説明

受信装置

【課題】複数の信号が受信される場合の適切な受信処理を可能とした「受信装置」を提供する。
【解決手段】FM放送受信装置100−1は、それぞれが複数の同一の信号を受信する複数のアンテナ10及び11と、アンテナ10及び11のそれぞれによって受信された複数の同一の信号の電界強度を検出し、その電界強度に応じて定まる増幅度により、アンテナ10及び11のそれぞれによって受信された複数の同一の信号に対する適応処理を行う適応処理部24と、適応処理後の信号の電界強度を、希望局の信号に対応する所定の電界強度に補正する信号制御用信号レベル生成部28及び信号処理部32とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FM放送等を受信する受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
FM放送受信装置には、妨害特性の改善を主目的としてCMA(constant modulus Algorithm)によって、複数のアンテナが受信した信号を合成する適応処理を行うものがある。CMAによる適応処理とは、希望の放送信号(希望局信号)と、希望局信号と同一周波数で存在する他の放送信号(非希望局信号)とが同時に受信される場合に、出力される信号の振幅変動成分が最小になるように、複数のアンテナから入力された信号についての振幅/位相を可変し、合成する処理である。このようなCMAによる適応処理が行われる場合、希望局信号がマルチパス等によって、その振幅変動成分が非希望局信号のそれよりも大きい場合、非希望局信号が選択されて復調されてしまうという現象が生じることがある。特にFM放送受信装置が車両に搭載される場合には、車両の移動に伴って周辺環境が変動するため、キャプチャ現象が生じやすいが、上述の挙動によってキャプチャ現象が更に助長された状態となる。
【0003】
キャプチャ現象を抑制すべく、特許文献1では、受信した放送信号から当該放送信号に含まれる送信元放送局の識別情報を検出し、その識別情報に対応する放送局が希望局信号の送信元でない場合には、適応処理の初期化及び再始動を行う。
【特許文献1】特開2006−238295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述したCMAによる適応処理が行われる場合には、受信した放送信号のうちの最大の電界強度に基づいて、適応処理後の放送信号の電界強度が設定される。従って、振幅変動成分が大きく、電界強度の強い信号と、振幅変動成分が小さく、電界強度の弱い信号とが同時に受信されると、振幅変動成分が小さい方の信号の電界強度が必要以上に増幅され、且つ、振幅変動成分の大きい方の信号の電界強度が減衰されることがある。そして、この増幅によって、信号と当該信号に重畳されるノイズ成分とが同一の増幅量となる結果、電界強度の弱いはずの信号(C/N比が低い信号)について、音声が聴き取りづらくなるという問題がある。
【0005】
例えば、C/N比の高い信号の受信電界強度が40[dBuV]、C/N比の低い信号の受信電界強度が20[dBuV]である場合を考える。この場合、CMAによる適応処理では、C/N比が高い信号が選択されて、当該信号の受信電界強度40[dBuV]に対応する増幅度で増幅される。しかし、本来であれば、信号の受信電界強度が20[dBuV]である場合には、当該受信電界強度20[dBuV]に対応する増幅度で増幅されることが望ましい。
【0006】
また、CMAによる適応処理に際して増幅が行われることに応じて、キャプチャ現象を抑制する必要もある。
【0007】
本発明の目的は、上述した問題を解決するものであり、複数の信号が受信される場合の適切な受信処理を可能とした受信装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る受信装置は、それぞれが複数の同一の信号を受信する複数のアンテナと、前記複数のアンテナのそれぞれによって受信された複数の同一の信号の電界強度を検出する電界強度検出手段と、前記電界強度検出手段により検出された電界強度に応じて定まる増幅度により、前記複数のアンテナのそれぞれによって受信された複数の同一の信号に対する適応処理を行う適応処理手段と、前記適応処理後の信号の電界強度を、希望局の信号に対応する所定の電界強度に補正する電界強度補正手段とを有する。
【0009】
この構成によれば、適応処理後の信号の電界強度が、希望局信号に対応する所定の電界強度に補正され得るため、希望局信号に含まれるノイズ成分が必要以上に増幅されて音声が聴き取りづらくなることが防止される。
【0010】
同様の観点から本発明の受信装置は、前記電界強度補正手段が、前記適応処理後の信号の電界強度を、前記電界強度検出手段により検出された電界強度から、前記適応処理手段における増幅度に所定係数を乗じた値を減じて得られる補正値に応じて補正するようにしてもよい。
【0011】
また、本発明の受信装置は、前記電界強度補正手段が、前記補正値が予め定められた制限値以下となる場合に、前記補正値を前記制限値に補正するようにしてもよい。
【0012】
この構成によれば、制限値を設けることで、補正によって適応処理後の信号の電界強度が必要以上に弱くなってしまうことが防止される。
【0013】
本発明に係る受信装置は、それぞれが複数の同一の信号を受信する複数のアンテナと、前記複数のアンテナのそれぞれによって受信された複数の同一の信号の電界強度を検出する電界強度検出手段と、前記電界強度検出手段により検出された電界強度に応じて定まる増幅度により、前記複数のアンテナのそれぞれによって受信された複数の同一の信号に対する適応処理を行う適応処理手段と、前記適応処理手段における増幅値が予め定められた所定値を超えるか否かを判定する判定手段と、前記適応処理手段における増幅値が予め定められた所定値を超える場合に、前記適応処理手段に再度の適応処理を行わせる制御を行う制御手段とを有する。
【0014】
この構成によれば、適応処理における増幅値が所定値を超える場合には、キャプチャ現象によって適応処理後の信号が希望局信号でなくなったとみなし、再度の適応処理を行わせることで、適応処理後の信号を希望局の信号とすることが可能となる。
【0015】
同様の観点から本発明の受信装置は、前記制御手段が、所定時間以上、前記適応処理手段における増幅値が予め定められた所定値を超える場合に、前記適応処理手段に再度の適応処理を行わせる制御を行うようにしてもよい。
【0016】
同様の観点から本発明の受信装置は、前記制御手段が、前記判定手段によって前記適応処理手段における増幅値が予め定められた所定値を超えると判定されたことにより、前記適応処理手段に再度の適応処理を行わせる制御を行った後に、前記判定手段によって前記適応処理手段における増幅値が予め定められた所定値以下であると判定された場合に、前記適応処理手段に元の適応処理に復帰させる制御を行うようにしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数の信号が受信される場合の適切な受信処理を可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。図1は、本発明の実施形態に係る受信装置としての第1のFM放送受信装置の構成を示す図である。図1に示すFM放送受信装置100−1は、アンテナ10及び11、増幅器12及び14、重み付け部16及び18、加算器20、タイマ内蔵制御部22、適応処理部24、FM検波器26、信号制御用信号レベル生成部28、加算器30、信号処理部32、スピーカ34により構成される。
【0019】
2つのアンテナ10及び11は、アダプティブアレイアンテナを構成する。これら2つのアンテナ10及び11は、放送局からのFM放送信号を受信信号として受信し、後段に出力する。本実施形態では、アンテナ10によって受信される受信信号を受信信号1とし、アンテナ11によって受信される受信信号を受信信号2とする。なお、本実施形態における受信信号は、FM放送信号にRDS(Radio Data System)データが多重化された信号とするが、これに限定されない。
【0020】
アンテナ10の後段には増幅器12が接続され、アンテナ11の後段には増幅器14が接続されている。増幅器12は、アンテナ10によって受信された受信信号1を増幅し、増幅器14は、アンテナ11によって受信された受信信号2を増幅し、それぞれ後段へ出力する。
【0021】
増幅器12の後段には重み付け部16が接続されている。重み付け部16には、増幅器12からの増幅後の受信信号1が入力される。この重み付け部16は、適応信号処理において一般的に使用されているイコライザ(FIRフィルタ)と同等の構成及び機能を有しており、増幅器12からの増幅後の受信信号1に対し、位相及びゲインについての重み係数に応じた重み付けを行い、その重み付けがなされた受信信号1を出力する。
【0022】
同様に、増幅器14の後段には重み付け部18が接続されている。重み付け部18には、増幅器14からの増幅後の受信信号2が入力される。この重み付け部18は、適応信号処理において一般的に使用されているイコライザ(FIRフィルタ)と同等の構成及び機能を有しており、増幅器14からの増幅後の受信信号2に対し、位相及びゲインについての重み係数に応じた重み付けを行い、その重み付けがなされた受信信号2を出力する。
【0023】
上述したように、重み付け部16及び18による増幅後の受信信号1及び受信信号2に対する重み付けが行われることにより、受信信号1及び受信信号2の位相及びゲインが重み係数に応じた値に設定され、対応するアンテナ10及び11の指向性、換言すれば、放射パターンが形成される。
【0024】
重み付け部16及び18の後段には、加算器20が接続されている。この加算器20は、重み付け部16からの重み付け後の受信信号1と、重み付け部18からの重み付け後の受信信号2とを入力する。そして加算器20は、これら重み付け後の受信信号1及び受信信号2を加算して、受信信号3として後段へ出力する。
【0025】
加算器20の後段には、適応処理部24が接続されている。この適応処理部24は、加算器20から出力された受信信号3を入力する。また、適応処理部24は、アンテナ10及び11の後段に接続されており、これらアンテナ10及び11によって受信された受信信号1及び受信信号2を入力する。そして、適応処理部24は、タイマ内蔵制御部22による制御によって、加算器20からの受信信号3と、アンテナ10からの受信信号1及びアンテナ11からの受信信号2とに基づいて、重み付け部16及び重み付け部18に設定すべき最適な位相及びゲインについての重み付け係数を決定する。更に、適応処理部24は、その決定した重み係数を重み付け部16及び18にそれぞれ設定する。適応処理部24によって設定される重み係数は、例えば、LMS(Least Mean Square) 等の適応アルゴリズムを用いることにより、当該適応処理部24に入力される各受信信号の変化に応じて逐次最適な値に更新される。
【0026】
これにより、受信信号1及び受信信号2の位相及びゲインを、重み係数の更新に伴って最適な値に変更することができ、アンテナ10及び11の指向性を最適な状態とすることが可能となる。具体的には、適応処理部24は、アンテナ10によって希望局信号と非希望局信号とを含む受信信号1が受信され、アンテナ11によって希望局信号と非希望局信号とを含む受信信号2が受信される場合に、受信信号1及び2のそれぞれの希望局信号及び非希望局信号の電界強度を測定する。そして、適応処理部24は、受信信号3としての希望局信号の電界強度が、その測定によって得られた最大の電界強度となるように、最適な重み係数を設定する。更に、適応処理部24は、設定した重み係数に応じて定まるゲインに所定の係数(0〜1の値)を乗じて、得られた電界強度を後段に出力する。
【0027】
また、加算器20の後段には、FM検波器26が接続されている。このFM検波器26は、加算器20からの受信信号3を入力し、当該受信信号3を検波することによって音声信号を取得し、後段に出力する。
【0028】
また、アンテナ10及び11の後段には、信号制御用信号レベル生成部28が接続されている。この信号制御用信号レベル生成部28は、アンテナ10によって受信された受信信号1及びアンテナ11によって受信された受信信号2のそれぞれについて、電界強度を検出する。更に、信号制御用信号レベル生成部28は、検出した電界強度の平均値を算出する。あるいは、信号制御用信号レベル生成部28は、検出した電界強度のうちの最大の電界強度を特定する。これにより、受信された受信信号1及び受信信号2の電界強度に基づく1つの電界強度が定まる。更に、信号制御用信号レベル生成部28は、定めた電界強度を後段に出力する。
【0029】
適応処理部24の後段及び信号制御用信号レベル生成部28の後段には、加算器30が接続されている。この加算器30は、適応処理部24からのゲインに所定の係数を乗じて得られる電界強度と、信号制御用信号レベル生成部28からの電界強度とを入力する。そして、加算器30は、信号制御用信号レベル生成部28からの電界強度から適応処理部24からの重み係数に所定の係数を乗じて得られる電界強度を減じて電界強度を得る。この減算により得られた電界強度は、制御用信号として後段に出力される。
【0030】
FM検波器26の後段及び加算器30の後段には、信号処理部32が接続されている。この信号処理部32は、FM検波器26における検波処理が行われた受信信号3から、PI(Program Identity)が含まれたRDSデータを取得する。また、信号処理部32は、加算器30からの制御用信号に基づいて、受信信号3に対するミュート、ハイカット、ブレンドの各信号処理を行い、音声信号を得る。ここでは、制御用信号で示される電界強度が強いほど、音声信号の電界強度が大きくなるような信号処理が行われる。
【0031】
図2は、信号処理部32の入出力特性を示す表であり、図3は、信号処理部32の入出力特性を示すグラフである。図2及び図3において、特性Oは出力音声信号特性、特性Nが出力ノイズ特性、特性Cはチャンネルセパレーション特性、特性Hはハイカット特性をそれぞれ示す。また、図2及び図3では、Sメータ信号の電圧レベルと受信電界強度との関係が特性Sで示されている。
【0032】
信号処理部32の後段には、スピーカ34が接続されており、当該スピーカ34によって音声信号に基づく音声出力が行われる。
【0033】
このように、FM放送受信装置100−1では、信号制御用信号レベル生成部28によって定められた、受信信号1及び受信信号2の電界強度に基づく1つの電界強度がそのまま制御用信号として、信号処理部32における信号処理に用いられるのではなく、その電界強度からゲインに所定の係数を乗じた電界強度を減じて得られる電界強度が制御用信号となって、信号処理部32における信号処理に用いられる。これにより、適応処理後の信号の電界強度を、希望局信号に対応する所定の電界強度に補正することができる。従って、希望局信号に含まれるノイズ成分が必要以上に増幅されて音声が聴き取りづらくなることが防止される。
【0034】
例えば、図4に示すように、受信信号1及び受信信号2にそれぞれ希望局信号fdと非希望局信号fudが含まれており、非希望局信号fudの方が電界強度の強い場合を考える。この場合、FM放送受信装置100−1では、適応処理と制御用信号に基づく信号処理とが行われることにより、希望局信号fdは適切な電界強度とすることができ、非希望局信号fudは電界強度を下げることができる。
【0035】
図5は、本発明の実施形態に係る受信装置としての第2のFM放送受信装置の構成を示す図である。図5に示すFM放送受信装置100−2は、図1に示すFM放送受信装置100−1と比較すると、適応処理部24の後段であって加算器30の前段に増幅器36が備えられている。この増幅器36は、適応処理部24からのゲインに所定の係数を乗じた値を増幅度αで増幅し、後段の加算器30へ出力する。加算器30は、増幅器36からの増幅後のゲインに所定の係数を乗じて得られる電界強度と、信号制御用信号レベル生成部28からの電界強度とを入力する。そして、加算器30は、信号制御用信号レベル生成部28からの電界強度から、増幅器36からの増幅後のゲインに所定の係数を乗じて得られる電界強度を減じる。この減算により得られた電界強度は、増幅器36に入力される。
【0036】
増幅器36は、加算器30における減算により得られた電界強度が予め定められた制限値以下となる場合には、増幅度αを小さくする。ここで、制限値は、信号処理部32においてミュート処理が行われる場合の制御用信号によって示される電界強度の最低値であり、例えば、10乃至15[dBuV]である。増幅器36は、適応処理部24からのゲインに所定の係数を乗じた値を、この変更後の増幅度αで増幅し、後段の加算器30に出力する。加算器30は、再び、信号制御用信号レベル生成部28からの電界強度から、増幅器36からの増幅後のゲインに所定の係数を乗じて得られる電界強度を減じて電界強度を得て、制御用信号として後段の信号処理部32に出力する。信号処理部32は、加算器30からの制御用信号に基づいて、受信信号3に対するミュート、ハイカット、ブレンドの各信号処理を行い、音声信号を得る。
【0037】
このように、FM放送受信装置100−2では、制御用信号にて示される電界強度が、信号処理部32においてミュート処理が行われる場合の制御用信号によって示される電界強度の最低値以上となるように制御されることで、信号処理部32が出力する音声信号の信号レベルが必要以上に弱くなってしまうことが防止される。
【0038】
図6は、本発明の実施形態に係る受信装置としての第3のFM放送受信装置の構成を示す図である。図3に示すFM放送受信装置100−3は、図1に示すFM放送受信装置100−1と比較すると、加算器20の後段であってFM検波器26の前段に増幅器38が備えられている。
【0039】
適応処理部24は、図1に示すFM放送受信装置100−1の場合と同様、設定した重み係数に応じて定まるゲインに所定の係数を乗じて、電界強度を得る。そして、適応処理部24は、得られた電界強度を増幅器38に出力する。
【0040】
増幅器38は、加算器20からの受信信号3と、適応処理部24からの電界強度とを入力する。更に、増幅部38は、適応処理部24からの電界強度に応じて、加算器20からの受信信号3を増幅する。ここでは、適応処理部24からの電界強度が大きいほど、受信信号3に対する増幅度を下げる。増幅後の受信信号3は、後段のFM検波器26及び信号処理部32へ出力される。
【0041】
FM検波器26は、増幅器38からの増幅後の受信信号3を入力し、当該受信信号3を検波することによって音声信号を取得し、後段の信号処理部32に出力する。信号処理部32は、FM検波器26における検波処理が行われた受信信号3から、PI(Program Identity)が含まれたRDSデータを取得する。また、信号処理部32は、増幅器38からの増幅後の受信信号3の電界強度を制御用信号として、受信信号3に対するミュート、ハイカット、ブレンドの各信号処理を行い、音声信号を得る。この音声信号は、スピーカ34に出力され、当該音声信号に基づく音声出力が行われる。
【0042】
このように、FM放送受信装置100−3では、適応処理部24において、重み係数に応じて定まるゲインに所定の係数を乗じて得られる電界強度が大きい場合には、適応処理によって希望局信号が必要以上に増幅されてしまうものとみなして、増幅器38が増幅率を下げることで、希望局信号に対応する所定の電界強度に補正することができる。
【0043】
次に、上述したFM放送受信装置100−1乃至100−3における適応処理の制御を、フローチャートを参照しつつ説明する。
【0044】
図7は、適応処理の制御を示すフローチャートである。このフローチャートで示す動作は、随時繰り返されるものである。タイマ内蔵制御部22は、適応処理部24からの増幅値を取得する(S101)。この増幅値は、適応処理部24において、設定した重み係数に応じて定まるゲインである。次に、タイマ内蔵制御部22は、取得した増幅値が予め定められた値βを超えるか否かを判定する(S102)。
【0045】
増幅値がβを超える場合には、キャプチャ現象によって適応処理後の信号が希望局信号でなくなったとみなされる。この場合、タイマ内蔵制御部22は、内蔵するタイマ(図示せず)がカウント中であるか否かを判定する(S103)。カウント中でない場合には、当該タイマによるカウントを開始する(S104)。
【0046】
一方、内蔵するタイマがカウント中である場合には、次に、タイマ内蔵制御部22は、タイマのカウント値が所定値γを超えたか否か、換言すれば、タイマのカウントを開始してから当該カウント値γに対応する所定時間が経過したか否かを判定する(S105)。カウント値がγを超えていない場合には、一連の動作が終了する。
【0047】
一方、カウント値がγを超えている場合には、タイマ内蔵制御部22は、適応処理部24に対して、再度の適応処理を指示する。適応処理部24は、この指示に応じて、再度の適応処理を行う(S106)。ここでは、適応処理部24は、適応処理のリセットや重み係数の変更を行う。このように、再度の適応処理が行われることで、キャプチャ現象が継続されることを抑制し、適応処理後の信号を希望局信号とさせることが可能となる。
【0048】
また、S102において増幅値がβ以下であると判定した場合には、タイマ内蔵制御部22は、タイマをリセットする(S107)。更に、制御部22は、実行中の適応処理がS106において行われた再処理であるか否かを判定する(S108)。再処理でない場合には、一連の動作を終了する。一方、再処理である場合には、タイマ内蔵制御部22は、適応処理部24に対し、元の適応処理に復帰するように指示する。適応処理部24は、この指示に応じて元の適応処理に復帰する(S109)。例えば、適応処理部24は、S106の再処理において適応処理をリセットした場合には、リセット前の適応処理に復帰する。また、適応処理部24は、S106の再処理において重み係数を変更した場合には、変更前の重み係数に戻す。
【0049】
このように、適応処理における増幅値が所定値を超える場合には、キャプチャ現象によって適応処理後の信号が希望局信号でなくなったとみなし、再度の適応処理を行わせることで、適応処理後の信号を希望局信号とすることが可能となる。
【0050】
なお、上述した実施形態では、FM放送を受信する受信装置について説明したが、他の放送を受信する受信装置についても、放送信号が振幅に情報を有しないものであれば、同様に本発明を適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上、説明したように、本発明に係る受信装置は、複数の信号が受信される場合の適切な受信処理が可能であり、受信装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施形態に係る第1のFM放送受信装置の構成を示す図である。
【図2】信号処理部の入出力特性を示す表である。
【図3】信号処理部の入出力特性を示すグラフである。
【図4】第1のFM放送受信装置における受信処理の概要を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る第2のFM放送受信装置の構成を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る第3のFM放送受信装置の構成を示す図である。
【図7】適応処理の制御を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0053】
10、11 アンテナ
12、14、36、38 増幅器
16、18 重み付け部
20、30 加算器
22 タイマ内蔵制御部
24 適応処理部
26 FM検波器
28 信号制御用信号レベル生成部
32 信号処理部
34 スピーカ
100−1、100−2、100−3 FM放送受信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが複数の同一の信号を受信する複数のアンテナと、
前記複数のアンテナのそれぞれによって受信された複数の同一の信号の電界強度を検出する電界強度検出手段と、
前記電界強度検出手段により検出された電界強度に応じて定まる増幅度により、前記複数のアンテナのそれぞれによって受信された複数の同一の信号に対する適応処理を行う適応処理手段と、
前記適応処理後の信号の電界強度を、希望局の信号に対応する所定の電界強度に補正する電界強度補正手段とを有する受信装置。
【請求項2】
前記電界強度補正手段は、前記適応処理後の信号の電界強度を、前記電界強度検出手段により検出された電界強度から、前記適応処理手段における増幅度に所定係数を乗じた値を減じて得られる補正値に応じて補正する請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記電界強度補正手段は、前記補正値が予め定められた制限値以下となる場合に、前記補正値を前記制限値に補正する請求項2に記載の受信装置。
【請求項4】
それぞれが複数の同一の信号を受信する複数のアンテナと、
前記複数のアンテナのそれぞれによって受信された複数の同一の信号の電界強度を検出する電界強度検出手段と、
前記電界強度検出手段により検出された電界強度に応じて定まる増幅度により、前記複数のアンテナのそれぞれによって受信された複数の同一の信号に対する適応処理を行う適応処理手段と、
前記適応処理手段における増幅値が予め定められた所定値を超えるか否かを判定する判定手段と、
前記適応処理手段における増幅値が予め定められた所定値を超える場合に、前記適応処理手段に再度の適応処理を行わせる制御を行う制御手段とを有する受信装置。
【請求項5】
前記制御手段は、所定時間以上、前記適応処理手段における増幅値が予め定められた所定値を超える場合に、前記適応処理手段に再度の適応処理を行わせる制御を行う請求項4に記載の受信装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記判定手段によって前記適応処理手段における増幅値が予め定められた所定値を超えると判定されたことにより、前記適応処理手段に再度の適応処理を行わせる制御を行った後に、前記判定手段によって前記適応処理手段における増幅値が予め定められた所定値以下であると判定された場合に、前記適応処理手段に対して元の適応処理に復帰させる制御を行う請求項5に記載の受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−141478(P2009−141478A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−313467(P2007−313467)
【出願日】平成19年12月4日(2007.12.4)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】