説明

受信装置

【課題】即時に到来波の変調方式に適応した復調が行える受信装置を提供する。
【解決手段】周波数弁別回路6の出力信号を信号処理し、第1および第2の選択制御信号を出力とするシンボル速度検出回路13と、入力を第1の選択制御信号に従い第1の端子または第2の端子へ導く信号切り換えが行われる切換回路11と、第1の端子へ出力された信号を入力とし、信号レベルを増幅する低周波増幅回路7と、第2の端子へ出力された信号を入力とし、第2の選択制御信号に従い多値FSK復調回路の切り換え制御が行われる多値FSK復調器とを備え、シンボル速度検出回路は、入力された信号に対し時間軸と振幅軸の波形分析を行って波形分析の結果と予め記憶させた多値FSK変調方式のベースバンド信号波形の参照テーブルと照合し、第1および第2の選択制御信号を得るような信号処理である構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FM無線機の受信部における変調方式の切換えに供して好適な受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図5に示すように、FM(周波数変調)受信装置は、無線周波信号を受信するアンテナ1と、受信した無線周波である高周波信号レベルを増幅する高周波増幅回路2と、増幅された高周波信号を周波数変換するミキサ回路4と、ミキサ回路4の他方に入力する局部発振信号を発生する局部発振回路3と、ミキサ回路4から出力される変換周波数成分から所定の周波数を選択し、所定のレベルに増幅し、振幅をリミッタする中間周波増幅回路5と、FM変調された中間周波増幅回路5の出力信号を周波数弁別検波(復調)する周波数弁別回路6と、アナログFM変調であれば端子aに接続し、これを増幅して低周波信号(音声信号)として出力信号端子9に出力する低周波増幅回路7と、また、多値FSKのデジタル変調波のベースバンド信号であれば端子bに接続し、これを復調して2値符号(出力データ)として出力信号端子10に出力する多値FSK復調器8とのブロックによって構成される。
【0003】
この受信装置は、低周波増幅回路7又は多値FSK復調器8のいずれかのユニットが差し替えられて用いられるようにしたものである。
【0004】
図6は、低周波増幅回路7および多値FSK復調器8の両方のユニットを備え、外部からの制御信号を入力する外部制御端子(12a)によってどちらかが選択されるように切換える切換回路11を備えたデュアル回路方式である。この受信装置では、多値FSK復調器8に対して外部からの制御信号を入力する外部制御端子(12b)によって複数の変調モードから1つの回路を選択する。そのほかは図5に示された構成と同じである。
【0005】
このように、従来は、アナログFM変調波信号または多値FSKのデジタル変調波信号のどちらが到来しても、アナログ/デジタル、多値FSKの多値種別が到来信号に適応して自動で選択されて該当する復調処理が行えるような受信装置は無かった。
【0006】
そこで、受信信号変調方式判定回路が受信信号の位相変化の大きさに基づいて、位相変化によるデジタル変調波信号か、又は、振幅変化によるデジタル変調波信号かを判定する判定装置の提案がされている。(例えば、特許文献1 参照)
【特許文献1】特開2003−249968号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術のアナログFM変調とデジタル多値FSK変調の2種類の変調方式を切り換えて通信を行うFM無線機(送信装置および受信装置)では、このような通信に用いる変調方式は、送信側の無線機(送信装置)に変調方式の選択権を持たせるのが一般的であった。
【0008】
このため、受信側の無線機(受信装置)では受信信号がどちらの変調方式であるかを通信開始前に予め知っておく必要があり、これらの変調方式が任意のタイミングで交互に繰り返し切り換えるような通信では、通信の即時性に難があった。
【0009】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決し、アナログFM変調とデジタル多値FSK変調の2種類の変調方式が用いられる通信系において、送信装置側によって変調方式が任意のタイミングで交互に繰り返し切り換えられても、即時に到来波の変調方式に適応した復調が行える受信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために、本発明の受信装置は、周波数変調信号を復調する周波数弁別回路を備える受信装置であって、前記周波数弁別回路の出力信号を信号処理し、第1および第2の選択制御信号を出力とするシンボル速度検出回路と、前記周波数弁別回路の出力信号を入力とし、該入力を前記第1の選択制御信号に従い一方の端子または他方の端子へ導く信号切り換えが行われる切換回路と、前記一方の端子へ出力された信号を入力とし、信号レベルを増幅する低周波増幅回路と、前記他方の端子へ出力された信号を入力とし、前記第2の選択制御信号に従い多値FSK復調回路の切り換え制御が行われる多値FSK復調器とを備え、前記シンボル速度検出回路は、入力された信号に対しシンボル速度判定および多値判定のための波形分析を行い、該波形分析の結果と予め記憶させた多値FSK変調方式のベースバンド信号波形の参照テーブルと照合し、照合結果に従って前記第1および第2の選択制御信号を得るような信号処理である構成とした。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アナログFM変調とデジタル多値FSK変調の2種類の変調方式を受信装置側において自動で切り替えが行われるので、音声通信(アナログFM変調)か、データ伝送(デジタル多値FSK変調)か、即ち、変調方式の切り換えに関して、無線機の操作上の諸手続き考慮せずに運用に供することができる。従って、通信の多様性および即時性が格段に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を実施するための形態について、実施例を掲げ、以下に説明する。
【0013】
図1に本発明の一実施形態の受信装置のブロック図を示す。
FM(周波数変調)受信装置は、無線周波信号を受信するアンテナ1と、受信した無線周波である高周波信号レベルを増幅する高周波増幅回路2と、増幅された高周波信号を周波数変換するミキサ回路4と、ミキサ回路4の他方端に入力する局部発振信号を発生する局部発振回路3と、ミキサ回路4から出力される変換された複数の周波数成分から所定の周波数を選択し、所定のレベルに増幅し、振幅をリミッタする中間周波増幅回路5と、FM変調された中間周波増幅回路5の出力信号を周波数弁別検波(復調)する周波数弁別回路(ディスクリミネータ)6との構成を有し、更に、本実施形態は以下の構成を備えている。
【0014】
周波数弁別回路6の出力は、切換回路11およびシンボル速度検出回路13へ導かれる。
【0015】
切換回路11は、一方の出力端が低周波増幅回路7の入力に接続され、他方の出力端が多値FSK復調器8の入力に接続されている。
【0016】
シンボル速度検出回路13は、入力された周波数弁別回路6の出力信号の信号特性をデジタル信号処理(DSP)により波形分析して多値FSK信号(例;2値、4値、8値等)の多値判定およびシンボル速度判定(変調速度判定)を行う。
【0017】
この分析結果によって、アナログ/デジタル選択制御信号と多値FSK選択制御信号とを生成し、前者の信号を切換回路11の制御のための第1の選択制御信号出力(m)とし、後者の信号を多値FSK復調器8の制御のための第2の選択制御信号出力(n)とする。
【0018】
第1の選択制御信号出力(m)であるアナログ/デジタル選択制御信号は、切換回路11の信号経路を制御し、アナログ選択制御信号であれば、周波数弁別回路6の出力を低周波増幅回路7へ導くように、一方デジタル選択制御信号であれば、周波数弁別回路6の出力を多値FSK復調器8へ導くように切り換えを行う。
【0019】
第2の選択制御信号出力(n)である多値FSK選択制御信号は、多値FSK復調器8の中で、多値FSK信号(例;2値、4値、8値等)の多値の種別、およびシンボル速度(変調速度)の種別を選択制御する。これによって、入力される信号の多値FSK変調に適応する回路が選択される。
【0020】
低周波増幅回路7は、アナログ低周波信号を所定のレベルまで増幅し、出力信号端子9から低周波信号(例えば音声信号)として出力する。
【0021】
多値FSK復調器8は、周波数弁別回路6のベースバンド信号出力に対して多値FSK復調を行うデジタル信号処理(DSP)を行い、2値符号(デジタルデータ)に復調し、これを出力信号端子10からデジタルデータとして出力する。
【0022】
以上が本発明の一実施形態の受信装置の構成である。
【0023】
図2は前記周波数弁別回路6から出力される多値FSK変調波のベースバンド信号出力波形であり、図3は前記周波数弁別回路6から出力されるアナログ低周波信号出力波形である。これらの波形の分析によって選択制御信号を得る過程について以下に説明する。
【0024】
今、アナログFM変調信号とデジタル多値FSK変調信号の出力波形のいずれかが任意のタイミング毎に切り換えられて送信側から受信側に送られるものとする。
【0025】
受信装置は、これらの信号をアンテナ1で受信し、高周波増幅回路2、ミキサ回路4、中間周波増幅回路5、周波数弁別回路6の処理を経て、シンボル速度検出回路13に入力する。
【0026】
シンボル速度検出回路13では、図4のフローで示す処理をする。すなわち、受信信号が入力してくると(S1)、シンボルの振幅、間隔の判定処理(S2)を行う。この判定によりシンボルの振幅、間隔が検出されると、すなわち受信信号がデジタル変調方式であると、多値FSK復調器に接続するためのデジタル選択制御信号(例えばm;論理レベル1)を出力する処理(S4)へ進む。一方、シンボルの振幅、間隔が検出されないと、すなわちアナログ変調方式であると、低周波増幅回路に接続するためのアナログ選択制御信号(例えばm;論理レベル0)を出力する処理(S3)へ進む。
【0027】
この結果、受信信号はシンボル速度検出回路13の出力であるデジタル/アナログ選択制御信号(m)によって切換回路11で選択されたのち、一方の出力端から図3で示されたアナログ低周波信号出力波形が低周波増幅回路7に入力され、他方の出力端から図2で示されたベースバンド信号出力波形が多値FSK復調器8に入力される。
【0028】
次に、受信装置に多値FSK変調波形式を有するデジタル変調方式の信号が到来した場合のシンボル速度検出回路13の動作を説明する。
【0029】
前記多値FSK変調波形式が4値FSK変調波のベースバンド信号出力波形であるとすると、この波形は、時間軸と振幅軸との間で4種類のシンボル(a、b、c、d、各シンボル周期間隔(tm)が所定の送信側の2値データおよび周波数変調に対応して発生している。1シンボル分の時間長がシンボル周期間隔となる。
【0030】
周波数弁別回路6の出力における4値FSK変調波のベースバンド信号出力波形は、変調周波数に対するシンボルの対応は、例えば周波数f1→a、f2→b,f3→c,f4→dである。
【0031】
更に、多値FSK復調器8の出力における4値FSK変調波の各シンボルに対するデジタルデータの対応は、各シンボルに2つの符号列が対応し、例えばシンボル波形a→符号列11、b→10,c→01,d→00である。
【0032】
シンボル速度検出回路13の信号処理により検出された各シンボルのシンボル周期間隔である時間長(t)は、所定の値(変調速度に当たる値)であり、予め設定された種類の変調速度から多値FSK変調であることを判別し、切換回路11への制御信号(m)となる。
【0033】
更に、シンボル速度検出回路13の信号処理により検出された多値のレベルも予め設定された種類の多値レベル(2値、4値、8値等)から1つを選択させることで多値FSK復調器8への多値FSK選択制御信号となる。
【0034】
多値FSKの選択制御信号の内容は上記2つの内容を含んだ多値FSK選択制御信号(n)となる。
【0035】
図示されてはいないが、送信装置側では、これら多値レベルと変調速度(単位;baud)が組み合わされてデジタル変調信号が形成され、伝送されるデータの速度(単位;bps)が決まる。例えば、変調信号が4値、1200baudであれば、データの速度は2400bpsとなる。
【0036】
受信装置側のシンボル速度検出回路13では、前記組み合わせパラメータ、即ち、多値レベルの複数のレベル値と複数のシンボル間隔時間を予め規定値とする参照テーブルとして作成し、シンボル速度検出回路13のメモリに記憶させておく。
【0037】
実際の受信に際し、シンボル速度検出回路13では、周波数弁別回路6から供給されたベースバンド信号出力波形を時間軸と振幅軸よる波形分析、即ち、入力された信号に対し多値判定およびシンボル速度判定の波形分析を行い、その結果と前記規定値とした参照テーブルとを照合して、多値レベルのレベル値とシンボル間隔時間がどの多値FSK変調パターンに合致するか、しないかについての多値FSK判定回路が待ち構えの常時動作であり、その判定動作は、図4に示した本発明の受信装置のシンボル判定フロー図によって行われる。
【0038】
アナログ変調方式の信号が到来した場合には、図3に示すように、シンボル速度検出回路13の入力は、時間軸に対して振幅値の変化が低周波信号(例えば音声信号)の振幅変化であるので、多値FSK判定回路が待ち構えの常時動作の結果は、検出されたシンボル間隔(≠t)、即ち、非シンボル周期間隔(ランダム)であり、所定のシンボル周期間隔として認識されないことが分かる。
【0039】
なお、シンボル速度検出回路13の信号処理の中に前記非シンボル周期間隔を認識するような分析を行い、その結果を前記判定に加えるようにしてもよい。
【0040】
以上の構成によって、本実施形態の受信装置によれば、アナログFM変調とデジタル多値FSK変調のデュアルモード変調方式の切り換えが受信信号を基にして自動で行うことができるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、移動および固定通信に用いられる無線通信システムに適用されて、公共事業等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の受信装置のブロック図である。
【図2】本発明の多値FSKベースバンド信号の波形図である。
【図3】本発明のFM変調波の波形図である。
【図4】本発明の受信装置のシンボル判定フロー図である。
【図5】従来の受信装置のブロック図である。
【図6】従来の受信装置のブロック図である。
【符号の説明】
【0043】
1 アンテナ
2 高周波増幅回路
3 局部発信回路
4 ミキサ回路
5 中間周波増幅回路
6 周波数弁別回路
7 低周波増幅回路
8 多値FSK復調器
9,10 出力信号端子
11 切換回路
12 外部制御端子
13 シンボル速度検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数変調信号を復調する周波数弁別回路を備える受信装置であって、
前記周波数弁別回路の出力信号を信号処理し、第1および第2の選択制御信号を出力とするシンボル速度検出回路と、
前記周波数弁別回路の出力信号を入力とし、該入力を前記第1の選択制御信号に従い一方の端子または他方の端子へ導く信号切り換えが行われる切換回路と、
前記一方の端子へ出力された信号を入力とし、信号レベルを増幅する低周波増幅回路と、
前記他方の端子へ出力された信号を入力とし、前記第2の選択制御信号に従い多値FSK復調回路の切り換え制御が行われる多値FSK復調器とを備え、
前記シンボル速度検出回路は、入力された信号に対しシンボル速度判定および多値判定のための波形分析を行い、該波形分析の結果と予め記憶させた多値FSK変調方式のベースバンド信号波形の参照テーブルと照合し、照合結果に従って前記第1および第2の選択制御信号を得るような信号処理である構成とした受信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−17189(P2009−17189A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−176157(P2007−176157)
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】