説明

取付工具及び取付方法

【課題】ブッシュの取り付けを効率的に行うことができるようにする。
【解決手段】トルクロッドにブッシュ110を取り付けるための取付工具10であって、前記ブッシュ110の外周部材111の外周面に面接触、複数の線接触又は複数の点接触した状態で、前記ブッシュ110の外周部材111を前記ブッシュ110の中心方向に向かって押圧する押圧部材11a、11bと、前記押圧部材によって押圧され、縮径した前記外周部材111の外周に嵌め込む保持部材16a、16bとを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルクロッドにブッシュを取り付けるための取付工具及び取付方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トラックやバス等の大型車両に設けられているエアサスペンション装置には、車体の進行方向に沿って設けられた左右の一対のフレーム下であって、車輪に近接した位置にスタビリンカーが設けられているものがある(例えば、特許文献1参照)。スタビリンカーは、左右の車輪2がコーナーリング等で異なる上下動をした場合に、捩れモーメントが作用し、その反力で左右の車輪を元に戻すような働きをするものである。
【0003】
ここで、図6を参照してスタビリンカーについて説明する。スタビリンカー100は、スタビライザー101と左右のトルクロッド102により、平面形状がコの字型に形成されている。左右のトルクロッド102の先端には、ラバーブッシュ110(以下、ブッシュという)が嵌め込まれる円筒部103がそれぞれ設けられている。
図6には、スタビリンカーの円筒部103から取り外されたブッシュ110が示されている。ブッシュ110は、金属製の外周部材111がラバー製の円柱部112の外周全体を包囲するように構成されている。この外周部材111には、スリット111aが設けられている。
【0004】
また、円柱部112の両側面であって、外周部材111と円柱部112との間には、溝113が形成されている。円柱部112の両側には、両側面から相反する方向に軸状の接続部材114、115が突出して設けられている。この接続部材114、115には軸方向に対して直交する方向に貫通孔がそれぞれ設けられている。
【0005】
スタビリンカー100が車両のフレーム下に配置された状態では、円筒部103に嵌め込まれたブッシュ110が図示しないサポートビームと接続することで、スタビリンカー100とサポートビームとを接続する。このとき、ブッシュ110は、スタビリンカー100とサポートビームとを接続する役割と共に、両者の間に生じる衝撃を緩衝する役割を担う。
しかしながら、長期に亘って使用されたブッシュや、劣化してしまったブッシュは、衝撃を緩衝する役割が減少してしまう。したがって、ブッシュを交換する必要がある。
【0006】
従来、新品のブッシュ110をスタビリンカー100に取り付ける場合、取付工具として図7に示すようなテーパカラー120を用いていた。図7は、テーパカラー120の断面図である。テーパカラー120は、金属製の円筒部材である。図7に示すように、テーパカラー120の内周は、上部の開口部120aから下部の開口部120bに向かうにしたがい、徐々に縮径するようにテーパが形成されている。上部の開口部120aの内径は、ブッシュ110の外径より大きい。一方、下部の開口部120bの内径は、ブッシュ110の外径より小さい。
【0007】
ここで、新品のブッシュ110をスタビリンカー100に取り付ける場合について説明する。まず、大径の開口部120a側からブッシュ110をテーパカラー120内に挿入する。次に、テーパカラー120を固定した状態で、ブッシュ110を軸方向であって、図7に示す矢印A方向に押圧する。すると、テーパカラー120のテーパ作用により、ブッシュ110の外周部材111のうち、小径の開口部120bに近接する側が縮径する。このとき、スリット111aの幅が縮まることにより、外周部材111が縮径する。ブッシュ110は、一方の接続部材115が開口部120bから完全に突出するまで、押圧する。
【0008】
次に、ブッシュ110が開口部120bから突出した状態のテーパカラー120を、スタビリンカー100の円筒部103にあてがい、開口部120bと円筒部103の開口とを連通させた状態で維持する。この状態でブッシュ110を押圧することにより、ブッシュ110は、テーパカラー120の開口部120bから抜け出ると共にスタビリンカー100の円筒部103に嵌め込まれる。このとき、外周部材111は、径方向に広がる力が作用することから、スタビリンカー100の円筒部103の内周面と密着する。
【0009】
【特許文献1】特開2003−267017号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した従来の取付工具では、ブッシュ110をテーパカラー120に押圧する際、ブッシュ110とテーパカラー120との軸方向を完全に一致させた状態で押圧する必要があった。すなわち、ブッシュ110が曲がった状態で押圧されると、図7に示す矢印B、B´のように、スリット111aの左右で異なる力が作用し、ブッシュ110の外周部材111は捩れてしまう。そのため、スリット111aの左右で外周部材111の高さが異なった状態で縮径されてしまう。この状態で、ブッシュ110を円筒部103に押圧すると、ブッシュ110の外周部材111は、捩れた状態のままスタビリンカー100の円筒部103に嵌め込まれてしまい、ブッシュ110の正常な機能を果たすことができない。したがって、捩れた状態のままスタビリンカー100の円筒部103に嵌め込まれ場合、もう一度、取り付けをやり直さなければならず、取付作業に手間がかかっていた。
【0011】
本発明は、上述したような問題点に鑑みてなされたものであり、ブッシュの取り付けを効率的に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、トルクロッドにブッシュを取り付けるための取付工具であって、前記ブッシュの外周部材の外周面に面接触、複数の線接触又は複数の点接触した状態で、前記ブッシュの外周部材を前記ブッシュの中心方向に向かって押圧する押圧部材と、前記押圧部材によって押圧され、縮径した前記外周部材の外周に嵌め込む保持部材とを有することを特徴とする。
また、本発明は、トルクロッドにブッシュを取り付けるための取付方法であって、前記ブッシュの外周部材の外周面に面接触、複数の線接触又は複数の点接触した状態で、前記ブッシュの外周部材を押圧部材により前記ブッシュの中心方向に向かって押圧する押圧工程と、前記押圧部材によって押圧され、縮径した前記外周部材の外周に保持部材を嵌め込む保持工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の取付工具によれば、ブッシュを簡単にトルクロッドの円筒部に取り付けることができる。また、円筒部に取り付けられたブッシュは、捩れることがないので、再度、取付作業をやり直す必要がなく、取付作業の効率を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係る取付工具の構成を示す図である。
取付工具10は、押圧部材11(11a、11b)、保持部材16(16a、16b)、加圧ユニット20を含んでいる。
【0015】
本実施形態に係る取付工具10は、2つの押圧部材11a、11bを含んでいる。押圧部材11a、11bは、それぞれ同一形状のブロック体で形成されている。押圧部材11a、11bには、ブロック体を構成する一面からブロック体の略中央にまで至る円弧が切り欠かれ、円弧面12a、12bが形成されている。押圧部材11a、11bの円弧は、略半円であって、円弧の曲率半径をブッシュ110の外周部材111の外周面の曲率半径と略同一に形成されている。したがって、押圧部材11a、11bの円弧面12a、12bを互いに対向させた状態で、ブッシュ110の外周部材111を挟み込むことで、ブッシュ110の外周部材111の外周面と、押圧部材11a、11bの円弧面12a、12bとは面接触した状態になる。なお、押圧部材11aの円弧と押圧部材11bの円弧とは、両者が互いに対向し、後述する図2(b)のように一定の隙間を有したときに、略真円となるように形成されている。
【0016】
押圧部材11a、11bにより外周部材111を挟み込む状態にしたとき、押圧部材11bと対向する押圧部材11aの面には、2つのガイドピン13a、13bが離間して設けられている。言い換えると円弧面12aの両側に、ガイドピン13a、13bが設けられている。このガイドピン13a、13bの基端には、ガイドピン13aより大径の大径部14a、14bが設けられている。一方、押圧部材11aと対向する押圧部材11bの面には、ガイドピン13a、13bそれぞれが挿入されるガイド孔15a、15bが設けられている。
【0017】
また、本実施形態に係る取付工具10は、2つの保持部材16a、16bを含んでいる。保持部材16a、16bは、それぞれ同一形状のリング形状で形成されている。保持部材16a、16bの内径寸法は、ブッシュ110の外周部材111が縮径したときの外径寸法と同等もしくはやや大きく、外周部材111に外力が加えられていない状態のときの外径寸法より小さい。したがって、保持部材16a、16bは、ブッシュ110の外周部材111が縮径したときにのみ、外周部材111の外周に嵌め込むことができる。
なお、押圧部材11a、11bの厚み(図1に示すtを参照)、保持部材16aの厚み及び保持部材16bの厚みを合わせた寸法は、外周部材111の長手寸法と略同一に形成されている。
【0018】
本実施形態に係る加圧ユニット20は、2つの台座21(21a、21b)、4本の支柱22(22a〜22d)、加圧装置25、圧力ゲージ27、ガイドレール28を含んで構成されている。台座21a、21bは、所定距離、離間した状態で4本の支柱22a〜22dに固定されている。加圧装置25は、支柱22a〜22d間であって、一方の台座21aに固定されている。加圧装置25は、図示しない油圧ポンプを駆動させることにより、先端に設けられた加圧部26が他方の台座21bに向かって進出する。圧力ゲージ27は、加圧部26によって加圧している圧力値を表示する。ガイドレール28は、台座21bと加圧装置25の加圧部26の間に設置されている。ガイドレール28には、溝29が加圧部26の進出方向に沿って形成されている。この溝29の溝幅は、上述した押圧部材11a、11bの厚みと略同一寸法である。ガイドレール28は、溝29に押圧部材11a、11bを配置することで、押圧部材11a、11bが溝方向に移動するときのガイドとなる。
【0019】
次に、図2及び図3を参照して、ブッシュ110をスタビリンカー100のトルクロッド102に取り付けるために、ブッシュ110の外周部材111を縮径した状態で保持する作業について説明する。ここで、図2(a)、(b)は、縮径作業の工程の一部を示す正面図である。また、図3(a)、(b)は、保持作業の工程の一部を示す斜視図である。
まず、作業者はブッシュ110の外周部材111の外周面を押圧部材11a、11bの円弧面12a、12bと面接触させる状態で挟み込む。このとき、押圧部材11a、11bを、外周部材111の長手方向の中央に位置させる。また、外周部材111のスリット111aを、押圧部材11a、11bの何れの円弧面12a、12bとも接触させないよう、押圧部材11a、11bが近接する箇所に位置させる。ここでは、図2(a)に示すように、外周部材111のスリット111aが真上になるように位置させている。なお、外周部材111のスリット111aが真下になるように位置させてもよい。作業者は、押圧部材11aのガイドピン13a、13bを押圧部材11bのガイド孔15a、15bに挿入することで、押圧部材11a、11b相互の進退方向を規制することができる。
【0020】
次に、ブッシュ110を挟み込んだ状態の押圧部材11a、11bを加圧ユニット20に配置する。ここでは、支柱22c、22d間に配置されたガイドレール28の溝29に、押圧部材11a、11bの両方が跨るように配置する。また、押圧部材11bの円弧面12bと反対の面を、加圧ユニット20の台座21bの面に当接させる。この状態から、作業者は、図示しない油圧ポンプを駆動させることにより、加圧装置25の加圧部26は図2(a)に示す矢印C方向に向かって進出する。
【0021】
次に、加圧装置25の加圧部26を、押圧部材11aに当接させた状態から、さらに作業者は、油圧ポンプを駆動させる。すると、図2(b)に示すように、押圧部材11aと押圧部材11bとが互いに近接する方向に移動する。このとき、ガイドレール28が、押圧部材11aと押圧部材11bとの互いに近接する移動をガイドする。また、ガイドピン13a、13bとガイド孔15a、15bとが互いに近接する移動をガイドする。押圧部材11a、11bの移動は、押圧部材11aに設けられた大径部14a、14bが押圧部材11bのガイド孔15a、15bが設けられた面に当接して停止する。このとき、作業者は、圧力ゲージ27を視認することで、過剰に圧力をかけないように確認しながら作業を行うことができる。
【0022】
一方、外周部材111は、押圧部材11aの円弧面12aと押圧部材11bの円弧面12bとが近接することにより、ブッシュ110の中心方向に向かって押圧される。その結果、外周部材111は、図2(b)に示すように、スリット111aの幅を縮小させながら、外周部材111の全体的な径が縮径する。
【0023】
次に、図3に示すように、外周部材111の径を縮径させた状態で、作業者は、外周部材111の両端から、保持部材16a、16bを嵌め込む。保持部材16a、16bを外周部材111の外周に嵌め込むことにより、外周部材111の径を縮径させた状態を保持することができる。この状態から、作業者は加圧装置25の加圧部26にかけられた圧力を減圧して、加圧部26を後退させる。また、加圧ユニット20から、保持部材16a、16bにより外周に嵌め込まれた状態のブッシュ110と、押圧部材11a、11bとを取り出す。次に、ブッシュ110から押圧部材11a、11bを取り外す。これにより、図3(b)に示すように、外周部材111の両端に保持部材16a、16bが嵌め込まれた状態のブッシュ110が取り出される。
【0024】
このように、上述した工程により、作業者は、ブッシュ110の外周部材111を縮径した状態で簡単に保持することができる。また、外周部材111を縮径するときに、外周部材111の外周面に押圧部材11a、11bの円弧面12a、12bを面接触させた状態で、外周部材111を押圧部材11aと押圧部材11bとで挟圧する。したがって、外周部材111は、外周部材111の中心方向に向かって全体的に縮径することから、従来の取付工具のように外周部材111が捩れた状態で縮径されることがない。
【0025】
次に、図4を参照して、外周部材111を縮径したブッシュ110をスタビリンカー100の円筒部103に取り付ける作業について説明する。図4(a)、(b)は、取付作業の工程の一部を示す正面図である。
この工程では、保持作業の工程で利用した加圧ユニット20を再び使用する。なお、取付作業の工程では、加圧ユニット20のうち、縮径作業で用いたガイドレール28に変えてブッシュ載置台31を使用する。また、ブッシュ110を円筒部103に嵌め込むときにブッシュ110の外周部材111を押圧するブッシュアタッチメント30を使用する。
【0026】
まず、図4(a)に示すように、作業者は、スタビリンカー100の円筒部103を台座21bに穿設された取付孔32に挿入する。次に、支柱22c、22d上に設置したブッシュ載置台31の上に、外周部材111を縮径したブッシュ110を配置する。このとき、ブッシュ110の接続部材114、115のうち、所定の接続部材を円筒部103内に予め挿入しておく。また、加圧部26とブッシュ110との間には、ブッシュアタッチメント30を設置する。ブッシュアタッチメント30は、円筒状に形成されている。ブッシュアタッチメント30の外径寸法は、縮径した外周部材111の外径寸法より小さく形成されている。また、ブッシュアタッチメント30の端面のうちブッシュ110と当接する側の端面には、環状突部33が設けられている。環状突部33は、ブッシュ110の溝113に、嵌め合わせることができる。ブッシュアタッチメント30を設置する場合、ブッシュアタッチメント30の軸方向とブッシュ110の軸方向を合わせ、接続部材115をブッシュアタッチメント30内に配置する。また、図4(a)に示すように、環状突部33をブッシュ110の溝113に嵌め合わせることで、ブッシュ110とブッシュアタッチメント30とを位置決めすることができる。
【0027】
次に、図示しない油圧ポンプを駆動させることにより、加圧装置25の加圧部26をブッシュアタッチメント30の他方の端面に当接させるように進出させる。すると、ブッシュアタッチメント30は、ブッシュ110の外周部材111を円筒部103方向に加圧する。ブッシュ110は、円筒部103内に徐々に移動する。このとき、ブッシュ110の外周部材111は、保持部材16a、16bにより縮径されているので、容易に円筒部103内に入り込む。なお、保持部材16a、16bは、ブッシュ110と共に移動しようとするが、円筒部103により、その移動が規制される。
【0028】
図4(b)は、円筒部103内にブッシュ110を取り付けた状態を示す図である。図4(b)では、外周部材111は保持部材16a、16bによる縮径から開放されている状態であるため、円筒部103内で中心から外周方向に向かって拡張しようとする力が作用している。このような拡張しようとする力により、ブッシュ110は円筒部103内で強固に固定される。
【0029】
このように、本実施形態による取付工具によれば、ブッシュ110の外周部材111の外周面に面接触した状態で、外周部材111をブッシュ110の中心方向に向かって押圧することにより、外周部材111が捩れることなく、外周部材全体が縮径する。この縮径した状態を保持し、スタビリンカー100の円筒部103内に嵌め込むことで、捩れることなくブッシュ110を円筒部103に取り付けることができる。したがって、再び取付作業をやり直すことがないので、取付作業の効率が向上する。
【0030】
また、円弧面12a、12bを有する2つの押圧部材11a、11bにより、ブッシュ110の外周部材111の外周面を円弧面12a、12bで面接触させた状態で挟圧すればよいので、外周部材111を縮径させる作業に技能が必要なく、どのような作業者であっても正確に縮径することができる。
【0031】
(第2の実施形態)
図5は、本実施形態に係る取付工具の構成を示す図である。
取付工具35は、押圧部材39、枠台36、加圧部材38を含んでいる。
押圧部材39は、第1の実施形態の押圧部材11a、11bと略同一のブロック体で形成されている。また、押圧部材39は、円弧面39aが形成されている。この円弧面39aを形成する円弧の曲率半径は、ブッシュ110の外周部材111の外周面の曲率半径と略同一である。なお、押圧部材39は、第1の実施形態の押圧部材11a、11bに設けられていたガイドピンやガイド孔は設けられていない。
【0032】
枠台36は、四方の枠材に囲まれたスライド空間を有している。スライド空間は、押圧部材39を図5に示す矢印方向にスライドできるような大きさに形成されている。なお、枠台36の四方の枠材のうち対向する2つの枠材には、スライドレール部37が形成されている。したがって、押圧部材39は、スライドレール部37に規制されてスライドできるようになっている。また、枠台36の四方の枠材のうちスライドレール部37が設けられていない一方の枠材の内面には、押圧部材39の円弧面39aに対面する円弧面36aが形成されている。この円弧面36aは、押圧部材39の円弧形状と同一である。また、枠台36の四方の枠材のうちスライドレール部37が設けられていない他方の枠材には、加圧部材38の雄ネジ部に螺合する雌ネジ部が螺刻させている。
本実施形態に係る加圧部材38は、雄ネジ部が螺刻させたネジである。加圧部材38を枠台36に螺合させた状態で、回転させていくことで、加圧部材38の先端が図5に示す矢印方向に進出する。
【0033】
次に、取付工具35を用いて、ブッシュ110の外周部材111を縮径する作業について説明する。
まず、作業者はブッシュ110の外周部材111の外周面を押圧部材39の円弧面39aと枠台36の円弧面36aとに面接触させる状態で挟み込む。
次に、作業者が加圧部材38を回転することにより、加圧部材38の先端が押圧部材39を加圧して図5に示す矢印方向に移動する。すなわち、枠台36と押圧部材39とが互いに近接する方向に移動する。このとき、スライドレール部37は、押圧部材39の移動をガイドする。
【0034】
押圧部材39の円弧面39aと枠台36の円弧面36aとが近接することにより、ブッシュ110の中心方向に向かって押圧され、外周部材111の全体的な径が縮径する。作業者は、外周部材111の径を縮径させた状態で、外周部材111の両端から、第1の実施形態で説明した保持部材16a、16bを嵌め込む。保持部材16a、16bを嵌め込むことにより、外周部材111の径を縮径させた状態を保持することができる。
【0035】
このように本実施形態による取付工具35によれば、第1の実施形態と同様、ブッシュ110の外周部材111の外周面に面接触した状態で、外周部材111をブッシュ110の中心方向に向かって押圧することにより、外周部材111が捩れることなく、外周部材111全体が縮径した状態を保持することができる。その後、第1の実施形態と同様に、スタビリンカー100の円筒部103内に嵌め込むことで、捩れることなくブッシュ110を円筒部103に取り付けることができる。
また、本実施形態の取付工具35は、枠台36、押圧部材39、加圧部材38を一体的に構成できるので、取付工具の管理が容易である。
【0036】
なお、上述した第1及び第2の実施形態では、ブッシュの外周部材を縮径させるとき、外周部材の外周面に円弧面を面接触させた状態で押圧する場合について説明したが、この場合に限られない。例えば、押圧部材の円弧面に相当する部分に、外周部材の外周面の複数箇所と接触するような突起を設けてもよい。すなわち、外周部材の外周面に点接触させた状態で押圧してもよい。また、例えば、押圧部材の円弧面に相当する部分に、外周部材の外周面の複数箇所と連続して接触するような突状部を設けてもよい。すなわち、外周部材の外周面に線接触させた状態で押圧してもよい。なお、線接触させる突状部は、押圧方向に沿って形成することが好ましい。
【0037】
また、上述した第1及び第2の実施形態では、スタビライザーとトルクロッドとが一体で構成されているスタビリンカーにブッシュを取り付ける場合について説明したが、スタビライザーとトルクロッドとが別体であってもよい。この場合、上述した説明と同様の取付方法によりトルクロッドの円筒部にブッシュを取り付ける。
また、上述した第1の実施形態では、押圧部材の円弧は、両者が互いに対向し、一定の隙間を有したときに、略真円となるように形成したが、押圧部材の円弧の半径寸法を外周部材の外周面の半径より僅かに小さくするように形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】第1の実施形態に係る取付工具の構成を示す図である。
【図2】本実施形態に係るブッシュを縮径する工程の一部を示す正面図である。
【図3】本実施形態に係る縮径したブッシュを保持する工程の一部を示す斜視図である。
【図4】本実施形態に係るブッシュを円筒部に取り付ける工程を説明するための図である。
【図5】第2の実施形態に係る取付工具の構成を示す図である。
【図6】スタビリンカーとブッシュとを示す斜視図である。
【図7】従来のブッシュを筒部に取り付ける工程を説明するための図である。
【符号の説明】
【0039】
10、35 取付工具
11a、11b 押圧部材
12a、12b 円弧面
13a、13b ガイドピン
15a、15b ガイド孔
16a、16b 保持部材
20 加圧装置
28 ガイドレール
36a 円弧面
39 押圧部材
39a 円弧面
38 加圧部材
100 スタビリンカー
102 トルクロッド
103 円筒部
110 ブッシュ
111 外周部材
111a スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルクロッドにブッシュを取り付けるための取付工具であって、
前記ブッシュの外周部材の外周面に面接触、複数の線接触又は複数の点接触した状態で、前記ブッシュの外周部材を前記ブッシュの中心方向に向かって押圧する押圧部材と、
前記押圧部材によって押圧され、縮径した前記外周部材の外周に嵌め込む保持部材とを有することを特徴とする取付工具。
【請求項2】
前記押圧部材は、前記ブッシュの外周部材の外周面に接する円弧面をそれぞれ有する第一の押圧部材と第二の押圧部材とからなり、
前記第一の押圧部材と前記第二の押圧部材とは、
前記ブッシュの外側部材の外周面に前記第一の押圧部材の円弧面と前記第二の押圧部材の円弧面とを両側から接した状態から、
前記第一の押圧部材と前記第二の押圧部材とを近接させる方向に移動することで、前記ブッシュの外周部材を前記ブッシュの中心方向に向かって押圧することを特徴とする請求項1に記載の取付工具。
【請求項3】
前記第一の押圧部材は、前記第一の押圧部材と前記第二の押圧部材とを近接させる方向に向かって突出するガイドピンを有し、
前記第二の押圧部材は、前記ガイドピンが挿入されるガイド孔を有することを特徴とする請求項2に記載の取付工具。
【請求項4】
前記第一の押圧部材と前記第二の押圧部材とに跨って配置され、前記第一の押圧部材と前記第二の押圧部材とを近接させる方向にガイドするガイドレールを更に有することを特徴とする請求項2又は3に記載の取付工具。
【請求項5】
前記第一の押圧部材と前記第二の押圧部材とを近接させる方向に向かって加圧する加圧装置を更に有することを特徴とする請求項2乃至4の何れか1項に記載の取付工具。
【請求項6】
トルクロッドにブッシュを取り付けるための取付方法であって、
前記ブッシュの外周部材の外周面に面接触、複数の線接触又は複数の点接触した状態で、前記ブッシュの外周部材を押圧部材により前記ブッシュの中心方向に向かって押圧する押圧工程と、
前記押圧部材によって押圧され、縮径した前記外周部材の外周に保持部材を嵌め込む保持工程とを有することを特徴とする取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−29972(P2010−29972A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−194082(P2008−194082)
【出願日】平成20年7月28日(2008.7.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 「スタビライザーブッシュ交換機」のカタログ(2008年6月発行)、「型式:TR−412Gスタビリンカーブッシュ交換機」のカタログ(2008年5月発行)、「型式:TR−412Gスタビリンカーブッシュ交換機」のカタログ(2008年6月発行)に掲載
【出願人】(392031583)林精鋼株式会社 (5)
【出願人】(506258534)株式会社ハスコー (1)
【Fターム(参考)】