受動素子パラメータ測定装置
【課題】電気機器内部の受動素子であるコンデンサやリアクトルのパラメータを電気機器を分解することなく測定できるようにすることである。
【解決手段】負荷抵抗演算部18は、電源装置14から電気機器11に電源供給されているときに電気機器11に印加される電圧V及び電気機器11に供給される電流Iに基づいて電気機器11の負荷抵抗Rを演算し、電源制御部19は、電源装置14から電気機器11への電源供給を一時停電させ、所定の停電時間Tの経過後に復電させ、コンデンサ容量演算部20は、電源装置が一時停電したときの停電直前電圧、電源装置が復電したときの復電電圧、電源装置14が一時停電してから復電するまでの停電時間T、負荷抵抗演算部18で求めた負荷抵抗Rに基づいて電気機器14のコンデンサ容量Cを演算する。
【解決手段】負荷抵抗演算部18は、電源装置14から電気機器11に電源供給されているときに電気機器11に印加される電圧V及び電気機器11に供給される電流Iに基づいて電気機器11の負荷抵抗Rを演算し、電源制御部19は、電源装置14から電気機器11への電源供給を一時停電させ、所定の停電時間Tの経過後に復電させ、コンデンサ容量演算部20は、電源装置が一時停電したときの停電直前電圧、電源装置が復電したときの復電電圧、電源装置14が一時停電してから復電するまでの停電時間T、負荷抵抗演算部18で求めた負荷抵抗Rに基づいて電気機器14のコンデンサ容量Cを演算する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電系統における需要家の電気機器に含まれる受動素子のパラメータを測定する受動素子パラメータ測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、需要家の電気機器として、汎用インバータなどの入力回路にコンデンサインプット型整流器やPWM整流器あるいは付加スイッチを用いた複合整流回路を有したものが多くなっている。このような需要家の電気機器は高調波電圧歪の存在する電力系統に接続するし、高調波電流を電力系統に流出させる。その電気機器が設置されている電磁環境の下で、外部から印加される電磁妨害に対して健全な動作を保ち(第一の条件)、その動作によって外部の電磁環境を悪化させるような妨害を発生しない(第二の条件)ことが要請されている。第一の条件は妨害に対するイミュニティを示し、第二の条件はエミッションレベルを規定する。
【0003】
これを実際の電力システムに当て嵌めると、配電系統に存在する高調波電圧が所定レベル以下の場合に、需要家の電気機器が不具合を生じないというイミュニティレベルが存在し、家電機器から流出する高調波電流エミッションが少ない場合、配電系統の配電線の高調波電圧歪みが所定のレベルまでに抑制されるということになる。つまり、イミュニティとエミッションとの電磁両立性のバランスがうまくとれた状態と言える。
【0004】
仮に高調波電流エミッションの大きな需要家の電気機器により、配電系統の高調波電圧歪が増大した場合、その電圧歪みによりイミュニティレベルの低い需要家の電気機器に不具合が発生する可能性がある。そのような不具合発生時には、クライアントの要請により電力会社が高調波電圧歪と需要家の電気機器の不具合の因果関係を把握し、課題解決に取り組むことが想定される。その課題解決には、実測とシミュレーション解析との2つの手段を併用する。シミュレーション解析には、当該需要家の電気機器のモデリングが必要となる。
【0005】
電気機器のモデリングのためには、電気機器に含まれる受動素子のパラメータが必要となる。例えば、受動素子であるコンデンサやリアクトルのコンデンサ容量やインダクタンスのパラメータの入手が必要となる。電気機器のコンデンサ容量を測定するものとしては自動平衡ブリッジ法を用いたLCRハイテスタなどがあり、劣化診断技術としては、フィルムコンデンサの電気的特性とその表面温度を計測し、この計測データからフィルムコンデンサの劣化を診断するもの(例えば、特許文献1参照)や、平滑コンデンサの直流電圧からリップル電圧値を算出し、そのリップル電圧値と負荷電流の値に対応する比較リップル電圧値とを比較して平滑コンデンサの劣化を判定するようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−37258号公報
【特許文献2】特開2007−240450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1、2のいずれの装置においても、電気機器の外部から受動素子であるコンデンサやリアクトルのパラメータを測定するものではないので、電気機器を分解して内部のコンデンサ容量を測定しなければならない。電気機器の分解は、専門の知識を持った者が多大の労力をかけて行うことになる。そこで、電気機器のメーカからコンデンサやリアクトルのパラメータを入手することが考えられるが、電気機器の内部回路にノウハウを含む場合には、メーカからパラメータを入手できない場合がある。
【0007】
コンデンサやリアクトルのパラメータを入手できない場合には、電力品質が原因と思われる電気機器の停止の原因を調査しようにも、電気機器のシミュレーションモデルを精度よく作成できないので、電気機器の停止の原因を追求することが極めて困難となる。このように、電力会社は当該電気機器を製造しておらず、電気機器内部の回路定数を把握することが困難であり、解析が頓挫することも懸念されている。また、仮にメーカからパラメータを入手できたとしても、コンデンサ容量などは、劣化により、設計値と異なる可能性がある。
【0008】
本発明の目的は、電気機器内部の受動素子であるコンデンサやリアクトルのパラメータを電気機器を分解することなく測定できる受動素子パラメータ測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明に係わる受動素子パラメータ測定装置は、コンデンサ及び整流器を有する電気機器にリアクトルを介して直流または交流の電源電力を印加するための電源装置と、前記電源装置から前記電気機器に印加される電圧を検出する電圧検出器と、前記電源装置から前記電気機器に供給される電流を検出する電流検出器と、前記電源装置から前記電気機器に電源供給されているときに前記電圧検出器で検出された前記電気機器に印加される電圧及び前記電流検出器で検出された前記電気機器に供給される電流に基づいて前記電気機器の負荷抵抗を演算する負荷抵抗演算部と、前記電源装置から前記電気機器への電源供給を一時停電させ所定の停電時間経過後に復電させる電源制御部と、前記電源装置が一時停電したときの前記電圧検出器で検出される停電直前電圧、前記電源装置が復電したときの前記電圧検出器で検出される復電電圧、前記電源装置が一時停電してから復電するまでの前記停電時間、前記負荷抵抗演算部で求めた負荷抵抗に基づいて前記電気機器のコンデンサ容量を演算するコンデンサ容量演算部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明に係わる受動素子パラメータ測定装置は、請求項1の発明において、前記負荷抵抗演算部は、前記停電直前電圧及びそのときの前記電流検出器で検出された前記電気機器に供給される電流に基づいて前記電気機器の第1の負荷抵抗を演算し、前記復電電圧及びそのときの前記電流検出器で検出された前記電気機器に供給される電流に基づいて前記電気機器の第2の負荷抵抗を演算し、前記第1の負荷抵抗と前記第2の負荷抵抗との平均値を前記電気機器の負荷抵抗として演算することを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明に係わる受動素子パラメータ測定装置は、請求項1の発明において、前記電源制御部は、前記電源装置から前記電気機器への電源供給を一時停電させ所定の停電時間経過後に復電させることに代えて、前記電源装置から前記電気機器への供給電圧を急変させ、前記コンデンサ容量演算部は、前記電源制御部で前記電気機器への供給電圧が急変させたときの前記電圧検出器で検出される急変直前電圧、前記電気機器への供給電圧を急変させた後に前記電流検出器により電流が検出された時点での前記電圧検出器で検出される電圧、前記電気機器への供給電圧が急変してから前記電流検出器により電流が検出された時点までの時間、前記負荷抵抗演算部で求めた負荷抵抗とに基づいて前記電気機器のコンデンサ容量を演算することを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明に係わる受動素子パラメータ測定装置は、請求項3の発明において、前記負荷抵抗演算部は、前記急変直前電圧及びそのときの前記電流検出器で検出された前記電気機器に供給される電流に基づいて前記電気機器の第1の負荷抵抗を演算し、前記電気機器への供給電圧を急変させた後に前記電流検出器により電流が検出された時点での前記電圧検出器で検出される電圧及びそのときの前記電流検出器で検出された前記電気機器に供給される電流に基づいて前記電気機器の第2の負荷抵抗を演算し、前記第1の負荷抵抗と前記第2の負荷抵抗との平均値を前記電気機器の負荷抵抗として演算することを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明に係わる受動素子パラメータ測定装置は、請求項1乃至4のいずれか1項の発明において、前記コンデンサ容量演算部で演算されたコンデンサ容量の同定の可否判定を行う同定判定部を設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明に係わる受動素子パラメータ測定装置は、請求項1乃至5のいずれか1項の発明において、前記電源装置からステップ状の電圧を前記電気機器に印加したときに前記電流検出器で検出された電流の振動周波数を検出する周波数検出部と、前記コンデンサ容量演算部で演算されたコンデンサ容量及び前記周波数検出部で検出された電流の振動周波数に基づいて前記電気機器に含まれるリアクトルのインダクタンスを演算するインダクタンス演算部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、電気機器の外部で検出される電気機器への出力電圧及び出力電流に基づいて電気機器の負荷抵抗を演算し、電源装置から電気機器への電源供給を一時停電させ所定の停電時間経過後に復電させて、電気機器の外部で検出される電気機器への出力電圧や出力電流及び電気機器の負荷抵抗に基づいて電気機器のコンデンサ容量を演算するので、電気機器を分解することなく電気機器のコンデンサ容量を求めることができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、第1の負荷抵抗と第2の負荷抵抗との平均値を電気機器の負荷抵抗として演算するので、負荷抵抗が入力電圧の値によって抵抗値が変化する定電力負荷抵抗(例えば、定トルクモータ)の場合であっても、電気機器のコンデンサ容量を求めることができる。
【0017】
請求項3の発明によれば、電気機器への供給電圧が急変させたときの電圧検出器で検出される急変直前電圧、及び電気機器への供給電圧を急変させた後に電流検出器により電流が検出された時点での電圧検出器で検出される電圧に基づいて、電気機器のコンデンサ容量を演算するので、電気機器を分解することなく電気機器のコンデンサ容量を求めることができる。
【0018】
請求項4の発明によれば、請求項3の発明の効果に加え、第1の負荷抵抗と第2の負荷抵抗との平均値を電気機器の負荷抵抗として演算するので、負荷抵抗が定電力負荷抵抗の場合であっても、電気機器のコンデンサ容量を求めることができる。
【0019】
請求項5の発明によれば、請求項1乃至4のいずれか1項の発明の効果に加え、コンデンサ容量演算部で演算されたコンデンサ容量の同定の可否判定を行うので、演算されたコンデンサ容量の信頼性が向上する。
【0020】
請求項6の発明によれば、請求項1乃至5のいずれか1項の発明の効果に加え、電源制御部からステップ状の電圧を電気機器に印加して、電気機器の外部で検出される電気機器への出力電圧及び出力電流に基づいて電気機器に含まれるリアクトルのインダクタンスを演算するので、電気機器を分解することなく電気機器のリアクトルのインダクタンスを求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は本発明の第1の実施の形態に係わる受動素子パラメータ測定装置の構成図である。需要家の電気機器11は、コンデンサインプット型整流器を備えた交直変換回路であり、力率改善用のリアクトルLを備えたものを示している。すなわち、整流器12の入力側の交流側には力率改善用のリアクトルLが設けられ、整流器13の出力側の直流側にはコンデンサC及び負荷抵抗Rが並列に接続されている。第1の実施の形態に係わる受動素子パラメータ測定装置13は、電気機器11の受動素子であるコンデンサCのコンデンサ容量及び負荷抵抗Rの抵抗値を測定するものである。
【0022】
受動素子パラメータ測定装置13の電源装置14は、電気機器11の受動素子パラメータを測定するための直流または交流の電源を供給するものであり、リアクトルLaを介して出力端に直流または交流の電源電力を供給する。受動素子パラメータ測定装置13の出力端から電気機器11に出力される電源電力の出力電圧は、電圧検出器15で検出され記憶部16に記憶され、同様に、電源電力の出力電流は、電流検出器17で検出され記憶部16に記憶される。
【0023】
負荷抵抗演算部18は、電源装置14から電気機器11に電源供給されているときに、電気機器11に印加される電圧V及び電気機器11に供給される電流Iに基づいて電気機器11の負荷抵抗Rを演算するものである。例えば、電源装置14から供給する電源電力が直流である場合には、記憶部16に記憶された電気機器11に印加される電圧V及び電気機器11に供給される電流Iを入力し、R=V/Iで求める。あるいは、供給電力をPとしたとき、R=V2/P、または、R=P/I2で求める。負荷抵抗演算部18で求められた電気機器11の負荷抵抗Rは記憶部16に記憶される。
【0024】
次に、電源制御部19は電源装置14から電気機器11への電源供給を制御するものであり、電源装置14から電気機器11に所定電圧で電源供給をしているときに一時停電させ、一時停電後の所定の停電時間経過後に復電させる動作を行う。電源制御部19で一時停電させその後に復電させた場合の停電時間Tは記憶部16に記憶される。
【0025】
コンデンサ容量演算部20は電気機器のコンデンサ容量を演算するものである。コンデンサ容量演算部20は、電源制御部19により電源装置14が一時停電したときの一時停電直前の電圧検出器15で検出された出力電圧(停電直前電圧)Va、電源装置14が復電したときの電圧検出器15で検出された出力電圧(復電電圧)Vb、電源装置14が一時停電してから復電するまでの停電時間T、負荷抵抗演算部18で求めた負荷抵抗Rに基づいて電気機器11のコンデンサ容量Cを演算し、記憶部16に記憶する。
【0026】
出力部21は記憶部に記憶されたコンデンサ容量Cや負荷抵抗R等の情報を必要に応じて外部に出力する。
【0027】
図2は、電源装置14から電気機器11に所定電圧で電源供給をしているときに、電源装置14を一時停電させた場合の電気機器11側の等価回路である。電源装置14から電気機器11に所定電圧で電源供給をしている状態は、スイッチSを閉じている状態と等価である。スイッチSを閉じている状態ではコンデンサCは直流電圧Eにて十分に充電されている。次に、コンデンサCが直流電圧Eにて十分に充電されている状態で、電源装置14を一時停電させた状態は、スイッチSを開いた状態と等価である。
【0028】
時刻t=0にてスイッチSを開いた場合、コンデンサCの電圧Vcは下記(1)式で示される。なお、(1)式では、コンデンサCの容量をCで表し、負荷抵抗Rの抵抗値をRで表している。
【0029】
[数1]
Vc=E・exp(−t/R・C)
時刻t1のコンデンサCの電圧Vc1は(1)式のtにt1を代入して、(2)式のように求められる。なお、(2)式では、(1)式と同様に、コンデンサCの容量をCで表し、負荷抵抗Rの抵抗値をRで表している。
【0030】
[数2]
Vc1=E・exp(−t1/R・C)
(2)式をコンデンサ容量Cについて解くと、(3)式で示される。
【0031】
[数3]
C=t1/{R・log(E/Vc1)}
(3)式において、t1、E、Vc1、Rが既知であればコンデンサ容量Cを求めることができる。
【0032】
ここで、図2に示したように、コンデンサ容量CをRCの時定数により測定する場合、停電前後のコンデンサ両端電圧E、Vc1を測定する必要がある。電気機器11がコンデンサインプット型に代表される交直変換回路である場合には、電気機器11の交直変換回路に用いられている整流器12の影響により、そのままでは、整流器12の入力側の交流側からコンデンサ両端電圧Vc1を測定することができない。
【0033】
すなわち、交流側電圧(整流器の入力側の電圧)が直流側電圧(コンデンサ両端電圧)より高いときには、整流器12のダイオードがオンするため、交流側電圧を直流側電圧とみなすことができる。従って、Eは停電直前電圧Vaとみなすことができる。一方、交流側電圧が直流側電圧よりも低いときには、整流器12のダイオードがオフするため、交流側から直流側の電圧を窺い知ることはできない。従って、そのままではコンデンサ両端電圧Vc1を測定することができない。
【0034】
そこで、第1の実施の形態では、電源装置14の出力端にリアクトルLaを挿入し、電気機器11の整流器12の直流側電圧(コンデンサ両端電圧)を交流側から測定可能としている。電源装置14の出力端にリアクトルLaを挿入することにより、整流器12の入力側に印加した電源装置14の電圧が瞬時に電気機器11に印加されるのを防止し、あたかもソフトスタートをしたかのように電気機器11に出力電圧を印加する。
【0035】
つまり、一時停電させた後の復電時に電源装置14から電圧Vaを印加してもリアクトルLaにより電気機器11への出力電圧はコンデンサ両端電圧Vc1から緩やかに電圧Vaに向けて立ち上がることになる。従って、電源装置14が復電したときの電圧検出器15で検出された出力電圧(復電電圧)Vbはコンデンサ両端電圧Vc1に相当することになる。
【0036】
t1は停電時間Tに相当し、Eは停電直前電圧Vaに相当し、Vc1は復電電圧Vbに相当し、負荷抵抗Rの抵抗値である。従って、これらのt1(=T)、E(=Va)、Vc1(=Vb)、Rは、すべて既知であるので、コンデンサ容量Cを求めることができる。
【0037】
次に、電源装置14から電気機器11への電源供給を一時停電させ、所定の停電時間Tの経過後に復電させた場合の電気機器11の動作を考える。まず、電源装置14の出力端にリアクトルLaが挿入されている場合について説明する。図3は電源装置14の出力端にリアクトルLaを挿入した場合の一時停電後に復電させた場合の動作波形図である。
【0038】
図3に示すように、時点t1以前の電源装置14から電気機器11に電源供給されている状態では、電源装置14の出力電圧はV0で一定であり、電圧検出器15の検出電圧は電気機器11のコンデンサCの両端電圧である。電気機器11のコンデンサCは整流器12で整流された電圧V0で十分に充電されているので、コンデンサCの両端電圧はV0である。また、電源装置14の出力電流はI0で一定であり、負荷抵抗Rに一定の電力を供給している。
【0039】
時点t1において、電源装置14から電気機器11への電源供給を一時停電させたとすると、停電直前電圧VaはV0であり、電源装置14の出力電圧は0となり、電圧検出器15の検出電圧も0となる。一方、電気機器11のコンデンサ両端電圧Vcは、コンデンサ容量Cと負荷抵抗Rとで定まる時定数により放電してV0から徐々に降下する。また、電源装置14の出力電流は0となる。
【0040】
そして、所定の停電時間Tの経過後の時点t2で復電させたとすると、電源装置14の出力電圧は0からV0となるが、リアクトルLaの影響により、電気機器11のコンデンサ両端電圧Vc及び電圧検出器15の検出電圧は瞬時にV0とはならず、コンデンサ容量Cと負荷抵抗Rとで定まる時定数により下降した時点t2でのコンデンサ両端電圧Vc1から徐々に上昇する。この時点t2でのコンデンサ両端電圧Vc1は、電源装置14の復電時に電圧検出器15で復電電圧Vbとして検出される電圧である。つまり、コンデンサ両端電圧VcはリアクトルLaの影響により、時点t2でのコンデンサ両端電圧Vc1から徐々にVaに向けて上昇する。また、電源装置14の出力電流は、時点t2からオーバーシュートして流れ、最終的には負荷抵抗Rに一定の電力を供給する一定電流I0で落ち着く。
【0041】
従って、電源装置14の出力端にリアクトルLaが挿入されている場合には、コンデンサ容量Cと負荷抵抗Rとで定まる時定数により下降したコンデンサ両端電圧Vc1は、復電時(時点t2時)の復電電圧Vbとして電圧検出器15で検出される。
【0042】
次に、電源装置14の出力端にリアクトルLaが挿入されていない場合について説明する。図4は電源装置14の出力端にリアクトルLaを挿入しない場合の一時停電後に復電させた場合の動作波形図である。図4に示すように、時点t1から時点t2直前までの状態は、図3の状態と同じである。所定の停電時間Tの経過後の時点t2で復電したとすると、電源装置14の出力電圧及び電圧検出器15の検出電圧は0からV0となる。電源装置14の出力端にはリアクトルLaが挿入されていないので、電源装置14の出力電圧がV0となると、電気機器11のコンデンサCの両端電圧Vcは瞬時にVc1からV0となる。
【0043】
従って、復電時(時点t2時)の復電電圧Vbとして電圧検出器15で検出される電圧はV0となり、コンデンサ容量Cと負荷抵抗Rとで定まる時定数により下降したコンデンサ両端電圧Vc1を検出することができない。
【0044】
このように、第1の実施の形態では、電源装置14の出力端にリアクトルLaを挿入することによって、電気機器11の整流器12の直流側電圧(コンデンサ両端電圧)を交流側から測定可能としている。
【0045】
また、電気機器11の整流器のリアクトルLの影響を緩和するためにも、電源装置14の出力端にリアクトルLaを挿入する。図5は、電源装置14の出力端にリアクトルLaを挿入して、10000[μF]の静電容量を持つコンデンサ容量Cをシミュレーションにより同定したときのグラフである。図5から分かるように0.005[H]以上のリアクトルLaを挿入した場合には、電気機器11の力率改善用のリアクトルLの有無に関係なく精度よくコンデンサ容量C(10000[μF])を同定できている。
【0046】
これより、ある値(例えば、0.005[H])以上のリアクトルLaを電源装置14の出力端に挿入することにより、精度よくコンデンサ容量Cを同定できることがわかる。また、挿入するリアクトル容量を変化させ、数点のデータを得ることにより、電気機器11内部のリアクトルLを完全に無視したときのコンデンサ容量Cを算出できる。
【0047】
次に、第1の実施の形態に係わる受動素子パラメータ測定装置の動作を説明する。図6は第1の実施の形態に係わる受動素子パラメータ測定装置の動作を示すフローチャートである。まず、受動素子パラメータ測定装置13を供試機器である電気機器11に接続し(S1)、受動素子パラメータ測定装置13の電源装置14から電気機器11に電源を供給する(S2)。電源は直流または交流のいずれであってもよい。
【0048】
電源装置14から電気機器11に電源を供給している状態で、電気機器11に印加される電圧V及び電流Iを検出する(S3)。すなわち、電源装置14から電気機器11に印加される電圧Vは電圧検出器15で検出され、電源装置14から電気機器11に供給される電流Iは電流検出器17で検出され、それぞれ記憶部16に記憶される。
【0049】
次に、負荷抵抗演算部18は電気機器11の負荷抵抗Rを演算する(S4)。負荷抵抗演算部18は、記憶部16に記憶された電圧検出器15で検出された電気機器11に印加される電圧V及び電流検出器17で検出された電気機器11に供給される電流Iを入力し、R=V/Iで求める。電源装置14から供給する電源電力が交流である場合には、供給電力をPとしたとき、R=V2/P、または、R=P/I2で求める。
【0050】
そして、電源装置14から電気機器11への電源供給を一時停電させるあたり、電源装置14から電気機器11への出力電圧Vの停電直前電圧Vaを記憶して停電させる(S5)。その後に、所定の停止時間Tを経過したかどうかを判定し(S6)、所定の停止時間Tを経過したときは、電源装置14から電気機器11への電源供給を復電させ(S7)、復電時の復電電圧Vbを記憶部16に記憶する(S8)。
【0051】
コンデンサ容量演算部20は、(3)式により電気機器15のコンデンサ容量Cを演算する(S9)。この場合、停電直前電圧Vaは(3)式のEに、復電電圧Vbは(3)式のVc1に、停電時間Tは(3)式のt1に、負荷抵抗Rは(3)式のRに代入して、電気機器15のコンデンサ容量Cを演算する。コンデンサ容量演算部20で求めたコンデンサ容量Cは、記憶部16に記憶するとともに必要に応じて出力部21により外部に出力する。
【0052】
以上の説明では、電源装置14の出力端にリアクトルLaを挿入し、一時停電を発生させ復電させて、電気機器11のコンデンサ両端電圧Vcを電気機器11の入力側から検出可能としコンデンサ容量Cを求めるようにしたが、電源装置14の電圧を急変させ、急変直前電圧Vdと、電源装置14から電気機器11に向かって電流Iが流れた瞬間の電圧値Veと、時間Teとを記録し、コンデンサ容量Cを測定することも可能である。この場合、電源装置14から電気機器11に向かって電流Iが流れた瞬間の電圧値Veがコンデンサ両端電圧Vc1に相当することになる。
【0053】
図7は、電源装置14の電圧を急変させてコンデンサ容量Cを測定する場合の動作特性図である。時点t3以前の電源装置14から電気機器11に電源供給されている状態では、電源装置14の出力電圧はV0で一定であり、電圧検出器15の検出電圧は電気機器11のコンデンサCの両端電圧である。電気機器11のコンデンサCは整流器12で整流された電圧V0で十分に充電されているので、電圧検出器15の検出電圧はV0である。また、電源装置14の出力電流はI0で一定であり、負荷抵抗Rに一定の電力を供給している。
【0054】
時点t3において、電源装置14から電気機器11への供給電圧をV0からV0’に急変させたとすると、急変直前電圧VdはV0であり、電源装置14の出力電圧VはV0’となる。急変直前電圧Vd(=V0)を記憶部16に記憶する。一方、電気機器11のコンデンサ両端電圧Vcは、コンデンサ容量Cと負荷抵抗Rとで定まる時定数により放電してV0から徐々に降下する。また、電源装置14の出力電流は0となる。
【0055】
そして、コンデンサ両端電圧Vcがコンデンサ容量Cと負荷抵抗Rとで定まる時定数により放電してV0からV0’まで下がり、さらに放電しようとすると、コンデンサ両端電圧VcがV0’より下がる。そうすると、電源装置14の出力電圧はV0’であるので、電源装置14の出力電圧の方が高くなる。従って、時点t4において、電源装置14から電気機器11の方向に電流が流れ始める。電源装置14から電気機器11に向かって電流Iが流れた瞬間の電源装置14の出力電圧値Ve(=V0’)と、電圧を急変させた時点からの時間Teとを記憶部16に記憶する。
【0056】
図8は電源装置14の電圧を急変させてコンデンサ容量Cを測定する場合の動作を示すフローチャートである。ステップS1からステップS4までは図3と同じである。すなわち、受動素子パラメータ測定装置13を供試機器である電気機器11に接続し(S1)、受動素子パラメータ測定装置13の電源装置14から電気機器11に電源を供給し(S2)、電源装置14から電気機器11に電源を供給している状態で、電気機器11に印加される電圧V及び電流Iを検出して(S3)、記憶部16に記憶する。そして、負荷抵抗演算部18は電気機器11の負荷抵抗Rを演算して(S4)、記憶部16に記憶する。
【0057】
次に、電源装置14から電気機器11への電源電圧を急変させるにあたり、電源装置14から電気機器11への出力電圧Vの停電急変電圧Vdを記憶して、出力電圧を急変させる(S5)。その後に、電源装置14から電気機器11の方向に電流が流れたかどうかを判定し(S6)、電源装置14から電気機器11の方向に電流が流れ始めたときは、その瞬間の電源装置14の出力電圧値Veを記憶部16に記憶し(S7)、出力電圧を急変させた時点から出力電流が流れ始めるまでの時間Teを記憶部16に記憶する(S8)。
【0058】
コンデンサ容量演算部20は、(3)式により電気機器15のコンデンサ容量Cを演算する(S9)。この場合、急変直前電圧Vdは(3)式のEに、出力電流が流れ始めたときの出力電圧Veは(3)式のVc1に、時間Teは(3)式のt1に、負荷抵抗Rは(3)式のRに代入して、電気機器15のコンデンサ容量Cを演算する。コンデンサ容量演算部20で求めたコンデンサ容量Cは、記憶部16に記憶するとともに必要に応じて出力部21により外部に出力する。
【0059】
以上の説明では、負荷抵抗演算部18は、電気機器11に印加される電圧V及び電気機器11に供給される電流Iを入力しR=V/I、または、供給電力をPとしたとき、R=V2/P、または、R=P/I2で負荷抵抗Rを求めるようにしたが、出力電圧の値が異なる場合の複数の負荷抵抗を求め、これらの平均値を負荷抵抗としてもよい。
【0060】
例えば、停電直前電圧Va及びそのときの電流検出器17で検出された電気機器11に供給される電流Iに基づいて電気機器の第1の負荷抵抗R1を演算し、復電電圧Vb及びそのときの電流検出器17で検出された電気機器11に供給される電流Iに基づいて電気機器11の第2の負荷抵抗R2を演算し、第1の負荷抵抗R1と第2の負荷抵抗R2との平均値を電気機器11の負荷抵抗Rとして演算するようにしてもよい。
【0061】
また、急変直前電圧Vd及びそのときの電流検出器17で検出された電気機器11に供給される電流に基づいて電気機器11の第1の負荷抵抗R1’を演算し、電気機器11への供給電圧を急変させた後に電流検出器17により電流が検出された時点での電圧検出器15で検出される電圧Ve及びそのときの電流検出器17で検出された電気機器11に供給される電流に基づいて電気機器11の第2の負荷抵抗R2’を演算し、第1の負荷抵抗R1’と第2の負荷抵抗R2’との平均値を電気機器11の負荷抵抗Rとして演算するようにしてもよい。
【0062】
これにより、負荷抵抗が入力電圧の値によって抵抗値が変化する定電力負荷抵抗の場合であっても、平均値を使用することで電気機器11のコンデンサ容量Cを精度よく求めることができる。
【0063】
第1の実施の形態によれば、電気機器の外部で検出される電気機器への出力電圧及び出力電流に基づいて電気機器の負荷抵抗を演算し、電気機器の外部で検出される電気機器への出力電圧や出力電流及び電気機器の負荷抵抗に基づいて電気機器のコンデンサ容量を演算するので、電気機器を分解することなく電気機器のコンデンサ容量を求めることができる。
【0064】
電気機器を分解せずにコンデンサ容量を求めることが測定できるので、シミュレーション精度の向上やシミュレーションの時間短縮が図れる。さらに、定期的にコンデンサ容量を測定することによって、コンデンサの劣化診断をすることができ、未然に電気機器が故障をすることを防ぐことができる。
【0065】
図9は本発明の第2の実施の形態に係わる受動素子パラメータ測定装置の構成図である。この第2の実施の形態は、図1に示した第1の実施の形態に対し、コンデンサ容量演算部20で演算されたコンデンサ容量の同定の可否判定を行う同定判定部22を追加して設けたものである。
【0066】
図10は同定判定部22の処理内容を示すフローチャートである。まず、同定判定部22は、異なる停止時間T1、T2(T1>T2)のコンデンサ容量C1、C2をコンデンサ容量演算部20に演算させる(S1)。そして、コンデンサ容量演算部20で演算された停止時間T1のときのコンデンサ容量C1と、停止時間T2のときのコンデンサ容量C2との差分ΔC1(=|C2−C1|)を演算し(S2)、その差分ΔC1が規定値ε1より小さいかどうかを判定する(S3)。その差分ΔC1が規定値ε1より小さいときは、コンデンサ容量C1とコンデンサ容量C2との平均値をコンデンサ容量Cとして同定する(S4)。
【0067】
一方、ステップS3の判定で、コンデンサ容量C1とコンデンサ容量C2との差分ΔC1が規定値ε1以上であるときは、コンデンサ容量C1、C2は平均値の負荷抵抗Rを用いて演算したものかどうかを判定する(S5)。これは、負荷抵抗Rが入力電圧Vの値によって抵抗値が変化する定電力負荷抵抗の場合には、前述したように、出力電圧の値が異なる場合の第1の負荷抵抗及び第2の負荷抵抗の平均値を負荷抵抗とするからである。
【0068】
ステップS5の判定で、コンデンサ容量C1、C2は平均値の負荷抵抗Rを用いて演算したものである場合には、平均値の負荷抵抗Rを用いて演算したにもかかわらず、コンデンサ容量C1、C2の差分ΔC1が規定値ε1の範囲内を満たさないので、コンデンサ容量Cの同定不能と判定する(S6)。
【0069】
一方、ステップS5の判定で、コンデンサ容量C1、C2は平均値の負荷抵抗Rを用いて演算したものでない場合には、平均値の負荷抵抗を求めるかどうかを判断し(S7)、平均値の負荷抵抗を求めない場合には、ステップS6に移行しコンデンサ容量Cの同定不能と判定する。平均値の負荷抵抗を求める場合には、負荷抵抗演算部18を起動し、出力電圧の値が異なる場合の第1の負荷抵抗及び第2の負荷抵抗の平均値を演算する(S8)。
【0070】
そして、平均値の負荷抵抗を用いて、停止期間T1、T2(T1>T2)のコンデンサ容量C1、C2をコンデンサ容量演算部20に演算させ(S9)、平均値の負荷抵抗を用いて演算された停止時間T1のときのコンデンサ容量C1と、停止時間T2のときのコンデンサ容量C2との差分ΔC1’(=|C2’−C1’|)を演算し(S10)、その差分ΔC1’がステップS2で求めた差分ΔC1より小さいかどうかを判定する(S11)。差分ΔC1’が差分ΔC1より大きい場合は、ステップS6に移行しコンデンサ容量Cの同定不能と判定する。これは、平均値の負荷抵抗を用いて演算した結果のコンデンサ容量C1、C2の差分がさらに大きくなっているので、負荷抵抗は定電力負荷抵抗以外の負荷と判定できるからである。
【0071】
ステップS11の判定で、差分ΔC1’が差分ΔC1より小さい場合は、変数iに3をセットし(S12)、平均値の負荷抵抗を用いて、停止期間Ti(Ti−1>Ti)のコンデンサ容量Ci’をコンデンサ容量演算部20に演算させ(S13)、停止時間Ti−1のときのコンデンサ容量Ci−1’と、停止時間Tiのときのコンデンサ容量Ci’との差分ΔCi−1’(=|Ci’−Ci−1’|)を演算する(S14)。
【0072】
その差分ΔC1’が規定値ε1より小さいかどうかを判定し(S15)、その差分ΔC1’が規定値ε1より大きいときは、変数iに1を加算して(S16)、ステップS13に戻る。一方、その差分ΔC1’が規定値ε1より小さいときは、コンデンサ容量Ci’とコンデンサ容量Ci−1’との平均値をコンデンサ容量Cとして同定する(S17)。これは、差分ΔCi−1’が小さくなったときは、負荷抵抗は定電力負荷抵抗であると判定でき、停電時間Tiを順次短くしていくと、差分ΔCi−1’は小さくなっていくからである。
【0073】
第2の実施の形態によれば、同定判定部22により、コンデンサ容量演算部20で演算されたコンデンサ容量の同定の可否判定を行い、特に、負荷抵抗が定電力負荷抵抗である場合には、より精度を高めたコンデンサ容量を同定するので、演算されたコンデンサ容量の信頼性が向上する。
【0074】
図11は本発明の第3の実施の形態に係わる受動素子パラメータ測定装置の構成図である。この第3の実施の形態は、図1に示した第1の実施の形態に対し、周波数検出部23とインダクタンス演算部24とを追加して設け、電気機器11に含まれるリアクトルLのインダクタンスを求めるようにしたものである。
【0075】
周波数検出部23は、電源装置14からステップ状の電圧を電気機器11に印加したときに、電流検出器17で検出された電流Iの振動周波数fを検出するものである。また、インダクタンス演算部24は、コンデンサ容量演算部20で演算されたコンデンサ容量C及び周波数検出部23で検出された電流Iの振動周波数fに基づいて、電気機器11に含まれる力率改善用のリアクトルのインダクタンスを演算するものである。
【0076】
いま、電気機器11に含まれる力率改善用のリアクトルのインダクタンスをLとする。電気機器11にステップ状の電圧を印加した際には、(4)式で示す条件のときに入力電流Iは振動する。
【0077】
[数4]
1/(2RC)2<1/LC
その時の振動角周波数ωは、(5)式で求まる。
【0078】
[数5]
ω={1/LC−1/(2RC)2}1/2
そこで、振動周波数fとコンデンサ容量Cとが分かれば(6)式によってリアクトルのインダクタンスLを同定することができる。
【0079】
[数6]
L≒1/(2πf)2・C
また、回路の条件によっては電流が振動しないこともあるが、その際は電源装置14の出力端にリアクトルLa’を挿入することにより電流Iを振動させ、電気機器11内に含まれるリアクトルのインダクタンスLを同定する。
【0080】
図12は本発明の第3の実施の形態に係わる受動素子パラメータ測定装置の動作を示すフローチャートである。まず、受動素子パラメータ測定装置13を電気機器11に接続し(S1)、受動素子パラメータ測定装置13の電源装置14から電気機器11にステップ状の出力電圧を印加する(S2)。電源装置14からステップ状の出力電圧を出力させる制御は電源制御部19により行われる。
【0081】
電気機器11にステップ状の出力電圧を印加した後に、電流Iは振動するかどうかを判断する(S3)。電流Iが振動しているか否かは周波数検出部23で判断する。周波数検出部23で電流Iの振動周波数fが検出できないときは、電源装置14の出力端にリアクトルLa’を追加して接続し(S4)、ステップS3に戻る。つまり、電流Iが振動するまでステップS3、S4を繰り返す。電流Iが振動するようになったときは、(4)式の条件を満たすときである。
【0082】
電流Iが振動するようになると、周波数検出部23は電流Iの振動周波数fを測定する(S5)。電流Iの振動周波数fが得られると、インダクタンス演算部24は、既にコンデンサ容量演算部20で演算して求めたコンデンサ容量Cとともに、(6)式に代入し、電気機器11内に含まれるリアクトルのインダクタンスLを求める(S6)。これにより、電気機器11を分解することなく電気機器11のリアクトルのインダクタンスも求めることができる。
【0083】
以上の説明では、第1の実施の形態に対し、周波数検出部23及びインダクタンス演算部24を設けた場合について説明したが、第2の実施の形態に対し、周波数検出部23とインダクタンス演算部24とを設け、電気機器11に含まれるリアクトルLのインダクタンスを求めるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わる受動素子パラメータ測定装置の構成図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係わる受動素子パラメータ測定装置の電源装置から電気機器に所定電圧で電源供給をしているときに電源装置を一時停電させた場合の電気機器側の等価回路。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係わる受動素子パラメータ測定装置の電源装置の出力端にリアクトルLaを挿入した場合の一時停電後に復電させた場合の電気機器の動作波形図。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係わる受動素子パラメータ測定装置の電源装置の出力端にリアクトルLaを挿入しない場合の一時停電後に復電させた場合の動作波形図。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係わる受動素子パラメータ測定装置の電源装置の出力端にリアクトルLaを挿入して10000[μF]の静電容量を持つコンデンサ容量Cをシミュレーションにより同定したときのグラフ。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係わる受動素子パラメータ測定装置の動作を示すフローチャート。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係わる受動素子パラメータ測定装置の電源装置の電圧を急変させてコンデンサ容量Cを測定する場合の動作特性図。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係わる受動素子パラメータ測定装置の電源装置の電圧を急変させてコンデンサ容量Cを測定する場合の動作を示すフローチャート。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係わる受動素子パラメータ測定装置の構成図。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係わる受動素子パラメータ測定装置の同定判定部の処理内容を示すフローチャート。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係わる受動素子パラメータ測定装置の構成図。
【図12】本発明の第3の実施の形態に係わる受動素子パラメータ測定装置の動作を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0085】
11…電気機器、12…整流器、13…受動素子パラメータ測定装置、14…電源装置、15…電圧検出器、16…記憶部、17…電流検出器、18…負荷抵抗演算部、19…電源制御部、20…コンデンサ容量演算部、21…出力部、22…同定判定部、23…周波数検出部、24…インダクタンス演算部
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電系統における需要家の電気機器に含まれる受動素子のパラメータを測定する受動素子パラメータ測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、需要家の電気機器として、汎用インバータなどの入力回路にコンデンサインプット型整流器やPWM整流器あるいは付加スイッチを用いた複合整流回路を有したものが多くなっている。このような需要家の電気機器は高調波電圧歪の存在する電力系統に接続するし、高調波電流を電力系統に流出させる。その電気機器が設置されている電磁環境の下で、外部から印加される電磁妨害に対して健全な動作を保ち(第一の条件)、その動作によって外部の電磁環境を悪化させるような妨害を発生しない(第二の条件)ことが要請されている。第一の条件は妨害に対するイミュニティを示し、第二の条件はエミッションレベルを規定する。
【0003】
これを実際の電力システムに当て嵌めると、配電系統に存在する高調波電圧が所定レベル以下の場合に、需要家の電気機器が不具合を生じないというイミュニティレベルが存在し、家電機器から流出する高調波電流エミッションが少ない場合、配電系統の配電線の高調波電圧歪みが所定のレベルまでに抑制されるということになる。つまり、イミュニティとエミッションとの電磁両立性のバランスがうまくとれた状態と言える。
【0004】
仮に高調波電流エミッションの大きな需要家の電気機器により、配電系統の高調波電圧歪が増大した場合、その電圧歪みによりイミュニティレベルの低い需要家の電気機器に不具合が発生する可能性がある。そのような不具合発生時には、クライアントの要請により電力会社が高調波電圧歪と需要家の電気機器の不具合の因果関係を把握し、課題解決に取り組むことが想定される。その課題解決には、実測とシミュレーション解析との2つの手段を併用する。シミュレーション解析には、当該需要家の電気機器のモデリングが必要となる。
【0005】
電気機器のモデリングのためには、電気機器に含まれる受動素子のパラメータが必要となる。例えば、受動素子であるコンデンサやリアクトルのコンデンサ容量やインダクタンスのパラメータの入手が必要となる。電気機器のコンデンサ容量を測定するものとしては自動平衡ブリッジ法を用いたLCRハイテスタなどがあり、劣化診断技術としては、フィルムコンデンサの電気的特性とその表面温度を計測し、この計測データからフィルムコンデンサの劣化を診断するもの(例えば、特許文献1参照)や、平滑コンデンサの直流電圧からリップル電圧値を算出し、そのリップル電圧値と負荷電流の値に対応する比較リップル電圧値とを比較して平滑コンデンサの劣化を判定するようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−37258号公報
【特許文献2】特開2007−240450号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1、2のいずれの装置においても、電気機器の外部から受動素子であるコンデンサやリアクトルのパラメータを測定するものではないので、電気機器を分解して内部のコンデンサ容量を測定しなければならない。電気機器の分解は、専門の知識を持った者が多大の労力をかけて行うことになる。そこで、電気機器のメーカからコンデンサやリアクトルのパラメータを入手することが考えられるが、電気機器の内部回路にノウハウを含む場合には、メーカからパラメータを入手できない場合がある。
【0007】
コンデンサやリアクトルのパラメータを入手できない場合には、電力品質が原因と思われる電気機器の停止の原因を調査しようにも、電気機器のシミュレーションモデルを精度よく作成できないので、電気機器の停止の原因を追求することが極めて困難となる。このように、電力会社は当該電気機器を製造しておらず、電気機器内部の回路定数を把握することが困難であり、解析が頓挫することも懸念されている。また、仮にメーカからパラメータを入手できたとしても、コンデンサ容量などは、劣化により、設計値と異なる可能性がある。
【0008】
本発明の目的は、電気機器内部の受動素子であるコンデンサやリアクトルのパラメータを電気機器を分解することなく測定できる受動素子パラメータ測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明に係わる受動素子パラメータ測定装置は、コンデンサ及び整流器を有する電気機器にリアクトルを介して直流または交流の電源電力を印加するための電源装置と、前記電源装置から前記電気機器に印加される電圧を検出する電圧検出器と、前記電源装置から前記電気機器に供給される電流を検出する電流検出器と、前記電源装置から前記電気機器に電源供給されているときに前記電圧検出器で検出された前記電気機器に印加される電圧及び前記電流検出器で検出された前記電気機器に供給される電流に基づいて前記電気機器の負荷抵抗を演算する負荷抵抗演算部と、前記電源装置から前記電気機器への電源供給を一時停電させ所定の停電時間経過後に復電させる電源制御部と、前記電源装置が一時停電したときの前記電圧検出器で検出される停電直前電圧、前記電源装置が復電したときの前記電圧検出器で検出される復電電圧、前記電源装置が一時停電してから復電するまでの前記停電時間、前記負荷抵抗演算部で求めた負荷抵抗に基づいて前記電気機器のコンデンサ容量を演算するコンデンサ容量演算部とを備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明に係わる受動素子パラメータ測定装置は、請求項1の発明において、前記負荷抵抗演算部は、前記停電直前電圧及びそのときの前記電流検出器で検出された前記電気機器に供給される電流に基づいて前記電気機器の第1の負荷抵抗を演算し、前記復電電圧及びそのときの前記電流検出器で検出された前記電気機器に供給される電流に基づいて前記電気機器の第2の負荷抵抗を演算し、前記第1の負荷抵抗と前記第2の負荷抵抗との平均値を前記電気機器の負荷抵抗として演算することを特徴とする。
【0011】
請求項3の発明に係わる受動素子パラメータ測定装置は、請求項1の発明において、前記電源制御部は、前記電源装置から前記電気機器への電源供給を一時停電させ所定の停電時間経過後に復電させることに代えて、前記電源装置から前記電気機器への供給電圧を急変させ、前記コンデンサ容量演算部は、前記電源制御部で前記電気機器への供給電圧が急変させたときの前記電圧検出器で検出される急変直前電圧、前記電気機器への供給電圧を急変させた後に前記電流検出器により電流が検出された時点での前記電圧検出器で検出される電圧、前記電気機器への供給電圧が急変してから前記電流検出器により電流が検出された時点までの時間、前記負荷抵抗演算部で求めた負荷抵抗とに基づいて前記電気機器のコンデンサ容量を演算することを特徴とする。
【0012】
請求項4の発明に係わる受動素子パラメータ測定装置は、請求項3の発明において、前記負荷抵抗演算部は、前記急変直前電圧及びそのときの前記電流検出器で検出された前記電気機器に供給される電流に基づいて前記電気機器の第1の負荷抵抗を演算し、前記電気機器への供給電圧を急変させた後に前記電流検出器により電流が検出された時点での前記電圧検出器で検出される電圧及びそのときの前記電流検出器で検出された前記電気機器に供給される電流に基づいて前記電気機器の第2の負荷抵抗を演算し、前記第1の負荷抵抗と前記第2の負荷抵抗との平均値を前記電気機器の負荷抵抗として演算することを特徴とする。
【0013】
請求項5の発明に係わる受動素子パラメータ測定装置は、請求項1乃至4のいずれか1項の発明において、前記コンデンサ容量演算部で演算されたコンデンサ容量の同定の可否判定を行う同定判定部を設けたことを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明に係わる受動素子パラメータ測定装置は、請求項1乃至5のいずれか1項の発明において、前記電源装置からステップ状の電圧を前記電気機器に印加したときに前記電流検出器で検出された電流の振動周波数を検出する周波数検出部と、前記コンデンサ容量演算部で演算されたコンデンサ容量及び前記周波数検出部で検出された電流の振動周波数に基づいて前記電気機器に含まれるリアクトルのインダクタンスを演算するインダクタンス演算部とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、電気機器の外部で検出される電気機器への出力電圧及び出力電流に基づいて電気機器の負荷抵抗を演算し、電源装置から電気機器への電源供給を一時停電させ所定の停電時間経過後に復電させて、電気機器の外部で検出される電気機器への出力電圧や出力電流及び電気機器の負荷抵抗に基づいて電気機器のコンデンサ容量を演算するので、電気機器を分解することなく電気機器のコンデンサ容量を求めることができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、第1の負荷抵抗と第2の負荷抵抗との平均値を電気機器の負荷抵抗として演算するので、負荷抵抗が入力電圧の値によって抵抗値が変化する定電力負荷抵抗(例えば、定トルクモータ)の場合であっても、電気機器のコンデンサ容量を求めることができる。
【0017】
請求項3の発明によれば、電気機器への供給電圧が急変させたときの電圧検出器で検出される急変直前電圧、及び電気機器への供給電圧を急変させた後に電流検出器により電流が検出された時点での電圧検出器で検出される電圧に基づいて、電気機器のコンデンサ容量を演算するので、電気機器を分解することなく電気機器のコンデンサ容量を求めることができる。
【0018】
請求項4の発明によれば、請求項3の発明の効果に加え、第1の負荷抵抗と第2の負荷抵抗との平均値を電気機器の負荷抵抗として演算するので、負荷抵抗が定電力負荷抵抗の場合であっても、電気機器のコンデンサ容量を求めることができる。
【0019】
請求項5の発明によれば、請求項1乃至4のいずれか1項の発明の効果に加え、コンデンサ容量演算部で演算されたコンデンサ容量の同定の可否判定を行うので、演算されたコンデンサ容量の信頼性が向上する。
【0020】
請求項6の発明によれば、請求項1乃至5のいずれか1項の発明の効果に加え、電源制御部からステップ状の電圧を電気機器に印加して、電気機器の外部で検出される電気機器への出力電圧及び出力電流に基づいて電気機器に含まれるリアクトルのインダクタンスを演算するので、電気機器を分解することなく電気機器のリアクトルのインダクタンスを求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は本発明の第1の実施の形態に係わる受動素子パラメータ測定装置の構成図である。需要家の電気機器11は、コンデンサインプット型整流器を備えた交直変換回路であり、力率改善用のリアクトルLを備えたものを示している。すなわち、整流器12の入力側の交流側には力率改善用のリアクトルLが設けられ、整流器13の出力側の直流側にはコンデンサC及び負荷抵抗Rが並列に接続されている。第1の実施の形態に係わる受動素子パラメータ測定装置13は、電気機器11の受動素子であるコンデンサCのコンデンサ容量及び負荷抵抗Rの抵抗値を測定するものである。
【0022】
受動素子パラメータ測定装置13の電源装置14は、電気機器11の受動素子パラメータを測定するための直流または交流の電源を供給するものであり、リアクトルLaを介して出力端に直流または交流の電源電力を供給する。受動素子パラメータ測定装置13の出力端から電気機器11に出力される電源電力の出力電圧は、電圧検出器15で検出され記憶部16に記憶され、同様に、電源電力の出力電流は、電流検出器17で検出され記憶部16に記憶される。
【0023】
負荷抵抗演算部18は、電源装置14から電気機器11に電源供給されているときに、電気機器11に印加される電圧V及び電気機器11に供給される電流Iに基づいて電気機器11の負荷抵抗Rを演算するものである。例えば、電源装置14から供給する電源電力が直流である場合には、記憶部16に記憶された電気機器11に印加される電圧V及び電気機器11に供給される電流Iを入力し、R=V/Iで求める。あるいは、供給電力をPとしたとき、R=V2/P、または、R=P/I2で求める。負荷抵抗演算部18で求められた電気機器11の負荷抵抗Rは記憶部16に記憶される。
【0024】
次に、電源制御部19は電源装置14から電気機器11への電源供給を制御するものであり、電源装置14から電気機器11に所定電圧で電源供給をしているときに一時停電させ、一時停電後の所定の停電時間経過後に復電させる動作を行う。電源制御部19で一時停電させその後に復電させた場合の停電時間Tは記憶部16に記憶される。
【0025】
コンデンサ容量演算部20は電気機器のコンデンサ容量を演算するものである。コンデンサ容量演算部20は、電源制御部19により電源装置14が一時停電したときの一時停電直前の電圧検出器15で検出された出力電圧(停電直前電圧)Va、電源装置14が復電したときの電圧検出器15で検出された出力電圧(復電電圧)Vb、電源装置14が一時停電してから復電するまでの停電時間T、負荷抵抗演算部18で求めた負荷抵抗Rに基づいて電気機器11のコンデンサ容量Cを演算し、記憶部16に記憶する。
【0026】
出力部21は記憶部に記憶されたコンデンサ容量Cや負荷抵抗R等の情報を必要に応じて外部に出力する。
【0027】
図2は、電源装置14から電気機器11に所定電圧で電源供給をしているときに、電源装置14を一時停電させた場合の電気機器11側の等価回路である。電源装置14から電気機器11に所定電圧で電源供給をしている状態は、スイッチSを閉じている状態と等価である。スイッチSを閉じている状態ではコンデンサCは直流電圧Eにて十分に充電されている。次に、コンデンサCが直流電圧Eにて十分に充電されている状態で、電源装置14を一時停電させた状態は、スイッチSを開いた状態と等価である。
【0028】
時刻t=0にてスイッチSを開いた場合、コンデンサCの電圧Vcは下記(1)式で示される。なお、(1)式では、コンデンサCの容量をCで表し、負荷抵抗Rの抵抗値をRで表している。
【0029】
[数1]
Vc=E・exp(−t/R・C)
時刻t1のコンデンサCの電圧Vc1は(1)式のtにt1を代入して、(2)式のように求められる。なお、(2)式では、(1)式と同様に、コンデンサCの容量をCで表し、負荷抵抗Rの抵抗値をRで表している。
【0030】
[数2]
Vc1=E・exp(−t1/R・C)
(2)式をコンデンサ容量Cについて解くと、(3)式で示される。
【0031】
[数3]
C=t1/{R・log(E/Vc1)}
(3)式において、t1、E、Vc1、Rが既知であればコンデンサ容量Cを求めることができる。
【0032】
ここで、図2に示したように、コンデンサ容量CをRCの時定数により測定する場合、停電前後のコンデンサ両端電圧E、Vc1を測定する必要がある。電気機器11がコンデンサインプット型に代表される交直変換回路である場合には、電気機器11の交直変換回路に用いられている整流器12の影響により、そのままでは、整流器12の入力側の交流側からコンデンサ両端電圧Vc1を測定することができない。
【0033】
すなわち、交流側電圧(整流器の入力側の電圧)が直流側電圧(コンデンサ両端電圧)より高いときには、整流器12のダイオードがオンするため、交流側電圧を直流側電圧とみなすことができる。従って、Eは停電直前電圧Vaとみなすことができる。一方、交流側電圧が直流側電圧よりも低いときには、整流器12のダイオードがオフするため、交流側から直流側の電圧を窺い知ることはできない。従って、そのままではコンデンサ両端電圧Vc1を測定することができない。
【0034】
そこで、第1の実施の形態では、電源装置14の出力端にリアクトルLaを挿入し、電気機器11の整流器12の直流側電圧(コンデンサ両端電圧)を交流側から測定可能としている。電源装置14の出力端にリアクトルLaを挿入することにより、整流器12の入力側に印加した電源装置14の電圧が瞬時に電気機器11に印加されるのを防止し、あたかもソフトスタートをしたかのように電気機器11に出力電圧を印加する。
【0035】
つまり、一時停電させた後の復電時に電源装置14から電圧Vaを印加してもリアクトルLaにより電気機器11への出力電圧はコンデンサ両端電圧Vc1から緩やかに電圧Vaに向けて立ち上がることになる。従って、電源装置14が復電したときの電圧検出器15で検出された出力電圧(復電電圧)Vbはコンデンサ両端電圧Vc1に相当することになる。
【0036】
t1は停電時間Tに相当し、Eは停電直前電圧Vaに相当し、Vc1は復電電圧Vbに相当し、負荷抵抗Rの抵抗値である。従って、これらのt1(=T)、E(=Va)、Vc1(=Vb)、Rは、すべて既知であるので、コンデンサ容量Cを求めることができる。
【0037】
次に、電源装置14から電気機器11への電源供給を一時停電させ、所定の停電時間Tの経過後に復電させた場合の電気機器11の動作を考える。まず、電源装置14の出力端にリアクトルLaが挿入されている場合について説明する。図3は電源装置14の出力端にリアクトルLaを挿入した場合の一時停電後に復電させた場合の動作波形図である。
【0038】
図3に示すように、時点t1以前の電源装置14から電気機器11に電源供給されている状態では、電源装置14の出力電圧はV0で一定であり、電圧検出器15の検出電圧は電気機器11のコンデンサCの両端電圧である。電気機器11のコンデンサCは整流器12で整流された電圧V0で十分に充電されているので、コンデンサCの両端電圧はV0である。また、電源装置14の出力電流はI0で一定であり、負荷抵抗Rに一定の電力を供給している。
【0039】
時点t1において、電源装置14から電気機器11への電源供給を一時停電させたとすると、停電直前電圧VaはV0であり、電源装置14の出力電圧は0となり、電圧検出器15の検出電圧も0となる。一方、電気機器11のコンデンサ両端電圧Vcは、コンデンサ容量Cと負荷抵抗Rとで定まる時定数により放電してV0から徐々に降下する。また、電源装置14の出力電流は0となる。
【0040】
そして、所定の停電時間Tの経過後の時点t2で復電させたとすると、電源装置14の出力電圧は0からV0となるが、リアクトルLaの影響により、電気機器11のコンデンサ両端電圧Vc及び電圧検出器15の検出電圧は瞬時にV0とはならず、コンデンサ容量Cと負荷抵抗Rとで定まる時定数により下降した時点t2でのコンデンサ両端電圧Vc1から徐々に上昇する。この時点t2でのコンデンサ両端電圧Vc1は、電源装置14の復電時に電圧検出器15で復電電圧Vbとして検出される電圧である。つまり、コンデンサ両端電圧VcはリアクトルLaの影響により、時点t2でのコンデンサ両端電圧Vc1から徐々にVaに向けて上昇する。また、電源装置14の出力電流は、時点t2からオーバーシュートして流れ、最終的には負荷抵抗Rに一定の電力を供給する一定電流I0で落ち着く。
【0041】
従って、電源装置14の出力端にリアクトルLaが挿入されている場合には、コンデンサ容量Cと負荷抵抗Rとで定まる時定数により下降したコンデンサ両端電圧Vc1は、復電時(時点t2時)の復電電圧Vbとして電圧検出器15で検出される。
【0042】
次に、電源装置14の出力端にリアクトルLaが挿入されていない場合について説明する。図4は電源装置14の出力端にリアクトルLaを挿入しない場合の一時停電後に復電させた場合の動作波形図である。図4に示すように、時点t1から時点t2直前までの状態は、図3の状態と同じである。所定の停電時間Tの経過後の時点t2で復電したとすると、電源装置14の出力電圧及び電圧検出器15の検出電圧は0からV0となる。電源装置14の出力端にはリアクトルLaが挿入されていないので、電源装置14の出力電圧がV0となると、電気機器11のコンデンサCの両端電圧Vcは瞬時にVc1からV0となる。
【0043】
従って、復電時(時点t2時)の復電電圧Vbとして電圧検出器15で検出される電圧はV0となり、コンデンサ容量Cと負荷抵抗Rとで定まる時定数により下降したコンデンサ両端電圧Vc1を検出することができない。
【0044】
このように、第1の実施の形態では、電源装置14の出力端にリアクトルLaを挿入することによって、電気機器11の整流器12の直流側電圧(コンデンサ両端電圧)を交流側から測定可能としている。
【0045】
また、電気機器11の整流器のリアクトルLの影響を緩和するためにも、電源装置14の出力端にリアクトルLaを挿入する。図5は、電源装置14の出力端にリアクトルLaを挿入して、10000[μF]の静電容量を持つコンデンサ容量Cをシミュレーションにより同定したときのグラフである。図5から分かるように0.005[H]以上のリアクトルLaを挿入した場合には、電気機器11の力率改善用のリアクトルLの有無に関係なく精度よくコンデンサ容量C(10000[μF])を同定できている。
【0046】
これより、ある値(例えば、0.005[H])以上のリアクトルLaを電源装置14の出力端に挿入することにより、精度よくコンデンサ容量Cを同定できることがわかる。また、挿入するリアクトル容量を変化させ、数点のデータを得ることにより、電気機器11内部のリアクトルLを完全に無視したときのコンデンサ容量Cを算出できる。
【0047】
次に、第1の実施の形態に係わる受動素子パラメータ測定装置の動作を説明する。図6は第1の実施の形態に係わる受動素子パラメータ測定装置の動作を示すフローチャートである。まず、受動素子パラメータ測定装置13を供試機器である電気機器11に接続し(S1)、受動素子パラメータ測定装置13の電源装置14から電気機器11に電源を供給する(S2)。電源は直流または交流のいずれであってもよい。
【0048】
電源装置14から電気機器11に電源を供給している状態で、電気機器11に印加される電圧V及び電流Iを検出する(S3)。すなわち、電源装置14から電気機器11に印加される電圧Vは電圧検出器15で検出され、電源装置14から電気機器11に供給される電流Iは電流検出器17で検出され、それぞれ記憶部16に記憶される。
【0049】
次に、負荷抵抗演算部18は電気機器11の負荷抵抗Rを演算する(S4)。負荷抵抗演算部18は、記憶部16に記憶された電圧検出器15で検出された電気機器11に印加される電圧V及び電流検出器17で検出された電気機器11に供給される電流Iを入力し、R=V/Iで求める。電源装置14から供給する電源電力が交流である場合には、供給電力をPとしたとき、R=V2/P、または、R=P/I2で求める。
【0050】
そして、電源装置14から電気機器11への電源供給を一時停電させるあたり、電源装置14から電気機器11への出力電圧Vの停電直前電圧Vaを記憶して停電させる(S5)。その後に、所定の停止時間Tを経過したかどうかを判定し(S6)、所定の停止時間Tを経過したときは、電源装置14から電気機器11への電源供給を復電させ(S7)、復電時の復電電圧Vbを記憶部16に記憶する(S8)。
【0051】
コンデンサ容量演算部20は、(3)式により電気機器15のコンデンサ容量Cを演算する(S9)。この場合、停電直前電圧Vaは(3)式のEに、復電電圧Vbは(3)式のVc1に、停電時間Tは(3)式のt1に、負荷抵抗Rは(3)式のRに代入して、電気機器15のコンデンサ容量Cを演算する。コンデンサ容量演算部20で求めたコンデンサ容量Cは、記憶部16に記憶するとともに必要に応じて出力部21により外部に出力する。
【0052】
以上の説明では、電源装置14の出力端にリアクトルLaを挿入し、一時停電を発生させ復電させて、電気機器11のコンデンサ両端電圧Vcを電気機器11の入力側から検出可能としコンデンサ容量Cを求めるようにしたが、電源装置14の電圧を急変させ、急変直前電圧Vdと、電源装置14から電気機器11に向かって電流Iが流れた瞬間の電圧値Veと、時間Teとを記録し、コンデンサ容量Cを測定することも可能である。この場合、電源装置14から電気機器11に向かって電流Iが流れた瞬間の電圧値Veがコンデンサ両端電圧Vc1に相当することになる。
【0053】
図7は、電源装置14の電圧を急変させてコンデンサ容量Cを測定する場合の動作特性図である。時点t3以前の電源装置14から電気機器11に電源供給されている状態では、電源装置14の出力電圧はV0で一定であり、電圧検出器15の検出電圧は電気機器11のコンデンサCの両端電圧である。電気機器11のコンデンサCは整流器12で整流された電圧V0で十分に充電されているので、電圧検出器15の検出電圧はV0である。また、電源装置14の出力電流はI0で一定であり、負荷抵抗Rに一定の電力を供給している。
【0054】
時点t3において、電源装置14から電気機器11への供給電圧をV0からV0’に急変させたとすると、急変直前電圧VdはV0であり、電源装置14の出力電圧VはV0’となる。急変直前電圧Vd(=V0)を記憶部16に記憶する。一方、電気機器11のコンデンサ両端電圧Vcは、コンデンサ容量Cと負荷抵抗Rとで定まる時定数により放電してV0から徐々に降下する。また、電源装置14の出力電流は0となる。
【0055】
そして、コンデンサ両端電圧Vcがコンデンサ容量Cと負荷抵抗Rとで定まる時定数により放電してV0からV0’まで下がり、さらに放電しようとすると、コンデンサ両端電圧VcがV0’より下がる。そうすると、電源装置14の出力電圧はV0’であるので、電源装置14の出力電圧の方が高くなる。従って、時点t4において、電源装置14から電気機器11の方向に電流が流れ始める。電源装置14から電気機器11に向かって電流Iが流れた瞬間の電源装置14の出力電圧値Ve(=V0’)と、電圧を急変させた時点からの時間Teとを記憶部16に記憶する。
【0056】
図8は電源装置14の電圧を急変させてコンデンサ容量Cを測定する場合の動作を示すフローチャートである。ステップS1からステップS4までは図3と同じである。すなわち、受動素子パラメータ測定装置13を供試機器である電気機器11に接続し(S1)、受動素子パラメータ測定装置13の電源装置14から電気機器11に電源を供給し(S2)、電源装置14から電気機器11に電源を供給している状態で、電気機器11に印加される電圧V及び電流Iを検出して(S3)、記憶部16に記憶する。そして、負荷抵抗演算部18は電気機器11の負荷抵抗Rを演算して(S4)、記憶部16に記憶する。
【0057】
次に、電源装置14から電気機器11への電源電圧を急変させるにあたり、電源装置14から電気機器11への出力電圧Vの停電急変電圧Vdを記憶して、出力電圧を急変させる(S5)。その後に、電源装置14から電気機器11の方向に電流が流れたかどうかを判定し(S6)、電源装置14から電気機器11の方向に電流が流れ始めたときは、その瞬間の電源装置14の出力電圧値Veを記憶部16に記憶し(S7)、出力電圧を急変させた時点から出力電流が流れ始めるまでの時間Teを記憶部16に記憶する(S8)。
【0058】
コンデンサ容量演算部20は、(3)式により電気機器15のコンデンサ容量Cを演算する(S9)。この場合、急変直前電圧Vdは(3)式のEに、出力電流が流れ始めたときの出力電圧Veは(3)式のVc1に、時間Teは(3)式のt1に、負荷抵抗Rは(3)式のRに代入して、電気機器15のコンデンサ容量Cを演算する。コンデンサ容量演算部20で求めたコンデンサ容量Cは、記憶部16に記憶するとともに必要に応じて出力部21により外部に出力する。
【0059】
以上の説明では、負荷抵抗演算部18は、電気機器11に印加される電圧V及び電気機器11に供給される電流Iを入力しR=V/I、または、供給電力をPとしたとき、R=V2/P、または、R=P/I2で負荷抵抗Rを求めるようにしたが、出力電圧の値が異なる場合の複数の負荷抵抗を求め、これらの平均値を負荷抵抗としてもよい。
【0060】
例えば、停電直前電圧Va及びそのときの電流検出器17で検出された電気機器11に供給される電流Iに基づいて電気機器の第1の負荷抵抗R1を演算し、復電電圧Vb及びそのときの電流検出器17で検出された電気機器11に供給される電流Iに基づいて電気機器11の第2の負荷抵抗R2を演算し、第1の負荷抵抗R1と第2の負荷抵抗R2との平均値を電気機器11の負荷抵抗Rとして演算するようにしてもよい。
【0061】
また、急変直前電圧Vd及びそのときの電流検出器17で検出された電気機器11に供給される電流に基づいて電気機器11の第1の負荷抵抗R1’を演算し、電気機器11への供給電圧を急変させた後に電流検出器17により電流が検出された時点での電圧検出器15で検出される電圧Ve及びそのときの電流検出器17で検出された電気機器11に供給される電流に基づいて電気機器11の第2の負荷抵抗R2’を演算し、第1の負荷抵抗R1’と第2の負荷抵抗R2’との平均値を電気機器11の負荷抵抗Rとして演算するようにしてもよい。
【0062】
これにより、負荷抵抗が入力電圧の値によって抵抗値が変化する定電力負荷抵抗の場合であっても、平均値を使用することで電気機器11のコンデンサ容量Cを精度よく求めることができる。
【0063】
第1の実施の形態によれば、電気機器の外部で検出される電気機器への出力電圧及び出力電流に基づいて電気機器の負荷抵抗を演算し、電気機器の外部で検出される電気機器への出力電圧や出力電流及び電気機器の負荷抵抗に基づいて電気機器のコンデンサ容量を演算するので、電気機器を分解することなく電気機器のコンデンサ容量を求めることができる。
【0064】
電気機器を分解せずにコンデンサ容量を求めることが測定できるので、シミュレーション精度の向上やシミュレーションの時間短縮が図れる。さらに、定期的にコンデンサ容量を測定することによって、コンデンサの劣化診断をすることができ、未然に電気機器が故障をすることを防ぐことができる。
【0065】
図9は本発明の第2の実施の形態に係わる受動素子パラメータ測定装置の構成図である。この第2の実施の形態は、図1に示した第1の実施の形態に対し、コンデンサ容量演算部20で演算されたコンデンサ容量の同定の可否判定を行う同定判定部22を追加して設けたものである。
【0066】
図10は同定判定部22の処理内容を示すフローチャートである。まず、同定判定部22は、異なる停止時間T1、T2(T1>T2)のコンデンサ容量C1、C2をコンデンサ容量演算部20に演算させる(S1)。そして、コンデンサ容量演算部20で演算された停止時間T1のときのコンデンサ容量C1と、停止時間T2のときのコンデンサ容量C2との差分ΔC1(=|C2−C1|)を演算し(S2)、その差分ΔC1が規定値ε1より小さいかどうかを判定する(S3)。その差分ΔC1が規定値ε1より小さいときは、コンデンサ容量C1とコンデンサ容量C2との平均値をコンデンサ容量Cとして同定する(S4)。
【0067】
一方、ステップS3の判定で、コンデンサ容量C1とコンデンサ容量C2との差分ΔC1が規定値ε1以上であるときは、コンデンサ容量C1、C2は平均値の負荷抵抗Rを用いて演算したものかどうかを判定する(S5)。これは、負荷抵抗Rが入力電圧Vの値によって抵抗値が変化する定電力負荷抵抗の場合には、前述したように、出力電圧の値が異なる場合の第1の負荷抵抗及び第2の負荷抵抗の平均値を負荷抵抗とするからである。
【0068】
ステップS5の判定で、コンデンサ容量C1、C2は平均値の負荷抵抗Rを用いて演算したものである場合には、平均値の負荷抵抗Rを用いて演算したにもかかわらず、コンデンサ容量C1、C2の差分ΔC1が規定値ε1の範囲内を満たさないので、コンデンサ容量Cの同定不能と判定する(S6)。
【0069】
一方、ステップS5の判定で、コンデンサ容量C1、C2は平均値の負荷抵抗Rを用いて演算したものでない場合には、平均値の負荷抵抗を求めるかどうかを判断し(S7)、平均値の負荷抵抗を求めない場合には、ステップS6に移行しコンデンサ容量Cの同定不能と判定する。平均値の負荷抵抗を求める場合には、負荷抵抗演算部18を起動し、出力電圧の値が異なる場合の第1の負荷抵抗及び第2の負荷抵抗の平均値を演算する(S8)。
【0070】
そして、平均値の負荷抵抗を用いて、停止期間T1、T2(T1>T2)のコンデンサ容量C1、C2をコンデンサ容量演算部20に演算させ(S9)、平均値の負荷抵抗を用いて演算された停止時間T1のときのコンデンサ容量C1と、停止時間T2のときのコンデンサ容量C2との差分ΔC1’(=|C2’−C1’|)を演算し(S10)、その差分ΔC1’がステップS2で求めた差分ΔC1より小さいかどうかを判定する(S11)。差分ΔC1’が差分ΔC1より大きい場合は、ステップS6に移行しコンデンサ容量Cの同定不能と判定する。これは、平均値の負荷抵抗を用いて演算した結果のコンデンサ容量C1、C2の差分がさらに大きくなっているので、負荷抵抗は定電力負荷抵抗以外の負荷と判定できるからである。
【0071】
ステップS11の判定で、差分ΔC1’が差分ΔC1より小さい場合は、変数iに3をセットし(S12)、平均値の負荷抵抗を用いて、停止期間Ti(Ti−1>Ti)のコンデンサ容量Ci’をコンデンサ容量演算部20に演算させ(S13)、停止時間Ti−1のときのコンデンサ容量Ci−1’と、停止時間Tiのときのコンデンサ容量Ci’との差分ΔCi−1’(=|Ci’−Ci−1’|)を演算する(S14)。
【0072】
その差分ΔC1’が規定値ε1より小さいかどうかを判定し(S15)、その差分ΔC1’が規定値ε1より大きいときは、変数iに1を加算して(S16)、ステップS13に戻る。一方、その差分ΔC1’が規定値ε1より小さいときは、コンデンサ容量Ci’とコンデンサ容量Ci−1’との平均値をコンデンサ容量Cとして同定する(S17)。これは、差分ΔCi−1’が小さくなったときは、負荷抵抗は定電力負荷抵抗であると判定でき、停電時間Tiを順次短くしていくと、差分ΔCi−1’は小さくなっていくからである。
【0073】
第2の実施の形態によれば、同定判定部22により、コンデンサ容量演算部20で演算されたコンデンサ容量の同定の可否判定を行い、特に、負荷抵抗が定電力負荷抵抗である場合には、より精度を高めたコンデンサ容量を同定するので、演算されたコンデンサ容量の信頼性が向上する。
【0074】
図11は本発明の第3の実施の形態に係わる受動素子パラメータ測定装置の構成図である。この第3の実施の形態は、図1に示した第1の実施の形態に対し、周波数検出部23とインダクタンス演算部24とを追加して設け、電気機器11に含まれるリアクトルLのインダクタンスを求めるようにしたものである。
【0075】
周波数検出部23は、電源装置14からステップ状の電圧を電気機器11に印加したときに、電流検出器17で検出された電流Iの振動周波数fを検出するものである。また、インダクタンス演算部24は、コンデンサ容量演算部20で演算されたコンデンサ容量C及び周波数検出部23で検出された電流Iの振動周波数fに基づいて、電気機器11に含まれる力率改善用のリアクトルのインダクタンスを演算するものである。
【0076】
いま、電気機器11に含まれる力率改善用のリアクトルのインダクタンスをLとする。電気機器11にステップ状の電圧を印加した際には、(4)式で示す条件のときに入力電流Iは振動する。
【0077】
[数4]
1/(2RC)2<1/LC
その時の振動角周波数ωは、(5)式で求まる。
【0078】
[数5]
ω={1/LC−1/(2RC)2}1/2
そこで、振動周波数fとコンデンサ容量Cとが分かれば(6)式によってリアクトルのインダクタンスLを同定することができる。
【0079】
[数6]
L≒1/(2πf)2・C
また、回路の条件によっては電流が振動しないこともあるが、その際は電源装置14の出力端にリアクトルLa’を挿入することにより電流Iを振動させ、電気機器11内に含まれるリアクトルのインダクタンスLを同定する。
【0080】
図12は本発明の第3の実施の形態に係わる受動素子パラメータ測定装置の動作を示すフローチャートである。まず、受動素子パラメータ測定装置13を電気機器11に接続し(S1)、受動素子パラメータ測定装置13の電源装置14から電気機器11にステップ状の出力電圧を印加する(S2)。電源装置14からステップ状の出力電圧を出力させる制御は電源制御部19により行われる。
【0081】
電気機器11にステップ状の出力電圧を印加した後に、電流Iは振動するかどうかを判断する(S3)。電流Iが振動しているか否かは周波数検出部23で判断する。周波数検出部23で電流Iの振動周波数fが検出できないときは、電源装置14の出力端にリアクトルLa’を追加して接続し(S4)、ステップS3に戻る。つまり、電流Iが振動するまでステップS3、S4を繰り返す。電流Iが振動するようになったときは、(4)式の条件を満たすときである。
【0082】
電流Iが振動するようになると、周波数検出部23は電流Iの振動周波数fを測定する(S5)。電流Iの振動周波数fが得られると、インダクタンス演算部24は、既にコンデンサ容量演算部20で演算して求めたコンデンサ容量Cとともに、(6)式に代入し、電気機器11内に含まれるリアクトルのインダクタンスLを求める(S6)。これにより、電気機器11を分解することなく電気機器11のリアクトルのインダクタンスも求めることができる。
【0083】
以上の説明では、第1の実施の形態に対し、周波数検出部23及びインダクタンス演算部24を設けた場合について説明したが、第2の実施の形態に対し、周波数検出部23とインダクタンス演算部24とを設け、電気機器11に含まれるリアクトルLのインダクタンスを求めるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係わる受動素子パラメータ測定装置の構成図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係わる受動素子パラメータ測定装置の電源装置から電気機器に所定電圧で電源供給をしているときに電源装置を一時停電させた場合の電気機器側の等価回路。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係わる受動素子パラメータ測定装置の電源装置の出力端にリアクトルLaを挿入した場合の一時停電後に復電させた場合の電気機器の動作波形図。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係わる受動素子パラメータ測定装置の電源装置の出力端にリアクトルLaを挿入しない場合の一時停電後に復電させた場合の動作波形図。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係わる受動素子パラメータ測定装置の電源装置の出力端にリアクトルLaを挿入して10000[μF]の静電容量を持つコンデンサ容量Cをシミュレーションにより同定したときのグラフ。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係わる受動素子パラメータ測定装置の動作を示すフローチャート。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係わる受動素子パラメータ測定装置の電源装置の電圧を急変させてコンデンサ容量Cを測定する場合の動作特性図。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係わる受動素子パラメータ測定装置の電源装置の電圧を急変させてコンデンサ容量Cを測定する場合の動作を示すフローチャート。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係わる受動素子パラメータ測定装置の構成図。
【図10】本発明の第2の実施の形態に係わる受動素子パラメータ測定装置の同定判定部の処理内容を示すフローチャート。
【図11】本発明の第3の実施の形態に係わる受動素子パラメータ測定装置の構成図。
【図12】本発明の第3の実施の形態に係わる受動素子パラメータ測定装置の動作を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0085】
11…電気機器、12…整流器、13…受動素子パラメータ測定装置、14…電源装置、15…電圧検出器、16…記憶部、17…電流検出器、18…負荷抵抗演算部、19…電源制御部、20…コンデンサ容量演算部、21…出力部、22…同定判定部、23…周波数検出部、24…インダクタンス演算部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受動素子であるコンデンサ及び整流器を有する電気機器にリアクトルを介して直流または交流の電源電力を印加するための電源装置と、前記電源装置から前記電気機器に印加される電圧を検出する電圧検出器と、前記電源装置から前記電気機器に供給される電流を検出する電流検出器と、前記電源装置から前記電気機器に電源供給されているときに前記電圧検出器で検出された前記電気機器に印加される電圧及び前記電流検出器で検出された前記電気機器に供給される電流に基づいて前記電気機器の負荷抵抗を演算する負荷抵抗演算部と、前記電源装置から前記電気機器への電源供給を一時停電させ所定の停電時間経過後に復電させる電源制御部と、前記電源装置が一時停電したときの前記電圧検出器で検出される停電直前電圧、前記電源装置が復電したときの前記電圧検出器で検出される復電電圧、前記電源装置が一時停電してから復電するまでの前記停電時間、前記負荷抵抗演算部で求めた負荷抵抗に基づいて前記電気機器のコンデンサ容量を演算するコンデンサ容量演算部とを備えたことを特徴とする受動素子パラメータ測定装置。
【請求項2】
前記負荷抵抗演算部は、前記停電直前電圧及びそのときの前記電流検出器で検出された前記電気機器に供給される電流に基づいて前記電気機器の第1の負荷抵抗を演算し、前記復電電圧及びそのときの前記電流検出器で検出された前記電気機器に供給される電流に基づいて前記電気機器の第2の負荷抵抗を演算し、前記第1の負荷抵抗と前記第2の負荷抵抗との平均値を前記電気機器の負荷抵抗として演算することを特徴とする請求項1記載の受動素子パラメータ測定装置。
【請求項3】
前記電源制御部は、前記電源装置から前記電気機器への電源供給を一時停電させ所定の停電時間経過後に復電させることに代えて、前記電源装置から前記電気機器への供給電圧を急変させ、前記コンデンサ容量演算部は、前記電源制御部で前記電気機器への供給電圧が急変させたときの前記電圧検出器で検出される急変直前電圧、前記電気機器への供給電圧を急変させた後に前記電流検出器により電流が検出された時点での前記電圧検出器で検出される電圧、前記電気機器への供給電圧が急変してから前記電流検出器により電流が検出された時点までの時間、前記負荷抵抗演算部で求めた負荷抵抗とに基づいて前記電気機器のコンデンサ容量を演算することを特徴とする請求項1記載の受動素子パラメータ測定装置。
【請求項4】
前記負荷抵抗演算部は、前記急変直前電圧及びそのときの前記電流検出器で検出された前記電気機器に供給される電流に基づいて前記電気機器の第1の負荷抵抗を演算し、前記電気機器への供給電圧を急変させた後に前記電流検出器により電流が検出された時点での前記電圧検出器で検出される電圧及びそのときの前記電流検出器で検出された前記電気機器に供給される電流に基づいて前記電気機器の第2の負荷抵抗を演算し、前記第1の負荷抵抗と前記第2の負荷抵抗との平均値を前記電気機器の負荷抵抗として演算することを特徴とする請求項3記載の受動素子パラメータ測定装置。
【請求項5】
前記コンデンサ容量演算部で演算されたコンデンサ容量の同定の可否判定を行う同定判定部を設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の受動素子パラメータ測定装置。
【請求項6】
前記電源装置からステップ状の電圧を前記電気機器に印加したときに前記電流検出器で検出された電流の振動周波数を検出する周波数検出部と、前記コンデンサ容量演算部で演算されたコンデンサ容量及び前記周波数検出部で検出された電流の振動周波数に基づいて前記電気機器に含まれるリアクトルのインダクタンスを演算するインダクタンス演算部とを備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の受動素子パラメータ測定装置。
【請求項1】
受動素子であるコンデンサ及び整流器を有する電気機器にリアクトルを介して直流または交流の電源電力を印加するための電源装置と、前記電源装置から前記電気機器に印加される電圧を検出する電圧検出器と、前記電源装置から前記電気機器に供給される電流を検出する電流検出器と、前記電源装置から前記電気機器に電源供給されているときに前記電圧検出器で検出された前記電気機器に印加される電圧及び前記電流検出器で検出された前記電気機器に供給される電流に基づいて前記電気機器の負荷抵抗を演算する負荷抵抗演算部と、前記電源装置から前記電気機器への電源供給を一時停電させ所定の停電時間経過後に復電させる電源制御部と、前記電源装置が一時停電したときの前記電圧検出器で検出される停電直前電圧、前記電源装置が復電したときの前記電圧検出器で検出される復電電圧、前記電源装置が一時停電してから復電するまでの前記停電時間、前記負荷抵抗演算部で求めた負荷抵抗に基づいて前記電気機器のコンデンサ容量を演算するコンデンサ容量演算部とを備えたことを特徴とする受動素子パラメータ測定装置。
【請求項2】
前記負荷抵抗演算部は、前記停電直前電圧及びそのときの前記電流検出器で検出された前記電気機器に供給される電流に基づいて前記電気機器の第1の負荷抵抗を演算し、前記復電電圧及びそのときの前記電流検出器で検出された前記電気機器に供給される電流に基づいて前記電気機器の第2の負荷抵抗を演算し、前記第1の負荷抵抗と前記第2の負荷抵抗との平均値を前記電気機器の負荷抵抗として演算することを特徴とする請求項1記載の受動素子パラメータ測定装置。
【請求項3】
前記電源制御部は、前記電源装置から前記電気機器への電源供給を一時停電させ所定の停電時間経過後に復電させることに代えて、前記電源装置から前記電気機器への供給電圧を急変させ、前記コンデンサ容量演算部は、前記電源制御部で前記電気機器への供給電圧が急変させたときの前記電圧検出器で検出される急変直前電圧、前記電気機器への供給電圧を急変させた後に前記電流検出器により電流が検出された時点での前記電圧検出器で検出される電圧、前記電気機器への供給電圧が急変してから前記電流検出器により電流が検出された時点までの時間、前記負荷抵抗演算部で求めた負荷抵抗とに基づいて前記電気機器のコンデンサ容量を演算することを特徴とする請求項1記載の受動素子パラメータ測定装置。
【請求項4】
前記負荷抵抗演算部は、前記急変直前電圧及びそのときの前記電流検出器で検出された前記電気機器に供給される電流に基づいて前記電気機器の第1の負荷抵抗を演算し、前記電気機器への供給電圧を急変させた後に前記電流検出器により電流が検出された時点での前記電圧検出器で検出される電圧及びそのときの前記電流検出器で検出された前記電気機器に供給される電流に基づいて前記電気機器の第2の負荷抵抗を演算し、前記第1の負荷抵抗と前記第2の負荷抵抗との平均値を前記電気機器の負荷抵抗として演算することを特徴とする請求項3記載の受動素子パラメータ測定装置。
【請求項5】
前記コンデンサ容量演算部で演算されたコンデンサ容量の同定の可否判定を行う同定判定部を設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の受動素子パラメータ測定装置。
【請求項6】
前記電源装置からステップ状の電圧を前記電気機器に印加したときに前記電流検出器で検出された電流の振動周波数を検出する周波数検出部と、前記コンデンサ容量演算部で演算されたコンデンサ容量及び前記周波数検出部で検出された電流の振動周波数に基づいて前記電気機器に含まれるリアクトルのインダクタンスを演算するインダクタンス演算部とを備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の受動素子パラメータ測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−107405(P2010−107405A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−280726(P2008−280726)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】
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