお、このようにして突出部17が側壁18及び底壁19により凸状を構成することで、取付状態において、底壁19は自己の弾性力でもって撓むことが可能とされている。
【0029】
図6〜図8に示すように、側板11は、取付状態において本体4を軸線方向に挟持する。つまり、一方の側板11Rにおける内側面21及び他方の側板11Lにおける内側面21との間隔は、フランジ部7R,7L(図2参照)における外側面7Ra,7Laの間隔と略等しくされている。図10に示すように、この側板11は、その外形が長手方向視において基端11aから先端11bに行くに従って細くなるようなテーパ状となっている。つまり、上述したように、側板11は、取付状態でその先端11b側が凸部8の隙間10に周方向に係合するようになっている。
【0030】
側板11のうち一方の側板11Rには、開口部23に連続し、基端11aの一部を含んで内側面21から外側面25まで開口する開口部23が形成されている(図6及び図10参照)。また、開口部23は、先端11b側が上述した側板11の外形形状に伴って、先端に行くに従って狭くなるようなテーパ状となっている。
【0031】
図11に示すように、一方の側板11Rの内側面21には、当接部22とリブ48とが設けられている。当接部22は、側板11Rの先端11b側に位置し、矩形状に突出するように形成されている。リブ48は、上記の開口部23を横切るように形成されている。そして、図8に示すように、これら当接部22及びリブ48の肉厚(ベース板15の長手方向における厚さ)は、互いに等しく表面が面一となっている。すなわち、一方の側板11Rにあっては、取付状態において、当接部22及びリブ48が一方のフランジ部7Rにおける外側面7Raと当接すると共に、フランジ部7Rにおける外側面7Raと一方の側板11Rの内側面21との間には、隙間47(図15参照)が形成されるように構成されている。
【0032】
他方の側板11Lの内側面21には、長尺状の突起27が形成されている。この突起27は、取り付け状態において、上述したフランジ部7Lの外側面7Laにおける長溝13に係合する。図9に示すように、他方の側板11Lの外側面25には、例えば釣糸Lに関する情報、商品名、使用説明、マーク等の様々な文字や図形等を表示する表示部26が設けられている。ここでの表示部26では、釣糸Lの号数が記載されたラベルを貼付することにより表示されている。
【0033】
図8に戻り、一方の側板11Rの当接部22において先端11b側、及び他方の側板11Lの内側面21において先端11b側には、ベース板15の長手方向内側に突出する一対の爪部24が対向するようにそれぞれ形成されている。爪部24は、取付状態にて、胴部6の内周面6bに径方向に係合し、本体4と径方向に係合する。
【0034】
図12は図1の収納ケース付きスプールにおける収納ケースを示す展開斜視図、図13は図1の収納ケース付きスプールにおける収納ケースを示す斜視図である。図12及び図13に示すように、収納ケース3は、収納されるスプールの視認性の点で好ましいとして透明樹脂により形成され、プレス加工や曲げ加工を施して形成されている。樹脂としては、例えば塩化ビニル、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリプロピレン等が用いられる。なお、このような材料が用いられることにより、収納ケース3では、釣りの現場における耐水性も高められている。
【0035】
図12に示すように、収納ケース3は、ケース側板31、ケース前板32、ケース側板33、ケース後板34、及び貼り代部35を有し、これらがこの順で、折線m,n,o,pを順に介して連結されている。ケース側板31,33の長手方向における一端側の辺には、一対のフラップ36が折線gを介してそれぞれ連結されている。一方、ケース側板31,33の長手方向における他端側の辺には、一対のフラップ37が折線rを介してそれぞれ連結されている。なお、以下の説明において、フラップ36が連結された側を天側、フラップ37が連結された側を底側と称し、フラップ36を天側フラップ36、フラップ37を底側フラップ37と称する。
【0036】
ケース前板32の天側の辺には、ケース天板38及び差込片39がこの順で、折線s,tを順に介して連結されている一方、ケース前板32の底側の辺には、ケース底板40及び差込片41がこの順で、折先u,vを順に介して連結されている。ケース後板34の天側の辺には、ケース天板42及び吊下板43がこの順で、折線y,xを順に介して連結されている。ケース天板38には、収納ケース3を組み立てる際に、吊下板43が挿入される長孔44が設けられている。吊下板43には、収納ケース3を吊り下げるための吊下孔45が設けられている。また、差込片39が挿入されるスリット49が、折線yに沿って延在するように形成されている。
【0037】
本実施形態では、上述したように、ケース側板31,33に折線gを介して一対のフラップ36がそれぞれ連結されている。この天側フラップ36は、いわゆる突合せフラップであり、その長手方向の長さであるフラップ長さ(折線gに交差する方向の長さ)が通常の突合せフラップのものよりも長くなっている。ここでは、フラップ長さを底側フラップ37よりも長くしており、ケース前板32若しくはケース後板34の天側の辺の長さの略半分にしている。また、天側フラップ36には、折線gと略平行に延びる折線(折曲げ線)wがそれぞれ設けられており、収納ケース3を組み立てた状態において、天側フラップ36の先端側の部分36aが内側に折り曲げ可能とされている(図16(b)参照)。
【0038】
この収納ケース3は、各部の折り曲げや貼り合わせにより組み立てられる。具体的には、まず、ケース側板31、ケース前板32、ケース側板33、ケース後板34、及び貼り代部35を折線m,n,o,pにより折り曲げ、貼り代部35と側板31とを例えば接着剤又はテープで貼り合わせる。次に、底側フラップ37を折線rにより折り曲げ、ケース底板40を折線uにより折り曲げた後に、折線vで略90°で折り返された差込片41をケース前板34の内面側に差し込む。天側フラップ36を折線gによりそれぞれ折り曲げ、吊下板43を折線xにより略90°で予め折り返してケース天板42を折線yにより折り曲げる。そして、吊下板43を長孔44に挿入しつつケース天板38を折線sにより折り曲げ、折線tで略90°で折り返された差込片39をスリット49に差し込む。これにより、収納ケース3が組み立てられることになる(図13参照)。なお、この収納ケース3は、天側からスプールが収納されるものであり、よって、ケース側板31、ケース前板32、ケース側板33、及びケース後板34の天側の辺により収納口46(図16参照)が形成される。
【0039】
次に、このような構成を有する収納ケース付きスプール1において本体4に止め具5を着脱自在に取り付ける場合について説明する。
【0040】
本体4に止め具5を着脱自在に取り付ける場合、まず、溝部9を介して釣糸Lの一端側をスプール2から引き出す。そして、釣糸Lの一端側を、フランジ部7Rの外側面7Raにおいて巻回方向に沿う状態にして止め具5を本体4に取り付ける。具体的には、かかる釣糸Lの状態にて、突出部17を溝部9に係合させながら側板11の先端11b側を隙間10に差し込みつつ、側板11の突起27をフランジ部7Rの長溝13に係合させるのに併せて爪部24を胴部6の内周面6aに係合する。これにより、図14及び図15に示すように、止め具5が本体4に着脱自在に取り付けられると共に、突出部17の底壁19と溝部9の底面9aとで釣糸Lの一端側が強固に挟持される。すなわち、釣糸Lの一端側が突出部17(底壁19)により底面9aに向けて押圧されて係止されるように本体4に止め具5が着脱自在に取り付けられることとなる。
【0041】
ここで、従来のスプールでは、釣糸Lの一端側を係止溝で挟持して係止することにより、釣糸Lの径よりも大きく係止溝を開く必要がある。そのため、係止溝で係止するのを繰り返すにつれて、当該係止溝が変形して釣糸Lを挟持する挟持力が不十分になり、ひいては、釣糸Lを係止する係止力が不十分になるおそれがある。
【0042】
しかし、本実施形態では、上述したように、釣糸Lの一端側を係止溝で挟持して係止するのではなく、突出部17により釣糸Lの一端側を溝部9の底面に押圧して係止する。よって、係止することを繰り返すにつれてその係止力が不十分になるのを抑制することができ、釣糸Lの一端側を再現性よく繰り返して係止することができる。その結果、巻回された釣糸Lがバラけるのを確実且つ十分に防止することができる。
【0043】
さらに、取付状態において、上述したように突出部17が溝部9に係合されることにより、突出部17(側壁18)が溝部9と周方向に係合される。すなわち、取付状態にて、止め具5が本体4に対して周方向に相対移動するのを確実に制限することができ、その結果、釣糸Lの一端側を確実に係止することができる。
【0044】
なお、本実施形態の突出部17にあっては、上述したように、取付状態にて、溝部9の底面9aに釣糸Lの一端側を押圧して係止する係止部として機能すると共に溝部9と周方向に係合する回り止め部としても機能している。つまり、本実施形態では、係止部と回り止め部とは機能的に関連しており、釣糸Lの一端側を再現性よく繰り返して係止するという上記効果が好適に奏されるものである。
【0045】
また、上述したように、取付状態において、側板11の先端11b側が凸部の隙間10に差し込まれて当該側板11が本体4に周方向に係合することにより、止め具5が本体4に対して周方向に相対移動するのを一層確実に制限することができる。その結果、釣糸Lの一端側を一層確実に係止することができる。さらに、このように、側板11の先端11b側が隙間10に差し込まれて止め具5が本体4に取り付けられることから、隙間10は、かかる取り付けに際してガイドとしても機能し、よって、止め具5を本体4に容易且つ簡易に取り付けることができる。
【0046】
また、上述したように、取付状態において、本体4が側板11で軸線方向に挟持されることにより、止め具5が本体4に対して軸線方向に相対移動するのを確実に制限することができる。その結果、釣糸Lの一端側を一層確実に係止することができる。
【0047】
また、上述したように、取付状態において、爪部24が胴部6の内周面6bに径方向に係合する共に、溝部9の底面9aに突出部17の底壁19が釣糸Lを介して径方向に係合する。これにより、取付状態にて、爪部24及び突出部17の底壁19が協働し、止め具5が本体4に対して径方向に相対移動するのを確実に制限することができ、その結果、釣糸Lの一端側を一層確実に係止することができる。
【0048】
さらにまた、上述したように、取付状態において、側板11の突起27がフランジ部の長溝13に係合することにより、止め具5が本体4に対して周方向及び径方向に相対移動するのを一層確実に制限することができる。
【0049】
ここで、本実施形態では、上述したように、底壁19が自己の弾性力でもって撓むことが可能とされている。よって、底壁19(突出部17)が釣糸Lの一端側を溝部9の底面9aに弾性力を有して押圧する。つまり、底壁19は、釣糸Lの一端側を押圧する方向に弾性力を有している。従って、釣糸Lを繰り返して係止する場合や釣糸Lの径が比較的大きい場合であっても、釣糸Lが潰れて傷むことを抑制することができる。
【0050】
ところで、溝部9の底面9aに釣糸Lの一端側を確実に押圧するため、取付状態での底壁19と溝部9の底面9aとの距離には高い寸法精度が要求され、本体4及び止め具5には高い成型精度が要求される。しかし、上述したように底壁19が釣糸Lの一端側を押圧する方向に弾性力を有していることにより、高い寸法精度及び成型精度を有さずとも当該弾性力でもって十分且つ確実に釣糸Lの一端側が押圧されるため、かかる精度を現実的なものとすることができ、ひいては、製造工程、製造コスト、及び耐劣化性が製造現場、市場、及び使用現場のニーズに合う好適なものとなる。
【0051】
また、上述したように、隙間47がフランジ部7Rにおける外側面7Raとベース板15の側壁11Rの内側面21との間に形成されている。従って、上述したように、釣糸Lの一端側をフランジ部7Rの外側面7Raにおいて巻回方向に沿う状態にして止め具5を本体4に取り付けることにより、取付状態において、釣糸Lの一端側が隙間47に進入し、側板11とフランジ部7Rとの間でも釣糸Lの一端側が係止される(図14参照)。これにより、釣糸Lの一端側をより一層確実に係止することができる。
【0052】
また、上述したように、フランジ部7Rに薄肉部12が設けられていることにより、止め具5を本体4に取り付ける際に、爪部24を薄肉部12でガイドすることができ、よって、止め具5を本体4に容易且つ簡易に取り付けることができる。
【0053】
また、上述のように、段差14がフランジ部7Lの内側面7Lbに設けられている。これにより、例えば糸巻を用いて釣り糸Lを巻回する場合、段差14に沿って釣糸Lの糸巻側を胴部6の外周面6bに案内し、外周面6bにおいて軸線方向の一端側から釣糸Lを巻き始めることができる。その結果、巻き乱れ無くきれいに釣糸Lを整列巻きすることができる。
【0054】
なお、本実施形態においては、釣糸Lの径が10号と大きいため、釣糸Lの一端側を再現性よく繰り返して係止するという効果が顕著である。これは、以下の理由による。すなわち、従来のスプールでは、釣糸Lの径が大きい程、釣糸Lを繰り返し係止することによる劣化が激しくなる。一方、本実施形態では、上述したように釣糸Lの一端側を溝部9の底面9aに押圧して係止するため、釣糸Lの径が大きい場合でもかかる劣化のおそれが少なく、むしろ釣糸Lの径が大きいことで一層確実に底面9aに押圧して係止することができるからである。
【0055】
ちなみに、通常、釣糸Lは糸巻により溝部9を介して胴部21に導かれて巻回されることにより、溝部9は釣糸Lを巻回する上で通常必ず設けられるものである。そのため、本実施形態は、上述したように、釣糸Lの一端側を溝部9の底面に押圧して係止することから、既存の構成を利用したものといえる。すなわち、本実施形態は、様々な本体4に適用することができる汎用性が極めて高いものである。また、本実施形態では、釣糸Lの一端側を係止するために、止め具5を本体4に取り付けるだけで足りる、つまり止め具5があれば足りることから、釣糸Lの一端側を係止する上での樹脂使用量を低減させて地球環境への負荷を軽減することができる。
【0056】
次に、収納ケース付きスプール1においてスプール2を収納ケース3に収納する場合について説明する。
【0057】
スプール2を収納ケース3に収納する場合、まず、収納ケース3を収納口46が開いた状態にし、スプール2の止め具5が天側に位置するように、当該スプール2を収納口46から収納ケース3の内部に配置する(図16(a)参照)。
【0058】
続いて、一方の天側フラップ36Rを内側に折り曲げ、その先端側を隙間29(ベース板15と胴部6の外周面6bとの間)に進入させる(図16(b)参照)。これと共に、他方の天側フラップ36Lを内側に折り曲げ、その先端側を隙間29(ベース板15と胴部6の外周面6bとの間)に進入させる(図17(a)参照)。そして、ケース天板38を折り曲げると共に、ケース天板42を折り曲げながら吊下板43を長孔44に挿入させつつ、差込片39をスリット49に差し込むことにより、スプール2が収納ケース3に収納されることとなる(図17(b)参照)。
【0059】
このとき、上述したように、天側フラップ36のフラップ長さが長くなっていることから、一方の天側フラップ36Rの先端側がベース板15に対して周方向の一方側に位置するため、スプール2の一方側への回転が制限されると共に、他方の天側フラップ36Lの先端側がベース板15に対して周方向の他方側に位置するため、スプール2の他方側への回転が制限される。すなわち、天側フラップ36により、止め具5のベース板15が収納ケース3に対して周方向に相対移動するのを制限することができ、収納されたスプール2が収納ケース3に対して周方向に相対移動するのを制限することができる。従って、本実施形態によれば、簡易且つ容易に収納ケース3内におけるスプール2の回転を防止することができる。
【0060】
さらに、このように、収納されたスプール2の相対移動が制限されること、すなわち、スプール2を安定した状態で収納ケース3内に固定して収納することにより、スプール2が収納ケース3に収納された状態にて、表示部20,26(図6及び図9参照)の文字等の位置関係が収納ケース3毎にばらつくことがなくなり、当該表示部20,26が見易くなる。その結果、収納ケース3を同一の向きに配列すれば表示部20,26も同一の向きとして正視することができ、且つ収納ケース付きスプール1を展示した際の見栄えも良くなる。
【0061】
さらに、上述したように、収納ケース3にスプール2が収納された状態において、天側フラップ36の先端側が隙間29にそれぞれ進入される。これにより、ベース板15が天側フラップ36で周方向に挟持されることになり、よって、収納されたスプール2が収納ケース3に対して周方向に相対移動するのを抑止することができる。
【0062】
また、上述したように、先端側を内側に折り曲げるための折線wが、天側フラップ36にそれぞれ設けられているため、天側フラップ36の先端側の部分36aを折線wにより内側に折り曲げることで、天側フラップ36の先端側を隙間29に容易に進入させることができる。
【0063】
なお、一般的な収納ケースでは、その剛性を高めるためにフラップが通常必ず設けられているため、本実施形態は、既存の構成を利用し低コスト化が図られている。さらに、本実施形態では、上述したように、天側フラップ36は、そのフラップ長さが通常よりも長くなっているため、収納ケース3の剛性が一層高められている。
【0064】
ちなみに、本実施形態では、収納ケース3の形成に上述したような樹脂を用いることにより、当該収納ケース3及び天側フラップ36に適度な剛性を持たせているため、上記作用効果、すなわち、天側フラップ36により止め具5のベース板15が収納ケース3に対して周方向に相対移動するのを制限するという作用効果が好適に奏される。
【0065】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る収納ケース付きスプール50について説明する。
【0066】
図18は、本発明の第2実施形態に係る収納ケース付きスプールを示す正面図である。この第2実施形態の収納ケース付きスプール50が上記第1実施形態の収納ケース付きスプール1と異なる点は、図1に示した天側フラップ36を有する収納ケース3に代えて、図18に示す天側フラップ56を有する収納ケース53を備えた点である。
【0067】
天側フラップ56は、収納ケース53にスプール2が収納された状態において、その先端側が隙間29に進入せず、先端側の部分56aがベース板15の長手方向に交差する方向でベース板15の両側面を挟持して止め具5を挟持する。
【0068】
このような本実施形態においても、上記と同様な効果、すなわち、簡易且つ容易に収納ケース3内におけるスプール2の回転を防止するという効果を奏する。さらに、上述したように、天側フラップ56の先端側の部分56aにより、止め具5が挟持されるため、収納されたスプール2を収納ケース53に対して周方向に相対移動するのを抑止することができる。
【0069】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0070】
例えば、上記第1実施形態では天側フラップ36の先端側を隙間29に進入し、上記第2実施形態では天側フラップ56先端側の部分56aで止め具5を挟持したが、天側フラップの先端側がベース板に対して周方向の一方側及び他方側に位置し、収納されたスプールの回転を制限できればよい。
【0071】
また、上記実施形態では、釣糸Lの一端側を係止する突出部17(底壁19)をベース板15に設けたが、ベース板が本体に取り付けられ胴部の外周面に対面していれば、当該ベース板に突出部を設けなくともよい。また、釣糸Lを切断するためのカッタ等の切断部をベース板に設けても良い。この場合、取付状態において、巻回された釣糸を引き出して付属板により切断することができ、よって、所望の長さの釣糸を容易且つ効率的に得ることが可能となる。
【0072】
また、上記実施形態では、樹脂使用量の低減のために好ましいとして、本体4を、胴部6の内周面6aより内側が中空とされた非リブ構造の環状体としたが、本体の剛性をより高める場合には、当該本体にリブを設ける場合もある。
【0073】
また、上記実施形態では、10号の釣糸Lを巻回して収納したが、これより径が大きい若しくは小さいものに適用しても勿論よい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1実施形態に係る収納ケース付きスプールを示す斜視図である。
【図2】図1の収納ケース付きスプールにおける本体を示す上面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図1の収納ケース付きスプールにおける本体を示す正面図である。
【図5】図1の収納ケース付きスプールにおける本体を示す背面図である。
【図6】図1の収納ケース付きスプールにおける止め具を示す上面図である。
【図7】図1の収納ケース付きスプールにおける止め具を示す下面図である。
【図8】図6のVIII−VIII線に沿った断面図である。
【図9】図1の収納ケース付きスプールにおける止め具を示す正面図である。
【図10】図1の収納ケース付きスプールにおける止め具を示す背面図である。
【図11】図6のXI−XI線に沿った断面図である。
【図12】図1の収納ケース付きスプールにおける収納ケースを示す展開斜視図である。
【図13】図1の収納ケース付きスプールにおける収納ケースを示す斜視図である。
【図14】図1の収納ケース付きスプールにおける取付状態を示す拡大図である。
【図15】図14のXV−XV線に沿った断面図である。
【図16】図1の収納容器付きスプールにおいてスプールを収納ケースに収納する場合を説明するための図である。
【図17】図16の続きを説明するための図である。
【図18】本発明の第2実施形態に係る収納容器付きスプールを示す正面図である。
【符号の説明】
【0075】
1,50…収納容器付きスプール、2…スプール、3…収納ケース、4…本体、6…胴部、6b…胴部の外周面、15…ベース板(付属板)、17…突出部(係止部)、19…底壁(係止部)20,26…表示部、46…収納口、36…天側フラップ(フラップ)、29…隙間(ベース板と胴部の外周面との間)、L…釣糸(繊維体)、w…折線(折曲げ線)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維体を巻回して収納する収納ケース付きスプールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、収納ケース付きスプールとして、筒状の胴部を有するスプールと、スプールを収納する収納ケースと、を備え、胴部の外周面に繊維体が巻回されると共に胴部の内周部に複数のリブが設けられたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−206470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ここで、上述した収納ケース付きスプールでは、収納ケースにスプールを収納した後、当該収納ケースに別途設けられた止定部をスプールにおいて隣り合う2つのリブの間に挿嵌することにより、収納ケース内におけるスプールの回転を防止する。これに対し、近年の収納ケース付きスプールにおいては、収納ケースの構成を簡易にして製造コストを低減することが望まれていると共に、収納ケース内におけるスプールの回転を容易に防止することが要求されている。
【0004】
そこで、本発明は、簡易且つ容易に収納ケース内におけるスプールの回転を防止することができる収納ケース付きスプールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係る収納ケース付きスプールは、筒状の胴部を含み当該胴部の外周面に繊維体が巻回される本体、及び本体に取り付けられ胴部の外周面に対面する付属板を有するスプールと、スプールを収納する収納ケースと、を備え、収納ケースは、スプールを収納するための収納口と、収納口を形成する縁部に設けられた一対のフラップと、を有し、収納ケースにスプールが収納された状態において、フラップの一方は、その先端側が付属板に対して周方向の一方側に位置し、スプールの一方側への回転を制限するように構成されていると共に、フラップの他方は、その先端側が付属板に対して周方向の他方側に位置し、スプールの他方側への回転を制限するように構成されていることを特徴とする。
【0006】
この本発明に係る収納ケース付きスプールでは、収納ケースにスプールが収納された状態において、一方のフラップの先端側が付属板に対して周方向の一方側に位置してスプールの一方側への回転を制限すると共に、他方のフラップの先端側が付属板に対して周方向の他方側に位置してスプールの一方側への回転を制限する。すなわち、フラップにより、収納されたスプールが収納ケースに対して周方向に相対移動するのを制限することが可能となる。従って、簡易且つ容易に収納ケース内におけるスプールの回転を防止することができ、その結果、例えばスプールに表示部が設けられている場合、当該スプールが収納ケースに収納された状態での表示部を見易くすることができる。
【0007】
ここで、収納ケースにスプールが収納された状態において、フラップの先端側は、付属板と胴部の外周面との間にそれぞれ進入されることが好ましい。この場合、付属板がフラップで周方向に挟持されることになり、収納されたスプールが収納ケースに対して周方向に相対移動するのを抑止することができる。
【0008】
また、フラップには、先端側を内側に折り曲げるための折曲げ線がそれぞれ設けられていることが好ましい。これにより、例えばフラップの先端側を付属板と胴部の外周面との間に進入させる場合、フラップの先端側をこの間に容易に進入させることが可能となる。
【0009】
また、付属板は、繊維体の一端側を係止する係止部を有していることが好ましい。この場合、付属板により、巻回された繊維体がバラけるのを防止することができる。
【0010】
また、付属板は、繊維体を切断するための切断部を有していることが好ましい。この場合、巻回された繊維体を引き出して付属板により切断することができ、よって、所望の長さの繊維体を容易且つ効率的に得ることが可能となる。
【0011】
また、スプールには、繊維体に関する情報を表示する表示部が設けられていることが好ましい。この場合、表示部により巻回した繊維体に関する情報を表示することができる。加えて、上述したようにスプールの収納ケースに対する周方向の相対移動が制限されることから、スプールが収納ケースに収納された状態での表示部が見易くなる。
【0012】
また、繊維体としては、具体的には、釣糸が挙げられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡易且つ容易に収納ケース内におけるスプールの回転を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当する要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態に係る収納ケース付きスプールの構成について説明する。
【0016】
図1は本発明の第1実施形態に係る収納ケース付きスプールを示す斜視図である。この収納ケース付きスプールは、繊維体を巻回して収納するものである。繊維体としては、例えば、綿、羊毛等の天然繊維、ナイロン、ポリエステル、ポリエチレン等の合成繊維、金属繊維、ガラス繊維、若しくはこれらを組み合わせたものが挙げられ、その太さや強さは限定されず種々の糸状を呈するものが用いられる。図1に示すように、特に本実施形態の収納ケース付きスプール1では、釣りの利用に供する釣糸であってその号数が10号である釣糸(繊維体)Lを巻回して収納する。収納ケース付きスプール1は、釣糸Lが巻回されるスプール2と、当該スプール2を収納する収納ケース3と、を備えている。スプール2は、本体4と止め具(繊維体止め具)5とを有している。
【0017】
図2は図1の収納ケース付きスプールにおける本体を示す上面図、図3は図2のIII−III線に沿った断面図、図4は図1の収納ケース付きスプールにおける本体を示す正面図、図5は図1の収納ケース付きスプールにおける本体を示す背面図である。本体4は、例えば樹脂からなり、ここでは、巻回される釣糸Lの視認性の点で好ましいとして、透明樹脂により形成されている。図2及び図3に示すように、本体4は、胴部6とフランジ部7とを含んで構成されている。
【0018】
図3に示すように、本体4は、胴部6の内周面6aより内側が中空とされた非リブ構造の環状体となっている。胴部6は、円筒形状を呈しており、胴部6の外周面6bには、釣糸Lが例えば整列巻きで巻回される(図15参照)。フランジ部7は、所定の厚さを有するリング状を呈し、胴部6の軸線方向(以下、単に「軸線方向」という)における両端部にそれぞれ設けられている。具体的には、フランジ部7は、胴部6の外周面6bにおいて軸線方向における両端部に、径方向外側に突出するようにそれぞれ形成されている。
【0019】
両フランジ部7の外周面7cにおける周方向(以下、単に「周方向」という)の同位置には、その外側面7aから内側面7bまで延在し、且つ、フランジ部7の径方向(以下、単に「径方向」という)外側に開口する溝部9がそれぞれ形成されている。図4及び図5に示すように、溝部9は、フランジ部7の外周面7c側を矩形状に切り欠くようにして形成され、底面9a及び一対の側面9bを含んでいる。この溝部9の深さは、胴部6の外周面6bに釣糸Lが巻回された状態で釣糸Lがフランジ部7に納まるような深さ、つまり、軸線方向視において巻回される釣糸Lが溝部9から露出しない深さとなっている(図15参照)。
【0020】
図3〜図5に示すように、フランジ部7の外側面7aにおいて胴部6の内周面6a側には、凸部8がそれぞれ設けられている。凸部8は、内周面6aに連続するように周方向に延在し、且つ、軸線方向外側に突出している。そして、凸部8において溝部9側の部分、つまり、凸部8において溝部9の周方向における位置に対応する部分には、隙間10が設けられている。この隙間10は、軸線方向視において径方向内側に行くに従って狭くなるようなテーパ状を呈しており、止め具5を本体4に取り付けた状態(以下、単に「取付状態」という。なお、以下の説明において取付状態は図14又は図15を参照のこと)で、後述する止め具5の側板11が周方向に係合される。
【0021】
図3及び図5に示すように、フランジ部7のうち一方のフランジ部7Rの外側面7Raには、溝部9の底面9aに連接するように矩形状にその肉厚が薄くされてなる薄肉部12が設けられている。換言すると、薄肉部12により、外側面7Raにおいて溝部9と隙間10との間における底面9aに連接接する所定の領域の肉厚が、それ以外の領域の肉厚よりも僅かに薄くなっている。
【0022】
図3及び図4に示すように、フランジ部7のうち他方のフランジ部7Lの外側面7Laには、長溝13が設けられている。この長溝13は、外側面7Laにおいて溝部9と隙間10との間に略周方向に延在するように形成されている。
【0023】
図2に示すように、他方のフランジ部7Lの内側面7Lbには、溝部9から胴部6の外周面6bに向けて、径方向に対して傾斜して延在する段差14が設けられている。この段差14は、軸線方向視において胴部6の外周面6bに連接するように延在している。そして、段差14を介して、径方向外側におけるフランジ部7の肉厚が、径方向内側における肉厚よりも薄くなっている。すなわち、このようなフランジ部7の肉厚差による段差14が内側面7Lbに形成されるように、フランジ部7Lの内側面7Lbが切り欠かれたような形状とされている。
【0024】
図6は図1の収納ケース付きスプールにおける止め具を示す上面図、図7は図1の収納ケース付きスプールにおける止め具を示す下面図、図8は図6のVIII−VIII線に沿った断面図、図9は図1の収納ケース付きスプールにおける止め具を示す正面図。図10は図1の収納ケース付きスプールにおける止め具を示す背面図、図11は図6のXI−XI線に沿った断面図である。図6〜図11に示すように、止め具5は、ベース板15と、ベース板15の長手方向両端部にそれぞれ設けられた側板11と、を含んでいる。この止め具5は、本体4に着脱自在に取り付けられるものである。具体的には、取付状態において、止め具5におけるベース板15の内側の面15aが胴部6の外周面6bに対面し、当該ベース板15が一方のフランジ部7Rから他方のフランジ部7Lに架け渡される。そして、この止め具5は、取付状態にて巻回された繊維体Lの一端側(巻き終わりの端側)を係止する(詳しくは後述)。
【0025】
図6に示すように、ベース板15の外側の面15bには、例えば釣糸Lに関する情報、商品名、使用説明、マーク等の様々な文字や図形等を表示する表示部20が設けられている。なお、釣糸Lに関する情報としては、釣糸Lの号数、太さ寸法、断面積、強さ、材質、若しくはこれらの組み合わせたものが挙げられる。ここでの表示部20では、釣糸Lの号数が浮き彫りされて表示されている。
【0026】
図6及び図8に示すように、ベース板15の長手方向における一端部には、その一部が端面15cを含んで内側の面15aから外側の面15bまで開口する矩形状の開口部(実際には、樹脂成型による凹部である。以降の開口部も同じ)16が形成されている。図10に示すように、開口部16には、溝部9(図4参照)に対応する形状を呈し、且つ取付状態において径方向内側に凸状に突出する突出部17が設けられている。換言すると、溝部9と同様な外形形状を呈し、且つベース板15の内側の面15aに対して突出する突出部17が、開口部16に形成されている。そして、突出部17は、取付状態において溝部9に対応する位置に形成されている。すなわち、突出部17は、取付状態にて溝部9に係合するようになっている。
【0027】
図10及び図11に示すように、この突出部17は、一対の側壁(回り止め部)18と底壁(係止部)19とを有し、これら側壁18及び底壁19により凸状が構成されている。すなわち、図10に示すように、側壁18は、開口部16の対向する内面16aに結合され、且つベース板15の内側の面15aに対する垂直方向(図中における下方)に真っ直ぐ延在している。側壁18は、取付状態にて溝部9の側面9bに対面する。また、側壁18が延在する長さは、溝部9の深さよりも大きくなっている。換言すると、突出部17の突出高さは、溝部9の深さよりも大きくなっている。これにより、取付状態において本体4とベース板15との間には、隙間29(図15参照)が形成される。
【0028】
図6及び図7に示すように、底壁19は、側壁18,18に結合され且つベース板15の長手方向と交差する方向に延在している。底壁19は、取付状態にて底面9aに対面する。なお、このようにして突出部17が側壁18及び底壁19により凸状を構成することで、取付状態において、底壁19は自己の弾性力でもって撓むことが可能とされている。
【0029】
図6〜図8に示すように、側板11は、取付状態において本体4を軸線方向に挟持する。つまり、一方の側板11Rにおける内側面21及び他方の側板11Lにおける内側面21との間隔は、フランジ部7R,7L(図2参照)における外側面7Ra,7Laの間隔と略等しくされている。図10に示すように、この側板11は、その外形が長手方向視において基端11aから先端11bに行くに従って細くなるようなテーパ状となっている。つまり、上述したように、側板11は、取付状態でその先端11b側が凸部8の隙間10に周方向に係合するようになっている。
【0030】
側板11のうち一方の側板11Rには、開口部23に連続し、基端11aの一部を含んで内側面21から外側面25まで開口する開口部23が形成されている(図6及び図10参照)。また、開口部23は、先端11b側が上述した側板11の外形形状に伴って、先端に行くに従って狭くなるようなテーパ状となっている。
【0031】
図11に示すように、一方の側板11Rの内側面21には、当接部22とリブ48とが設けられている。当接部22は、側板11Rの先端11b側に位置し、矩形状に突出するように形成されている。リブ48は、上記の開口部23を横切るように形成されている。そして、図8に示すように、これら当接部22及びリブ48の肉厚(ベース板15の長手方向における厚さ)は、互いに等しく表面が面一となっている。すなわち、一方の側板11Rにあっては、取付状態において、当接部22及びリブ48が一方のフランジ部7Rにおける外側面7Raと当接すると共に、フランジ部7Rにおける外側面7Raと一方の側板11Rの内側面21との間には、隙間47(図15参照)が形成されるように構成されている。
【0032】
他方の側板11Lの内側面21には、長尺状の突起27が形成されている。この突起27は、取り付け状態において、上述したフランジ部7Lの外側面7Laにおける長溝13に係合する。図9に示すように、他方の側板11Lの外側面25には、例えば釣糸Lに関する情報、商品名、使用説明、マーク等の様々な文字や図形等を表示する表示部26が設けられている。ここでの表示部26では、釣糸Lの号数が記載されたラベルを貼付することにより表示されている。
【0033】
図8に戻り、一方の側板11Rの当接部22において先端11b側、及び他方の側板11Lの内側面21において先端11b側には、ベース板15の長手方向内側に突出する一対の爪部24が対向するようにそれぞれ形成されている。爪部24は、取付状態にて、胴部6の内周面6bに径方向に係合し、本体4と径方向に係合する。
【0034】
図12は図1の収納ケース付きスプールにおける収納ケースを示す展開斜視図、図13は図1の収納ケース付きスプールにおける収納ケースを示す斜視図である。図12及び図13に示すように、収納ケース3は、収納されるスプールの視認性の点で好ましいとして透明樹脂により形成され、プレス加工や曲げ加工を施して形成されている。樹脂としては、例えば塩化ビニル、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリプロピレン等が用いられる。なお、このような材料が用いられることにより、収納ケース3では、釣りの現場における耐水性も高められている。
【0035】
図12に示すように、収納ケース3は、ケース側板31、ケース前板32、ケース側板33、ケース後板34、及び貼り代部35を有し、これらがこの順で、折線m,n,o,pを順に介して連結されている。ケース側板31,33の長手方向における一端側の辺には、一対のフラップ36が折線gを介してそれぞれ連結されている。一方、ケース側板31,33の長手方向における他端側の辺には、一対のフラップ37が折線rを介してそれぞれ連結されている。なお、以下の説明において、フラップ36が連結された側を天側、フラップ37が連結された側を底側と称し、フラップ36を天側フラップ36、フラップ37を底側フラップ37と称する。
【0036】
ケース前板32の天側の辺には、ケース天板38及び差込片39がこの順で、折線s,tを順に介して連結されている一方、ケース前板32の底側の辺には、ケース底板40及び差込片41がこの順で、折先u,vを順に介して連結されている。ケース後板34の天側の辺には、ケース天板42及び吊下板43がこの順で、折線y,xを順に介して連結されている。ケース天板38には、収納ケース3を組み立てる際に、吊下板43が挿入される長孔44が設けられている。吊下板43には、収納ケース3を吊り下げるための吊下孔45が設けられている。また、差込片39が挿入されるスリット49が、折線yに沿って延在するように形成されている。
【0037】
本実施形態では、上述したように、ケース側板31,33に折線gを介して一対のフラップ36がそれぞれ連結されている。この天側フラップ36は、いわゆる突合せフラップであり、その長手方向の長さであるフラップ長さ(折線gに交差する方向の長さ)が通常の突合せフラップのものよりも長くなっている。ここでは、フラップ長さを底側フラップ37よりも長くしており、ケース前板32若しくはケース後板34の天側の辺の長さの略半分にしている。また、天側フラップ36には、折線gと略平行に延びる折線(折曲げ線)wがそれぞれ設けられており、収納ケース3を組み立てた状態において、天側フラップ36の先端側の部分36aが内側に折り曲げ可能とされている(図16(b)参照)。
【0038】
この収納ケース3は、各部の折り曲げや貼り合わせにより組み立てられる。具体的には、まず、ケース側板31、ケース前板32、ケース側板33、ケース後板34、及び貼り代部35を折線m,n,o,pにより折り曲げ、貼り代部35と側板31とを例えば接着剤又はテープで貼り合わせる。次に、底側フラップ37を折線rにより折り曲げ、ケース底板40を折線uにより折り曲げた後に、折線vで略90°で折り返された差込片41をケース前板34の内面側に差し込む。天側フラップ36を折線gによりそれぞれ折り曲げ、吊下板43を折線xにより略90°で予め折り返してケース天板42を折線yにより折り曲げる。そして、吊下板43を長孔44に挿入しつつケース天板38を折線sにより折り曲げ、折線tで略90°で折り返された差込片39をスリット49に差し込む。これにより、収納ケース3が組み立てられることになる(図13参照)。なお、この収納ケース3は、天側からスプールが収納されるものであり、よって、ケース側板31、ケース前板32、ケース側板33、及びケース後板34の天側の辺により収納口46(図16参照)が形成される。
【0039】
次に、このような構成を有する収納ケース付きスプール1において本体4に止め具5を着脱自在に取り付ける場合について説明する。
【0040】
本体4に止め具5を着脱自在に取り付ける場合、まず、溝部9を介して釣糸Lの一端側をスプール2から引き出す。そして、釣糸Lの一端側を、フランジ部7Rの外側面7Raにおいて巻回方向に沿う状態にして止め具5を本体4に取り付ける。具体的には、かかる釣糸Lの状態にて、突出部17を溝部9に係合させながら側板11の先端11b側を隙間10に差し込みつつ、側板11の突起27をフランジ部7Rの長溝13に係合させるのに併せて爪部24を胴部6の内周面6aに係合する。これにより、図14及び図15に示すように、止め具5が本体4に着脱自在に取り付けられると共に、突出部17の底壁19と溝部9の底面9aとで釣糸Lの一端側が強固に挟持される。すなわち、釣糸Lの一端側が突出部17(底壁19)により底面9aに向けて押圧されて係止されるように本体4に止め具5が着脱自在に取り付けられることとなる。
【0041】
ここで、従来のスプールでは、釣糸Lの一端側を係止溝で挟持して係止することにより、釣糸Lの径よりも大きく係止溝を開く必要がある。そのため、係止溝で係止するのを繰り返すにつれて、当該係止溝が変形して釣糸Lを挟持する挟持力が不十分になり、ひいては、釣糸Lを係止する係止力が不十分になるおそれがある。
【0042】
しかし、本実施形態では、上述したように、釣糸Lの一端側を係止溝で挟持して係止するのではなく、突出部17により釣糸Lの一端側を溝部9の底面に押圧して係止する。よって、係止することを繰り返すにつれてその係止力が不十分になるのを抑制することができ、釣糸Lの一端側を再現性よく繰り返して係止することができる。その結果、巻回された釣糸Lがバラけるのを確実且つ十分に防止することができる。
【0043】
さらに、取付状態において、上述したように突出部17が溝部9に係合されることにより、突出部17(側壁18)が溝部9と周方向に係合される。すなわち、取付状態にて、止め具5が本体4に対して周方向に相対移動するのを確実に制限することができ、その結果、釣糸Lの一端側を確実に係止することができる。
【0044】
なお、本実施形態の突出部17にあっては、上述したように、取付状態にて、溝部9の底面9aに釣糸Lの一端側を押圧して係止する係止部として機能すると共に溝部9と周方向に係合する回り止め部としても機能している。つまり、本実施形態では、係止部と回り止め部とは機能的に関連しており、釣糸Lの一端側を再現性よく繰り返して係止するという上記効果が好適に奏されるものである。
【0045】
また、上述したように、取付状態において、側板11の先端11b側が凸部の隙間10に差し込まれて当該側板11が本体4に周方向に係合することにより、止め具5が本体4に対して周方向に相対移動するのを一層確実に制限することができる。その結果、釣糸Lの一端側を一層確実に係止することができる。さらに、このように、側板11の先端11b側が隙間10に差し込まれて止め具5が本体4に取り付けられることから、隙間10は、かかる取り付けに際してガイドとしても機能し、よって、止め具5を本体4に容易且つ簡易に取り付けることができる。
【0046】
また、上述したように、取付状態において、本体4が側板11で軸線方向に挟持されることにより、止め具5が本体4に対して軸線方向に相対移動するのを確実に制限することができる。その結果、釣糸Lの一端側を一層確実に係止することができる。
【0047】
また、上述したように、取付状態において、爪部24が胴部6の内周面6bに径方向に係合する共に、溝部9の底面9aに突出部17の底壁19が釣糸Lを介して径方向に係合する。これにより、取付状態にて、爪部24及び突出部17の底壁19が協働し、止め具5が本体4に対して径方向に相対移動するのを確実に制限することができ、その結果、釣糸Lの一端側を一層確実に係止することができる。
【0048】
さらにまた、上述したように、取付状態において、側板11の突起27がフランジ部の長溝13に係合することにより、止め具5が本体4に対して周方向及び径方向に相対移動するのを一層確実に制限することができる。
【0049】
ここで、本実施形態では、上述したように、底壁19が自己の弾性力でもって撓むことが可能とされている。よって、底壁19(突出部17)が釣糸Lの一端側を溝部9の底面9aに弾性力を有して押圧する。つまり、底壁19は、釣糸Lの一端側を押圧する方向に弾性力を有している。従って、釣糸Lを繰り返して係止する場合や釣糸Lの径が比較的大きい場合であっても、釣糸Lが潰れて傷むことを抑制することができる。
【0050】
ところで、溝部9の底面9aに釣糸Lの一端側を確実に押圧するため、取付状態での底壁19と溝部9の底面9aとの距離には高い寸法精度が要求され、本体4及び止め具5には高い成型精度が要求される。しかし、上述したように底壁19が釣糸Lの一端側を押圧する方向に弾性力を有していることにより、高い寸法精度及び成型精度を有さずとも当該弾性力でもって十分且つ確実に釣糸Lの一端側が押圧されるため、かかる精度を現実的なものとすることができ、ひいては、製造工程、製造コスト、及び耐劣化性が製造現場、市場、及び使用現場のニーズに合う好適なものとなる。
【0051】
また、上述したように、隙間47がフランジ部7Rにおける外側面7Raとベース板15の側壁11Rの内側面21との間に形成されている。従って、上述したように、釣糸Lの一端側をフランジ部7Rの外側面7Raにおいて巻回方向に沿う状態にして止め具5を本体4に取り付けることにより、取付状態において、釣糸Lの一端側が隙間47に進入し、側板11とフランジ部7Rとの間でも釣糸Lの一端側が係止される(図14参照)。これにより、釣糸Lの一端側をより一層確実に係止することができる。
【0052】
また、上述したように、フランジ部7Rに薄肉部12が設けられていることにより、止め具5を本体4に取り付ける際に、爪部24を薄肉部12でガイドすることができ、よって、止め具5を本体4に容易且つ簡易に取り付けることができる。
【0053】
また、上述のように、段差14がフランジ部7Lの内側面7Lbに設けられている。これにより、例えば糸巻を用いて釣り糸Lを巻回する場合、段差14に沿って釣糸Lの糸巻側を胴部6の外周面6bに案内し、外周面6bにおいて軸線方向の一端側から釣糸Lを巻き始めることができる。その結果、巻き乱れ無くきれいに釣糸Lを整列巻きすることができる。
【0054】
なお、本実施形態においては、釣糸Lの径が10号と大きいため、釣糸Lの一端側を再現性よく繰り返して係止するという効果が顕著である。これは、以下の理由による。すなわち、従来のスプールでは、釣糸Lの径が大きい程、釣糸Lを繰り返し係止することによる劣化が激しくなる。一方、本実施形態では、上述したように釣糸Lの一端側を溝部9の底面9aに押圧して係止するため、釣糸Lの径が大きい場合でもかかる劣化のおそれが少なく、むしろ釣糸Lの径が大きいことで一層確実に底面9aに押圧して係止することができるからである。
【0055】
ちなみに、通常、釣糸Lは糸巻により溝部9を介して胴部21に導かれて巻回されることにより、溝部9は釣糸Lを巻回する上で通常必ず設けられるものである。そのため、本実施形態は、上述したように、釣糸Lの一端側を溝部9の底面に押圧して係止することから、既存の構成を利用したものといえる。すなわち、本実施形態は、様々な本体4に適用することができる汎用性が極めて高いものである。また、本実施形態では、釣糸Lの一端側を係止するために、止め具5を本体4に取り付けるだけで足りる、つまり止め具5があれば足りることから、釣糸Lの一端側を係止する上での樹脂使用量を低減させて地球環境への負荷を軽減することができる。
【0056】
次に、収納ケース付きスプール1においてスプール2を収納ケース3に収納する場合について説明する。
【0057】
スプール2を収納ケース3に収納する場合、まず、収納ケース3を収納口46が開いた状態にし、スプール2の止め具5が天側に位置するように、当該スプール2を収納口46から収納ケース3の内部に配置する(図16(a)参照)。
【0058】
続いて、一方の天側フラップ36Rを内側に折り曲げ、その先端側を隙間29(ベース板15と胴部6の外周面6bとの間)に進入させる(図16(b)参照)。これと共に、他方の天側フラップ36Lを内側に折り曲げ、その先端側を隙間29(ベース板15と胴部6の外周面6bとの間)に進入させる(図17(a)参照)。そして、ケース天板38を折り曲げると共に、ケース天板42を折り曲げながら吊下板43を長孔44に挿入させつつ、差込片39をスリット49に差し込むことにより、スプール2が収納ケース3に収納されることとなる(図17(b)参照)。
【0059】
このとき、上述したように、天側フラップ36のフラップ長さが長くなっていることから、一方の天側フラップ36Rの先端側がベース板15に対して周方向の一方側に位置するため、スプール2の一方側への回転が制限されると共に、他方の天側フラップ36Lの先端側がベース板15に対して周方向の他方側に位置するため、スプール2の他方側への回転が制限される。すなわち、天側フラップ36により、止め具5のベース板15が収納ケース3に対して周方向に相対移動するのを制限することができ、収納されたスプール2が収納ケース3に対して周方向に相対移動するのを制限することができる。従って、本実施形態によれば、簡易且つ容易に収納ケース3内におけるスプール2の回転を防止することができる。
【0060】
さらに、このように、収納されたスプール2の相対移動が制限されること、すなわち、スプール2を安定した状態で収納ケース3内に固定して収納することにより、スプール2が収納ケース3に収納された状態にて、表示部20,26(図6及び図9参照)の文字等の位置関係が収納ケース3毎にばらつくことがなくなり、当該表示部20,26が見易くなる。その結果、収納ケース3を同一の向きに配列すれば表示部20,26も同一の向きとして正視することができ、且つ収納ケース付きスプール1を展示した際の見栄えも良くなる。
【0061】
さらに、上述したように、収納ケース3にスプール2が収納された状態において、天側フラップ36の先端側が隙間29にそれぞれ進入される。これにより、ベース板15が天側フラップ36で周方向に挟持されることになり、よって、収納されたスプール2が収納ケース3に対して周方向に相対移動するのを抑止することができる。
【0062】
また、上述したように、先端側を内側に折り曲げるための折線wが、天側フラップ36にそれぞれ設けられているため、天側フラップ36の先端側の部分36aを折線wにより内側に折り曲げることで、天側フラップ36の先端側を隙間29に容易に進入させることができる。
【0063】
なお、一般的な収納ケースでは、その剛性を高めるためにフラップが通常必ず設けられているため、本実施形態は、既存の構成を利用し低コスト化が図られている。さらに、本実施形態では、上述したように、天側フラップ36は、そのフラップ長さが通常よりも長くなっているため、収納ケース3の剛性が一層高められている。
【0064】
ちなみに、本実施形態では、収納ケース3の形成に上述したような樹脂を用いることにより、当該収納ケース3及び天側フラップ36に適度な剛性を持たせているため、上記作用効果、すなわち、天側フラップ36により止め具5のベース板15が収納ケース3に対して周方向に相対移動するのを制限するという作用効果が好適に奏される。
【0065】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る収納ケース付きスプール50について説明する。
【0066】
図18は、本発明の第2実施形態に係る収納ケース付きスプールを示す正面図である。この第2実施形態の収納ケース付きスプール50が上記第1実施形態の収納ケース付きスプール1と異なる点は、図1に示した天側フラップ36を有する収納ケース3に代えて、図18に示す天側フラップ56を有する収納ケース53を備えた点である。
【0067】
天側フラップ56は、収納ケース53にスプール2が収納された状態において、その先端側が隙間29に進入せず、先端側の部分56aがベース板15の長手方向に交差する方向でベース板15の両側面を挟持して止め具5を挟持する。
【0068】
このような本実施形態においても、上記と同様な効果、すなわち、簡易且つ容易に収納ケース3内におけるスプール2の回転を防止するという効果を奏する。さらに、上述したように、天側フラップ56の先端側の部分56aにより、止め具5が挟持されるため、収納されたスプール2を収納ケース53に対して周方向に相対移動するのを抑止することができる。
【0069】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0070】
例えば、上記第1実施形態では天側フラップ36の先端側を隙間29に進入し、上記第2実施形態では天側フラップ56先端側の部分56aで止め具5を挟持したが、天側フラップの先端側がベース板に対して周方向の一方側及び他方側に位置し、収納されたスプールの回転を制限できればよい。
【0071】
また、上記実施形態では、釣糸Lの一端側を係止する突出部17(底壁19)をベース板15に設けたが、ベース板が本体に取り付けられ胴部の外周面に対面していれば、当該ベース板に突出部を設けなくともよい。また、釣糸Lを切断するためのカッタ等の切断部をベース板に設けても良い。この場合、取付状態において、巻回された釣糸を引き出して付属板により切断することができ、よって、所望の長さの釣糸を容易且つ効率的に得ることが可能となる。
【0072】
また、上記実施形態では、樹脂使用量の低減のために好ましいとして、本体4を、胴部6の内周面6aより内側が中空とされた非リブ構造の環状体としたが、本体の剛性をより高める場合には、当該本体にリブを設ける場合もある。
【0073】
また、上記実施形態では、10号の釣糸Lを巻回して収納したが、これより径が大きい若しくは小さいものに適用しても勿論よい。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の第1実施形態に係る収納ケース付きスプールを示す斜視図である。
【図2】図1の収納ケース付きスプールにおける本体を示す上面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿った断面図である。
【図4】図1の収納ケース付きスプールにおける本体を示す正面図である。
【図5】図1の収納ケース付きスプールにおける本体を示す背面図である。
【図6】図1の収納ケース付きスプールにおける止め具を示す上面図である。
【図7】図1の収納ケース付きスプールにおける止め具を示す下面図である。
【図8】図6のVIII−VIII線に沿った断面図である。
【図9】図1の収納ケース付きスプールにおける止め具を示す正面図である。
【図10】図1の収納ケース付きスプールにおける止め具を示す背面図である。
【図11】図6のXI−XI線に沿った断面図である。
【図12】図1の収納ケース付きスプールにおける収納ケースを示す展開斜視図である。
【図13】図1の収納ケース付きスプールにおける収納ケースを示す斜視図である。
【図14】図1の収納ケース付きスプールにおける取付状態を示す拡大図である。
【図15】図14のXV−XV線に沿った断面図である。
【図16】図1の収納容器付きスプールにおいてスプールを収納ケースに収納する場合を説明するための図である。
【図17】図16の続きを説明するための図である。
【図18】本発明の第2実施形態に係る収納容器付きスプールを示す正面図である。
【符号の説明】
【0075】
1,50…収納容器付きスプール、2…スプール、3…収納ケース、4…本体、6…胴部、6b…胴部の外周面、15…ベース板(付属板)、17…突出部(係止部)、19…底壁(係止部)20,26…表示部、46…収納口、36…天側フラップ(フラップ)、29…隙間(ベース板と胴部の外周面との間)、L…釣糸(繊維体)、w…折線(折曲げ線)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の胴部を含み当該胴部の外周面に繊維体が巻回される本体、及び前記本体に取り付けられ前記胴部の前記外周面に対面する付属板を有するスプールと、
前記スプールを収納する収納ケースと、を備え、
前記収納ケースは、
前記スプールを収納するための収納口と、
前記収納口を形成する縁部に設けられた一対のフラップと、を有し、
前記収納ケースに前記スプールが収納された状態において、
前記フラップの一方は、その先端側が前記付属板に対して周方向の一方側に位置し、前記スプールの前記一方側への回転を制限するように構成されていると共に、
前記フラップの他方は、その先端側が前記付属板に対して周方向の他方側に位置し、前記スプールの前記他方側への回転を制限するように構成されていることを特徴とする収納ケース付きスプール。
【請求項2】
前記収納ケースに前記スプールが収納された状態において、前記フラップの前記先端側は、前記付属板と前記胴部の外周面との間にそれぞれ進入されることを特徴とする請求項1記載の収納ケース付きスプール。
【請求項3】
前記フラップには、前記先端側を内側に折り曲げるための折曲げ線がそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の収納ケース付きスプール。
【請求項4】
前記付属板は、前記繊維体の一端側を係止する係止部を有していることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項記載の収納ケース付きスプール。
【請求項5】
前記付属板は、前記繊維体を切断するための切断部を有していることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項記載の収納ケース付きスプール。
【請求項6】
前記スプールには、前記繊維体に関する情報を表示する表示部が設けられていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項記載の収納ケース付きスプール。
【請求項7】
前記繊維体は、釣糸であることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項記載の収納ケース付きスプール。
【請求項1】
筒状の胴部を含み当該胴部の外周面に繊維体が巻回される本体、及び前記本体に取り付けられ前記胴部の前記外周面に対面する付属板を有するスプールと、
前記スプールを収納する収納ケースと、を備え、
前記収納ケースは、
前記スプールを収納するための収納口と、
前記収納口を形成する縁部に設けられた一対のフラップと、を有し、
前記収納ケースに前記スプールが収納された状態において、
前記フラップの一方は、その先端側が前記付属板に対して周方向の一方側に位置し、前記スプールの前記一方側への回転を制限するように構成されていると共に、
前記フラップの他方は、その先端側が前記付属板に対して周方向の他方側に位置し、前記スプールの前記他方側への回転を制限するように構成されていることを特徴とする収納ケース付きスプール。
【請求項2】
前記収納ケースに前記スプールが収納された状態において、前記フラップの前記先端側は、前記付属板と前記胴部の外周面との間にそれぞれ進入されることを特徴とする請求項1記載の収納ケース付きスプール。
【請求項3】
前記フラップには、前記先端側を内側に折り曲げるための折曲げ線がそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の収納ケース付きスプール。
【請求項4】
前記付属板は、前記繊維体の一端側を係止する係止部を有していることを特徴とする請求項1〜3の何れか一項記載の収納ケース付きスプール。
【請求項5】
前記付属板は、前記繊維体を切断するための切断部を有していることを特徴とする請求項1〜4の何れか一項記載の収納ケース付きスプール。
【請求項6】
前記スプールには、前記繊維体に関する情報を表示する表示部が設けられていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項記載の収納ケース付きスプール。
【請求項7】
前記繊維体は、釣糸であることを特徴とする請求項1〜6の何れか一項記載の収納ケース付きスプール。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2008−155964(P2008−155964A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−348018(P2006−348018)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】
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